私が初恋の女です(広末涼子)私が許婚です(貫地谷しほり)私が妻です(真木よう子)
キッスのジーン・シモンズ(Gene Simmons)の出演する映画「デトロイト・メタル・シティ」(2008年)のテレビ放映の前日、女優のジーン・シモンズ(Jean Simmons)が亡くなった。日本ではまぎらわしい名前の二人だったが奇妙な縁を感じる・・・ビジュアル的にはまったく正反対なのに・・・そもそも男と女だろう。
「デトロイト・メタル・シティ」は主人公の松山ケンイチが雨に打たれる前後が大爆笑なのだが・・・おそらく一般的に笑う場面ではないとも思われるのであり、映画館で見なくてよかったと思うのだった。笑いをこらえるのは大変だからな。
脚本家が意図してキッドを笑わせているとは限らないのだが・・・大森美香だけにそうなのかもしれない。
そういう意味で坂本龍馬的に大爆笑なのは・・・女を泣かせていることが歴史的に明らかなのに非業の死を遂げた英雄であるという点なのである。
この中で初恋の人である平井加尾(広末)は後に結婚し、子も成し、夫は警視総監にまで出世する。龍馬の最後の恋人でもあり正式な妻でもある楢崎龍(真木)は後に横須賀の商人と再婚し酒びたりの日々を送ったという。
そして・・・千葉佐那(貫地谷)は龍より3つ年上、加尾より4つ年上、龍馬より2つ年下の女。嘉永6年(1853年)から文久3年(1863年)まで龍馬が江戸にいる間に深く関係し、最後には婚約したとされる。しかし、その後の龍馬は幕末の動乱の中で江戸には戻らず・・・慶応3年(1867年)暗殺される。佐那がもっとも凛としてしかも哀切であるのは龍馬の死後も生涯独身だったとされるからである。
もちろん・・・龍馬を知る三人の女の心中をいろいろ妄想すると・・・穏やかな気持ちではいられず・・・ついには爆笑してしまうキッドだった。
で、『龍馬伝・第4回』(NHK総合100124PM8~)脚本・福田靖、演出・大友啓史を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今年は本当に沿っているから気が楽です。山内豊信の件もキャスティングで想定内だし・・・山内少将を近藤正臣にしておけば問題なかったのに・・・ですな。今回は千葉道場の鬼小町と齋藤道場の塾頭のどちらかが来るかと思えばやはり桂小五郎書下ろしイラスト(ヒゲなし)大公開でした。しほりの実写ヴァージョン来ねーっっっ。・・・ちなみに龍馬の江戸の兄と言われる溝淵広之丞は後に土佐の砲術方として龍馬から桂を紹介されるので・・・場末の岡場所で桂が先に二階をすませて、溝淵が二階に上がるのはまさに運命のすれ違いとしてなかなかにおしゃれでしたな。まあ、場所が場所だけに前述のことは再会だったけど知っているのに知らぬふりだったのかもしれません。なにしろ桂の師・吉田松陰と溝淵は同じ佐久間象山の洋学塾の門下生なのですし。とにかくさな子の防具をつけたスタントは見事でございましたね。快刀乱打の極み~。
嘉永六年四月(1853年5月)、ペリーはすでに琉球に到達していた。その頃、龍馬は江戸に到着した。龍馬が寄宿するのは築地にある土佐藩江戸下屋敷である。龍馬が神田お玉が池の千葉道場ではなく京橋桶町の小千葉道場に通ったのは距離的な近さもあった。血縁、地縁はいつの時代も人々の運命を決する。小千葉道場の長刀師範・乙女の運命もまた龍馬との必然的な出会いで決せられたのだった。北辰一刀流は古くは柳生新陰流の宿敵である小野派一刀流に遡ることができる。剣技はつまるところ敵よりも早く強く急所を突くことにある。このために心(急所を感じる心)、技(急所を突く技術)、体(心技を示す体)の錬成であることはどの流派であろうと大差はない。奥義を極めることは最終的には個人差によるところが大きいが初心の伝え方は各流派の特性により差異が生じる。幕末においてそれを最も合理的なものとしたのが北辰一刀流であり、それは現在のスポーツ化した剣道においても濃厚に伝えられている。龍馬はどちらかと言えば、異流である新陰流を習得していたのだが、北辰一刀流に触れたちどころに開眼した。一つの心技体の達人となっていればより優れた原理の習得は容易いということだ。門弟となって一ヶ月で龍馬と伍するものは師範代である乙女のみとなっていた。
十代になってから道場において無敵だった乙女にとっては驚愕の出来事であった。
その夜、千葉道場の稽古場に道場主・定吉、師範・重太郎、そして乙女の父子三人が会していた。
定吉「土佐の坂本をどう見るか」
重太郎「恐ろしき使い手でございます」
定吉「乙女はどうか」
乙女「すでに私のおよぶところではごさいませぬ」
定吉「北辰影の太刀でもか」
乙女「秘太刀の筋もすでに読まれておる気配がございます」
定吉「うむ・・・父もそう見た」
重太郎「鬼ですな・・・」
定吉「門外不出の秘伝を盗まれたからには・・・殺す他ないが・・・それも惜しい・・・そこで手がある」
乙女「いかがなさるのです」
定吉「乙女は・・・明日、元服し、名をさなとする。そして坂本と縁組いたす」
乙女「・・・」
定吉「千葉一族のものとなれば・・・門外に出たことにはならぬからな・・・乙女・・・いや、さなよ・・・しかと命じたぞ」
翌日、土佐藩下屋敷に小千葉道場より使いあり。藩士坂本龍馬に夜稽古による北辰一刀流奥義伝授の沙汰申し込まれること。
龍馬「広兄ぃ、これはどうしたもんじゃろ」
溝淵「そら、願ってもないことじゃからお受けするしかなかろうが」
龍馬「ちくと恐ろしげな気がするんじゃが」
溝淵「龍馬、何事も修行じゃ」
龍馬は呼び出しの刻限を見計らい、黄昏の迫る江戸市内に出た。西にある江戸城がシルエットとなって浮かぶ。高知との最大の違いは・・・と龍馬は考える。
(この夕暮れの賑わいじゃの・・・)・・・高知では日が暮れれば人の出入りはめっきり少なくなる。しかし、江戸八百八町では昼と変わらぬ人出が右往左往するのである。
(まるで祭りのようじゃ・・・)と龍馬は驚かずにはいられない。そして町々家々には煌々と灯が輝く。道々には提灯の灯が蠢く。松平土佐守(山内家)中屋敷を過ぎた龍馬は合引橋を渡り、真福寺橋、白魚橋と過ぎて材木町の竹川岸に出る。川岸の稲荷の前で陽が落ちた。
その時、目の前にふらりと人が現れた。
その唐突さに龍馬は身構える。男は町人姿だった。しかし・・・まっとうな堅気の気配はない・・・身を持ち崩した若者という態だった。
男はたちふさがろうとし龍馬はすっと身を交わす。
身をかわされてそれを龍馬の弱気と読んだのか、若者は言った。
「おい、待ちな・・・」
「何か用かの」
「ちょっと懐具合が淋しいのさ・・・」
「そりゃ大変じゃの」
「こら、なめてんのか」
「おいおい・・・ワシはこれでも侍じゃぞ」
「うるせえ・・・」
若者はすでに匕首の鞘を払っている。
(こりゃ・・・少し気が触れとるの・・・)
若者に殺気が漲るのを龍馬は感じた。龍馬の想像以上に素早い動きで匕首を低く構えた男は突進してくる。しかし、龍馬にとっては子供がじゃれついてくるようにしか思えない。男が手ごたえを感じたとき、匕首は宙を舞い、男は地に伏している。その男の背に龍馬の右足が乗っている。男はもがくがどうしても起き上がることができない。
「こりゃ・・・北辰一刀流の捕縛のワザで・・・ワシも一昨日教わったばかりじゃがの・・・ツボを抑えておるきに身動きできんのじゃ・・・大人しくしてくれれば見逃すき・・・」
「おっと・・・お武家様・・・待ってくだせぇ」
龍馬は背後から声をかけられてふりかえった。
「ご無礼します。あっしは南伝馬町で十手を預っている半蔵ってもんでさ」
小柄だが目つきの鋭い男が十手を見せて言う。
「あっしはね、この辺りで殺しがあって・・・張ってたんです。手口は匕首でぶすりなんで・・・そいつはどうも下手人らしい・・・お引渡し願えねえでしょうか」
「そりゃ・・・いい塩梅じゃ・・・わしは約束の刻限があるきに難儀しちょった・・・それじゃ・・・かわいそうじゃが・・・」
龍馬が足を小さくひねると男は悶絶した。
半蔵は失神している男に手際よく縄をかける。
「いやあ・・・たいしたもんだ・・・お武家様は・・・どちらのご家中の・・・」
龍馬は手をふった。
「名乗るほどのものじゃないき・・・ちくと約束があるのでな」
そういうと龍馬は足早に北へ向かう路地に入る。
その後姿を見送った半蔵の口元がほころぶ。そこへ半蔵の子分たちが現れた。
「見たか・・・」
「へい・・・」
「あれが・・・土佐の明智流忍びの使い手よ・・・なかなか凄まじいものだ・・・まあ・・・特に悪さもしないだろうが・・・それとなく目をつけておきな・・・」
そう言うと半蔵は捕らえた男に活を入れる。
「しかし・・・まあ・・・手間が省けてよかったな。おい、三次郎だな・・・牢から出たばかりでムチャしやがって・・・今度は叩きじゃすまねえぞ・・・」
半蔵は実際に岡っ引きでもあった。しかし・・・その正体は・・・。
その夜・・・千葉道場では密儀が行われた。
その繊細を語るとスパム扱いになるので書けないが、千葉さな子は乙女ではなくなり、坂本龍馬は北辰一刀流の真の一門となったのである。
その頃、土佐藩江戸上屋敷には貴賓客が訪れていた。
応対するのは隠居した先々々代藩主の山内少将豊資である。
「ついに来るべきものが来ましたな」
「これでこの世は大いに乱れるのでおじゃる」
断言したのは武家伝奏役を司る三条家の公家忍びである。土佐藩主山内家と三条家は縁戚関係にあった。
嘉永六年六月、ペリー提督率いる米国艦隊は浦賀に迫っていた。
関連するキッドのブログ『第3話のレビュー』
月曜日に見る予定のテレビ『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命2nd Season』(フジテレビ)『ハンチョウ』(TBSテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
「江戸は違うのぉ」みたいなことを冒頭叫ぶ竜馬ですが、そこは第1回で弥太郎が上士に絡まれた場所。まぁ、撮影を同じとこでやって当然なのですが、街の人の身なりや埃の量など色々と雰囲気を変えていただけに、アングルがなぁとちょっと思いました。
しかし、道場前のちょっと猥雑な街並みは、黒船到来で混乱を来す様子を伝えるのにウッテツケでした。第2回の普請現場もそうですが、CG頼みや無理矢理な合戦場面にせずとも、モブシーンをしっかりと作りこむだけで、随分と盛り上がるものだなぁと。
それと、博識のキッドさんならそろそろ論評あるころとは存じますが、これで2回登場の阿部正弘らが最近の幕末史研究に即し、しっかり黒船対策を練った上で現実外交を展開していたことを、キチンと描写しているのは、映像や音楽とは別に評価できるのではないでしょうか。
幕末の幕閣・幕臣は大半の幕末・維新ドラマでは、勝以外は総じて無能な描かれ方が多かっただけに(そうしないと、主役が際立たないにせよ)、升さんも演じ甲斐があるのではないでしょうか。
しかし、さなのfall in loveは早かったですね。これから実質3~4年の十年愛になるのかぁ・・・
投稿: ひろすけ | 2010年1月24日 (日) 22時09分
(笑)偏差値40~ひろすけ様、いらっしゃいませ~偏差値65(苦笑)
まあ、江戸と高知の城下の違いというものが
ものすごく違っていたかどうかは
それぞれの想像力によって補完するしかないのですな。
徒歩で東海道から江戸入りしたとすれば
次から次へと大きくなる宿場町に
感性鈍って江戸の外れに
たどり着いたときには
もう何が大都会だが分らなくなっている
と考えることもできます。
千葉定吉道場は現代の東京駅付近にあったわけですが
そこから浦賀奉行所のある横須賀は
もの凄く遠いので
ちょっと大袈裟な描写でしたな。
ゴジラが来たのかと思いましたぞ。
阿部周辺の動きについては
一昨年の「篤姫」で結構、繊細に
描いておりましたぞ。
それから長州藩や薩摩藩、そして土佐藩は
それぞれが密貿易で儲けていましたから
幕府が持っている以上の情報を持っていたわけで
そのあたりの軋轢についても
そこそこ描かれていました。
勝海舟が有能に描かれるのは
勝ち組だからなのですな。
まあ・・・幕府が敗北した以上・・・幕閣が
ある意味無能だったことは間違いないわけでございますよ。
坂本龍馬(17)と千葉佐那(15)ですが
まあ・・・思春期で
電撃的なものを感じたのでしょうね。
お互い、剣の天才同士だったわけだし。
それから10年、相思相愛だったわけです。
そして坂本龍馬(27)と千葉佐那(25)で
時代の運命は二人を・・・。
投稿: キッド | 2010年1月25日 (月) 08時18分
撮影は基本、福山城がメインなんで
見たことあるような光景が結構出てくるんでしょうね。
佐那に関しては
既に描き上げているのですが娘姿を描いたもんで
今回はそれが登場しなかったってとこで
来週に繰り越しました; ̄∇ ̄ゞ
後、次週登場する山内のお殿様の白髪頭には
NHKに質問してみましたが、果たしてどんな回答がくるのやら。
それにしても吉田東洋さんはあの人なんで
ついつい「たそがれ清兵衛」でのあの狂気なキャラが浮かんできます。
それと近藤さんについてはどうしても
「腕におぼえあり3」の嗅足組頭領・石森左門の陰がチラホラと見てしまいます。
今回の妄想は納得です。
おそらく柔の技で龍馬が押し倒した時ですね。
それを陰で見守る兄。
いやぁなんともかんとも ̄∇ ̄
投稿: ikasama4 | 2010年1月26日 (火) 12時53分
✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥
江戸と高知の時差というものも
現代と直接比較するのは難しいのですよね。
連合国の首都・江戸と
高知王国の首都とでは
現在の首都・東京と
県庁所在地・高知では
まったく別次元ですし。
位置的により外国に近い高知の方が
近代の接近は早かったはず。
だから局所的に
高知と江戸の景色が
似ていることはありうると
考えます。
佐那の発表予告とは素晴らしいことですね。
風林火山、ちりとてちんを越えて
ついに貫地谷シリアス解禁ですな。
まあ、綾瀬ロイドの生産台数越えは
かなり大変だとしても~。
まあ、山内様に関しては
若白髪です・・・かな。
吉田東洋はどうしても「悪役」なんですが
かっては
過激派志士に感情移入した若者たちも
今は老人ですからね・・・。
そういう勧善懲悪をどう思うのか・・・
楽しみです。
まあ・・・キッドとしては
有名人は基本的に
みんな忍者の妄想で
押し通す覚悟でございます。
加尾に関しては
結構きわどい描写も可なんですが・・・
さな子はなんとなく
痛々しい感じがして・・・
まあ・・・終焉の地が近所という
生々しさもあったりして
自主規制します。
幕末の江戸の兄妹は
名コンビ続々誕生ですね。
いっけいさんは
下忍役が似合うと思うなぁ・・・。
抜け忍(ただしカムイではない)の役とかも
やってもらいたい・・・。
そういう時代劇があったらなぁ。(; ̄∀ ̄)ゞ
投稿: キッド | 2010年1月27日 (水) 08時13分
キッドさんの妄想は、
スピンオフを見てるようで面白いです。
幕末時代の勉強をしながら、
ドラマを楽しんで見られるので、
初めて大河を完走できそうな予感σ(^∇^ヾ)
山内様が若白髪でも、何ちゃ~気にならんきのぉ(笑)
桂小五郎の「ヒゲ」が気になって仕方なかった龍馬が、
溝渕の顔見て知ることになるなんて流れ、好きですわぁ。
全体的にもバランスの良さに感心しちゃう。
こういう大河らしくない脚本や演出が、
(あ、イメージでね)
歴史無知な私でも引き込まれてるんですが、
年配の大河ファンの方たちには受け入れられてるんでしょうかね?
NHKスタッフも若い層になって来たのかしら~…
なんて思ってしまう今日この頃のNHK。
投稿: mana | 2010年1月27日 (水) 17時13分
|||-_||シャンプーブロー~mana様、いらっしゃいませ~トリートメント|||-_||
妄想は楽しいですからな。
嘘八百万歳なのでございます。
昔から
嘘と本当は紙一重ですからな。
キッドの子供の頃は
「嘘をついたら閻魔様に舌を抜かれる」
などと脅されたものですが
こればかりは死んでみないと
嘘か本当かわからないし
一体だれがその情報を地獄から
持ち帰ったかも謎ですしーっ。
勝てば官軍、死人に口なしで
生き残ったものは言いたい放題。
それだけに死んでから
英雄と祭り上げられる人は
生前にそれだけ愛されていた
という考え方もできます。
どんな研究も結局は
誰かが書き残したものや
言い伝えを資料にしている以上
本当かどうかは分らない。
ただ・・・そうであるといいのになぁ・・・
という願いは誰もが持つことができるわけです。
龍馬の家族、友人、仲間・・・
そして場合によっては敵に伝えられた
在りし日の姿。
それを面白おかしく語ることは
素晴らしいことだ・・・と
キッドは考えます。
だってそれは・・・きっと愛なんですから・・・。
そういうわけで無責任に妄想を
繰り広げることを
どうかご容赦いただきたいと思う今日この頃です。
投稿: キッド | 2010年1月27日 (水) 20時01分