愛の記憶喪失(吉高由里子)待っている女(星野真里)しらばっくれる女(井上和香)
リップ・ヴァン・ウィンクルを知ってますか?・・・といえば映画「野獣死すべし」(1980)の松田優作である。
リップ・ヴァン・ウィンクルは19世紀の米国作家ワシントン・アーヴィングの小説の題名であり主人公の名前である。
リップ・ヴァン・ウィンクルには口うるさい妻がいて彼は閉口している。ある日、猟師である彼は深い森に迷い込む。そこで不思議な老人に出会った彼は不思議な広場に集う不思議な男たちの遊びに参加する。ゲームはボウリングである。そのあまりの面白さに夢中になる彼。やがて男たちの宴会に参加した彼は美酒に酔う。目が覚めて森から町へ戻ると彼にとっての一夜は実は20年だった。すでに彼の妻は他界しており知り合いはすべて年老いていた。
日本人の多くは即座に昔話「浦島太郎」を連想するだろう。
ここで疑問になるのは昔話の浦島太郎にはなぜ妻がいないのか・・・ということである。
逆に言えばリップ・ヴァン・ウィンクルにはなぜ妻がいるのかと言う話である。
ここに「愛」についてのひとつの秘密がある。
愛し合った夫婦に訪れる倦怠期・・・そしてその結末のありかた・・・なのである。
この題材を愛する作家は多い。邯鄲の夢(一夜の夢が永遠を秘める)的な要素を転換すると「記憶喪失」という手法になる。
それをロマンチックに感じる人々は多いらしい。
たとえば小劇場の芝居ならまだしもドラマ化して失敗した「歌姫」がある。記憶を失った男が見知らぬ少女と愛を交わし、過去に置き去りにした妻があることに困惑するという話である。
なぜそれが失敗するのかについては歌姫の時に語ったので書かない。
しかし、「東京DOGS」が男を女に変えただけでまったく同じ路線であることは指摘しておく。記憶を失った女が刑事と愛を交わし、過去に置き去りにした犯罪者の恋人があることに困惑するという話である。
まあ・・・誰だって最初のことってあるからな。
で、『東京DOGS・第9話』(フジテレビ091214PM9~)脚本・福田雄一、演出・成田岳を見た。楽しかった「ギネ」が終わり、ゆとりが生じたのでこの話をしておきたい。刑事コントときどきサスペンスのこのドラマは深夜でやればいいのにプライム・タイムでやり、しかもそこそこ高視聴率である。このメンバーで真面目に刑事ドラマやったときの視聴率と比べようがないのでなんともいえないが・・・キッドとしてはものすごく残念な感じだ。
「へへへ、お茶の間なんてこんなもんでげすよ」という下衆なスタッフの声が聴こえてくるのである。
・・・あくまで妄想です。
麻薬という「人間」を著しく傷つける薬物を利用した犯罪をめぐるドラマである。常識的に考えて麻薬犯罪シンジケートのボスの神野(仲村トオル)の愛人である由岐(吉高)は麻薬漬けになっているはずである。
「彼が犯罪者だなんて知らなかった」と由岐は言うのだが・・・顔さえ忘れていた男が犯罪者がどうか知っていたのか知らなかったのかも断定できまい。
そして17年前に高倉刑事(小栗旬)の父親を殺害した神野は現在40才。23才の時には警察も正体をつかめない麻薬犯罪シンジケートのボスだったということになる。
名前以外はその正体が一切不明という謎の人物である。
ある意味、警察はものすごく無能である。
ところが由岐が「顔を思い出した」ので似顔絵を描くとたちまち、神野の正体は判明し、その生い立ちまでが明らかになるのである。
ある意味、鈴江刑事(志賀廣太郎)はものすごく有能である。
もちろん・・・そんな馬鹿な話があるかっというところだが、脚本的には笑うところなのだろう。そんなわざとらしい笑いにのれるかよ。
ただもう・・・唖然とするしかないのだな。なんでそんなことが楽しいと思うの?
とにかく、記憶を失って少女のようになった由岐を保護監視するうちに愛を感じ始める高倉刑事とその相棒の工藤刑事(水嶋ヒロ)なのである。
しかも由岐はなんとなく高倉刑事を好きになっていく。
そこで話の伸展にあわせて都合がいい感じで蘇る由岐の記憶。
これを解説するのが民間の医師・西岡(ともさかりえ)である。これがまたものすごく話の進展にあわせて都合のいい感じで由岐の病状を解釈していくのだ。
警察監修と医療監修がクレジットに名前を連ねているのだが・・・ちゃんと仕事しているのか・・・ものすごく疑問である。
警察監修「そんな警察はありませんよ」
医療監修「そんな精神障害はありませんよ」
スタッフ「まあまあ、あくまでフィクションですから」
こういう会話が毎週繰り返されていることは間違いない。
・・・あくまで妄想です。
とにかく・・・あれだ・・・神野は築き上げてきた悪の帝国を投げ出すほど由岐を愛してしまい、高倉刑事は父の復讐を忘れるほど由岐を愛してしまい、工藤刑事はなんとなく由紀を愛してしまったのである。
はたして・・・由岐の愛の記憶は誰を選択することになるのか・・・そんなことを今さら言われてもなぁ・・・なのだけれど。
ここはジュリーの歌でも聞いておくか・・・。
極悪の犯罪者と無垢の娘の許されない愛。犯罪者の愛人と正義の刑事の許されない愛、親友の恋人に片思いの元・暴走族総長の許されない愛を思いながら・・・。
忘れられないけど
忘れようあなたを
めぐり逢う時が
二人遅すぎた
関連するキッドのブログ『第1話のレビュー』
で、『相棒・Season8・第9回』(テレビ朝日091216PM9~)脚本・ハセベバクシンオー、演出・和泉聖治を見た。さて「ギネ」とのダンスを終えた「相棒」である。新・相棒の神戸刑事(及川光博)もかなり馴染んできています。さて、この脚本家はサラブレッドなのでどちらかといえば趣味的な感じの作品を提示する。今回は「仮出所者の失踪事件」である。もちろん、塀の外と内の物語は斬新だ・・・というほどではないが、やはり変化球なのである。もちろん、それが共犯者の出獄ということになれば「分け前をめぐるもつれ」も常套手段だが・・・そのあたりをふまえて・・・巧みな物語を構築していて渋いのである。
今回は塀の中にいる受刑者塀の外の愛人・美代子(井上和香)が秘密の通信をしていることが鍵となるのであるが、それはまあ置いておきます。
美代子である。もう・・・水商売の女選科になってきた井上和香がいい味出してます。
美代子の同棲中の情夫は麻薬取引の現場を強襲してヤクザから麻薬と金を強奪するというワイルドなチンピラ。しかし、検問でひっかかりあえなくお縄に・・・。
残された美代子は隠されていた現金を取りあえず使っちゃいます。もう高級な腕時計が欲しいと思ったら我慢ができない女です。
そして残された現金を使っちゃうと塀の中の男には未練がありません。
しかし・・・塀の中から男が「金目のものがある」と便りをよこすと目の色をかえて男に協力します。ものすごくやばい橋を平気で渡るタイプです。
明らかに阿漕な女ですが・・・右京(水谷豊)はどちらかといえば好意的な視線で最後まで接します。
荒んだ生活をしているのですから少しぐらい荒んだ性格でも仕方ないですねぇ・・・。
こういう姿勢。最後には美代子に協力させて途中で発生した殺人事件の真犯人に罠を仕掛けたりなんかして・・・。
違法捜査ギリギリですが・・・まあ・・・いつものことですからねぇ。
そして・・・美代子は何事もなかったように・・・汚れた金で買った腕時計を身に纏い嬉々として夜の闇に舞い戻ってく。
これはこれでファンタスティックでございます。
どこにでもいそうな特別じゃない夜の蝶・美代子・・・再登場してもらいたいくらいです。
関連するキッドのブログ『第2話のレビュー』
で、『浅見光彦・最終章・最終回』(TBSテレビ091216PM9~)原作・内田康夫、脚本・石原武龍、演出・村上牧人を見た。とにかく編成的に無謀な戦いを仕掛け、木端微塵に砕け散った沢村一樹の浅見光彦なのである。
本シリーズの最終話のヒロインは光彦の幼馴染の野沢光子(星野真里)である。
ちなみに月曜ゴールデンの浅見光彦(沢村一樹)24「漂泊の楽人」(2007年)のヒロイン・漆原肇子も星野真里だ。
とにかく・・・家族にはやく結婚しろとせっつかれる奥手の男である光彦が事件に巻き込まれ、ヒロインといい感じになるが絶対にヒロインとは結ばれないというのがお約束である。
結婚できないルポライターなのである。
今回も幼馴染の光子は昔から・・・光彦のことが大好きで今回も「抱きしめてくれるのを待っています」まで言うのである。
そして、最終章の最終話なので兄(風間杜夫)から「女を口説くのはえいやあとうだ」というアドバイスを受け告白にのぞむ光彦。
しかし・・・すれちがって光子は車で走り去る。
とにかく、しばらくは走って車を追いかける光彦。
走る。走る。走る光彦。車の中では光子が光彦の写真を見て微笑んでいる。
しかし・・・雪道でついに力尽きる光彦。峠の釜飯をおみやげに買って帰るのである。
後で電話しろよ~とお茶の間は絶叫なのだが・・・。
それが世界最強の恋愛へたれが売り物の浅見光彦シリーズなのです。
関連するキッドのブログ『浅見光彦・姫島殺人事件』
金曜日に見る予定のテレビ『嬢王Virgin』(テレビ東京)『アンタッチャブル』(テレビ朝日)『酒井若菜のおひとりさま』(TBSテレビ)『加藤ローサのシスター』(NHK総合)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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