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2010年2月28日 (日)

一筆啓上仕候。江戸に着仕り、築地屋敷に罷在候。大津波警報発令中(坂本龍馬)

2010年、2月、チリでM8.8の巨大地震が発生し、日本では今、大津波警報が発令中である。

海抜ゼロメートルのゴールとなる東京マラソンの先頭はもうゴールしているがこれから津波の第一波が到達するのである。雪、霙まじりの雨の中の苛酷なレース・・・最後が津波だったら凄惨だな。

もっとも東京湾内は津波注意報(黄色)の範囲かもしれない。日本全国はほぼ津波警報(赤色)につつまれているが、大津波警報(ピンク)は宮城県沖など東北地方である。

テレビでは「笑っていいとも増刊号」を見たい人も「冬季五輪・フィギュアスケート・エキシビジョン」を見たい人も「東京マラソン」を見たい人もみんな大津波警報のマップを見ることになっている。

こういう時、テレビは素晴らしいし、科学技術の発達も素晴らしい。

太平洋を渡る津波は度々、多くの犠牲者をもたらしてきた。前触れがあるのはないよりずっと素晴らしいのである。

安政元年(1854年)の土佐大地震を故郷で体験した龍馬は、安政二年(1855年)に巨大地震に見舞われた江戸に安政三年(1856年)夏の終わりに到着する。二度目の江戸修行は安政五年まで続く。

現代からおよそ150年前・・・激動の安政年間はこれからが本番である。

で、『龍馬伝・第9回』(NHK総合100228PM8~)脚本・福田靖、演出・大友啓史を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はファン待望の幕末勤皇攘夷のハゲタカ武市半平太描き下ろしイラスト大公開でございます。勤皇とは皇室に武士として忠義を尽くすこと。一方、尊皇攘夷とは古代中国周王朝が周辺異民族を打ち払った中華思想です。東の天子と西の天子の関係は、江戸と京にも通じるところがあります。天皇という八嶋の主、将軍という実力者、そして藩主という各国の主、八嶋連合国である日本の国の政治の中心は東西どちらにあるべきか、19世紀に勃興したヨーロッパ蛮夷戎狄の侵略がせまりつつある幕末の民はいよいよ右往左往して混乱を極めるのでございます。すでに征夷の本家・清帝国は断末魔の叫びを上げ始め、大八嶋にも東夷(ロシア)、西戎(イギリス)、南蛮(フランス)、北狄(ロシア)が魔の手を伸ばし始めている。恐ろしいことに21世紀になっても状況はまったく同じなのでございますな。安政年間まだまだ東洋の真珠の中心地、大江戸では陰謀の萌芽があり、恋の花咲くこともある。千葉さな子18才、番茶も出花でございます。

Ryoma185601 安政三年(1856年)八月、坂本龍馬は再び江戸に留学する。この時、二十歳である。すでに吉田東洋の忍びとして契りを交わしている。形の上では土佐藩の藩主豊信派に属したことになる。この年、薩摩の篤姫は御台所として江戸城に入る。この輿入れを采配する水戸の巨魁、徳川斉昭を中心とした雄藩連合に豊信が参入している都合上、龍馬は次期将軍一橋慶喜派なのである。前年に世を去った千葉周作が水戸徳川家の剣術指南である関係から、周作の弟・定吉の千葉桶町道場に通っているのは廻り合わせとも言えるし必然とも言える。これに対し、武市半平太は鏡新明智流の士学館に通っている。普代大名・旗本に縁深いこの道場には紀州贔屓がある。白札郷士として家柄好きの武市もまたなんとなくその色に染まるのである。江戸三大道場の残りの一つ、神道無念流の練兵館は桂小五郎を筆頭に愛国狂の長州藩士の溜まり場になっている。この道場は後に靖国神社となる。とにかく・・・龍馬と半平太は血縁・地縁で結ばれた縁戚でありながら知らず知らずのうちに袂を分かつように時勢に動かされているのである。

半平太は後に吉田東洋を暗殺するように豊信派ではなく、旧藩主少将豊資派に属している。郷士であって上士に準じる扱いの白札郷士である半平太にとって、他の郷士と白札郷士を差別しない吉田東洋の改革案は受け入れることのできないものであった。

半平太と龍馬をつなぐ人物の一人に龍馬より二つ年上の山本琢磨がいる。龍馬の父、八平は坂本家の婿養子である。実家は山本家で山本琢磨の父・代七は八平の兄である。つまり、龍馬と琢磨は従兄弟同士なのである。一方、琢磨の母の姉は島田源次郎に嫁いでおり、その娘が富子である。富子とは半平太の妻である。富子と琢磨は従姉弟なのであり、半平太と琢磨は義理の従兄弟ということになる。

このように半平太と龍馬は山本琢磨によって従兄弟同士ということになるのだった。

山本琢磨出奔事件で表面上、龍馬と半平太が苦心したことは言うまでもないだろう。龍馬は伯父さん(琢磨の父)を泣かせるわけにはいかず、半平太も妻の叔母さん(琢磨の母)を泣かせるわけにはいかなかったのである。

巨大地震から一年もたたぬ、江戸の町はすでに復興の賑わいを見せている。火事と喧嘩が江戸の華である以上、地震で壊滅したくらいでは亡びないのが江戸の心意気なのである。龍馬はその新しい材木の香りが漂う界隈を抜けて行く。

龍馬が足を向けたのは南伝馬町であった。訪ね当てた髪結い処「お染め」は番所裏の長屋である。龍馬が「頼もう」と声をかけると若い娘が応じる。店主のお染の娘、お光である。

「お武家様・・・お髭をあたるのかい・・・今、おっ母さんは出前に出てるけど・・・あたいでよけりゃ・・・」

「いや・・・親分に用があるのだが・・・」

「お父っつぁんにかい・・・」

その声を聞きつけたのか、二階から男が降りてきて、坂本に気がつくとぴくりと眉をひそめた。髪結いの亭主で南伝馬町の十手を預る岡っ引き半蔵・・・しかし、正体は公儀隠密頭の服部半蔵である。

「こりゃ・・・親分・・・先年は・・・」

「いや・・・坂本様、その話は店先じゃどうも・・・むさくるしいところですが二階へおあがりくだせえ。お光、お茶を頼む」

龍馬は頷いて二階にあがる。

「浜松ではまっこと・・・すまんことをしたきに・・・」

「し・・・坂本様・・・その話は困りますよ・・・あれはお互い・・・行きがかりってことで水に流しましょうや・・・あっしはここでは髪結いの亭主でお上の十手を預る気楽なご身分なんで・・・坂本様にはあれの前には無頼の捕り物を助けてもらいやしたし・・・もうあれから三年もたちますか・・・」

「今日は・・・心苦しいが・・・頼みがあってきちょる・・・」

「なんです・・・」

半蔵は気さくそうな笑顔から一瞬、鋭い忍びの目を覗かす。

「わしの親戚が盗人の疑いで訴えられての・・・」

「ははあ・・・例の金時計の件ですか・・・」

「話が早いき・・・その金時計じゃ」

「しかし、あの時計は大地震で倒壊した薩摩屋敷から火事場泥棒が盗んだ品でげしょう。なんでまた・・・土佐のお侍さんが・・・」

「山本琢磨というのはわしの従兄弟じゃが・・・滅法、酒癖が悪くてな・・・どうやら嵌められたらしいのじゃ」

「あの金時計は・・・ご禁制の密輸品の上に葵の御紋が彫刻されているといういわくつきのものという話で・・・大方・・・江戸の困った方の悪戯だと思いますがね・・・」

「困った方・・・」

「いや・・・こちらの話で・・・しかし、その件は薩摩藩が大慌てでもみ消して決着ついたと聞いてますがね・・・」

「それが・・・土佐藩ではちょっと話がこじれておっての・・・藩の対面上、従兄弟は切腹申し付けられている」

「ははあ・・・しかし・・・そりゃ、お国(土佐藩)の問題でしょう・・・しがない岡っ引きのあっしにどうかかわるんで・・・」

「いや・・・親分の裏の・・・」

「しっ・・・なんですよう・・・もう」

「わしとしては・・・従兄弟を逃がしてやりたいんじゃが・・・」

「なんと・・・それをあっしに手引きをしろと・・・」

「従兄弟は忍びとしてはかなり・・・腕もあるし・・・やっとうも桃井道場の手練れじゃ・・・そういうことで親分のところで面倒みてもらえんかのう・・・」

半蔵の目が点になった。

「土佐藩の脱藩浪人を・・・公儀隠密に・・・う・・・あっしの手下にですかい」

「どうかのう・・・」

龍馬は上目遣いで半蔵を見つめるのだった。半蔵は噴出した。

「まいったね・・・どうも・・・坂本様は・・・とんでもねえ・・・お方だ・・・」

「よく・・・言われるき・・・どがいしてかの・・・」

「・・・そうなると・・・下忍あつかいですぜ・・・」

「命があるだけ儲けものと言うきにの・・・わしは半分商人ぜよ」

「ちょうど・・・みちのくの草が・・・江戸に戻ってまいります・・・その帰り道につけましょう・・・南国土佐の方に・・・東北の冬は堪えるかもしれねえが・・・」

「おお・・・さすがは・・・忍びの頭領じゃ・・・恩に着るぜよ」

「しーっ・・・お声が高い・・・まったくこりゃ、前代未聞だぜ・・・」

こうして・・・山本琢磨は剃髪して修行僧となり、公儀隠密上野房五朗の下忍として奥の細道へ旅立つのであった。

用が済んで・・・髪結い床屋を出た龍馬をお光がぼうっと見送るのに半蔵は気がついた。

「よせ・・・お光・・・お前の手におえる相手じゃないぞ・・・」

「なんだい・・・お父っあん、悋気かい・・・」

「そんなんじゃねえ・・・あのお侍はとんでもねえ・・・筋のお侍なんだ・・・第一、向こう見ずにも程があるわな・・・」

その親子の頭上の長屋の屋根の上には忍び装束の男が寝そべっていた。白昼堂々と服部半蔵の家の屋根で気配を絶っているこの男は知る人ぞ知るあのお方である。裏の顔は江戸の町を騒がす義賊・鼠小僧・・・しかし・・・その正体は・・・。

「坂本龍馬か・・・面白い男じゃのう・・・」

そのつぶやきに半蔵がはっと顔をあげたとき、屋根の上の鼠小僧の姿はもうない。

とある夜・・・すでに龍馬と夫婦の契りを交わしている桶町千葉道場、佐那の寝室にこそこそと龍馬が帰ってきた。

のべられた布団の横で浴衣の佐那が正座をしたまま、きっと目を配る。

「龍馬様・・・どこにお出かけでしたか・・・」

「お・・・起きとったのか・・・」

「江戸に戻られていくばくもなく・・・もう佐那の体にお飽きになられ・・・焼け落ちた吉原通いでございますか・・・」

「ち、違うぜよ・・・ものすごい誤解じゃ・・・」

「何が違うのですっ」

「野暮用じゃ・・・親戚に不幸があったきに・・・野辺の送りにつきおうとったんじゃ」

「きーっ、そんな弁解を黙って聞く江戸の娘がどこにおるというのです・・・」

「まっことじゃき・・・嘘じゃと思うのなら・・・その目で確かめてみるがいいぜよ」

そう言いながら、龍馬は袴を手繰りあげたのだった。

「ま・・・」

佐那は目の前に出されたものを見つめて頬を染める。

「まっこと・・・白粉の匂いなどせんじゃろうが・・・」

「線香くさくもありませぬ・・・これは川の匂い・・・まさか・・・川縁の夜鷹などに手を出して・・・」

疑り深い佐那を問答無用で押し倒す龍馬だった。

「佐那様・・・龍馬はお佐那様をまっこと好いちょるきに・・・」

「り、龍馬様・・・」

龍馬はいつもの倍くらい濃い目の江戸の夜を過ごす。

その胸には川船に揺られ夜の闇に消えた幼馴染の従兄弟の最後の笑顔が去来していた。共に琢磨を見送った七つ年上の武市半平太の顔も浮かぶ。

(瑞山先生・・・泣いちょったの・・・)

坂本龍馬、二十歳の夜だった。

関連するキッドのブログ『第8話のレビュー

月曜日に見る予定のテレビ『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命2nd Season』(フジテレビ)『ハンチョウ』(TBSテレビ)

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2010年2月27日 (土)

残念ながらをアナウンサーが言い続けるオリンピックシーズンの残念な感じのヤマトナデシコ同窓会(亀梨和也)

ここまでバンクーバーでは日本は一勝(金メダル獲得)もしていないわけである。

しつこいようだが、もう憲法改正するしかないと思うのだな。

まあ・・・五輪でスポーツ選手が勝たなくたって別にいい国民なのだ・・・と言われればそれまでなのだが。

もちろん、一番でなくたっていいという考え方もある。

だが、競技直後の浅田真央の屈辱を感じた心。

あれが自然というものではないか。

その屈辱に耐えて復讐を誓う人間をキッドは素晴らしいと思うのである。

え・・・別に復讐する気はないだろう・・・それは見解の相違でございます。

で、『ヤマトナデシコ七変化・第7回』(TBSテレビ100226PM10~)原作・はやかわともこ、脚本・篠崎絵里子、演出・川嶋龍太郎を見た。やられたらやりかえす。これはゲームのオーソドックスな戦法の一つである。しっぺ返し戦法とも言う。たとえばナイフ一本とサイフを持ったゲームを考えてみよう。

サイフの中にはコインがたくさん入っている。プレイヤーはみんな同じ条件でゲーム・フィールドに入る。他のプレイヤーに接触したら、ナイフを使うか使わないかを選択できる。ナイフを使った場合、相手が使わないを選択するとコインを一枚もらえる。相手が使う場合は相打ちでコインをお互いに一枚没収されるのだ。ナイフを使わない場合、相手が使わないとごほうびとしてコインを二枚もらえるのだ。相手がナイフを使うとコインを一枚とられる。

つまり、自分だけがナイフをつかうとコインはプラス1枚。

両方が使うとコインはマイナス1枚。

両方が使わないとコインはプラス2枚。

相手だけが使うとコインはマイナス1枚。

・・・というゲームである。みんなが一度もナイフを使わなければそれぞれが最高得点をあげることができる。

しかし、自分以外の全員がナイフを使い、自分一人だけが使わないと最下位決定である。

世界で唯一、平和憲法を持っているというのはそういうことだ。

そのゲームのセオリーの一つが最初はナイフを使わない。しかし、相手に使われたら次はナイフを使うというものである。

この場合、最初はプラス2点か、マイナス1点。

次に、もしもプラスならば次もプラス2点か、マイナス1点。

もしもマイナスなら次はプラス1点かマイナス1点。

第三に、もしもプラスなら最初に戻る。

もしもマイナスならナイフを使い続ける。

少なくとも、ずっと使わないよりも変化に富んだ対応になるのだ。

何よりも最下位は免れるのである。

つまり、「自分からはいじめないがいじめられたらいじめかえす」ということである。

このセオリーの他には「ずっといじめる」もあるがそれではご褒美を得られないし、世界は殺伐とするのである。

人生ゲームでは「いじめられてもいじめかえすのはよくない」という寝言が囁かれるときがある。その囁き手がどの戦略をとっている人間なのかをじっくりと考える必要があるだろう。

ちなみにキッドは「いじめられたら三倍返し」が理想の戦法だと思う。

多くの人間はすでにある社会に生まれいずる。その社会の基本戦略が何かを探ることはとても大切なことなのだ。

このドラマはもう少し複雑なゲームで、「いじめ」と「みため」の交錯が語られる。そこがものすごくドラマを曖昧なものにしている。

スナコ(大政絢)は「みため」によって「いじめ」を受けたという前提がある。

ただし、「みため」についての定義は曖昧である。

スナコの初恋相手・村田(江上晶真)がスナコを「ブスだからキライ」と評価したことでスナコは「ひきこもり」になったとされている。

しかし、本来、スナコは「みためがみにくいものが好き」でもあるのではないか。

村田によって「ひきこもり」になったのかどうかは謎なのである。

つまり、ドラマの作り手は「みためがみにくいものが好き」であることをなんとなく否定しているのである。

この怪奇趣味の否定が根底にあることによってこのドラマはなんだかわからないものになってしまっている可能性があるのだ。

今回、スナコの過去が同窓会に参加することによって明らかになるわけだが・・・「みためがみにくいものが好き」であることがスナコの本来の「中身」なのか、いじめによって付加されたものなのかによって・・・話は180度違うのである。

ドラマ版のスナコは一体、どちらなのだろうか。少なくとも、その答えの一つが今回、明らかになったような気がする。

スナコの高校時代の同窓会の発起人はすず(近野成美)である。いわずとしれた2006年度版の「エコエコアザラク」の黒井ミサなのである。

そんなすずが「昔、いじめたことをあやまりたいからぜひ、同窓会に出席して欲しい」と口説いてくるのだから裏があります。

実は、すずはクラスのいじめにあっていたスナコをかばっていた親友だった。

下宿人たちはせっかくだから・・・ひきこもり克服のために出席するように奨める。

しかし、ドラマ版の恭平(亀梨和也)はもはや自覚はないがスナコにぞっこん惚れてますなのでいい顔ができない。

もしも・・・初恋の人が心変わりしてスナコと相思相愛になったらと思うと嫉妬で食欲増進なのである。

トヨタ問題で子供店長が忙しいのか、中原家にいないタケル(加藤清史郎)は育児放棄と言われるのがイヤで子供を同伴中の美音(高島礼子)と一緒である。

やはり最初から設定に無理があったんだな。

そのために雪之丞(手越祐也)や蘭丸(宮尾俊太郎)そして武長(内博貴)&乃依(神戸蘭子)の出番確保が楽になっているし、妙にこじつけっぽい恭平の説教ネタの仕込みもスムーズに出来ている。

今回は警備員のバイトをする恭平。迷子を発見。お母さんが迎えに来るというシチュエーションがあり、喫茶店「迷宮入り」のマスター(大杉漣)が「迷子になったら大切な人が迎えに来ると信じるのも一つの方法だ」と仄めかす展開である。

恭平は自分こそが、スナコの大切な人になるべきだと考え、スナコのためにお守りのドクロのブレスレットを買うのである。

しかし、スナコは愛する人体模型のひろしに奉げようとするのでガッカリするのであった。

とにかく、勇気を出して同窓会に出席するスナコ。

しかし・・・スナコをかばったために高校でイジメを受け、大学受験に失敗、就職したホテルをリストラされ、恋人に二股をかけられたすずは気分転換のためにスナコをいじめようと計画していたのだった。・・・どんな計画なんだ・・・。

しかし・・・同窓会に現れたスナコはクラスで一番の美少女になっていたのである。

計画通りに進まないことに腹を立てたすずはスナコのトラウマを踏みにじりまくる作戦に出る。

一方、村田と再会したスナコは呪い殺すかもしれないとおそれていた相手が何のインパクトももたらさないことに戸惑いを感じるのだった。

そのことですずの気晴らし計画はますます暗礁に乗り上げるのだった。

仕方なく、必殺技の「ブスナコ」囁きをするすず。

たちまち、雷鳴が鳴り響き、超落雷で同窓生一同は絶叫する。

もはやヤケになったすずはスナコに赤ワインをそそぐのであった。

「お清めしないと呪われますから~・・・エコエコケルノノス」

スナコは思う。

(もしも・・・このワインが豚の血ならば・・・映画「キャリー」・・・なんて甘美な・・・)

スナコがエクスタシーを感じる寸前、恭平たちが乱入するのだった。

恭平はスナコが快感に浸っているのを悟り、嫉妬の青い炎を燃やすのである。

「くそ・・・スナコの初恋の相手ってどいつだよ」

突然、出現した美しい男たちの集団に気後れする村田はおずおずと手をあげる。

「くそ・・・スナコにあやまれよ」

一体、何を怒られているのか不明だが、恭平がこわいのでとにかく謝罪する村田だった。

「くそ・・・スナコもなんとかいってやれ」

そこで・・・スナコは高校時代からあやまろうと思っていたことを口に出すのである。

「あの・・・お弁当にカエルの唐揚げを入れたりして・・・みんなを不気味な気持ちにさせて・・・すみませんでした・・・」

ドドド・・・と雪崩れる一同だった。

周囲の和んだ雰囲気についに切れるすず。

「何よ・・・みんなして中途半端な感じにして・・・このままじゃ盛り上がらないんでないかい・・・よ~し、この場で自殺してやる~・・・みんな・・・一生忘れられない同窓会になるのよ」

すずがナイフを取り出すとその冷たく禍々しい輝きに魅かれ反射的にナイフに飛びつくスナコだった・・・。

そして・・・もみあう二人・・・あわてて恭平が割ってはいると・・・スナコの頬に傷が・・・。

滴り落ちる赤い鮮血。

(ま・・・血・・・素敵・・・)

うっとりするスナコだった。

全員が雪崩れる中、主人公として恭平はまとめの言葉をすずに語るのだった。

「あんたもいろいろたいへんらしいけど・・・人生に迷ったら・・・下手に動かず・・・迎えを待つのも一つの手だぜ・・・誰も迎えにこなかったら・・・残念だけどね」

恭平の言葉があまりにも説得力がないことに脱力するすずだった。

こうして・・・スナコの呪われた同窓会はつつがなく終了したのである。

「さて・・・どうする・・・二次会」

「せっかくだからゲテモノの店行こうか」

「ええー・・・カエルとか~」

「何言ってんの・・・カエルとか普通っしょ~」

「じゃ・・・ヘビとか」

「ハチの子とか・・・」

「サルの脳みそとか~」

「ええ~・・・マジ~」

盛り上がる道産子集団だった。

関連するキッドのブログ『第6話のレビュー

明日はマラソンランナー天使テンメイ様のレビュー。

Hcinhawaii0623 ごっこガーデン。トリプルスナコで飛び入りバンクーバーセット。エリむふふ・・・不甲斐ない日本チームを激励するためにバンクーバーまできたら迷子になってしまいました~。じいやじゃなくて恭平に見つけてもらうまでは帰れないのでスー。ついでにスケートと書道を組み合わせたパフォーマンスを披露したら場内熱狂の嵐になったのでしゅ~。さあ、後は亀梨先輩に手首をつかまれて会場脱出を堪能しますよ~まこサルベスタン鉱区で石油掘削してたらバンクーバーに出てきました~。すずちゃん(近野)とまちこちゃん(本仮屋ユイカ)って似てるのじゃ~あーりませんかぁ・・・。真央ちゃん、銀メダルおめでとう・・・お呪いしましゅ~お気楽スナコは女子高校生でも全然OKだよね・・・いじめた方が覚えていないのはよくある話だよね。実はいじめられた方も忘れてたりして・・・人間っていやなことは忘れるタイプもいるからなぁ・・・まさかスナコは妊娠したりしにいよね・・・生れるのはオーメンだったりするのかな・・・さて、おみやげは何買おう・・・名物アイスワインとかかなmariさすがです。さすがのパフォーマンス。残念ながら金メダルはありませんでしたが・・・それなりに盛り上がった冬季五輪・・・スナコと恭平は髪切り仲間ですね~・・・。来週は恭平の母(麻生祐未)登場の模様・・・蘭丸のお見合い相手の珠緒お嬢様(浅見れいな)も出る模様です・・・ちょっと豪華ですねーっ

日曜日に見る予定のテレビ『龍馬伝』(NHK総合)『深・ケロロ軍曹』(テレビ東京)『堀北真希の特上カバチ!! 』(TBSテレビ)

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2010年2月26日 (金)

ラムールとラモールの不毛地帯(唐沢寿明)敵と味方の義父と父(多部未華子)

昭和43年(1968年)から昭和48年(1973年)まで土曜の夜と言えばドラマ「キイハンター」(TBSテレビ)である。

諜報部員あがりの女スパイ津川啓子(野際陽子)が「うふんラムール(愛)・・・ああんラモール(死)・・・」と歌い出せば国際都市東京では陰謀渦巻いて血沸き肉踊る暗躍が繰り広げられたのだ。

人々はそれを荒唐無稽の絵空事と妄想したが実際の世界はもっと荒唐無稽だったのである。

国際情勢は米ソ冷戦の最中、暗黒帝国中国が台頭し、アジアで、中東で、ヨーロッパで、そして南米で、CIAとKGBそして中国公安省外務局は謀略の限りを尽くして諜報戦争を行っていたのである。

世界の街角では人々が誘拐され拘束され拷問され殺害されていた・・・もちろん・・・日本も例外ではなかったわけだが・・・政治の季節から暮らしの豊かさを優先した日本人はのほほんと平和ボケのスタート・ラインについたのだった。

そういう情勢に世を向けて国際社会に挑戦すれば新たなる不毛地帯が用意されていることは言うまでもない。

ペルシャの昔話・・・。

旅人は言った。「この土地で暮らすには何をすればいいだろう」

土地の主人は言った。「何もすることはない。なにしろ、あなたはこの土地では暮らせないのだから」

すでに世界から未開の土地は失われてしまっていたのだった。

で、『不毛地帯・第17回』(フジテレビ100225PM10~)原作・山崎豊子、脚本・橋部敦子、演出・水田成英を見た。70年安保闘争の結果、日本の国民は親米路線を選択し、ソ連に扇動された左翼運動は急速に冷却する。燃え尽きる寸前の蝋燭のように赤軍派は首相官邸襲撃未遂、ハイジャクと過激な行動を重ね、やがて山岳基地リンチ殺人事件、あさま山荘事件を経て自滅の道を辿る。時を同じくして中国では共産党独裁の体制下、紅衛兵による自国民の大量虐殺が引き起こされていたが、情報に疎い日本の左翼運動家たちはなおも文化大革命を礼讃していたのである。革命を夢見る若者たちが監獄半島である北朝鮮に脱出していったことは一種の喜劇といっていいだろう。

そういう国内の事件を尻目に高度成長に踊るエコノミック・アニマルたちは石油資源の確保を大義名分に火種のくすぶる中東にその手を伸ばしていく。

石油の利権獲得を目指した日本の石油公団は膨大な投資を重ねたあげくに21世紀に解散することになるのだがもちろん、結局膨大な赤字を残したことは言うまでもない。

だが・・・渦中の人々の情熱を嘲笑することは差し控えるべきだろう。今だって未来から見れば噴飯もののことに多くの人々が熱中していることは間違いないのである。

壹岐(唐沢寿明)はイラン要人と会うために兵頭(竹野内豊)とともにモスクワへ飛んだ。

イラン国王の側近であるドクターは壹岐の過去を調べ、心理的な抑圧をかけるために会談の地を壹岐にとっての屈辱の地であるソ連を密会の場に選んだのである。

さらに言えば、米ソ冷戦において、アメリカの傀儡政権であるパーレピ王朝が自由に暗躍できるのは敵地・ソ連であったとも言えるのだった。

つまり、イラン国内ではCIAの監視が強すぎて、日米合同の民間企業との裏取引が困難だったのである。

モスクワのホテルに宿泊した壹岐は入室するとさっそく盗聴器の有無を点検する。しかし、KGBは緩やかな監視はするものの行動の自由を認めるのだった。それはドクターがソ連高官ともある程度のパイプを持っていることを暗示していた。

イランでは国家情報安全機関(SAVAK)が秘密警察として機能しており、その犠牲者は数万人にのぼる。国王側近のドクターといえども国内ではうかつに動けないのである。

ドクターはイラン・サルベスタン鉱区の入札情報の見返りとして米国の最新鋭戦闘機のイランへの導入を米政府に働きかけることを求める。

壹岐は近畿商事ニューヨーク支社長時代に築いたコネクションによってニクソン米大統領に働きかけることを約束する。

やがて、イランはグラマンF-14トムキャット戦闘機を他の同盟国に先駆けて導入することに成功するのである。

壹岐への痛打を浴びせ続けた東京商事の鮫島(遠藤憲一)は勝利を確信する日本石油公社総裁の貝塚(段田安則)とは違い、不安を感じるのだった。

テヘランの兵頭の不在を察知した鮫島は兵頭の宿泊するホテルに侵入し、兵頭の行き先を探ったあげく・・・壹岐のソ連行きを疑う。

義理の父親の立場を利用して直子(多部未華子)に探りを入れた鮫島は壹岐がモスクワでイラン要人と密会している事実を突き止めるのだった。

そのために鮫島は日本石油公社の入札額の上限をあげ、万全の体制をとる。

壹岐は出発の際に空港でシルクロード観光に出かける千里(小雪)と偶然に会ったことから幸運の廻り合わせを感じる。

そして・・・ついに壹岐は極秘の入札額を入手するのである。

兵頭は共同出資者となった米国オリオンオイル社と最終入札価格を決定する。

そして・・・運命の日。

1位近畿商事・オリオンオイル。2位ドイツ企業。3位日本石油公社。

壹岐の勝利に鮫島は一滴の涙を流す。それはあたかもバンクーバー・オリンピックの浅田真央のフリー演技終了後の口惜しさに通じるようであった。

しかし、表彰式が終れば、新たな戦いは始まるのだった。

近畿商事を国賊あつかいしていた国内の新聞報道は一転して入札成功を快挙と褒め称える。

勝てば官軍の近畿商事は与党の田淵幹事長(江守徹)を通じ日本石油公社に新たな共闘を申し入れるのだった。

帰国して、直子に無事な姿を見せた壹岐の前に鮫島が顔を出す。

「壹岐さん、おめでとうございます・・・今後は東京商事も一枚かませてもらいますよ・・・なにしろ・・・同じ孫を持つ仲じゃないですか・・・」

壹岐は憮然とするのだった。

ついに壹岐はサルベスタン鉱区における油田開発の権利を得た。

しかし、国際石油資本(メジャー)と資源ナショナリズム(原産国国有化)の衝突、そしてイランにおける民主化失敗と宗教革命の波はすぐそこまで迫っていたのである。

昭和48年(1973年)第四次中東戦争勃発。アラブ諸国の石油戦略によりオイル・ショック到来。

昭和54年(1979年)イラン革命。中東は21世紀まで続く政情不安の泥沼へ突入していくのだった。

関連するキッドのブログ『第16話のレビュー

土曜日に見る予定のテレビ『咲くやこの花』(NHK総合)

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2010年2月25日 (木)

水槽の中の魚の曲げられない距離と飼い主の不在(菅野美穂)

教育の世界には「知識」と「実技」の有効性という問題がある。

その中でもっとも問題があるのは道徳の問題であろう。

たとえば、「自分の幸せだけを追求し、他者を不幸にすることの意義」という項目はなかなかに教えがたいものである。

「勝者と敗者があることを子供に教えないために順位をつけない教育の弊害」というものも例としてはわかりやすいだろう。

それは「争わない社会」を目指すものだが、実際の競争社会を「間違った社会」と教え込まれた子供が金メダリストに対して「勝つなんてひどい」と主張するのはまだまだかなり滑稽だと思える。

この主人公は狂った教育者の母に育てられ、自分が狂っていることに気がつかない憐れな人間なのである。

もちろん、この場合の狂気は相対的なものであり、狂っているのは社会の方かもしれないのである。

先輩の金魚は言うだろう。「大人しく泳いでいれば美味しい時間がやってくる」

後輩の金魚は「うん」と素直に頷く。

金魚たちの選択肢は少ないのである。たとえ、一人暮らしの飼い主が心臓発作で倒れ冷たくなりつつあるとしても。

水曜日のダンスは・・・。

「相棒」15.7%↗17.2%↘17.1%↗17.5%↗17.8%↘15.8%↗17.2%

「検事」*9.4%↘*5.6%↗*6.0%↗*6.4%↘*6.0%↘*5.1%↗*6.7%

「曲女」15.4%↘11.0%↗13.7%↘13.3%↘13.1%↗14.5%↘13.6%

ダンスがなかったからな。

で、『曲げられない女・第7回』(日本テレビ100224PM10~)脚本・遊川和彦、演出・木内健人を見た。早紀(菅野)の担当医は女医(片岡礼子)である。妊娠を告げた後、父親の心当りを訪ねられた早紀は九年付き合った元・彼がはじめてのおとまりをしたのでなんだかんだと告白するのだが、「で、どうします」と聞くのである。

「それについてはいろいろ検討して・・・」と問題の先延ばしにかかる早紀に女医は「結局、イエスかノーか・・・なんだけどね」と淡々としているのだった。

居候の璃子(永作博美)も離婚協議中の夫の子供を妊娠していることが発覚する。

早紀に恋をしてしまったためになんとなく警察官僚を辞めた藍田(谷原章介)は複雑な気持ちになるのだった。

出産予定日と司法試験日が重なることで早紀は二者択一を迫られる。

一方、一人で生きていく困難さに早くも音をあげた璃子は妊娠を理由に長部家の飼われた主婦に返り咲く可能性を探り始める。

璃子にとって女が子供を産むことは大義名分なのである。

しかし、教育者の母と死ぬ寸前まで無能だった父親に育てられた早紀は「子供のために最善の道を選択するべき」と璃子にアドバイスしたことも忘れて、璃子の自立心のなさを責めるのであった。

一方、坂本弁護士(塚本高史)をたきつけたり、藍田をそそのかしたりして、早紀の恋愛模様を楽しんできた璃子は「父親である坂本」を無視して「人生の目的のために堕胎を決意する早紀」は絶対に認められないのだった。

子供を出産すれば無罪放免であるという自分の主義に一致しないからである。

一方、すでに坂本から横谷秘書(能世あんな)との交際宣告を下されている早紀としては「他人に迷惑をかけてはいけない」という神である母の命令に逆らえないのである。

仕方なく、早紀は「妊娠した自分のとるべき道を考察する膨大なレポート」を作成するのだった。

それを読んだ藍田はレポートのかなりの部分が胎児の父親に関することに費やされていることで暗い嫉妬に悩ませられるのだった。

そして、早紀は友達として藍田に「中絶同意書」に父親としてサインをすることを求めるのである。

生む場合の父親を空想していた藍田は堕胎する場合の父親として指名されたことを暗黒面に滑降しながら受諾する。

天使と信じた女が自分のためにわが子を殺す女になったことをもてあましたのだった。

そこへ璃子が坂本弁護士を連れて現れる。

三度、プロポーズをする坂本だったが、どうしても司法試験をあきらめられない早紀だけは受け入れることができない。

可能性を統計的に探る坂本の理知的なバランス感覚から早紀が逸脱しているからである。

そして早紀もまた全面的に自分を受け入れない坂本を拒絶するのである。

なぜなら、早紀を支配していいのは唯一、死んだ母だけだからである。

激突した四人は全員が嫌な気分になるのだった。

今回、中島(平泉成)法律事務所を訪れた相談者は社内不倫の果てに出産して父親に認知を拒否された元OL(平田裕香)である。

ついに嬰児を捨てようと思いつめた女に対し、早紀は「他人のためなら言いたいことが言える特技」を発揮するのだった。

そして女の嬰児の父親の会社に乗り込み、「自分の幸せだけでなく、相手の幸せを考えるのが人間として正しい」と母親譲りの説教を始め、通報されて警察に逮捕されてしまうのだった。

身元引受人の中島は「大人気ないけど・・・元気があって好きだな・・・」といつもの無責任な感想を述べるのだった。

混乱の果てに到達した早紀の二人のともだちの意見は・・・。

璃子「司法試験をあきらめて出産に専念するべき」

藍田「出産をあきらめて司法試験に専念するべき」

しかし、早紀は「司法試験も出産もあきらめない」と宣言する。

璃子「出産をなめている」

藍田「別の男の子供を生む・・・君を見ているのは辛い・・・好きだから」

と脱ともだち宣言をする。

「私の正しさを受け入れてくれない友達なんて必要ありません」

早紀は結局、ともだちより自分の信念を優先する他ないのである。

なぜなら・・・早紀を支配しているのは自分自身ではなく両親の亡霊だからだ。

どこにもいかないさ

いつだって私はお前のそばにいる

お前を見守っている

お前を癒してあげる

お前を手放すことはけしてない

お前が他の誰かを愛しても

結局、お前のためになるのは私だけ

他の誰かは最後は

お前を傷つける

私だけを信じなさい

お前のすべてをわかってやれる

お前の夢を信じてあげる

どんな時でも

どんな場所でも

私はお前とともにある

どこにもいかないよ

そして・・・

お前をけして逃がさない

愛と呪いの区別がつく人間は多くない。道が二つに分かれて、どちらにも困難が待ち受けると感じた人間が第三の道を探すとき、さらに大きな困難が待ち受けていることは言うまでもないのである。

関連するキッドのブログ『第6話のレビュー

金曜日に見る予定のテレビ『ヤマトナデシコ七変化』(TBSテレビ)

ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。

皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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2010年2月24日 (水)

魔女の妊娠した日(有坂来瞳)いきあたりばったりの男(深田恭子)

今季のドラマはおめでたの連続である。「曲げられない女」は主人公が元彼の子供を妊娠。「まっすぐな男」はヒロインが行きずりの男の子供を妊娠。そして、「泣かないと決めた日」では敵役が主人公の恋人の子供を強制妊娠(偽装?)である。

ま、まともなお母さんはいないのですかぁぁぁぁぁぁっ。

火曜日のドラマ対決は①「泣かないと決めた日」↗12.7% ②「まっすぐな男」→*8.8%

ま・・・悪が滅び正義が勝つことをお茶の間では望んでいて・・・それは健全なことだとも言えます。

それでこそ・・・悪魔が青い炎を燃やし、悪の栄えが訪れるわけですし。

で、『泣かないと決めた日・第五話』(フジテレビ100223PM9~)脚本・渡辺千穂、演出・城宝秀則(他)を見た。ダブル演出であるのは・・・初回の自殺未遂シーンにつながる場面があるためかな。初回では明らかに飛翔していたが・・・実際は新入社員から目を離さない上司の鑑、桐野統括マネージャー(藤木直人)が寸前で抱きとめていたのだった。おかしいじゃないかと目くじらをたててはいけません。あくまでドラマです。

しかし、妹を不具者にしてしまった角田美樹(榮倉奈々)の負い目は・・・桐野が感じるほどには重くなかったようである。

親友だと思っていた万里香(杏)が恋人の仲原(要潤)と裸になっていたことが自殺未遂の直接の原因なのである。

足が不自由な妹のことを考えたら五体満足の姉はそのぐらいの苦痛には軽々と耐えるべきではないのか・・・まあ、乙女だからできないのか。

とにかく・・・妹の手術費用を稼ぐとか・・・そういう健気な姿勢は霧散して、いじめの厳しい職場と心の支えだった恋人と親友の裏切りに・・・衝動が起きてしまったから仕方ないのだと優しく見守るしかないのである。

傷心の美樹は頑なに心を閉じて、救世主・桐野の言葉も胸に届かない。

その窮地を救うのは・・・かなり唐突だが・・・派遣切りをされて退職に追い込まれる白石杏子(有坂)なのである。

一応、美樹の前任者の遺言ノートのフリがあるので・・・かっていじめがあってそれを助けられなかった立場の弱い派遣社員の苦渋というものがあり、話としてはギリギリ成立するのであるが・・・なんといっても・・・。

「派遣は面倒なのよ・・・三年以上同じ職場だと正社員として雇用しなければならない流れもあるし・・・結局、若い子の方が何かと便利でしょ」

このセリフが有坂来瞳にしっくりくることが大きいな。

有坂もいつの間にか・・・三十路かよっと驚愕する今日この頃である。

ちょっとやつれた感じのメイクといい・・・なんか・・・果ては場末のキャバクラに勤めることになりそうな哀愁漂う派遣のOLを好演である。ポスト吉野公佳かっ。

一方、使用不可のUSBメモリが普通に嫌味な上司・梅沢部長(段田安則)によって発見され、その中にイタリア食品部門の資料があったために犯人探しを命じられるチーム・リーダー佐野(木村佳乃)はまたしても指導者としての責任を問われ、アルコール注入で凌ぐのだった。

そんな佐野に桐野はかわいそうな美樹支援のために間接的な助け船を出す。

「君は部下のことをちゃんと見ているのか・・・本当の自分を正しく評価してもらえない辛さを君は誰よりも分っているはずだが・・・」

梅沢のアドバイスが響かない佐野も桐野のアドバイスに感じるのである。

まあ、まさに作り手が意図する女性向けのドラマなのかもね。

やがて、体調不良のために寝込んだ美樹を見舞いにやってきた杏子は突然、天使として輝きだすのである。

「かって・・・いじめられてやめていった子がいた・・・私はその子を助けることができなかった・・・自分のことで精一杯だったから・・・でも・・・あなたにはこのままやめていって欲しくない・・・そう告げることが私のせめてもの罪ほろぼし・・・」

しかし、仲原の弁明の電話も拒絶し、妹の身の上も顧みず、ただすべてから逃げ出したい一心で美樹は辞表を認める。

夜のオフィスにこっそりと辞表を置いて去ろうとする美樹に忍び寄る桐野・・・。おそらく、美樹はGPSで居場所を特定されているのだろう。

「このまま・・・逃げ出すのか・・・何もなかったことにするのか」

「私にはもう・・・心の支えがないんです」

「本当にそうか・・・」

夜の街を家路につく美樹。

その姿は木から堕ちた妹を置き去りにしようとした幼い日の美樹の姿に重なる。

助けを求める妹の声。ドサリと言う凶悪な物音。

美樹はふと立ち止まる。

天使の声は囁く。

「本当にそうか」

翌朝、出社した美樹に万里香は絶縁宣言をたたきつける。

「あやまらないわよ・・・恋愛に情けもルールも無用だからね」

美樹は無視した。そして職場では勇気を振り絞る。

「私は未熟で・・・皆さんにご迷惑をおかけしましたが・・・だからといってやっていないことの責任はとれません。私は何もしていない・・・そのことだけはわかって欲しいのです」

そこで杏子は立ち上がる。

「USBメモリには彼女の入社前に消去されたデータが残っていました・・・つまりこのメモリは彼女のものではありえないのです」

杏子の発言に蒼ざめる暴力亭主のために残業できずに自宅に仕事を持ち帰る栗田(紺野まひる)だった。

杏子が職場を去る日が来た。杏子に意趣返しをするために栗田は送別会をキャンセルした。

淋しく職場を去る杏子の前に花を持った美樹が現れる。

「私・・・ここには誰も味方がいないと思っていた・・・でも・・・それは間違いだった。信じられる人がいないのではなく・・・信じなくなっていただけだったんです。それに気付かせてくれてありがとうございました」

「いいのよ・・・私もあなたのおかげで気持ちの整理がついたの」

そこへ・・・佐野がやってきた。

「白石さん・・・守ってあげられなくてごめんなさい・・・あなたがこのチームにいてくれたことを感謝するわ・・・角田さん・・・あなたはどうするの」

佐野は美樹の辞表を差し出した。

美樹はそれを破り捨てた。

すべてを観察する桐野は微笑む。

妹の愛(川口春奈)の手術の日がやってきた。

「仲原さんはお姉ちゃんを大切だって言ってた・・・傷つけたって・・・お姉ちゃんは仲原さんの話を聞いてあげるべき」

健気な妹である。

美樹は仲原に連絡した。仲原の胸に喜びが湧き上がる。

すべてを虚空で眺める魔女・万里香は牙を剥き出す。

「私・・・妊娠してるんです」

美樹は待ちぼうけをくらった。

もはや・・・いじめドラマじゃなくて単なる恋愛バトルです。

関連するキッドのブログ『先週の火曜日のレビュー

で、『まっすぐな男・第7話』(フジテレビ100223PM10~)脚本・尾崎将也、演出・大塚徹を見た。腰がすわらない男・松嶋(佐藤隆太)は今日も仕事をするではなくなんとなくほっておけない女・鳴海(深田恭子)の世話に夢中なのである。

もちろん・・・不幸なおいたちにより、適度に自由奔放で、適度に哀愁漂う鳴海が目の前にいたら男はみんなほっておけないと思うのである。

しかしだ・・・そのために・・・一途に尽くしてくれる女・佳乃(貫地谷しほり)に対する心無い仕打ちの数々・・・ひどい男である。

これは妻子を飢えさせてもユニセフに寄付してしまうようなどこか調子の狂った男を感じさせます。・・・たとえとしてどうかな。

で・・・結局のところ・・・鳴海に惚れているのである。

で・・・そのことを認めることがこわい・・・小心な男なのである。

つまり・・・恥ずかしい男なのだ。

そういう男って・・・実はどこにでもいる男なわけだが、八番アイアンで制裁できれば妻は夫の浮気に目を瞑るべきという主張では・・・女性の共感は得られないと思う。

愛する佳乃のために松嶋と鳴海の仲を裂こうとする熊沢(田中圭)だったが、鳴海の妊娠が発覚すると、松嶋は鳴海と子供の父親探しの旅に出てしまうのだった。くどいようだが仕事はいいのか。

佳乃は「浮気じゃなくて本気じゃないか」と女の勘で見抜くのだがズバリです。

突然、現れた矢部(渡部篤郎)と父親のポシションを争う男・片岡(金子昇)。

行きずりの女の子供を認知し、結婚もするという態度である。

その理由が「会社を相続する条件が子供がいることだから」というかなり無理矢理な設定である。こういうことすると本当に客は逃げるよな・・・。

そして・・・天涯孤独な鳴海はそれを承知で片岡と結婚するという。

それは本当の家族であるお腹の子を愛おしく思うからだった。

松嶋はもう・・・そうやって鳴海と縁が切れると思うとたまらない気持ちになるのだった。

だってもう惚れてしまっているのだから。

「心配してくれてありがとう・・・心配してくれる人がいるっていいよね」なんて深田恭子に言われて惚れない男はいないからである。

しかし・・・ドラマとしてはどうでしょう。

不自然な関係は劇的だが、面白さとしてはどこか空虚になりがちだ。本当に面白いことは自然なものだからです。

とにかく松嶋はムキーッとなって鳴海の腕をとりどこかへ向かって歩き出す男なのである。

木曜日に見る予定のテレビ『グインサーガ』(NHK総合)『853』『エンゼルバンク』『ラストメール2』(テレビ朝日)『不毛地帯』(フジテレビ)

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2010年2月23日 (火)

最低な男の息子と最良な男の娘のコード・ブルー(山下智久)最も危険な私(戸田恵梨香)

ついに主要登場人物がいきつけの店で一同に会するシーンがやってきた。

カウンター席では白石(新垣結衣)が緋山(戸田)、藤川(浅利陽介)を相手にくだをまき、ボックス席では藍沢が飲んだくれる。スナック「すれちがい」はフェロー・ドクター(専門研修医)全員集合である。

しかし・・・ほとんど年中無休で働いている彼らが・・・ヘリの飛ばない夜とはいえ・・・オカマ・バーに一同で集うことがシフト的に可能なのだろうか。キッドはそこが一番気になった。・・・どこを気にしている。

この夜、それぞれは問題を抱えている。

藍沢は死んだと聞かされていた父親から母親の遺書のようなものを渡され、動揺する気持ちを静めようとグラスをカラカラ言わせて杯を重ねる。

白石は父親が死に至る病に冒されていることを知り、悔恨と絶望でキャラが変貌するほど酒に溺れる。

藤川は誘っておいたフライトナース・冴島(比嘉愛未)が到着しないので催促の電話をかけようとする出前待ちの気分である。

その中で緋山は実は最大のピンチに見舞われる直前なのだが、嵐の前の静けさ、津波の前のビーチの如く、四人の中では平静を保っている。

アルコールの匂い、香辛料の味、どこかで聞いたようなメロディー、仲間たちの表情、触れ合うぬくもり・・・すべての感覚には発信源がある。あらゆる感じはすべて結果なのである。時は早くも遅くもならず流れ去り、人々は原因によって生じる結果の連続を受け止め続ける。最後の結果が訪れるまでは。

藤川はついに辛抱できなくなり、冴島の携帯に電話をしてみるが留守番メッセージが応答する。

「もしもし、ラーメンまだ?」と電話して「本日の営業は終了しました」とメッセージを返されたら空腹のやりどころに困るわけだが、愛に餓えた男は絶望的な結果にも少し苛立ちを感じる程度なのである。

どんなに望み薄なチャレンジでも結果が出るまでは絶望しないというのは一つの賢さと言えるだろう。

最後の結果が出るときには絶望もできないのであるから。

本題に入る前に恒例の週末の視聴率チェック。「宿命」→5.3%(すごいところで→キター)、「ヤマトナデシコ七変化」↘*7.0%(私、髪をきりました~って言われてもな)、「ナウシカ」17.5%(巨神兵とったな)、「サラ金2」↗*9.8%(井上和香とったな)、「ブラマン」↗*8.4%(黒川智花とったな)、「左目探偵」↗*8.5%(石原さとみとったな)、「君たちに明日はない」↘*6.2%(玩具とれなかったな)、「がばいばあ2」13.9%(石田ゆり子とったな)、「樅の木は残った」10.6%(井上真央も残った)、「龍馬伝」↗22.3%(吉田東洋とったな)、「特上カバチ」↘*7.2%(石原良純でとれるかっ)、「はぐれ刑事最終回スペシャル(再)」15.8%(あたりまえだのさようなら)・・・ついでに「ハンチョウ」↗11.6%、「コード・ブルー2」↗15.9%・・・以上。

で、『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命 2nd Season・第7回』(フジテレビ100222PM9~)脚本・林宏司、演出・西浦正記を見た。果実は常に甘いとは限らない。苦い果実もあるのが現実というものだ。現実の結果とはつまり甘柿なのか渋柿なのかということに尽きる。

しかし、甘柿もいつかは腐り果てるし、渋柿も食べられないわけではない。腐り果てたとしても果実酒になるかもしれず、食べてお腹をこわすこともある。このように結果とは連鎖なのである。人はその途中で勝ち誇ったり、嘆き悲しんだりするが死後の世界を信じない限り、その最終結果は誰もが「死」なのである。そういう意味で人間というものはすごく平等に出来ていると思う。

結果だけが全てじゃないし、そこに至る過程が大切だという真理がある。

しかし、東大に不合格では東大には入学できないし、国家試験に合格しなければ医師にもなれない。

そういう意味では結果だけがすべてだし、そこに至る過程は大切ではないという真理もある。

真理なんてそんないい加減なものだ

当然の結果には納得するのが筋だが、何が当然なのかという尺度には個人差がつきまとう。

前半、99対0で折り返して後半、99対100で負けたサッカー・チームとか

オリンピックで7位6位5位4位で12年間を過ごした女子モーグル選手とか

手を抜いたわけでもないのに思わしくない結果が出たりしたら泣いちゃう。

100%愛しているのに相手が全くその気がないとしたら

結局ストーカーになるしかなかったり・・・。

まあ、うっかりしているのと人事を尽くして天命を待つのとは同じだということです。

今週のモノローグ担当の緋山は呑気につぶやいている場合ではないのだった。

しかし、失策に気がつかないことを未熟というのである。

つまり、甘い果実と信じて苦い果実を食めば最初はそれが苦いとは気付かなかったりするということである。

だから酒席の切り込み隊長白石に「不幸か」と問われ「不幸、不幸イエーイ」と適当な迎合をしていた緋山が致命的なエラーを犯していることに気がつかないというのはありがちなことなのである。

一夜明けて、白石と藍沢は藤川と緋山にからかわれるほどの親密さを示したことを覚えていないことにする。

藤川と緋山は聞き耳をたてていたはずだが何も聞かなかったことにする。

酒飲みの情けである。

その延長戦上に危険運転防止法が成立するのはいうまでもない。

事故により死の淵から蘇生した緋山だったが、馬鹿は死ななきゃ直らないという真理に従い、迫り来る陥穽に向かって歩みだす。

一方、藤川は自分の愛が冴島を救うと信じて、接触を続ける。

しかし、死んだ田沢を求め続ける冴島の心は救命セットにサテンスキー(止血などに用いる鉗子の一種)を入れ忘れる。

田沢の留守番電話の声を聞きたい衝動にかられたからだ。

それを藤川が妨害し、うろたえた冴島の心からはサテンスキーのことは消えた。

藤川の性急さは冴島を救うどころかその足を引っ張るのである。何しろすでに顔が不幸なのである(白石の断定)・・・。

神の目で見れば愚かの極みだが・・・人間なんてそんなものでもある。

そして、救い手たちの事情には無関係に事故は発生し・・・。

轟木(遊井亮子)はいつものコールを発声するのである。「ドクター・ヘリ・エンジン・スタート」

年寄りの冷や水と言う言葉があり、老いは容赦なくやってくる。しかし、自由に慣らされたかっての若者たちは老いに逆らって危険なレジャーを追い求める。

欲に目が眩んだ旅行会社は需要に応じてシルバールンルン登山ツアーを営業するのだった。

ガイドはリピーターを獲得するためにスリリングな登山コースを設定するのである。

突然の落石があり、夫は妻をかばって胸で岩石を受け止めた。

・・・いい加減にしておけよ。

無謀な老夫婦はガイド付き登山にチャレンジして落石事故に遭遇。運悪く夫は全身打撲の重傷で山小屋に運びこまれていた。

ヘリ当番医の緋山は「珍しい症例との遭遇」の期待に燃えて走り出す。

そして前回、脳死による患者・翼(6)の延命処置中止のサインを求めず、患者の母親の前で延命処置を中止した結果が緋山の前に絶壁として立ちはだかるのである。

翼の母親・野上直美(吉田羊)の兄・野上明彦(松田賢二)はまるで甥の仇を見る目で緋山に噛み付くのだった。

「がるる・・・お前が翼を殺した犯人か」

「え・・・」

緋山は立ちすくんだ。

ヘリ当番のシニア・ドクター(指導医)橘はトラブル発生を察知し、藍沢と緋山にピンチヒッターを命ずるのだった。フェロー・ドクター同士のコンビだが、もはや藍沢は一人前扱いか。

そして・・・サテンスキーを忘れたフライトナースが後を追うのだった。

アクシデントはアクシンドを生むのである。

悪い結果は悪い結果を招き、最悪の結果に進むのが定番である。

橘は緋山に問い質す・・・延命措置の中止の承諾書に同意のサインをもらったか否か。

「サインはありません・・・」

「なぜだ・・・」

「その・・・患者の・・・母親と信頼関係を築き・・・気持ちが通い合ったので・・・不要と判断したからです」

「だれがそんな判断をしろと・・・お前は庇いようがないことをしたんだぞ」

「・・・」

田所部長(児玉清)が狂犬兄に応対する。

「がるる・・・私のかわいい甥の翼が・・・あんな小娘の医師によって・・・適当に扱われ、殺されたと思うと断腸の思いだ・・・姉が離婚して独身だということでなめてないがしろにしたとしか思えない・・・日本に対する中国なみに謝罪を求める覚悟である。事実を公表して、病院は謝罪しろ・・・医者も処分してもらう・・・そちらの誠意(慰謝料)如何では裁判沙汰にさせてもらう」

田所部長は返答に屈した。

ただちに翔北病院対医療チームに出動命令が下った。

春日部事務局長(田窪一世)「そろそろ出番だと思いましたよ」

相馬弁護士(隈部洋平)「前回、ツンツンしたので今回は少しはデレデレさせてもらいたい・・・私だって美男美女を敵に回すのは不本意なのです」

春日部「どうしてDNR(do not resuscitate=延命するな)オーダー(同意書)とらなかったのよ・・・」

緋山「患者の家族の同意を得られたと判断しました・・・」

相馬「向こうはそう思っていないようですがね」

緋山「あの・・・私があやまってすむことなら・・・」

春日部「馬鹿な・・・殺人罪で告訴されかかっているんですぞ」

相馬「非を認めたら終わりです・・・こちらに落ち度はなかったという線で徹底抗戦しましょう」

会議の結果、緋山は副院長命令で無期限で「患者に対する医療行為」を禁じられた。

スタッフボードから緋山のプレートは外されRestrict(制約つき)と記された。

緋山は医師としての両腕を縛られたのだった。

田所「彼女は熱意ある良い医師なんです・・・なんとか」

相馬「わかってますよ・・・しかし・・・結果がすべてです・・・私だって不本意です・・・心無い無知蒙昧の患者の遺族の戯言で・・・彼女が医師としてののキャリアを終えるなんてことはね」

緋山「・・・」

緋山は漸く医師生命の危機を感じた。

ヘリは現場に到着した。どこに着陸したのだ。岳来山五合目なだらかにも程があるだろう。

着陸現場から積雪のある林をぬけて山小屋に徒歩で移動するドクターヘリ・チーム。

処置を終えた患者を搬送するのに・・・まあ、そんな先の心配をしてもしょうがないよな。

きっと帰り道は編集処理で・・・。雪山遭難と聞いただけで興奮しすぎだろう。朝飯前の犬かっ・・・お前は。

「か、風が強かったんでルートを変更したんですよ・・・そしたら・・・こんな・・・落石があるなんて・・・助けてください・・・ぼ、ぼくのガイド生命が・・・」

責任問題の発生に動顛するガイド(尾上寛之)だった。

廃屋のような山小屋の中で泣き叫ぶ妻、横たわる夫。

白石「開放性胸部損傷・・・」

藍沢「これは・・・まずいな・・・」

患者は意識もなく、出血多量である。

藍沢「挿管して・・・開胸して・・・止血だ・・・テーブルを手術台にする」

ガイド「こ、こんなところで手術するんですか・・・」

白石「みなさん・・・そうおっしゃいます・・・大丈夫ですよ」

レスキューの協力により臨時の手術台に患者を横たえる。

ガイド「西南のルートさえとらなければ・・・助かるんでしょうね。死にませんよね・・・」

藍沢「肺門部遮断で止血・・・する・・・サテンスキー・・・」

冴島「・・・」

藍沢「どうした・・・」

冴島「サテンスキーがありません・・・」

藍沢「どうして・・・」

冴島「忘れました・・・」

白石「こちら・・・白石です・・・現場にサテンスキーがありません」

森本(勝村政信)「止血不能か・・・ちょっと待て・・・医療マニュアルを検索中・・・ハイラーツイストだな」

白石「ハイラーツイスト?・・・ひねるのですか」

森本「そうだ、肺を持ち上げて180度捻る・・・ねじれた部分で血流を遮断する」

白石「・・・ですって・・・やったことある?」

藍沢「いいや・・・しかし、やるしかない・・・肺がちぎれたらそれまでだ」

森本「・・・現場の判断にまかせる」

藍沢は肺尖部の癒着をはがし肺をひねりあげた。

白石「心停止したら左も開けて心臓マッサージするよ」

冴島「・・・血圧あがりました・・・」

藍沢「閉じている時間はない・・・パッキングで・・・搬送準備だ」

ガイド「助かるんですか・・・どうなんですか」

藍沢「別のルートを行っても落石はあったかもしれない。もっと大きな石が転がってきたかもしれない・・・だが、起こってしまったことは変わらないんだ・・・後悔するのは勝手だがごちゃごちゃ言ってオレの仕事の邪魔をするな・・・プラスになることは何もない」

ガイド「・・・」

梶(寺島進)「どうだ・・・」

藍沢「持って30分・・・」

梶「やはり搬出搬入は編集でカットするしかないな・・・それで間に合うだろう」

パイロット・梶とメカニック・安西(樋渡真司)の手伝いで患者は無事にヘリに収容されたらしい。

梶「最短ルートは17分・・・たとえ悪い風向きでもいつも通りに飛ばすぜベイビー」

安西「ラジャー」

戦いすんで陽は暮れた。患者は一命をとりとめ、ガイドのガイド生命も首の皮一枚つながった。

医師生命の瀬戸際に立つ緋山は暗澹とした思いに沈んでいた。

自分が乗るはずだったヘリの着陸をただ眺めるだけ、患者へのフォローも禁じられた医師は何もすることがない。反省文を書くことも許されないのだった。

そんな緋山に白石はコーヒーを奢ることにした。緋山は気分を変えようと言い放った。

「同意書をとるべきだった・・・するべきことをしなかった・・・だってそんな冷たいルールを守るより・・・患者の家族の気持ちを大切にしたかったから・・・」

その頃、橘は元・妻の三井(りょう)を非難していた。

「君のアドバイスに従わず・・・もっと強く言うべきだった」

「ごめんなさい・・・私のせいだわ・・・でも、緋山は良い医者なのに・・・」

「そうさ・・・良い医者だ・・・だからダメなんだ」

「患者に親身になりすぎるから・・・」

「そうだ・・・君と同じだ・・・患者、患者、いつでも患者だ・・・君は家庭にまで患者を持ち込んでくる・・・俺は窒息しそうだったよ・・・あの妊婦の時だってそうだ・・・俺はいつかあんなことになると思ってたよ・・・そして案の定・・・君はしでかした・・・」

「でも・・・昔はあなただってそうだったじゃない」

「そうさ・・・だから、俺は止め・・・強くなったんだ」

「・・・」

「もし・・・緋山が医師生命を絶たれたら・・・君は指導医としてどう責任をとるのだ・・・俺には皆目見当もつかないよ・・・」

途方に暮れた緋山の思いは迸った。「私の患者・・・昨日で打ち止めかも。患者の家族の気持ちが分かると思うなんて・・・どうかしてたよ・・・素人を信じるなんて・・・バカなことしたもんだ・・・」

白石は精一杯慰める。「そんなことない。あなたはそんなこと思わない。脳死判定に最後まで抗ったのはあなただもの・・・蘇生の希望を・・・復活の可能性を最後まで探していた・・・手の施しようがないことを確信した時、あなたは誰よりも辛さを感じたはず・・・私には分る・・・すべてを見てたから」

緋山は心に浮かんだことをつぶやき続ける。「最初に患者にありがとうって言われたのは・・・末期ガンの患者の点滴の針を変えた時だった・・・もう・・・長いこと点滴してるんで・・・静脈がなかなかとれなくてさ・・・でもがんばっていれたんだ・・・そしたら上手だ・・・痛くない・・・ありがとうって言われた・・・私はそのありがとうを大事に心にしまって・・・今日までがんばってきたつもりだったのに・・・人から憎しみのこもった目で睨まれて・・・ひ、人殺しって罵られた・・・わ、私は人を殺したの?・・・わ、悪いことをしたの?」

白石は緋山の背中に手を置いた。緋山は幼い子供のようにむずがってその手を払いのけた。しかし、白石はひるまず緋山を両手で抱きしめる。なぜなら緋山はもう一人の自分だからだ。白石も緋山にこうして抱きしめられていたのだ。

いつものエレベーター。

三井と西条(杉本哲太)のコント(スケッチとしての寸劇)・・・。

西条「翼くんの脳死は確定していたんだ・・・それは間違いない」

三井「でも私は・・・医師の育て方を間違ったみたいです・・・指導医として失格です」

西条「間違いか・・・間違いってなんだろうな・・・正しいことをしても結果が悪ければ他人は間違いだと言う」

三井「・・・」

降りかけた西条はドアを押さえて付け加える・・・。

西条「一つ、確かなことは君も・・・緋山も・・・自分を守ることを知らなさすぎる・・・国防なくして国家が成り立たないようにだ・・・無防備都市だ」

無人となったエレベーターに緋山と冴島が乗り合わせる。

冴島「私、証言しますから」

緋山「気にしないで・・・大丈夫だから」

そこへ藍沢もやってくる。

冴島「・・・すみませんでした・・・」

藍沢「患者は助かった。それが結果だ。サテンスキーがあろうとなかろうと患者は助かった・・・それだけだ。結果がすべてだ・・・今日のハイアーツイストだって結果が良ければ勇気ある決断だと讃えられ、結果が悪ければ人殺しと罵られる。裁判になって途中経過を説明してもそれでどうなったかが問われるだけだ。ひとつひとつの結果の積み重ね、流した汗と涙・・・そんなものは蒸発してしまえば誰の目にも止らない。それが医師という職業だ・・・それが気に入って・・・俺はこの仕事を選んだ・・・それなのに・・・どうしてなんだろう・・・虚しくてやりきれなくなることがある」

緋山の顔を一瞥すると藍沢はいつものポーカーフェイスでエレベーターから出るのだった。

いつもの準備室のコント。

藤川は冴島に声をかけた。

「大丈夫?」

「(サテンスキーを忘れたことについてはもう)大丈夫です」

「そんなわけないだろう」

すでに会話がすれちがう藤川だった。

「田沢さんのこと・・・あんなことがあって平気なわけがない・・・いくら、氷の女だって」

「こ、氷の女・・・」

「人間だもの・・・でも・・・いつかは前を向かないとね・・・(俺と一緒にね)」

「あの人はいつも前向きでした・・・あんな状態でも目標を立てて・・・小さな・・・小さな目標でしたけど・・・」

遠くを見つめる冴島。藤川はこの一時を前進と感じている。しかし、二人はいつまでも交わらぬ平行線の道を歩いているのかもしれない。いや、それどころか徐々に遠ざかる道を。しかし・・・不幸な男もその場その場を精一杯生きる他はないのである。

藤川から解放された冴島は路上でついに愛する男の声を聞くことができた。

「今夜は夜勤か・・・なんとかクリスマスにはたどり着けたよ・・・次は春・・・だな・・・春になったら・・・桜を一緒に・・・見に行こう」

もうこの世にはいない男の果たせなかった目標に冴島は涙をこらえきれない。春はもうそこまで来ているのに・・・と思うからだろう。田沢の瞳にはもはや桜は映らない。瞳そのものがもはや灰になっているのだ。

何しろ、田沢にはすべての結果が出てしまっているのである。

いつもの屋上からいつもの暗がりへ続くコント。

白石はガンの最新の治療法について父と電話で話していた。

父「・・・ふふふ、俺を誰だと思っているんだ・・・まだ駆け出しの医者には負けんよ・・・お前の生れる前からメスを握っているんだぞ・・・それより・・・お前、声が変だぞ・・・風邪でも引いたんじゃないか」

娘「生姜湯も飲むし、朝は十六茶を飲むから・・・」

暗がりへ藍沢がやってくる。藍沢はガンの最新治療についての資料を手渡した。

「覚えていてくれたんだ・・・」

「これ、シナリオ的には軽いツイストな・・・」

「嘘だったらよかったのに・・・疑いようのないステージ4なのよ・・・父はもうすぐ死のうとしている・・・それなのに私は最近ひどいことばかり言ってた・・・私は死んでいたって言うのが嘘だった藍沢先生がうらやましいくらい・・・」

「・・・」

「・・・ごめん」

「いいさ・・・いつも優等生すぎるからな・・・お前は」

お互いの秘密を共有する二人だった。もはやキッドの妄想の枠を越えている。

藍沢は・・・予備校で働く父親(リリー・フランキー)を訪ねた。

父親が生きていたことは結果として良かったのかどうか・・・確かめずにはいられなかったのだ。

父親の話は相変わらず要領を得ないとりとめなさを纏っている。

死んだことにしてくれと祖母に頼んだ父親。

優秀な研究者だった母。おちこぼれだった父。

研究の世界に没頭していた母は子作りには消極的だった。

しかし、母は藍沢を孕んだ。

祖母も喜んだと言う。

父も喜んだと言う。

しかし、母は心を病んだというのだ。

その原因は出産の時に子癇(妊娠中毒症の一種)で出血を起し、子宮摘出に至ったことであるとも言う。

子供を生みたがらなかった女が子宮を失って悲しいと感じるのは妙な話だ。

父は母が自分の子供を生むことで絆を得たかったのだと懺悔する。

つまり、父が欲しかったのは子供ではなく、自分の子供を生んだ母だったのだ。

しかし、母は藍沢のために研究か・・・子宮か・・・何か大切なものを失い精神を失調したのだという。

そして父親はそんな母親から逃げたのだった。

この男の愛とは一体なんだったのだろうか。

そして母親は死んだ。鬱のために自殺したのなら母には罪がない。病死だから。

ただ、藍沢が母親に愛されなかった事実は変わらない。

そして・・・母を捨て、母に産ませた子供も捨てた男。

藍沢が父親に愛されなかった事実も変わらない。

藍沢は礼を言った。「事実を話してくれてありがとうございました・・・あなたが生きていると聞いたとき・・・俺には特にそれをどうとも感じなかった。ただ驚いただけ・・・しかし・・・今日、あなたの話を聞いて・・・人が人をこれほどまで憎めるのだということを知りました。あなたは最低の人間だ・・・できればこの世から消えてほしいと思う・・・こんなことなら再会なんてしなければよかった・・・正直にそう思います」

藍沢が両親に愛されていなかったことを告げに来た男。その真意は実に伺い知れない。ある意味、人間離れしているのである。ただ、拳を握りしめる癖は藍沢と親子の証なのかもしれない。しかし・・・そんなものは偶然の結果かもしれないのである。

①実は嫁姑の仲が最悪だった

②実は偽装殺人をしている

③単に年老いて心細くなった

④借金があり、藍沢の収入が目当てである

⑤藍沢が愛する妻にそっくりなのでいたたまれなかったというよくある伝説

⑥実は藍沢は人工授精による父親(精子)も母親(卵子)も分からない子供だった

⑦父親も精神を病んでいる

⑧ちょっと暇だった

⑨冷たい言葉で詰られると感じる

⑩とてつもなく不器用な男

・・・もう、いいか。藍沢に幸せな結末が待っていることを祈るばかりである。

一体、藍沢の両親は何を研究していたのだろう。

そこにも驚くべき秘密が隠されている気がする。いや・・・せめてそうであって欲しい。

殺人レーザーの研究とか・・・それはないと思うぞ。

階段を一歩ずつ上がるために

言葉を覚える

違う景色を見るために上へ上へと進む

文献を調べ

腕を磨く

誰かを喜ばせたくて

自分を満足させたくて

歯をくいしばる

そして積み上げたものが

たった一度の間違いですべて失われてしまったら

人は傷つくほかに何ができるだろう

結果は良かれ悪しかれ結果に過ぎない

しかし、悪い結果は悪い結果を呼び

最悪の結果になりやすい

だから人々は皆、朝、目が覚めたら祈らずにはいられないのだ

どうか、今日は何も悪いことがありませんように・・・と

執行官通達がきた。

裁判所が証拠保全にやってくる。

緋山は訴えられたのだ。

しかし、緋山にはどんな罪があったと言うのだろう。

命を救うための手を縛られ、病院を彷徨う幽霊のようなその姿を仲間たちはなす術もなくスルーするのだった。

緋山が抜けたシフト編成がとんでもないことになっているからである。

関連するキッドのブログ『第6話のレビュー

天使テンメイ様のドラマとお金にまつわるエトセトラ。

Hcinhawaii0620 ごっこガーデン。愛と緊迫の現場セット。お気楽あやまちは誰にでもあるよね。現場に遅刻したり、タレントのギャラ使い込んだり、商品を妊娠させたりマネージャーにはよくある話。ちょっとうらやましい・・・。ひねったらぷるんって戻るよね・・・。あの母親は泣いて和解してくれると思うけどなあ・・・本当に金目当てだったらやだなぁ・・・くう藍沢の父親は絶対に許せない・・・過程で何があったとしても・・・もはや何かそうなる正当な理由があったとしても・・・見当もつきません・・・努力が報われその苦難の道のりが明らかになるのも・・・勝者にのみ許される世界・・・ま、失敗でゴハン食べてる人もいますけど~それもある意味勝利だし~まこ鉄則です。死んだフリしたら最後までくたばってないと。ウソはばれなきゃウソじゃないのでしゅ~。すべてのウソがじいやにバレたらと思うと夜も眠れないので昼寝しますから~藤川にも春が来ますように~と祈りましゅ・・・ikasama4事務長&顧問弁護士はお気に入りです。カランコロン藍沢鬼太郎もちょっときています。しかし・・・何はともあれフコーフコーと鳴く小動物白石にはメロメロです・・・いやあ、参りました~みのむし遅刻しましたよ~~~カーリングロシア戦はもうとんでもない試合でしたのでありまするるる・・・そういうわけで~~

Hcinhawaii0621 ごっこガーデン。静寂と暗闇の備品室セット。mari藤川と冴島はまだまだ春は遠いですね~シーズン6くらいまで待つかもね~。白石と藍沢はそれぞれ別々に緋山をフォロー・・・緋山二度泣きですね・・・藍沢と父の和解はどうなるのかしら・・・全く読めません・・・まあ、トンビがタカを生む線なのかも。それにしても白石は藍沢Pにこっそりこっそり接近していますよね~これってソファーじゃなくてベッドだし~・・・手続き上のミスで医療裁判・・・あの母親の兄って義憤なのか金銭目的なのか・・・判別の難しいタイプだわ~

Hcinhawaii0622 ごっこガーデン。愛と哀愁のスレちがいセット。エリはうぅん・・・ついに密着タイムの時がやってきたのでスー。ウーロン茶でもエリはぐでんぐでんになれる体質ですyon!・・・もうスリスリではうぅんなのでスー。ああ、正面、横顔、ためらい、毅然、すべてのアングル、すべての表情が崇高な藍沢P先生に乾杯でしゅよ~。それにしても母親の精神失調の原因がもうひとつ不鮮明でしゅね~。死人に口なしだからどうしようもないのでしゅね~。意外とばあちゃんが鬼姑でものすごい嫁いびりだったりして~。でも現在のあの優しいばあちゃんからは想像できないし・・・ミステリーでスー・・・緋山のことは・・・誰か助けてくださぁぁぁぁぁい・・・怯えさせたら日本一でしゅし・・・

水曜日に見る予定のテレビ『曲げられない女』(日本テレビ)『相棒』(テレビ朝日)『赤かぶ検事京都篇』『新撰組ピースメーカー』(TBSテレビ)

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2010年2月22日 (月)

あなたの甘えで社会が腐る(堀北真希)少女のように微笑んでカバチ!!(櫻井翔)

一日、二試合って大変だよな・・・いや、選手よりもお茶の間がさーっ。

これをリアルタイムで楽しむのってどんな人なんだ・・・お前だろっ。

しかし、見るゲームとしては最高だよな。

四年に一回しか見ないわけだが、フリーガードゾーンルールがあることでますますコクの出たゲーム展開の楽しみ方を思い出すと・・・たちまち、日本チームの全試合が絶対に見逃せない戦いになってくるのである。

ここまで日本は三勝三敗。本日のダブルヘッダーでは格上ロシアに0-6でリードを許した後で逆転勝ちしたかと思うと格下ドイツに終始リードを許して敗北。この不安定さがたまらない。

そして何より実況の解説者の小林宏氏(元日本代表監督)がたまらない味を出すのである。

敵チームの美技に「ナイスショットッ・・・」と叫び、「カーリングというスポーツでは敵味方とは関係なく、素晴らしいプレーを楽しむことが大切です」と断りを入れる。

そして、序盤から終盤までのすべてのショットに「この試合のキーショットになるかもしれません」と言っているような気がする。

そして、すべての試合で「この試合を見られる皆さんは最高に幸せです」と言っているような気がする。

そして終盤。敵チームの美技に「・・・」と絶句。日本チームの美技「よしよしよしよぉぉぉぉぉし、イエース、イエス、イエ~ス、オーケイ、オオオーケイ、オ~ケーーーっ。これはカーリング史上に残る試合です」と言っているような気がする。そして相手がロシアでもカナダと断言し、近江谷も、石崎も、本橋も時々、目黒になる。

小林さんの解説を四年に一回しか聞けないなんて・・・残念なような気もするし、ちょうどいい気もするのである。

目黒の緊張のラストショット前。

会場の応援団の歓声に。

小林「ちょっと静かにしてもらいたいなー」

実況「しかし・・・応援が選手の力になりますよね」

小林「ここは静かにしてもらいたい」

その声に応えるように静まりかえる会場。さすがです。さすがは解説の小林さん。

で、『特上カバチ!!・第6回』(TBSテレビ100221PM9~)原作・田島隆(他)、脚本・西荻弓絵、演出・加藤新を見た。劇画調にデフォルメされた演出も演出家が一巡して、それなりにこなれてきた感じがする。・・・というか、仕方なく馴らされたというか。とにかく、後半戦に突入なのだが、とにかく凄いのはここまで田村(櫻井)のやる仕事はほとんどボランティアばかりなのである。一体、大野行政書士事務所はどうやって田村の給料を捻出しているのだ。

弁護士なら成功報酬というものが考えられるのだが、依頼者の代理人として弁護活動をしてはいけない主人公である。

結局、主人公は給料をもらいつつ、人生勉強をさせてもらっているのか・・・。

しかし・・・一応、行政書士見習いとして書類作成に協力していることを言葉で説明するのが今回の依頼人のターゲット。宮下夫婦(石原良純・山下容莉枝)の経営する食堂である。この店のオープンに関った田村は経営者なみにこの店に愛着を感じ、毎日、ランチは親子丼を食べる常連客になっているのだった。

美寿々(堀北)「15才の頃から新規開店を見守ってきた私の経験によればこの店つぶれるわ」

田村「そんな~」なのである。

・・・と言ってるそばから食中毒が発生。仕入れ担当の妻が安売りの食材を購入したためである。

田村を含め、ランチタイムの客が全員・・・犠牲になり、店は営業停止である。

しかし、脱サラで経営を始めた宮下は危機感が薄い。相場が五万円の慰謝料をあえて十万円払い、自分の気持ちを楽にしようとする。

さすがの田村も少し・・・甘いのでは・・・と思い出す。

しかし、食中毒の被害者の一人が大野事務所に損害賠償金500万円の取立てを依頼してきたことにより、田村は呑気な感想を言っている場合ではなくなるのである。

宮下の懐具合も知っている田村はとてもそんなには取り立てられないと弱音をもらす。

だが・・・被害者の富田(大地康雄)は食中毒のためにワンマン経営の工務店が倒産の危機に追いやられていたのである。

田村は典型的な義理と人情の板ばさみ状態。

しかし、心を鬼にした田村は思いっきり荒んだ目で・・・宮下の自己資金350万円を回収すると宮下の母親(草村礼子)の元へ残り150万円を回収に向かう。

それを止める美寿々。

「私も昔、親に追い込みかけて・・・自殺未遂に追い込んだことがある。その時は後味悪かったよ・・・ビジネス・ライクってことは非情になったり、極悪になったりすることじゃない。最も最良の道を探すことなんだよ・・・(ちょっと可愛い)田村・・・」

美寿々の一言に田村はベストを尽くす初心を思い出す。

そして・・・母親から快く150万円を回収することに成功するのである。

まあ・・・結局とるものはとるのである。

「未熟者の自分から見てもあなたは未熟」という捨て身の説教が心に染みた宮下は心機一転・・・店を建て直すことに成功するのだった・・・まあ、普通は夜逃げだよな。

そこそこ面白いがカーリングの面白さとは格段の差があります。

だって甘口にも程があるだろう・・・。

関連するキッドのブログ『第5話のレビュー

火曜日に見る予定のテレビ『泣かないと決めた日』『まっすぐな男』(フジテレビ)

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2010年2月21日 (日)

土佐の高知のはりまや橋で坊さんかんざし買うを見た(坂本龍馬)

事件は龍馬が第一次江戸留学を終え土佐に帰郷している間に起きた。

この前後の動きが1854~1856年の嘉永六年、七年、安政元年、二年、三年の問題の時期なので整理しておきたい。資料によって数字が違うので、間違っている可能性はあるが・・・本当にすまない・・・ジャック・バウアーかっ。

1854年

嘉永七年三月 山内土佐守、参勤交代のため江戸へ。

          岩崎弥太郎は従者として江戸詰め。

      六月 吉田東洋、酒席にて旗本・松下嘉兵衛を殴り謹慎処分。

          坂本龍馬、土佐へ帰国。

     十一月 土佐大地震(寅の大変)

1855年

安政元年十二月 岩崎弥次郎、酒席で喧嘩し負傷、弥太郎は急遽帰郷。

安政二年一月 岩崎弥太郎、父の喧嘩騒ぎの裁きを不服として奉行所に落書き、投獄。

      四月 吉田東洋、少林塾を開設。

      五月・・・竹林寺の僧侶・純信と鋳掛屋の娘・馬は駆け落ちの末、関所破りで捕縛。

      七月 弥太郎出獄。村籍登録抹消。少林塾へ。

      九月・・・純信、面晒しの刑の後に国外追放。

      十月 江戸大地震(安政大地震)

1856年

    十二月 坂本八平死去。

安政三年八月 武市半平太、坂本龍馬、江戸にての剣術修行へ出立。

    十二月 吉田東洋赦免。

まあ、よさこい、よさこいと言うことです。

で、『龍馬伝・第8回』(NHK総合100221PM8~)脚本・福田靖、演出・渡辺一貴を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は神出鬼没の饅頭屋近藤長次郎書下ろしイラスト付です。はたして、弥太郎が大井川を泳いで渡り、東海道を半月で走ったのが安政元年の暮れだったのか、安政二年の暮れだったのか歴史年表上の謎でございますよ。しかし、少なくとも夏ではなく冬だったことは間違いないのですな。そして弥太郎が忍びの者だったことも間違いありません。天速星・弥太郎の神行法使いと申せます。安政二年には吉田東洋は少林塾を開いており、そこで弥太郎は学んでいた形跡があり、キッドは安政元年の暮れに弥太郎は走っていたと思うことにしています。安政三年の帰郷だと弥太郎は二年近く江戸にいたことになりますしね。そして、権平の家督相続は安政二年の春。八平は隠居後、一年近くは永らえたという感じになります。ドラマとしては実に微妙な認識のズレ。官費留学の武市と私費留学の龍馬は八月中に前後して江戸に出立しますので・・・弥太郎が安政二年暮れに帰郷して事件後すぐに入牢、七ヶ月と考えるとそこでもいろいろ矛盾が生じてきて面白いのでございます。ま、土佐大地震も安政大地震もよさこい節もスルーでしたけど~。

Ryoma185502 嘉永七年(1954年)春、土佐15代藩主・山内土佐守豊信は参勤交代で江戸へ向かう。豊信は吉田東洋を抜擢し、藩内の改革を進めたが、土佐には12代藩主の少将豊資が残っている。そして高知城内には早世した兄たちの跡目を幼少のために継ぎそこなった豊資の11男・鹿次郎(後の16代藩主豊範)がいる。この年八歳である。少将豊資と豊信は伯父・甥の関係。豊信と鹿次郎は従兄弟である。豊信が吉田東洋を仕置き家老にして、改革を進めることを心良く思わぬものは相当数になること間違いなしの展開である。吉田東洋が酒席の不始末で藩主不在の土佐に戻ることに裏があると考えるべきだろう。次代藩主を鹿次郎にするべく藩政改革と言う名の既得権益の侵害に眉をしかめる普代家老たちの暗躍は始まっていたのである。

その一人が土佐藩・普代家老の一人、安芸の五藤内蔵助だった。

高知城内の隠居所にいる山内少将の御前に五藤は進み出る。少将は還暦を迎えたばかり、まだまだ衰えぬ眼光を五藤に向ける。

「地震の被害はどうか・・・」

「津波の死者は千あまりかと・・・」

「街では藩主の政について不満が出ておりまする」

「豊信のお気に入りが土佐に戻っておるそうだな」

「昨今、密貿易に関しての情報漏えいが相次いでおるのは・・・あの者の仕業と噂がありまする」

「なぜ・・・そのような悪戯をする・・・」

「密貿易に関るは藩の秘事。城内に関るものも多ければその力を削がんとする企てかと」

「豊信はどうやら土佐よりも江戸に顔が向いておるようだの」

「志高きはよきことと存知れど」

「もちつもたれつ・・・この心が分らぬか・・・」

「若いものはつい・・・ことを急ぎますからな」

「こうしてみると・・・岡本寧浦(岩崎弥太郎の伯父・吉田東洋の師・嘉永元年没)を取り立てたことが間違いだったかの」

「かのものの陽明学は・・・人心を乱しましたな」

「しかし・・・時勢というものがある・・・」

「どんな時勢でも自分の食い扶持に手を入れられて心穏やかなものはございませぬ」

「ただ、国が乱れるときには実利というものは避けられぬ」

「大殿様(豊資)・・・お上(豊信)にお心を許してはなりませぬぞ・・・若君(鹿次郎)の行く末も案じられますゆえ・・・」

「分っておる・・・で、あの者は何をしようというのか」

「利で・・・上士のものを切り崩しておりまする」

「なるほど・・・御主も足元に火がついたか・・・」

江戸時代の学問といえば儒学であるが、その新しい潮流が陽明学である。端的に言えば実力主義であるため時には大塩平八郎のような有能すぎるものを生み出す。門閥主義の弊害を糺すことはすなわち下克上という毒を含むのである。

しかし、西洋文明の侵略の脅威にさらされつつある日本では有能なものを抜擢する必要に迫られていた。外敵と内敵。その相克こそが維新の正体なのである。

豊資が岡本を藩政に導入し、改革を目指したように、豊信も岡本の弟子吉田を導入し、改革を目指す。しかし、新たな改革は古の改革に敵対するのが道理なのだ。

複雑な利害関係が藩内に渦巻き、一つの対立構造を生みだそうとしていた。

密貿易派ともいうべき旧藩主グループと、幕政参加派ともいうべき藩主派である。

それはやがて、尊王攘夷派と佐幕開国派という名で軋轢をはじめる。

藩の命を受け、安芸城下での大百姓と奉行所代官の癒着を内定していた岩崎弥次郎が酒に毒を盛られて人事不省に陥ったのもその暗闘の露出であった。

藩主とともに江戸に出ていた横目付けの弥太郎は急遽呼び戻された。

弥次郎は病床に伏している。

「すまぬ・・・不覚をとったわ・・・」

「父上・・・」

「安芸城下に幕府隠密が入り込んでいることは間違いない・・・ただ・・・」

「・・・」

「大殿様とお上の間に争いの種がまかれておる・・・」

「相手は何者です・・・」

「隠密頭は・・・安芸の城牢にいる・・・そのものをあぶりだして討たねばならぬ」

「受けたまって候」

こうして弥太郎は罪を得て入牢した。

すでに、弥太郎は上士と下士の両方に属する二重スパイである。しかし、下克上の進行に伴い、上士を利用する下士、下士を利用する上士が出現し、弥太郎の立ち位置をますます不鮮明にしていた。

もはや・・・だれが陰謀の黒幕なのか・・・誰にも分らない時代が始まっていたのだった。

(しかし・・・)と弥太郎は思う。(親父に一服もった下手人は・・・親の仇じゃ・・・仇討ちをすると思えば敵も味方もないわ・・・)

その主はすぐに見つかった。軽い罪で仕置きをされた囚人の雑居牢にその男はいた。

かねてから弥太郎が目をつけていた公儀隠密の一人である。

「おい・・・馬渕孫三郎・・・こんなところで何をしている・・・」

「ふ・・・刺客は岩崎の小倅か・・・」

「おこぜ衆の御主がなぜ・・・幕府の犬になったのだ・・・」

「御主が・・・お上の横目付けであり・・・大殿の忍びであるようなものさ・・・もはや・・・誰のために忠義をつくしているのかも分らぬ」

孫三郎の頬が膨らんだ瞬間、弥太郎は身をかわしつつ、孫三郎の首筋を指先で掻いていた。

孫三郎は含み針がむなしく牢獄の檻板に突き刺さったのを見てニヤリと笑った。その口から血が吹き出す。

「お・・・御主の毒は優し・・・」

崩れ落ちた孫三郎の絶命を探ると弥太郎は牢番を呼んだ。

「おい・・・囚人が仏になったぞ」

その頃、江戸より戻った坂本龍馬は久しぶりに加尾を抱いていた。平井家の土蔵である。

そこに・・・姪の春猪がやってくる。坂本家からの使いだった。

行為を邪魔された加尾が不服そうに鼻を鳴らす。

「もう・・・つまらん」

「少林塾の吉田様から・・・呼び出しじゃ・・・」

「元のご家老の吉田東洋様が・・・嘘ばっかり・・・」

「まっことじゃき・・・」

江戸で不敬の罪を犯し謹慎処分にされた身ながら吉田東洋は悠々自適の日々を過ごしている。

龍馬は身支度を整えると少林塾に走る。

吉田東洋は道場で待っていた。

身分が違いすぎるため、龍馬は道場に面した庭先に身を伏せる。

「よい・・・面をあげて道場にあがるがよい」

東洋はすでに木刀を右手に下げていた。通常のものより長い木刀である。長さは三尺八寸。

「千葉道場で高名を得たと聞く」

「恐れ入りまする」

「この塾の名をどう思うか・・・」

「土佐の旧主・長宗我部の菩提寺・少林寺の名をつけるのは反骨の現れかと」

「ふふふ・・・土佐に山内も長宗我部もないという気骨・・・口に出せば憚り多いぞ」

「・・・」

「さあ・・・一手、あわせてみよ・・・ただし、手加減はせぬぞ」

龍馬はすでに殺気を感じていた。

「それでは木刀をお借りします」

「真剣でも構わぬぞ・・・」

龍馬はそれには答えず、腰の大小を置き、道場の木刀を取り上げる。その長さは三尺四寸である。

「大石神影流は北辰一刀流に勝ったとも敗れたともいわれておる・・・その決着を見たいのじゃ」

すでに両者は正眼の構えである。東洋がするすると間合いに入ると同時に龍馬も無造作に前に出る。

「きえーっ」と東洋は必殺の突きを龍馬の喉笛めがけて放った。

木刀を振りかぶった龍馬の無防備な喉が長い東洋の木刀に刺し貫かれる。

しかし、それは残像だった。

東洋の頭上から振り下ろされる龍馬の木刀を東洋は突きからの変化で受ける。

しかし、東洋の木刀は半分に砕け散った。

その時には龍馬は東洋の背後に立っていた。

「うむ・・・面白いの・・・坂本・・・さらに江戸で腕を磨くがよい・・・」

龍馬は平伏した。

それからしばらく後・・・龍馬には江戸留学の許しが出た。

口添えをしたのは吉田東洋である。

一方、武市半平太の後ろ盾は家老・福岡宮内孝茂である。

福岡と吉田は上司と部下の関係であるが・・・それぞれに選んだ若者を異にする。福岡は白札郷士の武市を選び・・・吉田は成り上がり郷士の坂本を選んだ。

その人選が孤高の天才、吉田東洋の深みを示している。

関連するキッドのブログ『第7話のレビュー

月曜日に見る予定のテレビ『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命2nd Season』(フジテレビ)『ハンチョウ』(TBSテレビ)

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2010年2月20日 (土)

美しき花を賞して草木の風興を弁えず(大政絢)

コミックやドラマなどのフィクションでは富豪が登場するのは定番である。

そこには「奇なるものを求める心」が働くからだろう。

つまり、受け手の多くを占める「富豪でないもの」=「貧乏な庶民」に対して「一瞬の夢」を提供する作り手の作為が働くのである。

たとえば藤子不二雄のコミックにはちょっと裕福な家庭の師弟が必ず登場する・・・多くの場合、主人公にとってうらやましい存在として・・・そしてそこにはやっかみの気持ちが動いて多くはギャフンという目に会うのである。

しかし、世の中が安定して「豊かさ」が普及すると誰もがちょっと裕福になってくる。

そういう場合は超絶的なお金持ちが登場したりする。

まあ、「こち亀」の中川とか、「うる星」の面倒とか、「おぼっちゃまくん」とかね。

そこではちょっとした裕福さでは想像もつかないグロテスクな浪費が行われる。

ドラマ化された小説「富豪刑事/筒井康隆」はそういう作品の基本的な構図をもっている・・・つまり「金にものをいわせて犯罪捜査」なのである。

一方、少女向けのコミックでは「王子様」という別の視点がある。単なる富豪ではなくて、「お金持ちのボンボン」である。

男女雇用機会均等法以前ではそれはすなわち「玉の輿」という素直な少女の見る夢の目標だったからである。

「花より男子」では大財閥の御曹司が集合するのであるが・・・その中に紛れ込むのが茶道の家元の西門である。そこには単なる成り上りではなく、「伝統」とか「由緒」を受け継ぐ気配があり、しかも「芸術」という実力を持った「お金持ち」というプラスアルファがある。

さて、茶道といえばお稽古ごとである。お稽古事といえば華道もそうである。

「ヤマトナデシコ七変化」には華道の家元の御曹司、織田武長(内博貴)が登場する。今回は武長の実家が登場するのである。

で、『ヤマトナデシコ七変化・第6話』(TBSテレビ100219PM10~)原作・はやかわともこ、脚本・篠崎絵里子、演出・大澤祐樹を見た。もちろん、茶道と華道はライバルである。これに能や舞踊を加えてもよいが、やはり茶道と華道の犬猿の仲は特筆されるべきだろう。そもそも両者にはどちらが伝統的か・・・という確執がある。

実は華道の方が古いと華道家は言う。そもそも華道のルーツは仏教伝来以前からある墓前に花を供える慣わしにあるという。そして六世紀後半から七世紀にかけて聖徳太子が仏教を流行させ、仏前に花を献じることが雅やかなことになって以来、華道が存在すると言うのである。

聖徳太子は小野妹子に「日出処天子」と推古天皇を呼び、「日没処天子」と隋の煬帝を呼んだ国書を持たせて遣隋使とし隋の煬帝を激怒させたやんちゃな皇太子である。

その怒りを含んだ返書を渡された小野妹子は内容をとても聖徳太子に見せられないと「紛失」したことにした。そのために流刑になっている。

聖徳太子は各地に寺を建立したが、京都にある紫雲山頂法寺もその一つである。ここには聖徳太子が水浴した池があったとされ、別名池坊と呼ばれる。その住職に小野妹子の子孫が任命され・・・数代を経た。

一方、茶道が中国で確立するのは八世紀から九世紀にかけてで、日本にそれを導入したのは遣唐使である。つまり、茶道はそれ以来なのである。

室町時代に入ると足利将軍は「茶の湯」「生け花」をたしなむようになった。その中で高名を得たのが小野妹子の末裔・池坊専慶である。その四代後が戦国時代に「池坊花伝書」とも言うべき「専応口伝」を示した池坊専応なのである。およそ500年前である。

それに対し、戦国末期に登場した千利休は「茶の湯」にわびさびを持ち込んで、華道の「豪華絢爛」を否定した上で、「茶」を主、「花」を従とした茶道を打ち立てる。

ま、それ以来、茶道と華道は相容れません。ま、あくまでキッドの妄想としてはですけど。

しかし、利休が「総合芸術」としての茶道を目指したように専応も「古来から花を瓶にさすことはあるというが華道とはただそれだけのものではない」とやはり「美を越えて美を見出す何か」を追求していた気配はあるのである。

まあ、味覚と視覚で上手く棲み分けてもらいたいと思う。

もちろん、花を愛でることが視覚的なものであることは言うまでもないだろう。

さて、前回では意中の人からのチョコレートが届かない雪之丞(手越祐也)がせっかく側に意中の人のスナコ(大政絢)がいるのにそれを素直に表現しない恭平(亀梨和也)に複雑な八つ当たりを仕掛けるのだが・・・いつからスナコが恭平の意中の人になったのかさえも分りにくい展開なので雪之丞の胸の内がますます分りにくいと思う。

とにかく、そのために恭平と雪之丞が不仲になり、停めに入った武長と蘭丸(宮尾俊太郎)も混乱の中、気まずくなる。

そんな折に武長の実家で華道の家元である父・武長(榎木孝明)が倒れてしまうのである。

武長は子供管理人のタケル(加藤清史郎)を放蕩三昧の母親・美音(高島礼子)を届けるとそのまま実家に戻る。

また、蘭丸は人妻の千夏(真野裕子)と温泉旅行に出かけ、雪之丞も家出。

気がつけば中原の屋敷にはスナコと恭平が取り越されるのであった。

もう、自然なんだか不自然なんだかよくわからない。

そして・・・恭平はもてすぎちゃって困るのみたいな過去を語り、本当はこの家でみんなと楽しく過ごして幸せなんだともらし、ついでにスナコに甘えるのだった。

もう、愛なんだかどうなんだかわからない。

一方、喫茶店「迷宮入り」に避難していた雪之丞はマスターがまちこ(本仮屋ユイカ)のチョコレートを預り、雪之丞に渡し損なっていたことを知りご機嫌になるのだった。

もう、単純なんだか・・・これは単純か。

恭平と仲直りした雪之丞のところへ、武長の恋人・乃依がやってきて、武長が織田家の陰謀で靴紐が切れて帰れないことを伝えるのだった・・・ち、違うだろう。

今時、靴の感覚が変わるとか言って靴紐を替えないとか、それが切れて泣いちゃうとか面白いよね。・・・いい加減にしとけよ。

織田家に武長奪還作戦を仕掛ける下宿人たちだが、本人は「もう帰らない」と言うのだった。

しかし、その本心はいつか「別々の道を歩き始める時、別れが辛くなるから」というものすごい乙女心なのである。

そこへ、武長の父親が登場。

父「なんだそのチャラチャラした身なりは・・・ネクタイを緩めたり、スボンを腰ではいたりだらしないのにも程があるだろう」

子「いえ・・・そういう流行なんですよ」

父「そんな流行なんてくそくらえだ」

子「ち、父上・・・」

父「あ・・・いまの失言ね」

子「気をつけてください」

父「ち、うっせーな、気が散るんだよ。おかげでメダルとれなかったじゃん」

子「ここは、一応謝罪してください」

父「マスコミって尊大だよな~、何様なんだよだよな~、で、なんて言えばいいのよ」

子「心からおわびを・・・」

父「ごめんね、ごめんねーっ」

恭平「ここは・・・外見の方にもっていってもらわないと」

父「なんだ、そうなのーっ、面倒クセエな~。なんだよ、その髪型はイカシてるじゃん」

恭平は織田の父親の発言は無視して芝居を続けるのだった。

恭平「どうして、見かけで判断するんですか、長い髪が気にいらなければ切りますよ。オレには髪より友達が必要なんだ」

久留米「髪の毛の豊富な人はみんなそう言うんだよね・・・髪は長い友達なのに」

恭平はショートカットにして男の心意気を見せるのだった。

その恭平の格好良さに嫉妬した武長は心をこめて恭平を殴るのだった。

父「うむうむ・・・ケンカするほど仲がいいか・・・男にとってよき友は宝だ。花(貴族)もまた草木(庶民)の支えがあってこそ美しさが輝くというものよ」

一件落着である・・・ちょっと内容が違うんじゃないのか。・・・ま、いいか。

・・・とにかく、華道家という設定を適当にアレンジするなら・・・もう少し深みがあってもいいかなぁと思う今日この頃でございます。

さて・・・「殿」武長の出番はあったので、残るは「王子」蘭丸のエピソードなのだが。

「さゆり」や「お嬢様」の登場はあるのか、ないのか・・・気がかりです。

まさか今回の千夏はさゆりのアレンジなのか・・・そりゃないよな。

ついでに結局、タケルは物語の展開上・・・邪魔になってるのだな。

二兎を追う者一兎も得ずだよな。

関連するキッドのブログ『第5話のレビュー

Hcinhawaii0619 ごっこガーデン。内緒で秘密の隠れ場所セット。エリむふふ・・・最近はお母さんごっこがマイ・ブームなのでスー。こっそり亀恭先輩にごはんを作って食べさせて甘えさせるのでスー。そして膝枕で耳そうじをしてあげるのですyon!・・・するとすっかり気を許した先輩がぎゅっと手を握ってくるのです・・・一種の飼育プレーでしゅ~お気楽七変化してるのはスナコじゃなくて恭平だよね。ヤマトダンジ七変化にタイトル変更すればいいのに・・・もてもてが悩みの種なんてイライラするよね・・・ブスナコなしか・・・まちこはロケ日一日だよね、ま、スケジュール的にはそうなるかまこぎゃぼ~、スパイ逃亡ごっこをして秘密の通路を抜けたら・・・こんな場所に出てきましゅた~、ここは不毛地帯でなくて萌え萌え地帯でしゅか~・・・するとどこかにお湯のかけあいお風呂場乱闘セットがあるかもでしゅ~・・・至急探索するのでしゅ~

日曜日に見る予定のテレビ『龍馬伝』(NHK総合)『深・ケロロ軍曹』(テレビ東京)『堀北真希の特上カバチ!! 』(TBSテレビ)

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2010年2月19日 (金)

わが心の不毛地帯(唐沢寿明)

昭和46年(1971年)、イランはパーレビ王朝の二代目帝王(シャア・ハン・シャア)パーレビ2世(通称パーレビ国王)が支配していた。米国CIAの支配する傀儡政権だが、日本の高度成長を見習い、イランの近代化を進めたパーレビだったが、そのためにイスラム保守派の反感を招く。パーレビは宗教的指導者のホメイニを追放するがやがて逆襲され、イラン革命後には亡命を余儀なくされる。

しかし、当時はイラン建国2500年祭を2億ドル(およそ700億円)の予算を投じて開催するなどパーレビ王朝の最盛期なのである。ちなみに日本万国博覧会(1970年)の入場券売り上げはおよそ350億円である。

もちろん、革命勢力のバックには米国と冷戦中のソビエト連邦KGBが暗躍しているのであり、東西のスパイが入り乱れているのである。

最初の王妃はエジプト国王の娘。次の王妃はイランの貴族の娘。そして最後の王妃はイラン軍人の娘だった。二番目の王妃とは仲睦まじかったが、不妊症であることが判明し、後継者作りのために最後の結婚をすることになるのだった。

もちろん、それは現実の出来事であり、ドラマとは無関係である。

で、『不毛地帯・第16回』(フジテレビ100218PM10~)原作・山崎豊子、脚本・橋部敦子、演出・小原一隆を見た。イラン・サルベスタン鉱区の油田開発をめぐり近畿商事の壹岐正(唐沢)は米国のオリオン・オイル社と組んで、東京商事の鮫島(遠藤憲一)の画策する日本石油公社と大手商社による包囲網に叛旗を翻す。

近畿商事社内において妨害工作を繰り返した里井副社長(岸部一徳)の追放に成功し、与党・自由党の田淵幹事長(江守徹)への裏金工作によって対決の体制を整える壹岐だったが、石油利権を独占しようとする佐橋首相を後ろ盾に東京商事の妨害工作が開始される。

その第一弾は国家を代表する日本石油公社グループから離脱し、米国資本と組む近畿商事は国益に反するというマス・メディアによるネガティブ・キャンペーンだった。

新聞・テレビの報道で近畿商事の評判は急落するのだった。

さらに政府は大蔵省、通産省などがこぞって露骨な近畿商事への営業妨害を開始するのだった。

世間のバッシングに弱気になる大門社長(原田芳雄)に社を追われる里井は嫌味な言葉を残す。

「壹岐の暴走のために社員たちがどれほど困難に直面することになるか・・・そして社長もいつか壹岐に追い出されることになりますよ・・・その時、誰が一番社長に忠実だったのか・・・思い知ることでしょう」

里井の暴言を聞き流した大門だったが、壹岐には里井の意向を伝えるのだった。

「・・・社員の苦労も考えてくれんと・・・」

壹岐はその言葉を反芻した。

(苦労か・・・)

そして言った。「外遊中の幹事長が戻れば状況は変わります・・・それまでは耐えるしかないのです・・・それとも社長はもうあきらめるのですか」

「そないなこと言うてないわな・・・それより入札についての情報収集はどうなってんのや」

「現地で兵頭石油部長(竹野内豊)が鋭意奮闘中です」

しかし、イランの首都テヘランで情報収集にあたる兵頭はテヘラン事務所長の東山(小市慢太郎)に愚痴をこぼしていた。

「なんの情報もないだと・・・」

「相手はシャアなのです・・・接近することも落とすことも一般人には不可能です」

「しかし、逃げ出すわけにはいかんのだ」

壹岐の娘・直子(多部未華子)は父の身を案じた。

「お父さん・・・こんなに報道でたたかれて・・・大丈夫ですの」

「心配するな・・・お父さんの正しさをいつかみんな分ってくれる」

そんな壹岐の元へ元社員の小出(松重豊)が現れる。

「へへへ・・・壹岐さん・・・ぜひ・・・会ってもらいたい人がいるんですよ」

小出はいつの間にか政財界の黒幕の一人・林田(梅野泰靖)の手下となっていた。

佐橋総理とつながる林田は壹岐を恫喝する。

「帝国陸軍軍人として国家に反逆するなど恐れ多いとは思わんのか」

「この度の私の真意はあくまで日本石油公社が入札に失敗した時の安全弁です。石油公社が成功すれば100%ですが、失敗すれば0%です。そこで私が50%の保険をかけたとお考えください。すべては国益を考えた上での行動なのです」

「そんな戯言が通用すると思うのか」

極道の気配を漂わせる右翼の大物に毅然とした態度で応じる壹岐に林田は激怒した。

ますます、嫌がらせを強める官公庁に加え、総会屋の「壹岐はソ連の手先だ」という怪文書までが再び出まわり始める。

そんな壹岐に毎朝新聞の田原(阿部サダヲ)は問いかける。

「壹岐さん・・・安全弁と言うのならもし近畿商事が一番・・・日本石油公社が二番で落札した場合・・・近畿商事は入札を譲るのでしょうね」

手詰まりに陥りかかった壹岐に士官学校時代の旧友で韓国・光星物産の李会長(榎木孝明)が救いの手を差し伸べる。

「そうだ・・・京都へ行こう」

壹岐は最初に比叡山の僧侶となった千里(小雪)の兄・精輝(佐々木蔵之介)を訪ねる。

壹岐「この静寂の中に暮らすあなたがうらやましい・・・私は未だに汚濁の中でもがいています」

精輝「あなたは強いお方だ・・・蓮華になりなされ。泥水の中でも美しい白い花を開く蓮となるがよろしかろう」

精神の一部が浄化された壹岐に京都で面会した李会長は貴重な情報を漏らす。

李「パーレビの側近に陰の大物と呼ばれるドクターがいます。古来、宮廷の医師は鼻が利くものです」

壹岐「友情に感謝する」

李「これから我が国も日本にならって経済成長をするつもりです。パートナーを大切にするのは当然のことです・・・我々は戦友ではないですか」

壹岐「・・・・・・」

明るい気分になった壹岐は千里の工房を訪ねるのだった。

壹岐「すっかりご無沙汰ですまない」

千里「今のあなたが大変なのは分っているつもりです」

壹岐「この戦いが終ったら娘の一家と食事をしてもらえないか」

千里「うれしい・・・」

・・・それは死亡フラグじゃないのか。

しかし、鍵となるドクターとコンタクトできない兵頭だった。

壹岐は奥の手であるデ・・・黄夫人(天海祐希)に縋るのだった。

「困ったときだけくるのね・・・いいわ、お小遣いくれるなら教えてあげる・・・王妃の信任状を取るのよ・・・段取は私がつけてあげる」

「すまない・・・」

ようやく、兵頭はドクターとコンタクトをとるためのアイテム「病気の母親のいる映画館の売り子のひまわりの種」を手に入れるのだった。

兵頭は意気揚々とおつかいから帰るのだった。

「パーレビ国王がソ連を訪問するときにただ一度、ドクターとモスクワでコンタクトがとれます」

「モスクワだと・・・」

「ええ・・・」

「それはダメだ・・・私はソ連には・・・行きたくない・・・絶対にだ」

「何を言っているんです」

「あの国には忌まわしい思い出がありすぎる・・・」

「そんな・・・壹岐さんの口にする国益っていうのは・・・そんなに軽いものなのですか」

その時、壹岐の中に鬱積していた黒い血潮が暗い過去の傷跡から噴出するのだった。

「君は・・・祖国に妻子を残し、囚人服を纏い、ロシアの大男に毎日蹂躙され、仲間たちの死体を埋めるための墓穴を凍土に掘り、いつ落盤で生き埋めになるか分らぬ極寒の暗黒炭鉱の中で十一年間も強制労働をしたものの気持ちが分るというのか・・・生意気を言うな」

壹岐の激昂に兵頭は返す言葉もなかった。できることなら抱きしめたいと兵頭が手を伸ばしかけた時、壹岐の秘書が邪魔をしたのだった。

秘書「専務・・・お声が廊下まで・・・」

仕方なく兵頭は上司の深い心の傷にただうなだれるのだった。

壹岐は暗黒の中を彷徨い、導師である谷川(橋爪功)を訪ねるのだった。

「行き給え・・・壹岐くん・・・君こそが希望なのだ」

壹岐はたちまち勇気を取り戻すのだった。

直子「ソ連に行くなんて絶対ダメよ・・・あんな恐ろしいところにお父さんを行かせるなんて・・・お母さんが生きてらしたら・・・絶対お止めになるわ」

壹岐「仕方ないのだ・・・私がやらねば誰がやる」

直子「そんな・・・キャシャーンみたいな・・・」

一方、鮫島は政府を動かし、経済協力のための使節団をイランに送り込み、詰めの一手を打つ。

タイトロープの上で・・・壹岐は兵頭とともに今世紀最大の殺戮者の第二の後継者が支配する暗黒の地獄帝国の首都である魔物の棲み家モスクワへ旅立つのだった。

決して癒えることのない傷とともに物語はクライマックスへまっしぐらなのだった。

関連するキッドのブログ『第15話のレビュー

土曜日に見る予定のテレビ『咲くやこの花』(NHK総合)『井上真央の樅ノ木は残った』(テレビ朝日)

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2010年2月18日 (木)

人はいつもとりかえしのつかない決断をし続けると弱虫は言った(菅野美穂)

とりあえずドラマなので何もかも簡単に投げ出すことができるのである。

そういう意味でどんなに評判が悪くてもふてぶてしさを失わない人々よりは清々しい感じがする。

しかし、現実には子育ても家事も夫の管理も姑まかせで家出する主婦とか、弱虫だから警察官僚のキャリアを放棄するプレイボーイとか・・・そういうものの存在感はかなり希薄です。

早い話が早紀(菅野)が恋人、職、家族と次々に失って失うものがなくなったので、今度は璃子(永作博美)に家庭を失わせ、次に藍田(谷原章介)に職を失わせる。

脚本家の何がなんでもリセットしたい願望はほとんど病気と言えるだろう。

この状況で主人公たちが幸せになるというのはかなりリアルではないのである意味、全員自殺エンドとかを考えているのかもしれないな・・・それはないだろう。

だれもが現状にしがみつくのが精一杯の世の中であっさりとそれまでの人生を捨てること。

それがどんなに恐ろしいことなのか・・・注射がこわいレベルじゃないよな。

水曜日のダンスは・・・。

「相棒」15.7%↗17.2%↘17.1%↗17.5%↗17.8%↘15.8%

「検事」*9.4%↘*5.6%↗*6.0%↗*6.4%↘*6.0%↘*5.1%

「曲女」15.4%↘11.0%↗13.7%↘13.3%↘13.1%↗14.5%

ああ・・・ダンスだよね。ムーン・ウォークを決めるんだよね。内容はともかく菅野の女優魂は炸裂するよね。

で、『曲げられない女・第6回』(日本テレビ100217PM10~)脚本・遊川和彦、演出・吉野洋を見た。現実の刺々しさにしっかり向き合って生きているのは誰あろう坂本弁護士(塚本高史)である。それを嫌な奴としか感じられない藍田は彼を幻想のフィルターで悪魔のように感じるのである。戦場で「お互い殺しあうのは無意味じゃないか」と叫びながら塹壕を飛び出し集中砲火を浴びて血煙となって消えるタイプだ。まあ、「宇宙戦争」で言えば火星人に白旗上げて蒸発する神父のようなものだな。

街角で暴漢に因縁つけられたら簀巻きにして橋から吊るしてしまうキッドには想像もつかない軟弱者なのである。まあ、本人が弱虫と自覚しているのだからしょうがないのだが。

警察官僚はリスクヘッジに追われて市民の安全を顧みないという批判的な指摘をしながら、改革の旗手にはならずに離脱するって凄い発想である。

敵前逃亡なのである。

まあ、全軍兵士が全員敵前逃亡すれば戦争終結だが・・・なかなかそうはいかないことはアフガニスタンを見れば明らかだろう。

くよくよしたって始まらない。今を全力で生きるってことは職を辞することとは180度違うってドラマの登場人物に説教してもムダだな。

一方、璃子は夫の浮気を盾に専業主婦の鑑であるビッグ・マザーに反乱を開始するのだが、時給800円のアルバイトでどうやって母子三人生きていくつもりなのか。一生、早紀に寄生するつもりかもなーっ。子供手当て目当てかっ。このご時勢に小学生の娘を持つ母が防犯ブザーを初めて見るなんてどれだけわが子に関心ないのか明らかなのになぜ口先だけは親権にこだわるのか・・・不気味である。

そういう困ったちゃん二人を「友達」という理由だけで温存する早紀。

ついに藍田は早紀を天使として崇拝し始める。

人間が人間を人間以上のものと考えるのはきっと正確な考え方ではないだろう。

璃子は後先考えず、姑をくそばばあ呼ばわりだ。

自分がどれだけダメな妻でダメな母親だったかをなかったことにする気である。

これは危ないね・・・これは危険なドラマだね・・・。

どこかユートピアの顔をしたディストピアに三人はたどりつくね~。

あの娘はこういうんだ

あなたは無責任だって

自分のしたことをなかったことにしようとしているって

でも僕の知ったこっちゃない

僕はただダンスを踊っただけなんだから

そりゃいつも言われてたよ

悪魔はいつでも標的を探してるって

母さんだって言ってたさ

甘い話には裏があるってね

だけどダンスを踊っただけなのに

責任なんてとれないよ

だって僕は永遠の子供

ピーターパンなんだぜ

父親になんかなれるわけないじゃないか

死ぬまでダンスを踊るんだから

とにかく責任をとりたい人はとるべきだ

僕はただダンスを踊りたいだけ

そしてダンスを踊るのさ

世界から見れば僕は悪魔

でも僕から見れば世界は地獄

断言するよ

僕は君なんか知らない

もちろん君の子供の面倒なんか金輪際みないのさ

だって僕はダンスを踊るんだから

一言アドバイスしておくよ

そういう奴もいるってこと

つまり僕みたいなね

だから何かするときにはちょっと気をつけてするといいよ

とにかく、能天気な友達に囲まれて有頂天の早紀ははじめてのお泊りで情熱の赴くままに夜を過ごしたみたいです。

夏木マリが何と言ったとしても失敗すれば失うものもあるし、敗れたら負けってこと。

カーリングだって失投したら勝てる試合も落しちゃうよ。

でも避妊に失敗すれば神様は贈り物をくれるんだ。

・・・それじゃ・・・生まれてきた子供は失敗作なのかい。

関連するキッドのブログ『第5話のレビュー

金曜日に見る予定のテレビ『ヤマトナデシコ七変化』(TBSテレビ)さあ、逆転のチャンスだよ!

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2010年2月17日 (水)

魔女の誕生した日(榮倉奈々)タイガーを否定する男(深田恭子)

さて、カナダのバンクーバーはいろいろと大荒れなわけだが・・・カナダ・・・貧乏国か?

ウインター・スポーツにはなんとなく、ゴージャスな印象を感じる世代なので貧乏くさい冬の五輪って変な感じがする。

まあ・・・天候不良は仕方ないとしても製氷機が故障したり、練習中に事故続出、競技場の設計や整備にものすごく問題がありそうだ・・・。

こうして、おバカの波はゆっくりと世界を覆っていくのである。

中国の旧正月の行事が世界中で行われていることを伝える日本の国営放送のニュースは問題の本質を匂わせているのである。

火曜日のドラマ対決は①「泣かないと決めた日」↘*9.5% ②「まっすぐな男」↘*8.8%

まあ、可もなく不可もないな。

で、『泣かないと決めた日・第4話』(フジテレビ100216PM9~)脚本・渡辺千穂、演出・石川淳一。11世紀のイングランドの伯爵夫人ゴダイヴァは夫レオフリックの蛮行を諌めるために城下を全裸で巡回した。そうすれば夫が行動を改めると約束したからである。伯爵夫人を慕う領民は彼女の辱めないためにすべての窓を閉じてその日を迎えた。しかし、一人、仕立て屋のトムだけは美しい伯爵夫人の裸身を眺めたい一心でこっそりと窓を開け覗き見したのである。たちまち神罰があたり、トムは失明した。それ以来、英国ではのぞき趣味の男をピーピングトムと呼ぶ。

悪魔の紳士・淑女録にその名を止める覗き野郎の日本語版は出歯亀である。20世紀初頭に強姦殺人の容疑で逮捕された通称・出っ歯の亀吉が銭湯の女湯覗きの常習犯であったことからその名が残る。ピーピングトムとくらべたら伝統は浅い。

窃視症は異性などをこっそり覗き見ることで性的興奮を感じる性的倒錯である。それが異常なのかどうかはそれぞれの性的指向の尺度によって変わるだろう。キッドはゾクゾクするレベルである。

覗き屋の田沢(長谷川純)が盗撮映像を性的欲望を処理するために使用しているのかどうかは明瞭にされていないが、某アイドル事務所的には思い切っているというしかない。・・・っていうかこんな役にまで手を広げなくてもいいだろうと思います。

美樹(榮倉)を陥れる罠のために万里香(杏)が同僚のサイフを美樹のバッグに仕込んだ現場を録画した田沢は万里香を脅して「お楽しみ」をしようとほくそ笑む。

しかし・・・田沢は相手が魔女であることを見過ごしていたのである。

田沢から秘密の画像を送りつけられた万里香は凄惨な笑みをもらす。

そしてたちまち・・・田沢の盗撮カメラを発見してしまうのである。

盗撮画像のチェックをしていた田沢はカメラ視線の万里香を発見し、思わず失禁するのだった。そこがトイレなので問題はなかったのだが。

万里香がやってくると室温がたちまち下がるのが分る。

田沢はすでに言い知れぬ恐怖を感じる。しかし、田沢の下半身はいきりたち、万里香の体を求めて田沢の口に脅し文句を喋らせるのだった。

「お、お前の、ひ、秘密を握っているぞ・・・」

「まあ・・・素敵ね・・・どんな秘密かしら・・・」

田沢は背筋が冷えていくのが分る。空気は明らかに低温化し、吐く息が白くなっていく。

「お、お前は、ぬ、濡れ衣を、み、美樹にききき、着せようとしただろう・・・」

「あら・・・それは違うわ・・・私、そのサイフは美樹のものだと勘違いしたんだもの」

「う、うぅぅう、嘘をつつつくな」

「さあ、みんなはどう思うかしらね・・・それより・・・あなたがどうしてそのことを知ったか・・・みんなが知ったら・・・あなたはどうなるかしら・・・」

「え・・・」

「お前はくそったれの覗き野郎ってことになるんだよ」

「そ・・・そんな・・・」

田沢は下半身が凍りついた。

そして、漸く自分の置かれた立場に気がつくのだ。

(オレは・・・カエルだ・・・ヘビに睨まれたカエル・・・もうすぐ食べられてしまいます)

葵井商事は遺伝子組み換え大豆の混入という不祥事により揺れていた。

それは企画本部長・安西(升毅)がライバルの統括本部長・坂東(中原丈雄)を失脚させるために仕組んだスキャンダルだった。

そうとは知らずに失脚工作に加担した美樹の恋人・仲原(要潤)は失意のどん底に落ちる。

そのために冤罪で苦しむ美樹に対するフォローも中途半端になるのだった。

田沢の盗撮映像の中にデータを盗む仲原の姿を発見した万里香は魔女の微笑みをもらすのだった。

すでに悪魔に魂を売り渡している万里香にとって愛するものの苦悩ほど悦楽的なことはないのである。

だから、美樹を苦しめるのは憎しみではないのだ。愛なのである。魔女にとって憎悪は青白く燃え上がる愛そのものなのである。

相変わらずいじめに苦しむ美樹だが謝罪行脚中の坂東と知り合い、「苦境に陥ってもあきらめなければ見えてくるものがある」と励ましの言葉をもらう。

しかし、直後に不祥事の責任をとって自殺してしまう坂東だった。

このドラマは「目を覚まして助かったと思うとそこは地獄」というツイスト(ひねり)の連続なのである。その積み重ねは評価してもいいと思う。もちろん、子供騙しのテクニックですけどね。

その衝撃に酒に溺れる仲原は魔法によって美樹に変装した万里香の甘い罠にたやすくからめとられるのだった。

心の拠り所である仲原の部屋に合鍵でたどり着いた美樹は睦みあう恋人と親友の姿を見て奈落の底に突き落とされるのであった。

その苦しみは万里香に深い悦楽をもたらす。あまりの快感に魔女はうっとりとため息をもらすのだった。

嫉妬により地獄への片道キップを手にいれた美樹は屋上へと向かう。

深遠への特急列車が発車のベルを鳴らす。

魔女の駅員となった万里香はマイクをとりあげる。

「地獄行、最終列車がまもなく発車します。ご利用の方はお急ぎください。当駅では駆け込み乗車を推奨しています」

美樹は暗闇にむかってジャンプした。

もちろん、ドラマなので天使(藤木直人)が待ち構えています。

関連するキッドのブログ『先週の火曜日のレビュー

で、『まっすぐな男・第6話』(フジテレビ100216PM10~)脚本・尾崎将也、演出・植田尚を見た。古来、英雄は色を好むと言われる。そして、大抵、女性問題で失敗するのだった。上司(宇梶剛士)が愛人を囲っているヤクザな建設会社の社員・松嶋(佐藤隆太)は佳乃(貫地谷しほり)に愛を囁きながら、鳴海(深田恭子)にもちょっかいを出すどこにでもいる女にだらしない男である。

彼にとって大切なのは今の自分を守ること。要するに臆病な小心者なのである。

それを彼自身は絶対に認めない。自分はただまっすぐな男であると信じたいからだ。

松嶋、鳴海、佳乃の三角関係トリオはひょんなことから資産家の吉田(岡本信人)の自殺を食い止める。

自殺をあきらめた吉田は突然、事業を再開し、鳴海を事務員として雇用する。

その頃、松嶋は仕事を大手の建設会社グローバル建設に横取りされ、建設現場の資材盗難対策係を拝命していた。

そんな松嶋に吉田は「警備会社の真似事をするために建設会社に入ったのか」と問いかけ、グローバル建設の人事担当者・成田(小須田康人)を紹介しようとする。

もちろん、「世話になった会社を裏切ることはできない」と松嶋はヘッド・ハンティングには応じない。

そういう律儀さを佳乃は褒め称えるが、鳴海は「自分の心に忠実ではない」と意見するのだった。

そして、成田と松嶋の面談の場を勝手にセッティングする。

松嶋は即座に話をことわるが・・・自分の中に「大手ででかい仕事がしてみたい」という気持ちがあることを悟り、ちょっと意外に思うのだった。

しかし、とにかく勝手なことをする鳴海を叱り飛ばし仲良くホテル前の噴水にはまってしまう。

そのために佳乃は待ちぼうけを食らうのである。

やがて、ヘッドハンティング事件が発覚。

社内で突き上げを食らった松嶋は汚名挽回のために「できることをするだけだ」と建設現場で張り込みを開始する。佳乃はお弁当の差し入れをしてほっこりする二人だった。

景気がいい新興国(中国のことである)で盗んだ資材を売却するためにギャングが出現。松嶋に発見されると大人しく逃げ出すので追いかけっこ開始である。

心配する一同のもとに犯人を自力確保した松嶋が姿を見せて一件落着なのだった。

そして、鳴海は父親の判らない子供を妊娠しているのかどうかもよく判らないのだった。

脚本家・・・疲れているな・・・。

とにかく・・・いつ、まっすぐな男というタイトルが解題されるのか・・・見当もつかない成り行きです。だって・・・主人公はちっともまっすぐじゃないよね。

木曜日に見る予定のテレビ『グインサーガ』(NHK総合)『853』『エンゼルバンク』『7万人探偵ニトベ』(テレビ朝日)『不毛地帯』(フジテレビ)

ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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2010年2月16日 (火)

すべてを失いたいと思う病との戦い(山下智久)偽りと装いのコード・ブルー(新垣結衣)

今回のナレーターは白石(新垣)で彼女をめぐる事件は父親の告知された死の伝達である。

彼女は末期ガンの患者を担当中であり、そこで患者と患者の家族をめぐる「もうすぐ死ぬことを家族に伝えること」の一つの側面を見た後で、自身が父親から「もうすぐ死ぬこと」を伝えられるという構成になっている。

そこで取り上げられるのは「死」だが・・・実はどちらの患者も「生の肯定者」であり、「生きたい」と願っている生者である。

しかし、今回はその裏で二つの事件が起こっている。

一つは彼女とともに患者と対応した藍沢(山下)が母親が「自殺」したことを知る事件。つまり藍沢の母親は「死にたい」と願った死者なのである。

もう一つは脳死患者を担当した緋山(戸田恵梨香)が消極的な安楽死を患者に与えたことである。緋山は「生きたい」とも「死にたい」とも言えなくなった医学的な死者をその母親の同意を得ることなく殺害してしまったのだ。

「死ぬ自由」の問題と、「死者に対する殺人」の問題。

この非常に倫理的な問題が同時並行で進むというのは驚くべき主題のかなり洗練された技巧的展開と言えるだろう。もはや一種の美を感じさせる。

人は「生きたい」と願うことが正しく、「死にたい」と思うことや「殺したい」と思うことが間違っているという大前提がある。その是非の境界線で人々は問題の困難さを知るだろう。

生きる苦しみの解放をどう考えるかは非常に知性的な問題だ。

しかし・・・そこに至る道程は苦渋に満ちているのが普通である。

本題に入る前に恒例の週末の視聴率チェック。「ヤマトナデシコ七変化」↗*8.5%(あがった~季節ネタの強さよ)、「金太郎2」↘*8.3%(ここといい勝負じゃ困るけどな~)、「ルパン三世the Last Job」17.6%(ファンの皆さんご苦労さん)、「奇跡の動物園2010」10.1%(ボルネオじゃなくてアフリカに行くべき)、「ブラマン2」↘*6.6%(この視聴率は好きだ)、「左目探偵」↘*7.3%(ナミだ目探偵に・・・)、「ハンサム★スーツ」16.2%(北川景子のかわいさ炸裂)、「紅蓮次郎」16.5%(森下千里とったな)、「龍馬伝」↘20.2%(土佐、人気ないのか・・・龍馬の銅像まだたってないしな)、「特上カバチ」↘*8.8%(末広がりでございます)、ついでに「コードブルー2」↘15.1%(ま、高尚すぎるかもな・・・)・・・以上。

で、『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命 2nd Season・第6回』(フジテレビ100215PM9~)脚本・林宏司、演出・葉山浩樹を見た。冬は死の季節である。四季のある人々の暮らしではそれはやがて芽生える春の息吹を潜在させているものだが、藍沢(山下)の母親は蘇ることはない。その事実が藍沢の心を凍てつかせて何度の四季が通り過ぎていっただろう。関東平野部では珍しい雪の残る道を藍沢は歩く。母親の死にまつわる真実を長年死んだと思わされていた父親に問い質すために。すでに暗鬱な展開なのである。

何かを知っているものがそれを誰かに話すこと。

それはひどく簡単なことのようだ。

心にあることを口に出せばいい。

しかし、時には様々な思いがその口を重くすることがある。

自分の知りたいことを誰かに聞くこと。

それもまた簡単に思える。

しかし、質問の答えが常に心を満たすとは限らない。

閉ざされた扉の向こうが残酷で冷たい風が吹く

荒れ果てた場所とは知らずに

時に人は鍵を探すことに夢中になるのだ。

人にとって最後の秘密は死の向こう側に用意されている。

その扉さえもノックする人がいるほどに。

藍沢は顔すら忘れていた父親にあった。両親は母親が死ぬ前にすでに離婚していたからだ。

「母さんが何故死んだのか・・・知りたいのはそれだけです」

「あの人は・・・優秀な研究者だった。私よりずっと優秀な人だった。しかし、子供のような一面も持っていた。雲を見るのが好きだったんだ。そしてあの屋上の給水塔にもよく登って雲を眺めていた。そして屋上の手すりはある日、はずれた。よりかかっていたあの人は一階まで落ちてしまったんだ・・・あれは事故だったんだよ」

「その時、あなたは現場にいたわけではないでしょう・・・」

「壊れた手すりを見たよ・・・」

藍沢は観察力の優れた医者だった。父(リリー・フランキー)が何かを隠していることを直感で見抜いていた。

しかし・・・それ以上の追求をすることはできなかった。

「お茶でも飲まないか・・・」

「そのためにここに来たわけではないですから」

藍沢の心は凍り付いている。しかし、そうならざるを得ない冷たさがそこにはあった。

少なくとも見捨てたわが子を見送る父親にはよく分っていた。

誰が藍沢の心を凍結させたのか。

バイク事故によって脳死状態を疑われる患者がいた。六歳の幼児だった。

母親(吉田羊)が変わり果てたわが子を見つめる横で・・・フェロードクター(専門研修医)緋山とシニアドクター(指導医)橘(椎名桔平)、そして脳外科医の西条(杉本哲太)は脳死判定を実施した。患者である翼(榎本陸)は脳死と判定された。

日本では医学的には脳死は人の死である。しかし、法律的には脳死は人の死と決められていない。死亡を認定する専門家が死んだというから死なのである。

その専門家とは医師だった。法律的な死ではない死を医者が死と認定し、患者の家族の同意を得て初めて脳死が確定する。しかし、それは生ける死体であることが多い。そもそも脳死とは臓器移植医学の立場が必要とする判断なのである。脳が死んで体が生きていれば移植患者にとって喜ばしい出来事なのだ。もちろん、臓器提供者にとって喜ばしくはないが「それ」は死んでいた方が何かと都合がいいのである。

もちろん、生きていて回復の見込みがなければ死んだ方がましだと考える人は多いだろう。しかし、脳死患者はそれを他者に伝える方法がない。

脳死患者を生かしておく必要がない場合、日本ではリビング・ウィル(生前の意志)を一応、延命措置の目安として考える。延命治療の拒否が明言されていれば患者の自己決定権が尊重されるのである。これは一種の慣習法として定着しつつある。

それがない場合、遺族の同意はそれに準ずるものとなる。

要するに、「延命措置を医師が行わなかったことが医療ミスでなかった」ことを文書にする必要があるわけである。

すべては契約のなせることなのである。

そうした手続きを経て漸く医師は人工的な延命措置の中止を行うことができるご時勢なのである。

人は基本的には死をおそれる生き物である。だから生死の境界線からは常に目をそらす。日本人の何人が遺言を作成しているかを見れば統計的に明らかなのである。

橘は緋山に指導的な命令を与える。

「あの母親から脳死による延命措置の停止に対する同意のサインをもらってください」

そして緋山はその仕事の恐ろしさに立ちすくんだ。

母親は死んだように意識のない息子のために「アンパンマンのマーチ」を枕元で響かせる。

そうだ うれしいんだ

生きるよろこび

しかし、息子は医学的には死んだも同然なのである。それを緋山は伝えなければならないのだった。

一般人の多くは植物状態(遷延性意識障害)と脳死の区別がついていないものが多い。

医師も便宜的に回復の望めない植物状態の患者を脳死と呼んでいるにすぎない。

それなのにわが子の回復を信じている母親にその間違いを指摘することはなんと気の重い作業だろうか。

緋山は怯み、躊躇した。やがてその躊躇は致命的な過失へとつながる可能性を含んでいるのだが。

藍沢は父親との邂逅を祖母の絹江(島かおり)に話した。

「事故だったとあの人も言っていたよ」

「そうかい・・・お茶でものまないかい」

藍沢はその偶然の一致に祖母と父が口裏を合わせていることを敏感に察知した。

「家族なのに・・・嘘をつくのか・・・」

藍沢の心に怒りが噴出した。それは凍てついた心の亀裂から吹き上げる。冷たいマグマだった。

藍沢はその心をもてあまし、病室を飛び出すのだった。

藍沢は鬱積したやりきれなさに心が折れかかっていた。

その苦悶を救うために急患が発生する。大量の吐血をしてヘリで運び込まれた妙子(キムラ緑子)は末期の肝臓ガンだった。すでに翔北病院内科で手術不能を宣告された患者だったのである。

橘「向こうじゃもう手の尽くしようがないそうだ」

森本(勝村政信)「こっちだって同じだろ」

妙子は医師に見放された死を待つばかりの患者だったのである。

家族は高校生の芳雄(太賀)ただ一人だった。またしても藍沢は他人の中に自分を見出すことになるのだ。

藍沢は望まれない胎児の命を救い、孤独な少女によりそった。すべて幼くして両親を失った藍沢の心を動かす患者だった。妙子と芳雄の母子はもう一つのありえた世界を藍沢に示す、母が死なず、母と暮らす生活。芳雄は医学部死亡の受験生であり、まさにもう一人の別の藍沢なのである。

感情移入という言葉がある。他人の心と同化すること。他人の心が分ること。他人に思いいれること。ニュアンスは様々だがそこには情報の共有という概念が臭う。秘密を分かち合うこと。それは自己と他者の距離を短縮したような気分を醸成する。もちろん、他者を自己同一化することは不可能なのでそれは一種の錯覚である。しかし、自他境界線を曖昧にすることは人に高揚感を与える。

その高揚感には当然、個人差がある。藍沢は母親に対して冷たい言動を述べる芳雄に共感するがそれを表には出さない。

「最低の母親ですからね。自己管理能力の欠如というか。酒、タバコ、男に依存せずにはいられないのです。幼い頃から何度も男に貢いでは捨てられる繰り返しです。子供を残して男と遊び歩く日々でしたよ」

(そんな母親でもいるだけましじゃないか)と藍沢は思うが口には出さない。

「しかし・・・錦糸町のスナック「アムール」を経営して君を育てたじゃないか」

「母親に嘘をつかれ続けてうんざりしたことが先生にはありますか?」

沈黙する藍沢だった。うんざりどころか藍沢には母親の記憶がほとんどないのだ。

一方、脳死の翼の母・直美は医学的な死体に付き添っていた。

消極的な尊厳死に対する医学的な遺族への同意書を抱え、その様子を窺う緋山は専門家としての医者と患者の家族に感情移入する単なる若者に心が分裂していた。緋山はどちらかと言えば情に流されるタイプである。湧き上がる同情の津波は医師としての緋山の足元を救おうと寄せ始めている。

直美「この音楽、翼には聞こえているんですよね?」

緋山「聴覚は人間の脳内で最後まで残る機能と言われています。翼くんの聴覚を検査しましたが、聴覚の残っている気配はありませんでした。翼くんは何も聞こえていないと考えられます」

直美「なんですって・・・じゃ、私のしていることが無駄だっていうんですか」

(そうだと言え)と医者としての緋山が囁く。(そんなの無理)と若者としての緋山が叫ぶ。

直美「だって心臓が動いているでしょ」

緋山「薬物の投与によって人工的に動かされているのです」

直美「それってどういうことなの?」

(患者が医学的に死んでいることを告げるのだ)と医者としての緋山が命ずる。(できない、できない、できない、そんなことできない)と若者としての緋山が拒絶する。

緋山「多くの医師が不眠不休で救命しようとしたのです。しかし、我々は死神との救命戦争に負けました。力及ばず」

(残念です・・・)と言うのだと医者としての緋山がつぶやく。(言えない、言えない、そんなあたりさわりのないことは言えない)と若者の緋山が意地を張る。

緋山「すみません・・・」

心肺停止から蘇生して以来、緋山の心は失調している。そのことを指導医の橘は案じていた。橘より長く緋山を指導してきた三井(りょう)はそれを否定する。

三井「緋山は成長したわ・・・大丈夫だと思う」

橘「それは君の考える成長だろう・・・緋山は患者やその家族に感情移入しすぎる」

三井「それは悪いことではないわ」

橘「すべての事柄は度を越せば害悪になるんだよ。患者に感情移入しすぎた医者がどういうミスを犯すか・・・君はよく知っているはずではないか」

三井「患者に共感できるから私は医者を続けてこれたのです」

橘「君とはどうしても相容れないな」

三井「大丈夫・・・緋山は強いから」

かって母体優先の原則を侵して胎児を救おうとして患者を死亡させ医療訴訟を起されたことがある三井をかって夫だった橘は複雑な表情で見つめるのだった。

そして、橘の危惧した通りに緋山は医師としては越えてはならない一線をあっさりと飛び越える。

緋山は患者の医学的な死を家族に伝えたような気分になった。

緋山「あなたはどうなされたいですか・・・」

直美「(生きている)子供を抱きしめてあげたい」

緋山「(医学的に死んでいる)お子さんを抱いてあげてください」

緋山はぬくもりの残っている間に母親に医学的な死を迎えた子供を心ゆくまで抱かせようとと延命処置のために挿入された管を抜いた。

(馬鹿・・・)と医者としての緋山は叫んだ。しかし若者としての緋山は高揚感に包まれていた。(いいことをした・・・いいことをした・・・私は人としていいことをした・・・母親と息子に最後の贈り物をした・・・私は人として正しい・・・私は傷ついた母親の心を・・・癒し)

直美「守ってあげられなくてごめんね・・・バイバイだね」

翼は人工的な延命処置を失い脳死の後の心肺停止に至った。

生死の扉に挟まれていた患者は永遠の彼方へ去っていき、扉は閉じられたのだ。

橘「君と緋山は似ていると言っただろう・・・それが心配なんだ」

三井「私たちより彼女は強いはず・・・私はそう信じている」

三井はいつでも認識力が不足している。橘はいつでも実践力が不足している。二人とも指導医としてはまだ未熟なのである。

しかし、暴走する緋山を止められる指導医はこの世にはいないという考え方もある。

息子を失い、虚脱する直美の元へ駆けつけたのは夫ではなく、兄の明彦(松田賢二)だった。妹から状況を聞きだした明彦は唐突にガルルと牙を剥くのだった。

「親の同意もなく挿管をはずしたって・・・おいおい、そりゃ医療過誤じゃないか・・・こりゃ、ひょっとすると金になるぞ・・・」

明彦はニヤリとほくそ笑みながら早速、弁護士に相談の電話をかけるのだった。

愛する恋人を失って冷静さを失っていたフライトナース冴島(比嘉愛未)も緋山に共感するのだった。

「あなたは・・・いいことをしたと思う・・・」

(そりゃ・・・あんたは医者じゃないから)とすでに震え始めた医者としての緋山はつぶやくのだった。しかし、今、緋山を支配しているのは高揚したお嬢様なのである。行いを讃えられた緋山は悠然と微笑むのだった。

白石を父親の博文(中原丈雄)が訪問する。専門研修の終了後の進路を循環器外科にと望む父親に救命医として留まることを宣言する娘。父と子は対立していた。

間に入った救命センター部長・田所(児玉清)は医者仲間と部下の親娘ゲンカにオロオロするのだった。

白石は頑なな父親の態度に不信を感じていた。そして穏やかではない気持ちを抱えながら末期ガン患者である妙子に対峙する。

「ご家族に病状を伝えることを推奨します」

しかし、息子が優秀で京都にある国立大学を受験することに依存している母親はその妨げになることをおそれているのだった。

「息子は大切な時期なんです・・・私のせいで受験が失敗なんてことになったら死んでも死に切れません」

「確実に死にますから」と断定はしない白石だった。

藍沢は患者の息子の芳雄に対峙した。

「お母さんが胃潰瘍と言っているのは嘘だ。ステージ4の肝臓ガンで余命いくばくもない」

「・・・知っていますよ。ずっと母を見ているのです・・・ただの胃潰瘍じゃないことくらい分ってました。しかし、本人が隠そうとしているんだから、信じるフリをするしかないじゃないですか。ボクはずっとそうして子供を演じてきたんだから・・・で、後どれくらいもつんですか」

「もって・・・二ヶ月だ」

白石は家族として母親が息子に真相を話すべきだと思っていた。後になってそうだったと知らされるよりずっといいと。

藍沢は理解した。自分のために嘘をつくこともあれば誰かのために嘘をつくこともあると。

芳雄「受験に出発するよ」

妙子「そうかい、こんなときにすまないね・・・母さん、がんばって早く元気になるよ」

芳雄「発表は一ヶ月後だ、四月になったら入学式だ、どうせ着物を新調するとか言うんだろう、卒業したら医者になるんだ、どうせ自慢するんだろう。そして十年後には母さんの店の近所で開業するよ。母さんの店の客は特別に無料で診察してやるよ・・・」

妙子「楽しみだねえ」

芳雄「ずっと自慢できるんだ・・・だからずっと生きていろよ・・・たまには約束守ってくれよ」

芳雄も妙子も泣かなかったのに藍沢は涙をこらえることができないのだった。

白石はそんな藍沢を密かに愛おしく感じる。

白石と藍沢は暗がりの中で心を交わした。

白石「彼は合格するかしら」

藍沢「嘘なんて・・・自分がかわいいからつくものだと考えていた・・・だが・・・あんな高校生に隠し事に理由があることを教わるとはな・・・」

白石「仕方ないわ・・・あなたはそれを学ぶ環境になかったから」

藍沢「・・・言うようになったな」

白石「私もふと思うの・・・親の煩わしさには理由があるのかもしれないと」

二人は心の扉を開きあった。

その頃、悲しみの川の底に沈む美しい宝石に手が届かない藤川(浅利陽介)は梶(寺島進)に愚痴をこぼしていた。

藤川「冴島の奴、ちっとも心を開いてくれないんだ」

梶「心に穴が開いて寒いんだよ・・・だからシャッターを下ろしているんだ。時はいつの日にも親切な友達って言うだろう・・・待つしかないんだ・・・待つしかな。ダメな男は待ちくたびれてシャッターが開いたときにその場にいない奴なんだけどな」

森本(勝村政信)と轟木(遊井亮子)の結婚式はキャンセルされていた。一件落着だが森本は結婚式の出席者に対する案内状をすでに発送していた可能性もある。その人々に対する隠し事は期限限定なのである。

それでも森本はもう少し粘りたいと考えるのだった。しかし、森本の前ではシャッターは全開で目の前では轟木とニクソンが熱い抱擁を交わしているのであった。

森本の中の野獣はつぶやく「殺してしまえ・・・裏切り者を・・・お前を踏みにじったあの女も相手の男も・・・」しかし小心者の森本はため息をつく。「そんなことが出来る男なら、婚約者を奪われたりしないだろう・・・」野獣は軽蔑の目を向けつつ「ま、それもそうだな」と深層心理の森の奥へ消えていった。

白石の父親は娘に隠し事をしていた。肺がんが発見され、すでにステージ4に進行していることを。残された時間は少ない。そのことを隠して娘の進路を案じることはもはや苦痛だった。

「悪者になって死ぬのはイヤだ・・・」と博文は娘に「末期ガン」であることを告白する。

白石は衝撃の事実に立ちすくんだ。

好ましくない出来事に人々は蓋いをかける。

ゴミ箱にフタがあるのと同じだ。

しかし、時にはフタをあけなければゴミを捨てることはできない。

好ましくない出来事を隠そうとしても

異臭はいつしか漂いだす。

他人がせっかく作ったゴミ箱のフタをうっかりあけてしまった時。

人は顔をしかめるしかないのだ。

だが・・・そうしなければゴミはいつまでも腐臭を放ち続けるのだ。

一歩踏み出すためには秘密の扉を開けるしかないときがあるのです。

藍沢の父親はもう一度、父親に戻りたいと考えていた。

しかし、そのためには秘密を息子と共有しなければならない。

その秘密に息子は耐えられるだろうか・・・。

だが、そうせずにはいられない衝動をこらえられないからこそ・・・二人はこうなってしまったのだ。

藍沢の父親は別れた妻から届いた遺書を息子に見せる決心をした。

しかし、あらゆるものから逃げ出す性格はそう簡単には直らない。

大切な手紙を他人に託すと藍沢の父親は退避するのだった。

白石を経由して手紙は藍沢に届く。藍沢は母から父に宛てた手紙を開く。

「耕作は悪くありません・・・悪いのは私たち・・・未熟なのに子供なんか作ってしまったから」

俺は・・・生まれてきたことが・・・間違いだったと・・・そう言うのですか。母さんは。

関連するキッドのブログ『第5話のレビュー

気がつけばタイトルがあるなるべくだったらありのまま天使テンメイ様のレビュー。

Hcinhawaii0618 ごっこガーデン。病院廊下ボブスレーコース。エリ今回は静かなる後半戦突入の幕開けでスー。緋山大ピンチ発生、白石の後ろ盾崩壊、そして藍沢Pは不幸なおいたちにさらに残念な事実の発覚・・・傷口に塩をすりこむとはこのことですか~なんてかわいそう・・・でもどうせすりこむならエリがやらせてもらいたい。悶え苦しむ愛しい人をコントロールするのも愛のテクニックなのでしゅ~。さあ、そろそろ助走終了ですよーっお気楽この廊下コースって全長何百メートルあるの?・・・もりもっちゃんはやっぱりだったね。もはやヘリ抜きでも充分通用する展開だよね・・・ま、そのことについて賛否両論あると思いますが・・・出張してまで命を救うことの意味を考える上ではこういうじっくりした進行も必要だもんね・・・どうせ最後は飛ばしまくる大事故が発生すると思うけどmari滑走するときにPちゃまの前にするか後にするかポジション取りに迷うのですねぇ。う~ん。今回はあすなろポジションかな~。一つだけ確かなことはバンクーバーよりも萌えるってことikasama4人が真実を隠すのは相手を傷つけまいとする愛情だったりするわけですが、善意と悪意の境界線は曖昧なもの・・・だからこそ手続きや文書による誓約が必要になってくる。そういうものはなんだか冷たい感じのするものですが・・・一度痛い目に逢わないとそれが必要だから生れたということを実感できないのも・・・人間なのかもしれません。このストレッチャー風滑走機、安全点検すんでたっけかなまこひぃぃぃぃ、にゃぜに人は危険が危ないスピードを求めるのでしゅか~、二夜連続孝行息子とか、二夜連続アタックチャンスとか、最近二夜連続ブームでしゅか~、藍沢パパはどこまで無責任野郎なんでしゅか~、とか言っている間に加速が凄いことにじいや~替えのパンツ出しておいて~くう医療訴訟のターゲットは緋山だったのかっ、てっきり藍沢がやられるのかと思ったのに・・・と思っていたら藍沢はさらに苛酷な母親からの存在全否定・・・なんてかわいそうな子なの・・・生れていけなかった子供なんていないわよ~ってこっそり抱きしめてあげたいわっみのむし遅刻しましたけど~・・・オリンピックがスキーがスケートがスノボが攻めてくるから~るるる私も~、はいはい、廊下コースにいると命が危ないですよ~よけてよけて~~~っ

水曜日に見る予定のテレビ『曲げられない女』(日本テレビ)『相棒』(テレビ朝日)『赤かぶ検事京都篇』『新撰組ピースメーカー』(TBSテレビ)

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2010年2月15日 (月)

愛だけが俺を迷わせる特上(櫻井翔)女ならくるおしいままにカバチ!!(堀北真希)

また会う約束などすることもなくそれじゃまたなと別れるときのお前がいい・・・でもよかったわけだが。

俺たちの旅の果てにいい父親を演じる中村雅俊である。

よく、昔はオレもヤンチャだったというオヤジとかじじいとかがいるわけだが、虚構の上では本当にそういう昔があるからな。しみるんだよな。

若い頃、死んだ奥さんの写真は中村ゆりでなくて五十嵐淳子でもよかったくらいだ。

プライベートではいろいろあったわけだが・・・虚構がそういうものに左右されることはある程度仕方がないからな。

で、『特上カバチ!!・第5話』(TBSテレビ100214PM9~)原作・田島隆、脚本・西荻弓絵、演出・韓哲を見た。毎週、恐ろしいほどのダメ人間が登場するこのドラマなのだが・・・今回もかなり来ているのである。人の不幸を呪うのはいけないことと知りつつ、暫定順位2位の席に座る上村愛子は残り四人にこけてほしいと祈ってもいいと思う。そして二人はこけて二人こけないというのがもの凄いドラマである。12年かけて7位→6位→5位→4位なんて狙ってできるものじゃない。神の仕組んだ壮大なコントと言っていいだろう。そして、ワールドカップに出場できない中国と引き分けて、その中国に3-0で負けた韓国に1-3で負ける日本。ね、憲法改正して戦争できるようにしないとダメでしょう。やはり。

で、今回の演出はチョル・ハンである。大人(中村)が子供(櫻井)に加える鉄拳制裁の描写が筋金入りに見えるのは偏見のなせる技なのかもしれない。

今回の依頼人はもんじゃ屋「人生なんてそんなもんじゃ」の一人息子・甲斐洸(太賀)である。駿府に浜松城のある史上最悪大河ドラマの『天地人』で兼続の不憫な一人息子・景明を演じていたわけだが、不憫さでは甲乙つけがたい。

母親(宮田早苗)の連れ子なのだが、血のつながらない父親(山崎銀之丞)はギャンブル狂いで借金まみれのダメ親父である。その父親に忠孝を尽くそうとするありえない展開がまた不気味なのである。

父親は親権を利用して消費者金融(デビット伊東)から未成年の息子名義で200万円の融資を受ける。洸は突然の借金に呆然である。

洸が大野行政書士事務所長(中村)の娘・杏(菊里ひかり・・・「ふたつのスピカ」の秋の妹さくらである)だったために田村(櫻井)、住吉(堀北)、栄田(高橋克実)が解決に乗り出す。大家夫婦フェイド・アウトかっ。

父親との養子縁組を解消すれば勝手に借金される心配はないというトリオの奨めに洸は「親と縁を切ることはできない」と意地を張るのである。

住吉は「片親だけでは親権は成立せず借金は無効」と指摘して一時をしのぐ。

「借金といものの恐ろしさ」をよく知る大野はなんとか二人を別れさせようとするのだが、若い二人は聞く耳持たないのだった。

やがて調子に乗った父親は妻である洸の実の母親を巻き込んで親権を成立させ、洸に一千万円の借金を背負わせる。

今度の相手は闇金融(本田博太郎)である。どんどん別世界になっていきます。

ま・・・とにかく・・・夫はギャンブルに貢ぎ、妻は夫に貢ぎ、子供は親に貢ぐという虐げられる人々の連鎖が広がっていきます。

愛ゆえにその連鎖に参加する杏は売春で金を貢ぐ覚悟ができています。

そんなことになったら激怒した大野にどんな目に会うかわからないと・・・怯えたバンビはありえないような契約書の不備に気がつくのである。

契約年月日の記入漏れだった。

そこで・・・一計を案じた田村は洸と杏の婚姻届を役所に提出。

日付が変わるのを待って、契約書の契約日の欄に記入するのです。

ま、敵は実印持っているので訂正印押して訂正されたらそれまでですけどね。

とにかく、婚姻したものは未成年でも成人と見なされるので親権を行使した契約は無効という筋立てです。未成年者は婚姻に親の同意が必要ということなのである意味、堂々巡りですがドラマなのでなんとなくスルーです。

最後はヤクザの栄田が強面でのりきるのである。

まあ、どんな人間関係も最後は殺すか殺されるかでございますから。

もちろん、二人の結婚を応援した田村は大野にぶっとばされます。

そこで娘が「お母さんが死んで淋しかった私を支えてくれたのは洸なのです。お父さんは仕事ばかりしていたから・・・」と甘えると・・・大野としては折れるしかないのだった。

出番を確保するために唐突にやってきた検備沢弁護士(浅野ゆう子)が「親権を盾に婚姻届を無効にすると娘が文書偽装罪に問われる」と弁護するからである。

大野は「妻の遺言で娘のウエディングドレスを注文する店は決まっているんだ」と決めるのでした・・・。

何気ない毎日が風のように過ぎていく・・・。

洸の腐れ母親とその夫はまた絶対なんかやらかすけどな。ああ、堀北真希の目覚まし時計はちょっと欲しい・・・。キッドは仲間由紀恵の奴を使っていますけど。

関連するキッドのブログ『第4話のレビュー

火曜日に見る予定のテレビ『泣かないと決めた日』『まっすぐな男』(フジテレビ)

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2010年2月14日 (日)

天地開闢以来日本国は愛おしき国ならば美しき異国に渡りし者も必ず戻り来たらん(河田小龍)

米国の捕鯨船ジョン・ホーランド号に救助され、米国に滞在したジョン万次郎らが長崎経由で故郷である土佐国に帰ったのは嘉永五年(1852年)だった。

海の男として米国紳士に可愛がられたジョン万次郎は米国秘密諜報部員として故国に逆潜入したのである。

土佐藩主の命を受け吉田東洋は万次郎を取り調べる。

河田小龍(川田維鶴)が東洋のブレーンとしてその詳細をまとめたのが「漂巽紀畧」である。

その冒頭は「神武天皇が国を治めて以来、日本は万国に勝る国である。そのために漂流して異国に渡ったものも故国を慕って必ず還って来る」と書き出される。

この自国に対する自画自賛ぶりこそが当時の知識人のせつない心情を物語るのである。

「攘夷」という言葉が流行しはじめて以来、その行い難しことを敵を知れば知るほど痛感する一つの「知」の形がある。

しかし、一方で虚仮の一念岩をも通すという理もあるのだった。

アメリカは素晴らしい国・・・と語るジョン万次郎の言葉を聞き取りつつ、小龍は藩主・土佐守豊信に「しかし日本が一番でございます」と美辞麗句を飾った報告書を提出する一方で小龍は坂本龍馬に希望を感じる。

「かの国では能力あるものの貴賎は問わぬ。攘夷の戦を決するのは下克上の理である。わが国の存亡は名も無き下々のものに隠された才をとりだしてこれを用いる可否にあり」

世界を知り、これに臆することなく、己を知り、それに溺れぬもの。

小龍が坂本龍馬にその器を見出し、育て上げた筆子(弟子)をあずけたのにはそういう次第があった。

で、『龍馬伝・第7回』(NHK総合100214PM8~)脚本・福田靖、演出・渡辺一貴を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は安政2年12月(1856年1月)にこの世を去る竜馬の父・坂本八平直足の哀愁あふれるイラスト書き下ろし大サービスでございます。わが子の行く末を案じる老いた父親のせつない風情がぐっときます。さて厄介な幕末の元号問題。第一の関門である嘉永から安政へがやってまいりました。ここは西暦から考えてみます。1854年は嘉永六年十二月から嘉永七年十一月まで。そして1855年は嘉永七年十一月から安政元年十一月となり安政二年十一月となります。さらに1856年は安政二年十一月から安政三年十二月まで。ただでさえ、嘉永六年だったり嘉永七年だったりする1854年や安政二年だったり、安政三年だったりする1856年があるのに1855年は嘉永七年で安政元年で安政二年なのです。このために歴史関係の文献を読んでいると時々妙な記述にぶつかります。嘉永七年といえば1854年と思い込んだ人が1855年の出来事を1854年と書いたり、1856年の安政二年に起きた出来事を1855年と書いたりするわけです。そのために直足は1855年に死んだりする場合があるのでご注意ください。危ないと思ったら・・・「それから程なくこの世を去った」というナレーションが効果的です。去年はできなかったことが今年はできています。念のために言っておきますがあえてややこしく記述しております。

整理すると・・・。

1854年 嘉永6年12月3日~嘉永7年11月12日

1855年 嘉永7年11月13日~嘉永7年11月26日→安政元年11月27日~安政元年12月30日→安政2年1月1日~安政2年11月23日

1856年 安政2年11月24日~安政3年12月5日

ということです。ああ、こういうことが楽しいって一種の病気なのかも。

時々、「川田維鶴(河田小龍)撰 『漂巽紀略』寛永5(1852)年・・・」などという記述に出くわすと嘉永と寛永の区別もつかんのかっと頭が沸騰したりしますし。将軍は徳川家光かよっと思いますしね。

Ryoma185501 で、安政元年の暮れ(1855年)に第一次江戸留学の期限が切れた坂本龍馬は親しくなった江戸の人々と名残を惜しみつつ、東海道を西へ進む。最初の宿は戸塚宿であったが、龍馬には道連れが出来ていた。昼頃に通りかかった神奈川宿で無宿人といざこざを起こしていた侍と知遇を得たのである。しかし、龍馬が揉め事から救ったわけではない。男は荒くれ男に囲まれていたが、修羅場となると素手で男たちをひねりつぶした。男たちは物騒な刃物を振り食わしたがまったく歯が立たなかったのである。ついには男たちは逃げ出した。龍馬が声をかけたのは逃げ遅れた若い男に馬乗りになり締め上げている侍の肩をたたいたのである。やくざ者が哀れになってきたからだ。

「そのへんでいいのじゃないのかの」

「おぬしは・・・仲間か・・・」

「いや・・・土佐の坂本龍馬っちゅうもんです・・・もう懲らしめはたりたようじゃきに」

「ほう・・・」

と言って男は立ち上がる。竜馬よりもやや小柄な・・・つまり普通の体格であった。男にしめあげられていた男はぐったりとしたままだが、まだ息はあるようだ。

「こんな輩でも殺すようなことになれば大事ですきに・・・」

「おう・・・こりゃ、ちょっとやりすぎたかの・・・」

男は足元を見下ろすとぼりぼりと頭をかく。身なりは整っているが品格を感じさせないタイプだった。

「私は君の名を桂さんから聞いてます」

「おおっ、そうかいの・・・長州藩のお方かの」

「井上と申します。君とは同い年でありますよ・・・桂さんは千葉道場の塾頭は入門一年で素晴らしい境地にたどり着いたと坂本さんをほめておりましたよ」

「おお・・・その堅苦しさ・・・長州の人は皆、そうなのかい」

「いや、拙者はこのように時々、見境がなくなって困ります。いや、声をかけていただいて助かったな・・・その旅支度は・・・お国に帰られるのですか」

「そちらもかいの」

「いえ・・・拙者は京屋敷まで藩の使いです。立ち話もなんですから・・・歩きますか」

「そうじゃの・・・おや・・・腕から血が出ちょる」

乱闘の最中に刃がかすめたらしく、ざっくりと腕が切れて肉がのぞいている。

「なに・・・こんなもの・・・そのうち治りましょう。拙者不死身の聞多と呼ばれておりますから」

「ほう、そりゃ豪儀じゃのう」

龍馬は微笑んで井上聞多と肩をならべて歩き出した。周囲の旅人は呆気にとられて二人を見送ったのだった。

井上が奢るといって聞かぬので戸塚の宿の遊女のいる豪勢な旅籠に龍馬は泊まっていた。

遊びを終えた井上は女たちが寝息を立てているのを聞きながら龍馬に酒を注ぐ。

「街道筋に白昼ああいう輩が現れるのを・・・坂本君はどう思われます」

「さあ・・・なにしろ・・・わしは東海道は二度目じゃき・・・ようわからん」

「幕府の威光が衰えているのですよ」

「そうかいの・・・」

「上に立つものは示しをつけねばならない・・・攘夷を言い出したのは幕府ですからな・・・ところが、いざ敵を間近にした途端・・・開国です・・・はいた唾をのみこむようなだらしなさです」

「しかし・・・あの黒船をみてしまうと・・・それも仕方ないように思うき」

「松陰先生もそうおっしゃってました・・・」

「松陰先生が・・・先生はどうしておるんかいの」

「国元で座敷牢に入っておられます」

「そりゃ・・・命があってよかったの」

「老中の阿部様のおかげです・・・ただし、松陰先生は佐久間先生の弟子ですから海防掛の老中真田様がお力添えくださったそうです」

「なるほどの・・・」

「しかし・・・松陰先生はこうもおっしゃっている・・・国敗れて山河ありは武士の辱めだと・・・すべての武士が死に絶えるまで戦ってこそ花とおっしゃってました」

「相変わらず・・・物騒な先生じゃのう」

「先生は地雷火を大量生産するべきだともおっしゃってました」

「ほほう」

「すべての武士がそれを抱いて黒船に当たれば必ず勝てるということです」

「なんと・・・おそろしげな」

「神の風の陣と名前もつけられました」

「武士道とは死ぬこととみつけたり・・・ですな」

「そうです・・・残念なことに私は不死身ですので死ねませんが」

井上の淡々とした語り口に龍馬はつい酒を吹いてしまった。

「まっこと・・・井上さんはおもしろき男ぜよ」

「ところで・・・土佐ではどうですかな」

「なにがじゃろ」

「あきないのことですよ・・・坂本さんは実家が商売をやっていると聞きました」

「闇のあきないのことかの・・・」

「そうです・・・開国ともなれば・・・南蛮渡来の密貿易で潤ってきた藩は穏やかではいられませんかな」

「そうですのう・・・」

「薩摩、長州、そして土佐・・・このあたりは闇のあきないでなんとか体面を守ってきましたので・・・その命脈を奪われるとなれば黙ってはおられんのです」

「ふむ・・・攘夷、攘夷と叫ぶのはそのためじゃと・・・」

「なにしろ密貿易は蜜の味ですから」

龍馬は再び酒を吹いた。井上はすました顔で言葉を続ける。

「まあ・・・私たち若輩ものはそういう世の流れの中で右往左往するのもまた一興ですな・・・松陰先生のようにはるか未来を見る眼を持っているのも考えものですぞ・・・こうして藩の金で酒を飲み女を買って呑気に楽しむこともできない・・・」

井上がついだ酒を龍馬が飲み干した頃・・・土佐では騒動が持ち上がっていた。

密貿易にからんだ密書の流出である。

藩主・豊信の親戚である薩摩藩ではお家騒動から嘉永元年に密貿易が幕府に発覚する騒ぎとなり家老が自害するにいたっている。

土佐藩では旧藩主山内少将と当主の山内土佐守の関係は良好と言われていたが、いつの世にも派閥争いはなきにしもあらずである。そうした間隙をついて幕府隠密は密書を入手して土佐を脱したのである。

たちまち、土佐忍軍による追っ手が発した。

東海道を下る龍馬・聞多の膝栗毛(徒歩旅行)と隠密同士の追撃戦は東海道浜松宿で遭遇した。

浜松城の城下町を目指していた龍馬たちは黄昏の迫る街道筋に異様な殺気を感じた。

「こりゃ・・・忍びが結界を張っておるぜよ」

「ほほう・・・坂本くんは忍びの心得もあるのか」

知り合って数日。すっかり息投合した十代の若者二人はもはや無二の親友のようになっていた。面白おかしい道中を繰り広げてきたのである。

土佐から脱出した忍びは密書を胸に江戸に向かっている。

それを追うのは岩崎弥太郎に指揮された土佐おこぜ衆である。

そしてこの地で待ち伏せをかけるのは公儀隠密衆だった。

龍馬は明智流の秘儀を使う。

「明智流秘伝・嗅ぎ割り」

説明しよう。嗅ぎ割りはうかみ(斥候)の術の一つである。発達した臭覚により人馬の匂いや火縄の匂いなどを嗅ぎ分け、敵の伏兵などを嗅ぎ破る忍びの技である。しかし、龍馬の鼻はもっと聞くのだった。生まれつき、視力の弱い龍馬の強さの秘密の一端はそこにあった。

「これは・・・弥太郎と・・・土佐忍び衆・・・そして・・・ほほう・・・なぜか江戸の親分さんの匂いがするぜよ・・・するとあの者はお庭番か・・・こりゃ・・・土佐の忍びと江戸の忍びの一戦じゃき・・・」

「面白い・・・坂本くん加勢するぞ・・・」

すでに土佐忍びは囲まれたことに気がつき突破の陣を作っていた。龍馬と聞多は土佐軍が狙う丑寅の方角に外から攻め込んだ。

「鬼門抜けじゃ・・・」

岩崎弥太郎は突然の援軍に驚いた。

「なんじゃ・・・龍馬なぜ、ここに・・・」

「ここはわしが引き受けちゃるきに・・・勤めをはたせ・・・」

「こりゃ、ありがたいこっちゃ、地獄に仏じゃ」

弥太郎は大袈裟に龍馬を拝むと配下の下忍とともに、結界の外に逃げた目当ての忍びの追跡に移る。

急襲に驚いた公儀隠密軍は体制を立て直すと龍馬たちに殺到してきた。

「ふりかかる火の粉は払うぜよ・・・堪忍じゃ」

龍馬は抜刀した。忍び装束の公儀隠密の一人が一刀両断される。その血しぶきの向こうから伊賀十字手裏剣が殺到する。しかし、その場には龍馬はもういない。龍馬を囲もうと散開する忍びたちの一画に斬りこんでいる。

龍馬を狙って手裏剣を投げた忍びがのけぞって倒れる。

その喉元にはクナイ(棒手裏剣)がささっていた。

「ふふふ・・・井上源氏流手裏剣術をお眼にかける」

嘯いた井上はさらに二人目の忍者を倒している・・・その時・・・井上の足元から黒い影が立ち上がった。

「伊賀陽炎の術」

一言つぶやいたのは服部半蔵である。その時には井上聞多の心臓は背後から貫かれている。

聞多が草むらに倒れ付すと半蔵は忍び笛を吹いた。

引き上げの合図である。

街道沿いの草地から人の気配がたちまち消え失せる。

龍馬は倒れた聞多に駆け寄った。

「こりゃ・・・いかんぜよ」

周囲は心の臓から噴出した血の匂いに満ちている。すでに聞多は心肺が停止していた。

「ああ・・・えらいことじゃ」

・・・と、その時。ぴくりと聞多の指先が動く。

血の気を失った聞多の顔が見る見る紅潮する。

「ぬはっ」

聞多は息を吹き返した。

「こりゃ・・・たまげたぜよ」

「ふふふ・・・言っただろう・・・私は不死身なのだ・・・しかし・・・大分、血が抜けたので・・・こりゃ、浜松で早く一杯やらないと身が持たぬわ・・・さあ、急がないと日がくれる・・・綺麗どころが残り物になってしまうわいな」

龍馬は吹いた。

関連するキッドのブログ『第6話のレビュー

月曜日に見る予定のテレビ『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命2nd Season』(フジテレビ)『ハンチョウ』(TBSテレビ)

ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。

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2010年2月13日 (土)

お呪いのメッセージが届いています(亀梨和也)地獄のバレンタイン七変化(大政絢)

おそらく、スタッフの意識の中には「のだめカンタービレ」の成功があると思う。

いや・・・あくまでそう思わざるを得ない。

舞台では日本人がシェイクスピアを演じることがあるわけで・・・そういうノリは「のだめ」では竹中直人のミルヒーとか、変な係長のエリーゼとかで表現される。

だから、碧眼の白人女性のマリアをサトエリが演じたっていいわけだが・・・その外人への変身のさせ方がものすごく中途半端なんだな。

「白夜行」とか「流星の絆」の演出家だが、「冗談じゃない」とか「スマイル」の演出家でもある。

脚本次第で作品の出来がこれほど落差を生む人も珍しい。

今回は・・・。

で、『ヤマトナデシコ七変化・第5回』(TBSテレビ100212PM10~)原作・はやかわともこ、脚本・篠崎絵里子、演出・石井康晴を見た。古代ローマにはパオーンの祭りがあった。パオーンは音楽の神であり、ゼウスの息子アポロンのライバルである。アポロンは理性的で荘厳な音楽を奏でたが、パオーンは人々を熱狂させる下世話で猥雑な音楽を吹いた。アポロンは人々が自分の正しい演奏を聞かず、パオーンの間違った演奏に熱狂するのを見て暗い怒りを覚えた。そしてパオーンの耳をロバの耳に変えてしまったのである。

パオーンの悲劇を知った双子の弟、エロースはキューピッドの七つ矢を取り出した。そして黄金の矢でアポロンを射ち、鉛の矢でダフネを射つ。黄金の矢は愛を生じ、鉛の矢は嫌悪を生じさせる。アポロンはたちまち、ダフネに恋をし、ダフネはアポロンを忌み嫌ったのである。

アポロン「私のものになってくれ」

ダフネ「あなたのものになるくらいなら月桂樹になるわ」

こうしてアポロンは手痛い失恋を味わうことになる。

そうした神々の争いとは別に人々はパオーンの音楽を愛し、豊作を祈る祭りではパオーンの音楽で歌い踊ったのだ。

パオーンの祭りでは相手のいない娘たちのためにお見合い入れ札のイベントがあった。娘たちは自分の名前を書いた札を壺に入れ、相手のいない男たちはその壺から札を引き運命のカップルを作ったのである。パオーンは子作りを応援する神でもあったのだ。

やがて、ローマの神々とイエス・キリストを信仰する新興宗教が対決するときがやってきた。

その頃、ローマ帝国は軍人魂を鍛錬するために結婚禁止という悪法を作り出した。そのために結婚式は禁止された。人々は神々の許可もなくひっそりと結婚した。

そこに登場するのがバレンタインという闇の神父である。

彼は布教のために闇で結婚式を執り行ったのである。

そのことはたちどころにローマの執政官の知るところとなり、バレンタインは違法な結婚を司った罪で逮捕されてしまう。

その日はパオーンの祭りの前夜祭でバレンタインはマリアの札を引いたところだった。

しかし、彼は牢獄行きとなり、マリアの望みは絶たれた。

マリアは盲目の娘だった。彼女は牢の番人の娘だったので父親に頼み、密かにバレンタイン神父と面会した。

バレンタイン「すまない・・・しかし、私にはもはや君に贈るものはない。ただ、イエスはこう仰られた・・・信じるものは救われると」

マリア「せめて・・・愛しいあなたのお顔を一目見てみたい」

その言葉をロバの耳で聞いていたパオーンはアポロンに面会した。

パオーン「この耳のことはよいとしてあなたの医術を憐れな娘のために役立ててはくれないか」

アポロンは相手を失う恋の痛手を知っていたので娘の瞳を癒しの杖で撫でた。

翌日、即決で十字架に掛けられバレンタインは見物客の中にマリアを見つけた。

最後の瞬間、二人は目と目で通じ合ったのだ。

それ以来・・・聖バレンタインの殉教の日は恋人たちの聖なる日となったのである。

血塗られたバレンタイデー・・・とスナコ(大政)は恐怖と戦慄を堪能するのであった。

「お葬式用の菊の胸章作りの内職でお金をためてひろしくんのために血のようにどろどろしたチョコレートでケーキを作って奉げます・・・聖なるドクロはホワイトチョコレート、血まみれの生首のようなイチゴも飾ります。すべては愛の呪いのためなのです」

美しい下宿人のためにチョコを奉げたいと願う乙女たちは中原家のお屋敷を十重二十重に囲んでいた。

バレンタインデー・・・それは命の危険を感じるので美しい男の子は外出禁止の日なのである。

性的虐待の過去を持つためにスナコに対して芽生えた恋心をもてあました恭平(亀梨)は女装して喫茶「迷宮入り」のマスター(大杉漣)に恋愛相談をするのだった。

その他大勢の求愛には耳を貸さない美しい男の子たちだったが特別な人は別である。

武長(内博貴)はいつの間にか交際中の乃依(神戸蘭子)のおはぎのようなチョコの到着に喜び、雪之丞(手越祐也)は遠距離恋愛中のまちこ(本仮屋ユイカ)のチョコが郵送されてくるのを心待ちにしていた。

そして蘭丸(宮尾俊太郎)は厳選された特別な人たちとの逢瀬を過密スケジュールでこなすのだった。

子供管理人のタケルは恭平が盗み食いした食材の不足分を埋めるために非常食の倉庫を探して・・・禁断の扉を開けてしまうのだった。

タケルの母・美音(高島礼子)の趣味でヨーロッパから直輸入されたお屋敷の地下室には1500年前のゴーストが封印されていたのである。

恋人に裏切られ絶命したゴースト(佐藤江梨子)は怨みを晴らすべく、スナコに憑依したのだった。

たちまち、女王様に変化するスナコ。

スナコの身を案じた美しい男の子たちはゴーストの命じるままに執事としてお世話をするのだった。

そして、恭平を選び叶えられなかった思いを叶えようとするが・・・ひろし(人体模型)に愛を奉げるスナコは内部からそれを妨害する。怒ったゴーストはひろしのために作りかけたスナコのケーキを破壊しようとする。

密かにスナコを想っている恭平は大切なケーキを体を張って守るのである。

怒り心頭に達したゴーストは超常能力で居合わせた雪之丞をふっとばす。

恭平は奥の手である「ブスナコの呪文」でスナコの潜在能力を解放する。

スナコはたちまち超スナコとなり、ゴーストを分離するのだった。

姿を見せたゴーストを優しく介抱する蘭丸。

「まるでキューティー・ハニー(劇場版)のような美しさだ・・・あなたと愛の一夜を過ごしたい・・・」

「ああ・・・これで成仏できる・・・」

愛を求めていたゴーストはたちまち幻となって消えるのだった。

蘭丸「そんなぁ・・・もう準備万端なのに・・・下半身が特に・・・」

雪之丞「ヨーロッパのゴーストなのに昇天しないなんて・・・」

武長「原始仏教をなめたらいかんぞ・・・キリスト教より古いんだから・・・成仏はありなのだ」

こうして・・・ひろし(人体模型)のための愛の呪いのチョコレートケーキは完成し、中原家にはつかのまの静寂が訪れたのだった。

関連するキッドのブログ『第4話のレビュー

天使テンメイ様のつぶやきレビュー。

Hcinhawaii0617 ごっこガーデン。マコチャンランド・秘密の地下工場。まこぐふふ・・・乙女たちの愛の祈りが金を生む季節がやってきたのしゅ~。今回は愛の呪いの特大チョコ・ケーキ販売中デス。サイズは四畳半、六畳、大広間用の三点です。今なら等身大じいやローソクサービス中です。じいやがドロドロと溶け出して不気味でしゅよ~。そしてお買い上げの方には抽選で愛の御奉仕ドールハウスが当たります。亀ちゃんとエリ姉ちゃんタイプとPちゃまとmariさんタイプの二種類がありましゅのでご応募の際は希望を書いてくだしゃい。なお、当選者の発表は発送を持って替えさせていただきましゅ~お気楽それって誰にも発送しないってことだよね。ルパンはどうしても栗貫→山田に脳内変換する手間があるんで純粋に楽しめないよね。旭山はライオンの赤ちゃんが死んでました・・・その他いろいろオマケあるよ~エリはうぅ~ん・・・mariはうぅ~ん・・・・

日曜日に見る予定のテレビ『龍馬伝』(NHK総合)『深・ケロロ軍曹』(テレビ東京)『堀北真希の特上カバチ!! 』(TBSテレビ)『トロイ』(テレビ朝日)

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2010年2月12日 (金)

今夜は帰ります・・・不毛っ(小雪)はあぁぁ・・・地帯っ(唐沢寿明)

意味は深く考えないでください。

ヒント。「だめだって言ってるでしょう・・・もうっ」「そんな~・・・どうしてもしたいのに」

・・・なぜ、ヒントを。

まあ、そういう日に限って、突然、アメリカから海部(梶原善)がニューヨークのメイド(吉行和子)同伴でやってくるなんてことは・・・よくありますな。ま、秘密の交際をしていると間なんて悪くなるものです。

そういう時、人は天から誰かが見ているような気分になりますが・・・気のせいですから。

快楽至上主義にとって良心の呵責や後ろ暗さは甘い媚薬のようなものなのでございます。

なぜなら、この世には神も仏もないのです。

もし、あったら悪魔もいることになり、それはこわいですから~。

で、『不毛地帯・第15話』(フジテレビ100211PM1025~)原作・山崎豊子、脚本・橋部敦子、演出・澤田鎌作を見た。昭和46年(1971年)、日本の総理大臣は佐藤栄作だった。前総理の池田勇人とは政敵だが、池田の病気退陣に伴い後継者指名を受け、昭和39年から続く長期政権を打ち立てていた。この年、自民党幹事長は田中角栄。田中はポスト佐藤の座を確保するために党内勢力の掌握を着々と進めていたのである。

ベトナム戦争の北爆を支持し、中華人民共和国の国際連合加盟に最後まで反対した良識派の佐藤首相は無知ゆえに踊らされた大衆の誹謗中傷やニクソン・ショックに耐えつつ、非核三原則という虚構の盾をかざして、沖縄返還を花道に翌年、総理の座を降りる。

そして、中国は台頭し、米ソ中という新たなる世界三国志の時代が幕をあける。三者の最前線となる朝鮮半島と日本列島は薄氷を踏む思いで冷戦を戦い抜くのである。

一方、国家の枠を越えた多国籍企業もまた独自の世界戦略を明確にしその巨大な姿を現し始めていた。

庶民にとって夢のようなビジネスを展開する壹岐(唐沢寿明)もさらに雲の上の世界からは一匹の無謀な虫のような存在である。

しかし、一寸の虫にも五分の魂があるのだ。

石油資源の確保を目指して、イランの猿なんとか油田の開発に参入しようと考えた壹岐は日本石油公社の貝塚総裁(段田安則)に協力を仰ぐ。しかし、貝塚は旧知の鮫島(遠藤憲一)に情報をもらし、鮫島は根回しによって東京商事30%、神尾専務(名高達男)の五菱商事30%、有田専務(大門正明)の五井物産30%、近畿商事10%という屈辱的な資本配分を押し付けてくる。

自分が主導権を握らなければ成すべきことが成せなくなる・・・と信じる壹岐は逆転の一打を放つべく策略をめぐらすのだった。

そのために壹岐が選んだのは石油開発に実績のある外資との提携だった。

巨大すぎず・・・小さすぎない。

壹岐の意を受けて部下の兵頭(竹野内豊)が選んだのはオリオン・オイル社だった。石油メジャー(国際石油資本)からははずれた独立精神に富んだ会社・・・という設定である。

半世紀に渡って石油を支配しつづけた石油メジャーに対し、資源ナショナリズムが叛旗を翻す直前。それが昭和40年代の後半である。

その熱い欲望の坩堝に壹岐は今や、手をいれようとしているのだった。

デ・・・黄夫人(天海祐希)のコネクションにより、オリオン・オイルとの提携の内諾をとりつけた壹岐は近畿商事内部の意見調整を開始する。

「100億が1000億になる」という話に相場師としての虫が騒ぐ大門社長(原田芳雄)はリスクを冒す腹を決める。

石油開発に連動する鉄鋼部門を統括する堂本専務(浅沼晋平)や予算調達に意欲的な武蔵財務本部長(中原丈雄)の説得に成功すると、期を見るに敏な角田本部長(篠井英介)は自ら壹岐の軍門に下るのだった。

壹岐に対する嫉妬から反対のための反対論を展開する里井副社長は最後まで反対する。

「日本石油公社を敵に回して外資と提携するなんて真珠湾攻撃のような真似をして・・・君は大日本帝国だけでなく、わが社も滅亡させる気かね」

「かって我が国は武力で石油を獲りに行ってしくじった・・・だからこそ今度は平和的に資源を確保するべきなのです」

「社長・・・」

「話は終ったようだ・・・里井くん・・・君は健康問題もあるし・・・のんびりとトラクターでも作ってみんか・・・」

「ええっ」

こうして次期社長候補と言われた里井は社外に追放されたのだった。

「わが手で日本の石油資源の確保を成し遂げる」・・・信念に捉われた壱岐はついに目的達成のためには手段を選ばない冷酷非情な裏の顔をのぞかせ始めるのである。

そして、日本石油公社の妨害に対応するために与党自由党の田淵幹事長に多額の政治献金を行うのだった。

「日本石油公社を敵にするとは・・・君は日本を裏切るのか」

「それは誤解です・・・国際入札ともなれば日本石油公社が必ず落札に成功するとは限りません・・・我々の入札はあくまで安全弁とお考えください。そして幹事長にご指導を賜りたいのです」

「ほほう・・・よっしゃよっしゃ」

こうして・・・鮫島と壱岐のどちらが偉いおじいちゃんか競争は火花を散らして人々を巻き込んでいく。

当然、鮫島は「壱岐のおじいちゃんはダメですね~、日本政府の主導に逆らうなんて~、遺憾って新聞に書かれちゃいましたよ~」と孫に凄んでみせるのだった。

その頃、壱岐は遠い異国の地で眠る戦友たちを思い・・・日本海の彼方を見つめるのだった。

関連するキッドのブログ『第14話のレビュー

土曜日に見る予定のテレビ『バンクーバー冬季五輪開会式』(NHK総合)『北川景子のハンサム・スーツ』(フジテレビ)

ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。

皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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2010年2月11日 (木)

もしもあの日あなたに逢わなければこの私はどんな女の子になっていたかしら(永作博美)宿無し女?(菅野美穂)

休学して留年して早紀(菅野)と同級生になった旧姓・蓮見璃子は2才サバを読み、それから15年後には嘘のスペシャリストとなっていた。

盗人猛々しいと言うが、罪に人間心理を持ち込めば、法は限りなく曖昧になる。

「悪いと知りつつ罪を犯すこと」は故意犯である。

通称・大きなママこと長部の母(高林由紀子)が「最初から長部家の財産目当てで息子を誘惑した泥棒猫」を「確信犯」と呼ぶのは正確ではない・・・と早紀は言うのだが、その時点で早紀も友達の璃子を「泥棒猫」だと確信しているのである。

それでは璃子は「確信犯」ではないのだろうか。キッドはそんなことはないと思う。

璃子は「人間には幸せになる権利がある。私は人間だ。だから私は幸せになるのが当然だ」という宗教の信者なのである。そして璃子にとって「人間とは自分ただ一人」なのである。その信念に従って「夫は一生璃子に贅沢をさせ、夫の母親は家事雑用を璃子のためにご奉仕し、お腹を傷めた子供は生涯おしゃれなアクセサリーであるべきだ」と璃子は信仰する。そして信念に基づき、わが子を誘拐したのだから立派な確信犯と言えるだろう。

確信犯とは常識の通じない理性的な狂人のことなのであるから。

水曜日のダンスは・・・。

「相棒」15.7%↗17.2%↘17.1%↗17.5%↗17.8%

「検事」*9.4%↘*5.6%↗*6.0%↗*6.4%↘*6.0%

「曲女」15.4%↘11.0%↗13.7%↘13.3%↘13.1%

で、『曲げられない女・第5回』(日本テレビ100210PM10~)脚本・遊川和彦、演出・南雲聖一を見た。十代の頃から年齢詐称をし、自分を偽り続けた璃子は虚構と現実の境界線の見分けがつかなくなり、育児放棄をして一度も食事を作ってやらなかった子供が自分を愛していると信じることができたし、小児喘息の息子を一度も心配したことのない自分を忘れることができた。子供たちが璃子にとってお飾りであるように璃子も子供たちのお飾りの母親であったとしても。

幼くして母親を失い、母の味を知らずに育った藍田警視正(谷原章介)は今は亡き早紀の母親(朝加真由美)に理想の母親像を視た。その忠実な人格転写である早紀は藍田に理想の女性像を想起させるのだった。藍田は36才にして初めて恋に落ちた。

九年間、心ここにあらずの女・早紀に寄り添い、愛を奉げてきた坂本弁護士(塚本高史)の心はついに折れ、もう少し分りやすい女である秘書の横谷(能世あんな)との普通の男女交際を始める。坂本弁護士はよく頑張ったと思う。

死後もなお、支配を続ける母の遺言に従って、「友達を作ること」が至上命題になった早紀は司法試験の願書提出をうっかり忘れるほど友達作りに熱中するのだった。

わかるかしら?

私は、私は知ってか知らずか

知りもせず・・・知ってるの

凄いのよ・・・凄いはずなの

私はもう乱されて

満たされて

はみだしそう

もうたまらない気分なのよ

全部、あなたのせいなのよ

勇気を出して初めての告白をするために酒の力を借りた藍田弁護士はものすごく酒臭かったので熱烈キスを早紀に強烈ビンタで拒絶されるのだった。餃子を食べるときは恋人と一緒に食べましょう。

早紀の怪力無双に失神しかけた藍田の元に夫の浮気を責めたら逆に家を追放された璃子が居場所を求めてやってくる。

恋人がいたことはあるが友達がいたことがない早紀にとって、友達候補の璃子は渡りに船なのである。

二人の利害はすれ違いつつ一致する。

早紀にとって藍田も友達候補だが、璃子は自分の優位性を保持するために「男女の間に友情関係は成立しない」と対立候補をつぶしにかかるのだった。

璃子にとって玩具だった世界は今や怪物となって襲い掛かっている。璃子も必死なのだ。

今夜はドント・ストップなのである。自分が満たされるまではやめられないのだ。そして璃子の虚栄心は底なしなのだ。

璃子「あの人はあなたを愛しているの。私は嘘の女王様だから分る。あの人は嘘をついていない。私でなくてあなたを愛しているなんて馬鹿だと思うけど・・・それは本当のことなのよ。だから、あなたとあの人は友達にはなれないの」

早紀にとってそれは死刑宣告に限りなく近いアドバイスだった。藍田と友達になれないのは早紀にとって死ぬより辛いことなのだ。

しかも・・・璃子はあくまで友達候補であり、まだ友達だとは言ってくれないのである。

「子供たちの自立心を促すためにあえてお泊りをする」という璃子にベッドを占領され、受験勉強をしながら机に向かう早紀だった。

璃子は幻想の夫の自分に対する執着心を信じて夫からの連絡を待つが・・・もちろんそんなものは着信しないのだった。

翌朝、なかしま弁護士事務所に早紀が仕事に出かけると、璃子は自分の手駒であると信じている早紀の元・恋人・坂本弁護士を訪ねる。

璃子「お金と子供を自分のものにしたいの・・・なんとかしてよ」

坂本「お子さんの気持ちはどうなんですか?」

璃子「私を助けたら・・・早紀が惚れ直すかもよ・・・」

坂本は早紀に未練がないわけではない。しかし、早紀は「恋愛より友情を優先する」という頭のネジがこりゃまたバッチリ狂ってる女なのである。

早紀が職を失った事件を振り返ってみよう。

依頼人は坂本の友人だった。早紀は恋人の友人のために全てを優先したのである。それを無償の愛と感じた坂本だったが、早紀が坂本よりも坂本の友人を優先させた時、坂本はわかってしまったのだ。早紀がおそろしく調子がはずれた女であることが。

もちろん・・・そんな女でも好きなことは好きなのだが、常識的な人間である坂本の許容量ははるかにオーバーしているのである。

それでも・・・人間としてできるだけのことをしてやりたいと・・・つい思ってしまうのが坂本の常識人としての限界なのである。

そのころ中島事務所ではパソコンの印刷コマンドに仕事を奪われて青息吐息の町の印刷屋と昔なじみの電気屋がチラシの印刷枚数の発注ミスでもめていた。

電気屋「だから500枚だって言ってるだろう」

印刷屋「いいや・・・俺は5000枚だってこの耳で聞いた」

なかしま(平泉成)「よし、わかった・・・残りの4500枚の料金はオレが払うよ。チラシの裏にウチの事務所の広告をのせる。・・・早紀さん、今はパソコンで簡単にできるでしょ?」

早紀「はい、インク代がかかりますけど」

印刷屋「・・・」

なかしま「そういうことで、もうケンカはやめなさい。友達ってのはどんな時でも友達じゃないといかんじゃないか」

早紀「そうなんですかっ」

早紀は心の友達作成のための道メモにそのことを記述するのだった。

そこへチョコレートを持って現れる藍田。

「最近は男から女へ贈ってもいいっていうから・・・」

・・・と愛の告白をする藍田だったが・・・早紀が想起したのは・・・。

「しまった~、願書出すの忘れてた」

バレンタインデーは早紀にとって願書提出の期限を示す暗号だった。このことは坂本が九年間チョコをもらっていない可能性を暗示するのである。坂本弁護士は本当によく耐えたと思う。

まあ、大人になれば、バレンタインデー、確定申告、ホワイトデーという面倒くさい季節の到来なのである。

だが、今や、父親譲りの司法試験合格と母親の遺志である友達作りが早紀を二重に拘束する。

最後の友達候補である璃子からの「お助けコール」は早紀の命綱なのである。

早紀が自宅に戻ると居候は三人になっていた。璃子が長部家の長男と次男を誘拐してきたのだった。

早紀「子供をだまして連れてきたんですか」

璃子「だってしょうがないじゃない」

子供たち「大きなママ(璃子の姑)のところへ帰りたいよ~」

藍田「ブブブブ、ブブブブ、ブブブブ・・・携帯のバイブ音でちゅよ~・・・おっとーっ、受けた~、泣く子を笑わせたー」

そこへやってくる坂本弁護士。璃子に言われた通りに璃子の離婚訴訟を引き受けようとするが・・・早紀は・・・。

璃子「子供たちが幸せになることを考えるのも弁護士の仕事だと思うので・・・子供たちに嘘は通用しませんから」

早紀は長部家を訪れ、璃子の真実の姿・・・妻としても母親としてもまるで失格を知る。

その事実を友達として璃子につきつける早紀。

しかし、璃子は「友達でもないのに勝手なこと言わないで」と傍若無人をぶちかますのだった。

死刑宣告を受けた早紀の思考は停止するのだった。

追い詰められた璃子はついに全てから逃げ出して駈け去るのだった。

関係のない人の家にわが子を置き去りである。

仕方なく・・・子供たちに食事を与え、礼儀を教え、六法全書で寝かしつける早紀。

そんな早紀の姿に理想の母親を見る藍田はますます早紀に惚れたのだった。

一方、子供たちは「(小さい)ママは一度も料理を作ったことがない」

「(小さい)ママは子供の好き嫌いもしらない」

「(小さい)ママは嘘つきである」

「(小さい)ママは子供の持病も知らない」

と璃子のダメ人間ぶりを告発するのだった。

夜中に喘息の発作で倒れた長男は病院へ走る早紀の腕の中で・・・。

「(大きい)ママ。(大きい)ママ」と喘ぐのである。

その頃、(小さい)ママは夜の街を徘徊しています。

翌朝、警察に捜索願いを出した長部一族を説得しそこない、藍田は一族郎党を引き連れて早紀の部屋へやってくる。

藍田、坂本、早紀、子供たちの四面楚歌に璃子はついに自暴自棄になるのだった。

「なによ・・・なによ・・・私が自由気ままに幸せになろうとしているのに何故みんな意地悪をするの・・・私なんてどうせ妻失格、母親失格、人間失格だわよ・・・いなくていい人間なんだわ」

その言語道断な無軌道ぶりについに早紀の堪忍袋の尾が切れるのだった。

そしてこの間のビンタをお返しするのである。もらったものは返すのが礼儀だからだ。

「何言ってるの・・・あなたは私の最後の希望、あなたが死んだら誰が私の友達になってくれると言うの・・・私はあなたがいなくていいなんて思わない・・・だってあなたは私の友達だと私は思うから・・・それってダメかな・・・」

「私・・・15年ぶりにあなたに会った時、夫の浮気を知って我を失ってた・・・もしあなたに逢わなければどうなっていたか分らない・・・平凡だけど誰かを愛し普通の暮らししてたでしょうか。だからお願い、友達になってよ」

「ともだちに・・・」

「ともだちに・・・」

璃子は偽りの笑顔を浮かべ、子供たちの意志を尊重して、長部家に子供を引き渡すのだった。外交的に言うと、璃子が北朝鮮、早紀が中国、長部家が日本である。

坂本弁護士はとんでもない人々にこれ以上関り続けるのは無理だと改めて早紀から身を引く決意を固めるのだった。

藍田警視正は大人の男として友達から始めることを選択する。惚れた弱みである。

友達を一人確保した早紀は願書提出もギリギリセーフなのである。

早紀は漸く、受験勉強の追い込みにかかる。

やったよ やった

ともだちできた

自分がとてもほこらしい

これが愛の力

ビーム・サーベルの源泉よ

ともだちがいるなんて

なんて素敵なことでしょう

体が芯から熱くなって

トロトロに溶け出しそう

火照る 火照る ともだちのいるこの体

ともだちに尽くすわ

どんなわがままにも応じる覚悟があるの

ともだちをハッピーにするわ

ともだちが満足するまで

この身を捧げるわ

だってともだちはかわいいの

とてもとてもかわいいの

しかし、早紀はふと思う・・・恋人になりたがる友達は困るわね。

なんだか胸が痛くなるの・・・胸が・・・あれ・・・実質的に胸が苦しいかな・・・。

飼い主のピンチにノーフォークテリアのアトムは驚愕するのだった。

メシ・・・俺の・・・明日のメシ・・・。

関連するキッドのブログ『第4話のレビュー

金曜日に見る予定のテレビ『ルパン三世the Last Job』(日本テレビ)『ヤマトナデシコ七変化』(TBSテレビ)『戸田恵梨香の奇跡の動物園2010』(フジテレビ)一難去ってまた一難ものすごいサンドイッチ第2弾キターッ!

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皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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2010年2月10日 (水)

極悪にいい気分(杏)はっきりしない男(貫地谷しほり)

英語でいじめっこは「a bully」である。そして「feel bully」はいい気分!である。

人を苛めることは気分のいいことだ・・・といえば眉をひそめる人は多いだろう。

しかし、人を率いるリーダーにとってボリィであることは重要な要素である。

もちろん、「いじめっこ」気質だけではリーダーとして最適とは言えない。

昔は「ガキ大将」というものが子供の世界にいて・・・少なくともそこには同時に「いじめっこ」が存在した。

いじめられっこにとって敵であれば「いじめっこ」・・・そして味方であれば「ガキ大将」なのである。

つまり、いじめっこに隷属することでいじめられなくなるのは安全保障という外交政策だ。

子分になりたくない、いじめられたくない者はいじめっこになるしかない。

そんな世界はいやだと言う人は「イマジン」を歌うといいだろう。

想像してごらん

いじめのない世界

だれもがお互いに優しくし

困ったときには助け合う

そんな世界を

そういう世界は空想の中だけに存在するのだよ・・・

それは「悪魔の唄」じゃないのか・・・。

火曜日のドラマ対決は①「泣かないと決めた日」↗10.0% ②「まっすぐな男」↗*9.4%

で、『泣かないと決めた日・第3回』(フジテレビ100209PM9~)脚本・渡辺千穂、演出・城宝秀則を見た。たとえば捕虜の虐待が問題になることがある。戦場ではお互いに殺し合い、血肉を撒き散らしあっているのに敵を捕縛して拷問することが何故悪になるのか・・・理解できないものは多いだろう。しかし、それは野党の時は「秘書の犯罪は政治家の犯罪と同じ」と言っていたものが与党になれば「秘書と政治家は別人」と断言して憚らないのと同じなのである。

リストラ問題も会社が生き残るために一部の構成員を殺して何が悪いということだ。

それを否定するものは誰も殺さずに会社も生き残る方法を示す必要がある。

しかし、一つの会社が生き残るとき、別の会社が死ぬことはよくある話なのである。

それを否定するものは全部の会社が生き残る方法を示す必要がある。

こうして、地球征服をたくらむ悪の秘密結社は誕生するのだ。

そんな馬鹿なという人は、中華人民共和国という巨大な悪の組織を目の前にして互恵関係などという寝言を信じるタイプなのである。

まもなく、中国人でなければ人でなしという時代が始まろうとしているのにだ。

そういう現実とは無縁の巨大商社・葵井商事の新人OL・角田美樹(榮倉奈々)は自分がイタリア食品部門・食品チームという名の毒蛇の巣に足を踏み入れたことに戸惑いを感じていた。

その毒蛇たちはザ・ボリィズという悪意撒き散らし集団を結成していた。

同じイタリア食品部門・ワインチームが天使の集団であるのに対し、衝立一枚で別世界なのである。

ただし、ワインチームには最悪な毒蛇・立花万里香(杏)が紛れ込んでいる。

この物語は毒蛇の巣の天使・美樹と天使の園の毒蛇・万里香の寓話である。

ザ・ボリィズの名目上のリーダーはマムシの有希子(木村佳乃)である。酒毒に犯されたために正常な判断力を失い、幻想と現実の区別がつかない狂人である。しかし、本人はまったく自覚がなく、被害妄想的な態度で周囲を困惑させている。時々、正気に戻ることがあり、それは上司である梅沢部長(段田安則)に教育的指導を受けた直後であることが多い。その時だけ有希子はあたかも実質的リーダーであるようにふるまう。

美樹の教育係であるドワーフマダー早苗(町田マリー)は最小のクサリヘビである。自分の失敗は部下になすりつけ、部下の手柄は横取りするという抜け目のないタイプ。

ホンハブの千秋(片瀬那奈)は獰猛で上昇志向が強いが、自分には羽根がないことに気がつき、悶々としている。趣味は万引きである。天がヘビに羽根を与えなかったことを怨んでいるからだ。美樹に羽根があることに気がつき憧れるが当然妬んでいる。

ガラガラヘビの杏子(有坂来瞳)は派遣社員である。正社員に虐げられた怨みは最も弱い美樹に向けられる。弱いヘビほどガラガラ言うのである。

ブラックマンバの琴美(紺野まひる)は毒蛇一家の主婦である。仕事と主婦業の両立にストレスを感じ、その上、夫の毒蛇に噛まれているらしい。

その他に毒百足の西島(五十嵐隼士)と毒蜘蛛田沢(長谷川純)である。

田沢は複眼でいたるところに盗撮用の監視カメラを仕掛けているのである。おそらくヘビに食われないための防衛と趣味を兼ねているのだろう。

しかし、もっとも恐ろしい毒蛇がワインチームのキングコブラ万里香であることは間違いない。

万里香は美樹の恋人である仲原(要潤)に横恋慕し、仲原を手に入れようと巣を仲原のマンションの向いに引っ越し、美樹を抹殺するために殺人を含むあらゆる犯罪行為を平然と行うのだった。

今回、万里香は美樹を装い、毒蛇たちの悪口を書き込んだブログを立ち上げる。そんなブログを瞬時に検索できたり、匿名の著者が美樹であると決め付けたり、どれだけメディア・リテラシーがないのかと誰もが思うと考えるが、あくまで毒蛇たちのすることなのだ。

人間のような知性はないと考えてください。

美樹は千秋の万引き現場を目撃、それを見逃すことを約束するが・・・それは天使としてはあるまじき振る舞いであることは言うまでもない。

しかし、千秋がほれ込んだオリーブ・オイルに美樹が関心を持ったことで、千秋は「天使を噛んではいけない」という不文律を思い出しかける。

二人は協力して高額商品の売り込みに成功するのである。

万里香にとっては我慢のできない展開であり、ブログで千秋の犯罪を告発。さらに美樹に窃盗の濡れ衣を着せるのだった。

一方、社内では人事めぐる派閥闘争が激化。仲原は自覚のないままにその陰謀の駒として利用されてしまう。

そのため、周囲から退職を迫られた美樹のピンチに駆けつけることができないのである。

少し智恵遅れの天使・美樹はこのままでは毒蛇の巣から追放されてしまうのだ。

・・・その方がいいかもしれないけれどもーっ。でもせめてボーナス出るまではがんばるといいと思う。

関連するキッドのブログ『先週の火曜日のレビュー

で、『まっすぐな男・第5話』(フジテレビ100209PM10~)脚本・尾崎将也、演出・三宅喜重を見た。とにかくまっすぐな男はもういないのである。ヤクザな土建屋に勤める松嶋(佐藤隆太)は地味な雑貨屋店員・佳乃(貫地谷しほり)を抱きしめたり水族館デートに誘ったりするが、不幸な生い立ちを持つ小悪魔なフリーター・鳴海(深田恭子)もちょっといいなと思っている。

今回の鳴海のバイトは老朽化したマンションの立ち退き妨害のための不法占拠である。

松嶋が再開発に関る物件だったために松嶋はちょっと困るのだった。

上司は実力行使をするというが・・・松嶋は執行猶予を願い出る。

そこで松嶋はまっすぐにふたまたをかけるのであるが、鳴海と佳乃はまっすぐに遭遇してしまうのである。

松嶋はまっすぐにうろたえてまっすぐにごまかすのだった。

もうどこがまっすぐなのかわからにゃ~い。

たまたま、七年ぶりに失踪していたマンションの所有者(岡本信人)が飛び降り自殺をするために現れて騒動となる。

松嶋はちょっともったいぶってからまっすぐに人命救助をする。

仕方なく、なんとなく協力する佳乃と鳴海だった。

まっすぐになんだかなぁと思います。

矢部(渡部篤郎)は鳴海にAV女優やヤクザの愛人をさせたあげく風俗に売り飛ばしたらしい。そのために鳴海は父親の判らぬ子供を妊娠しているのだ・・・それはたぶんまっすぐにミスリードされすぎだと思うぞ。

悲しい過去を持つ深キョンはかわいいけどね~。もうただそれだけだよね~。

木曜日に見る予定のテレビ『とめはねっ!』『グインサーガ』(NHK総合)『853』『エンゼルバンク』『7万人探偵ニトベ』(テレビ朝日)『不毛地帯』(フジテレビ)

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2010年2月 9日 (火)

その場に留まるために全力で走り続けるコードブルー(山下智久)なぐさめも涙もぬくもりもすべてホメオスタシスのために(比嘉愛未)

1st Season「第7話」で白石(新垣結衣)がニューハーフのメリージェーン洋子(古本新乃輔)と出逢った時、藍沢(山下)はフライトナース冴島(比嘉)とALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の田沢(平山広行)のただならぬ関係を知る。

冴島は「本当は医者になりたかった自分」と「不治の病の恋人との交際に疲れた自分」を抱えながらフライトナースという職務に忠実であろうとしていた。

藍沢も「認知症の祖母」と「外科医として優秀でありたい自分」との相克に苦しんでいた。

冴島が一度は恋人よりも仕事を優先させた時、その選択に苦しむ冴島を慰めたのは藍沢である。

しかし、藍沢は「たったひとりの家族を守ること」と「外科医としての自己研鑽」を両立させ、やがて冴島も一度は捨てた恋人の元へ戻っていった。

その朧な成り行きが2nd Seasonでは精密に物語られていく。二人が医者を志す高校生と医者の卵である大学生として出会い、教え子と家庭教師となり、医者と看護師の卵となり、患者とフライトナースになった。その辛い運命をすべて知った藍沢であることを考えると・・・恋人の危篤にフライトナースとして出動する冴島にあえて無線で田沢の死を伝えることに意味がある。

「お前の気持ちは痛いほどよく分っている」

藍沢はそう伝えずにはいられなかったのである。なぜなら藍沢と冴島の心は体以上に通い合っているからである。

一方、冴島の心身を案ずる三井(りょう)は田所(児玉清)に「冴島の休暇」を進言するが、田所は「こういう時こそ彼女にとって患者が必要なのです・・・あなたもそうだったでしょう?」と応答する。

ドラマ上では三井の経験した医療裁判について言及したようにも見えるが・・・この場合は愛するものの死がかって三井の身の上にもあったようにも受け取れる。

キッドの妄想における三井と橘(椎名桔平)の子供は死んでいる説の補強材料である。

わが子を失った三井が仕事に没頭した過去を田所は知っていると考えた方がすっきりするのである。

・・・あくまで妄想です。

一言付け加えると2nd Seasonから見はじめた人は1st Seasonを見ると隠れていた過去を知る喜びを味わうことができます。これがシーズンものの醍醐味でございます。

本題に入る前に恒例の週末の視聴率チェック。「宿命」↘*5.3%(ポニョめぇぇぇぇ)、「ヤマトナデシコ七変化」↘*5.2%(魚の子めぇぇぇぇぇぇ)、「ポニョ」29.8%(泡と消えない人魚姫なんてぇぇぇぇぇ)、「剣客商売」14.0%(おしの・・・星野真里)、「サラ金2」↘*8.6%(ポニョ・・・無関係~)「咲くやこの花」↘*6.9%(こいはうじうじ)、「ブラマン2」↗*8.3%(あげた~)、「左目探偵」↗*8.2%(がんばった~)、「明日はない」↗*7.5%(お前もか~)、「フラガール」*9.5%(なんどめだ~)、「つばさ111号」17.7%(森本レオの勝利)、「龍馬伝」↘21.2%(三馬鹿兄弟めぇぇぇぇ)、「特上カバチ」↗10.8%(三馬鹿兄弟ありがとう~)・・・ついでに「ハンチョウ2」↘11.5%、「コードブルー2」↗16.5%・・・以上。

で、『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命 2nd Season・第5回』(フジテレビ100208PM9~)脚本・林宏司、演出・西浦正記を見た。これまでのコード・ブルー担当は冴島である。冴島はフェロー・ドクターたちを初期において激しく鍛えぬいたものすごく仕事のできるフライトナースだった。その心には「医者になりたかったがなれなかった」怨念も燻っており、先行系である海外ドラマ「ER緊急救命室」におけるアビー・ロックハート(モーラ・ティアニー)の香りがすることは言うまでもない。数シーズン後にはドクターになっている可能性もあるのである。とにかく、初期において白石も緋山(戸田恵梨香)も冴島には散々苛められているのである。まさに冴島はドクターヘリにおける鬼軍曹なのだ・・・それは違うと思うぞ。

人間は努力する生き物だ。

それは不可能を可能にするために

赤の女王の命じるままに働くからである。

赤の女王はこう命令する。

「生き残りたければ残るな」と。

そしてどんな人間も努力の果てに・・・生き残ることはない。

残されたものは努力の虚しさを知りつつ

赤の女王に従うほかはないのである。

今を生き残るために。

シートをかけられたドクターヘリ。夜間飛行機能を持たないマシンの休息の時。

しかし、ドクターたちは一人の患者の終焉の時が近いことを知り・・・病棟に集う。その患者は特別な患者。大切な仲間の恋人なのだ。

赤の女王はルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」のキャラクターで子供相手の理不尽さにかけては白の女王といい勝負です。

その名言が「留まりたければ走り続けよ」で、この言葉によってルームランナーあるいはランニング・マシンが生れました。その上で走らないとどうなるかは今では多くの人間が知っています。

しかし、いかにも矛盾した表現が生物の戦略では日常的です。「働かざるもの食うべからず」と言うことです。人間は恒常性(ホメオスタシス)を目指す動物です。体温を一定に保とうとし、血中酸素濃度を一定に保とうとし、呼吸数を一定に保とうとし、心拍数を一定に保とうとする。しかし、食うためには時にはケンタッキー・フライド・チキンに走らなければなりません。閉店間際だからです。そうなれば心拍数はあがり、過呼吸になり、血中酸素濃度は変転し、体温は上がり、眩暈がします。

走り続けるためには留まる必要があるのです。

人類は雌雄によって繁殖しますが、そのために遺伝子の多様性が生れます。環境の変化に対応するために遺伝子は多様であることが求められるのです。留まるためには走り続ける必要があるのです。

その多様性ゆえに田沢は遺伝性疾患の疑いのある現代医学では不治の病ALSを発症します。留まるために走り続けた結果留まることができない。それは世界ではごくありふれた出来事。しかし、田沢にとっては致命的な事態なのです。

田沢の筋肉は萎縮して、筋力は低下。自発的な呼吸もままならない。そのために呼吸不全が起こり、血中の酸素濃度SpO2は低下。二酸化炭素濃度が上昇し、内臓はダメージを受けて機能障害を来す。いわゆる窒息死が進行中なのです。

そのために人工呼吸器をつけて延命することも可能ですが、回復は望めない状態なので田沢は処置を拒否する書類にサインしています。最後に力をふりしぼって書かれた文字。もはやペンを握ることができないその大きな手を冴島は小さな手で抱く。最後のぬくもりを感じるために。

田沢「・・・SpO2(対基準値)・・・いくつに・・・なった・・・」

冴島「・・・89%よ・・・」

田沢「ふ・・・そろそろ・・・だな・・・」

冴島「・・・個室に移すわ・・・」

臨終の時を迎えるために田沢は個室ルーム・ナンバー3-Dに移送された。

出勤してきた緋山はいつもの場所に田沢がいないことを知り、その時が近付いたことを知る。ロッカー・ルーム前で藤川(浅利陽介)は緋山にその部屋の番号を尋ねる。

緋山「3-Dよ」

藍沢・白石が担当する患者でもある田沢(34)は死を迎えるために1月17日個室のベッドに移った。田沢を看護し続けた冴島、指導医の橘、そして四人のフェロー・ドクターはその部屋の準備が整うのを見守った。そこは医者にとって辛い儀式の場となるのだ。

白石は電話で田沢の両親に急を告げる。急を知った田沢の友人たちは夜更けの病院に続々と駆けつける。友が生きている時に留まるためには走らなければならないのだ。

田沢が若い医師である以上・・・その友人たちもまた医師であるものがほとんどである。

残された時が少ないことは常識として知っている。

その時、急患が搬送されてくる。

ぬいぐるみを抱いた少女は泥だらけで傷だらけだった。

1st Season・第8話に登場する少女・結菜(大作空)は夏祭りで一家全員が負傷入院して賑やかに騒ぎ家族をもたない藍沢に家族の味を知らしめた。

しかし、今回の幼い少女・未来(杉山優奈)は両親を持たない養護施設の孤独な娘だった。

もちろん藍沢は一目でその患者の孤独を見抜くのだった。

貧しい予算の中での養護施設清風園の小旅行。バスの中ではしゃいだ孤児たちは未来(7)の唯一の肉親であるぬいぐるみのジョン(4)を車外に放り出す。職員あるいはボランティアはその惨劇に気がつかない。おそらく・・・未来の訴えは無視されたか、あるいは未来は訴えることもしなかったのかもしれない。

未来は一人、夜の道をジョンを救出するために進み、そして自分も遭難してしまったのだ。

藤川「・・・虐待か?」

藍沢「いや・・・ただの転落事故かもしれない・・・とにかく話をしてみるよ」

藤川「最近、女の子の患者だと話すようになったな・・・藍沢」

藍沢はすでに病状から過去を推理できる特殊能力を身につけていた。

検査の結果、未来は頭部に血腫が発見されるが西条(杉本哲太)のアドバイスにより容態が安定しているので経過を観察することになる。前回に続いて、藍沢は女性患者を心底癒す構えなのである。そうでないと患者の恋人に対する横恋慕で厳粛な死を素直に受け止め辛くなっている藤川と同系列になってしまうからだ。それはなんとして避けなければならない。主人公としての品格の問題になってくるからな。医者であるためには生きている患者が必要なのである。

人型巨人兵器アニメの背景の残骸のようにいたるところに出没するナース辻(垣内彩未)の目を盗み、未来と密会する藍沢。

藍沢「3分間だけお話ししよう」

未来「どうして先生はジョンに優しいの?」

藍沢「だって大切なんだろう?」

未来「ずっと一緒だもん」

藍沢「なんでジョンって言うんだ?」

未来「昔・・・飼ってた犬の名前・・・もう死んだのよ・・・お父さんも死んだの」

藍沢「お母さんは?」

未来「遠いところにいる・・・おともだちのお母さんも一緒だって・・・」

藍沢(夫が浮気して・・・逆上した妻が夫を刺殺か・・・そしてこの子のお母さんは刑務所に・・・)と藍沢が妄想していると・・・。

未来「先生のお母さんは?」

藍沢「・・・君と一緒さ・・・先生のお母さんも遠いところにいる」

未来「先生は淋しくないの・・・」

藍沢「もう・・・大人だからな・・・淋しくても我慢できるんだ」

未来「そうなの・・・えらいのね」

・・・いつまで妄想を続ける気だ。3分はとっくに過ぎたっつーの。

二人は手を繋ぎ病室に戻る。

藍沢は未来が自分より苛酷な生い立ちであることを知り、父が生きていたことで動揺していた心を沈静することができた。いつでも医者には患者がいい薬なのである。少なくともドクター藍沢にとっては。

その間にも田沢のSpO2は低下し続ける。

常に感情表現に抑制がなく、芝居がかったところか鼻につく田沢の母親(大塚良重・・・踊る大捜査線で青島刑事を包丁で刺した過去があります)とその夫(清水昭博)が到着する。そういうキャラクターを好演しているのである。念のため。優秀で自慢の息子を不治の病に冒された両親なのです。

田沢「父さん・・・母さん・・・親孝行できなくて・・・すまない」

母「息子は苦しく苦しくないんですか・・・」

橘「血中の酸素濃度が低下するのは窒息状態ですから苦しいです・・・酸素を投与することで緩和はできますが、代謝のために二酸化炭素の濃度も上昇します。つまり、結果として息子さんの命を縮めることになります」

父「もう・・・いいです・・・息子を楽にさせてください・・・」

田沢のSpO2は80%を切った。友人たちは田沢に呼びかける。

留まりたければ走り続けろと。

父「昔から・・・友達が多い奴だった・・・それが誇りだよな・・・俺に似たのかな」

母「あなたはデビューがわれら青春!ですものね」

・・・いい加減にしておけよ。・・・すみません、緊張感に耐えられないのです。

苦しい夜は明けた。

田沢「はあはあ・・・はるか・・・いないのか?・・・はあはあ」

冴島(ここにいるわよ)

冴島はるかは恋人の呼びかけに答えようとした。

轟木(遊井亮子)「ドクターヘリ、エンジン・スタート・・・」

ドクターヘリ・出動要請である。

指導医・森本(勝村政信)、フェロー・ドクター(専門研修医)藤川、フライトナース冴島のローテーションだった。

現場「こちら市民球場・・・患者は頭部に外傷あり」

森本「デッド・ボール(死球)か・・・至急だな・・・」

藤川「笑えません・・・BGMかぶせます・・・」

緋山は走り去る冴島の後姿を痛ましげに見送った。

藤川「救急患者の受け入れ・・・兼田医療センターの脳外科OK出ました」

冴島「患者の意識レベル回復の兆しあります」

チームは任務を終えた。

田沢「はるか・・・は・る・か・・・」

母「苦しいの?・・・苦しいの?」

藍沢「酸素・・・増やします」

留まるためには苦しむ必要がある。しかし、ただ苦しむだけなら楽にしてやってもいいのだ。

そのために留まることができなくなっても。

藍沢は生死のダイヤルを回す。

ドクターヘリによる患者の搬送は終った。

梶(寺島進)「こちら、ドクターヘリ、翔北CSどうぞ」

轟木「こちら、翔北CSどうぞ」

梶「これより帰還します・・・」

SpO2・・・30・・・29・・28・27・・・。

緋山「冴島・・・少し間に合わないかもしれない」

白石はCS室に走った。

白石「冴島に・・・冴島に接続してください」

轟木「・・・到着までの所要時間は・・・」

梶「海上を通っておよそ8分だ」

田沢は別離の涙を流した。

白石「冴島、冴島」

その時、ゆっくりと藍沢がやってきた。

藍沢「冴島・・・聴こえるか・・・今、田沢さんが亡くなった・・・残念だ」

震える冴島の唇。

冴島「そうですか・・・わかりました・・・」

梶「到着まで・・・残り五分・・・五分だよ・・・」

冴島は田沢の手を握った。失われつつある体温を感じた。

母「はるかさん・・・長い間・・・ありがとう・・・本当にありがとう・・・」

白石は逡巡していた。

「何を迷っている・・・ALSは特定疾患だ病理解剖を奨めるのは大学病院としての義務だ・・・」

「でも・・・でも」

「俺が・・・もし死んだら・・・解剖を希望する」

留まるためには走り続けるしかないからだ。

白石は両親の承諾を得た。

三井からの連絡で藍沢は未来の急変を知る。

「血腫が拡大して左半身に麻痺が出てきたわ・・・緊急手術します」

藍沢は走り出した。手を尽くしても無駄だったとしても医者はまた手を尽くすのだ。

しかし、手術室でジョンを手放さない未来だった。

藍沢「これから少し・・・眠ってもらう・・・ジョンにはしばらく休んでもらう」

未来「私のそばには誰もいないの・・・」

藍沢「馬鹿だなあ・・・俺がいるよ・・・ずっと手を握っていてやる」

未来「じゃ・・・いいよ」

微笑んで見つめあう二人。

三井(藍沢・・・女殺しね・・・恐ろしい子)

損傷したジョンは未来を見守っていた。

西条が手術室に入る。

藍沢(ジョンの右腕はちぎれかかっている・・・)

ジョン(藍沢・・・切れぇ)

一瞬、藍沢の耳に黒田の声がフラッシュバックした。

藍沢は首を振り、冴え渡る西条のメス捌きを観察した。

藍沢(このテクがあの時の俺にあれば・・・黒田先生の腕は再生できたのかも・・・しかし・・・あの時森本先生は言った・・・「医者にとっては起こったことがすべてなんだよ」と・・・あんなシリアスな森本先生は後にも先にもあれっきりですべてなんだろうか・・・)

田沢の解剖は終了した。白石は田沢の両親に所見を口頭で伝えた。

白石「典型的なALSでした・・・この数字は・・・田沢さんの生きた証です。田沢さんは入院中も他の患者を励ましたり、最後まで医師として旅立っていかれました・・・私は田沢さんを尊敬します」

父「ありがとう・・・でもね・・・親としては・・・そんなに立派でなくても・・・ただ生きていてほしかった・・・ああ・・・あなたにね・・・そんなこと言っても仕方ないとわかっているんです・・・分っているけれど・・・もうかわいそうで・・・」

白石「・・・」

冴島は病室のネームプレートから田沢の名前を拭い消した。

下心と理性の狭間で藤川は困惑していた。そういう時、藤川は梶に相談せずにはいられないのだ。

藤川「どんな言葉をかけたら・・・いいのか・・・判りません」

梶「馬鹿だなあ・・・言葉なんていらないんだ・・・ただ側にいてやるんだよ・・・人はみな一人では生きてゆけないものだから」

冴島はヘリポートにやってくる。知っている人は知っている。

泣きたい時、冴島はここで医療器材の補充をするのである。

気をきかせて立ち去る梶。

梶のアドバイスも虚しく、藤川は沈黙に耐えられない男なのだった。

藤川「た、田沢さんは・・・」

冴島「いなくなりましたっ・・・私を必要としてくれる人はもう・・・」

藤川の下心は理性に押しつぶされたのです。もう、留まることはできない。

藤川(撤収ーっ、撤収ーっ、全軍退却ーっ)

梶(おい・・・本当にダメな奴だな・・・)

未来の手術は無事に終了した。

目覚めた未来は包帯を巻いたジョンを発見する。

未来「ジョン・・・どうしたの」

藍沢「スヌー・・・ジョンは悪いところを手術して治した・・・。未来と一緒だ。じっと安静にしていれば早く良くなる・・・ジョンも未来も・・・」

未来「うん・・・わかった・・・よかったね・・・ジョン・・・よかった」

藍沢は返す刀で白石担当の腰椎穿刺を引き受けるのだった。

藍沢「田沢さんのお別れ会だろう・・・冴島についていてやれ・・・」

白石「うん・・・わかった」

弔いの儀式も人それぞれである。「田沢のお別れ会」は会食だった。葬儀社の人間が「故人を偲んで、お時間の許す限りごゆっくりとお召し上がりください」と言ったらスタートです。

故人が若者である以上、参会者もまた若い。スピーチの得意なものが座を和ませる。

すべては・・・田沢の両親の趣味であることは間違いないのだった。

友人「田沢くんとは勉強というより麻雀ばかりしてました。田沢くんは麻雀の時は必ずヤキソバを食べるのです。それで講義に遅刻したことがありまして、田沢くんはもっともらしい言い訳を述べるのですが歯に青ノリがついていてバレバレで、あやうく単位を落としそうになったのです。今となってはいい思い出です。もう田沢くんと麻雀できないと思うと本当に残念です。謹んでご冥福をお祈りします」

そんなスピーチにも目頭を押さえる田沢・父だった。

白石・緋山を従えて冴島は列席した。喪服姿は美しい。

故人の写真を見ると冴島は喪失感に動悸・息切れ・眩暈を感じるのだった。

そんな冴島に最初から最後までマイペースでゴリ押しで責める田沢の母。

母「はるかさんも何かスピーチしてください」

冴島「私は・・・」

母「ほらほら、早くーっ」

白石(私・・・この人苦手・・・)

緋山(私はそうでもないなー)

冴島・・・。

悟史(田沢)さんは・・・私の家庭教師でした。私は医学部志望で・・・受験には失敗しました。その時、彼は笑いました。たいしたことないよ・・・ちょっと緊張しただけ・・・。また次があるよ・・・って。私は先生のせいで落ちたとは言えませんでした。それから彼は医者になって・・・私は看護師になりました。彼はずるいんです。いつも笑顔で・・・。私の先を歩いていました。私にとって彼はいつもこの世を照らす灯だったんです。一緒に歩けるだけで幸せでした。やがて・・・彼は病気になって・・・辛くて辛くて私は一度は別れようともしました。でも彼は・・・いつも笑顔で私を迎えにくるんです。不自由な体で私に笑いかけてくるんです。最後は私の職場に入院しました。勤務の合間に私は病院食を彼と一緒に食べました。それがとても幸せで・・・もう涙で前が見えません。

冴島は感情を吐き出した。誰よりも強い冴島が急に弱くなった・・・緋山はそれがむかついたのである。

冴島の失われたホープは彼女の歩みを鈍らせた。

そんな冴島の腕をつかみ・・・緋山はヘリポートに引き立てる。

「その席に座ってみなさいよ。あんたが座りたかった席。あたしの席よ。そこにあたしが座るとこっちにはあんたがすました顔で座ってる。その顔を見ると・・・私がどれだけ安心するかあんたに分る?・・・あんたがいなかったらあたしとっくに逃げ出していたかも・・・だから、困るのよ。いつものようにあんたがツンツンしてくんないと。私がフライトでいい成績あげるためにはね」

白石が補足した。

「田沢さんがあなたの先を歩いていたように・・・あなたも私たちの先を歩いていた。私たちにとってあなたこそが光明。私たちにはあなたが必要なの・・・あなただけが頼りなのです」

冴島は泣きながら微笑んだ。

その頃、エレベーターには藤川と藍沢がいた。

「まったく・・・田沢って・・・なんなんだよ・・・最後までかっこよくてさ・・・死に際に友達がウジャウジャやってきて・・・冴島みたいないい女にあそこまで尽くされて・・・オマケに惜しまれつつ死ぬなんて出来すぎなんだよ・・・敵わないじゃねえか・・・オレの葬式なんてきっと誰もこないぜ・・・」

「馬鹿だな・・・お前は意外とみんなに愛されているよ。お前の葬式・・・俺は行く」

「藍沢ーっ。・・・オレを殺すなよーっ・・・こわいじゃないかっ」

未来は外科病棟に転院した。ジョンの負傷も完治した。

未来は包帯を藍沢に返却する。

三井は「またケガしたらいつでもこの先生が治してくれるよ」と二人を冷やかす。

しかし、未来はふと遠くを見つめるのだった。

未来「でも・・・先生の包帯は誰が巻くの・・・」

藍沢「・・・包帯は必要ないんだ・・・」

未来は(私が巻いてあげるのに・・・)という言葉は飲み込んだ。

フェロードクターたちに別れの時は近付いている。

白石は明邦医科大学教授の父親(中原丈雄)と確執があった。

白石の目指す臨床医と心臓外科の権威である父親が娘に望む道とに食い違いが生じているのだった。

白石「私は本当の医者になりたいの・・・」

父「救命医なんて本当の医者とは言えんぞ・・・第一危ないじゃないか・・・」

その頃、食堂では森本は轟木との思い出のデートの写真をうっとりと眺めていた。藤川はその写真にランチのみそ汁をこぼした。

私服に着替えた藍沢は・・・過去を知るあの人・・・実の父親(リリー・フランキー)を尋ねた。

手を尽くして万策尽きたとき・・・

人に残される行いはただ寄り添うことだけなのかもしれない

赤の女王は言うだろう。

留まりたければ愛し続けろと。

しかし・・・どうすればいいのだ。

寄り添う相手が見つからない場合は・・・。

男と女がなくなれば交際相手は倍増するというのに。

・・・恋敵も倍増するけどな。

関連するキッドのブログ『第4話のレビュー

天使テンメイ様の光あるレビュー。

Hcinhawaii0616 ごっこガーデン。再生と新たなる旅立ちヘリポート。エリ幼女キラー藍沢P先生にアタックするために開発された誰でも幼児体型スーツ・・・じ、じいや・・・愛のためとはいえ・・・キツキツでしゅよ~。うちの犬のジョンはペットロイドなのでしゃべります。変なことを言うと頭をたたきますからね~。さあ、藍沢先生好き~と言ってごらん。今回は藍沢Pは明らかに藤川まで落としてました・・・藍沢無双はどこまででしゅか~さあ、いよいよお手手をつないでもらいまスーお気楽友達がバスからジョンを投げて未来ちゃんが追いかけて飛び降りたんじゃないよね。チビッ子ハウスが殺伐としているのはちょっとイヤだよね。喪服トリオは一人くらい和装でも良かったよね・・・くう苦手だった田沢ママ・・・だけど・・・もしも自分の子供がああなってしまったら・・・なりふりかまわず息子の最後の願いをかなえてやりたいと思うかも・・・それに応えた冴島は本当にいい娘だったわよikasama4フェロードクタープラスフライトナースはまるで一心同体のような絆で結ばれているようですな。これが崩れることがあればそれはまた凄いドラマが展開されるわけでそういう点もこのシリーズのしたたかさです。冴島もまたずっと耐えてきたフリが効いてものすごい大芝居でした・・・あれがリアルに感じられるところも積み重ねてきた強みでしょうねえmariまあ、エリちゃん、抜け駆けですか~。じいやちゃま、私にもスーツ出してくださ~い。でも一人増員したスナックスレちがい愛好会でのカラオケも楽しいし~。今夜も歌いますよ~。さあ・・・来週はいよいよ藍沢PVS白石・・・主役とヒロインが何を生み出すのか・・・待ち遠しいですね~まこ続々と解禁されるドクターたちの私服モード。みんなそれぞれにおしゃれさんですね~。特に女の子たちはみんなお嬢様設定なので親近感を感じる~むふふ・・・エリ姉ちゃん・・・そのスーツはまこがひそかに発注していたのに・・・さすがでしゅ~。しかし、まこは今回は涙の洪水で溺れてしまいそうだったのでしゅ。男フライトナース工藤は何してんの~

水曜日に見る予定のテレビ『曲げられない女』(日本テレビ)『加藤虎ノ介の相棒』(テレビ朝日)『赤かぶ検事京都篇』『新撰組ピースメーカー』(TBSテレビ)

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2010年2月 8日 (月)

邪悪なる不屈の闘志にお困りのあなたへ(堀北真希)とある指先から超電撃のカバチタレ修行中(櫻井翔)

「Twisted Nerve」は直訳すればひねくれた魂だがイギリス映画「密室の恐怖実験」(1968年)の原題である。好きな女の子に接近するために知的障害者を装う困った男の子のサイコ・スリラーな物語である。

この映画の音楽はヒッチコック監督「めまい」やスコセッシ監督「タクシードライバー」のバーナード・ハーマンである。特に口笛のメロディーが印象深い。

そのメロディーは日本を溺愛するタランティーノ監督「キル・ビル」で病院で眠るブラック・マンバ(ユマ・サーマン)を毒殺しようとするカリフォルニア・マウンテン・スネーク(溺愛するクジラのために日本をそこはかとなく嫌悪するダリル・ハンナ)の歪んだ精神のテーマとして引用される。

それをそこはかとなく盛り込んだのが今回の「特上カバチ!!!」なのである。

演出家のスタイリッシュさが冴え渡ります。

もちろん・・・それは愛人(辺見えみり)のためには女房(清水美砂)を踏みにじる夫(近藤芳正)、女房に横恋慕した包帯フェチの男・栄田(高橋克実)、そして男を手玉にとる愛人、さらには夫と栄田の他には正名僕蔵しか選択肢が与えられない不憫な女房のねじくれた心を象徴しているのです。

ちなみに筆跡鑑定の前後で短く出てくる口笛は缶コーヒーのCMでおなじみPeter Bjorn and John(スウェーデンのロック・バンド)の「Young Folks」のイントロである。たたみかけるな。

で、『特上カバチ!!・第4回』(TBSテレビ100207PM0915~)原作・田島隆、脚本・西荻弓絵、演出・今井夏木を見た。まあ、視聴者層がまったく違うとはいえ「極悪三馬鹿兄弟のボクシング世界タイトルマッチ」はある意味、ボーナス・チャンスである。19.0%のアドヴァンテージを受けて繰り下げつつ↗10.8%とフタケタに復帰したこのドラマ。今回は特撮演出もそこそこ控え目で役者の演技に重点を置き、そこそこ普通にドラマとして成立していたのでこのまま、なんとか冬季五輪シーズンを乗り切ってもらいたいものである。

突然、身に覚えのない借金の連帯保証人にされ、経済封鎖を食らう。

恐ろしいことであるが契約社会である以上、それはすぐそこにある危機なのである。

印鑑登録は成人後の重要な儀式であったが・・・それは本人が契約者として社会人になるための必要条件であるからだ。しかし、あらゆる精密機械の発達で印鑑の偽造が明らかにお手軽になっている現状をどうするかという問題は非常に危機的状況なのである。

しかし、あらゆる本人認証システムはもはや風前の灯であるとも言える。

空前の信用できない社会はすぐそこまで来ていると言える。

そうなったらもう顔見知りしか信用できないのであり、そして顔見知りが一番信用できない人々は神に祈るしかなくなるのである。

スーパーマーケットの店員・吉田香織(清水)は突然、銀行預金が引き出せなくなり、パニックに陥る。

いつもの大家(田丸麻紀)ルートでさっそく案件に巻き込まれるユトリン田村(櫻井翔)だった。

年下の上司・美寿々(堀北)と調査に入ると、香織には別居中の夫がいて、その夫がサラ金から借金し、その借金の連帯保証人に香織がなっているが、香織にはまったく身に覚えのない契約だったのである。

「夫が妻の名前を勝手に使用して借金をした」わけであるが、そのことを証明できないと契約は有効であり、契約に基づいてサラ金が香織の資産を差し押さえるのは法的に問題がないと香織の取引銀行の顧問である検備沢弁護士(浅野ゆう子)は断言する。

大野(中村雅俊)行政書士事務所に相談に訪れた香織がたまたま自転車で転んでケガをしていたために包帯フェチの万年助手の栄田(高橋克実)は香織に一目惚れ。いつもなら損得抜きで仕事をしてしまうユトリン(ゆとり教育で育ったために人間として基本的に発達障害が残るかわいそうな人)に変わって今回は栄田が行政書士の身分を越えた暴走を開始するのであった。

さっそく、契約書の署名の虚実を確認するために筆跡鑑定の元堀(酒井敏也)は裁判においては証拠能力にならない簡易鑑定を即金五万円で即鑑定してもらう。

その結果「この署名は香織本人のものではない」ことが判明する。

そうなれば「有印私文書偽造」という犯罪が想定されるわけであるが、その犯人を特定しなければ罪には問えないのである。

もっとも疑わしい香織の別居中の夫・吉田学(近藤)を訪ねるユトリン・美寿々・栄田は鬱病患者を装い追求をはぐらかす学の筆跡を入手する。

再び筆跡鑑定により、「署名は夫のものでないこと」が判明。今度はユトリンが五万円を払うのであった。

残るは夫の関係する人物をすべて筆跡鑑定をしないとならないのである。その鑑定料を考えると青ざめるトリオだった。

そこでユトリンが本領を発揮、元堀の事務所を大掃除することで鑑定料をタダにしてもらったのである。

その結果・・・きれいなお姉さんのいる大きなスナック・ジャッカルのママ・猪股蘭子(辺見)が浮かびあがるのだった。

ユトリン・栄田は夫の資産についての調査を開始し、美寿々は女調査員「寿々美」となってスナック・ジャッカルのホステスに応募し、潜入調査という名目のお茶の間の一部愛好家サービスを展開するのであった。

やがて・・・栄田は夫に計画倒産の影を感じる。夫は高額なマンションを購入、その名義は猪股蘭子になっていた。

しかし、不動産売買契約書には第三者が記載されていて、その第三者は消息不明なのである。

しかし、ブラックライトを用いた特殊インクの偽造鑑定法を応用したユトリンは塗りつぶされた契約書の名義の裏に滲み出た「猪股蘭子」の文字を発見する。

ついに真っ赤なスーツを着たヤクザの本性をむき出しにした栄田に「刑務所行きかマンション売却で慰謝料支払いかさもなくばぬっころす」と脅された夫は愛人の元へ。

「しょうがないから・・・あんたが臭いメシを食べてきて」

「そんな・・・お前のアイディアじゃないか」

「どこにそんな証拠があるのよ」

・・・と言うところで秘密捜査官・美寿々が登場。

「そこまでよ。今の会話録音させていただきました。法律はあなたを許しません」

とある超能力の指先から電磁砲で黒焦げ焼死体になる蘭子だった。一件落着である。

こうして・・・栄田は香織に告白しようとするのだが、給料まで差し押さえられた香織を店長(正名)が経済援助。いつしか二人の間には愛情が芽生え、店長は香織の息子とスケボーで遊ぶ仲になっていたのである。

田村「あの奥さん、メンクイじゃなかったから・・・栄田さんにもチャンスはあったのに・・・」

美寿々「あの店長、どう見ても変態顔だし、借金とか隠し子とかもありそうなのに・・・奥さんは男を見る目がないわ」

と口々に栄田を慰めるユトリンと元ヤンだったが当の本人は・・・。

「包帯してない女に興味はない・・・」と嘯きつつ泣き濡れるのだった。

今回はしがない人々のドラマとしていい味出ていたと考えます。

青いスーツのヤクザ重森(遠藤憲一)の主役回もあるといいなぁ・・・。

関連するキッドのブログ『第3話のレビュー

火曜日に見る予定のテレビ『泣かないと決めた日』『まっすぐな男』(フジテレビ)

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2010年2月 7日 (日)

我が身、江戸にて処刑されるとも大和の心は永遠であります(吉田松陰)

吉田松陰が小塚原回向院に葬られるのは安政六年(1859年)のことである。

それより先、高杉晋作や桂小五郎たち松下村塾の塾生たちに残した「留魂録」に記された一首が公的な辞世とされる。

身はたとひ 武蔵の野辺に 朽ちぬとも 留め置かまし 大和魂

猛烈に狂が発しており、心酔しやすい若者たちはこの言葉に踊らされ、回天の事業に取り組んでいく。

そして吉田松陰同様、多くの若者が明治を待たずに散っていくのである。

生かしても危険、殺しても危険・・・こういう人物は体制にとってもっとも恐ろしい人物であると言えるだろう。

吉田松陰はすでに「天皇家を中心とした国家が生存するためには北は北海道、南は沖縄を確保したのち、朝鮮半島を領有し、早期に満州を経営しなければならない」と幕末の時点で構想している。

松下村塾の生き残りが日清・日露の戦役の後に吉田松陰の予言を半世紀後に実現することは驚異と言えるだろう。

もちろん、こういう天才を断じて殺すのは為政者としては当然の行いであるとも言える。

で、『龍馬伝・第6回』(NHK総合100207PM8~)脚本・福田靖、演出・真鍋斎を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は幕末史上最強の狂人・吉田松陰大先生の書き下ろしイラストつきでございます。松陰最高!イエーイという感じでございます。松陰のノリノリでイケイケな感じが抜群でございますな。「このままでは日本は西洋の鬼畜に滅ぼされてしまう」と叫んだ側から「外国をこの目で確かめたい」と密航にチャレンジしたかと思うと「外国に行けないくらいなら極刑を求む」と幕府に自分で自分を訴える。周囲の温厚な人々がゾッとする感じがヒシヒシと伝わってきます。そういう人々がおっかなびっくりで触れるものを容赦なく処刑する井伊直弼もまた半端ないことがよくわかるのでございますな。このぐらいの狂と狂がぶつかるほどでないと維新などというものは起こらないと考えることもできますな。

Ryoma185401 嘉永五年(1852年)すでに一度脱藩の罪で家禄を奪われている吉田松陰はすでに江戸封建体制の人間の枠では考えられない思考の持ち主だった。松陰は非常に理性的な人間だったが理性も度を越すと尋常ではない性質を帯びてくる。本来、松陰は兵学者である。現代では戦術と戦略に大別できるこの学問の底はどんな学問でもそうであるように底がない。古典である孫子を学び、歴史に残る合戦を紐解くうちに松陰の心は現実から遊離していった。南朝の忠臣楠正成の戦術を追えばいつしか絶対天皇制の戦略が浮かび、天皇の下の人間平等という幻想から倒幕の企画を着想するという異常に脈絡のない思索が天才的頭脳の中で天啓として放出されるのである。そして、もちろん、吉田松陰は忍びなのである。

幕末の砲術の大家と言えば、幕府砲術指南役の江川大明神がその先達である。江川は火薬についての理論家であり、鉄砲の名手でもあった。戦国時代の明智光秀や織田信長が鉄砲部隊用兵の名人であると同時に射撃そのものの達人であったのと同様に近代兵器というものはその実効性を検証しなければものの役に立たないのである。原子爆弾が最高の兵器として認識されるの広島と長崎でその殺傷力が充分に検証されているからなのである。

江川は泰平の夢の中ですっかり劣化してしまった砲術を再発見するべく、試作銃を作り、火薬を調合した。またその威力を確認するために盛んに鳥獣を狩ったのである。

信州真田家の家臣である佐久間象山は戦国以来の科学忍者である。しかし、実戦から遠ざかった真田忍軍の鉄砲忍びはもはや実用には適さなかった。象山が江川に弟子入りして教えを仰いだのはそのためである。

江川はやや理論に傾く向きがある象山を激しく戒めた。

「獣の匂いを感じ、己の獣性を見出さねば、獣を仕留めることはできぬのだわ」

「しかし、命中精度を高めるためには照準器の開発が急務ですぞ」

「ならば御主のからくりとワシが腕をくらべてみるがよかろうず」

山に入った江川と象山は鉄砲勝負を挑み、江川は獲物を多数しとめ、象山は手ぶらであった。

「ふふふ・・・参ったと申せば猪鍋を馳走するぞ・・・」

「参りました」

かくて、江川の教えを受けた象山は砲術家として名を高める。すでに幕末の動乱を予感したものたちは先を争って象山の門下生となった。

吉田松陰もその一人である。

江川にとって象山が好もしからざる弟子だったように、象山にとって松陰は困った弟子と言えた。松陰は科学理論が苦手だった。

「よいか・・・火薬というものが発火するためには理があり、その理によって薬物を混合せしめるのである」

「しかし、それをバーンと撃てばよろしいのでありましょう」

「いや・・・だからさ・・・調合しないとね・・・」

「ダダダーンと撃ってドッカーンでありましょう」

「ま・・・いいか」

松陰は象山の師である江川以上に実地見分を重く見た。北にロシアの陰があると聞けば北へ行き、東にアメリカの陰があるといえば東に出向いたのである。敵が砲撃してくればどう応じるべきか・・・すべての海岸線を踏破しなければ実地は難しいと松陰は考える。ある意味、実戦にもっとも不向きなタイプであった。

「これはもう敵地に行ってじっくり視察するしかない」

ついに嘉永六年、浦賀で黒船を目撃した松陰がそう結論するのは至極当然だった。

「松陰よ・・・そりゃならんぞ・・・第一、御主は外国言葉が苦手ではないか」

「言葉など通じなくとも、この松陰が一目見ればピタリと分ります」

「己の千里眼を過信するのは禁物じゃぞ」

「いいえ・・・もはや・・・すべては見えているのです。拙者はこの後、長崎でロシア船に乗り込もうとして失敗、来年、アメリカの黒船が訪れたときに密航しようとして失敗します。拙者は思い切って自首します・・・そしてやがて数年後、処刑されます・・・しかし・・・その後、私の死に感動した若者たちが次々と回天の事業に身を滅ぼすのです。そしてついに神国日本が誕生するのであります」

「・・・」

語りだしたら止らない松陰の神懸りに象山は忍び足で三浦半島山中を遁走した。

その後をひっそりと黒い影が追う。幕府の公儀隠密軍団である。

彼らの任務は複雑であった。象山の後見人は老中の真田信濃守で学者である象山は護衛対象である。しかし、象山の門人である吉田松陰は長州人であり、長州ではかねてより密貿易の疑いにより査察が入っている。

松陰の奇怪な行動も実は貿易ルートの新規開拓の目的ありと疑うことができるのである。

しかし・・・現場の下忍たちにとってその判断は無関係である。彼らはただ幕命により異人軍船を調査に来た二人の学者を密かに監視する他はなかった。

その年の暮れ、入門半年ですでに千葉桶町道場の塾頭となった坂本龍馬は溝淵に誘われ象山書院を訪問する。

兵学の基礎の特別講義を末座で聞くためである。

大柄な龍馬を象山は目ざとく見つけた。

「ほほう・・・これは大男の入場だ。しかし、いかに大男が腰に大小をぶら下げて威勢をはってもこのような西洋からくりの前には無力なのだ」

そういって象山は懐からリボルバー拳銃を取り出す。松陰の長崎土産だった。

「これはペストルと言って短筒じゃが・・・」

と言って龍馬に銃口を向けた瞬間、龍馬は怪鳥のように空を飛んでいた。

「おう・・・」と唸ったのは松陰の背後にいた桂小五郎である。

一同があっと思う間もなく、龍馬は再び元の位置に戻っている。

ただし、象山の構えたリボルバーは上半分が切断され、ゴトリと床に落ちていた。

「これは・・・すまんき・・・そのペストルというものに殺気を感じて無意識に斬ってしもうた・・・」

「ほほう・・・そりゃ、たいした心境だ・・・」と笑顔を向けたのは若い旗本だった。

「うんうん・・・こりゃいいものを見せてもらった」と象山がようやく我を取り戻す。

「先生・・・」と桂小五郎が言う。「お召しかえをなさりませんと・・・」

象山はそこで失禁していることに漸く気がついた。

「お・・・こりゃ・・・粗相をしたな」

その言い方が滑稽だったので象山書院は爆笑に包まれた。

こうして・・・幕末が始まった年とされる嘉永六年は暮れていったのである。

関連するキッドのブログ『第5話のレビュー

月曜日に見る予定のテレビ『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命2nd Season』(フジテレビ)『ハンチョウ』(TBSテレビ)

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2010年2月 6日 (土)

怪奇趣味がおよろしいのです(大政絢)ヤマトナデシコ四変化(亀梨和也)

前回、ほとんど変化なしだったのだが、今回はゴスロリ正装、お見合い盛装、ミニ・ウェデイングドレス、大和撫子割烹着と変化サービスはバッチリである。一応、「崖の下のポニョ」対策だったのか・・・。

この物語の特異点はファッションで言えば、ゴシック・アンド・ロリータというジャンルに属するし、その背景には前衛的で懐古的という相克が存在する。

当然、ストレートにドラマ化すれば相当に先鋭的な話になるのである。

それを軽くポップに仕上げようという意図なのかアレンジを重ねたあげくに単なるださい話にしあがっていると感じるお茶の間は少ないだろうが・・・12.1%↘*9.3%↘*7.6%という結果は明らかに方向ミスを物語る。

オリジナル・キャラクターのタケル(加藤清史郎)を加えたことがものすごく変な感じになっていると考えます。

オバちゃん(高島礼子)は幻想の社交界で華やかに生きる未亡人でなくなり、単に育児放棄の有閑マダムになっているし、その子供であるタケルは主人公よりももっと哀れな存在になっているからである。

その二人が母と子の愛を語る場面なんか・・・意味不明だしね。だって離婚した貧乏な母子家庭が・・・けなげに日曜日に公園で語り合う話じゃないんだし。

で、『ヤマトナデシコ七変化・第4話』(TBSテレビ100205PM10~)原作・はやかわともこ、脚本・篠崎絵里子、演出・川嶋龍太郎を見た。スナコ(21)、大政絢(19)、原作スナコ(16~18)である。スナコは怪奇趣味で好物はチョコレートである。怪奇趣味といえば泉鏡花だが、鏡花は「手掴みで食べたものはつかんでいる部分を必ず残す」という強迫性障害者だった。いわゆるひとつの潔癖症である。スナコもまた様々な強迫観念を示す。

①美青年を見るとまぶしく感じる。

②人体模型に親しみを感じる。

③世界は悪意に満ちている。

④自分はたとえようもないほど醜い存在である。

これに対して①「まぶしくないだろう」とか②「人体模型は人体模型だ」とか③「世界には善意もある」とか④「いや、どっちかというと美少女だし」とか言ってもムダなのである。

そうしたことは全て悪意に基づく虚偽と感じられるからだ。

そういう頭のおかしな人に対する馬鹿馬鹿しさがまだまだ描きたりてないのだなぁ。

そういう意味ではオバちゃんこと中原美音(高島礼子)は亡き夫(長谷川初範)を世界で一番いい男と信じる不気味な人と解することもできる。

つまり死者を愛する女なのである。

それもまた怪奇趣味なのである。

ドラマ版で登場するタケルはその死人の息子である。もしかすると美音が家に戻ってこないのは・・・タケルを愛するあまりに死体にしてしまおうとする欲望を抑えているからかもしれない。もちろん・・・お茶の間どんびき設定だが・・・このドラマはそのくらいが面白いはずである。

タケルは愛する母親が帰ってくるとうれしいのだが・・・食事に毒が入っていたり、真夜中に蛇に首をしめられたり、タランチュラに襲われたりするのでドキドキするくらいでいいと思う。

親子で仲良く、日帰りで北極にシロクマ見物している場合ではないのである。

ドラマ版に登場する喫茶店のマスター(大杉漣)はちょっと美音に気があるそぶりを示したりするわけだが、気安く声をかけると玄関に黒猫の集団が横切りだし・・・背後にどんよりとした灰色の何かの気配を感じ始めるくらいでいいのである。・・・描写が困難だぞ。

そういうねずみ男(半分妖怪)が喜びそうな怪奇ムードが大前提なのである。・・・ま、お前はな。

その上で・・・写真写りが尋常ではない久留米(温水洋一)がスナコの見合い相手として登場すれば何の問題もないのである。

そもそもオバちゃんは社交界において姪のスナコをカードとして使いたいのである。

中原一族の美名を高めるための美貌のレデイー・スナコを求めているのだ。

・・・あくまで妄想です。

そのために利があると思えば久留米家の御曹司がたとえ「ぬっくん」で性的嗜好がサド・マゾのMの方で、虚言癖のある小心者でもなんの問題もないはずなので・・・ドラマのように「あなたみたいな人のところへは嫁がせません」などと言うはずがないのである。

スナコが凶暴化して脱走したりした場合は・・・。

「あなたもツメの甘い方・・・ご縁がなかったようですわぁ」

と冷たく見下すくらいでいいのだ。

そういうディティールが悪趣味じゃなくて凡庸なところがアイタタタ・・・なんだよなぁ。

「これからはお風呂も三日に一回入るのでお見合い(晴れがましい席)は勘弁してください」

「許しません」

・・・ということで久留米家の御曹司との見合いをすることになったスナコ。

久留米家の乳母(茅嶋成美)と美音の間で両家縁組は着々と進行するのだった。

恭平(亀梨)はスナコがお見合いをすれば家賃がタダになるというのでスナコを説得する。

「お見合いをするだけして断ればいいのさ」

・・・ところが・・・お見合いの席でボディーガード軍団に守られた久留米のハンカチに「猫の爪の図案」を発見したスナコはたちまち久留米に好意を感じるのである。

中世の拷問用具をさりげなくアピールする久留米に同族の匂いを嗅ぎ付けたスナコ。

根っからの怪奇趣味者である久留米とスナコはたちまち意気投合するのだった。

「拷問は緊縛と蝋燭ではどちらがお好き」「木馬責めよりも放置プレイの方が趣がありますな」「なめし革よりも荒縄ですわね」「魔女狩り尋問の指つぶし器はレプリカではないのです」「まあ素敵」「それよりも我が家にはマリーアントワネットの断頭台の本物があるんですよ」「それはなんという素晴らしさなのでしょう」「ひひひ」「ひひひ」

・・・と会話の弾む二人だった。

この成り行きになんとなく心穏やかではない恭平だった。やがてスナコはレディー修行のために覚えたフランス料理を来る日も来る日も作るようになる。

それを久留米のためと感じた恭平はますます面白くないのだった。

なんとなく胸がもやもやするのである。

それを母親代わりのオバちゃんや、父親代わりのマスターは面白く眺めるのだが、原作では絶世の美女だが、ドラマ版ではその他大勢の一人になっている乃依(神戸蘭子)は武長(内博貴)の彼女は自分、スナコの彼氏は恭平、スナコと自分は親友という図式を形成するために恭平にスナコを猛プッシュするのである。

二人で同じ落とし穴に落したりする大作戦を展開するのである。

スナコは恭平頭突きで放出するが・・・代わりに落ちてきた久留米とは落とし穴の底の居心地の良さを共有するのだった。

「外見にこだわるな」といい続ける恭平だけに「内面で結ばれている」二人には文句のつけようがないはずなのだが・・・ださい脚本なので無理矢理・・・久留米を貶める暴挙に出ます。

一人芝居でSMプレイを楽しむ久留米を発見した恭平は「変態にスナコを渡すわけにはいかない」宣言である。SMを愛好することのどこが変態なのか・・・変態です。

久留米はボディガードに命じて恭平を拉致監禁し・・・「私のところへきませんか」とコレクションでスナコを釣り承諾をとると結婚式の準備にとりかかる。

そして・・・結婚式。誓いのキスでスナコは突然拒絶する。

ドラマではあたかも「ぬっくん」のような薄ら禿げのオヤジのキスをスナコが拒んでいるようにしか見えないのがこのドラマの最大の説得力がない場面である。

それはスナコの大切な性癖をきちんと説明していないからなのだ。

⑤スナコは対人接触恐怖症なのである。

スナコはキスどころかマッサージで他人に体を触られることにも恐怖を感じるのである。恭平の愛のないキスでの描き方が中途半端なので・・・こんなことになるのだな。

そこへ監禁場所を脱出した恭平が「ブスナコ呪文」でスナコの抑圧された暴力衝動を解放する。

たちまち結婚式場は修羅場と化すのだった。

なんとなく結婚式場を脱出した二人・・・。

しかし・・・スナコの「拷問用具をみたかっただけ」という真意に気がつくと恭平は心のもやもやをもてあますのだった。

そして・・・スナコがフランス料理を作っていたのはオバちゃんの大好物だったからということが分ると和食をおねだりする恭平だった。

和食を食べて「胸のもやもや」はバターとクリームで胸焼けしたからだとオチをつけないと恭平の立場がないからである。

とにかく・・・幼少期のスナコ(佐々木りお)はタケルの両親に可愛がられていたのだった。

そうなると・・・オバちゃんは実はスナコも死体にしたいと密かに思っていることは確定的なのである。

少なくとも・・・キッドの怪奇趣味の妄想の中では・・・。

関連するキッドのブログ『第3話のレビュー

天使テンメイ様はグラフの巻でございます。

Hcinhawaii0615 ごっこガーデン。巨大満月と風見鶏上の怪人セット。エリあすなろ抱きを決めつつ、心の中は家賃のことを考えるその心の残酷放置プレーがしゅてきでス~。しかしムチやロウソクはプレーしますがギロチンは大人のプレーですね~。命が危険でしゅものネ~。人体模型のひろしくんとマネキンの茜ちゃんの出会いはなかったのでス~。どちらがSでどちらがMなのか・・・それは気分次第なのですね~。SがわかるのはMの気持ちがわかるから、MがわかるのはSの気持ちがわかるからそれがラブなのですyon!!!・・・結局和食の美味しさは世界一なのでスーまこぬっくんがもしドラキュラ伯爵だった爆笑でしゅ~。フランケンシュタインのモンスターはギリギリセーフ・・・オオカミ男だと禿解消でしゅ~。しゃて~次回はいよいよバレンタイン~・・・まこもチョコレートを大量に作って大儲けしゅるのでしゅ~ふへへお気楽レディーとは何かなんて庶民には理解不能だよね。作りもあざといしね。ま、今回は衣装さんはがんばったよねmariいろいろとアレンジが入って努力しているのは評価しますよ~。まあ、もうこれは恋にうとい奥手の男の子を周囲がなんだかんだとたきつける話として楽しむのがいいと思いますよ~・・・じいやの趣味通りに作ったらお茶の間誰もついてきませんし~

日曜日に見る予定のテレビ『龍馬伝』(NHK総合)『深・ケロロ軍曹』(テレビ東京)『堀北真希の特上カバチ!! 』(TBSテレビ)『トロイ』(テレビ朝日)

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2010年2月 5日 (金)

イラン・ニクソン1ドル360円夜になって不毛地帯(多部未華子)

物語の舞台は昭和46年(1971年)に入っている。この年は戦後長く続いた固定相場制による1ドル=360円がいわゆるニクソン・ショック(米大統領によるドルと金との交換停止宣言)によって終焉した年である。1ドルといえば360円だと思う世代はかなり老化していると思う。まもなく世界経済は変動相場制へと移行する。

今は1ドル90~100円くらいだ。

タイムマシンで昭和46年から現代にワープすると100万ドルもっているので3億6千万持っているはずなのに1億円だと言われて涙目なのである・・・妄想の起点がわからんわ。

とにかく、固定から変動になれば安心はできない・・・ということである。

そして安心はできないが・・・100億円が1000億円になるチャンスとかの夢も広がるのである。

そして多くの場合、夢というものはすごく危険なものなのだ。

で、『不毛地帯・第14回』(フジテレビ100204PM1030~)原作・山崎豊子、脚本・橋部敦子、演出・水田成英を見た。奇跡の高度成長を続ける日本において近畿商事もまた経営拡大路線を走り続けている。そしてついに石油開発という巨大産業への参入を決意するのであった。相場師と云われ繊維相場で大儲けをもくろむ大門社長(原田芳雄)をはじめ商社マンは所詮、守銭奴でギャンブラーでなければやっていけないのである。

近畿商事・石油部長である兵頭(竹野内豊)もまた「油断大敵と申しまして資源のない日本でエネルギー資源獲得に全身全霊をあげて打ち込むのは大義あることです」と言いつつ「石油開発なんかしちゃったらものすごく儲かるぞ~」というのが本音なのである。

もしも・・・日本の企業が「石油開発」を行うことができれば「大義」と言うのであれば、またしても東京商事の鮫島(遠藤憲一)にしてやられても・・・「一体、これはどういうことですかっ」と壹岐(唐沢寿明)が激怒する必要はないのである。

要するに「損した~」と思うから憤りが生じるわけです。

ちなみに当時のイランはパフラヴィー王朝政権、アメリカ合衆国による傀儡国家でこの体制は1979年4月のイスラム革命まで続きます。その後はイランが石油を国有化したことに対してそれを絶対に許せないアメリカ合衆国との間に今もなお不毛な関係が続いているのである。イラクとの国境地帯には推定260億バレルの埋蔵量を誇るアサデガン油田があり日本も油田開発に参入しているが、アメリカ合衆国は当然開発中止の圧力をかけてくるので綱渡り的な関係になっている。

もちろん・・・当時の壹岐たちは知るよしもない。中東に石油が眠っており、100億円投資すれば10倍になって帰ってくると信じて血眼になったのだった。

もちろん・・・儲け話にのらない手はないので・・・壹岐が欲張って独占しようとしたサルベスタン鉱区(架空)の石油開発参入を東京商事が根回しして企業連合を作り、弾き飛ばしたことになんの問題もないわけである。

かって・・・満州の利権を独り占めしようとしてアメリカ、イギリス、中国、オランダに包囲された愚を元・帝国陸軍参謀の壹岐は繰り返しただけなのである。

人間はあやまちを二度と繰り返しませんと約束するが、約束というものは破られるためにあるからである。

一方、壹岐は私生活では千里(小雪)とのひっそりとした情事を楽しもうとしている。あくまでその関係は秘密にしておきたいのである。

堂々と再婚すればいいではないか・・・と感じる人も多いのではないか。

しかし・・・ドラマの中の壹岐は戦争でたくさんの将兵を死に追いやり、シベリア抑留で仲間を失い、苦労をかけた妻を事故で失っている。おいそれと自分だけは幸せにはなれないという建前があるのである。

もちろん、本音は「やりたいことをやって何が悪い」なのでするわけだが・・・この本音と建前の相克の犠牲になるのが千里であることは言うまでもない。

それでも日陰の女として「私のために咲いてくれ」と壹岐は願うのであるが・・・そんな虫のいい話はあまりありません。

せっかくの夜明けの愛人の手作り朝食も・・・娘・直子(多部未華子)の訪問でものすごく気まずいことになるのだった。

直子「母の仏壇にお参りしたら帰りますので・・・ごゆっくりなさってくださいね」

壹岐(もう・・・ゆうべしてしまったのだ・・・)

ああ・・・もう、なんだかなぁ・・・である。

これで直子がシンデレラなら千里は悪い継母なのである。

しかし・・・そうならないのはなぜなのだろう。

ここにこのドラマの隠された秘密があると妄想してみます。

つまり・・・壹岐は婿養子だったという図式です。本来、壹岐家の資産は亡妻の佳子の家のものだった。当然、その資産は長女・直子や長男・誠(斉藤工)が受け継ぐべきもの。しかし、そこで壹岐が千里と再婚してしまうと権利関係が複雑になる。

千里も資産持ちであることは明らかだが・・・それはすでにかなり浪費されている可能性があり・・・つまり趣味の芸術には金がかかりますから。

壹岐家の資産に関与する親戚一同がいい顔をしないのは明らかなのである。

こうして・・・壹岐は千里との関係はあくまで肉体関係だけの大人の関係にしたいのである。

もちろん・・・千里が「そんなのイヤ」と思えば・・・はい、それまでよ~です。

まあ・・・こんな男をうっとりと眺められる時代がかってあった・・・ということです。

関連するキッドのブログ『第13話のレビュー

Hcinhawaii0614 ごっこガーデン、核開発疑惑の渦巻く中東危険地帯セット。まこイラン、テヘラン、よろしくマシンガン~でしゅ・・・待ちに待った兵頭のターン・・・み、短い・・・デ・・・紅子夫人になって陰謀渦巻くモスクの町でおしのびデートなのでしゅ~。肌の露出は厳禁ですが・・・セットだから大丈夫・・・スパイ気分でおそろのトレンチで決めるのでしゅ~。腕なんかも組んじゃいます~。じいや~、この後はパリの街でシャンゼリゼ・デートを楽しむのでセット・チェンジして~ikasama4おっと遅刻しました~シャブリ同じく~。今、コードブルーあたり~お気楽神なのね

土曜日に見る予定のテレビ『成海璃子の咲くやこの花』(NHK総合)

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2010年2月 4日 (木)

支配からの卒業は誰かのためではなく自分のためにすることだとたぶん分った女(菅野美穂)

情けは人のためならずをめぐる問題である。

この言葉に限らず、言葉には無限の意味があるわけだが、「正解」を限定すると・・・「親切をするのは他人のためではなく自分のためである」というニュアンスになる。

この解釈にも「施しはけしてムダにならない」「やさしさはめぐりめぐって自分にかえってくる」「自己満足って最高」と様々な幅がある。

この場合、否定形から肯定形に遡上して考えてみるという思考法が有効だ。

情けは人のためなり。

情けとは「恩を施すこと」という意味。人とは「恩を施す相手=自分に対する他人」である。

恩を施すことは他人のためである・・・これが肯定形である。

それを否定すると・・・恩を施すことは他人のためではない・・・自分のためだ・・・ということになるのである。

ニュアンスを正しく伝えるために補足すれば「情けは人のためならず、めぐりめぐって己がため」という常套句もある。

さて・・・これに対して「情けをかけることは人間にとっていいこととは限らない」という解釈は誤解とされる。

これは情けは人のためならずの肯定形を「情けは人のためになることだ」と認識することによって生じる。

「~也(なり)」と「~に成る」は音韻は似ているがまったく違うものであるということだ。

この誤解の場合、「恩を仇で返されることもあるから注意しなさい」とか「甘やかすとろくな大人にならないよ」とか警句の意味を含んでくるのである。つまり、その場合は「情けは人のため・に・ならず」なのである。

語法的には前者が正解、後者が誤解なのであるが・・・他人の接し方のアメとムチが一つの言葉で皮肉にも示されているという考え方がある。

前者には「優しさ」を信じるニュアンスがあり、後者には「厳しさ」を伝えるニュアンスがある。

どちらの意味を大切にするかは人それぞれでいいと思う。

水曜日のダンスは・・・。

「相棒」15.7%↗17.2%↘17.1%↗17.5%

「検事」*9.4%↘*5.6%↗*6.0%↗*6.4%

「曲女」15.4%↘11.0%↗13.7%↘13.3%

・・・幹事長の弁護士の勝利なのか。

で、『曲げられない女・第4回』(日本テレビ100203PM10~)脚本・遊川和彦、演出・木内健人を見た。恋人を失い、定職を失い、母親(父親はすでに他界)を失った早紀(菅野)は生きる目的を見失っていた。菅野にとって母親への奉仕こそが大前提であり、ある意味、その呪縛「教師の娘として正しく生きること」によって恋人も失ったし、定職も失ったのである。その母親を喪失した今・・・早紀はもはや死んだも同然なのである。奴隷が主人に殉じることは古来珍しくない。

司法試験のための勉強にも身が入らない。なぜなら合格しても亡き父親のように「受かったこと」を報告して喜ばせる相手はもはやいないのだ。お金がないから働く必要があるが働くことに何の意味があるだろう。食欲がないのに食べることに何の意味があるのだろう。生きていることに何の意味があるのだろう。

だって・・・お母さん(早紀にとっての自分)がいないのに・・・。

虚無に囚われる早紀。母親に愛されたノーフォークテリアのアトムはそんな早紀にはなつかない。お互い、母親の寵を競うライバルであるため、早紀は潜在意識ではアトムに殺意を感じこそすれ、親しみは感じない。けして救いにはならないのである。

頼りのマイケルは「Thriller」を歌いだす。

夜だ 夜更けだ 真夜中だ

月が出た出た 月が出た

ひょっこり悪魔が顔を出す

お前が叫ぶその前に

お前のハートはつかまれた

誰も助けちゃくれないよ

なぜならお前はただひとり

それを望んでここに来た

早紀はこの世の恐怖を終らせようとすべての終わりのスイッチを手探りで探し始めている。

(もういいでしょう、もういいでしょう、もういいでしょう)

自分の不毛な境遇から目を逸らし続ける女・璃子(永作博美)は危機を感じていた。彼女の危険察知能力は「自分より不幸な女がいなくなろうとしていること」を敏感に嗅ぎつける。そんなことになったら「世界における自分の不幸ランキング」は最下位に近付いてしまうのである。

「それだけは阻止しなければならない」

璃子は緊急出動した。

しかし、早紀はもはや瀕死である。璃子は早紀に横恋慕し始めた藍田警視正(谷原章介)を召喚する。

藍田は得意の手料理攻撃で早紀の凍えた胃袋をマッサージしようとするが早紀はアルコールに溺れることを選択する。

「ワラシにはにゃんにもにゃ~い。幸せにゃ結婚をして素敵な旦那様と素晴らしいお屋敷に住んで可愛い子供たちに囲まれてにゃいのれす。国家公務員という輝かしい職務につき日夜人々の安全のために全身全霊をあげて任務を遂行し人々の感謝と賞賛の嵐を受けてにゃいのれす~。ワラシはワラシは失われた十年そのものなにょれす~」

家庭のお飾りである璃子と職場のお神輿である藍田は早紀の放つ悪意なき皮肉に絶句するのだった。

翌朝、意識を取り戻した璃子はカンフル剤として早紀の元彼・坂本弁護士(塚本高史)を召喚する。

坂本弁護士はけして早紀を失いたいと思っているわけではないので生姜汁セットを持って駆けつけるのだった。

早紀の心に坂本とのそれなりに甘い日々が蘇る。

早紀の心の中で母親に支配された30年と坂本との10年の秘密の交際が葛藤を始めたその時。

再び藍田が現れる。藍田は蜆汁セットを持参していた。

しかし、蜆は早紀にとって吐き気をもよおすほど苦手な食材だったのだ。

トイレに駆け込んだ早紀。残されたものは恋のライバルである前に宿命の敵である警察官僚と弁護士である。

犯罪者の敵である警察と犯罪者の味方である弁護士はお互いを憎まずにはいられないのである。

たちまち始まるお互いの傲慢さを賭けた死闘。

他人の揉め事をこよなく愛する璃子は本来の目的を忘れて大喜びするのだった。

悔恨とともに昨夜の残留物を吐瀉した早紀は再び暗闇に向って進みだそうとする。

そこへ・・・老いぼれた天使が舞い降りる。

しがない中島(なかしま)弁護士(平泉成)だった。

彼はかって早紀が失職してまで守った坂本の友人の弁護人である。

引退して田舎に帰るにあたり、早紀の情熱を思い出し、何かの参考になればと弁護士としての自分の活動の記録を早紀に託そうと考えたのだと言う。

「がんばって合格してください・・・君はきっといい弁護士になれる・・・」

一言言い残すと退場である。

早紀にとって・・・天国からたらされた一本の糸である。

しかし・・・失意の早紀はまだその糸にすがることはできない。

ただ・・・早紀に失われた父親との十年を思い出させる効果はあった。

(もしも父が生きていたらどんな弁護士になっていただろう)

早紀は果たされていないもう一人の親との約束を想起した。

天使の登場によりしらけた気分になった三匹の悪魔たちはそれぞれの巣に戻っていく。

しかし・・・璃子には居場所のない魔物の巣。

藍田には居場所のない警察署。

坂本には幸福のない弁護士事務所があるばかりである。

坂本はもう一度・・・早紀を取り戻そうとこっそり回収していた150万円の婚約指輪を取り出す。

そして・・・早紀を二人が出逢った大学の構内に呼び出すのだった。

前回「もう司法試験はあきらめて僕と結婚してください」→失敗だった。

今回「司法試験をあきらめないで僕と結婚してください」→成功を目指す坂本。

しかし・・・早紀の目はまたしても坂本のプロポーズとは別の場所を見つめてしまうのだった。

屋上に佇むしょぼくれた老人の姿である・・・中島弁護士だった・・・。

ダッシュで屋上に駆け上がる早紀。

「自殺はいけませ~ん」

「いや・・・ここは母校なので見納めにしようと景色を眺めていただけですけど・・・」

「・・・なかじま先生はどうして引退なされるのですか・・・」

「なかしまです。私は痴漢の冤罪事件を引き受けて勝訴したんですけどね。依頼者がまた痴漢したんですよ・・・常習犯だったんです・・・もう・・・痴漢被害にあった方たちの苦しみを思うと・・・いたたまれないのです」

「そんな・・・それは逃げというものじゃないですか。逃げんのか・・・じじい」

「えーっ」

「・・・いえ・・・あの・・・私はただ・・・父が生きていたらなかじま先生みたいな弁護士になっていたかな・・・とか考えて・・・あの・・・その」

「なかしまです」

天使は再び去っていった。

プロポーズの続きをしようとした坂本だが、璃子と藍田はもちろん阻止をするのである。坂本と早紀が結婚したらドラマが終ってしまう可能性を考えたのだった。

そして、家庭でのストレスをぶつけるために早紀を平手打ちする璃子。

その現実の痛みが・・・早紀に母親を失った悲しみを実感させるのだった。

脚本家は壊れたテレビは叩けば治ると信じている世代です。

「お母さんが・・・死んじゃった・・・えーん」

涙が止らない早紀だった。

「えーん」

思わず早紀をわが子のかわりに抱きしめる璃子。

「えーん」

しかし、途中で飽きてしまう璃子だった。ここに璃子が家庭のお飾りになる理由があります。

早紀は天使を訪ねた。天使は微笑んだ。

「もう少しだけ弁護士を続けてみようと思います。あなたがパラリーガルをここでやってみますか?」

「やります・・・やらせてください」

「上司になれば私は厳しいですよ・・・情けは人のためならずと申しますからな」

「お言葉ですが・・・それは言葉として正確ではありません・・・なかじま先生」

「なかしまです」

ドアがしまったらもう逃げ場がないような気がする

初めての夜だったらなおさら

やるときめたからにはやらなければならないとはいえ

初めての夜は恐怖に満ちている

ほら 母親からの電話はもう来ないよ

そんなことになったら人類百万年分のゾンビが

墓から飛び出てくるりと輪を描くよ

ゾンビがくるりと輪を描くよ

さあ、震えをとめてあげる

凄い経験をさせてあげるよ

はじめての夜ならくらべることはできないかもしれないが

俺のケダモノはとびっきりなんだ

君なんか一撃でお陀仏さ

スリスリしてラリパッパなのさ

魔物の巣に帰った坂本は思い通りにならない早紀に憤懣やるかたない。そこへ手軽な魔女(能世あんな)が通りかかる。

「まあ・・・いいか・・・今夜のところは・・・こいつを食っちまえ」

魔物の巣に帰った璃子は一族のものに宣戦布告する。主導権を握らなければ我が家とは言えないからだ。しかし、長部の一族を支配するのは姑大魔女帝(高林由紀子)だった。璃子はたちまち自分がノケモノであることを思い知る。

「くそ、くそ、くそ、召使にまで馬鹿にされて・・・やってられるかよ」

魔物の巣に帰った藍田は早紀の母親の亡霊に取り付かれている自分に気がつく。

「だ、だれか・・・お払いしてくれーっ」

しかし忠実な僕(小林すすむ)は寝室には入ってこないのだった。

藍田は仕方なく早紀の元へ走るのだった。

こうして天使と悪魔の早紀をめぐる魂の争奪戦は新たな展開に突入したのである。

関連するキッドのブログ『第3話のレビュー

金曜日に見る予定のテレビ『崖の上のポニョ』(日本テレビ)『ヤマトナデシコ七変化』(TBSテレビ)『星野真里の剣客商売』(フジテレビ)ものすごいサンドイッチキターッ!

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2010年2月 3日 (水)

寝ぐせ爽やか新入社員(榮倉奈々)煮え切らない男(深田恭子)

めちゃぶりという言葉がある。めちゃは滅茶苦茶なの略でぶりはお題を出すということである。

つまり滅茶苦茶なお題を出すことがめちゃぶりである。

新人社員にとりあえず仕事をやらせてみるのは「お手並み拝見」ということだろう。

能力を判断するための「仕事」であるから「出来」を観察するのが「新人ではない社員」の「仕事」であることは間違いない。

そうでないとそれはめちゃぶりである。

めちゃぶりが通じるのは「お仕事の場」ではなく「お遊びの場」である。

そういう常識はもはや常識ではないのか・・・。

もちろん、常識は破られるためにあるので非常識でも構わないのだが・・・そういう前提で「異常事態」を描かれても少しも感情移入できません。

普通の会社で普通に仕事をして普通に恋をして普通に苛められて普通に殺されかかる。

そこを面白がってもらいたいなら・・・もう少しやりようがあると思う。

一方で「まっすぐな男」というタイトルにもかかわらず「にえきらない男」を描く物語がある。

ここでは破天荒に見える女が出てきて、常識的に見える女との同棲が始まる。

二人をよく知る関係者が「もしも常識的な女が破天荒な女に影響されて破天荒になったらどうする」という不安を感じる場面がある。

そこで膨らむ妄想で・・・「破天荒になってしまった常識的な女」を描かないのはどれだけサービス不足なのか。

クドカンなら「未来講師めぐる」の中で事情があってやさぐれてしまった主人公が「休養中の後藤真希のようにパチンコをしている」という前代未聞のシーンをサービスしてくれるのに・・・。

サービス悪いんじゃないか・・・と思うのである。

火曜日のドラマ対決は①「まっすぐな男」↘*7.8% ②「泣かないと決めた日」↘*7.5%

まあ・・・サービス内容に相応しい数字の戦いであると言える。

で、『泣かないと決めた日・第2回』(フジテレビ100202PM0920~)脚本・渡辺千穂、演出・石川淳一を見た。精神異常の殺人鬼・立花(杏)によって冷凍倉庫に閉じ込められた美樹(榮倉)は先輩社員の仲原(要潤)によって凍死寸前のところを救助される。

仲原が病院に運ばれたことで事態が発覚するが、「誰かが意図的に閉じ込めたことになれば大事件」なので美樹が不注意で暗証を立花に預けてしまったことによる「うっかりミス」ということで事は治められる。

だれが・・・美樹の私物をゴミ箱に投棄したのかなどという犯人探しは行われない。

監督不行き届きということで食品チーム・リーダーの佐野(木村佳乃)が始末書を書き一件落着となったのである。

オフィス・ドランカーである佐野は隠しもった酒を煽らないとやってられない気分になるのである。

そして・・・仕事に復帰した美樹の作業中のパソコンのコンセントを引っこ抜き、憂さを晴らすのであった。

美樹の消去に失敗した立花は何食わぬ顔で美樹の友人として振る舞い、さらなる罠を仕掛けるために美樹の携帯電話の通話記録を盗み見る。

立花の意図とは逆に事件によって美樹と仲原は急接近してしまう。

仲原は美樹をデートに誘い、二回目のデートで抱擁。三回目のデートで母親(田島令子)と一緒に食事という素早い進展ぶりである。

立花は食品チーム・いじめ軍団に「美樹は寿退社をしようとしている」と怪情報を流し、低級悪魔に踊らされるゾンビの如く、またもや簡単な通達事項を美樹に伝えないという「業務に支障の生じる苛め」を展開する。

そのために・・・美樹は仲原の母親に紹介してもらえなくなってしまうのだった。

「学生への招待状」の発送が遅れたのは・・・誰のせいでもなく美樹のせいである。

「しかし・・・何も今日じゃなくたって・・・」と泣いてしまう美樹だった。

そこへ通りすがりの桐野統括マネージャー(藤木直人)がやってくる。

「お前が苛められていることと連絡を待っている学生たちは無関係だ。そんなことではお前は苛めているあいつらと同じになってしまうぞ」

部下の監督不行き届きの自分ともなのだが。

仕方なく、学生たちに直接電話をかける業務を行う美樹だった。

しかし、夢に燃えていたかっての自分を思い出した美樹に笑顔が戻る。

「就活するなら食品チームだけは希望しないで・・・」と伝えなくていいのか。

待ちぼうけを食わされた仲原の母は息子にアドバイスする。

「あなたは彼女にそれほど大切に思われていないようね。結ばれる人とはなんの障害もなくスムーズにいくものなのよ」

何か怪しい宗教に入信している言動である。

しかし・・・仲原は美樹にメールを送る。

「お仕事ご苦労様・・・ローマは一日にしてならず」

とにかく、新入社員はキープしておきたいと考えているのだった。

一目見たときから仲原に執着する立花は経済的に恵まれているらしく、偶然を装って仲原の近所に引越し、待ち伏せをかけるのだった。

その頃、美樹は先輩社員・藤田(片瀬那奈)の万引きを目撃する。

・・・これ・・・どうすれば面白くなるのか・・・見当もつかないな。

こうすればいじめられないマニュアルとか・・・こうすればいじめられるマニュアルとかか。

関連するキッドのブログ『第1話のレビュー

で、『まっすぐな男・第4話』(フジテレビ100202PM1020~)脚本・尾崎将也、演出・大塚徹を見た。これは基本的にはラブ・コメだと思う。ラブ・コメの基本はおかしな男とおかしな女が恋をすることだ。たとえば同じ脚本家の「結婚できない男」だといい年して独身であることをこよなく愛する建築家といい年して独身であることにまったく気がつかない女医が出会うというベタな展開がある。

当然、このドラマはタイトルのまっすぐな男・松嶋(佐藤隆太)と第一話のサブタイトルである曲がりくねった女・栗田(深田恭子)のラブコメなのである。

栗田の曲がりくねりはまあまあだと思う。同居人・萱島(佐々木希)に対する憎めないあつかましさ、窃盗してもまったく悪びれず、昔の男(波岡一喜)の悪事(大麻栽培)をたまたま暴いて刑務所送りにした後の醒め方、飲み屋でビルのオーナー(きたろう)を一瞬で虜にする小悪魔的魅力、そして町田(貫地谷しほり)のバイクを一瞬で破壊し、矢部(渡部篤郎)の高級肉を強奪する豪快さ・・・ますまずである。

それに対して、まっすぐな男はちっともまっすぐではない。どちらかといえば長いものにはまかれる男である。そして栗田の曲がりくねった態度に翻弄されっぱなしなのである。

結局、栗田の極端なふるまいに対して受けに回っているのだ。それは彼がおかしな男ではなくて普通の男だということだ。

だから・・・このドラマはもうひとつインパクトがないのである。

松嶋が「お前はどんだけ曲がってんだ」と言えば、栗田は「あんたはどんだけまっすぐなのよ」と答えるくらいでないと面白くないのである。

今回なんて現場での手抜きを指摘しておいて上司に意見されてあっさりひっこめて・・・結果、職人(不破万作)が気が咎めてちょっとまっすぐなところを見せるという意味不明の展開である。・・・いや意味は通っているが・・・主人公がまったくまっすぐではないということだ。

まっすぐだったら・・・手抜きタイルを盗んで、高級タイルをゴリ押しするくらいのまっすぐさがないと・・・それはちょっと違うぞ。

今回は町田とデートしているところを栗田に見られると「つきあってない」宣言である。どこがまっすぐなんだ。

そして町田に「栗田ばかりを見ている」と指摘されると「そんなことはない」宣言である。そして酔った町田を抱きしめる・・・どこがまっすぐな男なんだ。

ただの優柔不断な男じゃないか。

しかもちっともおかしな男ではないのである。

たとえば・・・このドラマの下敷きには当然、映画「ティファニーで朝食を」(1961年)があり、不幸な生い立ちを持つ自由気ままな女というのはそのままなのである。これに対して映画の男性主人公はややまともにも見えるが・・・実際には冷淡な男の側面も持つ。

自由と冷酷・・・そのバランスが傑作を生み出している。

このドラマではそれが矢部に押し込められて・・・松嶋の魅力を半減させている。

栗田が曲がりくねった破天荒な女である以上、松嶋はまっすぐで破天荒な男でないとね。面白くならないと思うよ。いくら名前のない猫を出してもね。

関連するキッドのブログ『第1話のレビュー

木曜日に見る予定のテレビ『とめはねっ!』『グインサーガ』(NHK総合)『853』『エンゼルバンク』『7万人探偵ニトベ』(テレビ朝日)『不毛地帯』(フジテレビ)

ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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2010年2月 2日 (火)

ドクター・ヘリはあるが赤ちゃんポストはないコード・ブルー(山下智久)緋白歌合戦(戸田恵梨香)

今さらだがコードブルーは「緊急事態発生につき至急全員集合せよ」の暗号である。藍沢の藍色はそのシンボルである。緋山の緋色は赤である。クリムゾン・レッドである。コードレッドは「院内にて火災発生」の暗号である。

ついでに言うと、コードゴールドは「脳死ドナー(臓器提供者)発生せり」の暗号で、コードグリーンは「大規模災害発生により死傷者多数のおそれあり」の暗号だ。

人々が専門家だけで交わす言葉には一般人に触れられたくない意味をそれとなく含んでいる。

人々は同じ場所にいて同じ景色を見、同じ音を聞いても、同じ感想を持つとは限らない。

たとえば、キッドは今回の橘(椎名桔平)と三井(りょう)そして西条(杉本哲太)の会話を聞いていて・・・現在、三井と西条が深い関係にあるような気がした。

橘と三井は元夫婦だが最初の子供はなんらかの理由によって死んでいるような気がする。ところが三井はシングル・マザーで子供は生きている。実に意味深である。もちろん・・・橘と三井が離婚した時に単に子供を引き取っただけなのかもしれないが・・・今の三井の子供は別の誰かの子供のような気がする。

その大きな理由は三井と橘が子供について話さない・・・という一点にある。

もちろん・・・母親がひきとった子供について父親が無関心であることもないわけではない。

1st Seasonの指導医・黒田(柳葉敏郎)は実際、そういう傾向があった。

主人公・藍沢(山下)と父親(リリー・フランキー)の関係も「父親が死んだことになっている」ほどの極端さである。

繰り返される主題から・・・「父親の育児放棄」はこのドラマの大きなテーマの一つであることが分るが・・・「家族写真」を飾る橘の心情はどこかそれとはずれている気がするのである。

そうなると三井の生きている子供の父親が誰かということになる。登場人物の中にいるとすれば西条だろう。

西条が別に家族を持っているかどうかは不明だが・・・三井とは不倫の関係の方が理解しやすい。

キッドの妄想的には「橘と三井はなんらかの原因で愛児が死亡したことにより離婚、失意の三井と恩師の西条が不倫、三井が西条の子を妊娠出産・・・現在に至る・・・」なのである。

そうすると西条の次のセリフは実に意味深い。

西条「一体、橘はなんでこの病院に来たんだ?」

三井「・・・」

西条「君に逢いにきたんじゃないのか・・・?」

まあ・・・「ギネ」だったら充分ありうる展開だと思う。もちろん、これはあくまでキッドの妄想の話である。

本題に入る前に恒例の週末の視聴率チェック。「宿命」↗*7.4%(あげてきたーっ)、「ヤマトナデシコ七変化」↘*7.6%(さげてきたーっ)、「金太郎2」↘*9.2%(さげたが金9金10に勝っている)、「エラゴン」10.7%(ちょっと展開がもたつくもんで)、「松本清張・山峡の章」14.7%(うっちーとったな)、「ブラッディ・マンデイ」↘*7.9%(直前再放送も虚しく・・・)、「左目探偵」↘*7.7%(数字が泣いている・・・)、「咲くやこの花」↘*8.8%(数字もかわいい)、「明日はない」↘*5.6%(下げ止まらず)、「ハッピーフライト」17.0%(脱出、脱出・・・万歳)、「凍える牙」16.8%(いい勝負だ・・・)、「龍馬伝」↗24.4%(黒船すげぇぇぇぇぇぇ)、「特上カバチ」↘*9.1%(仁の貯金を解約)、「母べえ」15.0%(吉永小百合的な映画・・・ふっ)・・・ついでに「ハンチョウ」→12.5%(→キターッ)、「コードフルー2」↘16.2%(おや?)・・・「世界1のSHOWタイム」19.5%(これか・・・)・・・以上。

で、『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命 2nd Season・第4回』(フジテレビ100201PM9~)脚本・林宏司、演出・葉山浩樹を見た。シナリオ的には序破急で展開するコードブルー。ただし、演出はワンツーで来ているので独特なリズムが生じている。今回はこれまでのオチとこれからのフリが交錯して展開する。深まっていくのは藍沢の生い立ちの秘密。そして橘の心の裏側。クライマックス直前は冴島(比嘉愛未)と田沢(平山広之)の愛の行方。そして1st Seasonから続く白石(新垣結衣)と緋山(戸田)の心の傷と愛の絆である・・・それは違うだろう。藤川(浅利陽介)は森本(勝村政信)と梶(寺島進)とともに蜜柑を食べる会を結成するに至る。

過去とは記憶である。

苦い記憶、辛い記憶、そして切ない記憶。

人々は記憶を失うこともあるが忘れようとしても忘れられない記憶に縛られている。

未来に進もうとして過去に引きずり戻されるのだ。

たとえば、インタビューの基本は相手の過去を探ることである。いくつかの切り口はあるが「面白い話」であるためには「事の成否」は重要だ。成功の場合はそれに至る苦心を聞き出し、失敗の場合はその原因と苦しい胸の内を聞く。人々は様々な過去を持つが普段はそれを思い出すことはない。そのために想起を促す必要がある。記憶の検索のためにいくつかのキーワードが考えられる。それは出産、成長、家族、学校、職場と広がるフィールドについての語彙が適当である。記憶を遡るうちにやがて極私的なものごとが開示されていく。恋愛、結婚、出産、育児・・・キーワードはいつしかリフレインする。結局、人間の物語は出会いと別れに尽きるのである。

しかし、時に過去は記憶に残っていなくても存在する。人は自分の見知らぬ過去に出逢った時、立ちすくみ、思わず問うのである。それは本当なのか?・・・と。

藍沢も祖母・絹江(島かおり)の病室で見知らぬ男と遭遇する。その男はとっくに死んだはずの父親・誠次(リリー・フランキー)だった。男が気まずい表情を浮かべて立ち去った後で藍沢は祖母を問い詰める。しかし、祖母は肺炎を再発するのだった。

「お父さんは死んでいなかったのか・・・」

それから容態が安定するまでの一週間、藍沢は複雑な気持ちのやり場に耐えていた。

藤川が気軽に挨拶しても藍沢の反応が鈍いのはそのためだった。

不治の病であるALS(筋萎縮性側索硬化症)に犯された田沢の死期は迫り、心は乱れていた。その心痛を恋人として浴びる冴島の心も穏やかではない。

黒田の右腕切断以来、不眠不休で働いてきた白石の顔色は土気色だった・・・死ぬぞ。

藤川の軽いノリに応じる元気は心房細動のカテーテル・アブレーション(心臓内カテーテル手術)を受けた緋山は経過が良好で不整脈が収まり、元気を取り戻していたが、そうなると遅れを取り戻すために忙しく、藤川の相手をしている暇はないのだった。

藤川に残されたのはドクター・ヘリの管制オペレーター・轟木(遊井亮子)との結婚直前でありながら轟木の元カレ・ニクソンとの三角関係に悩む森本医師の愚痴の相手をすることだけだった。

藤川も冴島と田沢の間に割って入りたかったが現在のところおよびでなかったのである。

白石は疲労困憊していた。いつものエレベーターで一瞬、眠りそうになる。そこへ、橘が・・・続いて緋山が駆け込んでくる。

緋山と白石を軽くナンパする橘。

緋山「・・・オペ看(手術室看護師)に手を出してるそうじゃないですか」

白石「私は・・・血液透析の勉強をしたいので」

お断りされた橘が去ると・・・「あんな男と結婚するなんて・・・三井先生別れて正解だわ・・・」と快調に毒づく緋山である。その時、白石に着信ありである。すかさず覗き込む緋山。

緋山「今夜どう? 恒夫って・・・あんた男いたの・・・私に心カテ推奨したり、ヘリのフライト数を稼いだりしている上に男がいるなんて・・・あんたどんだけやり手なのよ・・・どんだけ多忙なの」

白石「ごめん」

緋山「謝るなっつーの」

本日のエレベーター・コント終了だ。毎回はないだろっ。あってもいい。

そして・・・轟木「ドクター・ヘリ、エンジンスタート」である。

今回のゲスト患者は木島(木南晴夏)である。強風のために落下した看板に強打され意識を失ったのだ。

出動したのはドクター藍沢とナース冴島。そして白石はヘリポートに待機する。

その留守を狙って田沢の容態が急変する。田沢をフォローする藤川。

一方、緋山は外来で前日に白石が担当した患者を診察し・・・異常に気付く。

「生がきを食べてノロウイルスに感染・・・整腸剤を処方と・・・いや・・・これは腹部大動脈瘤の切迫破裂(破裂の前兆としての腹痛)だわ・・・」

不気味に脈動するエイリアン・・・じゃなくて動脈に押し上げられた腹部を見て緋山は蒼白となる。

最近、出番の多いナース辻(垣内彩未)に「心臓外科の東先生にコンサル(診断助言)頼んで・・・大至急よ」所謂ひとつのコード・ブルーなのであった。たちまち、CT検査により動脈にエクストラ(突出した患部)が発見される。緊急手術である。

この瘤が破れると大出血して死にます。

院内は緊迫していたが、搬送中に意識を取り戻した木島は20才のお気楽・極楽ギャルであった。

木島「あっれー、もう病院についたの~・・・超早い・・・」

患者としての緊張感のない態度に苛立つクルー一同だった。藍沢は既往歴(入院歴・病歴・アナムネーゼ)を問いただす。

木島「これまでにかかった病気・・・そんなのないな・・・私、健康だけがとりえなの・・・超健康みたいな・・・でも妊娠してるけど」

一瞬、凍りつくクルーだった。

かしこさんから薄倖の令嬢までなんでもござれのハルハルならではの超演技である。

外傷の手当てを開始する医療チーム。しかし、木島は藍沢に「ねえ・・・先生、手を握ってぇ」である。すかさず橘が「握ってやれ・・・」とニヤリ。

藍沢は木島の手を握って励ましプレーなのである。

木島の容態は安定し、母子ともに異常はなかった。

木島は数年前に家を出て両親と没交渉、さらに子供の父親は懐妊を告げると携帯を解約して失踪していた。

藍沢「妊娠24週で順調に生育しています」

木島「でも・・・私、産む気ないんだよね」

藍沢「妊娠六ヶ月だともう堕胎はできません」

木島「そうなんだよね・・・ああ・・・どうしよう・・・」

藍沢「・・・」

木島「先生はいいよね。顔もいいし・・頭もいいし・・・めぐまれている・・・」

白石は腹部動脈瘤の見落としについて救命センター部長の田所(児玉清)に呼び出されていた。

田所「エコーと腹部レントゲンをしているし、発見は困難ですから、医療ミスとは言えないですね」

白石「念のため・・・CTをオーダーするべきでした」

田所「蓄積した疲労は判断力を鈍らせます。ここはひとつしっかりと休養をとってください」

橘「あまり・・・自分を追い詰めて無理をすると・・・いつか傷つけてしまうぞ・・・患者も・・・そしてお前自身もな」

白石「・・・」

会議の終わりを待ち構えていた緋山は「落ち込まないでよ」と白石を気遣う。

緋山「私はいい症例を体験できてラッキーだったんだから」

白石「・・・」

冴島は空白となった田沢のベッドに不安を感じた。そこへ処置を終えた田沢が藤川に付き添われて戻ってくる。

藤川「とりあえず・・・安定した」

冴島「そう・・・」

田沢「残念だったな・・・終わりにならなくて・・・」

冴島「・・・」

田沢「(藤川に)俺は・・・彼女の家庭教師だったんだ・・・それが今は下の世話までさせている・・・よかったな・・・お前(冴島)は・・・立派なフライト・ナースになれて・・・」

冴島は一瞬にして高校生の自分に戻る。田沢は冴島の兄の友人だった。医学生だった田沢は請われて医学部志望の冴島の家庭教師になった。やがて二人は田沢が医学部から盗み出した医療キットでお医者さんごっこをする仲にまで発展したのである。

やがて・・・田沢は心臓外科医となり・・・冴島はナースとなった。輝いていたあの頃。

田沢の最初のプレゼントはブローチだった。生意気盛りだった冴島はそのプレゼントが気に入らず「だっさーい、趣味悪~い」と田沢をからかった。そして田沢は発病した。

冴島が過去の回想から戻るとそこには病み衰えた田沢が横たわっている。

田沢「俺は・・・医者として・・・たくさんの命を救おうとしていたのに・・・何故・・・こんなことに・・・何故・・・俺なんだよ・・・もう・・・来ないでくれ・・・」

橘はカルテの整理をしていた。

妊婦の木島の「妊娠第24週」の記載が目に止る。

それは橘を大学病院での修行時代に引き戻す。その頃の指導医は西条だった。ある患者も妊娠第24週だった。カイザー(帝王切開)で母体と切り離された胎児は体内で感染しており臓器不全があり助かる見込みがなかった。その胎児への挿管を西条は橘に命じた。

橘「でも・・・そんなことをしても苦しみを長引かせるだけで・・・」

西条「超未熟児の挿管なんて滅多にできないぞ。いい練習になるはずだ」

橘「・・・」

橘は前途有望な医師だった。西条は橘を買っているからこそそのように命じたのである。

橘は挿管した。一度挿管すれば胎児が死ぬまで管は外せない。

胎児は仮称として小林ベイビーと名付けられた。

橘は小林ベイビーから目を離すことができなかった。同僚だった三井は橘の身を案じた。

その五日目。小林ベイビーの人工保育器の前に佇む橘に三井は声をかけた。

三井「橘先生・・・お休みになってください・・・先生はきっといつか・・・磨いたその腕で患者の命を・・・」

橘「十分ほど前だ・・・心肺停止した・・・」

三井「・・・」

橘「この子は・・・がんばった・・・きっと、助けてもらえると思ったんだ・・・すまない・・・俺は・・・この子をだました・・・」

橘の記憶は三井のそれと重なっていく。

一方、木島は相変わらず何かに浮かされたようにおしゃべりだった。

木島「先生はゴッドハンド輝みたいな名医なの・・・そうなんでしょう・・・リスペクトしちゃうなぁ・・・」

藍沢は診察しようとして異変に気がついた。

藍沢「おい・・・これは」

木島「なんだか・・・びしょびしょに水漏れがして・・・」

木島の意識は混濁していた。

藍沢「破水している・・・三井先生を呼んでくれ・・・」

木島は子宮頸管無力症で、子宮口全開の状態だった。

三井「このまま、出産させましょう・・・」

橘「・・・」

三井「大丈夫・・・この子は胎内感染もしていないし、臓器不全の兆候もない。発育も順調で700グラム近くあるから・・・無事に育ちます」

橘は自分の過去を三井が共有していることを感じた。

橘「そうだな・・・そうしよう・・・」

木島ベイビーはこうしてこの世に生を受けた。680グラムだった。

藍沢は木島に報告する。

藍沢「一命はとりとめた・・・」

木島「そうなんだ・・・でも・・・私は」

藍沢「わかっている・・・親になりたくなければならなくていい・・・子供の顔も見なくていい・・・お前みたいな親ならいらない・・・子供は産み落とされたら一人で生きていける」

木島「・・・」

木島は雷に撃たれた。

その頃、暗がりで白石は落ち込んでいる。そこへ緋山がやってきた。

緋山「また落ち込んでいるのね。私はあなたの気持ちが分かるつもり。今回の失敗だけじゃない・・・黒田の右腕が切り落とされたときからずっと過去に縛られたあなたの気持ち。私だって同じだもの」

緋山はタートルネックのシャツをはだけて手術痕の赤いケロイドを誇示した。

緋山「心カテで心房細動は治ったけど・・・事故のフラッシュバックは今も起こる。初療室で患者を処置している時・・・自分が呼吸器を装着していた時の苦しみ・・・痛みを思い出して息が止りそうなときがある。でも私に蘇る過去は辛いことばかりじゃない。私を助けてくれた黒田先生、藍沢、チームのみんな・・・それから白石・・・。あんたもさ。一人じゃないし、一人じゃできないことがあるでしょ。だから・・・思うのよ・・・何もかも一人で抱え込まないでって・・・私だってここにいるんだから」

白石は緋山を見つめた。その時急患が発生。ピョンピョン飛び跳ねた子供が窓から飛び出したらしい。クラムシェル(胸部外傷手術の開胸法の一種)にシニア・ドクター抜きでチャレンジする二人のフェロー・ドクター。

通りすがりの橘「よくやった」

二人は目と目で通じ合うニヤリの応酬である。

絹江の病室に誠次が舞い戻っていた。

絹江の心は乱れる。息子への愛。息子が捨てた孫への愛。二つの愛の作る過去は絹江から言葉を奪う。絹江は孫に言えなかった言葉を息子に投げつける。

絹江「何しにきたんだい・・・今さら」

誠次「おふくろも・・・いい年だしさ・・・お見舞いしておこうと思って」

絹江「お前は・・・あの子から逃げたんじゃないか・・・死んだことにしてくれって・・・私にその口で言っただろう・・・」

誠次「・・・」

絹江「お前は・・・あの子の苦労を知らない・・・親に捨てられて・・・あの子がどんな思いで生きてきたか・・・あの子はいつも私に言った・・・僕はいい子?・・・そう聞かずにはいられないんだ。自分が悪い子だから親なしになったと思ってるからだよ・・・いい子じゃないと私にも捨てられるじゃないかと怯えたからだよ・・・だからあの子は必死で勉強した・・・そりゃ・・・おそろしいほどの勉強ぶりだったよ・・・わかるかい・・・そうせずにはいられない・・・惨めな子供の気持ちが・・・お前にさ・・・自分の子供を捨てることのできるお前に・・・お前・・・あの子に会わせる顔があると本当に思っているのかい・・・」

誠次はうなだれて去った。

藍沢はNICU(新生児特定集中治療室)で木島ベイビーの面倒を見ていた。そこへ未熟な母親がやってきた。

藍沢「俺のことを恵まれてると言ったな・・・俺は祖母に育てられた・・・。俺には両親の記憶がほとんどない。顔も覚えていないし、言葉を交わしたこともない。でも、俺は親が欲しいなんて思ったことは一度もない。人は一人でも生きていける。この子だってそうだ・・・一人で生きていこうとしているんだ」

木島は再び雷に撃たれた。長い旅をしてきたのは・・・この医師の身の上話を聞くためだったのか・・・と木島は思った。こんなことになったのは冷たい親のせいか・・・違う。不実な男のせいか・・・違う。私にはもう逃げ場はないんだ。

木島は藍沢の許しを得て木島ベイビーの小さな手に触れた。

木島「ああ・・・かわいい・・・なんてかわいいの・・・」

木島は三度雷に撃たれた。その顔に浮かぶのは自分のための不安ではなかった。大切な別の何かに対する恐れを孕んだ不安。

木島「でも・・・私に育てられるのかな・・・この子を」

藍沢「・・・授業参観に親がいなくてもそれほど嫌じゃなかった・・・運動会で・・・担任と二人三脚をするのは辛かった。俺の心にはたった一言、父親が言ったのかもしれない言葉が残っている。その人は俺の頭を撫でて言ったんだ・・・良い子にしろよってな。それきりだ。二度とその人に会うことはなかった。子供の育て方なんて・・・俺は知らない。ただ・・・親が一緒にいてくれたら・・・いてさえくれたら・・・どんなだっただろうと思うだけさ」

木島「じゃ・・・先生のおばあちゃんに聞けばいいのかな・・・先生みたいな子供に育てる秘訣みたいな・・・だってこの子がお医者さんになったら・・・超ラッキーじゃね?」

冴島の勤務時間が終った。私服に着替えた冴島は出掛けに発見したブローチをつけた。「もう逢いたくない」と言われる前にそれをつけようと決めたのだ。相手が逢いたくなくてもそれだけは見せたいと思った。

田沢「今日は・・・早いな・・・さっきはすまなかった・・・」

冴島「・・・」

田沢「どんどん・・・弱く醜くなっていく自分が・・・恐ろしいんだ」

冴島「そうね・・・あの頃のあなたは本当に輝いていた。いつも強く美しかった。私はその輝きに魅かれてあなたの歩く道を追いかけていた・・・あなたに憧れてあなたに恋して・・・あなたは変わってしまった・・・でもあなたを好きな私の気持ちは少しもなくならない・・・それが辛いの・・・あなたを失うことに自分が耐えられるかもわからない」

田沢の目はさまよい・・・漸くブローチに気がついた。そして幽かに微笑んだ。

田沢「そのブローチ・・・あの時のか・・・なるほど・・・確かにださいな・・・」

冴島「・・・後悔しているわ・・・もっと早くつけて・・・見せてあげればよかった・・・たった・・・それだけのことで・・・あなたが笑ってくれるなら・・・」

冴島は泣きながら田沢の胸に飛び込んだ。田沢も涙が一筋こぼれる。田沢は冴島を抱きしめようとした。だが・・・指先が幽かに揺れただけだった。

白石は男との待ち合わせに緋山を誘った。ついに私服解禁である。

そこは場末な感じの漂う一角だった。

緋山「ここが千葉じゃなかったら二丁目かと思うわ」

待ち合わせ場所は「スナックすれちがい」だった。

緋山「えーっ・・・ここで昔の男と待ち合わせなの・・・どんだけ昭和なの」

白石「昔の男っていうか・・・元・男っていうか」

緋山「なんじゃ・・・そりゃ」

そこにいたのは1st Seasonで冴島が田沢をお披露目した第7話で、バンコクで性転換手術をした後に腸閉塞で入院したニューハーフ・メリージェーン洋子こと大山恒夫(古本新乃輔)だった。立派な女になった洋子と白石はしつこく誘われるので店の売り上げに貢献していたのだった。ついに行きつけの店解禁である。

洋子「いらっしゃ~い、ブス二人ご案内~、ボトルキープ入りました~」

緋山「全自動ニューボトルかよっ」

ストレスだらけの二人の女医はオカマ・バーで飲んで歌った。

白石は疲れている上にオフでこんなに騒いだらいつか本当に死ぬぞ。

緋山は怒ったり凹んだりしている白石が好きだった。もちろん、つんとお澄まししている優等生もきっと嫌いではないのである。なぜなら緋山は白石のすべてを愛しているのだから・・・本当かよっ・・・あくまで妄想です。

その頃、藤川と梶は「轟木が森本とニクソンのどちらを選ぶか」で賭けをしていた。

二人がニクソンに賭けた場合は森本が受ければいいのである。失恋してもかけ金が入ってくるので慰めになるからだ。

過ぎ去った過去は戻ってこない。

しかし、記憶は蘇る。

二度と戻れないあの日々の記憶。

だが・・・時には記憶には残らない過去もある。

あったと思っているだけで実はなかった過去もある。

そして・・・なかったはずの過去が突然不意打ちをかけてくることも。

そんな時、戸惑うことなく知らない過去を受け入れられる人間は少ないだろう。

藍沢「屋上から墜落した・・・じゃあ・・・母さんは自殺したの・・・」

絹江「自殺じゃないよ・・・あれは・・・事故だったの・・・」

藍沢は祖母の言葉を素直に信じることができず・・・ただうろたえていた。

そこそこ美味しそうだったケーキは食べたのか・・・。そこが一番気になるポイントである。・・・お前だけだろう。メンテナンス明けで作成画面が新仕様に・・・「ハッピーフライト」の岸部一徳の気持ちになりました・・・。

関連するキッドのブログ『第3話のレビュー

Hcinhawaii0611 ごっこガーデン。デコヘリ・まこりん号ヘリポート。まこ冴島・・・ついに来週は別離の時でしゅか・・・ツインテールにセーラー服、比嘉先輩思いっきりなんちゃってチャレンジが健気でしゅ~。冴島・田沢の愛に泣き・・・橘と小林ベイビーの別離に泣き・・・藍沢と木島の魂の会話に泣き・・・白石と緋山の友情に泣き笑い・・・とにかく、ヘリの休養日だったので愛機まこりん号と同じデコレーションに仕上げてみましゅた~お気楽うーん、セーラー服はまだいけるといえばいける・・・えっ・・・毎週でもいいくらい?・・・それはどうかな。両親と良心のだじゃれは聞き飽きたよね・・・えっだじゃれじゃないの?・・・メリージェ~ン、オン・マイ・マインド~くう人は一人でも生きていけると嘯く藍沢・・・一人でできることはたかがしれてると緋山・・・全く逆のことを言っているけれど伝えたいことは同じ・・・側に誰かがいること・・・こんなにうれしいことはない・・・ということかしら・・・。絆・・・よね。・・・なんちゃって高校生とか、なんちゃって大学生とか、なんちゃって研修生はの、脳内変換が困難でした~

Hcinhawaii0612 ごっこガーデン。哀愁のスナック・スレちがいセット。mari新しいPちゃまの肖像がとても素晴らしい出来ですね~。ikasama画伯ご苦労様でした~。今回は冴島の泣きながらむしゃぶりつくシーンに泣かされましたわ~。もちろん・・・木島の母性を導く藍沢、生い立ちの秘密に戸惑う藍沢・・・神々しくても悩んでもPちゃまの魅力に死角なしですよ、私たちはいい感じ~みのむし今回は前回ほど泣き虫にならないで見れました~。こんな自分でもいいお母さんになれるのかって・・・思うことがいいお母さんへの第一歩なのでありまするるる・・・わ~い、遅刻しませんでした~。今回は過去がテーマ・・・患者の両親に電話したりして・・・ギャルの軽い態度の奥に潜む不安を藍沢は読み取っていた感じがしますね~。藍沢無双ですね~ありがとねヨロシクね~ikasama4今回の新作ロイドは自分でも気にいってます。調子に乗って飲みすぎたらゲル化しました~。今回は轟木さんが想い出の写真で脚線美の新たなる境地を・・・。それにしても西条、三井、橘の三角関係に黒田先生もからんでくるとは~・・・うかうかできませんなーっ・・・木南ちゃん連夜の登場はウハウハですがーっシャブリおっとー、遅刻しました今、特上カバチあたりーっ・・・とにかくかしこさんは健在なのでありました~

Hcinhawaii0613 ごっこガーデン。医師と患者だからそっと手を握る処置室セット。エリ今日はハルハル先輩がおいしいところを全部もっていったのでスー。藍沢Pにおねだりで手を握ってもらえるなんてはうぅんですyon!・・・絹江おばあちゃんは口が重くてなかなか真相を話さない・・・藍沢Pはあいまいな過去にずっともやもやしているのですねぇ。患者の前ではパーフェクトにふるまう藍沢Pは藤川には素っ気無い素振り・・・緋山と白石のアツアツぶりに対して・・・ある意味、藍沢は藤川に甘えているのかもしれません。藍沢の過去もそうですが橘の過去もまだまだ裏がありそうですねぇ・・・そしてついに田沢さんが・・・来週はみなさん喪服を着用なのデスね・・・

水曜日に見る予定のテレビ『曲げられない女』(日本テレビ)『石井萌々果の相棒』(テレビ朝日)『洞口依子の赤かぶ検事京都篇』『新撰組ピースメーカー』(TBSテレビ)

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皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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2010年2月 1日 (月)

浪花節だよ経営は(櫻井翔)お久しぶりね(木南晴夏)演歌カバチかっ(堀北真希)

さて・・・ついにプロデューサーの演出である。一部テレビガイドでは演出・なっき~♡になっていた。・・・アホかっ。

なんていうか・・・うろたえちゃってますな。

それでも・・・前回よりは幾分見やすくなっている。

それよりも脚本のキレが明らかに悪くなっている。

たとえば・・・どうして今回のゲスト依頼者がどうして父娘家庭なのか・・・とか、依頼者の家賃滞納の状況とか、依頼者の契約非更新の実体とかがコンパクトに説明されないので・・・ものすごくもどかしい展開である。

あげくのはてが・・・「ゴッド・タン」なみのスタンディング・オベレーション・オチって・・・日曜劇場はテレビ東京の深夜なのか。

どうして、普通にドラマを作れないの?・・・この素材は「仁」レベルの傑作になる可能性充分だと思うのに・・・。

不思議だ~。不思議すぎる~。

で、『特上哭きの竜・・・じゃなくてカバチと苦情じゃなくて・・・特上カバチ!!・第3回』(TBSテレビ100131PM9~)原作・田島隆、脚本・西荻弓絵、演出・今井夏木を見た。まあ、不況は誰のせいでもなく自然現象だと考えると誰も甘えてはいられなくなるわけだが・・・そういう認識もある程度、知的じゃないと不可だしね。

日本の背中は煤けてるわけで・・・。

そもそも・・・通りすがりの行政書士見習いが経営者に意見するとすべてが丸く収まるなら誰も苦労しないわな。

田村(櫻井)が「中国は人口多すぎるから半分にしてください!」と言うと中国人は半減するのか?

田村が「北朝鮮は核兵器開発とか即時中止してください!」と言うと金一族は万歳三唱するのか?

田村が「投資のための投資は不健全ですから額に汗しない人は自家用ジェット禁止です!」と言うと世界の人民は全員働かざるもの食うべからずの呪文を唱和するのか?

・・・たとえが意味不明になってきたぞ。

世界の背中も煤けているわけで・・・。

かって国境で守られてきた国民たちの人並みの暮らしは経済の国際化によって底なし沼になっている。

かっては対岸の火事だった「絶望的な飢餓」「地獄のような貧困」「エイズの蔓延」が世界と一体化した経済の下ではどんどん流入してくるのである。かってはどんなに貧乏でも紛争地帯の難民よりマシだった国民の生活はもはや容赦なく最底辺に向かっていくのである。

もちろん、それがイヤならばシマウマではなくライオンになるしかない。

だが、もはやライオンの背中も煤けているわけで・・・。

今時、「不法なギャンブルの借金は法律的に負債として認知されない」なんて小学生でも知っているだろう。

その代わり、ギャンブルで負けたものはこわいお兄さんに消費者金融に連れて行かれ、その場で法的に有効な借金をさせられ、負け分を回収されるという機能的なシステムがあることは中学生になれば知っているはずだ。

そういうことは義務教育で教えるのだろう・・・教えてないのか?

義務教育の背中が煤けているぜ・・・。

枯草美咲(芦田愛菜)は不幸な四歳の少女である。幼くして母に死別。父親(石黒賢)はオフィス用品の会社に雇用されているが契約社員である。しかもアパートの家賃を滞納するような低賃金なのだ。これまでは滞納しなかったのになぜ突然滞納したのか幼い美咲には知る術もないがお茶の間にも最後まで知らされない。そしてついにアパートから追い出されてしまうのである。保育園を出たら最後、冬の寒気にさらされ野宿しなければならないていたらくだ。そのために美咲は風邪を引いてしまうのだ。運が悪けりゃ肺炎になって死ぬまでだ・・・死ぬまでにもう一度・・・桃のジュースを飲みたかったな。

そこへ彗星の如く現れた田村。田村はコピー機の修理に子連れで訪れた父親を自宅に招待してくれるのだ。凄い熱なのに医者を呼んでくれないあたりがちょっとバカだがアイドルのような笑顔が素敵なので許してあげるしかないのかもしれない。

さらにどう考えても行政書士にしておくには惜しい天使のようなお姉さんの美寿々(堀北)が現れて美咲は熱にうなされながら・・・この人なら助けてくれるかもしれないと一縷の希望を持ったのであった。

田村は大きな声を張り上げて大家さんを罵るしか能がないのだが、美寿々は「大家と店子には信頼関係があり、初めてで短期間の家賃滞納ではその信頼関係が損なわれたとは言えないので法律は家賃の支払いを滞らせた店子の味方をします」と大家を恫喝するのである。やはり美寿々の方が説得力がある。美咲は将来なるとしたら行政書士見習いではなく行政書士になろうと決意するのであった。

父親の働く会社は経営が苦しいために融資を受ける銀行から黒川取締役(神保悟志)が出向していた。この黒川が経営状態改善のため、リストラを強行しているのである。「10人を殺せば90人が助かる」という大義名分である。しかし、「10人が20人になり、20人が99人になっても自分だけは助かろうとしている」とも言えるのではと美咲は思う。

私はそうなる前に「一杯の桃ジュースを三人で分けることができればかけそばを越えるエピソードになるかもしれない」と思ったりするのだ。しかし、ワーク・シュアリングにも限界がある一杯のかけそばを100人で分けるとなると麺とおつゆ・・・どちらが子供に残されるのだろう。誰もが「大きい方をお食べ」と言ってくれるとは限らない。

まあ・・・お母さんの待っている夜空の星になるのもそれはそれでいいかなと美咲は思う。

父親の同僚の岡本桂(木南)もまた契約社員で正規雇用を求めるが給料半減のパートなら可と云われ困ってしまう。後先考えなければ夜のバイトで充分稼げそうなのに・・・と美咲は値踏みする。

横領まがいのことをして逮捕されるバカな父親である。それでも田村はマジ泣きし美寿々はウソ泣きしたりしてそれなりに善戦するが、顧問弁護士の検備沢(浅野ゆう子)が登場すると一刀両断にされてしまう。美咲は行政書士になるよりも弁護士になりたいと思うのだった。

もうだめだ・・・と思ったとき、田村が掟破りに近い「主役」というカードを切ってくる。

「リストラを重ねたあげく・・・業績は下がる一方、このままではジリ貧です。ここはルーズな家族的経営でお茶を濁すのが一番です。死ねばもろともって言うじゃないですか・・・ねえ・・・社長」

二代目経営者である内藤社長(大高洋夫)は番頭の武藤(渡辺哲)の顔色を伺い決断した。

「よきにはからえ」

こうして問題を先送りしたまま、美咲はとりあえず明日のごはんはなんとかなりそうだと安堵する。

このようなグタグダの内容だが主人公とヒロインがLOVEに向かって一直線であることを暗示する絵作りだけはまっき~♡は忘れなかったのです。めでたし。めでたし。

このドラマの視聴率の背中は・・・少し煤けた↘*9.1%なのでした。

金のない奴は俺んとこへ来い

俺もないけど心配するな

そのうちなんとかなるだろう・・・

と天国で誰かが陽気な感じで歌っているのが聴こえます。

ああ・・・すべては熱にうなされた美咲の幻想なのかもしれません。

美咲は今・・・夜の公園のベンチに置き去りにされ・・・そして白い雪が・・・。

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ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。

皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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