ただ、そこにある殺意(石原さとみ)タンシオって・・・(貫地谷しほり)心の包帯クラブみたいな(関めぐみ)
「爆笑そっくりものまね紅白歌合戦スペシャル」に登場した加護亜依は素人に混じって椎名林檎の「本能」をナースのコスプレでコピー。喫煙、不純異性交遊、自傷と不良少女の名を欲しいままにした十代を「気紛れを許して今更なんて思わずに」と熱唱である。さすがに笑わせてくれるな。かっこいいぜ。
同い年に俳優の故・伊藤隆大がいる。「のだめカンタービレ」の悠人くんである。先月、練炭自殺でこの世を去って行った。
石原さとみはその一つ上の世代である。危うい十代を感じさせぬ女優もいれば・・・そうでない者もいるのがこの世というものである。その差異がとこで生じるか・・・それは一つの主題となる。
柳楽優弥は加護・伊藤よりもさらに二つ年下だ。彼もまた昨年、薬物の大量摂取という事件を起している。14才でカンヌ国際映画祭で最優秀主演男優賞を受賞したことを生かすも殺すも本人次第なのである。
そうした現実の出来事と虚構は本来、無関係であるべきことは言うまでもない。しかし、無関係ではすまされないことが多いのも現実の側面である。
で、『包帯クラブ(2007年公開)』(TBSテレビ090301PM2~)原作・天童荒太、脚本・森下佳子、監督・堤幸彦を見た。「永遠の仔」の原作者、「白夜行」の脚本家、「トリック」の監督という組合せで興行的にはあまり芳しくなかったらしい・・・。これは「他人の心の傷を癒すために公共物に包帯を巻くクラブ」という設定が小説上はまだしも映像化するとちょっと恥ずかしい感じがするからだと思う。実際、中盤までは退屈な展開になっている。
しかし、中盤以後、クラブのメンバーたちが自らの心の傷を明らかにしていくとなかなかに引き込まれるのである。
トップバッターは高校生のタンシオ(貫地谷)で心の傷は「失恋」である。中学時代からの同級生でマーケットのバイト仲間でもあるワラ(石原さとみ)は心の痛手が癒えるようにとタンシオの乗った公園のブランコに包帯を巻く。タンシオはワラの想像以上に感激し、クラブが動きだす。
冒頭からワラは鬱屈している。それは幼い頃に両親が離婚し・・・父親に捨てられたという思いが心を圧するからだある。「どんなダメな子でも親は愛するというのに捨てられた自分はどれだけダメなんだろう」と思うのである。
そんなワラの自殺未遂を偶然に止めたのがディノ(柳楽優弥)だった。彼にはどうしても渡れない橋があり・・・その先に彼の秘密がある。
ワラとディノは当然のようにボーイ・ミート・ガールな関係になる。この当然のようにそうなるというところがひとつの伏線です。
一方、「包帯クラブ」のホームページを立ち上げるのがギモ(田中圭)である。タンシオはいきなり、ギモにお熱なのである。焼き鳥かっ。しかし、相手が田中圭だからな。ちなみにこのカップルは「花より男子2」でも婚約者を演じあっている。ギモの心の悩みは「小学生の時に男性教師から性的虐待を受けていたこと」である。そして・・・それが原因がどうかは知らないが、ギモはディノに夢中の性的倒錯者であった。タンシオより先に気がついたメンバーがヒヤヒヤして腫れ物に触るように接するというお約束があります。
タンシオよりもワラは「包帯クラブ」に偽善の匂いを嗅いでいるが・・・仲間たちと一緒に行動する楽しさに我を忘れていく。そうするうちに中学時代の親友たちを思い出す。
タンシオとワラは中学時代は四人組だったのである。
脱落した一人は貧乏のために高校進学を断念したリスキ(佐藤千亜妃)であり、もう一人は舞台となる群馬県高崎市で一番の高級高層マンションに住む優等生テンポ(関)だった。リスキはすぐに仲間になるが・・・テンポはリスキとの確執のために入会を断る。
テンポの住む高級マンションは・・・リスキの親の元・職場だった。工場がつぶれマンションが建ったのである。
そのことに引け目を感じつつ、テンポは高校進学をしなかったリスキ、大学進学をしないワラを「負け犬」と決め付ける。
しかし・・・親の決めたレールを走るテンポは友情を失い、ワラたちの友情に嫉妬しながら、包帯クラブの活動を学校や警察に密告したりする。やがてそのことが負担になりテンポは家出し自殺を仄めかす行動をとる。
ここから、物語は高所恐怖症をターゲットにしたサスペンス展開である。テンポは長身だが自殺方法は高層建築からの投身の未遂前科があるのだ。
1986年4月8日は岡田有希子の命日である。所属事務所のビル屋上から飛び降りた彼女の血は通いなれた道路に流れた。享年18才だった。
数ある自殺方法の中でも高層建築物からの投身自殺はもっとも安価で安易と言えるかもしれない。道具不要である。
それだけに・・・「その人」に死んで欲しくない人にとっては「恐怖」の募る展開である。
テンポはどこで死のうとしているのか・・・ワラは懸命に捜すが・・・発見できない。
そこでディノは町で一番高いビルに登り・・・屋上で無数の包帯を風になびかせるのだった。
空撮でとらえた映像は・・・少年たちのせつない命への希求のシンボルである包帯を無数の白い糸として表現する。
それを見たテンポはワラとタンシオ・・・そしてリスキの元へ戻っていくのだった。
やがて・・・最後に残ったディノの悲劇が語られる。ディノには一年前にデブのマイウー(平沢賢人)とヤセのツッコミ(小野賢章)という親友がいた。三人はただ、仲のいい友達だと思っていたディノだったが・・・三人で遊ぶ約束をしていたある日、たまたまディノが行けなくなり、マイウーはツッコミを刃物で刺したのである。マイウーは矯正施設送りになり、ツッコミは下半身不随になってしまった。
ショックでその事件から目を背けようとしていたディノだったが・・・ワラたちとの出会いを通じて事件と向き合う決心をする。
マウイーはただ・・・自分より幸せなツッコミを憎しみ衝動的に殺意を覚えただけだったことを知ったディノは・・・身体が不自由になったツッコミの住む橋の向こうの家を訪れる。
そこに待っていたのは・・・屈託のないツッコミのツッコミだった。
文学は所詮は普遍にはならない。文学は文学を読み取る能力のあるものを対象にした偏りを持っている。そこがどうしても欺瞞的にならざるを得ないのである。
それでも・・・語るものは目指すだろう・・・死ねと言うよりも生きろと伝えることを。
もちろん結果は定かではないけれど。
どうして歴史上に言葉が生まれたのか
太陽 酸素 海 風
もう充分だった筈でしょう
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木曜日に見る予定のテレビ『ゴーストフレンズ』(NHK総合)『黒川智花のリセット』(日本テレビ)『木更津キャッツアイ ワールドシリーズ』(TBSテレビ)ぶっさん・・・しぶといよね。
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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