ミスター・ブレイン涙のインスピレーション(木村拓哉)傘の柄でツボ圧ししてたから犯人取り逃がしたじゃないですか(綾瀬はるか)
「合成アグネス・ラムはじめました」でもよかったのだがコラージュについて言及するのは最終回にふさわしくないと考え自粛である。
キッドはこのドラマはすべては「事故に遭遇して意識を失った九十九(木村)の内面世界・・・つまり夢の出来事」だと疑っているのだが・・・最後でどう考えても機内持ち込みが不可能そうな装備を身につけた謎のハイ・ジャック犯人(香取慎吾)の登場でますます、その意を深めたのである。
しかし・・・夢を見ているのは由里(綾瀬)なのかもしれない。
もちろん、そう考えないと辻褄の合わない場面がいくつかあるからである。
たとえば・・・飴玉の連絡方法だ。足のつかない携帯があるご時勢にそれが「合理的な連絡方法」とはとても考えられない。
だが、赤い飴玉、黄色い飴玉、青い飴玉には視覚的、味覚的、臭覚的、触覚的、聴覚的な面白さがあり、その道具立ての面白さを優先させるわけである。
だからこそ夢の世界である。
ちなみに飴玉の聴覚的な趣向とは「しゃぶる音」あるいは「噛み砕く音」である。それは一種の「美・サイレント」なのである。
で、『MR.BRAIN・最終回』(TBSテレビ090711PM0756~)脚本・時田光治・森下佳子、演出・福澤克雄を見た。精神分析あるいは心理学では人間の心を「上位自我・自我・無意識」と規定している。あるいはそう考えていた時代があったと言うべきかもしれない。神経科学の研究が進み、心のシステムが解明されるにつれ・・・その説明はあまりにもシンプルすぎるのではないかと考えられたからである。この瞬間に心理学は過去のものとなった。しかし・・・脳のすべてを数式で解き明かすことはまだ成果とはなっていない。脳の構造的分析により・・・たとえば電子的に記憶を取り出すことはまだ可能ではないのである。
もちろん・・・闇の世界ではそれが実現化しているが表沙汰にはなっていないという可能性はある。それは不老不死がすでに完成している可能性とそれほど変わらないだろう。
少なくとも遺伝子レベルでは一般人の知らない恐るべき成果が達成されていることは充分に妄想できるのである。
まあ、それはさておき、このドラマは「脳科学」を語り出すと・・・古色蒼然たる心理学的なアプローチが始まるというお約束があるわけである。
まず、前回から語られる「微笑み」の二つのスタイルを例に挙げておこう。
ここでは「心」は二分割されている。「意識」と「無意識」である。「無意識」の「笑い」は自然であるが・・・「意識」による笑いはぎこちない。九十九が語っていることは昔懐かしい心理学の話に過ぎない。
もちろん・・・このドラマの脚本は最初からそれを織り込み済みなのである。
最後の最後までネタとして使われる「人間はウソをつくときに右上を見る」というのは「科学的」ではないと九十九自身が明らかにするシーンは初回からある。
同様に最後は冤罪の犠牲者である北里(上川)と九十九の対決で次のような会話でこのことが示される。
九十九「人を殺せば殺した人の魂も死ぬんです」
北里「そんなの科学じゃないだろう・・・」
九十九「科学とはすべて直感で始まるものなのです。それを実証していくだけなのです。僕はいつか僕の直感の正しさが証明されると信じています」
ある意味、実に「寝言」なのである。
しかし、その「寝言」は正しいとも証明されていないが、間違っているとも断言できない性質を帯びている。
そしてキッドは九十九は昏睡状態にあると考えるので「寝言」を言ってもなんら問題はないのだ。
「寝言」が人の心を動かすことだってあるのだからな。
さて、警察庁副長官狙撃事件、尾崎議員誘拐事件、菊池議員爆殺未遂事件の実行犯の一人、相沢(光石研)は確保されるが主犯格でないことが判明する。
主犯である北里の存在や・・・その背後で暗躍する武井刑事(市川海老蔵)についてお茶の間は知っているが捜査陣は知らない。
そして・・・手がかりを得た林田刑事(水嶋ヒロ)はそれを上司の丹原刑事(香川照之)に伝えないまま、まんまと罠にはまって爆発に巻き込まれてしまう。
しかし・・・不死身なのか・・・一命は取り留めるのである。
「自分が携帯を持っていなかったからこんなことに・・・」と反省した九十九は携帯電話を買いにでかけ・・・丹原刑事は刑事の直感でこれを見抜くが、由里は見抜けないのだった。
人は失敗に学ぶ生き物なのである。捜査は手詰まりになるが、奇跡的に意識を回復した林田によって隠されていた情報・・・「尾崎議員の息子が武井刑事と黒い噂のある広域暴力団の事務所と関係していこと」が判明すると第一の進展がある。
犯人の遺留品である「×」印の血液のDNAと無断採取された尾崎議員の息子のDNAが一致したのだった。
さっそく、尾崎議員の息子に事情聴取がなされるが・・・九十九と丹原は直感で尾崎議員が犯人ではないことを見抜いてしまう。そして尾崎議員の息子には事件当日のアリバイがあるのだった。
科学警察研究所の生物学担当・難波は「一卵性双生児、もしくは骨髄移植手術を行った場合、DNAが一致する可能性がある」と示唆するが・・・尾崎議員の息子はそれを否定するのである。
一方・・・あくまで武井刑事を疑う九十九は単独で尾行。飴玉の秘密に肉薄するのだが慣れない行動のために肩がこり、張り込み場所で思わずマッサージをしてため息をついたために北里を取り逃がす。
再び、手詰まりになる捜査陣だが・・・またしても林田刑事が突破口を開くのだった。
深手を負った体を投げ出し沈黙を守る警察庁副長官に直訴である。
「あなたを撃った犯人・・・尾崎議員を誘拐した犯人・・・そして菊池議員を狙った爆破事件の犯人は・・・何が目的なんですか・・・そしてあなたは何を隠しているんですか・・・一般市民に負傷者が出ているし・・・菊池議員は殺害を予告されているのです・・・警察は警察を守るためにあるんですか・・・僕は違うと思います・・・」
ここで警察庁副長官の心理は自我と上位自我に分かれる。自我は保身のために沈黙を守っていたのだが、モラルや人情や良心といったものを司る上位自我の支配力により・・・ついに警察庁副長官は口を割るのである。
三人のターゲットは過去にとある事件の捜査関係者と検事だった。
そして・・・その事件とは「殺人事件」であり、現場に残されたDNAと北里の事件が一致したのを証拠として有罪判決が下され、北里は刑に服した。
それが17年前の事件であった・・・しかし、獄中から再審請求を続ける北里。
その後、DNAの鑑定技術が発展し・・・かっては「100万人に1人の確率」という精度だったものがより精密になったのだった。そして・・・新しい技術の元で犯人のDNAと北里のDNAは不一致と判定されたのである。
おりしも・・・北里は獄中で白血病を発症していた。そして偶然にも尾崎議員の息子が骨髄移植可能者だったのである。
三人は共謀して北里に「再審請求の取り下げ」と「移植手術の実行」という取引を持ちかけたのである。いわば脅迫である。
その結果・・・北里の無実を信じていた両親は自殺という最悪の結果が生じる。
刑期を終えた北里はその復讐を実行していたのだった。
この真相に警察も科警研も心(上位自我)あるものは全員うなだれる。
しかし・・・北里は消息不明・・・そして北里の部屋からは「事件の裁判官の講演会」のチラシが発見されるのだった。
裁判官の講演会場である科学博物館に急行した捜査陣。しかし・・・時すでにおそく・・・裁判官は拉致されていた。しかも・・・会場には爆弾が仕掛けられていたのである。
どうせ最後は強行突破するのならこっそり逃げ出した方がよかったのでは・・・などと考えてはいけないドラマなのだった。
すべては・・・九十九が自分を嘲笑した犯人に会い、一言文句を言ったり、由里の携帯電話を尻ポケットから盗み、由里には一瞬変なことを想像させ、後に九十九を発見させて、そうなると信じてましたと言って由里のハートを直撃したり、飴玉の秘密を北里に問いただしたり、北里にこれ以上罪を重ねないように説得したかったりしただけなのである。
したかったから仕方ないのである。
ここでは心は二分割される。自我の意思と無意識の欲望である。
やりたいことをするのである。
こうして・・・九十九は北里と出会う。
九十九は説得に成功しかかるが・・・「お前の両親もお前の無実を信じていた」と尾崎(濱田晃)が空気を読まない・・・あるいは心(上位自我)ないことを言ったために台無し寸前に。
この場合、北里の心は上位自我と自我に二分割される。一般的に両親に育てられた子供は道徳的な情報を両親から伝達される。そのシステムは上位自我となり、自我の暴走に歯止めをかけるとされている。立てこもり犯人の説得に「ご両親が泣いているぞ」と呼びかけるのは上位自我のシステム発動を促しているのだ。人間の良心とは両親の心なのである。
もちろん、親が子供をしつけない場合、このシステムは最初から崩壊しているのである。
尾崎の息子の良心が崩壊している以上・・・教育不在の連鎖によって尾崎の良心もまた存在しない可能性は高い。
そのために結局は自分が自殺に追いやった北里の両親の話を持ち出しても尾崎の心(上位自我)は自分の心(自我)を咎めないのである。
北里の内部では「無実を信じて裏切られ自殺した両親の復讐をしたこと」が結局罪を犯し両親を裏切っているという「上位自我」が発動し、衝動的に自罰的な殺意を覚え、混乱した「自我」は自殺を図ろうとするが無意識の「生」への欲求を克服できず・・・九十九や駆けつけた丹原に阻止されてしまうのだった。
おりしも・・・警察庁幹部とともに科警研の佐々(大地真央)」は出番を確保するために謝罪するのである。その頭の下げ方がいかにも不誠実に見えてしまうのが宝塚的演技の欠点である。いつもちょっと不誠実な役をやっている真矢みきのそこそこの成功の原因はここにあります。
そして・・・九十九はおとりの銃のテクニックを携帯電話に応用したことを明かす。
北里は心から苦笑するのだった。
人間は学ぶ生き物だからである。
そしてコピーに敗れたオリジナルは苦笑するか裁判に持ち込むかのどちらかなのだ。
そして・・・林田刑事は九十九から学びすぎてやや恥ずかしいそっくりさんになってしまったのだった。
さて、インスピレーションとは霊感のことである。この場合、スピリッツ(精霊)が入ってきてひらめくことを言うのである。
これと肩を並べる言葉にintuition(直感)がある。霊感と直感。この区別のつかない人は多いだろう。厳密に言えばキッドにもつかない。
intuitionは見た上で・・・あるいは見たからには・・・あるいは見たまんま・・・といったニュアンスを持っている。長いシッポをもって足音を忍ばせ振り返ってニャアと鳴く生き物を見てそれが「ネコ」だと分ること。それが直感だ。
しかし・・・それが「ネコ」だということの真偽はまた別の問題なのである。
同様に羊を見て羊と思うことも直感なのである。しかし、それが羊の皮をかぶった狼だと見抜いた場合は・・・直感でもあるがニュアンスとしては霊感的な感じもする。
羊の皮をかぶった狼のフリをした北朝鮮の工作員だと見抜くようになるとかなり霊感が湧いている気がするし、さらに羊の皮をかぶった狼のフリをした北朝鮮の工作員に見えるマイケル・ジャクソンだと看破するようになると頭に蛆がわいている場合があるので注意してください。
人が人を理解したと思うこと。人が人に理解されたと思うこと。
それもまたインスピレーションのなせるワザである。
そういう時・・・人は涙を流すことがある。なぜなら心に何かが入ってきて痛いからなのだな。
とにかく・・・このドラマは九十九のインスピレーションの物語だったのだ。
ところで・・・九十九は由里に「もしも進化したと思ったならば・・・」の後に何をささやいたのだろう。
①今度はパートナーになろう
②アメリカまで自費でおいで
③映画化決定
正解はコチラで・・・。(ヒント・反転)
関連するキッドのブログ『第7話のレビュー』
ごっこガーデン。アンナとダーリンの初共演メモリアル・シアター。アンナ「ダーリンのお仕事に初めての共同作業。アンナのスピリッツはダーリンのスピリッツと一体化して異次元の扉を開いたのぴょん。こんな素晴らしい仕事を目のあたりにしたら金輪際文句は言えないのぴょ~ん。その上、ギューっとされたりしたらはうぅんなのでしゅーっ。もう硬直なのぴょん。この胸の高鳴りは落涙レベル~。携帯電話どころか・・・アンナのハートはダーリンに盗まれっぱなし~やんだ~」お気楽「お疲れちゃん・・・展開が早くてあれよあれよと解決しちゃったよね。結局リンダ刑事のケガの功名ってこと?・・・最終回なので多めにサービスしときます」みのむし「クライマーズ・ハイとかDVDで見てたら遅刻しました~」まこ「土曜日見るもの多すぎてヘトヘトでしゅ~」エリ「さあ、いよいよ月曜日はブザービートはじまりはじまりでスー」
ごっこガーデン。神秘のミスター・ブレイン打ち上げ会場。くう「とにかくリンダ刑事の無事が確認できてよかったわ~。そして最終回は事件を解決したのはほぼリンダくんのお手柄だよね。あの泣きで黙秘していた警察幹部を落としたわけだから~。拳銃を持つのもイヤなビビリの役柄だからこそ、おびえながら警官を助けに戻り・・・そして名誉の負傷・・・だから説得力があったのよね」ikasama4「リミット見てたらレビューするの忘れそうになりました。とにかく、出演者多すぎで・・・時々、肝心な説明が省略されているような気がするんですよね・・・北里の狙撃の技術とか・・・共犯者の出所とか・・・お子様向けの部分とすごく大人向けの部分がやはり消化不良なのかも」あんぱんち「メイド刑事見てたら遅刻なのね。アンナちゃんお疲れ~」シャブリ「やはり・・・アメリカで待ってる・・・かしら。まあ、アグネスのグラビアより、はるかちゃんのグラビアの方がそのまんま過激なような気がしたりもするのでありました~。あ・・・ドラマでしたね。ハイジャックのニュースを伝えるアナウンサー役はTBSの升田尚宏アナでした~」mari「結局、武井の正体は不明のまま・・・警察内部の派閥抗争を暗示しているようでしたが・・・ただ単に人間界に潜り込んだ悪魔のような不気味さもありました。丹原林田の凹凸コンビは面白かったのです」aki「結局・・・宿題が残された・・・っていうのは続編なのでしょうか。それともあえて後味の悪さを狙ったのか・・・そうなると最後の最後はまさか・・・本物だったりして・・・」
月曜日に見る予定のテレビ『ハンチョウ~神南署安積班』(TBSテレビ)『ブザー・ビート 崖っぷちのヒーロー』(フジテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
| 固定リンク
コメント
なんで、お父さん犬なのぉ~~。(笑)
フフフ。のっちが羊好きだから、まあいいか。
業務連絡:
mariさんからのコメントでやっと気付きました。
アメブロにTBなのは、FC2に飛ばないからなんですね。
了解しました。暫くアメブロのほうでやり取りしたいとおもいます。
投稿: シャブリ | 2009年7月13日 (月) 13時48分
▯▯black rabbit▯▯シャブリ様、いらっしゃいませ▯▯black rabbit▯▯
ふふふ。裏妄想設定としては
アンナ様とダーリン土手でお昼寝ごっこの
エキストラとなった
お父さん犬シャブリ様と
クッキーネコのあんぱんち様。
しかし、シャブリ様は
気に入ったので
きぐるみを脱がない・・・という感じになってます。
業務連絡:
そうなのでございます。
なんとエリお譲様にまでTB貼れないのです。
よる年波でおでかけコメントもままならず
お気楽社長やあんぱんち会長
さらには画伯や芯様にまで貼れない状況。
非常に心もとない感じなのでございます。
ココログ・・・なんとかしてほしいのです。
投稿: キッド | 2009年7月13日 (月) 17時42分
なんだかとってももったいない
もったいないおばけがでそうな
ドラマでしたね。
豪華だったけど、なんだかいろいろ
もったいない感じでした。
投稿: みのむし | 2009年7月13日 (月) 17時42分
*simple*life*みのむし様、いらっしゃいませ*simple*life*
脚本家の最高傑作といえば「トリック」ですが
それも深夜ベースで
天才演出家とめぐりあい
しかもオンエアではなく
商品化されたものでの評価。
この作品もじっくり丹念に
味わいつくさないと
本当には面白くないという欠陥商品です。
しかし、そこはアンナ様のダーリン、
力でねじ伏せましたな。
そのあたりがしっくりこない人には
こないだろうなぁと思います。
くう様のようにこの脚本家を高く評価しつつ
それでもお茶の間向きじゃないなぁ
と感じる方も多いでしょうしね。
キッドは「脳」についての
ベーシックを考えることができて
とても楽しい作品でしたけど~。
投稿: キッド | 2009年7月14日 (火) 14時25分