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2009年7月29日 (水)

永遠の愛なんて人間には無理だろう(中山優馬)十年は一昔(加藤ローサ)ばかぁ(桜庭ななみ)

・・・ようやく・・・ブラム・ストーカーの「ドラキュラ」を読んでいる人間が脚本を書いた感じのする今回である。

原点を知らずに「なんとなく」をやってはいけないという厳しい鉄則の証明である。

火曜日のドラマ対決は①「小島楓」↘12.5% ②「恋して悪魔」↗*6.8%

吉本の若手芸人がろくでもない演技をしまくって逆風が吹き、せっかくの名優・宮迫博之もイメージ・ダウンである。このあたりの戦略ミスを・・・頭のいい人たちはコントロールしてください。

まあ・・・第1シリーズに2回を使い、第2シリーズは1回というのがちょっと無理があった。

もちろん、松雪泰子が再登場すれば違うだろうが、「笑う警官」「クヒオ大佐」「沈まぬ太陽」と秋に三本も映画公開されるからな。

「恋して悪魔」はなぜ半澤脚本で始めなかったのかが悔やまれるところ。

で、『恋して悪魔~ヴァンパイア☆ボーイ・第4回』(フジテレビ090728PM10~)脚本・半澤律子、演出・村上正典を見た。三人目の脚本家登場で明らかに軌道修正が入っているので矛盾したセリフも多いが、その分、作品世界のリアリティーは増している。これは本物らしさと嘘くささの関係を考える上で貴重なサンプルである。

まずヴァンパイア・システムの変更を考えてみる。

①ヴァンパイアに吸血された人間は「永遠」を得る。

これまで、種族としての人間は種族としてのヴァンパイアに捕食される存在で、ルカ(中山)の教導師であるカイト(近藤真彦)は「人は餌にすぎない」と何度も発言している。この矛盾を解消するためには①吸血された人間は不死にはなるがヴァンパイアにはなれず、亜人間にとどまる・・・というシステムの導入。②カイトは男尊女卑の性癖があり、女性ヴァンパイアはヴァンパイアではないという信念を持っている・・・というキャラクター設定の追加などの「手」がある。いずれかによって設定変更の混乱を回避することが可能である。

②ヴァンパイアは人に感情移入すると牙を失う。

感情移入そのものがかなり大雑把な概念だが、カイトは「吸血後にヴァンパイアは真の力を得る」と述べていて、今回はその力の一端を示すシーンがあった。

はじめての吸血行為を尻込みするルカを挑発するために中華料理店「しんじょう」を訪れたカイトは初対面である店主の新條(伊東四朗)と娘の敦子(堀内敬子)の精神制御を行い、偽の記憶を植え付け、「常連客」と思わせた上で、その記憶を消し去るという「能力」を発揮する。これはヴァンパイアは人の心をコントロールできるという伝承に基づくアイディアである。

ヴァンパイアと人間が心を通わすことができることから、未熟なヴァンパイアであるルカが人間の心情に影響されて体調に異常をきたすことはシステムとして予測可能である。

さて・・・このように辻褄が合うことがフィクションにおける本物らしさの基本であることは異論の余地がないのである。

第1話~第3話まではこういう趣向が一切なく、実に嘘っぽいフィクションであったことを指摘しておく。

さて、キッドは人間にとっての完璧なフィクションは「死後の世界」であると考えている。フィクションは虚構である以上、「ウソ」がつきものだが、その「ウソ」がバレるとたちまち構築した世界が崩壊する習性を持っている。その点、「死後の世界」のフィクションは完璧なのである。誰もが本当の「死後の世界」で虚構の「死後の世界」を否定することができないからである。少なくとも、ゴーストの友人を持っていない限りにおいてはである。もちろん、ゴーストの友人を多数持つキッドには本当の死後の世界とウソの死後の世界の分別が可能だが無粋なのでしないのである。

それはハルヒのエンドレスエイトがいつ終るのか明らかにしないのと同じなのである。もう六回同じ話っていい加減にしてくれよ・・・脱線してますよーっ。

失礼しました。さて、ルカは「吸血鬼ではない・・・ヴァンパイアだ・・・」と「チャンコロじゃない・・・中華人民共産党帝国だ」とか「野球じゃない・・・ベースボールだ」と言うような翻訳による意味変更を許さない原典至上主義者なのであるが・・・それも一理ある。

もちろん・・・「ヴァンパイア」という言葉が・・・「カーミラ」や「ドラキュラ」と言ったヨーロッパの古典文学から拝借した言葉である以上・・・その呪縛との関係性にも一定の距離感が必要となる。

で、その使い古された「手」は「物語には一縷の真実が含まれているが実際にはまったくの誤解であることもある・・・」という手である。

つまり、「恋して悪魔」のヴァンパイアが本物で・・・「ドラキュラ」に書かれていることがウソなのだという「手」である。

そのために・・・「人の心をあやつることができる」と「ドラキュラ」に書かれていることは本当だが・・・「空腹になれば死体からも吸血する」というのはウソだとルカが証言するのである。

実に先輩に対して無礼な創作態度だが・・・文句があるなら墓場から蘇ってこいやぐらいの気迫が創作者には必要ということである。なにしろブラム・ストーカーは97年前に墓場に入っており、「吸血鬼ドラキュラ」の著作権は消失しているのでやりたい放題が可能なのである。まさに死人に口なしだ。

さて・・・それもこれも・・・「ドラキュラ」を読んで、ストーカーの考案したヴァンパイア・システムを理解し・・・そして改良するという姿勢が大切なのである。

少なくとも・・・数多くの吸血鬼映画・・・直系であるキム・ニューマンの「ドラキュラ紀元」・・・亜流であるキングの「呪われた街」・・・極地である萩尾望都の「ポーの一族」・・・ロマンチックなアン・ライスの「夜明けのヴァンパイア」・・・さいはての小野不由美の「屍鬼」・・・数々のヴァンパイアものはそうして命脈を伝えてきたのである。

とにかく・・・第4話にして・・・ようやく・・・「はじめての吸血のために人間世界にやってきて混乱する童貞吸血鬼」と「その童貞吸血鬼が十年前に死んだ初恋の少年にそっくりなために混乱するちょっとずんぐりむっくりな美人教師」の愛と死・・・あるいは恋と生の物語らしくなってきました。

脚本家は「赤い糸」も書いているが「乙女のパンチ」も書いている。原作ものの「赤い糸」よりも「乙女のパンチ」の方がいい味だしていた。

今回も・・・

香織(桜庭)「血を吸われるのって・・・気持ちいいのかしら・・・恍惚で快感なのかしら」

ルカ(ニヤリ)

などと・・・そうそう、そういう場面が見たいのさ・・・というシーンを生み出している。

もちろん・・・ダンドリ的にそうだったとも言えるのだが・・・かねてから必要だった・・・真琴(加藤)の死んだ恋人・歩(中山・二役)の生前の実像も追加されている。

歩は気弱な真琴を勇気付ける前向きな少年だったのである。そして「夏の海」で「十年後も君と一緒にいるよ」と約束して間もなく早世したのである。

前回も述べたが・・・真琴の心情を描くためには「歩」と過ごした日々の描写は不可欠なのだ。

スケジュール的には不可能と承知で・・・徹底的にウエイト・コントロールをした加藤ローサに十年前の歩との青春物語を演じさせてから、少し太らせて現代篇を撮影するぐらいの覚悟がなければ面白くならなかった話だと考える。そうすれば成長期の優馬は似ているが少し大人びたルカをもっと自然に演じられただろう。

ま・・・そういう贅沢な悩みを言っても始まらないので半澤脚本で少し血の通ったヴァンパイア・ワールドを大事に育てていってもらいたいと願うのである。

ついでに・・・ルカの人間の女についての拒絶感を説明するためにはカイトとの恋人関係がもっとも有効だと思えることも記しておく。

ルカ「女の・・・血を吸っても・・・あなたは怒らないの・・・」

カイト「バカだなあ・・・食事をするのと愛の営みはまったく別のことだよ」

カイト、ルカをあすなろ抱きにしてそっと唇をよせる。

ルカ「あ、あーっ」

・・・的なね。・・・単にやおいじゃねーか。・・・す、すまんこってす。

関連するキッドのブログ『第3話のレビュー

木曜日に見る予定のテレビ『桜庭ななみのふたつのスピカ』(NHK総合)『猿ロック』(日本テレビ)『黒木メイサの任侠ヘルパー』(フジテレビ)『東京少女大政絢』(TBSテレビ)『科捜研の女』『ダンディ・ダディ?』(テレビ朝日)・・・う・・・木曜日・・・いつのまにかドラマが量的に重い。

ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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