ハッとして天地人(妻夫木聡)グッときてパッと決まった愛だから(常盤貴子)
まあ・・・「ハッとしてGOOD!/田原俊彦」(1980)を知らない人も多いのかもしれません。
ぐっという日本語は・・・戦国時代もあったと推定できますが、それは・・・ぐい(と飲む)とかぐう(の音も出ない)とかの変化形があるはずだからです。
しかし・・・越後の人々が気持ちをつかまれることをぐっとくると言ったかどうかは定かではありませんな。
で、『天地人・第23話』(NHK総合090607PM8~)原作・火坂雅志、脚本・小松江里子、演出・片岡敬司を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。ついにたまっていた卓袱台在庫一斉処分でございます。完全アニメ化です。もう、まるっきりグッとこなかったのですな。分ります。お気持ち察します。ご同情申し上げます。しかし、景勝の兜の前立てが飯綱権現であるところは見逃さないのですな。さすがでございます。徳川家における石川数正出奔を受けて・・・上杉家中は疑心暗鬼の最中。すでに妹婿の畠山義春(上条上杉家)追放の計画が進行中だと思われるのに・・・故郷にピクニックの主従って・・・坂戸城は謀反中の新発田重家の新発田城と上野の北条勢力に挟まれて・・・ある意味最前線でございますのにねーっ。脚本家を「ぼくの妹」のお花畑に埋めてしまいたいわ。愛宕権現の愛だとか・・・景勝の信義の義に応じて仁愛の愛だとか諸説ある愛の印ですが・・・妄想では愛染明王説を採用しております。
で、天正13年(1585年)は延々と続くのである。続くからにはもう少し内容があるといいよね。越中国境まで完全に制覇した羽柴勢。以前として越後北東部で抵抗を続ける新発田重家。そして信濃を侵食する徳川や上野を窺う北条と独立勢力となった真田氏を挟んで虚々実々の駆け引き。戦国時代終焉を前に最後の領地確定をめぐり越後周辺はただならぬことになっているのである。それなのにこの大河ドラマときたら・・・ありもしない秀吉とのご対面、ありもしない石田三成遊びに来ちゃいました、ありもしない真田幸村弟子入り騒動である。もうあいた口がふさがらない人だらけで新型インフルエンザ流行に一役かっているのではないかと思う今日この頃です。
さて・・・信濃である。戦の鬼・真田昌幸が徳川侵攻軍に大打撃を与え・・・撤退を余儀なくしたために・・・虚空蔵山中の真田の隠れ里にもひとときの平和が訪れている。
父・昌幸の依頼で・・・くのいちの初音が忍びの育成を手がけるようになって数年・・・すでに真田佐助、望月五郎、海野八兵衛など・・・初音の目にかなった数人の忍者が実戦配備されている。今、初音が手元に置いて手がけているのは本能寺の変に巻き込まれて死んだ穴山梅雪の庶子・穴山小助の養育である。
小助は体術の方はそれほどの伸びはみせなかったが・・・それでも槍は名手と呼ばれるほどの腕にはなった・・・しかし・・・抜群の知力を持っていた。すでに小助は齢十四となっており初音は最後の仕上げに入っていた。
小助が忍びの法として受けているのは説経師の偽装術である。旅芸人とも放浪僧ともつかぬ職業だが・・・ありがたい話をして食い扶持を稼ぎ諸国をめぐる説経師はしのびの隠れ蓑としては定番であった。
初音は飛び加藤伝来の「お伽草子」のうちの本地ものをテキストとして小助に語りをたたきこんでいる。本地ものは神仏の縁起(前世の姿)を語る説話である。
初音は問いかける。「それでは毘沙門天の本地など聞かせてたもれ」
小助は神妙な顔をして語り始める。すでに変声期を迎え、渋みのある声がなかなかに趣きのあるように仕込まれているのだ。「今は昔、天竺に小さき国あり、小さき国の主君の名はせんさいのきみと申しました。
せんさいのきみは跡取りの子のないことを気に病み梵天王に祈願したところ・・・姫を授かりました。この姫が長ずるにおよび天竺一と噂される美姫になったのでございます。その名を天大玉姫と呼ばれ大変な人気を博しました。
ところがその噂を聞き、大国のまやのおおきみが妻として差し出すように申し入れてまいりました。命にそむけば国を滅ぼすと脅され、せんさいのきみは泣く泣く天大玉姫を興し入れの旅に送り出したのでございます。
その旅の途中・・・天大玉姫は立派な若君と出会います。その名を金色太子と申します。玉姫と太子は一目会うなり、惚れあってその夜のうちに契りを交わしました。姫から事情を聞いた太子は姫にせんさいのきみの元へ戻り、太子が訪れるのを待つように伝えます。
それから太子は一振りすれば千人の首を切るという神刀を持ってまやのおおきみの十八万騎の軍勢に立ち向かったのです。はげしい戦が数年続きました。けれどさすがのまやのおおきみも神刀の武威をおそれ、ついに金色太子に降伏したのでございます。
しかし、戦の日々は時を要し・・・金色太子が勝利の言葉をもって玉姫を訪れたときに・・・姫は太子を待ち焦がれて病となりこの世を去っていたのでございました。それを知った太子は嘆き悲しみますがその夜の夢のお告げで姫が天上界にいることを知るのです。太子は天上界へかけのぼる天馬こんてい駒を捜しもとめて険しい旅を重ね・・・ついに姫の待つ天上界にたどりつきます。ひしと抱き合い涙にくれる姫と太子。そこで梵天王が現れて申すことには・・・金色太子こそは本地が毘沙門天の仮の姿、天大玉姫もまた本地が吉祥天女の仮の姿だったという真言(まことのり)・・・これ一切善哉でございまする」
滔々と述べる小助の語りに頷いて初音はなおも問いをかける。「それでは越後国の真言寺の本地をお聞かせ願いたい」
小助は一瞬、間を取るとやや越後訛りを加えて語り出す。「今は昔、越後の国になにがしの宗忠という長者のあったそうな。たいそうなはぶりのよさで威勢をほこった宗忠の一族であったそうな。
しかし、ある夜の夢に神の使いが現れて、七年たつと迎えに来る(寿命である)と告げられたそうな。宗忠はその性、信心深く、後生大事と願う一心から、財を投げ打ちお堂を建立し、都より天台の和尚を迎えたてまつったそうな。
和尚は快く下向し七日間の説法を行って宗忠に功徳をつませる。宗忠はたいそう喜び、和尚を宴でもてなした。その宴があまりにも盛んであったためか、何処からか天女が舞い込み、宴はさらに盛況となり三日三晩続いたそうな。やがて宴が果てると天女は何処へと去って行く。
しかし、その日より宗忠のせがれ宗光は天女のおもかげが頭を去らず・・・恋の病にとりつかれたそうな。今ひとたびの逢瀬を願い宗光は気もふれんばかりの有様。息子を哀れんだ宗忠は諸国の寺に祈願を重ねる。すると羽黒山の観音菩薩が現れて宗光に山中の古堂を示す。宗光がその古堂に一夜こもると件の天女が現れ、天女がすでにこの世のものでなく、浄土を棲み家となしているため、この恋は成就しないと諭したそうな。
しかし、宗光はあきらめることができず、父・宗忠に別れを告げ浄土へと旅立つ。御仏はこの宗光の心を哀れと思い・・・浄土への道を示す。険しい旅の果て、ついに宗光は天女と涙の再会を果たしたそうな。するとたちまち、宗光の本性が愛染明王、天女の本性が弁財天であることが明らかになりて・・・これ一切善哉なり」
「よかろう・・・」初音は聞き手としての擬態を解き、緊張を解いたまだ幼さの残る小助に微笑んだ。「天竺のものも・・・越後のものも・・・人は皆似ておろう・・・」
小助は美しい師匠の顔を見つめる。「近頃・・・お前の兄弟子である・・・越後の直江兼続は・・・愛の印を掲げたそうじゃ・・・亡き謙信公の毘の旗を主君・景勝が受け継いでおるからの・・・毘沙門天の本地と愛染明王の本地を重ねた洒落のつもりであろう・・・ふふふ・・・与六め・・・なかなかに笑わせることよ・・・」
小助はかって自分と同じように初音の教えを受けた兄弟子と若き師匠のありし日の姿を思い浮かべた。それはどこか心が疼くような・・・しかし気が浮き立つような不可思議な気持ちを小助に与えたのである。
初音は教えをまとめた。「世の人はこのような絵空事を心の糧として辛き日々をいきていくのじゃ。そして説経師はそのおかげで日々の糧を得るという仕組みよ・・・もはやお前も立派に稼げるぞ」
天正13年がようやく暮れようとしていた。
関連するキッドのブログ『第22話のレビュー』
火曜日に見る予定のテレビ『アタシんちの男子』『白い春』(フジテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
この際、トシちゃんが
謙信公でも良かったかもしれないと思う今年の大河 ̄▽ ̄
他局でしかも終わっちゃいましたが
グッと・ググッと・グググッと
来るようなものは全く感じられませんねぇ。
完全にドラマの方向性が違うし
何よりどこかの某国のように兼続マンセーって
言ってるような幻聴さえ聞こえてくるような気がしてきます。
これで22%ですからねぇ。
NHKはドンドン考え違いをしてしまいそうですね。
というか、受信料とってるNHKが
そんなのを気にしてドラマを作ってくれるなと
愚痴愚痴言いたくなってしまいそうですが(; ̄∀ ̄)ゞ
お伽草子は最近こういうのは読み聞かせとかって
やってるんでしょうかね。
すっかり子供と接する機会がないもんで(; ̄∀ ̄)ゞ
でもって穴山小助が登場ですかぁ。
となると十勇士がやってきそうな感じですねぇ。
根津さん、今、何してるのかなぁ(遠い目)
投稿: ikasama4 | 2009年6月 9日 (火) 00時08分
なにしろ、勝てば官軍ですからな
脚本家がNHKで
肩で風切って闊歩していることは
間違いないのでございます。
人間すべては運命ですなーっ。
グッと・ググッと・グググッと
誰も知らない泣ける歌ですな。
あえて小学生みたいなことを言えば
誰も知らないのは存在しないのと同じですけどーっ。
まあ・・・NHKはある意味なんでもあり。
ロリコンディレクターが
趣味で幼児番組作ったりしていますからねー。
あたりはずれは視聴者の皆さんの勝手でしょうという
職員一同の態度がありありなのでございますよ。
まあ、だからこそアニソン三昧などという
極北もあるからなーなのです。
いたしかゆしです。
御伽草子は現在のものはほとんど
江戸時代に成立なのですが
原型は室町時代を中心にしています。
ある意味、文化的にも室町末期は戦国時代なのですね。
なにしろ、念仏唱えて極楽浄土を
本気で信じていた人々が五万といたわけですから
旅の法師のこうした語り物は
やんごとなき筋から下々まで
人気を博したことでしょうね。
キッドはそういうところは
現代のテレビドラマと通じる点があると思っています。
「毘沙門天の本地」も「愛染明王の本地」も
冒険恋愛ファンタジーですし。
この穴山小助は実在の小助と
十勇士の小助の中間くらいの存在です。
実際、十勇士は関ヶ原以後の活躍がメインですしね。
猿飛佐助に関しては
飛び加藤、初音、真田佐助のいずれもが
コレにあたります。
後数人登場予定です。
なにしろ「猿飛は術の名よ」でございますので。✧✧✧。
投稿: キッド | 2009年6月 9日 (火) 01時38分