お父様は女心に対する現状認識がお甘いのです(多部未華子)
里井副社長(岸部一徳)に東京商事の暗躍を報告し「ご認識が甘い」と指摘する壹岐正(唐沢寿明)だったが「ゆっくり・・・する」つもりだった千里(小雪)には愛妻写真付仏壇を発見され気まずくなり、息子の誠(斉藤工)には千里のルージュ付グラスを発見されお説教されるのだった。
部下の兵頭(竹野内豊)には「やる・・・となったら覚悟が必要だ」と訓示する壹岐正だが・・・自分の千里に対する覚悟はどうなのだと問い質したい展開である。
まあ・・・こういう脚本の重層構造がお茶の間に伝わっているのかどうかは相変わらず疑問なのである。
まあ、とにかく直子(多部)の出番があってよかったよ。
で、『不毛地帯・第13回』(フジテレビ100128PM10~)原作・山崎豊子、脚本・橋部敦子、演出・平野眞を見た。与党自由党幹事長の田淵(江守徹)に呼び出された近畿商事・大門社長(原田芳雄)は壹岐ともに田淵邸を訪れた。
田淵は近畿商事が画策する千代田自動車と米国フォーク社の提携話に触れ、日本企業との外国資本の提携について国益の観点から問い質すのだった。
その帰路、「結局、金をよこせっちゅうことだろう」と憤慨する大門だったが、壹岐は「与党の政治家とのパイプができたことはかえって好都合ではないか」と進言するのである。
壹岐にとっては一企業の利益よりも国益が常に錦の御旗なのである。
一方、業務本部長の角田(篠井英介)から経緯を聞いた里井副社長は壹岐の不見識をなじるのだった。
「電話一本で政治家に呼び出されるとは・・・企業人としてあるまじき態度だ」
そこで壹岐は里井の主導する日米における資本提携の危機的状況を説明する。
「フォーク社の視察チームには東京商事も接触しています・・・すでに東京商事とフォーク社は田淵幹事長と連絡を持っているという情報もあるのです」
「そんなことを言って・・・君は私の仕事を潰そうとしているのだろう・・・君にはこの件から一切手を引いてもらう・・・これは副社長命令だ」
里井は妻(江波杏子)の反対を押し切って渡米し、フォーク社との直談判を決行するが「日米の資本比率を49対51にするという冷たい条件」を得たのみだった。
その帰日の旅客機内で、心臓に不安を抱えるの前に東京商事の鮫島(遠藤憲一)が現れる。鮫島はニトログリセリンを握る里井の手を握り「私はちょっと知人の招待に応じただけです・・・どうぞお体を大切に・・・」と嘯くのであった。
里井は社内の権力闘争に目を奪われ最後まで本当の敵を見定めることができないのである。
フォーク社よる条件の変更への対応策を練るために千代田自動車を訪れた大門と里井。しかし、そこへ特ダネがトップを飾る新聞の早刷りが届く。
「フォーク社と東和自動車が20対80で日本初の資本提携」の見出しに愕然とする里井。
千代田自動車の小牧専務(小野武彦)は「我々には51%を要求して東和には20%か・・・」
里井は「経営状況の悪化で足元を見られましたな・・・」と火に油を注ぐ発言をする。一同が唖然とする中、すでに心臓が発作しかかっている里井はフラフラと立ち上がる。
「私が・・・フォークともう一度交渉を・・・」
そこへフォーク社から大門へのエキスプレス(速達)を持った壹岐が到着する。
その中身は「交渉打ち切りの通告」だった。
それを聞いた里井は目の前が真っ暗になるが・・・実際に失神したのだった。
壹岐の真意は窺い知ることはできない・・・ただ東京商事との戦いに敗れた失意の色が浮かんでいないところが・・・無表情の中に壹岐が暗い喜びを感じていることを想像できると言える。
(迂闊なものが迂闊な指揮権を発動したのだ・・・当然の結果なのだ)
壹岐は気遣う表情を作りながら卒倒した里井に近付いた。
一命をとりとめた里井だったが・・・すでに第一線に復帰することは不可能となっていた。
大門社長は壹岐を見つめた。
「壹岐くん・・・日本に戻りたまえ・・・君には専務取締役のイスを用意する・・・つまり、君がこの近畿商事の副社長ということだ・・・。ソ連のスパイだとまで誹謗中傷を浴びる君だが・・・もしそうでもそれはソ連とのパイプがあるってことでよかろう・・・君は独自の哲学で・・・この近畿商事の業績をおおいに振興させた・・・ワシの見る目もなかなかのものだった。しかし・・・今度はワシが相手だ・・・もちろん・・・ワシは君になら裏切られてもいいと思っている」
「私は・・・統率者ではなく・・・参謀が似合っているのです・・・社長の補佐が向いているのです」
「君はそういう奴だ・・・」とつぶやく大門。(しかし・・・な・・・人間は今日と明日では違う顔になることがある。それはどんな人間であろうともな・・・)と言うような複雑な表情を見せるのだった。
こうして・・・千代田自動車とフォーク社をめぐる壹岐の物語は近畿商事の敗北として終った。しかし、昭和46年(1971年)、いすゞ自動車と米国・ゼネラルモーターズ(GM)が資本提携したように・・・千代田自動車がフォーク社とは別の米国資本と提携する可能性を米国に残された壹岐の部下たちは探るのだった。
ついに手を出してもらえなかった・・・と恨みがましい目を伏せるメイドのハル江(吉行和子)を残し、ニューヨークを後にする壹岐だった。
心は・・・「これで・・・千里といつでも・・・ゆっくり・・・することができる」であった。
そのために同居を薦める直子と婿の鮫島倫敦(石田卓也)の意見を入れず、マンションでの悠々一人暮らし宣言をするのだった。
倫敦「どうして再婚をお考えにならないのです」
直子「お父様にとってお母様は掛替えのない人なのよ」
倫敦「そうなんですか・・・僕の父なら母が死んだらとっとと再婚するのに・・・」
直子「ま、あなたもそうなの」
倫敦「い、いやだなあ・・・ぼ、僕は・・・ち、違うよ」
壹岐はマンションに着くと即行で千里を呼び出した。
「オレんとこ来ないか・・・」
・・・ただ今、関東では「木更津キャッツアイ」再放送中です。
しかし・・・千里は押入れに隠された仏壇を発見・・・求婚しないで体だけを求める壹岐に不信感を感じる。
そこへ・・・海外に赴任している誠が予定外の帰国。
壹岐はどうしても家族に性的なことを想像されるのが嫌な恥ずかしがり屋なので千里に帰ってもらうのだった。
千里はあわただしく追い出され・・・食器をそのままにして家を出る。
結局、誠に口紅のついたコップを発見されてしまう壹岐。
誠「父さん・・・あなたはこの部屋で一体何をしているんですか」
壹岐(な・・・なにって・・・お前のために何もできなかったんだよ・・・今夜は)
・・・仕事に抜け目なく、プライベートはちょっと間抜けな壹岐だった。
哀れなのは千里である。今なら、壹岐は間違いなく訴えられます。
こうして・・・万国博があった気配は微塵もなく・・・この世界の昭和45年は暮れていく。
そして東京に戻った壹岐を待ち構えていたのは日本資本による油田開発に燃える兵頭(竹野内)だった。
「イランで・・・いい油田物件が売りに出されているのです・・・これを買いましょう」
「しかし・・・油田開発はリスクが大きいぞ・・・」
「日本が・・・飛躍し・・・平和国家を建設するためには資源の確保が絶対に必要です。油断大敵なのです」
「・・・やるか」
「やりましょう・・・」
いよいよ・・・壹岐の商社マン人生も最終章へ向かっていくのだった。
関連するキッドのブログ『第12話のレビュー』
土曜日に見る予定のテレビ『成海璃子の咲くやこの花』(NHK総合)『綾瀬はるかのハッピーフライト』(フジテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
m(_ _)mはじめまして、マキシーというものです。
|ω・)未華子ちゃんかわいい
ですね。
トイレに行ってたかな・・・;
↑「お父様は・・・」のセリフ聞き逃してました!
云い得て妙子さんなかんじ・・のヨウナ;;
壱岐さんて、なんかちょっと(=´Д`=)ゞ
部下の人たちの引っ越し手伝いの後は
夕食ぐらい食べさせてあげればいいのに・・・
吉行和子さん演ずるお手伝いさんも
とちくきゅうなんでしょうか・・
なんかね壱岐さんにもうサービスする゛り気力なくて
ビール
ちくきゅう好きだけど
引っ越し先に来てくれた千里さんに
よかったら風呂の用意しておいてくれないか]
・・・・・ちょっと、ん~~
千里さんも目立つことに口紅のグラス置いたのは
確信犯てきなのか・・・1
里井副社長は絶叫するし、
「シャチョウのイスはわたさ~ん」
なんか~ 鮫島さんが今回は
いちばん、あるいみシンパシィ感じさせるお話だってヨウナ・・?
投稿: マキシー | 2010年1月31日 (日) 12時24分
コメントありがとうございます。
このブログでは
現実のドラマのセリフなどの
再現性はあえて低くしてあります。
レビュー内に類似したセリフが
あってもそれは偶然の産物でございます。
基本的に妄想で書いておりますので
ご了承くださいませ。
今回は仕事の席で
主人公は上司の里井や
部下の兵頭に意見を言うわけですが
それがそのまま
私生活の自分の批判になっているという
ものすごいアクロバットが展開されており
キッドは爆笑してしまったのでございます。
もちろん・・・最愛の父に対して直子が
タイトルのようなセリフを
言うことは絶対にないのでございます。
まあ・・・今から40年も前の
殿方のなさること・・・
しかも一瞬フェミニストのように見えて
骨の髄まで男尊女卑のしみついた
主人公の言動が
今の世界にはまったく通じないことは
明らかなのですが
一瞬フェミニストに見えるだけに
ものすごくわかりにくい。
それに対して鮫島は絵に描いたような
恐妻家になっているので
分りやすいのですな。
ドラマでは描かれないのですが
直子の結婚に反対しているのが
鮫島ではなく
妻(キムラ緑子)であることが
うっすらと感じられる今回でしたね。
また遊びに来てくださいね。
投稿: キッド | 2010年1月31日 (日) 19時59分
こんばんは!

そうなんだ、キッドさんが創作したセリフなんですか
でも、なんかミカコちゃんの役の娘さんが云いそう。
っていうか、是非壹岐さんのため一言
いってあげるべし、な 言葉です
余計な御世話だけど・・・
なんか、小雪さんふんする千里さん、
壹岐さんのかつての上司(上官)の娘さんなのに
付き合いが進むと都合のいい恋人的な、
立場になってるようなE:rain]
・・・そうなんです、壹岐さんて、
折り目正しくて、女性にも誠実そうに見えて
なんとなく・・古いタイプっていうか、
はっきり書いちゃうと実は男尊女子を
内に持ってるタイプなのかも。
なんか、第一回の怒れる男みたいな
とこ押し出して、恋愛も(仕事も)
渋く決めてほしいです・・・。
でも、あの、EDテーマは


なんか~ 歌声がドラマに合ってないような
投稿: マキシー | 2010年1月31日 (日) 21時20分
まあ・・・原作ありきで
しかも時代設定などをそのまま
じっくり描きあげるタイプのドラマ。
こういう主人公なんだ・・・
と思うしかないのですな。
ルキノ・ヴィスコンティーの映画
「地獄に堕ちた勇者ども」という作品があって
「華麗なる一族」が生まれ・・・
その次の時代を「不毛時代」が描く・・・
こういう流れがございます。
原作の時代に日本は冷戦の中で
学生運動が燃え盛っていたのですが
そういう庶民のお祭り気分とは
別のところで・・・
上流の男たちはビジネスを展開していたという・・・
もううっとり眺めるしか仕方のない
作品なのでございますよ。
投稿: キッド | 2010年1月31日 (日) 22時55分