ミスター・ブレイン復讐のアレゴリー(木村拓哉)宝石泥棒!(綾瀬はるか)チョキの勝利(木下優樹菜)
「幽霊のアレゴリー」と迷ったのだが「MR.BRAINパーで勝つ」よりマシかと思いまして。
ジャンケンで始まり、ジャンケンで終ると言う以上に掃除の姉ちゃん(木下)に敗北した後で脳波の止った九十九(キムタク=誤検索対応)がますますこの世界が九十九の見ている夢にすぎないという疑惑を深めます。
手術後の夢ではなく、現在、手術中なのかもしれません。
脳波が停止したのは一時危篤に陥ったか・・・夢の中の掃除の姉ちゃんは吸引の象徴かもしれません。
そういう意味では九十九ご愛用のペンライト。事故現場で救急隊員が瞳孔の対光反射を確認している記憶の痕跡なのかもしれません。まさに九十九は「死」を判定されている最中・・・と妄想いたします。
で、『MR.BRAIN・第2回』(TBSテレビ090530PM0756~)脚本・蒔田光治、演出・福澤克雄を見た。「第一印象は大切だ」という文言があるわけだが、同じことを「先入観は禁物だ」とも言う。しかし実務をこなすにあたって「真偽に対するあまりにも慎重な態度」は支障をきたす場合もある。大草原でライオンと遭遇し・・・とりあえずライフルをぶっ放す前にそれが本当のライオンがどうかを吟味していると食い殺される恐れがあるのです。
だから人間は「適当」という言葉を珍重するのである。
科学者の前身である錬金術師の死亡率は高い。その原因は彼らが薬物を調合することに熱心だからである。そして人間は味わってみなければ気がすまないのである。こうして錬金術師たちは調合した薬物・・・惚れ薬など・・・をペロッとなめてみて即死したりするのでございます。
しかし、人間はやがて「動物実験」という着想を得て・・・楽をすることを覚えたのです。
冗談を言っているかと思う人がいるでしょうが1934年にはキュリー夫人が白血病で没しております。その病因は放射能を研究しすぎたためですから。
ともかく、九十九に実験動物として指定された由里(綾瀬)はムキーッとなりながらも憧れの科学者を目指して「科学者なら解明してよ」とチームに号令をかけるのです。
まあ、科学者の多くは学者バカですからちょっと挑発してやればすぐに乗ってきます。もちろん、男性の多い職場なので由里の言うことに下半身が反応しているわけです。
九十九が博士号を持っているかどうかは謎なのですが、とにかく、博士の助手として新たなる第一歩を踏み出したのです。
さて今回の場合、第一印象とは「すでに解決した事件である」と言うことです。
犯人が逮捕され取調べが行われ裁判も終了し判決も出て死刑が執行された事件がまだ謎に包まれている・・・というのですから大事です。ものすごくたくさんの人々がとりかえしのつかないことをしてしまったと涙にくれるのでございます。
それを「解決していないとする根拠」は何なのか?・・・それは死刑で死亡した男・竹神(Gackt)が処刑後に発生した新たな事件の容疑者として浮上したためです。
九十九はこう考えます。「幽霊が人を殺すことができるかどうか」です。
幽霊は妄想の産物だという先入観にとらわれていては出来ない発想なのでございます。
ここで竹神事件を整理しておきましょう。
犯人である竹神は「羊たちの沈黙」で有名なドクター・レクターことハンニバルのコピーキャット(模倣犯)あるいはパロディーということです。①快楽殺人犯である ②殺した人を食べちゃう(ただし生でかじる場合もある) ③自殺防止マスクを装着 ④変な拘束具で生活・・・など確信犯です。もちろん、高度に発達した知性を持ち、高い身体能力を持った文武両道の犯罪者です。
竹神は四人の人間を殺害し食用としたことで逮捕され一年前に絞首刑に処せられました。これが過去の事件。
しかし・・・新たなる事件として北千住署の刑事・津村(神保悟志)が何者かに殺害され凶器や現場から竹神の指紋が発見されたために・・・事件は混迷するのです。
なぜなら・・・竹神は「私は死なない・・・蘇るから」と予言していたのです。そして津村は竹神事件の捜査を担当した一人でした。
そして、竹神事件の捜査に加わった鑑識官・高田(福井博章)が竹神の指紋の残る凶器で殺害され・・・九十九は思わず合掌するのです。
そして「南無妙法蓮華経」と唱えるのです。最近では様々な宗派があることに配慮してお経を口にしないのが原則ですので新鮮でしたな。しかし、「南無阿弥陀仏」の人々とか「南無帰依仏南無帰依法南無帰依僧」の人々とか「アーメン」の人々とかがクレームをつける恐れはないのです。なにしろ、視聴率24%超のスターの演じていることですから。誰が神様仏様のような存在に文句が言えましょうか。
さて・・・別に竹神が墓場から蘇り、次々に犯行を重ねるという展開でも問題とはないのですが、さすがに世間には「死んじゃった人間には何にもできない」という先入観がありますので真犯人が登場します。
ところで・・・アレゴリーとは寓意をひめた物語とも言うべき言葉ですが・・・たとえばこれもまたアレゴリーと言えるでしょう。
ミステリに登場するゲストが小雪=彼女が真犯人である
生前の竹神事件における第四の犠牲者の婚約者・久美子(小雪)の登場です。
死後の竹神事件の犯人を竹神マニアの犯行と断定する丹原刑事(香川照之)は竹神の死刑執行に一役買った久美子の身が危険と考え、警護を志願するのですが、岸川刑事(松重豊)によって阻止されます。
林田刑事(水嶋ヒロ)はそんな丹原を優しく慰めるつもりで激怒させるのです。
その頃、生前の竹神事件のデータを検証した九十九は第1~第3の犯行と第4の犯行の手口が違っていると直感するのです。
アレゴリーでいえば・・・。
第1~第3の犯行=バナナ
第4の犯行=皮ごとバナナ
・・・みたいな感じだと思われます。
さて・・・ここからは世界争奪ゲームです。プレイヤーは三組。三組はここから主導権争いを展開します。第一のプレイヤーたちをリードするのは九十九です。第二のプレイヤーは竹神。そして第三のプレイヤーは久美子。
久美子は復讐の女神です。何故、彼女は復讐するのか。それは婚約者を殺害されたからです。しかし、第一印象では「犯人は竹神」なので・・・彼女が死後の竹神事件に関っている可能性はありません。
そこで・・・九十九は「先入観を破壊」していきます。主人公だからなんでもありなのです。そしてたちまち・・・久美子の婚約者を殺したのは竹神ではないという結論に達します。
つまり・・・逆に言うならば「幽霊なんかいない」という先入観に勝てなかったのです。
そして・・・九十九の直感は岸川刑事殺害事件の発生によって裏付けられるのです。
死後の竹神事件の犠牲者・津村・高田・岸川は生前の竹神事件の第4の被害者を最後に目撃したメンバーだったのです。「第一発見者を疑え」というセオリーの裏でございます。
さて・・・すべては九十九の勝手な推測ですが、主人公のやることなので世界はどんどんそっちの方向に持っていかれます。なぜ・・・死んだ竹神の指紋が死後の事件現場や凶器に残されているのか。データバンクが書き換えられていたから・・・です。もうやりたい放題です。
なぜ、データは書き換えられたか・・・まずいことがあったから・・・そうです、久美子の婚約者を殺したのは死後の竹神事件の被害者たちだったのです。
ここで世界の支配者であることを望む異常者・竹神がゲームに参戦します。
その最後のゲームの結果を記す前に、ここで脳について考えてみます。人間には心があると思われていますが、心というものが脳と関係しているというのも予想の範囲内です。
しかし、脳は心ないこともします。たとえば呼吸をしたり、計算をしたりです。そこで人は脳の中の脳を求めました。脳の中に・・・呼吸をさせたり、計算をさせたりする司令室があるのではないかと考えたのです。・・・しかし・・・驚くべくことに現在も脳の中の脳は発見されていないのです。
人間がチームで動く場合にリーダーシップが問題になることがあります。チームの中の脳は他のメンバーの脳が自分の命令通りに動くことを求めます。つまり、他の人の脳を手足の如く使うのです。
今回、九十九は科学警察研究所を自分の意向に沿わせるために助手の由里を用いて指示を出します。それはつまり、九十九の脳が全員の脳をコントロールしているということになります。
同様に竹神もまた「死後も殺人を継続させる」ために他人の脳をコントロールするのです。竹神は刑事たちの罪を自分が引き受けるという計画を持ち出し、刑事たちに様々な事後工作を行わせます。そして、次にすべてを復讐の女神である久美子にリークして・・・彼女を死後の殺人の実行犯に仕立て上げるのです。
この場合、第2と第3のプレイヤーは共通の目的のために相互依存をするわけです。竹神は「死後の殺人」を実現できるし、久美子は「復讐」を果たすことができる。
そして第1のプレイヤーは孤立します。しかし、主人公だから大丈夫です。ちょっとした反則(犯人の宝石を拝借して犯行現場に置き犯人に発見させ隠匿させる)をして復讐の女神を罠にはめてしまいます。
けれど・・・これは支配権をめぐるゲームなのです。九十九は犯人を逮捕したけれど、竹神は死後の殺人を完遂、そして女神は復讐を果たしました。
はたして・・・誰が勝利したと言えるのでしょうか。
脳の中の脳がどこにもないように・・・じゃんけんで三人がそれぞれにグーチョキパーを出した場合のように・・・この事件はドローなのですね。
それでも生きている二人のプレイヤーは言葉を交わします。
「復讐心が幽霊を生み出すのね」
「死者は生者をあやつるものなのです」
そして・・・人々は世界を支配する夢に追われ・・・脳の中の脳を捜し求めるのでございます。
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ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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