救命するぞ救命するぞ救命するぞ(江口洋介)世話女房24時(松嶋菜々子)急患は会議室でも(北乃きい)
出ますよね。出ます。人間のいるところならどこでも。
医療行政と医療現場の落差みたいなものを描くのは相当に勉強しないとならんだろう。
世界に食料はあまっているのに餓死者が出る問題を基本とすると・・・流通という言葉が浮かんでくる。
旅客機の中で急患が発生するとキャビン・アテンダントは「お客様の中にお医者様はいませんか?」と叫ぶわけだが・・・ここには選ばれたものの責任と義務という言葉が浮かんでくる。
どうしても足を切断したくない医師がハウスにいる海外ドラマでは「どのように生存したいのか」という欲望の問題が浮かんでくる。
貧しいのでお薬代が払えませんという時代劇を見ていると・・・悲哀と言う言葉が浮かんでくる。
今夜死んでもいいからきれいになりたいという歌を聴けば・・・人生という言葉が浮かんでくる。しかし、これからは美容整形外科医・工藤(國村隼)も少し思い浮かぶかもね。
で、『救命病棟24時(第4シリーズ)・最終回』(フジテレビ090922PM9~)脚本・一色伸幸、演出・河毛俊作を見た。演出家は「沙粧妙子~最後の事件~」(1995年)とか「きらきらひかる」(1998年)とか最近では「わたしたちの教科書」(2007年)がある。何れも名作といっていい作品でテキストとしては最適である。そういう意味では今回はいろいろあって不完全燃焼と言えるかもしれない。しかし・・・とにかく最終回はぎっしり言いたいことをつめこんで無難にまとめてきた・・・と言えるだろう。返す返すもアクシデントのなかったヴァージョンを見てみたいのだが・・・まあ・・・そんなこと言ってもな。
困難を克服する英雄がいるので根本的な問題が解決しないという問題がある。
たとえばまもなくドラマになる「坂の上の雲」で描かれる日露戦争にもそういう側面がある。
小国・日本と大国・ロシアでは勝負にならないはずだった。しかし、日本は現場の人々の異様な活躍でロシア陸軍を撃退し、バルチック艦隊を殲滅して戦争に勝ってしまうのである。その結果・・・成せば成るという精神論は発言権を得て・・・米国との太平洋戦争で悲惨な結果を招くまで無理な戦争を続けていく。
竹槍で戦略爆撃機を撃墜できるわけはないが・・・そんなことを言ったらできるものもできなくなる・・・と言われてしまうのである。あげくの果ては人間を誘導装置と考えた特攻作戦が展開されるのだ。
いわばこのドラマにおける進藤先生は「目の前のB-29を竹槍で撃墜してしまう」スーパー・ドクターなのである。
・・・おいっ・・・黙って聞いてればそのたとえ・・・たとえとして機能しているのか?
まあ・・・いいじゃないか・・・夏ドラマも最終回シーズンでストレスがたまっているんだよ。
一方、第4シリーズの主要キャラクターである澤井医局長(ユースケ・サンタマリア)は「高高度戦闘機の設計および生産そして実用化のためのシステムを構築しなければB-29は撃墜できない」と主張するふつうのドクターである。もちろん・・・ただのドクターではなく、それもまた優秀なドクターてあると言える。
そういう計画をたてるのは本来、官僚の役目だからだ。しかし、ベンチがアホだから野球ができへん的に・・・政治活動に参画していく澤井なのである。その野球のたとえももう知ってる人少ないと思うぞ。
国家予算の医療費の枠を増やし、さらに救命医療にかける割合を増すこと。そのための過程をもう少しくわしく描くべきだったのだが・・・勉強不足なのか・・・スケジュールの問題なのか・・・あっさりである。
その部分はこうなる。
政治家(佐戸井けん太)「ボク、フィンランド語ができるんだ・・・健康診断は必ず受けてくださいね・・・(おいっ)・・・政治は駆け引きなんですよ。今回は見送る。しかし次回は獲得するみたいなね。今回の医療改革会議では予算の話はなしでお願いしますよ」
澤井「・・・犠牲者は何人ですか。何人殺せば予算をくれるんですか」
澤井の上司である守谷・高度救命センター長(小野武彦)「私の部下の命を何だと思ってるんだ!・・・(おいおいっ)・・・政治家は信用できないぞ。君がドン・キホーテにならないことを祈っている・・・ご苦労さん」
澤井「ボクと雪乃さんの新婚生活はどうなったんですかね・・・(おいおいおいっ)・・・私の尊敬する現場の救命医の言葉を紹介します。助けられる命を見捨てるのは犯罪だ・・・以上です」
まあ・・・こんな感じかな。・・・違うだろう。
とにかく・・・「目の前の患者を助けるために24時間勤務、1999年から無遅刻無欠勤」の進藤先生ではもたないし・・・「理想を政治で実現するためには時間がかかる」澤井では急場をしのげない。
そこで小島(松嶋菜々子)である。澤井「救命のお母さんになってください。そして医師たちにちゃんと休暇をとるように叱ってください。特に進藤先生対策をしっかりお願いします」
小島「つまり・・・進藤先生の首に鈴をつけろってことですか・・・」
さて・・・研修医としてはキャスティング的にやや弱い工藤先生(石田卓也)・・・案の定、最終回はミスしたわけでもない患者の死に過剰な責任を感じて鬱を発症、自殺未遂である。
最後に目が覚めるだけの出番である。
代わりに登場するのが工藤の父(國村)なのだった。
工藤・父「私は人を殺さないですみそうな美容整形を選んだんですが・・・息子はあえて救命を選んだ・・・」
進藤「なぜでしょう?」
工藤・父「その答えは・・・あなたが一番ご存知なのでは・・・?」
(答え)次のみっつのうちどれでしょう?
1、ナース鴨居(北乃)が好きになった
2、ナース山城(木村多江)を好きになった
3、ナース坂口(西原亜希)が好きになった
・・・正解ないだろう。だって脚本がお茶の間に丸投げなんだも~ん。
進藤「オレが救命中毒だっていうのか・・・」
小島「奥様のお墓参りにいってください・・・」
進藤「お彼岸だからか・・・季節ネタじゃしょうがないな・・・」
しかし・・・大爆発事故発生。次々に到着する救急車。三台の救急車のどれかに進藤先生がのりこんでいるか・・・進藤先生が治療した患者が乗っていると読んだ人。ハズレです。
さらに「患者受け入れ要請」で小島が「ああ・・・どうしよう」と思ったときに足から登場するのが進藤先生ですから。
そして・・・新兵器ドクター・カーを自ら運転して現場に向かう進藤。そんなことをしているから撮影スケジュールが・・・おいっ。その件はもういいだろう。
そこにかけつける澤井。「私も救命医ですから・・・」である。
しかし・・・澤井の理想を受け入れる進藤。「現場はオレと小島がなんとかする。あんたは上から金をぶんどってきてくれ・・・」
たちまくる死亡フラグ。さらに二次被害を防ぐための救急マニュアルをベテラン医師二人で無視しまくり。
しかし・・・二人は奇跡の生還。進藤先生万歳です。
そして・・・俺たちの戦いはこれからだオチです。
まあ・・・そこそこ面白いからいいか・・・。
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コメント
キッドさ、、こんばんは。
最終回、よかったです。全7話って、なに?って感じですが、今までの6話全部より良かったわ。
実は私、進藤先生の熱烈なシンパですので、やっと、進籐先生が帰ってきたという気がしました。こうでなくっちゃねえ。
新春SPって、楽しみだけど、心配も少し、大丈夫か?
スーパーかっこいい進藤先生を期待してます。
投稿: youko | 2009年9月24日 (木) 22時37分
お別れの挨拶したばかりなのにもう再会ですな。
まあ、最終回は2話分なので
実質全8話ですね。
シリーズものなので
一話完結の読みきり形式と
シリーズ・テーマの展開が
複合されてまったりの24時なのですが
まあ・・・今回はバタバタがあってバタバタなのですな。
「ER」シリーズの最終回とくらべて
実にまったりなのはお茶の間向きでした。
病的に救命する進藤。
健全な目でそんな進藤を敬愛する小島。
このコンビネーションが
確立されたシリーズとも言えます。
これに繊細すぎる管理職ドクター澤井を加えて
あらゆるものの限界点がどこにあるのかを
探っていく趣向は完全に未消化でした。
まあ、アクシデントの発生で
キャストのキャンセルが出て
僥倖を感じた役者さんがいたかもしれませんね。
限界点を感じつつ歯をくいしばる進藤。
限界点を見定めようとする小島。
限界点を引き下げようとする澤井。
この三人の到達点を描くスペシャルになるのかもしれません。
場合によってはシリーズ最終回になるかも。
まあ、テレ朝のように「相棒」→「9係」のような
「コドブ」→「24時」の
永遠循環も楽しいかもしれませんがね。
投稿: キッド | 2009年9月25日 (金) 14時59分