魔女の妊娠した日(有坂来瞳)いきあたりばったりの男(深田恭子)
今季のドラマはおめでたの連続である。「曲げられない女」は主人公が元彼の子供を妊娠。「まっすぐな男」はヒロインが行きずりの男の子供を妊娠。そして、「泣かないと決めた日」では敵役が主人公の恋人の子供を強制妊娠(偽装?)である。
ま、まともなお母さんはいないのですかぁぁぁぁぁぁっ。
火曜日のドラマ対決は①「泣かないと決めた日」↗12.7% ②「まっすぐな男」→*8.8%
ま・・・悪が滅び正義が勝つことをお茶の間では望んでいて・・・それは健全なことだとも言えます。
それでこそ・・・悪魔が青い炎を燃やし、悪の栄えが訪れるわけですし。
で、『泣かないと決めた日・第五話』(フジテレビ100223PM9~)脚本・渡辺千穂、演出・城宝秀則(他)を見た。ダブル演出であるのは・・・初回の自殺未遂シーンにつながる場面があるためかな。初回では明らかに飛翔していたが・・・実際は新入社員から目を離さない上司の鑑、桐野統括マネージャー(藤木直人)が寸前で抱きとめていたのだった。おかしいじゃないかと目くじらをたててはいけません。あくまでドラマです。
しかし、妹を不具者にしてしまった角田美樹(榮倉奈々)の負い目は・・・桐野が感じるほどには重くなかったようである。
親友だと思っていた万里香(杏)が恋人の仲原(要潤)と裸になっていたことが自殺未遂の直接の原因なのである。
足が不自由な妹のことを考えたら五体満足の姉はそのぐらいの苦痛には軽々と耐えるべきではないのか・・・まあ、乙女だからできないのか。
とにかく・・・妹の手術費用を稼ぐとか・・・そういう健気な姿勢は霧散して、いじめの厳しい職場と心の支えだった恋人と親友の裏切りに・・・衝動が起きてしまったから仕方ないのだと優しく見守るしかないのである。
傷心の美樹は頑なに心を閉じて、救世主・桐野の言葉も胸に届かない。
その窮地を救うのは・・・かなり唐突だが・・・派遣切りをされて退職に追い込まれる白石杏子(有坂)なのである。
一応、美樹の前任者の遺言ノートのフリがあるので・・・かっていじめがあってそれを助けられなかった立場の弱い派遣社員の苦渋というものがあり、話としてはギリギリ成立するのであるが・・・なんといっても・・・。
「派遣は面倒なのよ・・・三年以上同じ職場だと正社員として雇用しなければならない流れもあるし・・・結局、若い子の方が何かと便利でしょ」
このセリフが有坂来瞳にしっくりくることが大きいな。
有坂もいつの間にか・・・三十路かよっと驚愕する今日この頃である。
ちょっとやつれた感じのメイクといい・・・なんか・・・果ては場末のキャバクラに勤めることになりそうな哀愁漂う派遣のOLを好演である。ポスト吉野公佳かっ。
一方、使用不可のUSBメモリが普通に嫌味な上司・梅沢部長(段田安則)によって発見され、その中にイタリア食品部門の資料があったために犯人探しを命じられるチーム・リーダー佐野(木村佳乃)はまたしても指導者としての責任を問われ、アルコール注入で凌ぐのだった。
そんな佐野に桐野はかわいそうな美樹支援のために間接的な助け船を出す。
「君は部下のことをちゃんと見ているのか・・・本当の自分を正しく評価してもらえない辛さを君は誰よりも分っているはずだが・・・」
梅沢のアドバイスが響かない佐野も桐野のアドバイスに感じるのである。
まあ、まさに作り手が意図する女性向けのドラマなのかもね。
やがて、体調不良のために寝込んだ美樹を見舞いにやってきた杏子は突然、天使として輝きだすのである。
「かって・・・いじめられてやめていった子がいた・・・私はその子を助けることができなかった・・・自分のことで精一杯だったから・・・でも・・・あなたにはこのままやめていって欲しくない・・・そう告げることが私のせめてもの罪ほろぼし・・・」
しかし、仲原の弁明の電話も拒絶し、妹の身の上も顧みず、ただすべてから逃げ出したい一心で美樹は辞表を認める。
夜のオフィスにこっそりと辞表を置いて去ろうとする美樹に忍び寄る桐野・・・。おそらく、美樹はGPSで居場所を特定されているのだろう。
「このまま・・・逃げ出すのか・・・何もなかったことにするのか」
「私にはもう・・・心の支えがないんです」
「本当にそうか・・・」
夜の街を家路につく美樹。
その姿は木から堕ちた妹を置き去りにしようとした幼い日の美樹の姿に重なる。
助けを求める妹の声。ドサリと言う凶悪な物音。
美樹はふと立ち止まる。
天使の声は囁く。
「本当にそうか」
翌朝、出社した美樹に万里香は絶縁宣言をたたきつける。
「あやまらないわよ・・・恋愛に情けもルールも無用だからね」
美樹は無視した。そして職場では勇気を振り絞る。
「私は未熟で・・・皆さんにご迷惑をおかけしましたが・・・だからといってやっていないことの責任はとれません。私は何もしていない・・・そのことだけはわかって欲しいのです」
そこで杏子は立ち上がる。
「USBメモリには彼女の入社前に消去されたデータが残っていました・・・つまりこのメモリは彼女のものではありえないのです」
杏子の発言に蒼ざめる暴力亭主のために残業できずに自宅に仕事を持ち帰る栗田(紺野まひる)だった。
杏子が職場を去る日が来た。杏子に意趣返しをするために栗田は送別会をキャンセルした。
淋しく職場を去る杏子の前に花を持った美樹が現れる。
「私・・・ここには誰も味方がいないと思っていた・・・でも・・・それは間違いだった。信じられる人がいないのではなく・・・信じなくなっていただけだったんです。それに気付かせてくれてありがとうございました」
「いいのよ・・・私もあなたのおかげで気持ちの整理がついたの」
そこへ・・・佐野がやってきた。
「白石さん・・・守ってあげられなくてごめんなさい・・・あなたがこのチームにいてくれたことを感謝するわ・・・角田さん・・・あなたはどうするの」
佐野は美樹の辞表を差し出した。
美樹はそれを破り捨てた。
すべてを観察する桐野は微笑む。
妹の愛(川口春奈)の手術の日がやってきた。
「仲原さんはお姉ちゃんを大切だって言ってた・・・傷つけたって・・・お姉ちゃんは仲原さんの話を聞いてあげるべき」
健気な妹である。
美樹は仲原に連絡した。仲原の胸に喜びが湧き上がる。
すべてを虚空で眺める魔女・万里香は牙を剥き出す。
「私・・・妊娠してるんです」
美樹は待ちぼうけをくらった。
もはや・・・いじめドラマじゃなくて単なる恋愛バトルです。
関連するキッドのブログ『先週の火曜日のレビュー』
で、『まっすぐな男・第7話』(フジテレビ100223PM10~)脚本・尾崎将也、演出・大塚徹を見た。腰がすわらない男・松嶋(佐藤隆太)は今日も仕事をするではなくなんとなくほっておけない女・鳴海(深田恭子)の世話に夢中なのである。
もちろん・・・不幸なおいたちにより、適度に自由奔放で、適度に哀愁漂う鳴海が目の前にいたら男はみんなほっておけないと思うのである。
しかしだ・・・そのために・・・一途に尽くしてくれる女・佳乃(貫地谷しほり)に対する心無い仕打ちの数々・・・ひどい男である。
これは妻子を飢えさせてもユニセフに寄付してしまうようなどこか調子の狂った男を感じさせます。・・・たとえとしてどうかな。
で・・・結局のところ・・・鳴海に惚れているのである。
で・・・そのことを認めることがこわい・・・小心な男なのである。
つまり・・・恥ずかしい男なのだ。
そういう男って・・・実はどこにでもいる男なわけだが、八番アイアンで制裁できれば妻は夫の浮気に目を瞑るべきという主張では・・・女性の共感は得られないと思う。
愛する佳乃のために松嶋と鳴海の仲を裂こうとする熊沢(田中圭)だったが、鳴海の妊娠が発覚すると、松嶋は鳴海と子供の父親探しの旅に出てしまうのだった。くどいようだが仕事はいいのか。
佳乃は「浮気じゃなくて本気じゃないか」と女の勘で見抜くのだがズバリです。
突然、現れた矢部(渡部篤郎)と父親のポシションを争う男・片岡(金子昇)。
行きずりの女の子供を認知し、結婚もするという態度である。
その理由が「会社を相続する条件が子供がいることだから」というかなり無理矢理な設定である。こういうことすると本当に客は逃げるよな・・・。
そして・・・天涯孤独な鳴海はそれを承知で片岡と結婚するという。
それは本当の家族であるお腹の子を愛おしく思うからだった。
松嶋はもう・・・そうやって鳴海と縁が切れると思うとたまらない気持ちになるのだった。
だってもう惚れてしまっているのだから。
「心配してくれてありがとう・・・心配してくれる人がいるっていいよね」なんて深田恭子に言われて惚れない男はいないからである。
しかし・・・ドラマとしてはどうでしょう。
不自然な関係は劇的だが、面白さとしてはどこか空虚になりがちだ。本当に面白いことは自然なものだからです。
とにかく松嶋はムキーッとなって鳴海の腕をとりどこかへ向かって歩き出す男なのである。
木曜日に見る予定のテレビ『グインサーガ』(NHK総合)『853』『エンゼルバンク』『ラストメール2』(テレビ朝日)『不毛地帯』(フジテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
お~、泣かない~は視聴率頑張ってますなあ。まだ平均ふた桁に乗れるかは微妙ですがでもたしかにいじめドラマじゃなくて単なる恋愛バトルになってますなあ。
今の勢いが無くなるんじゃないかとちょっと心配です。
妊娠を盾に結婚を迫るライバルなんて大映ドラマみたいですが(笑)ところで最近芸能人の方が事故起こしてしまうことが多いですね。みなさんたいしたことなくて良かったですけど。
普通だったらニュースにならないことがみんなに知れ渡って色々言われてしまうのは可哀相ですけど、車の運転には芸能人だからこそ余計に気をつけねば!
投稿: 出雲 | 2010年2月24日 (水) 22時13分
>「心配してくれてありがとう・・・心配してくれる人がいるっていいよね」なんて深田恭子に言われて惚れない男はいない
ですよね~そりゃあ惚れちゃいますよねえ!だってカワイイから(笑)
松嶋「鳴海のことが心配で・・・ってか好きなんだ!」
佳乃「え~そんなぁ(泣) 私はあなたの何だったの~」
鳴海「(葛藤中)」
・・・恋愛主軸のドラマにしては弱い・・・。
脚本・尾崎将也といえば「アットホーム・ダッド」とか「結婚できない男」とかキレの良さ抜群だったんですけどね(主演・阿部寛との相性が良かったからか)。もはや主人公の何が『まっすぐ』なのか意味不明なので、そこぐらいはハッキリさせてほしいです。。
投稿: inno-can | 2010年2月24日 (水) 23時53分
昼ドラだったら、この後の展開は
仲原と万里香はすぐに挙式
そのあと万里香は流産したと嘘をつく。
そして仲原はやっぱり美樹のことが忘れられず
隙を見て美樹に接近、それを知った
万里香が自殺未遂を図って踏みとどまらせる!
っていうのがセオリーですよね?(違)
火9ドラマでそこへいくかどうか
ですね。
投稿: | 2010年2月25日 (木) 09時13分
~~☀~~出雲様、いらっしゃいませ~~☀~~
テイストとしてはこの主人公は
グズでのろまなカメの系譜。
ただし、客室乗務員でないので
展開が地味です。
だから、万里香は片平なぎさテイストです。
なぎささわやかから義手手袋の女への落差も
まだ女優として
強いイメージのない杏なのでやや弱めですな。
まあ、著名人のアクシデントというのは
注目されやすいですからね。
最近増えているのかどうかは
統計的にどうでしょうか?
早い話、キムヨナが事故れば
大ニュースですが
村主が事故ってもそれほどでもないみたいな。
ドライバーというのは実は
いつでも殺人未遂犯。
100%安全運転なんてないわけですから。
そういう意味では
スターは自分では運転しないというのも
一つの見識だと考えます。
投稿: キッド | 2010年2月25日 (木) 10時20分
♬♬♬のだめデスヨ♬♬♬inno-can 様いらっしゃいませ♬♬♬のだめデスヨ♬♬♬
とにかく、深田恭子の特性である
①素っ頓狂(めぐる、リモートのくるみ)
②薄倖(神様、もう少しだけ)
つまりかわいくてかわいそうな女を
兼備した設定ですからね。
これはぐっと来ます。
ただ、ドラマとしてはそれだけでは成立しませんよね。
今回でいえば
「浮気が原因で隣で夫婦喧嘩」
「主人公たちがそれを知りつつ夫婦と会食」
このあたりのシチェーションが笑わせどころなんですが
主役軸でないのでぐっと来ないのです。
こういうドラマでは
「なぜそっちを選ぶの?」
というのが外見よりも内面にあることが
重要。
しかし、深田VS貫地谷だと
それが伝わりにくいんですよねぇ。
どうみても魔性の女に
主人公がからめとられていくように
見えますから~。
しかも、佐藤隆太そのものが
お前が女を泣かせるなよっていうキャラですし・・・。
実に感情移入しにくいのですな。
ま、尾崎将也は擬似家族ものにこだわると
失敗するというのがキッドの中では
定説です。
投稿: キッド | 2010年2月25日 (木) 10時47分
~nameless様、いらっしゃいませ~アナタハダアレ
名前がありませんよ~。
まあ、予告編で早くも結婚式に
なっていたようなので
もうそっちの路線でございますね。
チームのいじめも
あとは男二人と女二人。
紺野まひるをおとすと残るのはザコだけですので
もはや疎外方式は無理ですし
魔女は最後には迫害されると
決まっていますしね・・・。
ま、しょうもないドラマであることは決定的だと考えます。
投稿: キッド | 2010年2月25日 (木) 11時07分
「神様、もう少しだけ」、懐かしいですね!
エイズに侵された女子高生役でしたっけ。
まだデビュー間もない初々しい時期でした。
そうですね、
深田恭子の小悪魔っぷりをどうぞお楽しみくださいまし~
という感じに(結果的に)なってますよね。
明らかに製作者側の意図と違う気がしますが。
先日の「龍馬伝」を見て思いましたが
貫地谷しほりは洋装より和装の方が似合いますね。
それも相まって深田恭子の対抗軸としては弱く
感じるのかもしれません(個人的にですが)。。
まあ、佐藤隆太が貫地谷&深キョンを泣かせるなんて
許せない!のは広く支持が得られるところでしょうね(笑)。
投稿: inno-can | 2010年2月25日 (木) 21時25分
♬♬♬のだめデスヨ♬♬♬inno-can 様いらっしゃいませ♬♬♬のだめデスヨ♬♬♬
「ちりとてちん」の若狭から
自分に自身のない女の子は貫地谷の定番。
「風林火山」のミツはたくましく優しい女。
「スウィングガールズ」の良江は恋愛おタク。
貫地谷は「考えすぎる女の子」役にシフトしています。
これはある意味主役あるいはヒロインモードなんですよね。
他にも困ったちゃん(ラブ・シャッフル)も
こなしますがやはり
考えすぎて失敗する娘ははまり役。
そうなるとそれでヒロイン二番手はつらいのです。
そして、このドラマの最大の問題は
見た目がスリムVSグラマーの対決でなくて
ポチャポチャっとまとまっているところ。
「結婚できない男」では
阿部寛を狙うのは
夏川結衣と国仲涼子そして高島礼子
顔立ちが適度に散っています。
深田(27)で貫地谷(24)なので
年齢差も少ない・・・。
ある意味、最初から勝負がついている感じ。
ま・・・キッドの好みから言えばですがーーーーっ。
投稿: キッド | 2010年2月26日 (金) 10時52分