あなただけほんまに大切やもん天地人(妻夫木聡)もうこっち来いや(長澤まさみ)
大河ドラマといえば主人公の年齢不詳はいつものことなのだが・・・今回はちょい悪坊や・妻夫木くんが主人公なので・・・いくつになっても甘ったれのイメージが続いています。
直江兼続は永禄3年(1560年)の生まれとされていますので、謙信の富山城攻め(1576年)で16才。御館の乱(1578年)で18才。直江家相続(1581年)で21才。家老就任(1584年)で24才。そして上洛し従五位下山城守となった現在(1586年)で26才である。
この後、豊臣姓を賜り豊臣兼続となるのが1588年で28才。ここで妻夫木聡の実年齢となるわけである。だから、現時点ではまだ若作りをしていることになる。ただし、戦国時代の見た目年齢と現代の見た目年齢をどう考えるかはそれぞれの教養の土台によって異なるだろう。名門・樋口家の一員で上杉家小姓を経て越後宰相になったという経歴を考えればそれほど辛酸をなめていないので若々しくてOKという考え方もあれば・・・越後半国の家老となって五年・・・もう少し貫禄ついていてもいいという考え方もある。
さて・・・ここから・・・小田原征伐(1590年)で30才。朝鮮出兵を経て佐渡金山代官就任(1595年)で35才。会津移封を経て関ヶ原の合戦(1600年)で40才である。もはや中年なのであるが・・・さてどうなるのか。とにかく時代は江戸時代となり、大阪の陣(1614年)で54才。さらに元和5年(1620年)で病死したのが60才である。
出会う女子が一目で恍惚となる兼続くんは・・・60才になってもあの前髪足らして若々しいヘアスタイルを維持しているのだろうか・・・。確認する日がくるのが恐ろしい気もするのです。
去年のドラマ的な篤姫(宮崎あおい)の老い方は見事だったよなぁ。
で、『天地人・第26回』(NHK総合090628PM8~)原作・火坂雅志、脚本・小松江里子、演出・一木正恵を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。「愛の詩人」についてのお言葉が「字」の一言。蔑みも拍車がかかってきました。そしてあらすじは三行・・・多めです。千利休の大予言・・・三成が・・・愛の詩人をしたくもない戦争に巻き込んでいく旗の模様です。「私たちの兼続」が積極的に戦なんかしない・・・という一部愛好家の戦略が見え隠れして反吐が出るわっ・・・でございます。早くも興味は再来年の大河「江姫」へ・・・。まあ・・・死を覚悟して兼続を愛する景勝とか・・・相当、気持ちを切り替えないと単なる「やおい」に見えたりしますけれどもーっ。秀吉と家康のタヌキ合戦とかは妙に定番ではっきり言って・・・そこだけ別ドラマですなーっ。レベルで言うと歴史バラエティーの再現ドラマ風にしかじいやには見えませんでしたーっ。今回もお口直しの必要な方は山県昌景の秘密をお楽しみください。
で、天正14年(1585年)の上杉上洛の夏は続く。これに続く徳川上洛をめぐり、秀吉と家康の政治的駆け引きは熾烈を極めていくのである。秀吉は自分に自覚があったかどうかは別として平清盛の血を引いている。秀吉の関白就任とともに大政所と呼ばれることになる秀吉の母は関氏であり、関氏は平氏である。立身出世を強調するとともに徳川政権によって出生をかなり汚された気配のある豊臣氏である。秀吉の父は織田信秀の足軽大将である木下氏であり、大政所が夫の死後、嫁したのは信秀の文化顧問だった竹阿弥なのである。諸国行脚後の秀吉が信長の元で異例の出世を遂げるのは実は異例でもなんでもないという考え方がある。秀吉が同時代の武将たちと伍して並々ならぬ文化的素養を持っていたことは明瞭である。そして・・・大阪に拠点を作ったのは遺伝子のなせる技だと言っても過言ではないだろう。そこは平清盛が海外雄飛の夢を見た福原京の再来なのである。
それに対して・・・源氏である徳川家康が・・・秀吉の死後・・・豊臣家を滅亡に追いやる過程もまた源平合戦の再現となっていくのだ。
家康は東海(太平洋)に面した三国の主(もちろん甲斐と信濃もほぼ手中に治めている)として三河を岡崎城を出発点として、遠江の浜松城を経由し、駿河の駿府城を各国の拠点として考えた。この時点における要は浜松城であるが、最前線としてかって人質として過ごした今川家の居城・駿府城の改築を始めたのが前年である。この時点で家康は同盟中の隣国・北条氏との開戦を考えていたということである。駿府城は四年後に完成し、そして翌年には小田原征伐が始まる。家康の計画性・・・恐るべしである。
足軽大将の子として生まれ茶坊主に育てられた秀吉と君主の子として生まれ人質として育った家康。この二人の天才の駆け引きは余人の想像の範囲外にある。
秀吉は家康を親族として味方につけるため・・・関白の妹を嫁がせるという究極の政略結婚を展開する。家康は結婚には応じるが上洛は拒否。そのために秀吉は母を人質として追加するのである。家康は万策尽きて秀吉に臣従するのだった。
その駆け引きの途中・・・家康に嫁ぐための朝日姫の輿入れ列を狙うものがあった。秀吉・家康の手打ちを一刻でも遅らせたい九州の覇者・島津家の放った忍び集団・くぐり衆である。
秀吉の権力の最前線は大垣城にある。そこから緩衝地帯である尾張を経て三河に入れば家康の王国だった。織田信雄の支配する尾張が輿入れのためのもっとも難所と予想された。
輿入れ行列は秀吉の甥・秀次を名目上の奉行とするが、実際に指揮を司るのは甲賀忍び衆を率いる蒲生氏郷である。
行列の前後左右は秀吉自慢の鉄砲忍びが囲み、その周囲を騎馬武者、槍衆が護衛する。もちろん、さらにその外側には忍びが結界を張っている。
外側の護衛は土地を治める武将が連携して交替するが、中核の護衛陣は大阪・京・近江・尾張・三河・遠江まで朝日姫の輿を守護するのである。尾張・三河の国境からは徳川の侍衆がこれに加わる予定だった。
もちろん・・・家康の直忍びである服部半蔵影丸配下の草たちは尾張でも不測の事態に備えている。
朝日姫婚姻に同意した以上、秀吉、家康両者の面子のかかった警護なのである。
その鉄壁の護衛陣に無謀にも襲い掛かる薩摩・くぐり衆だった。
指揮をとるのはくぐり衆一のくのいち・普賢。
戦船で東海を渡ったくぐり衆は伊勢・長嶋に上陸すると先導する草(潜伏間者)に導かれ、大垣城から南下し、津島城から那古屋城へと東に進路を変えた輿入れ行列を追う。尾張領内は信長の整備で街道が発達し・・・複数のルートがあったが・・・行列の規模が大きいために主要路を選ばずを得ない。行列の行方を探知することは難しいことではなかった。というよりも慶事ということで派手に装われた花嫁行列は街道筋の評判になっていたのである。
普賢は探査のために放った忍びと合流しつつ、任務の成功を確信した。
「これが上方の戦か・・・たわいもない・・・」
側に控える巨体の忍び、不知火は同感の意を示し、笑みを浮かべた。
夏の陽射しが尾張の街道沿いの原野に注がれている。それがまだ中天に達する前に・・・くぐり衆は行列まで一里に迫っていた。
しかし、そこはすでに・・・朝日姫警護陣の内側だったのである。
不穏な気配の集団はすでに伊勢湾から目をつけられていた。そこは秀吉の海賊集・九鬼氏の縄張りであるから当然だった。
その見慣れぬ集団を伊勢の忍び衆が監視し・・・行動は逐一報告されていた。
朝日姫の輿の背後に控える馬上の蒲生氏郷に・・・甲賀忍びの長・伊庭貞時が駆け寄る。
「いかがした・・・」
「薩摩の田舎忍びどもが・・・仕掛けてまいりました・・・」
「なんと・・・それでは本気で朝日姫様を狙っておったのか・・・呆れたものよ」
「すでに忍び戦の始まりし模様・・・ご用心召されよ・・・」
蒲生氏郷は愉快そうに微笑んだ。その時・・・巨大な轟音が西南に生じた。
行列への突入体勢をとりつつあったくぐり衆に最初に襲い掛かったのは伊勢の滝川衆だった。一益に育てられた鉄砲忍びはすでに秀吉によって支配されている。百人ほどの鉄砲衆は集結しはじめたくぐり衆に一斉射撃を行った。
その瞬間、くぐり衆は散った。くぐり衆もまた基本的に鉄砲忍びである。日本に鉄砲が伝わったのが種子島である以上・・・その研鑽がもっとも進んでいるのは彼ら薩摩の忍びであるともいえた。彼らは鉄砲の弾丸ギバチの術を会得している。弾丸ギバチとは鉄砲の発射と射線を読み、鉄砲玉をかわす術である。
しかし、鉄砲忍びにはそのギバチを読んで、狙う交わし狙撃の術を使うものもいる。
二人のくぐつ衆が銃弾の餌食となった。しかし、驚愕はその次の瞬間に訪れた。残された二十人ばかりのくぐり衆が反撃に転ずると滝川鉄砲衆は一瞬で殲滅されてしまったのである。
すでに鉄砲を背負い、駆け出したくぐりのくのいち霧島が叫ぶ。
「見たか・・・薩摩乱れ筒」
くぐり衆は全員が射殺した滝川鉄砲衆の死体を踏み越えていく。
遠めで観戦していた服部半蔵影丸は息を飲んだ。
「一人で五人を・・・しかも一瞬でか・・・」
すでにくぐり衆は護衛の第二陣に殺到していた。
そこを守るのは蒲生配下の甲賀望月衆である。
滝川衆の最後を見たために散会遮蔽の構えで甲賀衆は突撃するくぐり衆に応ずる。しかし・・・甲賀衆の鉄砲はことごとくはずれ、くぐり衆は隠れた敵を確実に射殺していく。
望月衆の頭・山中の吉次は咆哮をあげると抜刀し、くぐり衆に斬り込む。
たちまち、複数の銃弾が吉次を襲うが、跳弾音を残して弾丸はそれていく。
「ふ・・・鉄砲鎧か・・・」くぐり衆のくのいちの一人、屋久島はつぶやくと銃を手槍に持ち返た。そして接近戦でくぐり衆の一人を倒した吉次に襲い掛かる。殺気を感じた吉次は半身を逸らし屋久島の必殺の槍をかわす。しかし、屋久島は攻撃の手を緩めない。槍は引かれては繰り出され、その動きには遅滞がない。まるで射線に身をさらしたように吉次は防戦一方となった。
吉次の息が乱れ、次の一撃をかわせぬと悟った瞬間、急激に殺意が消え、吉次は跳んで身を引く。
矢によって胸を刺し貫かれたくのいち屋久島は一筋の煙を引く。
戦陣の背後から氏郷の家来・吉田重秀が弓を取り爆雷矢を放っているのである。
屋久島は地面に倒れ伏すと爆砕された。
すでに周囲には血と人間の内臓が放つ死の匂いが広がっている。
吉田重秀の爆雷矢はくぐり衆の進撃をついに食い止めた。
と思えた瞬間・・・巨体の忍び・・・桜島と・・・巨体のくのいち・・・不知火が先頭に踊り出る。
吉田重秀は驚異的な速射で爆雷矢を二人の忍びに送り込む。
その時、吉田重秀は目の前が真っ赤に染まるのを見た。
爆雷矢を飲み込んだ巨大な火球がそのまま、吉田重秀を包み込む。
一瞬にして重秀は炭化した。
「見たか・・・」と桜島が叫ぶ。
「秘術・大火魂」と不知火が叫ぶ。
二人はそれぞれに超自然的な火の玉を行列に投げ込みながら・・・輿に走り寄る。
行列は大混乱に陥った。
その時、輿の廉があがった。通常よりかなり大きな輿であったが・・・その内側から現れたのは巨体の桜島や不知火よりもさらに巨大な朝日姫であった。朝日姫はニヤリと笑った。
「うるさいの・・・うまい(午睡)もさせてもらえぬのか」
次の瞬間、巾一尺の巨大な十字手裏剣が宙を舞った。
唸りをあげて滑空した手裏剣は桜島と不知火の首を胴体から切り離すと朝日姫の手元に戻っていく。朝日姫はそれを無造作に受けとめるとのっそりと輿に戻る。
やがて・・・行列は何事もなく進み始める。
呆然とそれを見送ったくぐり衆の普賢は包囲の輪が迫っていることに気がついた。
普賢は朝日姫の襲撃の失敗を悟る。しかし死地を感じた普賢の目は金色に輝きだした。
関連するキッドのブログ『第25話のレビュー』
火曜日に見る予定のテレビ『谷村美月の悪魔のゲーム』(日本テレビ)『沢村一樹のカイドク』(フジテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
正直、今からでも方向を修正して
景勝をメインにした方がいいんじゃないかと
思えてしまう今日この頃。
秀吉と家康の化かし合いとか
三成の秘めた思いとか
利休の予想とか
史実に沿った出来事を予感させるようなものが
いっぱい出てきてますが
そこに兼続が絡む余地は一切ないという
主人公不在が続いていくんでしょうねぇ。
さて、こちらの忍の戦いは面白いですね。
ここにきてようやく普賢の意味が分かってきました≧∇≦b
そうして、血は幕末に受け継がれていく訳ですね。
さて、こちらでは北条幻庵について調査中で
その中で幻庵の青春時代を書いた「千年の山の太子」が
なかなかに面白いです。
若き頃の幻庵が京都に行った折に知り合った二人の人物
一人は山本勘助
もう一人が九英承菊
で、勘助は後に甲賀に住む兵法家・張九道を師にもち
甲賀は新羅明神と繋がりがあるので
新羅三郎義光を祖とする武田に近付くという展開にシビレます。
まぁ物語が若き頃の幻庵がメインなので
大河にするには尺が持ちませんので(; ̄∀ ̄)ゞ
それ以降は只今妄想中です ̄▽ ̄
投稿: ikasama4 | 2009年6月30日 (火) 23時05分
✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥
そうですねえ・・・もう少し
緻密に主人公としての直江兼続像を掴んでもらわないと
今、は単に妻夫木くんがそこにいるだけなんで・・・。
身体障害者と交際していたけど
重くなってポイ捨ての妻夫木くんとか
ブラックジャックに憧れているけど
現実に負けそうな妻夫木くんとか
スキャンダル流出をひたすら恐れるリトルな妻夫木くんとか
もう・・・そういう現代劇のいつもの妻夫木くんで
ちっとも直江兼続じゃないのでございます。
だから正史にはからめない・・・のでございましょう。
まあ・・・駿河に浜松城のあるドラマですから・・・。
そうです。普賢は篤姫の遠いご先祖様なのです。
ふふふ・・・海野弘氏の「北条幻庵青春伝」ですな。
後北条氏は意外に主役になっていないのですな。
戦国時代の初期から終焉まで
完全網羅の戦国大名なのに・・・
力こそ正義なり
下克上の見本が
現代に不向きなのかも。
そういう意味では北条五代につかえた
幻庵はそのすべてを見つめた人物。
これは妄想の炎がめらめら・・・でございます。
投稿: キッド | 2009年7月 1日 (水) 19時04分