今回は三代目澤村田之助(吉沢悠)が登場する。現在の当代田之助は六代目である。
幕末の正規の芝居小屋はすべて猿若町にあった。現在の浅草六丁目のあたりである。
天保の改革(1841~43)で水野忠邦は遊興娯楽の大弾圧を行い、芝居(歌舞伎)そのものを廃絶しようと愚かに考えたのだが遠山の金さんが助言して封じ込めに留まったのである。
その封じ込め地になったのが猿若町だった。浅草寺の北東の地である。
ここに中村座、市村座、河原崎座、結城座などの芝居小屋が建っていた。
猿若町の北には山谷堀が流れている。これを西に進むと吉原大門である。吉原は浅草寺の北西にあるわけだ。
浅草寺、猿若町、吉原遊郭は江戸庶民の娯楽のトライアングルを形勢しているのである。
ただし、浅草寺にも猿若町にもないものが吉原にはあった。それがお歯黒どぶである。大門以外はこの溝で囲まれ外の世界から隔離されているわけだ。もちろん・・・遊女の逃亡を許さないためだ。
ここには伏見丁、京丁、江戸丁などという結界内の町が連なり、夜の遊びが繰り広げられていたのだ。
芝居小屋の周囲には芝居茶屋と呼ばれる高級料理店も密集していた。
ちなみに田之助の屋号は紀伊国屋(澤村家初代が紀伊国出身だった由)だが・・・引退後は芝居茶屋・紀伊国屋を経営したのだった。田之助の父・五代目澤村宗十郎は芝居茶屋・泉屋の出身だった。役者と芝居茶屋には密接な関係があったのである。
一方、吉原にも揚屋茶屋があり呼び出し花魁を呼び出すために客は大金を払って一席設けるのである。
この周囲にそこそこうまいものを出す店があると言われる所以である。
本題に入る前に恒例の週末の視聴率チェック。「アンタッチャブル」↘*7.9%(やはり鳴海ではなくて山本遼子とかにしておけばよかったのかな)、「おひとりさま」↗10.5%(行列48時間が裏だからな)、「行列48時間」↗*3.3%(二本立てでかわいい視聴率達成)、「マイガール」10.1%(魔法使い萌々果最強伝説)、「シーラカンス殺人じけん」*9.9%(平愛梨ダブルブッキングの果てに)、「小公女セイラ」→*8.4%(→キターッ)、「サムライハイスクール」↘*9.9%(室井滋の回じゃな~)、「上戸彩の結婚」16.8%(謎の家族、しかもダブル)、「HERO(再)」18.8%(こんなに安上がりなことって・・・)、「外事警察」↗*5.3%(あえぎつつ微上げ)、「坂の上の雲」17.7%(わははちん)、「仁」↗22.3%(わははははぽが)、「世界フライ級タイトルマッチ内藤VS亀田(兄)」43.1%(わはははははははははかゆうてたまらん・・・日本はハングリーになったのだな)・・・ついでに「東京DOGS」↗15.3%、「タイトルマッチドキュメント」10.7%(東京ワンワンはボクシングの八百長ネタならもっと爆笑だったのに・・・最後の試合を投げさせて逮捕・・・純真なファンの気持ちを傷つけることこの上ないな)以上。
で、『JIN~仁~・第8回』(TBSテレビ091129PM0925~)原作・村上もとか、脚本・森下佳子、演出・川嶋龍太郎を見た。未来の未来(中谷)というオリジナル・キャラクターを配置したことでアナザー・ワールドとしての色彩の強いこのドラマ。終盤戦というかまとめに入ってきているのだが・・・予想外のヒットでかなりバタバタしているのではないかと妄想する。仁が現代に戻ってくるということで終らせる予定が結構、うれしい誤算になっているのではないかと思うのだな。まあ・・・来年は大河が「龍馬伝」という含みがあって・・・もう・・・そりゃ・・・いろいろ迷うわな。とにかく・・・ここまで八回、毎回泣かせてきたものすごいコンテンツであることは間違いないけど。
未来から幕末に突然やってきた仁は・・・いろいろあってついに病院「仁友堂」を立ち上げる。そこが橘の家を間借りしているのかどうかは謎だが・・・ものすごく近所にあることは間違いないと思う。咲(綾瀬)、恭太郎(小出恵介)、栄(麻生祐未)と橘一家三人、ずっといますし・・・。のっとりか・・・のっとられてんのか。
とにかく・・・仁としては橘家には器を認められている模様。
まあ、当主・恭太郎にとっては命の恩人、栄にとっては息子の命の恩人、(当時の嫁入り前の娘としては)とうがたった咲にとっては・・・である。
そのうち家賃をとるつもりかもしれない。
「仁友堂」が開業すれば「コレラを退治し、外科の腕抜群、お値段お手頃」は江戸中に鳴り響いているのだから・・・行列の出来る医院になると思うが・・・今回は予約患者があるらしく・・・仁は新薬研究を始めるのだった。
助手の咲と二人、「ペニシリン」の濃縮を試みるのだった。研究室も橘家かっ。
その結果・・・たちまち完成する「新型ペニシリン」は威力三十倍の優れものである。
さっそく・・・蛎殻町での量産体制に入りたい仁だったが、佐分利(桐谷健太)たちスタッフの計算によると設備投資に400両かかるという。
幕末・・・米一石が一両だったとされる。一石は千合である。
米一合は白米でおよそ150グラムである。
サトウのごはんの小盛りは150グラムだ。この1セット(20個入り)が1998円である。
50セットで一石である。だから一両は99900円になる。
つまり400両は39960000円だ。もちろん、安売りの店で買えばもう少し値引きできます。
ざっと4000万円である。とにかく・・・幕末に来てから衣食住すべて橘家もちの仁としては400両がどの程度のお金だかわかっていないのである。
そのために・・・仁は医学所の出資者であるヤマサの儀兵衛(石丸謙二郎)に単刀直入に融資を申し込む。
仁「400両(4000万円)貸してください」
儀兵衛「そ、それはちょっと・・・」
これまで、儀兵衛が医学所につぎ込んだお金が300両なのである。それを越える借金を無担保で申し込んでいる仁。しかし・・・そこは儀兵衛も商売人なので間を取るのだった。
仁「まあ・・・しばらく先生の器などを検討してみますので・・・」
まあ・・・仁の場合・・・無担保で融資はきつい・・・ということです。
しかし・・・すでにペニシリンが相当高価な薬のはずだが・・・薬価の問題が・・・(以下省略)
たちまち・・・新薬製造は暗礁に乗り上げるのだった。そこへ顔を出すのは坂本龍馬(内野聖陽)である。彼は幕府総裁から海軍設立資金五千両(サトウのごはん換算でおよそ五億円)を巻き上げた男なのである。
友である仁の相談を受けると龍馬が仁や恭太郎とともに向かった先は吉原だった。
お目当ては野風(中谷・二役)である。
しかし・・・野風は龍馬の熱い眼差しは眼中になく・・・見つめるのは仁なのである。
野風「急患なのでありんす」
患者は・・・恭太郎が橘家家宝を売り払って眼鏡を貢いだ馴染みの女郎・初音(水沢エレナ)だった。
そして・・・恭太郎にとっては・・・聞きたくない話である。
初音の情夫は幕末きっての女形・三代目田之助だった。初音は堕胎のために中条流という堕胎薬を使用したのだがその時の後遺症で敗血症にかかっていたのだった。もちろん・・・遊女の子供なので田之助を責める筋ではなかったが・・・見舞いにも来ないのは不実だと野風はなじるのだった。
恭太郎は自分にも責任があると知りつつ・・・初音の思う相手が自分ではなかったことが衝撃なのだった。
野風(だから・・・忠告したのに・・・)
初音は重傷で従来のペニシリンでは薬効が薄い。新型ペニシリンがあれば・・・と唇をかみしめる仁。
しかし、田之助が千両役者(サトウのごはん換算で年収およそ1億円)であるために・・・ひょっとしたらと仁一行は芝居小屋のある猿若町をたずねるのである。
実は田之助は文久二年(1863年)に宙吊りの演技中に舞台に落下、負傷したのだがその時の傷が壊疽(壊死)を起こし・・・病を押して舞台に立っている。史実では慶応3年(1867年)に左足を切断するにいたるのである。つまり・・・現在の田之助はすでに病状悪化の途上にあるのだ。
恭太郎「たんまり稼いでるんだ・・・憐れな女郎に情けをかけてくれてもいいだろう」
田之助「こっちだって身を削って稼いでるんだ・・・このおあし(金)はさ・・・あたしの血肉なんでさ・・・びた一文出す気はないね・・・旗本の旦那・・・こんな河原乞食に頼るなんて了見が違うわな。こっちは吉原に表から通うこともできない身分なんですぜ」
恭太郎はかなりのダメージを受けた。
一方、龍馬は中条流を処方した町医者(大久保篤)を訪ねた。
町医者は意外に好意的で七年の約束で400両(4000万円)を貸してくれるのだった。
中条流の医師は江戸時代の川柳に「罪なこと中条蔵をまた一つ」とあるほどに商売繁盛だったのである。もちろん避妊具が発達していないから当然のことである。
資金投入でさっそく量産体制に入る医学所薬剤部。
ナース咲も投入されて新型ペニシリン投与開始である。
回廊でふとすれ違う・・・咲と野風。
野風「お姫様は・・・南方先生と夫婦になるのでございますか・・・」
咲「先生には・・・(野風さんそっくりの)別にお慕いする方があるのでございます」
野風「それは・・・お辛いことではござんせんか・・・」
咲「・・・私には・・・先生の医術がありますから・・・」
一人になった野風はふと思う。
野風(私には・・・何もないのでありんす)
一方で・・・熱にうなされる初音は「田之助」の名をうわ言で口にする。
それを耳にした恭太郎のダメージはさらに深まるのだった。
そこへ・・・姿を見せる金を貸した悪徳医である。
悪徳「この証文をごらんなされ・・・期限は七日・・・返済なき場合にはペニシリンの権利のすべてをいただくことになっておりますぞ」
龍馬「お前はシャイロックかっ」
妹が身売り話で時間を稼ぐ間に恭太郎は全てを忘れて走るのだった。
恭太郎「お互い・・・イケメンだけど脇に徹したポジション同士じゃないか」
田之助「それなら・・・ひとつ臭い芝居で誠意ってやつを見せてもらいましょうか」
恭太郎(土下座)「田之助様、どうか南方先生の命を懸けた薬をお守りください」
田之助「な・・・同じ脇でもあんたはM、あっしはS・・・棲み分けてるんですぜ。そこんところ間違えちゃいやですぜ」
田之助が江戸っ子は宵越しの銭は持たぬと400両(4000万円)をたたきつけ、ちくしょうおぼえてやがれと退散する悪徳医師の場あって・・・。
新型ペニシリンの薬効はあらたかで・・・快方に向かう初音。
女郎の勘で気配を察し「私はなにかうわ言を申しましたか」
咲は素直に「田之助の名を・・・」
初音が恥じて言うことには「女郎は浮名を売るものなのに・・・お客に心を見せ、欺くことをおろそかにするとは口惜しい・・・」
咲は「人の心の誠は隠せぬもの・・・仕方ないのです」と慰める。
その頃・・・男たちは・・・。
仁「武士が役者(人に非ず)相手に土下座なんてよくできましたね・・・」
恭太郎「能無しですから・・・」
龍馬「そんなことないぜよ・・・惚れた女に尽くす・・・まっこと・・・ナイトぜよ」
恭太郎「また・・・そんないい加減なことを・・・あなたのそういうところが嫌いです」
龍馬「なんでじゃあ・・・」
恭太郎「だって私は土下座して400両、あなたは大法螺吹いて5000両でしょう。なんだか・・・やる気なくなるんですよ。石川遼以外の男子高校生ゴルファーみたいな気分だ」
仁「そんな・・・私にとって・・・あなたはかけがいのない人だ・・・どこの世の中に・・・無一文の私を居候させてくれる旗本がいると思うのです。私なんか・・・あなたがいなかったら野垂れ死にしてました・・・恭太郎さんは私にとって一番の恩人です・・・」
恭太郎「・・・武士とは人前で泣いてはならぬもの・・・それなのに私は・・・今・・・泣いちゃってます」
龍馬は新たなフレンドシップの成立を眺め微笑むのだった。
やがて・・・仁はもう一度・・・ヤマサに融資を申し込む。
仁「私は緒方洪庵先生に医術を伝えることが恩返しだと・・・遺言されたのです。どうか・・・もっと恩返しをさせてくださらないでしょうか・・・でもそのためには・・・おあし(金)が」
儀兵衛「緒方先生の名前出されたら・・・かないませんな・・・まあ・・・南方先生・・・私はできる範囲で最初から先生をお助けするつもりでしたよ・・・なにしろ・・・商人ですからな」
先見の明のある儀兵衛にとって仁が金のなる木であることは最初から火を見るよりも明らかだったのである。ただ・・・少しもったいぶらないとありがたみがないという基本を知っているまでだった。やりすぎるとあざといですけど。
そして・・・龍馬の前に刺客が登場。歴史が加速して・・・平成21年が平成22年になるように・・・明治維新が早まれば・・・龍馬暗殺も早まるのでは・・・。
仁はようやくそのことに思いがいたったのでした。
心配なのは・・・龍馬の姉の名前が乙女であると知っている仁が龍馬暗殺の経緯を知っているかどうかなのである。普通は知らないよね・・・歴史おタクじゃないと。歴史おタクだってなんとなくだったりしてさーっ。
関連するキッドのブログ『第7回のレビュー』
ごっこガーデン、きれいなお姉さんのいる大江戸セット。まこ「浅草寺にお参りして猿若町で芝居見物して・・・それから日本堤をブラッとしていざ大門へーっ。うひょひょー、噂に聞いた花魁エレクトリカル・パレードはまだでしゅかーっ。しゃなりしゃなりと行列48時間するのでしゅかーっ。ムキ~?・・じいや・・・なんで止めるのでしゅかーっ。まこもパーッとやりたいのデスッ・・・」お気楽「あー、面白い。時代劇は苦手なのにまったく気にならない・・・泣かせるしねぇ。咲さんはけなげだし・・・写真はどうなってたのかな?」ikasama4「坂本竜馬像アップしました。そうですねぇ。写真も気になるし10円玉の謎も気になります。残酷な未来って・・・まあ・・・現代から考えると登場人物全員死んでるので・・・残酷っていえばそうかもしれません・・・咲さんは仁と一緒にこっちきちゃえばいいのに・・・」あんぱんち「体を売って稼いだ田之助・・・恭太郎に体を張れと言うからには田之助は恭太郎と・・・ポッ。そして・・・その後は龍馬と仁と恭太郎が涙にむせぶのね~・・・ポッポッポッ・・・そして仁は小さいけど美しい器なので儀兵衛はニヤリなのかしら~」くう「ああ・・・忙しい日曜日・・・先週までのゆとりはなんだったのでありんすか?・・・そして男泣きに泣く男たちをそっと見守る女たち・・・けなげだわ~・・・そしてみんな精一杯なんだわ~・・・シュテキ!」mari「ありがたい恩を小さな器にためて大切にこぼさないように歩いていく・・・仁先生の思いは熱いですね・・・果たして・・・どんな未来が待っているのか・・・ちょっとこわいくらいな感じですよ」
水曜日に見る予定のテレビ『久遠さやかの相棒』(テレビ朝日)『小出早織の浅見光彦・最終章』(TBSテレビ)『本仮屋ユイカのネギ・産婦人科の女たち』(日本テレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
最近のコメント