邪悪なる不屈の闘志にお困りのあなたへ(堀北真希)とある指先から超電撃のカバチタレ修行中(櫻井翔)
「Twisted Nerve」は直訳すればひねくれた魂だがイギリス映画「密室の恐怖実験」(1968年)の原題である。好きな女の子に接近するために知的障害者を装う困った男の子のサイコ・スリラーな物語である。
この映画の音楽はヒッチコック監督「めまい」やスコセッシ監督「タクシードライバー」のバーナード・ハーマンである。特に口笛のメロディーが印象深い。
そのメロディーは日本を溺愛するタランティーノ監督「キル・ビル」で病院で眠るブラック・マンバ(ユマ・サーマン)を毒殺しようとするカリフォルニア・マウンテン・スネーク(溺愛するクジラのために日本をそこはかとなく嫌悪するダリル・ハンナ)の歪んだ精神のテーマとして引用される。
それをそこはかとなく盛り込んだのが今回の「特上カバチ!!!」なのである。
演出家のスタイリッシュさが冴え渡ります。
もちろん・・・それは愛人(辺見えみり)のためには女房(清水美砂)を踏みにじる夫(近藤芳正)、女房に横恋慕した包帯フェチの男・栄田(高橋克実)、そして男を手玉にとる愛人、さらには夫と栄田の他には正名僕蔵しか選択肢が与えられない不憫な女房のねじくれた心を象徴しているのです。
ちなみに筆跡鑑定の前後で短く出てくる口笛は缶コーヒーのCMでおなじみPeter Bjorn and John(スウェーデンのロック・バンド)の「Young Folks」のイントロである。たたみかけるな。
で、『特上カバチ!!・第4回』(TBSテレビ100207PM0915~)原作・田島隆、脚本・西荻弓絵、演出・今井夏木を見た。まあ、視聴者層がまったく違うとはいえ「極悪三馬鹿兄弟のボクシング世界タイトルマッチ」はある意味、ボーナス・チャンスである。19.0%のアドヴァンテージを受けて繰り下げつつ↗10.8%とフタケタに復帰したこのドラマ。今回は特撮演出もそこそこ控え目で役者の演技に重点を置き、そこそこ普通にドラマとして成立していたのでこのまま、なんとか冬季五輪シーズンを乗り切ってもらいたいものである。
突然、身に覚えのない借金の連帯保証人にされ、経済封鎖を食らう。
恐ろしいことであるが契約社会である以上、それはすぐそこにある危機なのである。
印鑑登録は成人後の重要な儀式であったが・・・それは本人が契約者として社会人になるための必要条件であるからだ。しかし、あらゆる精密機械の発達で印鑑の偽造が明らかにお手軽になっている現状をどうするかという問題は非常に危機的状況なのである。
しかし、あらゆる本人認証システムはもはや風前の灯であるとも言える。
空前の信用できない社会はすぐそこまで来ていると言える。
そうなったらもう顔見知りしか信用できないのであり、そして顔見知りが一番信用できない人々は神に祈るしかなくなるのである。
スーパーマーケットの店員・吉田香織(清水)は突然、銀行預金が引き出せなくなり、パニックに陥る。
いつもの大家(田丸麻紀)ルートでさっそく案件に巻き込まれるユトリン田村(櫻井翔)だった。
年下の上司・美寿々(堀北)と調査に入ると、香織には別居中の夫がいて、その夫がサラ金から借金し、その借金の連帯保証人に香織がなっているが、香織にはまったく身に覚えのない契約だったのである。
「夫が妻の名前を勝手に使用して借金をした」わけであるが、そのことを証明できないと契約は有効であり、契約に基づいてサラ金が香織の資産を差し押さえるのは法的に問題がないと香織の取引銀行の顧問である検備沢弁護士(浅野ゆう子)は断言する。
大野(中村雅俊)行政書士事務所に相談に訪れた香織がたまたま自転車で転んでケガをしていたために包帯フェチの万年助手の栄田(高橋克実)は香織に一目惚れ。いつもなら損得抜きで仕事をしてしまうユトリン(ゆとり教育で育ったために人間として基本的に発達障害が残るかわいそうな人)に変わって今回は栄田が行政書士の身分を越えた暴走を開始するのであった。
さっそく、契約書の署名の虚実を確認するために筆跡鑑定の元堀(酒井敏也)は裁判においては証拠能力にならない簡易鑑定を即金五万円で即鑑定してもらう。
その結果「この署名は香織本人のものではない」ことが判明する。
そうなれば「有印私文書偽造」という犯罪が想定されるわけであるが、その犯人を特定しなければ罪には問えないのである。
もっとも疑わしい香織の別居中の夫・吉田学(近藤)を訪ねるユトリン・美寿々・栄田は鬱病患者を装い追求をはぐらかす学の筆跡を入手する。
再び筆跡鑑定により、「署名は夫のものでないこと」が判明。今度はユトリンが五万円を払うのであった。
残るは夫の関係する人物をすべて筆跡鑑定をしないとならないのである。その鑑定料を考えると青ざめるトリオだった。
そこでユトリンが本領を発揮、元堀の事務所を大掃除することで鑑定料をタダにしてもらったのである。
その結果・・・きれいなお姉さんのいる大きなスナック・ジャッカルのママ・猪股蘭子(辺見)が浮かびあがるのだった。
ユトリン・栄田は夫の資産についての調査を開始し、美寿々は女調査員「寿々美」となってスナック・ジャッカルのホステスに応募し、潜入調査という名目のお茶の間の一部愛好家サービスを展開するのであった。
やがて・・・栄田は夫に計画倒産の影を感じる。夫は高額なマンションを購入、その名義は猪股蘭子になっていた。
しかし、不動産売買契約書には第三者が記載されていて、その第三者は消息不明なのである。
しかし、ブラックライトを用いた特殊インクの偽造鑑定法を応用したユトリンは塗りつぶされた契約書の名義の裏に滲み出た「猪股蘭子」の文字を発見する。
ついに真っ赤なスーツを着たヤクザの本性をむき出しにした栄田に「刑務所行きかマンション売却で慰謝料支払いかさもなくばぬっころす」と脅された夫は愛人の元へ。
「しょうがないから・・・あんたが臭いメシを食べてきて」
「そんな・・・お前のアイディアじゃないか」
「どこにそんな証拠があるのよ」
・・・と言うところで秘密捜査官・美寿々が登場。
「そこまでよ。今の会話録音させていただきました。法律はあなたを許しません」
とある超能力の指先から電磁砲で黒焦げ焼死体になる蘭子だった。一件落着である。
こうして・・・栄田は香織に告白しようとするのだが、給料まで差し押さえられた香織を店長(正名)が経済援助。いつしか二人の間には愛情が芽生え、店長は香織の息子とスケボーで遊ぶ仲になっていたのである。
田村「あの奥さん、メンクイじゃなかったから・・・栄田さんにもチャンスはあったのに・・・」
美寿々「あの店長、どう見ても変態顔だし、借金とか隠し子とかもありそうなのに・・・奥さんは男を見る目がないわ」
と口々に栄田を慰めるユトリンと元ヤンだったが当の本人は・・・。
「包帯してない女に興味はない・・・」と嘯きつつ泣き濡れるのだった。
今回はしがない人々のドラマとしていい味出ていたと考えます。
青いスーツのヤクザ重森(遠藤憲一)の主役回もあるといいなぁ・・・。
関連するキッドのブログ『第3話のレビュー』
火曜日に見る予定のテレビ『泣かないと決めた日』『まっすぐな男』(フジテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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