浪花節だよ天地人(妻夫木聡)忍びの里で生れた女(長澤まさみ)
さて・・・もう・・・どこへ向かっていくのか検討もつきません。
まず、基本的に上杉家はすでに羽柴家の家来になっています。まもなく羽柴家は豊臣という新姓をやんごとなき筋から賜るわけです。その名を使って言うと豊臣秀吉と上杉景勝は主従関係になります。やがて上杉景勝が大老という家老職につくのは・・・つまり景勝が豊臣家の重臣だからです。同様に直江兼続は上杉家の家老です。
上下関係は豊臣秀吉→上杉景勝→直江兼続となり、秀吉から見て景勝は直臣、兼続は陪臣ということになります。
つまり、秀吉が兼続を家来として求めるということは兼続として出世を意味するわけです。
それを兼続が拒否する理由は・・・それが罠だから・・・ということになるのですが・・・それを説明してもらわないとね。
第一に出世しても厚遇されるとは限らないという問題があります。同時期に徳川家からは石川数正が引き抜かれていますが、そして数正は秀吉に飼い殺しにされます。つまり徳川家にあっての数正には価値があるが、そうではない数正には価値がないということです。もっと端的な例では景勝の義理の弟である畠山義春も引き抜かれてしまうのです。もちろん飼い殺しです。
そういう目で見ればそう簡単に引き抜かれるわけにはいかないわけです。
第二に兼続自身の問題があります。上杉家では家老という重職についてそれなりの権限を持っているわけです。しかし、豊臣政権の直臣になったらどうでしょう。出世できたとしても豊臣家の普代の大名のような信頼も得られないし、景勝のような外様大名としての実力もないわけです。なにしろ・・・主家を裏切ったという経歴になるわけでしかも裸一貫ですから。もちろん・・・主家で冷遇されていれば心機一転のチャンスと考えられるわけですが・・・景勝と兼続のような主従が親身一体となっている場合・・・マイナス材料の方が大きいわけです。
だから・・・いえいえ・・・せっかくの申し出ながら・・・ご遠慮しますということになるわけです。
それを・・・真田の忍び(架空)がああだこうだ・・・利休の娘(架空)がどうだこうだ・・・なんなんだっ。
で、『天地人・第25回』(NHK総合090621PM8~)原作・火坂雅志、脚本・小松江里子、演出・一木正恵を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。秀吉の基本戦略である人材引き抜きによる敵勢力の弱体化の解説あり。そして、今回はダメな大河ドラマのここがダメ!ダメ出し10連発のサービスあります。モヤモヤしている方はスカッとできます。旅行けば駿河の国に茶の香りです・・・何のこっちゃ。そして超お得だね「サラリーマンNEO」より超戦国武将・色香恋実の書き下ろしイラスト大公開です。これは・・・今年の最高傑作にノミネートされる出来ばえでございます。見つめられたらメロメロになりそうです。まあ・・・一年がこんなに長く感じる大河は史上初でございますよね。そして知る人ぞ知る戦国ナンバーワン波乱万丈武将・水野勝成の秘密もお楽しみください。
で、天正14年(1586年)のつづきである。本編は歴史的事実の積み重ねが不明なので季節感もまるでないようなのだがおそらく夏頃だと思う。旧暦六月の下旬のあたりです・・・きっと。さて、日本史上最高の革命児である織田信長の権力基盤を継いで日本史上最高の独裁者・豊臣秀吉がこの時期に作り上げたもの。それは近江・山城・摂津に整備された首都圏である。元々、近江、京、難波は代々の都の置かれた土地柄である。しかし、長らく続いた戦国により都市機能は壊滅状態にあった。それを信長と秀吉が再構築し・・・近畿地方に一大人口密集地を作り出したのである。それが秀吉の意図した中央集権化構想なのである。秀吉にとって最初の重要拠点とも言える近江長浜から京の都を経て摂津大阪城にいたる大都市圏は日本最初の首都を構築したに等しい。近江周辺には鉄砲工場を中心とした軍事産業を興し、京都に文化の花を開かせ、大阪に軍事・政治の中心を置く。そしてそれは姫路、堺の経済拠点へと手を広げ、首都関西を完成させる。これが秀吉の「浪花の夢」である。
大阪城とその周辺には秀吉傘下の大名屋敷が続々と新築され、その人口を目当てにした物資が流れ込み、それがまた人を呼ぶという循環で・・・逢坂の街は活気にあふれかえった。やがてその盛況を見た日本史上最高の経営者・徳川家康は後にまったく同じことを江戸で始めるのである。こうして日本には関西と関東というふたつの拠点が生れるのだった。
大阪のにぎわう街角に「翡翠楼」と看板を掲げた楼閣が建ったのは去年のことだった。楼閣の主は元は武将だったという噂があるが・・・そこに酒と女を目当てに集まる男たちにはどうでもいいことだった。そこに上がるためにはそれなりの羽振りのよさが必要となるが、空前の関白景気に沸き返る大阪の街は小金を持った男たちにことかかないのである。
あるものは屋敷の増築に関る大工たち、あるものは屋敷の主に従う有名無名の侍、あるものはにわか成金となった商人たち・・・そういう者どもが美酒と美女の香りに誘われて一夜の宴をくりひろげるのだった。
その中に・・・鉄砲商人を装って越後の与六と名乗る直江兼続が紛れ込んでいる。与六は久しぶりに上杉の宰相という重責から逃れ、一人の忍びに戻っていた。お供をするのは重蔵という末弟である。父・兼豊が坂戸城下の農民の娘に産ませた庶子で齢十六になる。もちろん・・・樋口衆の忍びである。手裏剣の名手だった。
その二人の待つ個室に遊女姿の初音が姿を見せた。
飛び加藤に育てられた真田昌幸の姫である初音は史上最強のくのいちである。そして、樋口一族と信濃忍びの縁により、若き日の与六に忍びとしてうかみ(斥候)の術を授けたのも初音だった。それから十年の月日が流れている。当時、重蔵と同じ年頃だった与六もすでに齢二十六となっていた。当時、初音は与六とさほど変わらぬ年頃に見えたが・・・驚くべきことに十年たった今もまったく変わらぬ容姿を保っていた。
与六は平伏したい心持だったが、客として忍びの仮態を装っている以上、ただ目礼をするばかりである。
「ふふふ・・・与六よ・・・いい男ぶりだな」
初音は与六に酒を注ぎながら忍び言葉で囁く。与六は下半身が熱くなるを感じた。供の重蔵はすでに恍惚となって初音に目を奪われている。
「父上よりの伝言がある・・・」初音はちらりと重蔵に流し目を送り、それだけで重蔵を昇天させながら言葉を続けた。「いよいよ秀吉殿下の妹・朝日姫が遠江浜松城に下ることとなった。この行列を狙うものあり・・・真田忍軍は近江から美濃への護衛を担当するが、これに越後衆の手を借りたいとのこと・・・」
「なるほど、信濃はすでに徳川の勢力範囲・・・これの用心でござるか・・・」
「さにあらず・・・」初音は微笑んだ。「家康公が秀吉殿下に臣従するを好まぬものがいるということじゃ・・・」
「すると・・・風魔が・・・」与六は北条配下の忍び衆を思い浮かべた。上杉・真田が戦国の生き残りを賭けて同盟したように、徳川と北条も同盟中である。上杉・真田はともに秀吉の傘下に参入したが、徳川・北条は表面上は秀吉に敵対している。その徳川が豊臣と婚姻関係を結ぶのは北条に対する裏切りということになる。
「ふふふ・・・そうとは限らんのじゃ・・・秀吉殿下の天下は大きゅうなったものだからな」
与六は上杉が敵対中の新発田重家を思い浮かべた。その背後に影が見える奥羽の覇者・伊達政宗のまだ見ぬ姿にたどりつく。しかし・・・その手が近江まで延びてくるとは想像つきかねた。すると・・・と与六は思う。西か・・・。
初音は与六の心を読みつつ小さく頷いた。「中国にて毛利を臣従させ、四国にて長宗我部を臣従させた殿下が次に狙うは九州征伐よ・・・。徳川の臣従を急かせるのもそのため・・・。豊臣・徳川の手打ちがなれば・・・九州統一まであと一歩という薩摩の島津一族は長宗我部と同じ道を歩むことになるのじゃ」
「では・・・九州から・・・何者かが・・・参ると?」
「ふふふ・・・島津には水軍がある。そして・・・先代の島津忠良が育てた・・・恐ろしき忍軍があるのじゃ・・・その名はくぐり衆」
「島津のくぐり衆・・・」
その時、初音と与六は同時に息を飲んだ。楼閣の天井から殺気がほとばしる。
「主さん・・・ちょいと堪忍しておくんなはれ」初音は遊女として声を出すと・・・奥の間に下がった。
「いかがした・・・」という初音の問いに答えるのは天井裏の穴山小助である。「・・・ネズミが一匹まぎれこんでいましたが・・・退散しました・・・佐助が追っております」
楼閣に忍びこんでいたのは伊賀の才蔵だった。ただし・・・初音たちを目当てに忍び込んだわけではない。楼閣に金の匂いをかぎつけて忍びこんだのである。才蔵は盗人に落ちている。同じく、秀吉暗殺に失敗し伊賀の里の抜け忍となった五右衛門はやり手の盗賊としてすでに名をあげはじめているが才蔵はどうも・・・金運に恵まれないようだった。
今日も・・・金を目当てに忍びこんだ楼閣が・・・真田忍びの巣窟だったのである。
街を抜け・・・森を求めて逃げる才蔵を執拗に狙う追っ手がある。
ようやく・・・暗い森に紛れ込んだのだが・・・追っ手は速度を増す始末だった。
「うぬ・・・猿飛びの術か・・・」才蔵は相手が只者ではないことを知った。しかし・・・と才蔵は思う。俺は霧隠れ才蔵だと。
だから真田佐助は・・・突然霧に包まれて・・・生れて初めて尾行に失敗した。
その頃・・・太平洋を一隻の戦船が東に向かっていた。
その船首に立つのは薩摩忍び・・・くぐり衆の首領・・・普賢だった。
普賢はくのいちだった。その側にはくぐり衆一の鉄砲忍び・不知火が控えている。
「ふふふ・・・いい風じゃ・・・忍び戦とはいえ・・・こうも穏やかじゃと・・・なにやらウキウキしてくるのう・・・妾は・・・噂に聞く大阪の賑わいもちょっと楽しみになってきたでごわす」
「普賢様・・・ぐふぐふふふ」不知火は巨体を揺らして・・・若く美しい首領に同意を伝えた。
しかし・・・待ち受ける秀吉の忍びは予想外の強敵だったのである。
くぐり衆は飛騨の黒影他、多くの忍者を倒したものの・・・朝日姫の強奪には失敗したのだった。
関連するキッドのブログ『第24話のレビュー』
火曜日に見る予定のテレビ『アタシんちの男子』『白い春』(フジテレビ)
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皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
そうですねぇ。
徳川家にあってこその石川数正ですからね。
ここに
「立派な器なれど、人にあらず」という
景勝の言葉が生きてくるんですが
ここで建て直そうにも
序盤でグダグダにしてしまったために
果たして何人がこの台詞の意味を分かっていたのか
それくらい、つくづくもったいないですねぇ。
もうそんなに架空の人物で物語がやりたいなら
色香さんを登場させて欲しいものです。
おそらくその時には彼が引導を渡してくれる事でしょう ̄ー ̄
そういやぁまだ本編は新発田の乱が終わってなかったんですね(; ̄∀ ̄)ゞ
さてさて次回、こちらでは今度取り上げる武将として
数々の戦を戦い抜き、主を守るために長篠の地で最期を遂げた
「山県の赤備え」を率いた武将・山県昌景
そして、北条五代に仕え
北条の最長老とも陰の軍師とも風魔の陰の頭領とも言われる
北条幻庵を予定しております。
投稿: ikasama4 | 2009年6月22日 (月) 20時28分
もちろん、妄想的には
石川数正も
家康の放った隠し目付けだという
逆転の発想もあるわけです。
そして秀吉もそれを承知で
飼い殺しにするみたいな。
そういう裏の裏で
ワクワクとかは期待しませんが
せめて北条の夜の贈り物になったらなったで
しっかり篭絡してこんかと
ドラマ版初音に
飛び加藤が草葉の陰から叫んでいるような
気がします。
歴史というフィクションの
史上の人という有名キャラクターを
使った創作ですから
何しようが作者の自由ですが
中国発の茶道を
和の芸の極みまで
押し上げた千利休なんかも
もう少し大切に使ってほしいなぁと
思ったりみします。
今回はなんとか景勝が見せ場を
作ったのですが
自分に惚れた女の始末を
自分に惚れた女に頼む
自覚なき色事師な兼続・・・。
だ、誰の趣味なんだ・・・
でございますよ。
作家の元へ色香様を配送する
手続きはどこでとればよろしいのでしょうか。
シャラララ~ン。
忍びの攻防戦シリーズが
しばらく続くと思うのですが
今回、妄想倉庫に篤姫を捜しに行って
発見した時に
ちょっとグッときたことを
報告しておきます。
イラストの底力でございますね。
考えてみれば翠様篤姫だったので
このあおい篤姫はマップ初登場。
なんとなくうれしゅうございました。(; ̄∀ ̄)ゞ
投稿: キッド | 2009年6月22日 (月) 23時02分