手取り21万円が7万円になったらやってられっか(小泉孝太郎)兄弟手切れの天地人(妻夫木聡)
天下分け目の決戦・・・関ヶ原の戦いでは著名な、真田信之・信繁(幸村)の東西分裂など、親子兄弟が敵味方に分かれるケースがあるわけだが、これは家名存続をはかる意味もあっただろうが、それぞれの血縁関係から必然的にそうなる場合もある。また実際に兄弟仲が悪いことも原因となるのである。
前田利家の長男・利長と次男・利政の場合は兄が東軍、弟が西軍であった。本多正信の倅では兄・正純が東軍、弟・政重は西軍である。
豊臣兼続、大国実頼の兄弟はそろって西軍だったわけだが、関ヶ原合戦後、東西に分かれるわけである。大国実頼の上杉家からの離脱が江戸幕府の開闢と時を同じくしている以上、東西冷戦の中で暗躍するスパイが連想されるわけである。東西の暗闘はベルリンの壁崩壊・・・大坂の陣まで続くわけだが実頼にいたっては追放された。いや出奔した。出奔後すぐ(1605年)死んだ。いや実は還暦過ぎ(1622年)まで生きていた。・・・などと生死さえ定かではない。
これを忍びと呼ばずしておかれようか。
で、『天地人・第43回』(NHK総合091025PM8~)原作・火坂雅志、脚本・小松江里子、演出・尾崎裕和を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。戦国の非情さ、人間の凄惨さを描くならば・・・実頼の生死不明をいいことに家康に土下座して謝罪する兼続が家康に「謀反の疑いをかけられたならば妻子の命さえ手にかけねばならぬのがこの世じゃ・・・上杉にその覚悟ありやなしや・・・」と問われると・・・「大国実頼が首・・・持参いたしまして候」とすでに塩漬けにされた実頼の首を披露するという展開が見たかったのですな・・・まあ・・・このスタッフではありえませんけど~。どうせ捏造するならとことんして欲しいですな。兼続が苦しい言い訳をして去った後の本多父子の会話は父「相変わらず、兼続は何を言っているかわからんのう・・・」息子「まあ・・・あの調子なので上杉は道を誤ったわけですから・・・」父「もう・・・政重を養子を出して・・・なんとかしてやらんと民が憐れじゃのう・・・」であったに違いありません。まあ・・・それは兼続が悪いのではなくて脚本が極悪なだけなのですけれど~。・・・実際の家康は必要以上の命はとらない主義なので昌幸だって利政だって毛利(縮小)も宇喜田(追放)も島津(安堵)も長宗我部(追放)も上杉(縮小)も存続できたという歴史的事実があるわけですからねえ。
慶長九年(1604年)、この年の梅雨の季節・・・上杉家では後継者の玉丸(定勝)が誕生している。母・おまんの方は藤原北家閑院流西園寺家一門の四辻公遠の娘だが難産のため産後の肥立ちが悪く夏の終わりに落命した。おまんの方(桂岩院)は直江家の養女として側室にあがったのでお船が玉丸の養育にあたることとなる。後に四辻公遠の娘・与津姫が後水尾天皇の寵を徳川秀忠の娘・和姫と争うことになり、公遠が一時期失脚したりするため・・・玉丸の母が四辻家の出身であるこが憚られた時期があるためにおまんの方の出自には薄いベールがかかっている。その頃、貧窮した上杉家では後継者誕生という光も曇りがちだったのである。一挙に三分の一の稼ぎとなった大国家も例外ではなく・・・台所事情は苦しかった。しかし、京の事情に詳しい大国実頼は上杉家の外交官として上方を動くことはできなかったのである。
その実頼の京屋敷に忍んでくるものがあった。・・・くのいち淀の方である。
実頼は42才になっている。淀の方(大虞院)は35才である。二人の関係は長い。実は早世したと言われる秀吉と淀の方の第一子・鶴松は実頼と淀の方の子であった。実は鶴松は生きており・・・信州の隠れ里で育ち・・・現在15才になっている。名は佐助である。現在、11才になっている第二子の名は豊臣秀頼である。第一子が何故神隠しにあったのかは忍びの掟により語ることはできないのだが・・・第二子もまた淀の方と実頼の子であることは名の示す通りである。知らぬは秀吉ばかりなりなのであった。淀の方の秘術をもってしても秀吉から子種を吸い取ることはできなかったのである。
もちろん・・・実頼にはその実感はない。実頼は最初の上洛以来・・・淀の方の傀儡(くぐつ)の術の支配下におかれている。
夢現の狭間で淀の方を抱き・・・そして心を操られているのである。
淀の方は大坂城を抜け出し一日千里(普通、人は一日十里(40キロメートル)の旅をする)を走る神速の術で京の都に出没しているのだ。
淀の方は実頼に玩具としての愛着を感じていた。
「小太郎(泉小太郎=樋口与七=大国実頼)よ・・・汝も老いたのぉ・・・」淀の方は精気を吸い取った実頼の男根の周囲に白い陰毛を見つけ嘆息した。夜の闇の中でも淀の方には真昼のようにものが見える。淀の方はまったく老いを感じさせない。まるで二十歳のような若さを発散している。小太郎はことの終った後・・・うつろな目で天井を見ている。その口元には至極の快楽を味わった後の微笑みが浮かんでいた。内腿を伝う愛の名残を感じながら小太郎を見つめる淀の方には茶目っ気が浮かんでいるが・・・それは一種の暗さも含んでいる。
淀の方にいつどこで何者の手によって闇の血が流れたかは定かではないが・・・大谷吉継がそうであったように淀の方も西洋から紛れ込んだ闇の主から血を受けたのである。
一般に闇の血に適応できるものは万人に一人と言われる。適応したとしても吉継のように体組織の崩壊という副作用が出る場合もあるし、死霊舞いと呼ばれるゾンビ化を起す場合もある。淀の方は幸運にも悪しき副作用に犯されず超人的能力を手にしたのである。不老・・・神速・・・そして幻術・・・闇の主の力は淀の方の体内に定着していた。ただし・・・血を与えることはできない。闇の主になれるのは男性だけだからである。美しき闇の女王と化した淀の方だったが・・・その心には冥界の陰りもまた宿っている。
それは一言で言えば滅びへの希求である。淀の方の心では人としての生への欲望と魔族としての死への渇望が怪しく交錯している。
「のう・・・小太郎よ・・・家康は征夷大将軍となったそうだ・・・。征夷大将軍となったは・・・汚れたものを払う勤めがあるからじゃろう・・・その汚れたものとは・・・どうやら妾であるらしいのだがや・・・。しかし・・・妾もそう簡単に滅びてしまうのも口惜しいからのう・・・悪あがきをせねばならん・・・上杉も豊臣から徳川に乗り換えるそうじゃが・・・これは許しがたきことじゃ・・・汝も太閤がご恩をよもや忘れぬであろう・・・まして今や関白は汝の血を分けしいとしごじゃ・・・どうかの・・・上杉家家老の直江と徳川家謀臣の本多の縁組・・・潰してしまうことはできんかの・・・」
実頼は惚けた顔のまま・・・コクリと頷く。
淀の方の顔に遊戯の仕上がりを示す冥い喜びが浮き上がった。
大坂から伏見に向かう駕篭の中で兼続は驚愕の知らせを受ける。
兼続は江戸から廻船で大坂に渡り、秀頼に挨拶した後で家康にご機嫌伺いに向かう途中であった。
知らせを届けたのは服部半蔵影の軍団の中忍・服部半蔵影四郎丸である。
「なんと・・・実頼が乱心したと・・・申すか・・・」
「京の上杉屋敷にて本多・直江双方の世話役が政重様婿入りの算段を相談している折、実頼殿が乱入、多数の死傷者を出してございます・・・」
「そんな・・・実頼がそのようなことをする道理が・・・」
「わが父・・・服部半蔵が申すところでは・・・実頼殿にくぐつ使いの気配これあり・・・」
「馬鹿な・・・実頼は・・・泉小太郎・・・そのような術に・・・」という言葉を飲み込んで兼続は駕篭を降りた。
その一瞬後、兼続は樋口の与六に戻り、猿飛の術で山を越えた。最短ルートで京を目指す。護衛の軒猿衆が及ばぬ速度であった。
兼続が京に辿りついた頃・・・服部忍軍と支援する柳生忍軍の猛襲を受けた実頼は鴨川の畔に骸を横たえていた。周囲には百を越える徳川の忍びが屍を累々とさらしている。
秘術を尽くした死闘はすでに終焉していた。
兼続は呆然と立ちすくんだ。その傍らに柳生新左衛門が跪く。
「直江山城守様とお見受けいたす・・・拙者・・・柳生の忍びを束ねるもの・・・憚りながら大国様を討ち取りし申した・・・かの方は恐ろしき・・・忍びでごさりました・・・」
兼続は搾り出すように答えた・・・。「かたじけのう・・・ござる」
兼続の心に暗雲が湧き上がった。
(これは・・・なんとしたことぞ・・・これは・・・与七・・・与七)
関連するキッドのブログ『第42話のレビュー』
火曜日に見る予定のテレビ『オトメン(乙男)・秋』『リアル・クローズ』(フジテレビ)『ケータイ刑事銭形命』(TBSテレビ)
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皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
今年度の税収が40兆円を下回るのではないかと
言われている中で、どこぞの与党は自らの信念=マニュフェストのために
今年度の税収を上回る国債を発行しようとしているようで
野党の時はあれだけ国債を出すのはよくないと言ってたのに
こういうのを見てしまうと
「義」とか言ってるのは所詮口先三寸でしかないと
思ってしまう今日この頃
まぁ大国実頼が徳川家康の罠にかかり
この失態のために自害して御家を守るって展開でも
ヨカッタのかもしれませんが、そんな展開は
毛頭なかったんでしょうね。
それにしても本多親子=宍戸親子にはバカウケです(゚∀゚)
そして、於松は白血病で死ぬのでしょうか(ノД`)
投稿: ikasama4 | 2009年10月27日 (火) 21時51分
まあ・・・上に立ってみないと
見えない景色というものが
ございますからね。
今日は自衛艦が韓国船にぶつけられちゃってるわけですが
野党が与党の責任を追及するのかどうかも
見物ですな。
まあ・・・「責任」という言葉は
「義」と密接に関係しているような気がします。
とにかく
①兼続には失敗はない
②兼続を讃えないものは悪
③なるべく子供の頃を思い出す
この三点セットで
最後まで押し通すのですな
辻褄とか
歴史的事実とか
そんなものは断固粉砕です。
ものすごい独裁体制が敷かれているらしい。
なんとなく北の人民の気分を
大河ドラマファンに味わえと言ってるらしい。
だから・・・もう少し工夫すれば
とか口がさけても言えないムードです。
耐えるしかないのですな・・・もうすぐです。
もうすぐ終ります。
ふふふ・・・妄想の方はあと
淀の方と実頼が・・・めぐるになってます。
これは天の配剤です。
神の気配を感じましたぞ。
小泉ロイドはいませんよね?
投稿: キッド | 2009年10月28日 (水) 02時16分