支配からの卒業は誰かのためではなく自分のためにすることだとたぶん分った女(菅野美穂)
情けは人のためならずをめぐる問題である。
この言葉に限らず、言葉には無限の意味があるわけだが、「正解」を限定すると・・・「親切をするのは他人のためではなく自分のためである」というニュアンスになる。
この解釈にも「施しはけしてムダにならない」「やさしさはめぐりめぐって自分にかえってくる」「自己満足って最高」と様々な幅がある。
この場合、否定形から肯定形に遡上して考えてみるという思考法が有効だ。
情けは人のためなり。
情けとは「恩を施すこと」という意味。人とは「恩を施す相手=自分に対する他人」である。
恩を施すことは他人のためである・・・これが肯定形である。
それを否定すると・・・恩を施すことは他人のためではない・・・自分のためだ・・・ということになるのである。
ニュアンスを正しく伝えるために補足すれば「情けは人のためならず、めぐりめぐって己がため」という常套句もある。
さて・・・これに対して「情けをかけることは人間にとっていいこととは限らない」という解釈は誤解とされる。
これは情けは人のためならずの肯定形を「情けは人のためになることだ」と認識することによって生じる。
「~也(なり)」と「~に成る」は音韻は似ているがまったく違うものであるということだ。
この誤解の場合、「恩を仇で返されることもあるから注意しなさい」とか「甘やかすとろくな大人にならないよ」とか警句の意味を含んでくるのである。つまり、その場合は「情けは人のため・に・ならず」なのである。
語法的には前者が正解、後者が誤解なのであるが・・・他人の接し方のアメとムチが一つの言葉で皮肉にも示されているという考え方がある。
前者には「優しさ」を信じるニュアンスがあり、後者には「厳しさ」を伝えるニュアンスがある。
どちらの意味を大切にするかは人それぞれでいいと思う。
水曜日のダンスは・・・。
「相棒」15.7%↗17.2%↘17.1%↗17.5%
「検事」*9.4%↘*5.6%↗*6.0%↗*6.4%
「曲女」15.4%↘11.0%↗13.7%↘13.3%
・・・幹事長の弁護士の勝利なのか。
で、『曲げられない女・第4回』(日本テレビ100203PM10~)脚本・遊川和彦、演出・木内健人を見た。恋人を失い、定職を失い、母親(父親はすでに他界)を失った早紀(菅野)は生きる目的を見失っていた。菅野にとって母親への奉仕こそが大前提であり、ある意味、その呪縛「教師の娘として正しく生きること」によって恋人も失ったし、定職も失ったのである。その母親を喪失した今・・・早紀はもはや死んだも同然なのである。奴隷が主人に殉じることは古来珍しくない。
司法試験のための勉強にも身が入らない。なぜなら合格しても亡き父親のように「受かったこと」を報告して喜ばせる相手はもはやいないのだ。お金がないから働く必要があるが働くことに何の意味があるだろう。食欲がないのに食べることに何の意味があるのだろう。生きていることに何の意味があるのだろう。
だって・・・お母さん(早紀にとっての自分)がいないのに・・・。
虚無に囚われる早紀。母親に愛されたノーフォークテリアのアトムはそんな早紀にはなつかない。お互い、母親の寵を競うライバルであるため、早紀は潜在意識ではアトムに殺意を感じこそすれ、親しみは感じない。けして救いにはならないのである。
頼りのマイケルは「Thriller」を歌いだす。
夜だ 夜更けだ 真夜中だ
月が出た出た 月が出た
ひょっこり悪魔が顔を出す
お前が叫ぶその前に
お前のハートはつかまれた
誰も助けちゃくれないよ
なぜならお前はただひとり
それを望んでここに来た
早紀はこの世の恐怖を終らせようとすべての終わりのスイッチを手探りで探し始めている。
(もういいでしょう、もういいでしょう、もういいでしょう)
自分の不毛な境遇から目を逸らし続ける女・璃子(永作博美)は危機を感じていた。彼女の危険察知能力は「自分より不幸な女がいなくなろうとしていること」を敏感に嗅ぎつける。そんなことになったら「世界における自分の不幸ランキング」は最下位に近付いてしまうのである。
「それだけは阻止しなければならない」
璃子は緊急出動した。
しかし、早紀はもはや瀕死である。璃子は早紀に横恋慕し始めた藍田警視正(谷原章介)を召喚する。
藍田は得意の手料理攻撃で早紀の凍えた胃袋をマッサージしようとするが早紀はアルコールに溺れることを選択する。
「ワラシにはにゃんにもにゃ~い。幸せにゃ結婚をして素敵な旦那様と素晴らしいお屋敷に住んで可愛い子供たちに囲まれてにゃいのれす。国家公務員という輝かしい職務につき日夜人々の安全のために全身全霊をあげて任務を遂行し人々の感謝と賞賛の嵐を受けてにゃいのれす~。ワラシはワラシは失われた十年そのものなにょれす~」
家庭のお飾りである璃子と職場のお神輿である藍田は早紀の放つ悪意なき皮肉に絶句するのだった。
翌朝、意識を取り戻した璃子はカンフル剤として早紀の元彼・坂本弁護士(塚本高史)を召喚する。
坂本弁護士はけして早紀を失いたいと思っているわけではないので生姜汁セットを持って駆けつけるのだった。
早紀の心に坂本とのそれなりに甘い日々が蘇る。
早紀の心の中で母親に支配された30年と坂本との10年の秘密の交際が葛藤を始めたその時。
再び藍田が現れる。藍田は蜆汁セットを持参していた。
しかし、蜆は早紀にとって吐き気をもよおすほど苦手な食材だったのだ。
トイレに駆け込んだ早紀。残されたものは恋のライバルである前に宿命の敵である警察官僚と弁護士である。
犯罪者の敵である警察と犯罪者の味方である弁護士はお互いを憎まずにはいられないのである。
たちまち始まるお互いの傲慢さを賭けた死闘。
他人の揉め事をこよなく愛する璃子は本来の目的を忘れて大喜びするのだった。
悔恨とともに昨夜の残留物を吐瀉した早紀は再び暗闇に向って進みだそうとする。
そこへ・・・老いぼれた天使が舞い降りる。
しがない中島(なかしま)弁護士(平泉成)だった。
彼はかって早紀が失職してまで守った坂本の友人の弁護人である。
引退して田舎に帰るにあたり、早紀の情熱を思い出し、何かの参考になればと弁護士としての自分の活動の記録を早紀に託そうと考えたのだと言う。
「がんばって合格してください・・・君はきっといい弁護士になれる・・・」
一言言い残すと退場である。
早紀にとって・・・天国からたらされた一本の糸である。
しかし・・・失意の早紀はまだその糸にすがることはできない。
ただ・・・早紀に失われた父親との十年を思い出させる効果はあった。
(もしも父が生きていたらどんな弁護士になっていただろう)
早紀は果たされていないもう一人の親との約束を想起した。
天使の登場によりしらけた気分になった三匹の悪魔たちはそれぞれの巣に戻っていく。
しかし・・・璃子には居場所のない魔物の巣。
藍田には居場所のない警察署。
坂本には幸福のない弁護士事務所があるばかりである。
坂本はもう一度・・・早紀を取り戻そうとこっそり回収していた150万円の婚約指輪を取り出す。
そして・・・早紀を二人が出逢った大学の構内に呼び出すのだった。
前回「もう司法試験はあきらめて僕と結婚してください」→失敗だった。
今回「司法試験をあきらめないで僕と結婚してください」→成功を目指す坂本。
しかし・・・早紀の目はまたしても坂本のプロポーズとは別の場所を見つめてしまうのだった。
屋上に佇むしょぼくれた老人の姿である・・・中島弁護士だった・・・。
ダッシュで屋上に駆け上がる早紀。
「自殺はいけませ~ん」
「いや・・・ここは母校なので見納めにしようと景色を眺めていただけですけど・・・」
「・・・なかじま先生はどうして引退なされるのですか・・・」
「なかしまです。私は痴漢の冤罪事件を引き受けて勝訴したんですけどね。依頼者がまた痴漢したんですよ・・・常習犯だったんです・・・もう・・・痴漢被害にあった方たちの苦しみを思うと・・・いたたまれないのです」
「そんな・・・それは逃げというものじゃないですか。逃げんのか・・・じじい」
「えーっ」
「・・・いえ・・・あの・・・私はただ・・・父が生きていたらなかじま先生みたいな弁護士になっていたかな・・・とか考えて・・・あの・・・その」
「なかしまです」
天使は再び去っていった。
プロポーズの続きをしようとした坂本だが、璃子と藍田はもちろん阻止をするのである。坂本と早紀が結婚したらドラマが終ってしまう可能性を考えたのだった。
そして、家庭でのストレスをぶつけるために早紀を平手打ちする璃子。
その現実の痛みが・・・早紀に母親を失った悲しみを実感させるのだった。
脚本家は壊れたテレビは叩けば治ると信じている世代です。
「お母さんが・・・死んじゃった・・・えーん」
涙が止らない早紀だった。
「えーん」
思わず早紀をわが子のかわりに抱きしめる璃子。
「えーん」
しかし、途中で飽きてしまう璃子だった。ここに璃子が家庭のお飾りになる理由があります。
早紀は天使を訪ねた。天使は微笑んだ。
「もう少しだけ弁護士を続けてみようと思います。あなたがパラリーガルをここでやってみますか?」
「やります・・・やらせてください」
「上司になれば私は厳しいですよ・・・情けは人のためならずと申しますからな」
「お言葉ですが・・・それは言葉として正確ではありません・・・なかじま先生」
「なかしまです」
ドアがしまったらもう逃げ場がないような気がする
初めての夜だったらなおさら
やるときめたからにはやらなければならないとはいえ
初めての夜は恐怖に満ちている
ほら 母親からの電話はもう来ないよ
そんなことになったら人類百万年分のゾンビが
墓から飛び出てくるりと輪を描くよ
ゾンビがくるりと輪を描くよ
さあ、震えをとめてあげる
凄い経験をさせてあげるよ
はじめての夜ならくらべることはできないかもしれないが
俺のケダモノはとびっきりなんだ
君なんか一撃でお陀仏さ
スリスリしてラリパッパなのさ
魔物の巣に帰った坂本は思い通りにならない早紀に憤懣やるかたない。そこへ手軽な魔女(能世あんな)が通りかかる。
「まあ・・・いいか・・・今夜のところは・・・こいつを食っちまえ」
魔物の巣に帰った璃子は一族のものに宣戦布告する。主導権を握らなければ我が家とは言えないからだ。しかし、長部の一族を支配するのは姑大魔女帝(高林由紀子)だった。璃子はたちまち自分がノケモノであることを思い知る。
「くそ、くそ、くそ、召使にまで馬鹿にされて・・・やってられるかよ」
魔物の巣に帰った藍田は早紀の母親の亡霊に取り付かれている自分に気がつく。
「だ、だれか・・・お払いしてくれーっ」
しかし忠実な僕(小林すすむ)は寝室には入ってこないのだった。
藍田は仕方なく早紀の元へ走るのだった。
こうして天使と悪魔の早紀をめぐる魂の争奪戦は新たな展開に突入したのである。
関連するキッドのブログ『第3話のレビュー』
金曜日に見る予定のテレビ『崖の上のポニョ』(日本テレビ)『ヤマトナデシコ七変化』(TBSテレビ)『星野真里の剣客商売』(フジテレビ)ものすごいサンドイッチキターッ!
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
>どちらの意味を大切にするかは人それぞれでいいと思う。
うんうん、それでいいと思う。
最近見た、バカボンパパの言葉を思い出させるCMは印象的で
それをふっと思い出しちゃいました。
「それでいいのだ」。。。
人生それで過ごして行けそう(笑)
>「それだけは阻止しなければならない」
>璃子は緊急出動した。
面白~い。それだけで動いてたのね(^▽^;)
>犯罪者の敵である警察と犯罪者の味方である弁護士は
>お互いを憎まずにはいられないのである。
ここの死闘は可笑しかったですよ~♪
リアルな行動を取る璃子にも笑えたし。
それらを隠すでもなく、正直に答える璃子にも好感触。
性悪女には見えなくて~。
悩み多き女性を見せつけられちゃってるもんで(^_^;)
>家庭でのストレスをぶつけるために早紀を平手打ちする璃子。
なるほど~(≧∇≦)ノ彡 バンバン!
どれだけの人があそこでそう思った?
私はあそこで泣いたんだから~(笑)
スリラーも大ウケ!感心するわ。。。
あ~、面白かった♪
キッドさん、
お払いしてあげよっか(ノ∇≦*)キャハッッッ♪
投稿: mana | 2010年2月 5日 (金) 13時28分
|||-_||シャンプーブロー~mana様、いらっしゃいませ~トリートメント|||-_||
言葉の意味に厳密さを求めると
うっかり何もしゃべれなくなりますねぇ。
そんな時は
これでいいのだ~思考が一番でございますね。
キッドの父親は植木職人だったので
キッドは実はバカボンです。
昔、赤塚さんを泉谷さんと一緒に水責めにしたことがあります。
その後、肺炎を発症されたので
すごく申し訳なく思いました。
でも、それでいいのだ~と思いました。
キッドは実質悪魔なので
払われると消滅の危険が危ないのでございます。
見事な攻防でしたな。
子供のケンカとしては近来まれに見る仕上がりでした。
璃子はけして性悪な女なのではないのですな・・・
ただちょっと臆病で怠惰なところがある
普通の女性なのだと思います。
生活は守りたい・・・でも本当の愛も欲しい・・・
ある意味、贅沢な悩みです。
涙腺を直接刺激し
泣く事によって
鬱積した感情を発散させる。
まあ、ショック療法ですな。
ある意味、抱かれたから好きになるのか
好きになるから抱かれるのかという
フィジカルとメンタルの神話ですね。
マイケルの適当訳詩をしている時、
キッドは一週間で一番リラックスしているのでございますよ。
投稿: キッド | 2010年2月 5日 (金) 21時36分
キッドさん、こんにちは~♪♪
先日、ノートPCのキーボードに
緑茶をぶちまいてしまい、
もうこれまでかと思いましたが
以外にも大丈夫でした。
頑丈だな。
宮根さんはかんでばっかりだな。
とワイドショーを見る毎日。
早紀は再就職先が見つかってよかったな。
なんか「キャンディキャンディ」を
思い出しました。
大きな病院でナースとして働くも、
イライザの兄(名前忘れた)の陰謀によって
病院を追い出されてしまう。
路頭に迷うキャンディを雇ったのは
オンボロな小屋で診療所を営む
年老いたお医者様。
あー!キャンディ読みたい!
もうストーリー展開が実にしっかりしていて、
なんていうかいまだにドラマ化されない
その個性的すぎる登場人物や舞台背景!
キャンディとは一味違うヒロイン早紀。
アンソニーは光輝なのか、正登なのか。
アンソニーっていうか、
丘の上の王子様の正体がまた素敵なの!
だめだ。キャンディに支配されている。
投稿: ヤマト | 2010年2月 8日 (月) 14時07分
☆*⋄◊✧◇✧◊⋄*ヤマト様、いらっしゃいませ*⋄◊✧◇✧◊⋄*☆
キッドはキーボードのシフトの所のカバーが穴が開きました。
いつもカバーは予備を買おうと決意するのに
なぜか買い忘れます。
なぜカバーは段々不透明になっていくのかっ。
・・・失礼しました。
宮根誠司は褒められて伸びるタイプだそうなので
見逃してやるといいでしょう。
ヤマト様もいい再就職ができるといいですね。
イライザの兄はニールです。
いじめっ子だったくせにキャンディと
婚約までします。
敵役の極みですな。
キャンディーを助けるのは
ハッピー診療所のマーチン先生ですな。
とにかく人生はそばかすなんて
気にしないのが一番なのでございます。
丘の上の王子様は
アンソニーでもなければテリィでもなく
わらってわらってわらってキャンディ
なきべそなんてサヨナラね
アルバートさんでございます。
そこで・・・過去に
早紀に「おチビちゃん」と
呼びかけていることが絶対条件なのですな。
そのためには
ふるさと編で登場した誰かです。
医者かな・・・母の担当医かなーっ。
まあ、キャンディ・キャンディ的に
考えた場合でございますがーっ。
投稿: キッド | 2010年2月 9日 (火) 01時02分