日本にはスパイなんていないという幻想(長瀬智也)三日坊主明日天気にしておくれ(深田恭子)
日本には聖徳太子の時代からスパイが存在する。
スパイとは基本的に権力に秘密の奉仕をする人間である。
英語で言えばシークレット・サービス・マンだ。
そういう人間がいると思わない人間は愚かだし、いると言ってしまう人間は馬鹿である。
だから「殺人許可証を持つ男」はシビアな存在だし、「殺人許可証」そのものはお笑いなのである。
だからテレビドラマにも「0011ナポレオンソロ」があれば「それ行けスマート」があるのだ。
その中間に「スパイ大作戦」があり「チャーリーズ・エンジェル」がある。
この作品に「靴の受話器」が登場する以上、それは「それ行けスマート」へのオマージュであるのだが、「スパイ・コメディー」への尊敬があってもスパイそのものへの尊敬が薄い。
だから、作品そのものは「キイ・ハンター」の面白さに遠く及ばないのである。
まあ・・・お子様向けの冒険活劇にそんなこと言っても余計なお世話かもね。
で、『華麗なるスパイ・第1回』(日本テレビ090718PM9~)脚本・君塚良一、演出・大谷太郎を見た。日本のテレビドラマの演出力の限界から・・・もっとも手を出してはいけないジャンルに手を出して・・・キッド的には玉砕の観のある第1回でした。
まず・・・日本にテロの恐怖を持ち込もうとするミスター匠(柄本明)は実は中華人民帝国の下部組織である半島共和国の独裁者である。その証拠に中国人の工作員王凱歌(ワン・カイコー)などが下っ端要員として暗躍している。それなのに正体不明の存在としてキャラクター設定してあるのは英国諜報部の「007」が平気で中国や北朝鮮という実在国家と敵対するのとは雲泥の差の腰の引け方である。
超法規措置で30年の刑期の残る受刑者・鎧井京介(長瀬)を仮釈放し、エージェントとして採用しておきながら、鎧井が非合法で入手した民芸品の代金を他のエージェントが払ったりしている・・・誰に気遣いしているんだよぉ・・・なのである。
その中で一人毒を吐くドロシー(深田恭子)・・・ポリシーあるなぁ。
祖父が総理大臣(渡哲也)であるためにクラスメートにいじめられる亜美(井上真央)。実際は凶悪な爆弾おタクである。いや、その前になんちゃって女子高校生(22)である。
亜美が苛められている事実に気がついたドロシーはいじめっ娘たちを「しめちゃうかっ?」なのである。
そのくせ・・・亜美本人をなぐさめようとして・・・「大変だよねえ・・・総理大臣の孫娘ともなると・・・だってあの総理大臣のせいで日本は不況のどん底でしょう。クソ総理大臣だもんねえ。クソ総理大臣の孫で略してクソ孫だもんね。もっと略したらクソだもんね」とちっともなぐさめていないのだった。
二時間番組の中で面白かったのがこのシーンだけというクソドラマだからな。
・・・それはいいすぎだろう。深田恭子のバスガイドとか、深田恭子のバスの運転手さんとか、深田恭子の発砲とか・・・女だと思ってなめてみたら男だったとか・・・可愛いシーン満載だったじゃん。
訂正・・・深田恭子以外はほとんどクソドラマです。
まず・・・「怨み屋」を裏切ってこっちにきている情報屋(寺島進)・・・失敗だろう。
情報屋の愛人・ジョセフィーヌ(KIKI)、京介監視要員アンヌ(平手舞)、東スポの記者で「恋人はスナイパー」みたいな設定の下宿先の定食屋の娘・三九(杏)・・・区別がつかんわ。
事務員(峯村リエ)の存在感にくらべて存在感のない吉本の三人、友近、ナベアツ、ライセンス藤原・・・せめて誰か一人にしろよ・・・このキャスティングだけでガッカリするわ。
天才詐欺師という主人公の設定は脚本家の絶対的脚本力を必要とするわけだが・・・初回に関していえば・・・片鱗も窺えないのである。まあ・・・「裏」が「レインボーブリッジを封鎖中」だったので気兼ねがあったのか。
そして・・・「伏線」をはりめぐらしてます的な思わせぶりの数々・・・落胆で腰が抜けるわ。
第一の刺客、爆弾魔・ボマーK(手塚とおる)がアジアの片隅で軍用トラックを爆破した時、走行中のトラックは爆破と同時に停車である。
同様にクライマックスでバスが爆破されるときも爆破と同時に停車である。
別にCGを使用したって構わないが・・・この世の中に慣性があるという事実から目をそむけないでもらいたい。
そういう事実から目をそむけた絵作りばかりでは絵空事は面白くならないのである。
ロッカーの自由落下エレベーターからしてそうなのだ。その場がなんとなく面白いだけで・・・ドラマ世界の経済性がリアルでなくなり・・・後は何をしても鼻で笑われるだけの世界になってしまうのである。
ああ・・・またしても作らない方がマシだよな・・・という作品を日本テレビが作っています。
ゆっくりと走行中のバスにぶらさがる主人公の体当たり演技が可愛そうな感じだし。
まあ・・・来週は実在する正真正銘で現役のCIAエージェント・ディブ・スペクター登場だし、深キョンが可愛いから結局また見るけどね。
「キズナ食堂」のモー娘。同窓会にお呼ばれしなかった加護亜衣が「イケ麺そば屋探偵」で体内に納豆内臓のワラ人形人間・うらみ益代で登場。芸能界のリアルな実態の方が大爆笑なんだよな。「キズナ」では懐古VTRでゴマキが存在しなかったような見事な編集ぶりだったし・・・。土曜日「こち亀」「スパイ」で鉄壁のリレーを期待していただけに・・・。ものすごくガッカリだ~。
関連するキッドのブログ『彼女が死んじゃった。』
月曜日に見る予定のテレビ『ハンチョウ~神南署安積班』(TBSテレビ)『ブザー・ビート 崖っぷちのヒーロー』(フジテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
キッドさま、こんにちは。お久し振りでございます。
「スパイ」をモチーフにするなんてイマドキにしては
レトロチックでステキだなと思ったんですが・・・
正直微妙でしたね。
>そういう人間がいると思わない人間は愚かだし、いると言ってしまう人間は馬鹿である。
言い得て妙ですね。仰るとおりです◎
大人の常識ってヤツですね?
>ロッカーの自由落下エレベーターからしてそうなのだ。その場がなんとなく面白いだけで・・・
ワタシはジョン・ベルーシーの
「ブルース・ブラザーズ」を思い出しちゃったんですが・・・
君塚さんのギャグはもう古いんでしょうか?
「踊る大捜査線」の頃は面白かったんですけどね。
投稿: なおみ | 2009年7月19日 (日) 11時44分
♬バンビダンシング♬なおみ様、いらっしゃいませ♬ヤッサイモッサイ♬
サスペンスとアクションが売りの
スパイ・コメディーというお題なんですけど
脚本家は名作映画の
換骨奪胎を得意とする人。
今回は消化されていない感じが
いただけないのでございます。
最近では「ゲット・スマート」(2008)が
リメイクされたばかりだし
「オースティン・パワーズ」シリーズの
ヒットもあったわけです。
そういうスパイものは
原点のシリアスがあっての
パロディー要素が強いわけです。
それをパクっちゃうと
ものまね芸人のまねをする素人の
空気はどうしてもかもし出されるわけです。
つまり「ビバリーヒルズ高校白書」の
真似をする友近はよくても
それを真似する素人の芸は恥ずかしいということです。
今回は急遽、拡大版になったかのような
とりとめなさが充満でございましたな。
実は、天才詐欺師とスパイというのは
あまり相性がよくないと思っています。
スパイは結局、忠誠心のかたまりなのでございますから。
毒をもって毒を制すというのは
脚本家お気に入りのモチーフですが
「エヴァ」という明確な時代のパロディー対象があった
「踊る」と違い・・・
スパイものが空前の大ブームではないし・・・。
何のごっこしているかよくわからない感じに
なっていると・・・キッドは思うのです。
はっきりいって
深キョンも
長瀬くんも
クドカンの造形したキャラに
おんぶにだっこですものねーっ。
たとえば・・・
「ブルース・ブラザーズ」では
電車が通り過ぎる度に
部屋が揺れるモチーフがあって
そのチープな感じが
その後の馬鹿馬鹿しいほどに
エネルギッシュな展開の前フリに
なっているわけです。
ロッカーを叩き落したら
ロープで回収して
定位置に戻す苦労を匂わさないと
リアリティーが失われてしまうと
キッドは考えます。
そういう点では
ダーツと水の二種類あることの意味も
弱いのです。
最後はダーツで気絶させたってなんの問題もない。
水でなければならない
絶対的理由がなければお約束の笑いにもならないのです。
そういう意味で古い新しいではなくて
安易に傾いているのだと考えますです。
投稿: キッド | 2009年7月19日 (日) 15時15分
>訂正・・・深田恭子以外はほとんどクソドラマです。
まったくもって同感です ̄▽ ̄
前半の30分で見るのを諦めようかと思いました。
ちなみにスパイの名前を聞いた時
てっきりウッチャンが出るかと
思ってたんですけど(; ̄∀ ̄)ゞ
なんとか見ましたけど
ようこんなん作ったなぁって感じですねぇ。
これがクドカンだったらと
君塚さんはフジで大人しくして下さいと
思ってしまう今日この頃です(; ̄∀ ̄)
投稿: ikasama4 | 2009年7月19日 (日) 19時00分
>土曜日「こち亀」「スパイ」で鉄壁のリレーを期待していただけに・・・。ものすごくガッカリだ~。
私も、見ながらため息・・・なのでした。
2時間だから、せめて初回はCG使ってカッコよくしても良かったのにと思いました。
なので興味は受付嬢の三原勇希ちゃんに!
明日の「sakusaku」(TVK)で、黒幕=ヴィンちゃんが何というかが楽しみです。
さて、録画したリミットでも見るか・・って感じです。
投稿: シャブリ | 2009年7月19日 (日) 20時55分
✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥
ちょっと期待が大きかった分・・・
失望感が膨らんで
口が過ぎたかと反省しています。
でも画伯が同感してくれたので
よかったーっ・・・
言いすぎじゃなかったーっとホッとしています。
まあ、来週1時間でコンパクトになれば
平気かもしれません。
それから最近「BOSS」「MR.BRAIN」と
豪華ゲストドラマが続いて
感覚ちょっとおかしくなっています。
まさか・・・来週のゲストが
ディブだけってことはないだろうけど。
ウッチャンクラスが出てもおかしくないんですよね。
長さんだって・・・CGで再現される時代だ。
さすがにそれは無理か。
後は杏パパとか。
唐沢寿明なんかもいいよなあ。
矢田亜希子も復帰しているし。
前田姉妹も捨てがたい。
美人スパイなら奥貫薫はかかせないし。
ニコロボが交錯するなんてお遊び得意だろうに。
まあ・・・初のスパイもの・・・というフレーズに
自社ドラマをなかったことにしているのかっ
ということを言いたいわけですが・・・。
ああ・・・クドカンによる華麗なるスパイ・・・。
見たいですなーっ。
たとえ視聴率氷点下でもーっ。(; ̄∀ ̄)ゞ
投稿: キッド | 2009年7月20日 (月) 17時30分
▯▯black rabbit▯▯シャブリ&飯綱遣い様、いらっしゃいませ▯▯black rabbit▯▯
まあ、結局、来週の通常版なら
なんとか見れるのかも・・・
とそこはかとない期待をしております。
2時間持たせるネタじゃなかったし・・・。
もしも・・・来週、前編だったら
どうしようと言う恐怖もあるのですけれど。
ふふふ・・・さすがはシャブリ様・・・
ガッキー下世代のニコモ出身者に
ロック・オンなのですな。
「サラ金」(2008)からココですが
ちょっとケバいので
キッドはあまりそそられないのです。
それからテレビ神奈川は
映りが悪いんです~。
まあ、ユウキはダメで
もげっにはそそられるという
キッド内部の判定基準も
よくわからないのです。
http://nicolog.nicola.jp/article/3435379.html
こういう感じは悪くない気がしないでも
なかったりしてーっ。
まあ・・・リミットも
「殺す」「殺す」って公言してるところが
クサイのですなーっ。
止めてくれって泣いて頼んでるってことでしょう。
キッドは黙って殺すタイプが好き。
ドラマになりにくいわーっ。
投稿: キッド | 2009年7月20日 (月) 17時45分
どうも、キッドさん。お久しぶりです。
2年前の今頃、井上&井上コンビのCX「ファースト・キス」を毎回ハラハラしながら見ていたことを思い出します(豪華なキャスト陣と裏腹に脚本、演出が残念だった…><)。
日テレのドラマは個人的に好きになれないのですが、脚本が「踊る大捜査線」シリーズの君塚良一氏ということで、恐る恐る見てみました…。が、これはヒドイ!!
芸人を起用しすぎな上、長瀬の亡き母親エピソードがあまりにもベタ、コメディと謳うには値しないグダグダっぷり…。キッドさんのご指摘どおり、手を出すべきでないジャンルですね。せめてCXでやってほしかった。「SP」などの実績ありますし。
ところで、井上真央の女子高生役は演技の安定感を伺わせますが、演技の幅(結局根底は“健気な女の子”)がもっと広がらないかな~と思います。やっぱり、月9での要求が高すぎて(病弱・わがまま・恋に憧れ・兄を不憫に思いつつ好き、という無茶なキャラ)、再びコケるのを避けるあまり安全な役を事務所が選んでるんですかね・・・。
投稿: ys_maro | 2009年7月23日 (木) 23時26分
♬♬♬のだめデスヨ♬♬♬ys_maro様いらっしゃいませ♬♬♬のだめデスヨ♬♬♬
「銭ゲバ」の冴えた演出から一転、
非常に大雑把な演出で
無難にまとめてきた感じがする初回スペシャル。
ちょっと細部がガッカリなのでございますね。
井上真央の最近といえば映画「花より男子F」の
後は「あんみつ姫2」ですからな。
しかも秋の映画は難病純愛少女マンガもの・・・。
ゲロゲローっでございますね。
そして久しぶりに登場するとなんちゃって女子高生。
「あんみつ姫」といえば小泉今日子なのですが
実は脚本をベースに考えると
今回の井上真央の役は
「踊る大捜査線TM」の日向真奈美(小泉)的な
キャラクターであったと考えられます。
日向は「羊たちの沈黙」のレクター教授の
パロディーですが
あのキョンキョンが歯列矯正器具を
つけた猟奇殺人犯人(天才)を演じたわけです。
今回の亜美の役柄をまとめると
・総理の孫娘であることを理由にいじめを受ける
・爆弾について犯人レベルでくわしい
・・・といういじめられっ子の爆弾おタクという
恐るべき一面が感じられます。
つまり・・・演出次第では
あのキョンキョンと同じムードのキャラに
なりえたわけです。
そうしなかったのが
演出の意図なのか
事務所の方針なのか
本人の解釈なのか・・・は不明ですが
どうせハチャメチャなんだから
脚本通りに冒険すれば良いのに
とキッドは思いました。
まあ、「キッズ・ウォー」シリーズの茜。
「花より男子」のつくし。
と当りを2本もひいているので
そのうち3本目をひくだろう・・・
それまでは「そんなこと」はさせられない
と誰かが思っているのかもしれません。
まあ・・・夏休みドラマで
視聴率はあの出来からは
想像できないまあまあさ。
つまり、子供たちはそこそこ楽しんだ・・・
ということなので
あまり強くは申しませんが・・・
こんなドラマしか与えられない
日本の子供たちは・・・大雑把に育つこと
間違いないと考えるのでございます。
投稿: キッド | 2009年7月24日 (金) 01時14分