曲げたくても曲げられない女(菅野美穂)
強迫症状というものがある。
強迫症状には二つの要素がある。一つは強迫観念である。本人の意思とは無関係に不安や不快な気持ちを抱かせる「何か」が思い浮かぶことである。10年も交際している男性にお泊りを許すとゴミ箱にゴミが投げ入れられなくなるのではないかと思うことは強迫観念と言える。もう一つは強迫行為である。額縁が曲がっていると不安になるために直さずにはいられない。分別されていないゴミを見ると不安になるので分別せずにはいられない。勉強しないと不安になるため勉強せずにはいられない。これらは皆強迫行為である。
強迫観念と強迫行為が結びつくと強迫性障害(強迫神経症)と呼ばれる精神障害と診断される場合がある。
もちろん・・・深刻な脳の機能障害であることもあるが・・・几帳面な性格だったり、頑固な性格だったものが度を越してしまう場合もある。
今回のドラマの主人公は明らかにそのボーダーラインに立っています。
水曜日のダンスは・・・。
「相棒」15.7%
「検事」*9.4%
「曲女」15.4%
・・・でスタート。優雅だ。
で、『曲げられない女・第1回』(日本テレビ100113PM10~)脚本・遊川和彦、演出・南雲聖一を見た。前回は「カイザー、カイザー」な女が主人公だったこの枠。今回は「司法試験、司法試験」な女なのである。古い心理学で言えば、自我が限りなく超自我と融合した女である。超自我とはいわゆる一つの良心で・・・一般的には両親の擬似人格である。
大手法律事務所ビッグファームでパラリーガル(弁護士アシスタント)として働きながら弁護士を目指す荻原早紀(菅野美穂)は九年連続で司法試験に不合格な女だ。
父親もまた九年連続で失敗したが十年目に合格し、その日に乳母車トラップによって死亡した。母親(朝加真由美)は教師でそんな父親を応援してきた人格者である。今も教師で生徒に敬愛されているが心臓に持病を持っている。いつ心臓が止るかわからない状況である。
この両親に育てられ・・・父の死後は主に母親のみだが・・・早紀は司法試験を受ける自分を応援する自分という両親の姿を再現した人生を送っている。
言い方を変えれば両親の人生に支配され、両親の人生を模倣し、両親そのものを再現している人格なのである。
本来の人格である早紀は両親的な超自我に圧迫されほとんど閉塞していると思われる。弁護士になるよりキイナになった方がずっと本人にも社会にもよかったと思えるのだ。・・・おいっ。
とにかく・・・「演歌の女王」「学校では教えられないこと」と主張が強すぎて失敗している脚本家なのでものすごく不安な展開です。さすがに「女王の教室」の貯金はなくなったのでそろそろヒットが欲しいところです。「リミット~刑事の現場2」はまあまあだったけど視聴率的には惨敗だったしな。
おそらく、「ドラマの登場人物は性行為をしないといけない」「ドラマの登場人物は基本的に不幸でなければいけない」という強迫観念が強いとしか思えない作風をなんとかしてもらいたい。
なにしろ・・・上戸彩でさえなることができた弁護士になれない女なのである。っていうか「私たちの教科書」では本人、弁護士だったのにだ・・・。
まあ・・・脱線はほどほどにしておくが・・・どうして菅野美穂主演で・・・弁護士ドラマではいけないのか・・・よく判りません。早紀が弁護士になるまでのドラマなのか、なれないままのドラマなのか、理想の結婚相手にめぐりあうドラマなのか、めぐりあえないドラマなのか・・・よくわからないので不安なのでございます。
特に最初に視聴率が悪いとものすごくなげやりになる傾向があるからな。
こわいよ。
とにかく「不安や淋しさに負けないのが生きることだ」と母に言われたことを忠実に守り、「父が果たせなかった弁護士の道」を歩もうとする早紀を・・・もう少しいい加減な人々が誘惑する。
そういう趣向のようです。
第一の誘惑者。増野所長(西岡徳馬)「もう、あきらめたまえ・・・司法試験だけが人生じゃないぞ・・・多摩プラザだけが街じゃないし」
早紀「多摩プラーザです」
第二の誘惑者。昔の年上の同級生で有閑主婦・長部璃子(永作博美)「結婚すれば子供も生めるし人生薔薇色よ」
早紀「・・・」
第三の誘惑者。愛の狩人・藍田警視正(谷原章介)「俺と結婚を前提としないセックスしないか」
早紀「・・・」
第四の誘惑者。大学の後輩・坂本弁護士(塚本高史)「あきらめて僕と結婚して仕事を手伝ってくれないか」
早紀「がんばれって言ってほしかったのにそうじゃないのでごめんなさい」
一同「うっひゃあーっ」
しかし・・・早紀は狂っているわけではない・・・弁護士として父親の果たせなかった夢を果たし、母のように世の中を支える人間になりたいと思っているだけなのだ。
だから・・・離婚問題で悩んだあげく自殺未遂をする顧客(高橋由美子)を人命救助するにおいてただものではない集中力を発揮するのである。そこだけキイナなんだな。
まあ・・・いつもの・・・この枠の「働く女シリーズ」だと思えば・・・弁護士より優秀で、弁護士が解決できない案件を処理してしまうスーパー・パラリーガルだけど司法試験はいつもなぜか不合格という軽いエンターティメントに持っていく手もあるんだけどな。
きっと・・・そうはしない予感がひしひしと・・・。ただの面倒くさい女にならないといいけどね。
これもきっと強迫神経症の一種なのかしら。
関連するキッドのブログ『キイナ~不可能犯罪捜査官~』
金曜日に見る予定のテレビ『ヤマトナデシコ七変化』(TBSテレビ)『前田敦子のマジすか学園』(テレビ東京)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
主人公の名前の間違っていたことにキッドさんの所で知り、こっそりと変更してしまった。(^_^;)
タニショーさんの男の分析能力が素晴らしい!
潔いですわ~~。好きだ。このキャラ
投稿: みのむし | 2010年1月14日 (木) 08時38分
じいやさま、菅野ちゃんの魅力がいっぱい詰まってましたね~。
そうそうあの主婦を助けるところではキイナが少し入ってると思いました。
以前弁護士だったはずなのに・・と思った私は
じいやのここできっちり思い出せて満足です~。
親の夢を生きる早紀は強迫神経症のボーダーというのも
よくわかるようなエピでした。
私的にはあのネックレスは本当に早紀の首を絞めてると
思うのですが・・
でも150万の指輪も要らない気がするの・・。
そんでやっぱり最後は合格通知がほしいです。
投稿: エリ | 2010年1月14日 (木) 14時36分
じいめも最近、ボケがひどいので
あまりご信用なさいませんように。
本当に警察官なのか
勤務ぶりを見るまでは
信用できませんな。
どう見ても結婚詐欺師・・・。
結婚を否定するところから
入るというのが
新しい手口。
毎回、そこそこのゲストとベッド・イン。
というのは面白いかも。
今回は西園寺アンナこと杏さゆりでした。
投稿: キッド | 2010年1月14日 (木) 19時10分
三十代になっても
不思議少女ができるのは
希少な存在でございますね。
巻き戻してもう一度は
クドカン風味でございますね。
パラリーガルが主人公で
ついでに司法試験浪人でもあるという
含みが一石二鳥なのかどうか。
なにしろ、恋とお仕事のノルマもあるし
まあ・・・働きマンくらい
面白ければよろしいんですけど。
「演歌の女王」に行きかけた終盤が
ちょっと心配です。
さすがはお嬢様、
あのネックレスに
絞殺の気配を感じるとは
まさに真綿で首を絞める如く
両親の形見のネックレスは首枷ですな。
ネックレスを握りしめる設定は
「華麗なるスパイ」の
天才詐欺師を連想させて・・・
おっちゃんの作家たちは
身についたテクを
安易に使いすぎでございます。
まあ・・・こちらの方が
自然といえば自然でしたけど。
1億円以下の装身具など
ゴミでございますが
弁護士のくせにゴミのポイ捨てはいけませんな。
初回ゲストで退場のようなアニ塚本でしたが
レギュラーなので
「結婚できない男」のように
「結婚できない女」をあくまでフォローするのですかな。
最後は年上キラーとして年下キラーの永作と
できちゃったりして・・・。
じいめは気が短いので
初回のラストで合格・・・
来週から新人弁護士でもいいのに・・・
と思いましたぞ。
このメンバーなら
「アリー my LOVE」ができるのに・・・。
投稿: キッド | 2010年1月14日 (木) 19時24分
キッドさん、こんばんは~♪♪
おとなしく亀梨君のドラマに
しておけばよかったものを
また間違えてしまったかもしれません。
「有閑倶楽部」も
「1ポンドの福音」も
頑張ったので、
赤西君は
明日公開の映画もレビューする予定で、
もうこの2人は
どこまでも追いかけるとか
そういった信念のかけらもなく
適当にチョイスするから
曲げられる女。
結婚1年と少しのヤマトに
ケンカを売るような台詞連発・・・。
何故だ。何故そうまでに夢を壊す。
璃子と璃子の旦那のシーンでダメ押し。
何故進んで女子の夢を壊す作品を・・・。
うあああぁぁぁああぁぁああああ
と発狂寸前のミスチョイス、
でもはじまってしまったのだ、
やり遂げるしかないのだ。
曲げられない女。
毎週水曜日の夜、
強迫観念を少しずつ強化するのだ。
投稿: ヤマト | 2010年1月15日 (金) 21時29分
序盤での掴みはOKですね。
前日の「曲がらない」男と比べると
少数精鋭の役者さんが見せてくれる
というのもありますが
何よりこの早紀のキャラは
他人、特に早紀と正反対のキャラとの
掛け合いによって華、開きます。
会話がかみ合ってないようで
ドラマの面白さとしてはかみ合ってますね。
元々曲げるつもりはないキャラと
曲げたいけど曲げられないキャラ
火曜と水曜でこの差を比べながら
見るのはそれはそれで楽しそうです。
塚本さんが火曜から水曜に
枠移行したのは第一話を見る限りでは
こっちでよかったのかも ̄▽ ̄ゞ
ちなみにあのペンダントを握った瞬間
ウルトラマンに変身するのかと思ったのは
私だけでしょうかねσ(゚∀゚;
でもって、個人的には
この面子ならば「ボストン・リーガル」でも
いけそうな気がします(; ̄∇ ̄)ゞ
投稿: ikasama4 | 2010年1月15日 (金) 22時02分
ヤマトナデシコ七変化は
超絶シュールおタッキーな原作だけに
どストライクだと思いますが
すでに新妻鏡のヤマト様には
「結婚と仕事の愛と憎しみの果ては正確に」
のこのドラマは当然の選択なのかもしれません。
今季は実は一瞬の隙もない一週間で
消耗戦は覚悟ですが
ここにヤマト様が来たことで
もう後がないんだ・・・
と絶望的な気分になりました。
こうなりゃ、不毛地帯を軽く流すしかないよう。
いい加減な世の中で
正確な生き方は異常者の証。
「おかしいのはどっちよ」
という言葉ははみ出しモノの最後の拠り所でございます。
「ムチうたれて喜ばないなんておかしい」
「キャンドルサービスと聞いただけでうれしくならないなんて」
「誰だって縛られたいでしょう」
と誰もが思っている・・・わけないだろっ。
このように「結婚」にスイーツな夢を見るのも自由なら
「共に白髪が生えるまで」燈台守をするのも自由なのです。
そして「墓場」と思うのも自由だし
家族なんて蟻の巣じゃんと嘯くのも自由なのです。
そんな自由も不自由ものりこえ
菅野美穂は何かを曲げるのか
何にも曲げないのか
自分の正気を疑いつつ・・・
検証してまいりたいと考えます。
最後は・・・「わたしたちの教科書」の
カップルが誕生したりして・・・。
でも二人は結局破局鎮魂曲だったりして。
まったく・・・読めない。
とにかく・・・視聴率がよかったので
そこそこまともなドラマになるかもしれません。
視聴率はスタッフの鎮静剤みたいなものですからね。
投稿: キッド | 2010年1月15日 (金) 23時57分
ものすごく・・・タイトロープな展開でしたが
ワクから言えば
ギリギリ想定内の線だった感じでございます。
土曜でなくてよかった・・・。
かってヒーローとしてウルトラマンだったヒロインが
今回は仮面うつ的なウルトラマンに
なったって・・・申しますか。
画伯のイラストがずっと蘇ってました。
「正確に言いたいので」
「逆に潔い」
「多摩プラーザです」
こういうセリフはくりかえしになると思うので
楽しみです。
・・・多摩プラーザは無理かな。
・・・一番インパクトあるけどな。
「住所は多摩プラザ?」
「多摩プラーザです」
・・・毎週聞きたいなぁ。
若くて一本気なのはよくあることですが
斉藤さんでもなく
ただ超自我が肥大しているので
マリオネットなのは
かなり危うい感じがして
面白そうですねぇ。
ある意味、「カイザー」とは
真逆の狂いっぷり。
最後はちょっときれたアニも結局は
しょうがないなぁ・・・と
戻ってくるのなら
まるで・・・某建築事務所みたいですな。
日本には高額所得者に対する
根強いタブーがあるので
なんですが
荻原弁護士「だからお母様からの贈与は申告させておくべきだったのよ」
坂本弁護士「だってまさかあの人が総理大臣になるなんて想定外じゃね」
長部弁護士「それより小沢センセーの件をどうするよ」
・・・こんな弁護士ドラマをやればいいのに。
ニュース速報を見ながらそう思いました。
投稿: キッド | 2010年1月16日 (土) 00時15分