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2009年10月31日 (土)

この世の闇の作り方(仲間由紀恵)友情と宿命の嬢王V05(原幹恵)

人にとって世界は闇そのものである。そういう考え方もあるわけだが、「陽のあたる場所」は光に満ちている。光と闇はこの世を示すもっともシンプルなシンボルのひとつである。

昼と夜。それは光と闇の存在を人に教えてくれる。光の中で人は自由を感じるし、闇の中で人は平等を感じる。光は心に闊達をもたらすし、闇は心に安寧をあたえる。

健やかな人は光にも闇にも美点を見出す。

しかし・・・時に人は闇をおそれる。暗いところで眠ることをこわがる子供のように。闇の中に何か得体の知れぬものが潜んでいる思いに不安になる。

あるいはその気持ちの果てに神秘的な憧れが生じる場合もある。やがてそれは闇に輝きを求める心を生む。

エンターティメントで闇が重要な主題になるのには理由があります。

で、『アンタッチャブル~事件記者・鳴海遼子・第3回』(テレビ朝日091030PM9~)脚本・橋本裕志、演出・唐木希浩を見た。演出が変わりかなり見にくくなってしまった今回だが、脚本的にも一種の転調部分であり、やや雑然と盛り込みすぎたのが粗(あら)になっている。演出はこの世の闇についての考察が不十分だし、脚本はそれを伝える段取りの構成力が未熟なのである。

もちろん、演出力を読み込んで脚本を書くのは至難のワザだが、この世の闇を描くにはそれなりに力量が求められるということです。

まず、前提としてこの世界における「闇の組織」について考えてみよう。ある意味、掟破りの明解さで主人公に敵対する闇の組織はお茶の間に提示されている。

その組織は「永倉ホールディングス」で社長は永倉(寺島進)である。どんでん返しのためのミス・リードが仕掛けられていないとすると永倉は「名無しの権兵衛」を名乗り、マス・メディアに対する情報操作を行っているらしい。ただし・・・「名無しの権兵衛」は別人の可能性がないわけではない。

主人公と闇の組織の対立軸を見ると遼子(仲間)は名無しの権兵衛の正体を暴くための記事を書き、それを「週刊アンタッチャブル」の編集長・樫村(田中哲司)に握り潰されてきた。「週刊アンタッチャブル」のスポンサー企業は永倉ホールディグスである。樫村は永倉社長から圧力を受けているようでもあり、それとは別に「特ダネ」をリークしてくれる名無しの権兵衛に対する持ちつ持たれつの関係への配慮が窺える。

永倉社長と名無しの権兵衛が同一人物と見せかけて実は違うというのはよくある手なのである。

ただ、今回の主題は「闇の組織」であるのでそれについては推移を見守ることにしよう。

金曜日は「アンタッチャブル」が闇の組織にふれた後で「おひとりさま」「マイ・ガール」と自分の人生で精一杯で闇の組織なんて知ったことじゃないという日常のドラマがあり、ローカルだが「嬢王Virgin」で生活そのものがすでに闇社会というサンドイッチになるわけである。まあ、ハムやレタスも食べたいが今日はパンに塗装されたバターとマスタードについて書きたい気分なのだな。

さて、「アンタッチャブル」における闇の組織とは「世論を誘導する組織」と考えることができる。人々が自分で考えていると思うことの多くは他の誰かの考えであることは多い。思考そのものが情報の処理に過ぎない以上、有益な情報をそのままの形で利用するのは経済的だという心のシステムがあるからである。もちろん、そういうシステムは「詐欺」の温床でもある。「息子だと信じて金を振り込む」のも「恋人だと信じて金を貸す」のも自分の考えが自分にとってでなく他人にとって都合のよいものに過ぎないという懐疑をすりぬけて成立する行為なのである。

それと同じように・・・人は「郵政民営化賛成の小泉政権」に投票し、「郵政民営化反対の鳩山政権」に投票する。もちろん、考えが変わるのはよくあることだが、それが誰かに変えられていることもよくあることなのである。

この誰かに変えられること。つまり他人にコントロールされていることに恐怖を感じるかどうかがひとつの分岐点だ。「アンタッチャブル」も「嬢王Virgin」も恐怖を感じているドラマで「おひとりさま」や「マイガール」はその点については興味がないドラマなのである。もちろん、どちらがいいとか悪いとかの問題ではありません。

さて・・・闇の世界がある以上、光の世界があるわけである。遼子は遠山(要潤)に顔を近づけただけでうっとりしたり、その名を怨みノートに記して怨んだり、全くその気がない鷹藤(佐藤智仁)に過剰な欲望を妄想して拒絶したりとかなり心に闇を抱えているわけである。・・・脱線するが、この部分は明らかにボケなので鷹藤はスルーではなくえーっとわざとらしいあきれ返ったリアクションにしないと笑えない。・・・それはともかく、遼子は自分の心の闇は置いて社会の闇を暴くことが自分の使命だと考えている。言うならば、その正義を貫徹することが光の社会を守ることだというのがジャーナリストの建前なのである。

この場合はジャーナリズムが正義であり、その他のあらゆる不正は悪なのである。しかし、本来、ジャーナリズムはビジネスであり、ビジネスである以上、善悪併せ持つのである。少なくとも敵対企業がある場合、各社は互いに自分を悪、他社を善とは位置づけない。

つまり、その根底にあるのは自分以外は敵。敵は悪という考え方である。そういう考え方はあまり得策ではないという考え方もあるが、多くの人間が自分の心を覗き込んでみれば悪を見出すのも必然である。たとえば拉致被害者には同情するが、憲法を改正して北朝鮮に宣戦布告することはできないという人は多いはずであり、それが善悪の共有であることは言うまでもないだろう。

つまり、自分に悪がある以上、他人にも悪があるのは必然で、その悪が恐ろしいから他人を敵であると考えるのはごくまともで健全な考え方であるということだ。

もちろん、それに凝り固まるのは疑心暗鬼というもので敵とも仲良く付き合うのが人間というものなのである。

以上のような心の闇と社会の闇の付かず離れずの関係を描くドラマというものがある。その原型のひとつが「沙粧妙子~最後の事件~」(1995年・フジテレビ)である。犯罪心理を研究するものが犯罪にとりこまれ犯罪者に変容するというスタイルが主人公(光)が敵(闇)を倒すというファンタジーの定番に対するアンチテーゼであることは間違いない。それは「ケイゾク」(1999年・TBSテレビ)に続いて、ここでは光と闇はめまぐるしく立場を変えていく。心の闇と心の闇の衝突なのである。この場合、社会そのものがすでに闇なのである。さらに「トリック」(2000年・テレビ朝日)では闇の社会も心の闇もジョークに過ぎないという究極の黄昏が訪れる。貧乳と巨根という心の闇を抱えたコンビが光を装った闇を迎え撃つのである。

「鳴海遼子」がその系譜に名乗りを上げているのは明らかなのだが・・・そして仲間が「トリック」のヒロインである以上、その資格はあるのだが・・・今のところ、完成度の低さが障害になっていて・・・ちょっと困難な感じになっています。最近ではこの系譜に属する「MR.BRAIN」がありましたしね。

今回・・・遼子は空から降る1億円の雨に遭遇して、スリット美香子ではなくて整形外科医・桂木ミチル(高橋ひとみ)の闇に迫っていくのである。

①アイドル・安奈サクラ(多岐川華子)の整形疑惑を追った遼子と鷹藤。桂木美容整形外科に闇を感じる。

②一流誌「国民ジャーナル」の遠山(要潤)などに「名無しの権兵衛」から桂木病院の顧客リストが流出する。

③その名簿には与党の大物議員・岸川(六平直政)の名前があった。

④岸川は整形疑惑を否定。

⑤一万円札の降った川から美容整形に失敗した死体が発見される。

⑥岸川は献金を受け桂木の不正をもみ消していた。

⑦サクラの妹・ツボミ(小野真弓)はその犠牲者としてすべてを内部告発する。

ここまでが今回の事件なのだがここから・・・転調が始まるのである。

⑧遼子の兄・鳴海刑事(小澤征悦)の活躍で岸川と桂木の悪事は発覚する。しかし、その裏には「名無しの権兵衛」とつながる「日本福祉募金振興会」の影が浮上する。遼子の記事は三度目のボツになるがそれを拾い上げた美鈴(芦名星)は鷹藤の指示に従って自分の署名記事として記事を掲載し発刊してしまう。おタクの人・城之内(酒井敏也)は驚愕し、編集長は破滅の予感に怯え・・・記事の盗用に憤慨した遼子が美鈴をたずねると・・・美鈴の部屋は名無しの権兵衛の強迫的な落書きで埋め尽くされていたのである。

この中で・・・鳴海刑事、城之内、遠山が実に怪しいそぶりをするのである。

どう考えてもつめこみすぎだろう。結局、構図としては総裁候補の一方の側が政敵である岸川を名無しの権兵衛を用いて潰した・・・という図式になっている。

基本的にはよくあることなので「闇の組織」の恐ろしさはもうひとつ伝わらない。美鈴は戦慄するのだが・・・だから芦名星がおののいても訴求力がないんだって言ってるだろうがっ。

大衆は多数派であり、個人は少数派である。闇はそのはざまに潜んでいる。禁煙社会では喫煙者は隠れてタバコを吸い、闇社会はたちこめる煙で一寸先が闇なのである。其の中では紫煙はもはや迫害される悪のシンボルである。そんな社会に誰がしたのか・・・キッドは考えるだけで恐ろしいのに。

関連するキッドのブログ『先週の金曜日のレビュー

で、『嬢王Virgin・第5回』(テレビ東京091031AM0012~)原作・倉科遼(他)、脚本・梶木美奈子、演出・岩田和行を見た。闇の社会と社会との境界線にはいつもお水の世界があるわけである。違法行為である売春と合法行為である接客の狭間・・・限りなく闇に近い世界が舞台である。SMの女王様キャラである沙羅(辰巳奈都子)の客・志賀に同伴を求められた舞(原幹恵)はカラオケ店でレイプされかかる。スタントなしで乳をもまれる体を張った演技である。なにしろ・・・キャバクラ嬢だけどVirginなのである。舞はピンチなのだった。

そこへ駆けつけたのは朋(黒木芽以)だった。朋は志賀を灰皿で殴りつけ昏倒させる。

地獄を見た暗さを雨宮(永田彬)に買われた朋だったが・・・はじめて出来た友達・舞だけはどうしても焼き尽くすことができないのだった。今回は最終決戦の前の舞と朋の友情関係の再確認に費やされる。

朋は志賀に強姦を命じた沙羅に矛先を向ける。

朋「警察には黙っておいてあげるから嬢王レースは辞退するのよ」

沙羅「そんな証拠もないことで警察は動かないわ」

朋「私・・・見たんです・・・沙羅さんが志賀さんに舞さん犯せって・・・命令しているところを・・・って、私ウソ泣き上手いでしょう・・・私の涙の証言は立派な証拠になるのよ」

沙羅「朋・・・恐ろしい子・・・」

沙羅はアドバイザーの亜美(麻美ゆま)に泣きつく。しかし・・・。

亜美「あなたは自分の欲望に負けて犯罪に手を染めた・・・愚かな人間は一生、欲望の奴隷なのよ・・・

一方・・・はじめての体験でショックを受けた舞。なにしろキャバクラ嬢だが・・・Virginなのである。部屋に引きこもり出勤しなくなる。

朋は「地獄を見たもの」としては舞を放置しなければならないのだが・・・舞は朋にとって特別な存在なのでまたしても手を差し伸べるのだった。

海岸に誘い・・・舞に「走る喜び」を思い出させる朋。

舞「・・・どうしてって・・・なんで私がこんなひどい目に遇うんだろうって考えた。考えても考えても答えが見つからなかったの・・・」

朋「つらいことって・・・みんなそうじゃん

舞「だから・・・もう考えることはやめた・・・私・・・最後まで逃げないでまっすぐに走る

こうして舞を救った朋に雨宮は「友情に負けて手をさしのべるなんて・・・お前の地獄はそんなものか・・・」と朋と握った手をきるのだった。

一方、予選最終ジャッジメントに向けて、火花散らす嬢王レース。舞の売り上げを支えているのはドンペリ・ゴールドを入れ続ける桜木(大口賢吾)だった。すべては優衣華(原紗央莉)を予選敗退させるためである。

亜美は脱落した沙羅の後釜に朋を帝王に推奨するが・・・それ以上、上の世界に踏み込むことは拒絶される。窓に胸乳を押し付けられるほどに。

帝王「その女・・・どんな感じなんだ」

亜美「あの声で蜥蜴食らうかホトトギス(宝井其角・・・つまり美しいものでもゲテモノ食いだったりするということ)・・・です」

しかし、朋はタバコの火を指先でもみ消して「私の心はもう死んでいる」と根性を示すのだった。

雨宮の婚約者・香織(かでなれおん)の父で夜の帝王(大河内浩)は雨宮にレース結果を工作するように命じる・・・すべては大物議員である桜木の父親の命令だった。その理由はアンタッチャブルなのである。

しかし・・・雨宮は拒絶し・・・優衣華は予選を1位通過してしまう。

帝王によって優衣華の対抗馬として仕立てられた朋も、前回決勝進出者である亜莉沙(蒼井そら)の応援むなしく敗退してしまう。まして、長期病欠の上、桜木が「接客させてくれないならドンペリ・ゴールドもいらない」などと意味不明な主張をする舞は負けるべくして負けるのだった。舞・・・主役としていいとこないぞ。

荷物をまとめて帰れと云われ泣きべそをかく舞だった。

最後まで走りたかった・・・」だったらもう少し形振り構わずがんばるべきなのだが。

しかし・・・雨宮が帝王に逆らうために桜木に接近・・・「どうして優衣華を妨害するのか」と問う。

桜木「・・・妹だからです

つまり・・・大物議員の娘が嬢王になったら・・・アンタッチャブルなのである。一族の恥だからです。そんなものを目指している主人公は・・・アンタッチャブルなのです。

雨宮「私は女たちのレースを弄ることはできないが・・・演出することはできる

雨宮たちに呼び出された敗残者たち。

「これより・・・敗者復活戦を開始する。勝ち残ったものは・・・優衣華とともに決勝に進出できる・・・ただし一人だけだ」

ふたたび・・・生き残りを賭けて朋と舞のいじめられっこ同志の骨肉の争いが再開するのだった・・・闇の社会もただの社会も社会は社会なのである。(つづく)

日曜日に見る予定のテレビ『天地人』(NHK総合)『JIN・仁』(TBSテレビ)

ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。

皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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