自分の幸せを探す女(中島美嘉)自分の幸せを選ぶ女(市川由衣)
両雄並び立たずと言うがダブルヒロインはなんとかなるものだ。
しかし、「NANA」では成立するものが「NANA2」では成立しない。
それは基本的に原作のキャラクター設定の問題もあるが、脚色の問題でもある。
スケジュール問題とかプライベートがからんだ濡れ場の問題などいろいろと取り沙汰された小松奈々役のチェンジだが・・・この役は相当な難役なのである・・・なぜならものすごく嫌な女の役なのである。
そうでありながら最後は「だってしょうがないじゃない・・・生きていくってそういうことだもの」という奇跡の着地点に導かなければならない。
そういう意味でこの役から逃げた宮崎あおいはその後の大成功からして本能的に成功だった。ある意味、本人が奈々そのものと化したのである。
そして、逆に貧乏くじを引いたカタチになる市川由衣にとっては不本意ながら・・・だからこそ「NANA2」は哀愁漂う作品にたどり着けたということになる。
「NANA」の続篇としてマイナスのフィルターをかけられながら、「夢追い人ではなくすぐそこにある幸せにすがりつく女」奈々を市川は見事に演じきっているのである。
その結果・・・興行成績は前作を凌がないという残念な結果になるのは構造的な問題であり、奈々(市川由衣)であることとは無関係だと思う。
「ゼブラーマン2 ゼブラシティの逆襲」に市川みどり(市川由衣)が出ますように祈りをこめて。・・・まあ、出ないかも。
で、『NANA2(2006年公開)』(TBSテレビ091224PM1140~)原作・矢沢あい、脚本・監督・大谷健太郎を見た。ひょんなことからミュージシャンのナナ(中島)と普通のかわいい女の子奈々(市川)は出会い、同居生活をすることになる。奈々は実はかなり美少女で平凡な家庭で育ったために家事能力があり、一昔前には「いいお嫁さんになるタイプ」だったのだが男女雇用機会均等法以来、ただの無能の人の側面も持っている。さらに華やかな世界に憧れる奈々は自分を「中身からっぽの人間」として強く意識しているのだった。
一方、インディーズの世界で名の知れたバンドBLACK STONES=ブラストのボーカリスト・ナナは天涯孤独の身の上ですでにメジャー・シーンで活躍するTRAPNEST=トラネスのギタリスト・蓮(姜暢雄)と因縁浅からぬ恋仲で密会する女の子のカリスマ的存在である。
ナナは奈々の幸せを求める優しさを愛しく思い、奈々はナナの夢を追いかける強さに憧れる。
失恋に傷ついた奈々をナナの音楽が癒し・・・彷徨い出すナナの魂を奈々が繋ぎとめる。こうして二人は親密な女友達になったのである。
しかし、かわいい女である以外は超絶的に無能である奈々はたちまち実社会から放逐されフリーターと化してしまう。アルバイトはスーパーの試食コーナー担当である。
親友であるナナと比較して惨めな境遇であることに心ふさぐ奈々。
そんな奈々にトラネスのリーダー・巧(玉山鉄二)は誘惑の手を伸ばす。
憧れのバンドのリーダーから誘われた奈々はスィート・ルームでスィーツと化すのである。
不幸な家庭に育ったことから他人に対して冷酷な一面を持つ巧にとっては奈々はその他大勢の女の一人だった。
奈々はそれを知りつつ、夢のような一夜に身を任せるのだ。宮崎あおいが逃げ出すようなものすごいラブ・シーンを期待しているとガッカリするので注意してください。
それ以後は放置され・・・悶々とする奈々。
その関係はナナやブラストのメンバーにも知れ渡ることになる。
ブラストのメンバーにとっては奈々はマスコット・ガールなのである。かってメンバーである蓮を引き抜かれ上に、奈々も美味しくいただかれたナナと愉快な仲間たちは呆然とするのだった。
ブラストのギタリスト・ノブ(成宮寛貴)は奈々に片思いをしており、ベーシストのシン(本郷奏多)に慰められるのだった。
ナナは奈々が弄ばれただけではないかと不安を感じつつ・・・メジャー・デビューのチャンスを得るために練習中心の生活に入る。
ナナは親友のノブが親友の奈々と交際してくれることを願っていた。
一方、音沙汰のない巧のために不安を抱えつつ明るくふるまう奈々。得意の手料理をふるまうチャンスもないのだった。
それを察しつつ・・・ついにノブは奈々に告白をする。
奈々はものすごいスピードでノブの腕の中に飛び込むのだった。
多忙を極め、連絡もつかない巧に電話で「決別宣言」をした奈々は同じように平凡な家庭出身のノブと充実した恋愛を始める。
しかし・・・それは微妙な時期の妊娠により脆くも崩壊するのだった。
奈々の女の本能はめまぐるしく心を揺らすのである。
一方、クールでありながら計算高く義理堅い面を持つ巧は奈々の異常をいち早くキャッチし、ノブよりも素早く奈々の心を制御する。
「どちらの子供であったとしても・・・俺は・・・俺の子として育てても構わない」
奈々の心は激しく揺れる・・・第三者から見て・・・子供は巧の子供であると確信しているのは明瞭だし、子供の親としてフリーターのノブよりスターの巧を選択したとしか思えない結論は・・・愛よりも富を選んだしたたかな女を感じさせるわけである。
巧に遅れて現れたノブは・・・泣きじゃくる奈々を安心させるどころか・・・「巧と二股かけていたのか・・・」と疑う始末なのであった。
そして・・・ナナに巧は「奈々と結婚する」と宣言するのである。
ナナは裏切られた気持ちになり・・・動揺して奈々との思い出のグラスを割ってしまう。
「とりのこされたらかわいそう・・・」
奈々の昔のセリフを思い出し・・・おそろいのグラスをあえて割るナナだった。
そして・・・白昼の路上で「私の胸で泣け」とノブを慰めるナナだった。
そんなナナに蓮は「祝福してやれよ・・・あの娘はお前をヒーローだって思ってるんだ・・・凄く喜ぶし・・・お前もあの娘の笑顔が見たいんだろう・・・」とアドバイスする。
ナナ「そんな理不尽なことができるかよ・・・」
蓮「ヒーローっていうのはそういうものなんだ」
奈々のためにおそろいのグラスを持って奈々と巧の新居である超高級マンションを訪れるナナ。
入り口で門前払いである。
・・・ある意味、ドラマとしてはここでクライマックスである。この後はかなり、観客におまかせの展開となっていく。
突然、ナナと蓮との交際がパパラッチによって熱愛報道され・・・時の人となるナナ。
ブラストのリーダー・ヤス(丸山智己)は「これをメジャー展開の足掛かりとする」と宣言。実力以外での評価に愚図るノブ。しかし、ナナは「もう・・・踏みつけられるのはまっぴらだ・・・誰も無視できない存在になってやる」と叫ぶのだった。
トラネスとブラストが肩を並べる・・・そうでなければ・・・親友の幸福を祝福することもできやしない・・・とナナは思ったのだろう。
メジャーへの道への第一歩・・・新宿アルタ前でのゲリラ・ライブにナナは奈々を招待する。
あの日の約束は忘れていいよ
自分の幸せを願えばいいよ
自分の幸せを探せばいいよ
その夢の中でおやすみ・・・
ノブの作った曲を歌いあげるナナだった。
やがてナナと奈々は再会する。奈々の手に光るダイヤの指輪。
ナナ「巧が浮気したら・・・ぶんなぐってやれよ」
奈々「うん・・・がんばる」
やがて・・・奈々は二人の子供の母親になったり・・・ナナは恋人の蓮が麻薬に溺れたあげく交通事故死したり・・・と波乱万丈の物語の続きがあるのかもしれないが・・・ナナと奈々の二人の友情はどこまでも続いていく・・・。
この世にとって女の友情こそが宝石のようなものなのである。
なぜなら男女の恋愛と違ってそれは色褪せないと信じられているからである。
やや散漫なところがあってこの主題が埋没しかねない結末だが・・・その点にしぼって見れば結構泣ける作品なのです。
関連するキッドのブログ『2006年6月6日の中島美嘉』
『流星の絆』
『ゼブラーマン』
『アニメ版NANA』
日曜日に見る予定のテレビ『坂の上の雲』(NHK総合)『武士の一分』(テレビ朝日)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
>男女雇用機会均等法以来、ただの無能の人の側面も
[男女共同参画社会の実現]をスローガンに施行された均等法も良し悪しで。女性も労働市場のプレートに一括で乗せた弊害が昨今の「婚活ブーム」のような…。女性に多様な生き方を実現させるつもりが、キャリア志向という一義的な生き方の押し付けになった矛盾―これからも繰り返し論じられるテーマな気がしますが―機会あらば腹を割って福島大臣と語りたいものです(笑)。
そういう観点から見てもNANA2は面白いですし、終盤のゲリラ・ライブから花火にかけての流れでホロッときてしまいます。。『流されるのも、悪くない。前に進めるなら』『夢を叶えることと幸せになることは、どうして同じでないんだろう?』といったセリフや、原作者作詞の「一色」が良い味出してますし。
キャピキャピな宮崎あおいがチェンジし、主題歌もバラード系になったので、1よりインパクトが小さい2ですが、さりげなく好きな一作です(年末深夜マジック含みますが(^-^ゞ)。
投稿: ys_maro | 2009年12月26日 (土) 12時34分
♬♬♬のだめデスヨ♬♬♬ys_maro様いらっしゃいませ♬♬♬のだめデスヨ♬♬♬
ふふふ・・・ついにNANA2のレビューまで
たどりついてしまいましたぞ。
まあ・・・家庭と言うもののあり方は
雇用者と企業者でも違うし
また共働きでも共同経営でも違う。
その中で専業主婦というのは
極めて特殊のようでもあり
出産がある限り極めて普遍のようでもある。
要するに家族の形態に正解なんてないということですが
人によっては伝統を求めたくもなるということですな。
愛を受け継ぐもの
憎しみを受け継ぐもの。
それぞれの逆をいくもの。
人間は「百年の孤独」から逃れるために
いろいろと試行錯誤を重ねていく。
このブログだって
そのような試みの一つに過ぎないわけですからね。
そして、NANAもまた
少女や少女マンガファン、バンドマニア、
青春を愛する人々、
運命論者・・・様々の人の孤独を
慰めるコンテンツなのですな。
まあ・・・キッドは市川版も
高く評価しますが
宮崎あおい版で
続きを見たかったファンの気持ちも凄くわかります。
3があるならミスチル作曲で
見てみたい気もします。
奈々またまたチェンジなら
堀北真希か蒼井優か相武紗季でも~。
投稿: キッド | 2009年12月26日 (土) 20時02分