その場に留まるために全力で走り続けるコードブルー(山下智久)なぐさめも涙もぬくもりもすべてホメオスタシスのために(比嘉愛未)
1st Season「第7話」で白石(新垣結衣)がニューハーフのメリージェーン洋子(古本新乃輔)と出逢った時、藍沢(山下)はフライトナース冴島(比嘉)とALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の田沢(平山広行)のただならぬ関係を知る。
冴島は「本当は医者になりたかった自分」と「不治の病の恋人との交際に疲れた自分」を抱えながらフライトナースという職務に忠実であろうとしていた。
藍沢も「認知症の祖母」と「外科医として優秀でありたい自分」との相克に苦しんでいた。
冴島が一度は恋人よりも仕事を優先させた時、その選択に苦しむ冴島を慰めたのは藍沢である。
しかし、藍沢は「たったひとりの家族を守ること」と「外科医としての自己研鑽」を両立させ、やがて冴島も一度は捨てた恋人の元へ戻っていった。
その朧な成り行きが2nd Seasonでは精密に物語られていく。二人が医者を志す高校生と医者の卵である大学生として出会い、教え子と家庭教師となり、医者と看護師の卵となり、患者とフライトナースになった。その辛い運命をすべて知った藍沢であることを考えると・・・恋人の危篤にフライトナースとして出動する冴島にあえて無線で田沢の死を伝えることに意味がある。
「お前の気持ちは痛いほどよく分っている」
藍沢はそう伝えずにはいられなかったのである。なぜなら藍沢と冴島の心は体以上に通い合っているからである。
一方、冴島の心身を案ずる三井(りょう)は田所(児玉清)に「冴島の休暇」を進言するが、田所は「こういう時こそ彼女にとって患者が必要なのです・・・あなたもそうだったでしょう?」と応答する。
ドラマ上では三井の経験した医療裁判について言及したようにも見えるが・・・この場合は愛するものの死がかって三井の身の上にもあったようにも受け取れる。
キッドの妄想における三井と橘(椎名桔平)の子供は死んでいる説の補強材料である。
わが子を失った三井が仕事に没頭した過去を田所は知っていると考えた方がすっきりするのである。
・・・あくまで妄想です。
一言付け加えると2nd Seasonから見はじめた人は1st Seasonを見ると隠れていた過去を知る喜びを味わうことができます。これがシーズンものの醍醐味でございます。
本題に入る前に恒例の週末の視聴率チェック。「宿命」↘*5.3%(ポニョめぇぇぇぇ)、「ヤマトナデシコ七変化」↘*5.2%(魚の子めぇぇぇぇぇぇ)、「ポニョ」29.8%(泡と消えない人魚姫なんてぇぇぇぇぇ)、「剣客商売」14.0%(おしの・・・星野真里)、「サラ金2」↘*8.6%(ポニョ・・・無関係~)「咲くやこの花」↘*6.9%(こいはうじうじ)、「ブラマン2」↗*8.3%(あげた~)、「左目探偵」↗*8.2%(がんばった~)、「明日はない」↗*7.5%(お前もか~)、「フラガール」*9.5%(なんどめだ~)、「つばさ111号」17.7%(森本レオの勝利)、「龍馬伝」↘21.2%(三馬鹿兄弟めぇぇぇぇ)、「特上カバチ」↗10.8%(三馬鹿兄弟ありがとう~)・・・ついでに「ハンチョウ2」↘11.5%、「コードブルー2」↗16.5%・・・以上。
で、『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命 2nd Season・第5回』(フジテレビ100208PM9~)脚本・林宏司、演出・西浦正記を見た。これまでのコード・ブルー担当は冴島である。冴島はフェロー・ドクターたちを初期において激しく鍛えぬいたものすごく仕事のできるフライトナースだった。その心には「医者になりたかったがなれなかった」怨念も燻っており、先行系である海外ドラマ「ER緊急救命室」におけるアビー・ロックハート(モーラ・ティアニー)の香りがすることは言うまでもない。数シーズン後にはドクターになっている可能性もあるのである。とにかく、初期において白石も緋山(戸田恵梨香)も冴島には散々苛められているのである。まさに冴島はドクターヘリにおける鬼軍曹なのだ・・・それは違うと思うぞ。
人間は努力する生き物だ。
それは不可能を可能にするために
赤の女王の命じるままに働くからである。
赤の女王はこう命令する。
「生き残りたければ残るな」と。
そしてどんな人間も努力の果てに・・・生き残ることはない。
残されたものは努力の虚しさを知りつつ
赤の女王に従うほかはないのである。
今を生き残るために。
シートをかけられたドクターヘリ。夜間飛行機能を持たないマシンの休息の時。
しかし、ドクターたちは一人の患者の終焉の時が近いことを知り・・・病棟に集う。その患者は特別な患者。大切な仲間の恋人なのだ。
赤の女王はルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」のキャラクターで子供相手の理不尽さにかけては白の女王といい勝負です。
その名言が「留まりたければ走り続けよ」で、この言葉によってルームランナーあるいはランニング・マシンが生れました。その上で走らないとどうなるかは今では多くの人間が知っています。
しかし、いかにも矛盾した表現が生物の戦略では日常的です。「働かざるもの食うべからず」と言うことです。人間は恒常性(ホメオスタシス)を目指す動物です。体温を一定に保とうとし、血中酸素濃度を一定に保とうとし、呼吸数を一定に保とうとし、心拍数を一定に保とうとする。しかし、食うためには時にはケンタッキー・フライド・チキンに走らなければなりません。閉店間際だからです。そうなれば心拍数はあがり、過呼吸になり、血中酸素濃度は変転し、体温は上がり、眩暈がします。
走り続けるためには留まる必要があるのです。
人類は雌雄によって繁殖しますが、そのために遺伝子の多様性が生れます。環境の変化に対応するために遺伝子は多様であることが求められるのです。留まるためには走り続ける必要があるのです。
その多様性ゆえに田沢は遺伝性疾患の疑いのある現代医学では不治の病ALSを発症します。留まるために走り続けた結果留まることができない。それは世界ではごくありふれた出来事。しかし、田沢にとっては致命的な事態なのです。
田沢の筋肉は萎縮して、筋力は低下。自発的な呼吸もままならない。そのために呼吸不全が起こり、血中の酸素濃度SpO2は低下。二酸化炭素濃度が上昇し、内臓はダメージを受けて機能障害を来す。いわゆる窒息死が進行中なのです。
そのために人工呼吸器をつけて延命することも可能ですが、回復は望めない状態なので田沢は処置を拒否する書類にサインしています。最後に力をふりしぼって書かれた文字。もはやペンを握ることができないその大きな手を冴島は小さな手で抱く。最後のぬくもりを感じるために。
田沢「・・・SpO2(対基準値)・・・いくつに・・・なった・・・」
冴島「・・・89%よ・・・」
田沢「ふ・・・そろそろ・・・だな・・・」
冴島「・・・個室に移すわ・・・」
臨終の時を迎えるために田沢は個室ルーム・ナンバー3-Dに移送された。
出勤してきた緋山はいつもの場所に田沢がいないことを知り、その時が近付いたことを知る。ロッカー・ルーム前で藤川(浅利陽介)は緋山にその部屋の番号を尋ねる。
緋山「3-Dよ」
藍沢・白石が担当する患者でもある田沢(34)は死を迎えるために1月17日個室のベッドに移った。田沢を看護し続けた冴島、指導医の橘、そして四人のフェロー・ドクターはその部屋の準備が整うのを見守った。そこは医者にとって辛い儀式の場となるのだ。
白石は電話で田沢の両親に急を告げる。急を知った田沢の友人たちは夜更けの病院に続々と駆けつける。友が生きている時に留まるためには走らなければならないのだ。
田沢が若い医師である以上・・・その友人たちもまた医師であるものがほとんどである。
残された時が少ないことは常識として知っている。
その時、急患が搬送されてくる。
ぬいぐるみを抱いた少女は泥だらけで傷だらけだった。
1st Season・第8話に登場する少女・結菜(大作空)は夏祭りで一家全員が負傷入院して賑やかに騒ぎ家族をもたない藍沢に家族の味を知らしめた。
しかし、今回の幼い少女・未来(杉山優奈)は両親を持たない養護施設の孤独な娘だった。
もちろん藍沢は一目でその患者の孤独を見抜くのだった。
貧しい予算の中での養護施設清風園の小旅行。バスの中ではしゃいだ孤児たちは未来(7)の唯一の肉親であるぬいぐるみのジョン(4)を車外に放り出す。職員あるいはボランティアはその惨劇に気がつかない。おそらく・・・未来の訴えは無視されたか、あるいは未来は訴えることもしなかったのかもしれない。
未来は一人、夜の道をジョンを救出するために進み、そして自分も遭難してしまったのだ。
藤川「・・・虐待か?」
藍沢「いや・・・ただの転落事故かもしれない・・・とにかく話をしてみるよ」
藤川「最近、女の子の患者だと話すようになったな・・・藍沢」
藍沢はすでに病状から過去を推理できる特殊能力を身につけていた。
検査の結果、未来は頭部に血腫が発見されるが西条(杉本哲太)のアドバイスにより容態が安定しているので経過を観察することになる。前回に続いて、藍沢は女性患者を心底癒す構えなのである。そうでないと患者の恋人に対する横恋慕で厳粛な死を素直に受け止め辛くなっている藤川と同系列になってしまうからだ。それはなんとして避けなければならない。主人公としての品格の問題になってくるからな。医者であるためには生きている患者が必要なのである。
人型巨人兵器アニメの背景の残骸のようにいたるところに出没するナース辻(垣内彩未)の目を盗み、未来と密会する藍沢。
藍沢「3分間だけお話ししよう」
未来「どうして先生はジョンに優しいの?」
藍沢「だって大切なんだろう?」
未来「ずっと一緒だもん」
藍沢「なんでジョンって言うんだ?」
未来「昔・・・飼ってた犬の名前・・・もう死んだのよ・・・お父さんも死んだの」
藍沢「お母さんは?」
未来「遠いところにいる・・・おともだちのお母さんも一緒だって・・・」
藍沢(夫が浮気して・・・逆上した妻が夫を刺殺か・・・そしてこの子のお母さんは刑務所に・・・)と藍沢が妄想していると・・・。
未来「先生のお母さんは?」
藍沢「・・・君と一緒さ・・・先生のお母さんも遠いところにいる」
未来「先生は淋しくないの・・・」
藍沢「もう・・・大人だからな・・・淋しくても我慢できるんだ」
未来「そうなの・・・えらいのね」
・・・いつまで妄想を続ける気だ。3分はとっくに過ぎたっつーの。
二人は手を繋ぎ病室に戻る。
藍沢は未来が自分より苛酷な生い立ちであることを知り、父が生きていたことで動揺していた心を沈静することができた。いつでも医者には患者がいい薬なのである。少なくともドクター藍沢にとっては。
その間にも田沢のSpO2は低下し続ける。
常に感情表現に抑制がなく、芝居がかったところか鼻につく田沢の母親(大塚良重・・・踊る大捜査線で青島刑事を包丁で刺した過去があります)とその夫(清水昭博)が到着する。そういうキャラクターを好演しているのである。念のため。優秀で自慢の息子を不治の病に冒された両親なのです。
田沢「父さん・・・母さん・・・親孝行できなくて・・・すまない」
母「息子は苦しく苦しくないんですか・・・」
橘「血中の酸素濃度が低下するのは窒息状態ですから苦しいです・・・酸素を投与することで緩和はできますが、代謝のために二酸化炭素の濃度も上昇します。つまり、結果として息子さんの命を縮めることになります」
父「もう・・・いいです・・・息子を楽にさせてください・・・」
田沢のSpO2は80%を切った。友人たちは田沢に呼びかける。
留まりたければ走り続けろと。
父「昔から・・・友達が多い奴だった・・・それが誇りだよな・・・俺に似たのかな」
母「あなたはデビューがわれら青春!ですものね」
・・・いい加減にしておけよ。・・・すみません、緊張感に耐えられないのです。
苦しい夜は明けた。
田沢「はあはあ・・・はるか・・・いないのか?・・・はあはあ」
冴島(ここにいるわよ)
冴島はるかは恋人の呼びかけに答えようとした。
轟木(遊井亮子)「ドクターヘリ、エンジン・スタート・・・」
ドクターヘリ・出動要請である。
指導医・森本(勝村政信)、フェロー・ドクター(専門研修医)藤川、フライトナース冴島のローテーションだった。
現場「こちら市民球場・・・患者は頭部に外傷あり」
森本「デッド・ボール(死球)か・・・至急だな・・・」
藤川「笑えません・・・BGMかぶせます・・・」
緋山は走り去る冴島の後姿を痛ましげに見送った。
藤川「救急患者の受け入れ・・・兼田医療センターの脳外科OK出ました」
冴島「患者の意識レベル回復の兆しあります」
チームは任務を終えた。
田沢「はるか・・・は・る・か・・・」
母「苦しいの?・・・苦しいの?」
藍沢「酸素・・・増やします」
留まるためには苦しむ必要がある。しかし、ただ苦しむだけなら楽にしてやってもいいのだ。
そのために留まることができなくなっても。
藍沢は生死のダイヤルを回す。
ドクターヘリによる患者の搬送は終った。
梶(寺島進)「こちら、ドクターヘリ、翔北CSどうぞ」
轟木「こちら、翔北CSどうぞ」
梶「これより帰還します・・・」
SpO2・・・30・・・29・・28・27・・・。
緋山「冴島・・・少し間に合わないかもしれない」
白石はCS室に走った。
白石「冴島に・・・冴島に接続してください」
轟木「・・・到着までの所要時間は・・・」
梶「海上を通っておよそ8分だ」
田沢は別離の涙を流した。
白石「冴島、冴島」
その時、ゆっくりと藍沢がやってきた。
藍沢「冴島・・・聴こえるか・・・今、田沢さんが亡くなった・・・残念だ」
震える冴島の唇。
冴島「そうですか・・・わかりました・・・」
梶「到着まで・・・残り五分・・・五分だよ・・・」
冴島は田沢の手を握った。失われつつある体温を感じた。
母「はるかさん・・・長い間・・・ありがとう・・・本当にありがとう・・・」
白石は逡巡していた。
「何を迷っている・・・ALSは特定疾患だ病理解剖を奨めるのは大学病院としての義務だ・・・」
「でも・・・でも」
「俺が・・・もし死んだら・・・解剖を希望する」
留まるためには走り続けるしかないからだ。
白石は両親の承諾を得た。
三井からの連絡で藍沢は未来の急変を知る。
「血腫が拡大して左半身に麻痺が出てきたわ・・・緊急手術します」
藍沢は走り出した。手を尽くしても無駄だったとしても医者はまた手を尽くすのだ。
しかし、手術室でジョンを手放さない未来だった。
藍沢「これから少し・・・眠ってもらう・・・ジョンにはしばらく休んでもらう」
未来「私のそばには誰もいないの・・・」
藍沢「馬鹿だなあ・・・俺がいるよ・・・ずっと手を握っていてやる」
未来「じゃ・・・いいよ」
微笑んで見つめあう二人。
三井(藍沢・・・女殺しね・・・恐ろしい子)
損傷したジョンは未来を見守っていた。
西条が手術室に入る。
藍沢(ジョンの右腕はちぎれかかっている・・・)
ジョン(藍沢・・・切れぇ)
一瞬、藍沢の耳に黒田の声がフラッシュバックした。
藍沢は首を振り、冴え渡る西条のメス捌きを観察した。
藍沢(このテクがあの時の俺にあれば・・・黒田先生の腕は再生できたのかも・・・しかし・・・あの時森本先生は言った・・・「医者にとっては起こったことがすべてなんだよ」と・・・あんなシリアスな森本先生は後にも先にもあれっきりですべてなんだろうか・・・)
田沢の解剖は終了した。白石は田沢の両親に所見を口頭で伝えた。
白石「典型的なALSでした・・・この数字は・・・田沢さんの生きた証です。田沢さんは入院中も他の患者を励ましたり、最後まで医師として旅立っていかれました・・・私は田沢さんを尊敬します」
父「ありがとう・・・でもね・・・親としては・・・そんなに立派でなくても・・・ただ生きていてほしかった・・・ああ・・・あなたにね・・・そんなこと言っても仕方ないとわかっているんです・・・分っているけれど・・・もうかわいそうで・・・」
白石「・・・」
冴島は病室のネームプレートから田沢の名前を拭い消した。
下心と理性の狭間で藤川は困惑していた。そういう時、藤川は梶に相談せずにはいられないのだ。
藤川「どんな言葉をかけたら・・・いいのか・・・判りません」
梶「馬鹿だなあ・・・言葉なんていらないんだ・・・ただ側にいてやるんだよ・・・人はみな一人では生きてゆけないものだから」
冴島はヘリポートにやってくる。知っている人は知っている。
泣きたい時、冴島はここで医療器材の補充をするのである。
気をきかせて立ち去る梶。
梶のアドバイスも虚しく、藤川は沈黙に耐えられない男なのだった。
藤川「た、田沢さんは・・・」
冴島「いなくなりましたっ・・・私を必要としてくれる人はもう・・・」
藤川の下心は理性に押しつぶされたのです。もう、留まることはできない。
藤川(撤収ーっ、撤収ーっ、全軍退却ーっ)
梶(おい・・・本当にダメな奴だな・・・)
未来の手術は無事に終了した。
目覚めた未来は包帯を巻いたジョンを発見する。
未来「ジョン・・・どうしたの」
藍沢「スヌー・・・ジョンは悪いところを手術して治した・・・。未来と一緒だ。じっと安静にしていれば早く良くなる・・・ジョンも未来も・・・」
未来「うん・・・わかった・・・よかったね・・・ジョン・・・よかった」
藍沢は返す刀で白石担当の腰椎穿刺を引き受けるのだった。
藍沢「田沢さんのお別れ会だろう・・・冴島についていてやれ・・・」
白石「うん・・・わかった」
弔いの儀式も人それぞれである。「田沢のお別れ会」は会食だった。葬儀社の人間が「故人を偲んで、お時間の許す限りごゆっくりとお召し上がりください」と言ったらスタートです。
故人が若者である以上、参会者もまた若い。スピーチの得意なものが座を和ませる。
すべては・・・田沢の両親の趣味であることは間違いないのだった。
友人「田沢くんとは勉強というより麻雀ばかりしてました。田沢くんは麻雀の時は必ずヤキソバを食べるのです。それで講義に遅刻したことがありまして、田沢くんはもっともらしい言い訳を述べるのですが歯に青ノリがついていてバレバレで、あやうく単位を落としそうになったのです。今となってはいい思い出です。もう田沢くんと麻雀できないと思うと本当に残念です。謹んでご冥福をお祈りします」
そんなスピーチにも目頭を押さえる田沢・父だった。
白石・緋山を従えて冴島は列席した。喪服姿は美しい。
故人の写真を見ると冴島は喪失感に動悸・息切れ・眩暈を感じるのだった。
そんな冴島に最初から最後までマイペースでゴリ押しで責める田沢の母。
母「はるかさんも何かスピーチしてください」
冴島「私は・・・」
母「ほらほら、早くーっ」
白石(私・・・この人苦手・・・)
緋山(私はそうでもないなー)
冴島・・・。
悟史(田沢)さんは・・・私の家庭教師でした。私は医学部志望で・・・受験には失敗しました。その時、彼は笑いました。たいしたことないよ・・・ちょっと緊張しただけ・・・。また次があるよ・・・って。私は先生のせいで落ちたとは言えませんでした。それから彼は医者になって・・・私は看護師になりました。彼はずるいんです。いつも笑顔で・・・。私の先を歩いていました。私にとって彼はいつもこの世を照らす灯だったんです。一緒に歩けるだけで幸せでした。やがて・・・彼は病気になって・・・辛くて辛くて私は一度は別れようともしました。でも彼は・・・いつも笑顔で私を迎えにくるんです。不自由な体で私に笑いかけてくるんです。最後は私の職場に入院しました。勤務の合間に私は病院食を彼と一緒に食べました。それがとても幸せで・・・もう涙で前が見えません。
冴島は感情を吐き出した。誰よりも強い冴島が急に弱くなった・・・緋山はそれがむかついたのである。
冴島の失われたホープは彼女の歩みを鈍らせた。
そんな冴島の腕をつかみ・・・緋山はヘリポートに引き立てる。
「その席に座ってみなさいよ。あんたが座りたかった席。あたしの席よ。そこにあたしが座るとこっちにはあんたがすました顔で座ってる。その顔を見ると・・・私がどれだけ安心するかあんたに分る?・・・あんたがいなかったらあたしとっくに逃げ出していたかも・・・だから、困るのよ。いつものようにあんたがツンツンしてくんないと。私がフライトでいい成績あげるためにはね」
白石が補足した。
「田沢さんがあなたの先を歩いていたように・・・あなたも私たちの先を歩いていた。私たちにとってあなたこそが光明。私たちにはあなたが必要なの・・・あなただけが頼りなのです」
冴島は泣きながら微笑んだ。
その頃、エレベーターには藤川と藍沢がいた。
「まったく・・・田沢って・・・なんなんだよ・・・最後までかっこよくてさ・・・死に際に友達がウジャウジャやってきて・・・冴島みたいないい女にあそこまで尽くされて・・・オマケに惜しまれつつ死ぬなんて出来すぎなんだよ・・・敵わないじゃねえか・・・オレの葬式なんてきっと誰もこないぜ・・・」
「馬鹿だな・・・お前は意外とみんなに愛されているよ。お前の葬式・・・俺は行く」
「藍沢ーっ。・・・オレを殺すなよーっ・・・こわいじゃないかっ」
未来は外科病棟に転院した。ジョンの負傷も完治した。
未来は包帯を藍沢に返却する。
三井は「またケガしたらいつでもこの先生が治してくれるよ」と二人を冷やかす。
しかし、未来はふと遠くを見つめるのだった。
未来「でも・・・先生の包帯は誰が巻くの・・・」
藍沢「・・・包帯は必要ないんだ・・・」
未来は(私が巻いてあげるのに・・・)という言葉は飲み込んだ。
フェロードクターたちに別れの時は近付いている。
白石は明邦医科大学教授の父親(中原丈雄)と確執があった。
白石の目指す臨床医と心臓外科の権威である父親が娘に望む道とに食い違いが生じているのだった。
白石「私は本当の医者になりたいの・・・」
父「救命医なんて本当の医者とは言えんぞ・・・第一危ないじゃないか・・・」
その頃、食堂では森本は轟木との思い出のデートの写真をうっとりと眺めていた。藤川はその写真にランチのみそ汁をこぼした。
私服に着替えた藍沢は・・・過去を知るあの人・・・実の父親(リリー・フランキー)を尋ねた。
手を尽くして万策尽きたとき・・・
人に残される行いはただ寄り添うことだけなのかもしれない
赤の女王は言うだろう。
留まりたければ愛し続けろと。
しかし・・・どうすればいいのだ。
寄り添う相手が見つからない場合は・・・。
男と女がなくなれば交際相手は倍増するというのに。
・・・恋敵も倍増するけどな。
関連するキッドのブログ『第4話のレビュー』
天使テンメイ様の光あるレビュー。
ごっこガーデン。再生と新たなる旅立ちヘリポート。エリ「幼女キラー藍沢P先生にアタックするために開発された誰でも幼児体型スーツ・・・じ、じいや・・・愛のためとはいえ・・・キツキツでしゅよ~。うちの犬のジョンはペットロイドなのでしゃべります。変なことを言うと頭をたたきますからね~。さあ、藍沢先生好き~と言ってごらん。今回は藍沢Pは明らかに藤川まで落としてました・・・藍沢無双はどこまででしゅか~さあ、いよいよお手手をつないでもらいまスー」お気楽「友達がバスからジョンを投げて未来ちゃんが追いかけて飛び降りたんじゃないよね。チビッ子ハウスが殺伐としているのはちょっとイヤだよね。喪服トリオは一人くらい和装でも良かったよね・・・」くう「苦手だった田沢ママ・・・だけど・・・もしも自分の子供がああなってしまったら・・・なりふりかまわず息子の最後の願いをかなえてやりたいと思うかも・・・それに応えた冴島は本当にいい娘だったわよ」ikasama4「フェロードクタープラスフライトナースはまるで一心同体のような絆で結ばれているようですな。これが崩れることがあればそれはまた凄いドラマが展開されるわけでそういう点もこのシリーズのしたたかさです。冴島もまたずっと耐えてきたフリが効いてものすごい大芝居でした・・・あれがリアルに感じられるところも積み重ねてきた強みでしょうねえ」mari「まあ、エリちゃん、抜け駆けですか~。じいやちゃま、私にもスーツ出してくださ~い。でも一人増員したスナックスレちがい愛好会でのカラオケも楽しいし~。今夜も歌いますよ~。さあ・・・来週はいよいよ藍沢PVS白石・・・主役とヒロインが何を生み出すのか・・・待ち遠しいですね~」まこ「続々と解禁されるドクターたちの私服モード。みんなそれぞれにおしゃれさんですね~。特に女の子たちはみんなお嬢様設定なので親近感を感じる~むふふ・・・エリ姉ちゃん・・・そのスーツはまこがひそかに発注していたのに・・・さすがでしゅ~。しかし、まこは今回は涙の洪水で溺れてしまいそうだったのでしゅ。男フライトナース工藤は何してんの~」
水曜日に見る予定のテレビ『曲げられない女』(日本テレビ)『加藤虎ノ介の相棒』(テレビ朝日)『赤かぶ検事京都篇』『新撰組ピースメーカー』(TBSテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
(ノ; ̄◇ ̄)ノ エエエエェェェェェ-
田沢パパを演じてたのは知らないおじさんかと
思ってたのに清水昭博さんだったとはっ!!!
俺たちシリーズにゆうひが丘・・・あぁ懐かしい・・・って
ママが言ってた!
その後あまりお見掛けしないわ~と思ってたけど
多分出てても気がついてないだけだったのかも~・・・と
ママが言ってた!
>藍沢「・・・包帯は必要ないんだ・・・」
藍沢先生は絶対に怪我をしないのですかーっ!
それとも傷口パックリさせておくのがお好み?
包帯なんて巻いてたら、包帯フェチの榮田さんに
狙われるからなのですかーーーっ
って、さっきからエリねーちゃんが包帯を巻く練習台に
なってくれってうるさいのでしゅ。
何が何でも藍沢に包帯を巻くつもりらしいデス
投稿: まこ | 2010年2月10日 (水) 14時39分
●no choco●まこ☆ミキ様、いらっしゃいませ●no choco●
まこ様、若きものの早すぎる死に
かけつけ慟哭する友人たちは
古き良き青春ドラマのお約束ですからなーっ。
本当にそういう場面になると
若さゆえにそれがどんなに悲しいことなのか
分らなかったり
悲しすぎてどうしていいか
わからなかったり
ポカンとしたり
がんばって泣こうとしたり
人それぞれの修羅場になりますな。
死後の世界があるとしたら
故人はそういうのを見て
複雑な気持ちになったりして・・・。
清水昭博は最近では「ふたつのスピカ」で
ドクターの役をやってましたぞ~。
藍沢は絆創膏ですませるタイプなのでは
ないでしょうか。
ちょっとしたケガなら
クールにセロテープとかでも
すませるタイプだったりして。
さらにいえば新聞紙にごはんつぶで
止血したりして・・・どんだけ貧乏ですかっ。
エリ様の包帯プレーに
参加するのはいくらまこ様でも
危険が危ないですぞ~。
緊縛窒息包帯巻きなどの
エヴァンゲリオン綾波レイなプレーが展開されますのでーっ。
投稿: キッド | 2010年2月10日 (水) 18時08分
死が身近であればある程
その衝撃は計り知れないものがあります。
特に若い人の死はたまりませんね。
死んだ瞬間にその人の年齢は止まりますからねぇ。
喪失感もあるんでしょうが
時が経てば忘れてしまう自分を憎んだり
してしまうのかもしれません。
ともあれ森本先生と似たポジションの藤川は
共に過去の恋人の事を忘れられない人を
好きになってしまうみたいで
この雰囲気だと
やっぱ二人の恋の結末は最後までひっぱりそうですねぇ。
ちなみに今期は
この枠だと藍沢と冴島、緋山
他の枠で言うと
日曜は貫地谷さんと堀北さん
水曜は菅野さん
金曜は亀梨さん
えらくツンデレキャラが多い気がします ̄▽ ̄ゞ
投稿: ikasama4 | 2010年2月10日 (水) 22時34分
✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥
誰もが時計をとめて
今を封じ込めたいと願う
けれど時は過ぎていく・・・。
しかし、過去に置き去りにされたものだけが
永遠になる。
彼らはもはや裏切らない。
長生きするということは
すなわち
死者を見送ることに馴れる
ということですからね。
妄想では自分が
生れる前に
死んだものを愛したりしますし。
死んでほしくない人は死ぬし
どうでもいい人は長生きしている
という自虐的な気持ちも生じます。
もしもあの人が
生きていたらと
考えることほど
むなしいことはありませんが
時には死者が
的確なアドバイスを
くれたりもします。
もちろん・・・すべては記憶によって
生じる妄想でございますけれど。
人はあきらめたり
あきらめきれなかったり
そうしてドラマを
織り成していくわけです。
ドラマもまた一種の
追憶でございますものね。
はたして森本・轟木の
衝撃のキス・シーンは
描かれるのでしょうか。
それとも
あれは終った愛の証なのか・・・。
冴島の新たなる恋が
今シーズンに始まるかどうかは
微妙ですよね。
藤川がアプローチするとしても
ずっと先ではないかと思います。
藍沢と藤川が指導医になって
冴島が「専門研修医」としてやってくるあたりとか。
藤川「まだ一人だったの・・・」
冴島「勉強だけしていましたから」
・・・みたいな。
ツンデレは
キライキライは好きのうち
という恋愛の古典的表現方法ですからね。
逆に標準なのかもしれませんな。
今シーズンは1位は堀北かな・・・。
逆に罪な女は・・・広末かしら・・・(; ̄∀ ̄)ゞ
投稿: キッド | 2010年2月11日 (木) 00時04分
じいやさま、こんにちは~。
まこちゃまとの包帯ごっこにはピキピキと来ましたわ~。
もうね、全身包帯なのよ。いつだって包帯なのよ。
藍沢先生が自分が死んだら解剖してほしいって
言ったときだって
「あなたは死なないわ。だって私が守るもの」
もうね、レイちゃんなのよ。
「嬉しいとき、どんな風に笑えばいいかわかんない」
藍沢先生とレイちゃんはちょっぴり重なり
その心に包帯を巻いてあげた~いのですっ。グスン。
なんて乙女な感傷のこの頃。
だってもうすぐバレンタインなのです~。
じいやには手作りチョコよ。
オレンジピールのフルーツ系と
甘辛の柿の種系とどっちがいい?
エリはもちろんブランデーをたっぷり仕込んだのお願いね~。
そしてね、ナイショだけどチビッコになって藍沢先生と手を繋いだのも
嬉しかった。ムギュ・・
投稿: エリ | 2010年2月11日 (木) 11時35分
✿❀✿❀✿かりん☆スー☆エリ様、いらっしゃいませ✿❀✿❀✿
お嬢様、夜のスープにコーン・ポタージュを
お持ちいたしました。
綾波レイと藍沢Pは口にすると
ちょっと韻が踏まれてますな。
踏むプレイはこれまた基本でございますね。
お嬢様、いくら不死身と噂される
まこ様相手でも
過激な包帯プレーはお控えくだされませ。
まあ・・・人としての心を知らずに
育ってしまったものの
哀れさは
いつも感動ものなのでございますな。
未熟なものが
より未熟なものにする
アドバイス・・・。
笑えばいいと思うよ
これは殺し文句でございます。
素敵な男の子が
傷ついたり
迷ったりしていたら
放ってはいられない乙女心。
それはヤマトナデシコなら七歳でもっ!なのですな。
チョコレートのビターな味わいは
子供と大人の境界線でございます。
眠っていた心を呼び覚まし
ささくれたハートを癒すのですな。
しかし、あまり食べ過ぎると
鼻血ブーですぞ~。
夜眠れませんぞ~。
ダイエット・コースですぞ~。
お嬢様、専用ピンク・ドンペリ・チョコレートも
ほどほどになさいませ~。
チビッコ・スーツは
ハンサム・スーツより高性能で
着心地感改良型を
ただ今開発中でございます~。
投稿: キッド | 2010年2月11日 (木) 23時42分
キッドさん こんばんは(o^-^o)
走り続けるためには留まる必要がある
留まるためには走り続けなければならない。
限りある今を生きるために・・・
すごくいい言葉ですね、心にストーンと
落ちてきました。
藍沢と冴島は感じ方に共通点がありますね。
「人は、人から必要とされなければ生きていけない」
両親がいない藍沢と、両親と距離を置く冴島
二人に漂う薄幸なムード・・・
今回、藤川ではなく藍沢だったら
冴島にどう接しただろう・・・(妄想中)
冴島 間違いなく惚れますね(笑)
藤川危ないとこでしたアワ((゚゚дд゚゚ ))ワワ!!
自分より過酷な生い立ちである未来との
交流によって、藍沢は自分の傷と向き合う覚悟
を決めたんですね。
投稿: しずく | 2010年2月12日 (金) 23時48分
(o^-^o)ブザビもピー~しずく様いらっしゃいませ~コドブもピー](o^-^o)
ルイス・キャロルは言葉遊びの天才ですが
意味不明な言葉も
ふと考えると
凄いこと言ってると
思ったりもするわけですな。
結局、言葉とは
送り手と受け手がいて
初めて成立する「なにか」ということでしょう。
キッドはこの言葉を知った時
メチャクチャ言うなあ・・・と素直に
笑ったものでございます。
藍沢と冴島は
キッドの妄想の中では
最初のカップルですからね~。
やはり、お互いに
同じ気配を感じて惹かれ合うタイプですな。
自分にないものを感じて惹かれ合うタイプも
ございますけどな~。
かって、二人が一度別れたときに
慰めたように
藍沢はしっかり慰めてたりして・・・。
しかし、藤川に天が味方したのかどうか・・・
今回、藍沢の魂を揺さぶるのは
未来だったのですな。
包帯は必要ないと見得を切った以上
心から流れる魂の血液を
止血しなければならない・・・。
はたして・・・藍沢は
どんな過去と出会うのか・・・。
楽しみでございます。
投稿: キッド | 2010年2月13日 (土) 01時48分