白い褌の旗の少女(八木優希)
少女は死線を潜り抜けた。
ガマ(洞窟壕)のじいじとばあばは白い褌を裂いて白旗を作ってくれた。
少女は戦後を生きた。
テレビ東京をなめたらあかんぜよ・・・か。
で、『白旗の少女』(テレビ東京090930PM9~)原作・比嘉富子、脚本・神山由美子、演出・土方政人を見た。沖縄戦を描いた傑作と言っていいだろう。まず、テレビドラマとしては限界まで挑んだといえる「悲惨」の描写がいい。悲惨から目を背けて戦争を描こうとし続ける民放各局は見習ってもらいたいよ。・・・っていうか沖縄でオンエアないのかよっ。
全編を通して違和感があるのは昭和52年(冒頭)と平成21年(末尾)に登場する戦後の富子(38)と富子(70)を演じる黒木瞳だけである。しかし、これは戦争の時代と平和の時代の異質性を表現していると考えることにする。平和の時代、おばさんもおばあさんも区別がつかないのはよくあることだ。まあ・・・役作りとして女優としてそれでいいのかっとは思いますけど。ちなみに黒木瞳の実年齢は48才である。若作りはしても老け役は拒否なのか。時々、鼻につくよな。今回、中身が秀作だっただけに浮きまくっていたが・・・そこがいいと本人とその周辺は思っているのかもしれない。あと特殊なファンもね。ま、ザ・黒木瞳としてはそれが正解なのかもねーっ。
ともかく・・・実在の富子は昭和52年に写真集で自分の写真を発見し・・・それが6~7才で沖縄戦を体験した自分であることを知り自らの体験に基づいた物語「白旗の少女/比嘉富子」を執筆する。あくまで物語なのでそんなバカなっという出来事の連続だが・・・それが荒唐無稽ではないところに戦争の悲惨が満載なのである。
昭和19年。すでに大日本帝国の敗色濃厚な太平洋戦争の末期である。しかし、沖縄県の首里に住む農民・松川一家はまだまだのどかな思い出を残す。
二人の男子は出征、母は病死した松川家は一家そろって畑仕事をする。
その帰り道・・・父・直彰(石黒賢)におんぶされる富子(八木)だった。10才になる兄の直裕(神谷涼太)は「おねむのふり」をするからかうが、父も二人の姉・・・18才には見えないヨシ子(鈴木杏)と15才だけど16才の初子(大平うみ・・・沖縄は美少女しか生まんのか)・・・も妹が微笑ましいのである。
お約束で登場する画家志望の陸軍兵・光男(勝地涼)と初子の淡い恋の情景も一瞬でたちまち始まる昭和20年の沖縄戦である。
軍のための食料調達に出たまま戻らぬ父。首里には上陸した米軍が迫り、ヨシ子は妹二人と弟一人を連れて行方不明の父を探すために真壁に向かう。
真壁にたどり着いたヨシ子たちだが父の行方は知れない。
米軍機による上陸支援のための無差別銃爆撃が続く中、水を汲みにいった初子が戻らず、探しにいったヨシ子の留守中に・・・負傷した日本兵によってガマ(壕)を追い出された幼い兄と富子。
姉を探して戦地を彷徨う兄妹。基本的に初子はここからサバイバル状態になります。
①留守の家では「ありがとう」とお礼を言えば盗み食いは許されると教えるにいに。初子は空腹は父の教え「他人のものを盗んでいけない」より強いことを知るのです。
②最初は他人にも水を恵んでくれた沖縄の優しい人々は追い詰められると自分のことしか考えられなくなる。兄妹は食べ物を恵んでもらうどころか、ガマに入ることも許されない。
③にいにの生き残りのテクニックその2。人の行く道とは逆を行け。かくれんぼの必勝法であるこの教えに従い、逃げる人々の来る方向に進んだ兄妹は逃げ遅れていた姉に再会できる。
ちなみに初子が遅れたわけは優しいおばさんが爆撃中、井戸に落ちて死に水が汲めなくなっていたためだった。四人のいたガマは爆撃で崩壊し、兄妹を追い出した日本兵は生き埋めである。
再会を喜んだ姉妹たち。しかし、一夜を過ごした米須の浜で朝一番の爆撃で被弾したにいには富子を腕枕したまま死亡。
ヨシ子「もしも富子だけが生き残ったら米須ににいにの骨を拾いにくるんだよ」と不吉な命令である。ちなみに鈴木杏はもう八木優希のお母さん役ができるよね。
ふたたび始まる沖縄・死の行進。しかし・・・幼い富子は赤ン坊に気をとられた隙にたちまちはぐれてしまうのだった。
④ここから本格的に幼女一人旅である。父に教えられた通りに野の食べ物で自活する富子。死んだ兵隊さんは金平糖を隠し持っていたりする貴重な食料源なのだった。
しかし、突然息をふきかえして足をつかまれたりするとこわいので充分に死んでから接近することが大切です。
⑤にいにの生まれかわりであるウサギの導きで爆撃を逃れる富子。
⑥姉を探して昼間からガマめぐりをするので市民からは石を投げられ、「多数の安全のためにかわいそうだが殺す」と決意した将校(渡辺いっけい)からは日本刀をかざされて追いかけられます。あげくの果てに断崖絶壁から墜落する富子。・・・しかし九死に一生スペシャル的に途中の枝にひっかかり無傷です。
⑦雨期のために・・・逃亡中の人々は雨水で命をつなぐ。
⑧もう草臥れ果て、至近弾もへっちゃらの富子。
⑨自決組にさそわれますが手榴弾不足と血縁主義の壁に阻まれて天国から退場。
⑩血の池地獄の水を飲み・・・遠くのミソの匂いを嗅ぎ分ける超感覚が発現した富子はついに安住の地を見出すのである。
手足を失ったじいじ(菅原文太)、と視力をうしなったばあば(倍賞千恵子)のガマにたどりついた富子。
そこではじめて子供らしいあつかいを受ける。
富子「すぐにでていきますからっ」
じいじ「でていかんでもいいさー」
富子「本当?」
じいじ「童子(わらし)は笑さ笑さ・・・」
こうしてじいじの傷口にわいたうじが骨肉を食う音を子守唄に富子は安堵します。
やがて「戦争は終りました。穴から出てきてください。穴は危険です。もうすぐ穴に爆弾を投げ込みます」という米軍所属の日系二世の投降勧告が密林に響く。
じいじ「白い布を出せ」
ばあば「包帯にしようと思っていた褌がある」
じいじ「それじゃ」
富子はじいじとばあばの作ってくれた白旗をかかげ・・・胸をはって降伏する。
やがて・・・捕虜収容所で再会する姉妹たち。姉妹たちの戦後が始まったのである。
八木優希・・・子役としての集大成とも言える珠玉の作品はこれだ。
ちなみに視聴率は10.4%でした。
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ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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