嵐山花に心のとまるとも慣れし高知の春な忘れそ(広末涼子)
やたらに弥太郎がらむ龍馬伝なのであるが・・・父の教えで言えば八平の「修行中心得大意」なのである。
①忠孝を忘れずして修行第一のこと。
②無駄使い厳禁のこと。
③色情に溺れるべからずのこと。
・・・三か条を父は書し、龍馬はそれをお守りにしたのである。
一方、故郷の彼女としては加尾(広末涼子)である。ドラマ的には告白済みなので・・・
あらし山 花にこゝろの とまるとも 馴し三国の 春なわすれそ
・・・と歌いたい気持ちである。
都会の絵の具に染まらないで帰って・・・なのである。
ああ、青春はもえる陽炎か・・・。
で、『龍馬伝・第3回』(NHK総合100117PM8~)脚本・福田靖、演出・真鍋斎を見た。例によってシナリオに沿ったレビューは宮﨑あおいよりも蒼井優よりも綾瀬はるかの好きなikasama4様を推奨します。今回は大サービスで山内家周辺家系図大特集。幕末における薩摩、土佐の友好関係、幕府との背後関係、そして四賢侯関係が一目瞭然でございます。政治とはまさに一筋縄ではいかない証。汚職追求諸刃の剣でございます。島津斉彬こけたら山内豊信こけたなのです。そして橘家と同じく平山家も縁談断るのは兄の役目です。そしてついに岩崎弥次郎書下ろしイラスト発表。毎週父親愛爆発です。目のつけどころが画伯です。さらに四国横断龍馬の旅マップ付。これで迷子にならずに瀬戸内海にたどり着けるのです。本州上陸後も篤姫とは別ルートか・・・。関所破り未遂のフィクション。偽造通行手形発覚か・・・。まず・・・賄賂不足ですよね。弥太郎の身分って謎でございますな。地下浪人略して下人です。限りなく無宿人に近い身分なのでは・・・。江戸の浪人とはまた違う趣がございます。都会は今も昔も何しているのかわからない人が生きていてもOKな感じでございましょう。まあ・・・そういうことを含めて幕末ロマンなのですが。
嘉永六年(1853年)春。龍馬は高知を旅立ち、江戸留学の旅に出る。山内容堂こと豊信が藩主の座について六年目。おりしも政治改革の季節だった。土佐では豊信の従兄弟たちが相次いで死に分家の豊信が15代藩主に納まったのだが、第12代藩主で豊信の伯父にあたる少将豊資が隠居の身ながら隠然たる権威を持っている。また豊資の子で13代藩主の妻である侯姫は豊信の養母となり、兄が島津斉彬であることもあってやはり大きな影響力を保持していた。この年、26才となった豊信は藩主として政治改革の野望に燃えていたのである。しかし、幕末の軋みは間近に迫っており・・・殿様の政治的な野心は簡単には達せられないのだった。そして、当然のように藩内には改革派と保守派の紛争の火種がくすぶっていたのである。幕末の多くの藩がそうだったように天保の飢饉以来、財政は火の車だった。そして経済の悪化は内部抗争の激化を招く。そうした中、第13代藩主は身分を問わぬ抜擢で馬渕嘉平を起用した。馬渕はその思想に下克上を含むために幕府が禁じた石門心学の信奉者だった。馬渕は密かに「おこぜ組」と称する秘密結社を構築していたが発覚し捕縛されて獄中死した。いわば改革による既得権益の損失をおそれた保守派と、成り上りを目指す改革派のよくある対峙の路線が引かれたのである。
豊信はこれをふまえて吉田東洋を抜擢、「新おこぜ組」を結成させ、上士だけの改革を実行したと言える。上士の中で保革を逆転させ、それが下層に及ぶことは避けるという姿勢だった。
しかし・・・そう簡単にことは運ばず・・・旧おこぜ組の影響は上士と下士の反目へとつながっていく。もちろん・・・豊信の改革によって閑職に追われた上士の中の保守派がその裏では糸を引いているのである。
八歳年上の溝渕義直は年若い龍馬を相手に旅の道すがら、政治談議に熱心だった。
もちろん、忍びの一族である坂本家ではそのような話は自明のことである。豊信と吉田の藩主・宰相コンビが指導する新おこぜ組改革に・・・下士の一部が反抗しており、その後で糸を引いているのが安芸城の五島家であり、そのまた後に旧藩主の豊資が控えていることも知っている。さらに言えば・・・二重スパイをさせている岩崎弥太郎の父親が五島に仕える隠し目付(忍び)であることも龍馬は知っている。そうとは知らずに吉田東洋の甥である後藤象二郎は下人の弥太郎を横目付(忍び)として使い、それを旧おこぜ党の一派である武市半平太が逆利用していることも知っているのだった。
しかし・・・龍馬は何食わぬ顔で目を細め・・・溝渕の話に聞き入ったフリをしているのだった。
「広之丞(義直)様はものしりじゃのう・・・」
「こがいなことは誰でも知っちょるきに・・・」
溝渕が龍馬のおだてに乗った時であった・・・背後から人の近付く気配に龍馬は身構えた。
振り返るといたのは弥太郎だった。
龍馬は怪訝な顔になる。
「どがいしたがじゃ・・・」
「・・・関所破りが出たのじゃ・・・」
「そりゃ・・・剣呑な・・・」
「藩の勘定役の一人の不正が発覚してな・・・こともあろうに禁制品のお品書きを持ち出して逃亡しおったわ・・・」
「・・・」
「そんなもんが表に出たらえらいことになるので・・・忍びに動員が下ったのよ・・・」
「ははあ・・・内輪もめは一休みかい・・・」
「ああ・・・おこぜ組は新旧とりまぜて追っ手となっておる」
「なるほど・・・それで・・・どっちが生きて捕まえる方じゃ・・・」
「逃げているのは昔のおこぜ組の一党で倉田安兵衛じゃ・・・吉田東洋先生は生かして捉えたいだろうがの」
「そうか・・・おまんの父御は口封じの方か・・・」
「おそらく山に入ったろうが・・・いずれは街道に出てくる・・・わしらは網を張ってるわけじゃ。ちょっと気がふれてるから・・・用心せいよ」
龍馬と弥太郎のやりとりを呆然と見ていた溝渕が口を挟んだ。
「その男は遣い手なのかの・・・」
「小栗流居合いの皆伝者です」
溝渕はぶるっと身を震わせた。溝渕も龍馬と共に千葉道場で修行する予定だったが主眼は佐久間象山の洋学塾である。腕に自信はないのである。
騒ぎは吉野川の三好村の渡しで起こった。旅装の武士を取り方が取り囲んでいる。
龍馬たちは渡し舟にのるために荷をあずけたところだった。
追っ手の指揮を執るのは弥太郎の父、弥次郎だった。
(殺すほうか・・・)
龍馬はぼんやりと思った。
追っ手の人数の中には他に知った顔もある。
その一人がのけぞって倒れた。弥太郎の下人仲間の鬼太郎である。獄死した馬渕家の一族の者だった。
(これはいかんち・・・)
続いて弥次郎が浅手を負うのを見て、龍馬は彼我の実力差を見切った。
(追っ手のものはみな斬られる)
龍馬は渡し船の船頭をふりかえった。
「ちくと・・・すまぬ・・・櫂を拝借するぞ・・・」
船頭が答える間もなく、一本のオールを持った龍馬は修羅場に向かって走り出していた。
返り血を浴びて真っ赤に染まった倉田安兵衛が龍馬を見た。
その目には狂気の色がある。
(ほんまに狂っちょるのか・・・)
龍馬は櫂をかざした。
尋常の長刀の構えではなく、龍馬は櫂を竹刀を持つように握っている。
河原の石を蹴って龍馬は宙に躍り上がる。
倉田安兵衛の顔に笑みが浮かぶ。
兵法において跳ぶのは禁じ手である。空中においては姿勢は変えられずいわば敵の的になるばかりなのである。迎撃側は相手の先をとることが容易になるのだ。
一瞬の間に勝負を分ける間をつめ、倉田は龍馬を射程内に捕らえていた。
その瞬間、倉田の額を龍馬の櫂が割っていた。
想像を絶する速度で龍馬が櫂を振り下ろしていたのである。
龍馬は倉田を撃った力を利用してさらに宙を飛んでいた。
倉田の居合いは虚空を一閃した。そのまま、倉田の体は河原に一転して倒れ伏す。
龍馬が倉田の頭上を越え、着地した時には岩崎弥次郎が忍び刀で悶絶した倉田にとどめを刺していた。
龍馬は何事もなかったように櫂をさげ・・・川縁に戻っていく。
その後姿に一礼すると・・・弥次郎は配下を指図して死体を運ぶ算段をしながら血止めの手当てを始めていた。
船頭は怯えた目をしていた。
「すまんな・・・ほじゃけど・・・その櫂では人をあやめておらんき・・・血もついちょらんじゃろ・・・わしは・・・気絶させただけじゃあ・・・」
船頭は櫂を渡されておそるおそるそれを確かめた。
溝渕は絶句していた。
「つまらんものを見せたき・・・あれは父上の直伝で槍殴りという技じゃ・・・わしはバカの一つ覚えということで・・・父上から教わったのはこの技だけじゃき・・・」
龍馬ははにかんで微笑んだ。
川面を何事もなかったように風が渡っていく。
関連するキッドのブログ『第2話のレビュー』
月曜日に見る予定のテレビ『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命2nd Season』(フジテレビ)『ハンチョウ』(TBSテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
ようやくメンテナンス明けです ̄▽ ̄ゞ
今年の大河は一話につき1枚のペースで
イラストを描こうと密かに思ってる今日この頃
土佐藩は新陰流とか林崎の居合とかの流れを汲む流派を
学んでいるものが多かったですからねぇ。
間合いを詰められたら一閃にて最期を遂げるのでしょうから
長刀・槍の腕に自信があれば間合いを取って戦うのが最善かも
しれませんね。
ちなみに弥太郎さんは以前描いた
これでもつかってやってつかあさい↓
http://www7a.biglobe.ne.jp/~dessin-ikasama/ikasama/illust/2006/img/img280.jpg
一応ご先祖様という事で。
とってもコ奇麗ですけど(; ̄∀ ̄)ゞ
投稿: ikasama4 | 2010年1月19日 (火) 21時00分
✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥
お疲れ様でした。
メンテは忘れた頃にやってくるので
こちらもそろそろです。
勝手気ままにやってることが
人様の手の内ということが
思い出されて複雑な気持ちになります。
画伯の書き下ろしが毎週一枚!
これは楽しみでございますね。
来週は予告編で(おそらくスタントだけど)
ものすごい竹刀捌きをみせた人かしら。
土佐は漁師も多いので
櫂や銛を使った武技は
土壌があると考えるのですよね。
壱領具足の中にも遣い手がいたはずです。
父・八平は槍術の名手ですし
龍馬は新陰疋田流もたしなんだと思われます。
矛盾の教えは
間にも通じます。
アウトレンジからの攻撃は
ショートレンジ相手の攻撃を封じる手ですが
長い槍を遣えば
それだけ動きが鈍化する。
信長が長槍の利を説くのは
あくまで同能力の集団戦法においてですからねぇ。
達人であるショートレンジの使い手は
その時間差で勝負を決する。
つまり、距離と速度の問題。
超人的な龍馬のスピードとパワーが
アウトレンジの「不利」を補って
居合い術を打ち破ったと言えるのでございます。
兵の基本が矛盾であることを
今さらながらに思いますな。
これは若く・・・ツヤツヤした弥太郎。
馬子にも衣装ですな。
ありがたく次回から登場させたい・・・
でも来週は江戸人脈になってるかも。
龍馬は語り手の手を離れて
江戸でのびのびするのかも・・・。
まさか・・・弥太郎と土佐の留守居組中心ってことは
ないでしょうな・・・。
あくまで龍馬伝なのですから~(`ーωー´)
語り手がさな子にチェンジするとか
あればいいのになあ・・・(‘∀‘ )
投稿: キッド | 2010年1月20日 (水) 01時16分
有名な人物にまつわる創作なので仕方がない事かもしれませんが、脇役に使う人物も実在していた人物であれば子孫がおります。名は伏せますが今回の話には当方のご先祖が出ており、事実と異なる扱いにされている為悲しく思いました。
大河等でも同様の問題があるかと思いますが、実在の人物を登場させるのであれば、その辺りにも配慮いただけたらと思います。
突然失礼しました。
投稿: | 2021年4月12日 (月) 20時49分
十年以上前の記事にコメントいただきありがとうございます。
最初に本文に登場した実在した人物と同姓同名の登場人物についてはあくまで虚構であり実在の人物とは無関係であることをお断りしておきます。
しかし、創作された内容が情報として実在のどなたかを不快にさせたとしたら申し訳ないことと考えます。
一世紀以上前の歴史を土台にした「大河ドラマ」というフィクションを受けてのあくまで筆者の「妄想」でございますのでどうかご容赦いただきたいと願い奉ります。
大変失礼いたしました。
投稿: キッド | 2021年4月12日 (月) 22時44分