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2009年6月20日 (土)

差別とか偏見とかもうどうでもいいんです。ボクはとりかえしのつかないことを(松本潤)私のために微笑んで(新垣結衣)

空気が変わった。もちろん・・・そこにいたる経過があまりにも澱んだ空気の中で・・・異臭に満ちていたためにその名残はあるのだが・・・新鮮な空気が窒息しかかった体に流れ込んでくるのである。

もう・・・セリフの一つ一つが生き返っています。

たとえば・・・脚本は撮影スケジュールのために本編の進行通りに書かれているとは限らない。だから、すでに先行して収録した場面では旧脚本のままである可能性もある。しかし、トータルで考えるとその汚れた場面さえも再生可能になるのである。

とにかく・・・脚本家変更によって・・・見るのが苦行だった作品が息を吹き返した気配はあります。・・・ま・・・来週、最終回ですけど。キッドは1話の時点であらゆる危惧を提示しておきましたので・・・あ、やっぱりとしか思いませんけど。

で、『スマイル・第10回』(TBSテレビ090619PM10~)脚本・篠崎絵里子、演出・石井康晴を見た。今回、これまでにあえて隠されいたいくつかの事実が明らかになる。本格ミステリではないのでいくらでもアンフェアでいいのだが、それを隠していたことと、隠さなかったことがどれほどドラマの深みを変容するかということを中心に考えたい。

まず、林(小栗旬)のおいたちの問題がある。林はすでに殺人者であり、しかもビトに濡れ衣を着せた張本人であるとして描かれてきた。これによってビトが本当は前科者ではないということをお茶の間に伝え・・・お茶の間が冷たい世間に変わってビト(松本)の味方になるように仕組まれていたのである。

しかし・・・今回、林の父親である元・警察庁・次長の誠一郎(竜雷太)が家庭内暴力の常習者で林はその犠牲者であったことが林を残し、夫から逃げた妻・・・林の母親から語られる。

もちろん、それはビトが犯した罪の重さをより強く感じたことをお茶の間に示すには効果的である。・・・しかし、それだけなのである。

林の悪魔のような暴力の裏に「事情」があったことをしっかりと提示しておけば・・・たとえばビトが林を殺害してしまった時にすでに悲劇の始まりを感じることができる。

最後にわっと驚かしたいために・・・それを知っていればもっともっとお茶の間に人間の複雑さを味あわせることができる素材を隠しこんでしまったのである。

単なる悪魔のような男を殺してしまうビトと単なる悪魔にならざるを得なかった男を殺してしまうビトではその「せつなさ」がまったく違うのである。

これは「歌姫」でも指摘したことだが・・・このような何を隠して、何を明らかにするかの加減は・・・たとえば起承転結がその日のうちに完結する舞台と何週間かにわたって継続する連続ドラマではまったく違ってくるのである。

舞台「歌姫」を連続ドラマ化したドラマ「歌姫」ではその加減の難しさが充分に感じられたはずの作者(第9回までの「スマイル」の脚本家)が・・・何も学ばなかった証拠がここにある。失敗から学ばないものには成功はなかなか訪れないものだ。

もちろん・・・そういう最も基本的なことを理解しない以上・・・ひとつひとつのセリフはどんどん上滑りしていくのである。

来週最終回となるのだが・・・これがここまで「壮絶な生き様」も「愛と正義」も物語に感じられない最大の理由になっています。最後に・・・あっと驚くそれらがあったとしても・・・ここまでの9時間をその前フリとして使ってしまっては・・・お茶の間が持たないのです。

同じように北見敏之が演じる証拠を捏造してまでビトを犯人に仕立あげる古瀬刑事の心模様も秘匿されてきました。彼は「かって外国人犯罪者の犯罪を個人的な裁量で見逃してしまったことにより自分の娘が逆恨みをした外国人犯罪者に暴行されてしまった」という事実により狂を発していたのです。

まるで狂ったようにビトを憎む刑事が本当に狂っていたというのはあっと驚く仕掛けですが、その狂気が単なる差別や偏見の強い人の見本的扱いになっていたわけですから、実に頭がおかしい構成になっていると言えます。

できれば物語の序盤で南洋の土人らしくファンデーションを塗った水嶋ヒロが古瀬刑事の娘を演じるメガネっ娘の成海璃子を無惨に凌辱する心象風景を挿入しておくべきです。

そうしたやりきれない古瀬刑事の狂気の発露のターゲットとしてビトが選ばれてしまうということがはっきりと序盤から示されていたとすればどれだけ深みのあるドラマになったことでしょうか。

なぜなら壮絶なのはビトではなくて・・・林や古瀬刑事なのですから。

それが明確に提示されていれば・・・いたってノーマルでどちらかと言えば小心者のビトが運命の糸に操られて殺人犯になってしまうという残酷さはもっと痛烈にお茶の間の心を揺さぶり続けたでしょう。

ともかく・・・差別や偏見は人間にとって当然あってしかるべきシステムです。母親がわが子を他の子と差別することなく愛したら・・・どうしてそれが母親の愛と子供に感じ取れるでしょうか。人が人を殺めてしまうことが悪であるという偏った見方が存在しなければこの世に正義というものは存在しないのです。

自由と平等が両立しないのと同じように・・・差別と偏見には損得が生じるのもまた真理。

この前提から行過ぎた差別と偏見やあまりにも不当な待遇に対する緩和措置を考えるのが政治であり・・・その方法が司法なのです。そういうこの世の実態をそれとなく再確認するためのドラマとしては・・・ここまであまりにも稚拙だったこのドラマ。

今回は主人公の口から・・・その幼稚さに決別するセリフが告げられます。

伊東弁護士(中井貴一)「ここであきらめたら差別や偏見に負けることになるぞ」

ビト「差別や偏見とかもうどうでもいいのです。ボクはボクと同じように苦しみ悲しんでいた一人の人間の命を奪った・・・それがどうしようもなく辛いのです」

償いようのない罪の重さに「死」を望み始めたビト。

しかし・・・愛する花(新垣結衣)がいます。もしも・・・ビトが死刑になったとしたら・・・死刑を回避するにいたらなかった理由のひとつである犯行後の花とのデートがビトを死においやったことになってしまう。

「殺してしまった林のために死にたいビト」と「愛する花のために生きたいビト」・・・この相克こそが・・・ビトに残された「壮絶」「愛」「正義」のラスト・チャンス。

ま・・・ぬいぐるみのビトと花のブタに加えて折り紙のブタは・・・愛の結晶という最後の手段もありますけどね。やることやってるわけだし・・・。

とにかく、たった一回で最終回に望みを繋げた代役・脚本家の腕前を高く評価したいと考えます。

まあ・・・死刑執行官が三人いて、ダミーの執行スイッチが2個あって・・・誰が直接手を下したか分らないようにするという気遣いがあるのに・・・死刑が死刑回避かを投票にせず・・・裁判長の恣意的な順番で採決していくというのが・・・結構茶番であるにしてもですけど。

関連するキッドのブログ『第9回のレビュー

日曜日に見る予定のテレビ『サトエリの少年時代』(フジテレビ)『天地人』(NHK総合)『ぼくの妹』(TBSテレビ)

ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。

皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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コメント

キッドさん こんにちは。
う~~さすがキッドさんです^^

10話は入り込めやすかったです。
先週 脚本家が変わるという情報を
キッドさんのところで知っていたからなのかどうかわからなかったんですが
夫婦で見ていて 
今回いいなぁ~人間の奥深い感情がでていて などと 
だんなさんがいっっておりました。
キッドさんレビュー読んで納得~~^^


>それ(事実)を隠していたことと、隠さなかったことがどれほどドラマの深みを変容するかということを
>人間の複雑さを味あわせることができる素材
>林の悪魔のような暴力の裏に「事情」があったことをしっかりと提示しておけば・・・
>やりきれない古瀬刑事の狂気の発露のターゲットとしてビトが選ばれてしまうということがはっきりと序盤から示されていたとすればどれだけ深みのあるドラマになったことでしょうか

もう~うなずくばかりです。。
忍成修吾さんの理路整然としたセリフもすんなりはいってきましたし
なんだか落ち着いてみれました。

せっかく松潤 ガッキー オグリンがでていたので楽しみにしていたのに
あ~~無情を出したかったのはわかるのですが
なんか違和感ばかり感じてしまって ほぼ流し見になっていました。
そうしてみると「流星の絆」は
来週が待ち遠しく感じていましたが
細部(脇のキャスティング含め)まで
行き届いていたんだなぁ~とあらためて思いました。
いきなりコメントでしたが
またよろしくお願いします(笑) 

投稿: ice | 2009年6月20日 (土) 17時44分

今回面白いなぁ。
あの裁判員たちのやりとりなんて
最高だとおもっていたら・・・そんな
裏事情があったんですね。

投稿: みのむし | 2009年6月21日 (日) 09時52分

cafeジョーダンジャナイヨオオオ~ice様、いらっしゃいませ~ノダメカワイソスcafe

ご共感いただき恐悦至極でございます。
いわば敗戦処理のような
役回りの脚本家ですが
結構、いい仕事をなさった感じがありましたね。

まあ・・・本当は
ドラマなどというものに
作家の匂いを感じさせるのは
あまりいただけることではないのですが。

見ていて・・・現実とドラマの
区別がつかなくなる
そんな桃源郷が理想です。
作り手たるものは
そこを目指すべきだと思っています。

で、人間なら当然言うだろうセリフを書き
さらにもどかしくて言葉にならない思いを
言葉にするのが作家だろう・・・と思うのです。

それをここまで
このドラマは
なぜそんなことを言う
なぜそんなことをする
・・・の連打でございましたからなーっ。

それを差別だの
偏見だの
壮絶だの
愛だの
正義だの
恥ずかしい言葉でごまかそうったって
ごまかされるもんじゃございませんともっ。

それに対して今回は
いつものように
メソメソ泣き出す主人公からして
そりゃ泣いちゃうよなぁ
と胸にすっと落ちる感じになってました。

これを今まで9回のフリが
効いているからだ
と前回までの脚本家は
考えるかもしれませんが
キチンと仕事をすれば
初回からこの水準に達することは
できたのです。
残り2回で選手交代は
いろいろ大変だったでしょうが・・・
いい決断だったとキッドは評価しますよ。
まあ・・・遅いわっとも思いますけど。

懐疑主義の立場にたてば
これまでの報告された
判断材料のすべてが疑わしいのが当然。
それでも証拠を提出した捜査員たちを
信じて審理をするのが裁判というもの。

その中で懸命に考える裁判員たちは
なかなかに誰も熱演でしたね。
ただし、特に犯罪者の娘に対して
差別感情を持つ櫻井淳子だけは
林や古瀬刑事同様に
その心象を描くシーンがあってしかるべきだった
と考えますけど。

とりあえず
前回までは
すべてがとってつけたような形であったものが
今回は瑞々しい感じにまで変化しました。
ドラマにおける脚本の大切さを
実感する上では実にいいお手本だったとも言えます。

できれば前回までの脚本家による
幻の第10回を比較の上で見せてもらいたいくらい。
あるいは最初から今回の脚本家で
やり直してもらいたいくらいです。

クドカンの場合は・・・天才なので
比較するのも憚れるのですが
とにかく・・・スマイルに関しては
ああ・・・もったいなかったなぁの
一言に尽きるのでございまするーっ。

投稿: キッド | 2009年6月21日 (日) 21時22分

bud*simple*life*みのむし様、いらっしゃいませ*simple*life*bud

・・・でございますよねーっ。

もう・・・キッドは途中で
泣いちゃいそうでしたよ。
これまでの
あの脚本で懸命に
演じてきたキャストが
かわいそうでかわいそうで・・・。

大河ドラマだってある意味
ひどい脚本ですが
少なくとも数字はとっている。
そういう意味では実害がないわけです。

こっちはもう・・・キャストもお茶の間も
悶死寸前でしたからなーっ。

まあ・・・意見と意見のぶつかりあいを
面白く描くために
現実のシステムではしないことをやるくらい
大目に見るのでございます。
面白ければ
殺人も辞さないのが
ドラマでございますから・・・。

投稿: キッド | 2009年6月21日 (日) 21時27分

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