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2009年3月 1日 (日)

金がなければ愛もないのが銭ゲバズラ(松山ケンイチ)お金があれば愛もあるのよ(木南晴香)慟哭(ミムラ)

ふたたび、そっと原作によりそったこのドラマ。

お茶の間対策で言葉足らずの部分もあるが、言ってはならないことを口に出している感じは漂っている。

お金よりも大切なものがある。それは命だ。ということは誰憚ることなく言える。

しかし、命よりも大切なものがある。それは幸せだ。ということは物議をかもすことになるだろうからだ。

幸福とは気分のことであるから。

命よりも大切なものがある。それはその時の気分だ。ということになり、なにをおっしゃいますかということになるのだな。

もちろん、悪魔は命より大切なプライドとか。命より大切なコレクションとか。命より大切な苦痛からの逃避とか、命より大切なものはいくらでもあると思う。ただ、命より大切なものはないと考える人はそれを認めたくないのである。命がなくなってプライドやコレクションやあるいは心が何の意味があるだろうかと人は言うだろう。しかし、命を失うということはすべてを失うことなのであり意味なんてすでにどこにも何一つとしてないのだ。

で、『銭ゲバ・第7回』(日本テレビ090228PM9~)原作・ジョージ秋山、脚本・岡田惠和、演出・狩山俊介を見た。手術をしなければ余命いくばくもない刑事(宮川大輔)の妻を階段から突き落とした障害の容疑で逮捕された風太郎(松山)。その直前、騙されて自我崩壊に追い込んだはずの緑(ミムラ)から逆襲され、呆然自失の上、幼児退行に追い込まれた風太郎。

しかし、自閉の中で風太郎の反骨心はたちまち鎧を取り戻す。

ああ・・・びっくりしたズラ・・・お嬢様にもしぶといタイプがいるのダラ

風太郎は銭を信仰すると同時に軽蔑している。それは神を愛しながら憎むのと同じだ。「人間にとってお金以上のものはない」という偏りは風太郎の人格形成の基礎である。そのために風太郎は「人間は金のためには何でもする」という証明に拘泥する。風太郎が自己保身のために画策しているように見えることはすべてギャンブルなのである。それが単なる優秀な犯罪者と金の亡者である風太郎の差異なのだ。

風太郎は生きながら銭に葬られているのである。

独房の中で見る夢こんな夢

親切なお兄さんをバットで撲り殺した後

街をあてもなくさまよった

雨に打たれ寒さに震えゴミを食べた

廃品回収業の老人が

雑炊をふるまってくれた

老人は心に隠してあることを話せば楽になると微笑んだ

勇気を出して秘密を打ち明けると

老人はその秘密を売り出した

ほら・・・やはり・・・すべては金によって動くのだ。あの男。風太郎に似たあの男。真一(松山・二役)は「お金よりも大切なのは人の心だ」という貧しい一家に育てられたが・・・きっと「金で動くだろう」・・・風太郎はそれを確かめずにはいられない。そして貧しい一家にも悔い改めてもらいたい。「お金によりも大切なものはない」と思い知ってもらいたい。

風太郎は祈りにも似た気持ちでそう願う。

そして・・・案の定・・・真一は借金返済のために刑事の妻を突き落とし、さらにお金をもらうために自首をするのだった。

風太郎は問題を証明した数学者のように微笑んだ。

三國家の食卓に父親を殺された姉妹と風太郎が顔をそろえた。

風太郎「すべては計画的なことです。三國家の財産をすべて乗っ取るために仕組んだのです。わざと緑さんの車にはねられ、みにくい茜をターゲットにして偽りの愛を育みました。邪魔になった緑さんの友人を殺し、緑さんの心を得るために狂言で刺されました。お父さんを殺させたのも僕です。どうです・・・そんな僕と食事の喜びをわかちあう気分は?」

緑「ケダモノなら害を為せば殺せば済む。しかし、人間は人間として罪に苦しむべき。死ぬよりつらい思いをするべきと思うばかりよ」

風太郎は無言で席を立つ。それを追う茜(木南晴夏)・・・。

緑「茜・・・よしなさい・・・あの人は私たちのお父様を殺した血も涙もない男なのよ」

茜「馬鹿なお姉さん・・・あの人が死ぬよりつらい目にこれまであったことがなかったと本当に思っているの・・・死ぬよりつらい目にあわないで・・・どうしてあんな風になれると思うの?・・・あの人がどんな人だろうと・・・私の愛の炎は消えたりしないのよ」

緑は妹の言葉の意味が分らなかった。自分の存在そのものが妹を傷つけていることを想像したことがない以上、妹の愛の形は緑には不可解なものなのである。

茜は風太郎に愛を告白した。

かって風太郎が示した愛のゲームの形を借りて茜は真心を伝えたのだ。

「風太郎さん私はあなたを愛している。あなたは私のことをどう思うの。私が存在することが許せないのかしら?」

どうでもいい・・・お前には最初から興味がない。お前の役目は終ったから・・・お前が生きてようが死んでようが俺にとってどうでもいいことだ

「私にはね。あなたの気持ちがよくわかる。私だって人を呪って生きてきたから。でもあなたに会って自分がどれほど恵まれていたのかを知ることができた。そして私は人を愛する喜びをあなたにもらったの。違う人生で最初から人を愛するもの同志で出会ったらもっともっとあなたと愛し合うことができたかもしれないと思うけど。でも愛はあるんだよ。私はあなたと出会えて、あなたと一緒にいられて幸せでした・・・ありがとう」

くだらないこというなよ

お前とは人を呪う仲間じゃないか・・・。

「はい」と茜は胸いっぱいに広がる風太郎の愛の言葉を感じ、湧き上がる喜びを噛みしめた。この人のために何かをしてあげたい。この人の喜ぶことを何か。茜は自分にできることを考え始めた。そして精一杯の愛を示すのだ。

真一のために濡れ衣を着せられた風太郎という誤解に基づき謝罪に訪れた伊豆屋の人々。風太郎は同じ人間として彼らと接することに耐えられなくなった。

虫けらは虫けらとして生きるがいい

風太郎は言わなくてもいいことを言った。それは風太郎にとって社交辞令だった。

風太郎からもらった十億円とともに全国さすらい旅の実の父・健蔵は故郷に錦を飾る決意をした。1億円を寄付すると言うと冷たかった故郷の人々は手のひらを返した。

その頃・・・妹の言葉によって・・・憎しみの炎に冷水を浴びせかけられた緑もまた風太郎の故郷を訪れていた。風太郎の過去を知ることによって自分の憎しみを正当化しようと考えたのである。

そこで・・・緑は風太郎に泥水を浴びせた自分を思い出す。心に残る少年の笑顔。かっての風太郎一家の住居は廃屋となって残っていた。その柱に刻まれた背比べの傷痕。「いつか父親を追い越そう」という少年の健気なつぶやき。その想像以上の貧しさに自分が考えていた漠然とした貧乏感を払拭される緑。

「貧しいって・・・貧しいってこういうことなの」

「こういう貧しさの中にいた子供に」

「マカロンひとつのことで騒ぎ立てた子供の頃の私」

「貧しい母子をしかりつけた私」

「私って一体・・・」

そこで緑と健蔵は出会った。

これね。息子のくれたお小遣い・・・これをやるから死んでくれなんて心にもないことを言ってましたがね・・・

自分の子供とした約束なら・・・死ぬ前に一つくらい守ったらどうですか

緑は風太郎の心を理解している自分に気がついた。一人になった緑は泣いた。生れて初めて自分以外の誰かのために泣いた。緑は「人を思いやる気持ち」を手に入れた。

そして・・・茜がなぜ風太郎を愛しているのかを理解した。緑はそれを風太郎に伝えなければいけないと決意する。緑はその時、ようやく「姉」になった。緑の独善は一皮むけて超独善となったのだ。緑の顔に希望の光がさしこんだ。

刑事の妻は発作を起こし命の瀬戸際に立たされていた。ついに刑事の心は折れた。

移植手術を受けるための金を風太郎から受け取る決意をしたのだった。

風太郎はまた賭けに勝った。

勝つたびに金という虚構の虚しさは風太郎の心を虚ろにしていくのだ。

刑事はやめます・・・妻の命を助けるお金をください・・・結局、大事なのは金でした

刑事は風太郎に恵んでもらった金を抱きしめた。愛おしく抱きしめた。なぜならその金は妻の命と同じものだったからだ。

その朝。「いってらっしゃい」と風太郎を笑顔で送り出した茜は家政婦の春子に「ありがとう」と告げた。

家政婦は素直に喜んだ。

それから・・・茜は不自由な体を懸命に動かして、梁にロープをまわした。首をいれるための輪を作り、ロープの片側をしっかり固定した。踏み台の上で首を輪に差し入れた。そして精一杯の力で踏み台をけった。ロープは苦しい窒息の死ではなく、頚動脈の圧迫による脳への血流低下による死を茜に賜った。茜は最後に愛おしい風太郎の顔を思い出すことができた。やがて、茜の筋肉は弛緩し、体内のさまざまなものが引力に引かれて落下を始めた。

風太郎は帰宅し、その姿を見た。

風太郎は喪失感を感じて脱力した。生きている限りどんな人間にも失うものは必ずあるのである。

妹の愛を風太郎に教えてやろうと意気込んで帰宅した緑は誰よりも愛しく思えてきた妹がすでにいないことを知り絶叫した。

(茜・・・馬鹿ね・・・風太郎を地獄で待つつもりなの・・・愛のために自殺したら・・・地獄へは行けないのよ・・・天国にも行けない・・・あなたは煉獄行きなのよ・・・地獄行き決定の風太郎と・・・永遠に会えなくなっちゃったのよ・・・どうして・・・生きてお姉ちゃんを待っていてくれなかったの・・・あなたと愛について語ることがあったのに・・・生きて悪の限りを尽くさなくちゃ・・・風太郎と一緒に地獄に行けないじゃない・・・茜)

「あかねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

さよなら ただ ただ ただ ただ 愛しき日々よ

ずっと忘れないだろう 僕は君を

僕が生きる今日はもっと生きたかった誰かの明日かもしれないから

関連するキッドのブログ『第6話のレビュー

月曜日に見る予定のテレビ『ヴォイス・命なき者の声』(フジテレビ)『竹内結子のチームバチスタの栄光』(TBSテレビ)

ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。

皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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コメント

こんばんは~。
今回の荻野にはフフフでした(笑)

>自分の存在そのものが妹を傷つけていることを想像したことがない以上、
>妹の愛の形は緑には不可解なものなのである。
初回からこれを感じさせ、緑お嬢様の存在は視聴者まで
イライラさせてくれましたが、
ようやく違う方向へ…楽しみです。

健蔵へ吐き捨てた時の緑は、
風太郎へ発狂した時の緑より萌え~でした。

>風太郎の過去を知ることによって自分の憎しみを正当化しようと考えたのである。
憎しみを解くためだったなら分かりますけど、
父親を殺されたんですもん、憎しみを正当化って何?
緑の行動が不可解に映りました。
あらま、風太郎を不憫に思っちゃった。。。
緑は死刑廃止論賛成派でしょう。

緑は風太郎を…
風太郎は緑を、どうしたいのか。。。
見ものです。

投稿: mana | 2009年3月 3日 (火) 00時02分

|||-_||シャンプーブロー~mana様、いらっしゃいませ~トリートメント|||-_||

キッドは若手芸人がドラマに参加するのは
あまり好みませんが
メガネをはずした宮川大輔は許容範囲でございます。

今回の現ナマ抱きはなかなかよろしゅうございました。

とにかく、ちぴまる子の演技が抜群だったので
あのまま大人になっていたことがよくわかる
今回の緑の変貌。
旅から戻り、妹の変わり果てた姿を見るまでの
抑制された輝きの表情が
ミムラの女優としての才能を感じさせます。

しかし・・・ついに茜が「さよなら」
キッドとしては週末の楽しみ激減でございますともーっ。

緑のようなタイプは
自己正当化の権化ですからねえ。
しかし、自己正当化も一つの道ですから
極めれば大人の風格がでてくるもの。

憎しみという負の感情さえも
正当化できると考えるところが
醍醐味ですな。
すると善悪の境界線が見えてくるわけです。

死刑賛成派と死刑反対派の論議はすれちがうのですが
否定よりも肯定の方がより複雑というのが
筋でございます。

否定派は肯定派より深みがあると考えがちですが
実は多くの肯定派は否定を通過しているもの。

これは食わず嫌いと同じです。
ニンジンを食べないものとニンジンを食べるものでは
どちらが豊かであるかということなのです。

死刑反対派は一回死刑になればいいのに・・・
とキッドは日頃から考えています。

いよいよ・・・終盤戦。
このままだと原作通りのラストになる可能性が
かなり高まってきましたが・・・。
はたして・・・どうなりますやら。

投稿: キッド | 2009年3月 3日 (火) 14時56分

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