ついに主要登場人物がいきつけの店で一同に会するシーンがやってきた。
カウンター席では白石(新垣結衣)が緋山(戸田)、藤川(浅利陽介)を相手にくだをまき、ボックス席では藍沢が飲んだくれる。スナック「すれちがい」はフェロー・ドクター(専門研修医)全員集合である。
しかし・・・ほとんど年中無休で働いている彼らが・・・ヘリの飛ばない夜とはいえ・・・オカマ・バーに一同で集うことがシフト的に可能なのだろうか。キッドはそこが一番気になった。・・・どこを気にしている。
この夜、それぞれは問題を抱えている。
藍沢は死んだと聞かされていた父親から母親の遺書のようなものを渡され、動揺する気持ちを静めようとグラスをカラカラ言わせて杯を重ねる。
白石は父親が死に至る病に冒されていることを知り、悔恨と絶望でキャラが変貌するほど酒に溺れる。
藤川は誘っておいたフライトナース・冴島(比嘉愛未)が到着しないので催促の電話をかけようとする出前待ちの気分である。
その中で緋山は実は最大のピンチに見舞われる直前なのだが、嵐の前の静けさ、津波の前のビーチの如く、四人の中では平静を保っている。
アルコールの匂い、香辛料の味、どこかで聞いたようなメロディー、仲間たちの表情、触れ合うぬくもり・・・すべての感覚には発信源がある。あらゆる感じはすべて結果なのである。時は早くも遅くもならず流れ去り、人々は原因によって生じる結果の連続を受け止め続ける。最後の結果が訪れるまでは。
藤川はついに辛抱できなくなり、冴島の携帯に電話をしてみるが留守番メッセージが応答する。
「もしもし、ラーメンまだ?」と電話して「本日の営業は終了しました」とメッセージを返されたら空腹のやりどころに困るわけだが、愛に餓えた男は絶望的な結果にも少し苛立ちを感じる程度なのである。
どんなに望み薄なチャレンジでも結果が出るまでは絶望しないというのは一つの賢さと言えるだろう。
最後の結果が出るときには絶望もできないのであるから。
本題に入る前に恒例の週末の視聴率チェック。「宿命」→5.3%(すごいところで→キター)、「ヤマトナデシコ七変化」↘*7.0%(私、髪をきりました~って言われてもな)、「ナウシカ」17.5%(巨神兵とったな)、「サラ金2」↗*9.8%(井上和香とったな)、「ブラマン」↗*8.4%(黒川智花とったな)、「左目探偵」↗*8.5%(石原さとみとったな)、「君たちに明日はない」↘*6.2%(玩具とれなかったな)、「がばいばあ2」13.9%(石田ゆり子とったな)、「樅の木は残った」10.6%(井上真央も残った)、「龍馬伝」↗22.3%(吉田東洋とったな)、「特上カバチ」↘*7.2%(石原良純でとれるかっ)、「はぐれ刑事最終回スペシャル(再)」15.8%(あたりまえだのさようなら)・・・ついでに「ハンチョウ」↗11.6%、「コード・ブルー2」↗15.9%・・・以上。
で、『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命 2nd Season・第7回』(フジテレビ100222PM9~)脚本・林宏司、演出・西浦正記を見た。果実は常に甘いとは限らない。苦い果実もあるのが現実というものだ。現実の結果とはつまり甘柿なのか渋柿なのかということに尽きる。
しかし、甘柿もいつかは腐り果てるし、渋柿も食べられないわけではない。腐り果てたとしても果実酒になるかもしれず、食べてお腹をこわすこともある。このように結果とは連鎖なのである。人はその途中で勝ち誇ったり、嘆き悲しんだりするが死後の世界を信じない限り、その最終結果は誰もが「死」なのである。そういう意味で人間というものはすごく平等に出来ていると思う。
結果だけが全てじゃないし、そこに至る過程が大切だという真理がある。
しかし、東大に不合格では東大には入学できないし、国家試験に合格しなければ医師にもなれない。
そういう意味では結果だけがすべてだし、そこに至る過程は大切ではないという真理もある。
真理なんてそんないい加減なものだ
当然の結果には納得するのが筋だが、何が当然なのかという尺度には個人差がつきまとう。
前半、99対0で折り返して後半、99対100で負けたサッカー・チームとか
オリンピックで7位6位5位4位で12年間を過ごした女子モーグル選手とか
手を抜いたわけでもないのに思わしくない結果が出たりしたら泣いちゃう。
100%愛しているのに相手が全くその気がないとしたら
結局ストーカーになるしかなかったり・・・。
まあ、うっかりしているのと人事を尽くして天命を待つのとは同じだということです。
今週のモノローグ担当の緋山は呑気につぶやいている場合ではないのだった。
しかし、失策に気がつかないことを未熟というのである。
つまり、甘い果実と信じて苦い果実を食めば最初はそれが苦いとは気付かなかったりするということである。
だから酒席の切り込み隊長白石に「不幸か」と問われ「不幸、不幸イエーイ」と適当な迎合をしていた緋山が致命的なエラーを犯していることに気がつかないというのはありがちなことなのである。
一夜明けて、白石と藍沢は藤川と緋山にからかわれるほどの親密さを示したことを覚えていないことにする。
藤川と緋山は聞き耳をたてていたはずだが何も聞かなかったことにする。
酒飲みの情けである。
その延長戦上に危険運転防止法が成立するのはいうまでもない。
事故により死の淵から蘇生した緋山だったが、馬鹿は死ななきゃ直らないという真理に従い、迫り来る陥穽に向かって歩みだす。
一方、藤川は自分の愛が冴島を救うと信じて、接触を続ける。
しかし、死んだ田沢を求め続ける冴島の心は救命セットにサテンスキー(止血などに用いる鉗子の一種)を入れ忘れる。
田沢の留守番電話の声を聞きたい衝動にかられたからだ。
それを藤川が妨害し、うろたえた冴島の心からはサテンスキーのことは消えた。
藤川の性急さは冴島を救うどころかその足を引っ張るのである。何しろすでに顔が不幸なのである(白石の断定)・・・。
神の目で見れば愚かの極みだが・・・人間なんてそんなものでもある。
そして、救い手たちの事情には無関係に事故は発生し・・・。
轟木(遊井亮子)はいつものコールを発声するのである。「ドクター・ヘリ・エンジン・スタート」
年寄りの冷や水と言う言葉があり、老いは容赦なくやってくる。しかし、自由に慣らされたかっての若者たちは老いに逆らって危険なレジャーを追い求める。
欲に目が眩んだ旅行会社は需要に応じてシルバールンルン登山ツアーを営業するのだった。
ガイドはリピーターを獲得するためにスリリングな登山コースを設定するのである。
突然の落石があり、夫は妻をかばって胸で岩石を受け止めた。
・・・いい加減にしておけよ。
無謀な老夫婦はガイド付き登山にチャレンジして落石事故に遭遇。運悪く夫は全身打撲の重傷で山小屋に運びこまれていた。
ヘリ当番医の緋山は「珍しい症例との遭遇」の期待に燃えて走り出す。
そして前回、脳死による患者・翼(6)の延命処置中止のサインを求めず、患者の母親の前で延命処置を中止した結果が緋山の前に絶壁として立ちはだかるのである。
翼の母親・野上直美(吉田羊)の兄・野上明彦(松田賢二)はまるで甥の仇を見る目で緋山に噛み付くのだった。
「がるる・・・お前が翼を殺した犯人か」
「え・・・」
緋山は立ちすくんだ。
ヘリ当番のシニア・ドクター(指導医)橘はトラブル発生を察知し、藍沢と緋山にピンチヒッターを命ずるのだった。フェロー・ドクター同士のコンビだが、もはや藍沢は一人前扱いか。
そして・・・サテンスキーを忘れたフライトナースが後を追うのだった。
アクシデントはアクシンドを生むのである。
悪い結果は悪い結果を招き、最悪の結果に進むのが定番である。
橘は緋山に問い質す・・・延命措置の中止の承諾書に同意のサインをもらったか否か。
「サインはありません・・・」
「なぜだ・・・」
「その・・・患者の・・・母親と信頼関係を築き・・・気持ちが通い合ったので・・・不要と判断したからです」
「だれがそんな判断をしろと・・・お前は庇いようがないことをしたんだぞ」
「・・・」
田所部長(児玉清)が狂犬兄に応対する。
「がるる・・・私のかわいい甥の翼が・・・あんな小娘の医師によって・・・適当に扱われ、殺されたと思うと断腸の思いだ・・・姉が離婚して独身だということでなめてないがしろにしたとしか思えない・・・日本に対する中国なみに謝罪を求める覚悟である。事実を公表して、病院は謝罪しろ・・・医者も処分してもらう・・・そちらの誠意(慰謝料)如何では裁判沙汰にさせてもらう」
田所部長は返答に屈した。
ただちに翔北病院対医療チームに出動命令が下った。
春日部事務局長(田窪一世)「そろそろ出番だと思いましたよ」
相馬弁護士(隈部洋平)「前回、ツンツンしたので今回は少しはデレデレさせてもらいたい・・・私だって美男美女を敵に回すのは不本意なのです」
春日部「どうしてDNR(do not resuscitate=延命するな)オーダー(同意書)とらなかったのよ・・・」
緋山「患者の家族の同意を得られたと判断しました・・・」
相馬「向こうはそう思っていないようですがね」
緋山「あの・・・私があやまってすむことなら・・・」
春日部「馬鹿な・・・殺人罪で告訴されかかっているんですぞ」
相馬「非を認めたら終わりです・・・こちらに落ち度はなかったという線で徹底抗戦しましょう」
会議の結果、緋山は副院長命令で無期限で「患者に対する医療行為」を禁じられた。
スタッフボードから緋山のプレートは外されRestrict(制約つき)と記された。
緋山は医師としての両腕を縛られたのだった。
田所「彼女は熱意ある良い医師なんです・・・なんとか」
相馬「わかってますよ・・・しかし・・・結果がすべてです・・・私だって不本意です・・・心無い無知蒙昧の患者の遺族の戯言で・・・彼女が医師としてののキャリアを終えるなんてことはね」
緋山「・・・」
緋山は漸く医師生命の危機を感じた。
ヘリは現場に到着した。どこに着陸したのだ。岳来山五合目なだらかにも程があるだろう。
着陸現場から積雪のある林をぬけて山小屋に徒歩で移動するドクターヘリ・チーム。
処置を終えた患者を搬送するのに・・・まあ、そんな先の心配をしてもしょうがないよな。
きっと帰り道は編集処理で・・・。雪山遭難と聞いただけで興奮しすぎだろう。朝飯前の犬かっ・・・お前は。
「か、風が強かったんでルートを変更したんですよ・・・そしたら・・・こんな・・・落石があるなんて・・・助けてください・・・ぼ、ぼくのガイド生命が・・・」
責任問題の発生に動顛するガイド(尾上寛之)だった。
廃屋のような山小屋の中で泣き叫ぶ妻、横たわる夫。
白石「開放性胸部損傷・・・」
藍沢「これは・・・まずいな・・・」
患者は意識もなく、出血多量である。
藍沢「挿管して・・・開胸して・・・止血だ・・・テーブルを手術台にする」
ガイド「こ、こんなところで手術するんですか・・・」
白石「みなさん・・・そうおっしゃいます・・・大丈夫ですよ」
レスキューの協力により臨時の手術台に患者を横たえる。
ガイド「西南のルートさえとらなければ・・・助かるんでしょうね。死にませんよね・・・」
藍沢「肺門部遮断で止血・・・する・・・サテンスキー・・・」
冴島「・・・」
藍沢「どうした・・・」
冴島「サテンスキーがありません・・・」
藍沢「どうして・・・」
冴島「忘れました・・・」
白石「こちら・・・白石です・・・現場にサテンスキーがありません」
森本(勝村政信)「止血不能か・・・ちょっと待て・・・医療マニュアルを検索中・・・ハイラーツイストだな」
白石「ハイラーツイスト?・・・ひねるのですか」
森本「そうだ、肺を持ち上げて180度捻る・・・ねじれた部分で血流を遮断する」
白石「・・・ですって・・・やったことある?」
藍沢「いいや・・・しかし、やるしかない・・・肺がちぎれたらそれまでだ」
森本「・・・現場の判断にまかせる」
藍沢は肺尖部の癒着をはがし肺をひねりあげた。
白石「心停止したら左も開けて心臓マッサージするよ」
冴島「・・・血圧あがりました・・・」
藍沢「閉じている時間はない・・・パッキングで・・・搬送準備だ」
ガイド「助かるんですか・・・どうなんですか」
藍沢「別のルートを行っても落石はあったかもしれない。もっと大きな石が転がってきたかもしれない・・・だが、起こってしまったことは変わらないんだ・・・後悔するのは勝手だがごちゃごちゃ言ってオレの仕事の邪魔をするな・・・プラスになることは何もない」
ガイド「・・・」
梶(寺島進)「どうだ・・・」
藍沢「持って30分・・・」
梶「やはり搬出搬入は編集でカットするしかないな・・・それで間に合うだろう」
パイロット・梶とメカニック・安西(樋渡真司)の手伝いで患者は無事にヘリに収容されたらしい。
梶「最短ルートは17分・・・たとえ悪い風向きでもいつも通りに飛ばすぜベイビー」
安西「ラジャー」
戦いすんで陽は暮れた。患者は一命をとりとめ、ガイドのガイド生命も首の皮一枚つながった。
医師生命の瀬戸際に立つ緋山は暗澹とした思いに沈んでいた。
自分が乗るはずだったヘリの着陸をただ眺めるだけ、患者へのフォローも禁じられた医師は何もすることがない。反省文を書くことも許されないのだった。
そんな緋山に白石はコーヒーを奢ることにした。緋山は気分を変えようと言い放った。
「同意書をとるべきだった・・・するべきことをしなかった・・・だってそんな冷たいルールを守るより・・・患者の家族の気持ちを大切にしたかったから・・・」
その頃、橘は元・妻の三井(りょう)を非難していた。
「君のアドバイスに従わず・・・もっと強く言うべきだった」
「ごめんなさい・・・私のせいだわ・・・でも、緋山は良い医者なのに・・・」
「そうさ・・・良い医者だ・・・だからダメなんだ」
「患者に親身になりすぎるから・・・」
「そうだ・・・君と同じだ・・・患者、患者、いつでも患者だ・・・君は家庭にまで患者を持ち込んでくる・・・俺は窒息しそうだったよ・・・あの妊婦の時だってそうだ・・・俺はいつかあんなことになると思ってたよ・・・そして案の定・・・君はしでかした・・・」
「でも・・・昔はあなただってそうだったじゃない」
「そうさ・・・だから、俺は止め・・・強くなったんだ」
「・・・」
「もし・・・緋山が医師生命を絶たれたら・・・君は指導医としてどう責任をとるのだ・・・俺には皆目見当もつかないよ・・・」
途方に暮れた緋山の思いは迸った。「私の患者・・・昨日で打ち止めかも。患者の家族の気持ちが分かると思うなんて・・・どうかしてたよ・・・素人を信じるなんて・・・バカなことしたもんだ・・・」
白石は精一杯慰める。「そんなことない。あなたはそんなこと思わない。脳死判定に最後まで抗ったのはあなただもの・・・蘇生の希望を・・・復活の可能性を最後まで探していた・・・手の施しようがないことを確信した時、あなたは誰よりも辛さを感じたはず・・・私には分る・・・すべてを見てたから」
緋山は心に浮かんだことをつぶやき続ける。「最初に患者にありがとうって言われたのは・・・末期ガンの患者の点滴の針を変えた時だった・・・もう・・・長いこと点滴してるんで・・・静脈がなかなかとれなくてさ・・・でもがんばっていれたんだ・・・そしたら上手だ・・・痛くない・・・ありがとうって言われた・・・私はそのありがとうを大事に心にしまって・・・今日までがんばってきたつもりだったのに・・・人から憎しみのこもった目で睨まれて・・・ひ、人殺しって罵られた・・・わ、私は人を殺したの?・・・わ、悪いことをしたの?」
白石は緋山の背中に手を置いた。緋山は幼い子供のようにむずがってその手を払いのけた。しかし、白石はひるまず緋山を両手で抱きしめる。なぜなら緋山はもう一人の自分だからだ。白石も緋山にこうして抱きしめられていたのだ。
いつものエレベーター。
三井と西条(杉本哲太)のコント(スケッチとしての寸劇)・・・。
西条「翼くんの脳死は確定していたんだ・・・それは間違いない」
三井「でも私は・・・医師の育て方を間違ったみたいです・・・指導医として失格です」
西条「間違いか・・・間違いってなんだろうな・・・正しいことをしても結果が悪ければ他人は間違いだと言う」
三井「・・・」
降りかけた西条はドアを押さえて付け加える・・・。
西条「一つ、確かなことは君も・・・緋山も・・・自分を守ることを知らなさすぎる・・・国防なくして国家が成り立たないようにだ・・・無防備都市だ」
無人となったエレベーターに緋山と冴島が乗り合わせる。
冴島「私、証言しますから」
緋山「気にしないで・・・大丈夫だから」
そこへ藍沢もやってくる。
冴島「・・・すみませんでした・・・」
藍沢「患者は助かった。それが結果だ。サテンスキーがあろうとなかろうと患者は助かった・・・それだけだ。結果がすべてだ・・・今日のハイアーツイストだって結果が良ければ勇気ある決断だと讃えられ、結果が悪ければ人殺しと罵られる。裁判になって途中経過を説明してもそれでどうなったかが問われるだけだ。ひとつひとつの結果の積み重ね、流した汗と涙・・・そんなものは蒸発してしまえば誰の目にも止らない。それが医師という職業だ・・・それが気に入って・・・俺はこの仕事を選んだ・・・それなのに・・・どうしてなんだろう・・・虚しくてやりきれなくなることがある」
緋山の顔を一瞥すると藍沢はいつものポーカーフェイスでエレベーターから出るのだった。
いつもの準備室のコント。
藤川は冴島に声をかけた。
「大丈夫?」
「(サテンスキーを忘れたことについてはもう)大丈夫です」
「そんなわけないだろう」
すでに会話がすれちがう藤川だった。
「田沢さんのこと・・・あんなことがあって平気なわけがない・・・いくら、氷の女だって」
「こ、氷の女・・・」
「人間だもの・・・でも・・・いつかは前を向かないとね・・・(俺と一緒にね)」
「あの人はいつも前向きでした・・・あんな状態でも目標を立てて・・・小さな・・・小さな目標でしたけど・・・」
遠くを見つめる冴島。藤川はこの一時を前進と感じている。しかし、二人はいつまでも交わらぬ平行線の道を歩いているのかもしれない。いや、それどころか徐々に遠ざかる道を。しかし・・・不幸な男もその場その場を精一杯生きる他はないのである。
藤川から解放された冴島は路上でついに愛する男の声を聞くことができた。
「今夜は夜勤か・・・なんとかクリスマスにはたどり着けたよ・・・次は春・・・だな・・・春になったら・・・桜を一緒に・・・見に行こう」
もうこの世にはいない男の果たせなかった目標に冴島は涙をこらえきれない。春はもうそこまで来ているのに・・・と思うからだろう。田沢の瞳にはもはや桜は映らない。瞳そのものがもはや灰になっているのだ。
何しろ、田沢にはすべての結果が出てしまっているのである。
いつもの屋上からいつもの暗がりへ続くコント。
白石はガンの最新の治療法について父と電話で話していた。
父「・・・ふふふ、俺を誰だと思っているんだ・・・まだ駆け出しの医者には負けんよ・・・お前の生れる前からメスを握っているんだぞ・・・それより・・・お前、声が変だぞ・・・風邪でも引いたんじゃないか」
娘「生姜湯も飲むし、朝は十六茶を飲むから・・・」
暗がりへ藍沢がやってくる。藍沢はガンの最新治療についての資料を手渡した。
「覚えていてくれたんだ・・・」
「これ、シナリオ的には軽いツイストな・・・」
「嘘だったらよかったのに・・・疑いようのないステージ4なのよ・・・父はもうすぐ死のうとしている・・・それなのに私は最近ひどいことばかり言ってた・・・私は死んでいたって言うのが嘘だった藍沢先生がうらやましいくらい・・・」
「・・・」
「・・・ごめん」
「いいさ・・・いつも優等生すぎるからな・・・お前は」
お互いの秘密を共有する二人だった。もはやキッドの妄想の枠を越えている。
藍沢は・・・予備校で働く父親(リリー・フランキー)を訪ねた。
父親が生きていたことは結果として良かったのかどうか・・・確かめずにはいられなかったのだ。
父親の話は相変わらず要領を得ないとりとめなさを纏っている。
死んだことにしてくれと祖母に頼んだ父親。
優秀な研究者だった母。おちこぼれだった父。
研究の世界に没頭していた母は子作りには消極的だった。
しかし、母は藍沢を孕んだ。
祖母も喜んだと言う。
父も喜んだと言う。
しかし、母は心を病んだというのだ。
その原因は出産の時に子癇(妊娠中毒症の一種)で出血を起し、子宮摘出に至ったことであるとも言う。
子供を生みたがらなかった女が子宮を失って悲しいと感じるのは妙な話だ。
父は母が自分の子供を生むことで絆を得たかったのだと懺悔する。
つまり、父が欲しかったのは子供ではなく、自分の子供を生んだ母だったのだ。
しかし、母は藍沢のために研究か・・・子宮か・・・何か大切なものを失い精神を失調したのだという。
そして父親はそんな母親から逃げたのだった。
この男の愛とは一体なんだったのだろうか。
そして母親は死んだ。鬱のために自殺したのなら母には罪がない。病死だから。
ただ、藍沢が母親に愛されなかった事実は変わらない。
そして・・・母を捨て、母に産ませた子供も捨てた男。
藍沢が父親に愛されなかった事実も変わらない。
藍沢は礼を言った。「事実を話してくれてありがとうございました・・・あなたが生きていると聞いたとき・・・俺には特にそれをどうとも感じなかった。ただ驚いただけ・・・しかし・・・今日、あなたの話を聞いて・・・人が人をこれほどまで憎めるのだということを知りました。あなたは最低の人間だ・・・できればこの世から消えてほしいと思う・・・こんなことなら再会なんてしなければよかった・・・正直にそう思います」
藍沢が両親に愛されていなかったことを告げに来た男。その真意は実に伺い知れない。ある意味、人間離れしているのである。ただ、拳を握りしめる癖は藍沢と親子の証なのかもしれない。しかし・・・そんなものは偶然の結果かもしれないのである。
①実は嫁姑の仲が最悪だった
②実は偽装殺人をしている
③単に年老いて心細くなった
④借金があり、藍沢の収入が目当てである
⑤藍沢が愛する妻にそっくりなのでいたたまれなかったというよくある伝説
⑥実は藍沢は人工授精による父親(精子)も母親(卵子)も分からない子供だった
⑦父親も精神を病んでいる
⑧ちょっと暇だった
⑨冷たい言葉で詰られると感じる
⑩とてつもなく不器用な男
・・・もう、いいか。藍沢に幸せな結末が待っていることを祈るばかりである。
一体、藍沢の両親は何を研究していたのだろう。
そこにも驚くべき秘密が隠されている気がする。いや・・・せめてそうであって欲しい。
殺人レーザーの研究とか・・・それはないと思うぞ。
階段を一歩ずつ上がるために
言葉を覚える
違う景色を見るために上へ上へと進む
文献を調べ
腕を磨く
誰かを喜ばせたくて
自分を満足させたくて
歯をくいしばる
そして積み上げたものが
たった一度の間違いですべて失われてしまったら
人は傷つくほかに何ができるだろう
結果は良かれ悪しかれ結果に過ぎない
しかし、悪い結果は悪い結果を呼び
最悪の結果になりやすい
だから人々は皆、朝、目が覚めたら祈らずにはいられないのだ
どうか、今日は何も悪いことがありませんように・・・と
執行官通達がきた。
裁判所が証拠保全にやってくる。
緋山は訴えられたのだ。
しかし、緋山にはどんな罪があったと言うのだろう。
命を救うための手を縛られ、病院を彷徨う幽霊のようなその姿を仲間たちはなす術もなくスルーするのだった。
緋山が抜けたシフト編成がとんでもないことになっているからである。
関連するキッドのブログ『第6話のレビュー』
天使テンメイ様のドラマとお金にまつわるエトセトラ。
ごっこガーデン。愛と緊迫の現場セット。お気楽「あやまちは誰にでもあるよね。現場に遅刻したり、タレントのギャラ使い込んだり、商品を妊娠させたりマネージャーにはよくある話。ちょっとうらやましい・・・。ひねったらぷるんって戻るよね・・・。あの母親は泣いて和解してくれると思うけどなあ・・・本当に金目当てだったらやだなぁ・・・」くう「藍沢の父親は絶対に許せない・・・過程で何があったとしても・・・もはや何かそうなる正当な理由があったとしても・・・見当もつきません・・・努力が報われその苦難の道のりが明らかになるのも・・・勝者にのみ許される世界・・・ま、失敗でゴハン食べてる人もいますけど~それもある意味勝利だし~」まこ「鉄則です。死んだフリしたら最後までくたばってないと。ウソはばれなきゃウソじゃないのでしゅ~。すべてのウソがじいやにバレたらと思うと夜も眠れないので昼寝しますから~藤川にも春が来ますように~と祈りましゅ・・・」ikasama4「事務長&顧問弁護士はお気に入りです。カランコロン藍沢鬼太郎もちょっときています。しかし・・・何はともあれフコーフコーと鳴く小動物白石にはメロメロです・・・いやあ、参りました~」みのむし「遅刻しましたよ~~~カーリングロシア戦はもうとんでもない試合でしたのでありまするるる・・・そういうわけで~~」
ごっこガーデン。静寂と暗闇の備品室セット。mari「藤川と冴島はまだまだ春は遠いですね~シーズン6くらいまで待つかもね~。白石と藍沢はそれぞれ別々に緋山をフォロー・・・緋山二度泣きですね・・・藍沢と父の和解はどうなるのかしら・・・全く読めません・・・まあ、トンビがタカを生む線なのかも。それにしても白石は藍沢Pにこっそりこっそり接近していますよね~これってソファーじゃなくてベッドだし~・・・手続き上のミスで医療裁判・・・あの母親の兄って義憤なのか金銭目的なのか・・・判別の難しいタイプだわ~」
ごっこガーデン。愛と哀愁のスレちがいセット。エリ「はうぅん・・・ついに密着タイムの時がやってきたのでスー。ウーロン茶でもエリはぐでんぐでんになれる体質ですyon!・・・もうスリスリではうぅんなのでスー。ああ、正面、横顔、ためらい、毅然、すべてのアングル、すべての表情が崇高な藍沢P先生に乾杯でしゅよ~。それにしても母親の精神失調の原因がもうひとつ不鮮明でしゅね~。死人に口なしだからどうしようもないのでしゅね~。意外とばあちゃんが鬼姑でものすごい嫁いびりだったりして~。でも現在のあの優しいばあちゃんからは想像できないし・・・ミステリーでスー・・・緋山のことは・・・誰か助けてくださぁぁぁぁぁい・・・怯えさせたら日本一でしゅし・・・」
水曜日に見る予定のテレビ『曲げられない女』(日本テレビ)『相棒』(テレビ朝日)『赤かぶ検事京都篇』『新撰組ピースメーカー』(TBSテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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