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2010年3月31日 (水)

女の敵は女で女の味方も女・・・男はみんな人でなし(北乃きい)

女流小説家の原作を女流脚本家が脚色である。

次々と惜しい感じの子供向けドラマを送り出したドラマ8枠と続々と残念な感じの大人向けドラマを作り出した金曜ドラマ枠が消滅してNHKは火曜22時に「ドラマ10」枠を新設である。

金10(TBSテレビ)はなんとなく安堵し、火10(フジテレビ系関西テレビ)は戦々恐々のお引越しと言えるだろう。

キッドとしては帰ってきた火曜日のドラマ対決と言う感じ。

その第1弾は「八日目の蝉」*8.2%でスタート。

とにかく金曜ドラマ「シスター」最終回*2.8%、ドラマ8「とめはねっ!鈴里高校書道部」最終回6.2%は上回ってきたのである。

ものすごいネタドラマなので・・・シリーズもの「バチスタじゃなくてもバチスタ」と先行スタート分のリードをどれだけ残すか・・・激戦が予想されます。

で、『八日目の蝉・第1回』(NHK総合100330PM10~)原作・角田光代、脚本・浅野妙子、演出・佐々木章光を見た。過去と未来に二人の女がいる。過去の女は希和子(檀れい)で不倫の果てに愛人・秋山(津田寛治)の妻の嬰児を盗み出す。未来の女はかって盗まれた嬰児であった恵理菜(北乃きい)であった。希和子は恵理菜に堕胎した愛人の子供の名である薫と名付ける。未来では恵理菜は実母・恵津子(板谷由夏)の元に奪還されている。そして恵理菜もまた妻子ある男性・岸田(岡田浩暉)と不倫の果てに妊娠しているのだった。

ドロドロである。

モラルのない知的障害者の話と言ってしまえばそれまでだが・・・人間は「愛に溺れること」をどこかで願望し、憧憬し、賞賛する生き物である。

そのために堕胎したり、嬰児を誘拐したり、幼児を虐待しただけでは死刑にならない法治システムを多くの国家が採用している。

妻子ある男性との不倫の果てに・・・一人の孤独な女は狂乱しつつ生きていくのである。

過去の東京・・・。

社内恋愛で妻帯者である秋山の子を身篭った希和子は「妻とは離婚するつもりだが・・・時期が悪いので堕胎してほしい・・・子供は離婚成立後に再婚して正式に作りたい」という秋山の甘言を信じ、堕胎手術を受ける。しかし、子宮掻爬の後遺症で不妊症になってしまう。

しかし、その後、秋山の妻は懐妊し、出産し、秋山には家庭を壊す意志が全くないことを希和子は秋山の妻の恵津子の口から聞く。

「自分の子供をお腹からかき出すような恐ろしい女が幸福になれるとでも思ったの・・・あなたは身も心もがらんどう(空っぽ)の女なのよ」

恵津子の残忍な言葉に己の愚を悟った希和子は復讐のために生れたばかりの秋山の子供を殺害しようと・・・秋山家に不法侵入する。

交尾のために地上に出た蝉の寿命は短い。それを一週間に例える場合がある。

すでに妊娠能力を失った希和子は八日目の蝉に例えられたのである。

しかし・・・憎悪による殺意は嬰児の無垢な泣き声によって一瞬で粉砕される。

混乱した・・・希和子は喪失した胎児の薫と恵理菜を一瞬で置換する。

ちょっとしたアクシデントで燃え上がる秋山家を抜け出した希和子は発狂しながら街を走るのだった。

聖なる薬局の女主人(あき竹城)は擬似母子である希和子と薫に救いの手を差し伸べる。希和子は哺乳瓶とおむつを得たのだった。

過去の小田原・・・。

希和子は「内縁の夫から逃げてきた」と嘘をつき、親友の康枝(京野ことみ)を頼る。一児の母である康枝は夜泣き対策としてりんごジュースの技を伝授する。希和子は「女の友情」に感謝するが・・・新聞やテレビのニュース番組は「放火犯が嬰児誘拐」と希和子の犯行を報道し始める。

「追っ手がやってくる・・・」希和子は突然、擬似母性に目覚め・・・愛しい男と憎い女の子供をわが子とする妄想に支配されるのだった。

世界が全て敵に見える状況の中・・・希和子は逃亡の旅を続けるのである。

未来の東京・・・。

成長した薫=恵理菜は秋山家に戻っている。

しかし・・・その顔にはただならぬ鬱屈が宿っている。

そして、恵理菜もまた不義密通の関係で妊娠しているのである。

恵理菜は自分の過去の痛ましい出来事を認知していた。

「お父さん・・・私の彼も・・・お父さんと同じで・・・浮気相手の出産を望まないタイプなの」

秋山家の夫婦は言葉を失うのであった・・・。

まあ、猟奇的な物語ですが・・・メロドラマとしては王道と言えます。

どうなるんだ・・・どうなったんだ・・・とお茶の間がそそられることは必至と妄想します。

まあ、ある意味恥も外聞もあったもんじゃないドラマでございます。

関連するキッドのブログ『太陽と海の教室

木曜日に見る予定のテレビ『カメンライダー・ドラゴンナイト』(テレビ朝日)『恋とオシャレと男のコ』(TBSテレビ)

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2010年3月30日 (火)

すべてを忘れてしまう娘のための思い出作り(アヤカ・ウィルソン)

テレビ番組のレビューは時々かなり時代遅れである。

特に、劇場映画の放映について書くことにあまり意味はない。

・・・と思いつつ、書くわけである。

たとえば、テレビドラマの「嫌われ松子の一生」と映画の「嫌われ松子の一生」では仕上がりに格段の差があるわけだが・・・テレビドラマのレビューはあるが・・・映画に関してはなんとなくスルーになっている。福田だ。福田が悪いのである。その後は筑紫も悪い。福田がやめたとか筑紫が死んだとか「嫌われ松子の一生」のクオリティーにくらべてなんだってんだ。

まあ、それでこそ映画「嫌われ松子の一生」だ・・・という伝説も成立する。

この日、テレビ東京のお昼のロードショーは「アメリカン・グラフィティ」(1973)だった。

この一作だけで伝説となったポール・ル・マット演じるビッグ・ジョン・ミルナーは「シャコタン・ブギ/楠みちはる」のジュンちゃんである。・・・意味不明だぞ。

Tシャツの袖口に潜むタバコはキャメルである。

で、町の兄貴分ともいうべき、ジョンちゃんのお相手は・・・13才のキャロル(マッケンジー・フィリップス当時14才)である。

背伸びして夜の町に憧れる彼女は姉・ジョディの策略でジョンの車に乗り込む。

今なら、一部愛好家熱狂のシチュエーションであるが、もちろん、永遠の兄貴ジョンはまったくローティーンには興味がなく紳士的に家に送り届けるのである。

途中、街角カーレースを挑まれてもキャロルを乗せている間は羊の皮を脱ぎません。

そういう古き良き狼の理想の姿がここにあるのだな。

もちろん・・・「パコと魔法の絵本」の原点はここにあるのだ。

・・・お前的にはな。

で、『パコと魔法の絵本(2008年公開)』(100329PM8~)原作・後藤ひろひと、脚本・門間宣裕(他)、監督・中島哲也を見た。「下妻」「松子」に続く中島監督作品である。今回は絵本が舞台の物語なのでさらに極彩色に拍車がかかっています。これは好き嫌いがはっきり分かれますが・・・キッドはこの色使いだけでなんとなく得をした気分になります。

基本的には常に「悲しい人々の物語」なので鬱々の内容なのだが、原色色とりどりなのでごまかされます。・・・されるかっ。

深田恭子、中谷美紀に較べるとアヤカ・ウィルソンは演出上、手加減するべき子役ですが(当時10~11才)・・・一切手抜きを感じさせない名演技を披露します。

舞台の映画化なので・・・ややくどい部分もありますが・・・おそらく子供時代に見れば一生忘れられない映画になること間違いなしです。もう、確実にトラウマにはなりますね。

まず、くどい感じは案内役を勤める堀米(阿部サダヲ)と消防車に轢かれた消防士・滝田(劇団ひとり)の共演です。

サダヲとひとりが同じ画面に存在するかぶった感じは超強烈。

そう考えるとこのキャスティングはかなり鏡面的に見えてきます。

まず、飛び出す絵本「ガマ王子VSザリガニ魔人」があって、誕生日にその絵本を亡き母親に贈られたパコがいる。交通事故で両親を失い、一日で記憶が消える記憶障害者となったパコは病院に入院しています。この病院がやがて絵本の世界と渾然一体となっていくという趣向です。世界は絵本の中の世界となり絵本の中の世界は世界となる。

すべては鏡に映ったもう一つの影なのですな。

だから、看護婦も二人いる。

「消灯時間がすぎて起きている患者は永遠に眠らせるぞこら」のタマ子(土屋アンナ)・・・。

「慰謝料とか謝礼金とかお手当てとか特別ボーナスが好き」な雅美(小池栄子)・・・。

ボケとツッコミとか、アメとムチではなく、両者サド目で凶悪なナースです。

実にくどい。

そして・・・二人のナースには意中の恋人や夫というパートナーがいる。

これがタマ子の憧れの人で子役スターくずれの室町(妻夫木聡)・・・。

さらに雅美の夫で弱腰のために妻に夜毎噛み砕かれる夫・浩一(加瀬亮)です。

妻夫木と加瀬のダブルです。くどいじゃん。

さらに言えば医者の浅野(上川隆也)で娘がいるオカマの患者・木之元(國村隼)なのです。

どの辺がくどいかは想像におまかせしますが・・・浅野はシンデレラに・・・木之元はジュディ・オングの衣装を着るということです。

もちろん・・・表面上はこういうペアが目につきますが、「鏡に映った自分のように他人を見る仕掛け」があちこちに作られています。

たとえば「涙を止める方法は涙が枯れるまでなくことだ」と浅野に教えられたもう一人の主人公である大貫(役所広司)がその言葉を餌付けしたサルに拳銃で撃たれて入院した極道の龍門寺(山内圭哉)に伝えるシーンがあります。

拳銃不法所持で愛するサルが射殺されて嘆く龍門寺・・・。

そして大貫を挟んで反対側には娘の結婚式に招待されない木之元がいる。

龍門寺と木之元は号泣するわけですが・・・間に入った大貫はまさに鏡そのものなのです。

大貫は「弱い人間に生きる資格はない」と言う弱肉強食の理念の信奉者ですが・・・やがてパコにメロメロになっていきます。実は狼の皮をかぶった羊だったのですな。

しかし、パコの悲劇を知るまでには大貫はヒザに乗ったパコを突き飛ばし、ライターを届けてくれたパコをぶん殴るという容赦のない攻撃性を発揮して・・・ある意味爆笑です。

もう、この場面だけでこの作品にダメ出しするお茶の間が目に浮かぶようです。

そして・・・この鏡の世界・・・あなたが私で私があなた・・・は最後にさらに悲しい結末を展開するわけです。

迫り来る死を目前にしながら・・・パコに素晴らしい一日を届けようと金に糸目をつけずに病院を飛び出す絵本化する大富豪の老人・大貫。

その命が尽きたと思えたとき・・・本当の悲劇の幕があがる。

実に心憎い展開です。

まあ・・・とにかく・・・一部愛好家はアヤカ・ウィルソンの美少女ぶりに目を奪われて話の内容なんてどうでもいいんですけれどーっ。

この日スタートしたNHKの連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」は生い立ち篇。水木しげるの妻を演じる松下奈緒の幼女時代を演じるのは菊池和澄でかなりいたいけない。

まあ・・・この日はそういう福音に満ちた月曜日だったのです。

そして、無垢な少女たちが麻薬不法所持で捕まるような未来にキャッチされないことを祈るばかりなのでございます。

関連するキッドのブログ『下妻物語

水曜日に見る予定のテレビ『ERⅩⅢ』(NHK総合)

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2010年3月29日 (月)

死にそうな場面に出ても死なず死のうとしても死に至らず(坂本龍馬)

脱藩から一年後の乙女に宛てた手紙で龍馬は「自分の運の良さ」で「死地」を脱したことを語っている。

その死地とは何だったのかは不明だが・・・いろいろと想像は膨らむのである。

そもそも龍馬は何故、文久2年(1862年)の春に最初の脱藩を実行したのだろうか。

まず、当時の坂本龍馬は家督を持っていないことが前提となる。

坂本家は兄の権平が継いでおり、龍馬は身分的にはその家士(家来)ということになる。

現代では想像がつきにくいことだが、長子相続制度の下では坂本龍馬は郷士でもないのである。あくまで郷士・権平の家人という立場しかない。

山内容堂の家来と言えるのは坂本権平であって、龍馬はその権平の家来なのである。

もちろん、藩から役目を命じられればその時から龍馬は藩士の一員となるが、この時点での龍馬は無役であったと推定される。

つまり、龍馬が脱藩しても要するに坂本家からの出奔ということである。

ただし、手形なしの越境が発覚すればもちろん、罪に問われるのである。逆に言えば発覚しなければよほどのことがない限り無罪である。要するに消息不明ということだ。

ところが、龍馬が脱藩直後に吉田東洋が暗殺され、容疑者の一人となったために坂本家は詮議の対象となるのである。

しかし、これも真犯人の那須信吾が組上の上士で吉田東洋の政敵である深尾重先に報告の上、脱藩したために沙汰止みになったと思われる。

つまり、そういう意味では龍馬の脱藩はそれほど深刻なものではなかった可能性がある。

龍馬の脱藩についてよく語られるのは次のような諸説である。

①前年の長州探索の旅で過激派の久坂玄瑞に洗脳された

②吉田東洋に命じられ極秘の探索の旅に出たが直後に東洋が暗殺され戻れなくなった

③武市瑞山とのなんらかのトラブル

④鬱だった

⑤失恋

⑥若気のいたり

・・・つまり、よくわかっていないのである。ある意味、脱藩は衝動的だったとも言える。

土佐勤皇党の中で、「武市の一藩勤皇に飽き足らず反目」説も成立するし、吉田東洋派であるにも関らず、武市半平太の親戚であるという立場に「苦慮」した可能性もあり、撃剣家としての腕を買われ「吉田東洋から武市暗殺を武市から東洋暗殺を依頼されて進退極まった」という空想さえ出来る。

出自から言えば「明智」の血を曳く坂本家は本来、勤皇家である。しかし、二度の江戸留学や、河田小龍・吉田東洋の影響で通商の重要性を感じている龍馬は「尊王攘夷」でもなく、「佐幕開国」でもない、「尊王開国」という特殊なポジションに早くも推移していた可能性もある。

脱藩後、龍馬は九州地方から中国地方へそして大坂・京から江戸へとおよそ半年で移動していく。

吉田東洋の密命ならば薩摩藩探索の可能性は高い。しかし、単なる物見遊山の匂いも感じられる。

その行動半径の広さから流浪ムードも漂うし、最後に江戸に落ち着くところから、千葉さな子との恋愛も浮かびあがるのである。

この頃、龍馬は26~27才であり、この時代としてはすでに分別のつく年頃である。しかし、そこで大人気ない行動をしているところが龍馬の異常性や魅力を形勢しているとも言える。

今回のドラマでは「何故脱藩したのか」が「曖昧」に描かれているが・・・事実・・・「曖昧だった」のではないかということも充分考えられる。

龍馬は糸の切れた凧のように終焉の地まで・・・ただ彷徨っていくだけなのかもしれないのである。

で、『龍馬伝・第13回』(NHK総合100328PM8~)脚本・福田靖、演出・大友啓史を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は新作・坂本龍馬、父代わりの兄・権平、乙女姉やんの豪華坂本一家描き下ろし三大イラストで出血大サービスでございます。末っ子パワー爆発の龍馬、苦味ばしった惣領の権平、そしてどこかミーハー気質の乙女と各人の魅力が爆発でございます。織田信長と並び、もしもあの日あなたが殺られていなかったらこの国はどんな未来が待っていたでしょうとテレサ・テンも浅丘めぐみも歌いだす坂本龍馬の旅が今始まるのです。ドラマでは弥太郎一家は大物両親の出番を作るために二世帯同居ですが、この頃の弥太郎は妻・お喜勢と城下で新婚生活を送っていたと思われます。何しろ、弥太郎は吉田東洋の密偵でございますからね。それにしても弥太郎の嫁をめぐる龍馬への警戒感・・・加尾の件が相当にトラウマになっている演技プランが毎回爆笑でございますね。そして・・・どことなく加尾に似ている喜勢・・・ナイス・キャスティング・・・けしておねだりではございません。田舎娘・春猪や田舎妻・冨もまだなんですものねぇ。

Ryoma186201 文久二年三月。土佐ではすでに桜が満開である。正月に江戸では老中安藤信正が坂下門外で襲撃され、幕府の権威はさらに低下した。各藩では攘夷運動が盛んになり、公武合体で政界再編を図る佐幕派と下克上の情念に先鋭化する尊皇派は軋轢を増していく。長州佐幕派は開国による富国強兵策を幕府とともに朝廷に認可させようと策動するが長州攘夷派によって失敗かる。薩摩攘夷派は京都でのクーデターを計画するが藩主・島津久光ら佐幕派はこれを弾圧し寺田屋騒動に発展する。島津久光は上京したが立場はあくまで公武合体の推進であった。安政の大獄で頓挫した雄藩連合による幕府補佐が主眼なのである。各藩の過激派はこの流れに逆らい空想的な尊皇攘夷の情熱に突き動かされ脱藩し京都に集い始めていた。土佐勤王党の武市瑞山は藩政を勤王派で統一しようと試みるが、前藩主・容堂と仕置き家老・吉田東洋の理念を突き崩すことはできない。あくまで土佐一国の勤王に拘る瑞山に対して土佐藩過激派もまた脱藩の兆候を示し始めていた。

それは徳川幕府250年の歴史の中で飽くことなく繰り返されてきたお家騒動に過ぎなかった。藩主がいて、その側近がいる。側近は権力を握り派閥を作る。世代交代によって新・藩主が立てば新たな側近が生まれ、新たな派閥が出来る。旧派閥と新派閥の間に摩擦が生じる。時には旧派閥が勝ち、新派閥を粛清し、新派閥が勝てば旧派閥を弾圧する。苛酷なパイの争奪戦は陰湿なものとなるのである。

幕末の土佐では藩主の父・山内少将、前藩主で藩主の叔父・山内容堂、藩主・山内豊範の三つの派閥が競合していた。これに加え、山内家家臣と旧主・長宗我部家家臣の開藩以来の怨念が上士と郷士の間にもつれている。そこに西洋列強という外圧が加わることによって複雑怪奇な情勢が醸し出されていた。

文久二年、春、土佐で政治の実権を握るのは前藩主・容堂に重用される吉田東洋である。ジョン・万次郎に対する調査により、異国を実感している東洋にとって土佐勤王党の唱える尊皇攘夷などは絵空事に過ぎなかった。吉田東洋の意を汲む河田小龍の教えを受けた坂本龍馬もまた東洋派の一員であった。

龍馬の悲劇はまた土佐勤王党の盟主である武市瑞山の知遇を得ていたことである。

武市瑞山は下士たちの下克上のエネルギーを得て出世を夢見る理想主義者であった。現実主義の東洋と夢想家の瑞山。二者はけして混ざることのない水と油だったのである。

東洋の屋敷に呼び出された龍馬は武市瑞山暗殺を命じられ・・・進退に屈した。

瑞山からは東洋暗殺を持ちかけられていたのである。

東洋「その顔は不服のようであるな」

龍馬「武市先生を抜けば土佐の郷士の不満を抑えるものがなくなりまする」

東洋「しかし・・・龍馬、今は国難じゃ・・・武市のような愚者を利用して、柴田備後や深尾鼎など・・・能無し家老どもが巻き返しをはかってくる。目先の瑣事に目を奪われて大局を見誤る有象無象だらけだぞ・・・この土佐っちゅう国はな・・・たまるか」

龍馬「けんど・・・それを丸く治めてこそ・・・吉田様の器量というものじゃございませぬか」

東洋「・・・ふふふ・・・言うのう・・・ま、良いわ・・・それならお前は九州に旅に出よ」

龍馬「九州に・・・長崎ですか・・・」

東洋「長崎のことはもう目当てがついちょる・・・薩摩じゃ・・・薩摩の動向が気にかかる・・・」

龍馬「上洛の件ですか・・・」

東洋「そうじゃ・・・なにしろ・・・あの国(薩摩藩)はご親戚とは言え、油断ならん国じゃ・・・」

龍馬「それでは旅の手形は・・・」

東洋「これはうかみ(斥候)じゃ・・・忍んで参るのじゃ・・・」

龍馬「・・・それがしの留守の間・・・吉田様の警護が案じられまする」

東洋「たわけ・・・ワシに警護など用無しじゃき」

龍馬は暗い予感に襲われながら吉田屋敷を後にした。

見上げた空は花曇りである。星はない。

(星占いを封じるか・・・それもまた宿命じゃの・・・)

龍馬はもう一人の吉田である・・・今は亡き松陰の予言を思い出す。

(血で血を洗うしか・・・道はないのかのう)

龍馬は年下の忍びである沢村惣之丞を選んだ。沢村もまた弥太郎と同じく地下浪人の子である。弥太郎は東洋の目に適い出世を果たしたが・・・沢村にはまだそういう特出した才はない。まもなく二十歳になる沢村は童顔である。

沢村はすでに脱藩第一号となった吉村寅太郎とは江の口村の間崎塾の後輩だった。

(血で血を洗う土佐から・・・こいつを救い出しちゃるか・・・)

龍馬はふとそう思う。自分とともにある限り・・・沢村は生きると・・・龍馬の千里眼は見通している。

しかし・・・龍馬自身が旅立った後で・・・沢村の命運が尽きることまでは龍馬には見通せないのである。

桜が散った頃・・・龍馬と沢村は土佐から姿を消した。

五月雨の夕刻・・・田淵町の武市道場に男たちが集まっていた。

武市とともに鏡心明智流を学んだ島村衛吉、岡本猪之助など土佐勤王党の中でも手練れの者がそろっている。

そこに異形の男が到着した。男は烏天狗の面をかぶっている。その面をあげて男が言う。

「那須信吾でござる」

武市は頷いて男たちの顔を眺める。

「城内より・・・知らせが参った。今宵・・・藩主・豊範様はご進講なされる。教授は吉田だ・・・」

武市は初めて東洋を呼び捨てた。その顔に高ぶりが生じる。

「すでに・・・薩摩は藩主自らが上洛し・・・京に尊王攘夷の御旗を立てる構えだ・・・このままでは土佐は乗り遅れる・・・吉田を誅るしか道はないき・・・」

男たちは沈黙したままだった。彼らには言葉がなかった。言葉は武市が語れば足りた。

その言葉に酔い・・・男たちに殺気が生じる。

「今宵は雨じゃ・・・吉田屋敷までの帯屋町の辻で待ち伏せをかける。先手に岡本殿、次手に島村殿、止めに那須殿・・・この嵐流三段攻めで土佐に夜明けをもたらしちゃれ」

男たちは盃を交わした。

夜道を東洋は屋敷に向かっている。先導するのは提灯を持った下働きの小者である。その後に荷役の若者が続く。剣の心得があるのは東洋一人だった。しかし、東洋には無双の自信がある。

前方の剣気に東洋は気がついていた。

「ふん・・・小賢しい・・・」

東洋はずいと前に出る。

「弥助・・・さがっておれ・・・」

提灯をもった小者は振り返り、怪訝な顔で足をとめる。

東洋が提灯の前に出ると白刃が閃いた。

チリンと金属音が鳴り・・・呻き声があがる。

一瞬で二人の男が路上に倒れ伏す。

「峰打ちじゃ・・・骨は折れたかもしれんの・・・」

東洋は身動きできない男たちに冷笑を浴びせた。

暗がりから第二陣が躍り出る。今度は三人だった。東洋は一陣の風のように男たちを縫っていく。

東洋の通り過ぎた後には再び、男たちが悶絶していた。

「おい・・・残ったものども・・・こやつらを連れて帰れ・・・」

東洋は暗闇に声をかける。

闇の中の三人のうち・・・二人の男はすくみあがっていた。

一人、野武士のようないでたちの男だけが間合いを詰める。

「さすがは・・・東洋様・・・聞きしに勝るお手並みじゃ・・・」

「ほほう・・・天狗か・・・少しは使えるようじゃの・・・」

野武士は烏天狗の面をかぶっている。

「拙者に峰打ちなどのお気遣いは無用ですぞ・・・」

その声に含まれる嘲りの気配が東洋の自尊心に火を着けた。

「しれものっ」

東洋は刀を返すと必殺の一刀両断を放つ。その刀が空を切った。

「お・・・」

東洋は目を疑った。飛びのいた烏天狗は虚空に浮かんでいる。その背中には羽根が生えていた。

「あやかし・・・」

「ふふふ・・・東洋様・・・闇に潜みしものは・・・人とは限りませんぞ」

烏天狗は空中を遊泳しながら弓矢を取り出していた。

「お命頂戴いたす・・・」

虚空を矢が切り裂く。

「笑止」

その矢を東洋は真っ二つに切り割った。次の瞬間、神業の如く放たれた二の矢が東洋の眉間に突き刺さる。

「那須流与一の弓術・・・五月雨の矢」

仰け反った東洋の体を無数の矢が貫いていく。

「・・・ば・・・か・・・な・・・」

東洋は矢によって地面に縫い付けられていた。

倒れたときにはすでに絶命している。控えていた大石団蔵が抜刀し・・・東洋の首を刈り取った。

那須信吾がその傍らに舞い降りる。

「安岡殿・・・人手を呼んでくれ・・・けが人を片付けねば・・・の」

青ざめた安岡嘉吉は頷くと闇の中を走り出した。

天狗が飛んだ瞬間に腰を抜かしていた東洋の供のものたちもすでに絶命していた。胸には一本ずつ矢が生えている。

那須信吾は羽を収めた。雨がしとしとと降り続ける。

関連するキッドのブログ『第12話のレビュー

火曜日に見る予定のテレビ『八日目の蝉』(NHK総合)

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2010年3月28日 (日)

もしも愛しい人に大事あったら将軍様でも許しませぬ(成海璃子)

将軍は徳川家斉(第11代将軍在位1787~1837年)である。50年間も幕府将軍の座にあった男だ。その間に50人以上も子供を作っている。

その間、政治家(老中首座)も田沼意次、松平定信、松平信明、水野田忠成、水野忠邦など変遷している。緊縮財政と収賄政治を交互にやるような感じで、改革しては無駄遣い、無駄遣いをしては改革というこの世の春を謳歌したのである。

天保12年(1841年)に家斉が死んでから幕府が30年ともたなかったのはある意味、この家斉のせいだと言っても過言ではない。

大好物は生姜だったと言う。キッドはジェネラル・ジンジャーと密かに呼んでいる。バカ殿そのものであるが、キッドも生姜は大好物なのでなんとなく親近感がある・・・おい・・・。

ま、遊び狂っていたので「大江戸かるた腕競ぺ」を企画してもおかしくないが、おこい(成海璃子)などが御前に出たら夜伽を命じられるのは確実だったと思う。

で、『咲くやこの花・最終回』(NHK総合100327PM0730~)脚本・藤本有紀、演出・佐藤峰世を見た。「ちりとてちん」の脚本家と「篤姫」の演出家である。基本的にのほほんな時代劇だった。そういう意味では地味で・・・中盤はだらだら続いている感じがあります。百人一首のゲーム攻略法として「頭文字」で断定などのテクニックがもう少しあるとよかったと思う。

ライバルもうなぎ屋の娘のおしの(寺田有希)だけでものたりなかった。

江戸中の娘が対決するのだから、旗本の娘とか、吉原の遊女とか、町道場の美人剣士とか予選から決勝まで様々なタイプがいて盛り上げてもいいのに・・・。

一方、おこいの意中の人は仇持ちの浪人・由良様(平岡祐太)である。

濡れ衣を着せて由良の父親を死に追いやった悪大名(寺田農)や悪徳商人(大和田伸也)たちとのからみも暗殺未遂があるもののそれほど修羅場にならないのである。

最後も懐にいれたやおこいのお守りである百人一首の札を刃物と見せかけて悪大名に先に刃傷沙汰を起こさせるトリック。

失脚した大名(架空)が尋常に果し合いを望むと軽くスルーである。

まあ・・・のほほんの限界というか。

師匠にして最後の敵である大奥教育係の花嵐(松坂慶子)がいくら「弱いから負けたのです・・・ただそれだけのこと」とクールに決めてもちっとも説得力がありません。

まあ・・・「命を大切にしよう」の世界では「復讐は無駄なこと」に決まっているわけですが。

見事、仇を討って盛り上がりたい庶民はたまったものじゃありませんな。

『24 ~TWENTY FOUR~』(米国ドラマ)では妻子を殺され復讐鬼となったトニー・アルメイダが地下に潜ってテロリストに接近、黒幕を一撃必殺で殺害しようと試みる。かっての親友・ジャック・バウアーに爆弾を抱かせ仇もろとも吹っ飛ばそうとする刺客魂爆発である。

バウアー「やめろ・・・そんなことをしても誰も喜ばない・・・」

アルメイダ「妻子は死んだ・・・喜ぼうにも喜べない」

バウアー「法に委ねるんだ・・・」

アルメイダ「あんたにだけは・・・言われたくない・・・すまない・・・これしかない・・・の一言で何人殺したんだ・・・今さら・・・腰抜けになったなんて・・・言わせない・・・娘のためにテロリストの逃亡幇助したのはあんただろう」

バウアー「・・・すまない・・・それしかなかった」

まあ、無法者を相手に正義の味方が法令順守する難しさは洋の東西は問わないのですな。

侠客の伝統では一宿一飯の恩義に報いるためにどんな汚れ仕事でもこなすのが義とされるわけで・・・その最高峰が暗殺です。

許されざるものがこの世にある限り、そして法の抜け穴があるかぎり、悪の抑止力としての復讐者は永遠不滅の存在であり、そして誰もがその実行力を心では賞賛することをドラマの世界ではたまにはみせてもらいたいのだが・・・悪法を支配するものはそれを許さないのもまた世の常なのである。

ま・・・おこいがのほほんと幸せになることに異議はありません。

関連するキッドのブログ『第1回のレビュー

月曜日に見る予定のテレビ『パコと魔法の絵本』(テレビ東京)『中山忍の十津川警部43』『ピンポン』(TBSテレビ)・・・「あしたのジョー」がこんなのだったらどうしよう・・・。

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2010年3月27日 (土)

驚異!記憶の海の彼方に消えた恋(伊藤歩)

まあ、「世にも奇妙な物語」の亜流なのである。不思議な話が大好きな小学生の原作を中学生がドラマ化したレベルと言えるだろう。

もちろん、それにも面白みはあるし、ある意味では凄く面白いとも言える。

だが、それ以上でもそれ以下でもないのである。

どちらかといえばピンク映画化した方がおタク心をそそるし、エロゲでもよかった気がするが・・・まあ、そういう作品はもう死ぬほどあるぞ・・・と言われればそれまでだしね。

で、『記憶の海・最終回』(TBSテレビ100325PM1130~)原作・松田奈月、脚本・大浜直樹、演出・吉田秋生を見た。近未来の日本の大学の脳科学研究室では人間の脳から内部記憶(個人情報)を抽出し外部情報化する技術の実用研究が行われている。すでに人間の記憶をすべてデータ化し、電脳に移植する技術は完成していた。しかし、それはあくまで暗号化されており、それを解析するためには第三者を生体読み込み装置としてシステムに組み込む必要があった。

殺人犯の記憶を過剰に読み込み、殺人犯の意識に憑依された福原助教授(佐野史郎)は自殺した。システムを改良するために流入する記憶の保存の遮断を実験したヒロタマナブ(筒井道隆)は過去五年間の記憶を失い、さらに3分以上、記憶を保持できない記憶障害者となってしまう。26才以後は常に3分しか存在しない過去を持つ男には28才から付き合っていた恋人がいた。当時の新人研究員・小野(伊藤)である。

長期記憶を保存できないために読み込み者として最適となったヒロタだが、自分を忘れてしまった恋人の記憶をなんとか修復したい小野は研究指導者の山内(柴俊夫)にヒロタの記憶を読み込み者として志願する。

山内「それは科学者としての意思なのか・・・それとも私情なのか」

小野「そこにどんな区分もないことは・・・教授にはお分かりのはずです」

山内「しかし・・・ヒロタの脳内には君と出逢った以後の情報はもはやないのではないか」

小野「私は記憶の貯蔵に問題があるのではなく、想起システムに問題があると考えます」

山内「だが、八年前の記憶を想起することに問題はないのだぞ・・・現にヒロタは私を覚えている。それ以後に出逢った小野君の記憶がないのは・・・記憶そのものが消えている証拠ではないか」

小野「記録順序で検閲規制がかかっている可能性があるのです」

山内「君は記憶の逆流を考えているのではないのか」

小野「・・・」

山内「共通した記憶を持つものは別視点の情報を融合することが可能だと・・・」

小野「私には私の姿は見えないが彼には私の姿が見えている。私の記憶と彼の記憶を融合すれば、検閲規制の壁を突破できる可能性があります」

山内「そこまでして・・・君は彼を取り戻したいのか・・・しかし、それはもはや彼とは言えないのではないか・・・」

小野「研究に対する情熱と、彼に対する情欲にも区分はありません」

山内「しかし、そうなると研究チームは君たちのすべてを見ることになるぞ」

小野「私は必要ならばどんな演出にも応じるタイプの女優ですから・・・」

山内「・・・ゴクリ」

小野「承諾してくださるのですね」

山内「それを拒絶できる男は健全とは言えないだろう・・・」

こうして、記憶障害者・ヒロタの記憶の海に恋人である小野は記憶を読み取る媒介者として接続されたのだった。

井手研究員(石井正則)「接続完了・・・音声よし・・・ノイズなし」

塚本研究員(藍沢りな)「視聴覚以外雑情報の排除良好」

マッケンジー研究員(ダンテ・カーヴァー)「視界良好、ヨク見エマス・・・タダシ真ッ暗デス」

山内「暗黒で沈黙の世界か・・・やはり・・・記憶は・・・」

井手「あ・・・これは・・・」

(響き渡る男女のあえぎ声)

塚本「雑情報レベル拡大」

山内「おそらく、初夜の記憶だ・・・臭覚、味覚、触覚・・・特に痛覚は大きいからな」

マック「結合シテイマス、ナゼダ・・・ナゼ二人ノ姿ガ・・・」

塚本「どうしたんです・・・何が見えるんです」

山内「痛覚が大きいのは小野君の記憶がヒロタに逆流しているためだ・・・二人の姿が見えるのはおそらくその手のホテルの大鏡のある部屋で結合しているからだ。鏡にお互いの姿が見えるのは座位で後背位だからだろう・・・その体位が一番接合個所が見えやすいからな」

井手「音声拡大します」

ヒロタ(情報)「どうだい・・・二人は一つになっているぞ」

小野(情報)「そんな・・・はじめてなのに・・・こんなの・・・恥ずかしい」

ヒロタ(情報)「馬鹿だな・・・これが愛そのものの姿じゃないか」

井手「うっ・・・」

山内「どうした・・・」

井手「鼻血が出ました・・・」

塚本「私にも見せてくださいよ~」

マック「ダメデス・・・コノ席ハ譲レマセン・・・後デ録画デ楽シンデクダサイ。ナンナラ、一緒ニ見テモイイデスヨ」

塚本「まあ・・・私ヲ狙ッテイルノ」

マック「スミマセン」

それから数時間に渡って繰り広げられた痴態については省略する。

山内「二人とも若いな・・・キリがないので接続解除・・・」

小野は記憶の愛液の海から帰還した。

小野「・・・よかったわ・・・」

マナブ「小野君・・・」

小野「ヒロタさん・・・私がわかるの・・・」

マナブ「愛する人を忘れる男はいないよ・・・」

小野「まあ・・・あなたはずーっと忘れてたんですけどね」

マナブ「え」

山内「奇跡だ・・・」

塚本「いいえ・・・おそらく・・・接続の後遺症でヒロタさんに部分的な小野さんの記憶と機能移転が起こっているだけですよ・・・恒久的なものではないと思います」

小野「いいのよ・・・もう一回できれば・・・それで・・・すべては計画通りなの」

その夜・・・二人は三年ぶりに燃えたのだった。

塚本「そこまでして懐妊したかったのですか」

小野「ヒロタマナブはもの凄い資産家なのよ・・・その正統な後継者を妊娠することはこの分野の発展にとって重要なことなの」

塚本「小野さんの研究費も大幅確保ですしね」

小野「そこには区分はないのよ」

一夜明けて、ヒロタマナブは記憶障害者に戻った。

マック「渡米スルノデスカ・・・」

小野「記憶の移植技術について向こうで博士号をとるつもり・・・特許も向こうで申請した方が安全だし・・・」

マック「東あじあ共同体ノ工作員ガ狙ッテイルソウデス・・・気ヲツケテ」

小野「大丈夫・・・母は強いのよ・・・記憶を継続させる自然の意志そのものなのだから」

マック「オ元気デ・・・」

ヒロタ「誰だい・・・彼女・・・いい女だな」

マック「ハイ・・・ソノ通リデス・・・私ノ婚約者デスカラ」

そしてすべての物語は記憶の海に還元されていく。どこまでも深く・・・おだやかに。

関連するキッドのブログ『第三話のレビュー

日曜日に見る予定のテレビ『龍馬伝』(NHK総合)『深・ケロロ軍曹』(テレビ東京)

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2010年3月26日 (金)

怪奇!ほのぼの教授の子育て日記(岩佐真悠子)

「モヤモヤさま~ず」(テレビ東京)という深夜番組が日曜の午後七時に引っ越すという。夜の番組になってもまったくチェンジをしないというが・・・それはどうかなとも思う。しかし、どうしても深夜に見たければ録画して深夜に再生すればいいわけだ。

すでにテレビ番組を録画視聴されることが常態となって久しい。それは便利であるが・・・実は失われたものがないわけではない。

過ぎ去ればもう二度と得られない現実と同じリアルさが失われているのである。

何かを得れば何かを失うのは必然だが・・・人間はついそれを忘れがちだ。

とくに不便というものを失ったときにはそうなるのである。

もちろん・・・それが不都合であることはない。

しかし、人間は時には不便さを懐かしく思い出す。すべてを見逃すまいとテレビにかじりついていた時間。

放送終了後に忘れがたく頭の中で反芻した時間。

そして、それを時々思い出すこと。

もはやいつでも見れることになった番組はデータの山となり、そしてひっそりと忘れられていく。

「モヤモヤさま~ず」はキッドにとってうふふな番組だ。バ・・・さま~ずも懐かしいし、スタッフの何人かにも思い出がある。だから、より広告収入を稼ぐ時間に出世することは喜ばしいことなのである。

しかし、何かを得れば何かを失うことが必然であることを申し上げておく。

で、『記憶の海・第三回』(TBSテレビ100324PM1130~)原作・松田奈月、脚本・大浜直樹、演出・吉田秋生を見た。このドラマの最大の問題点は「記憶を巨大コンピューターに転送するテクノロジー」がありながら「記憶障害者を治療するテクノロジー」がないという不合理性にあるのである。「脳神経内に保存された情報をその保存のメカニズムの解明なしでとりだせないことは明確」ではないのか。

まあ・・・テレビの構造を知らなくてもテレビを視聴することはできる・・・という口実で押し切るつもりかもしれません。

さて、ドラマ内ではほとんど触れられないが、脳内記憶読み込みシステムは次のような構造になっているらしい。

①脳内の記憶情報を超科学によってスーパー・コンピューターにすべてコピーする。

②この記憶母体(人間A)をマザーと呼ぶ。言わば記憶を読み取られる人である。

③次にマザーとコンピューターを繋いだままでさらに媒介者(人間B)と呼ばれる読み取る人が膨大な記憶データからいくつかの記憶をピックアップする。

④Aの記憶をBが想起することにより、記憶を保存することが可能になる。

・・・ねえ、困ったシステムですよね。

ともかく、このシステムによって過剰に記憶を読み込んだ福原教授(佐野史郎)が殺人犯に意識を乗っ取られ死亡。

問題を解決するためにヒロタマナブは情報制御技術を改良しようとしていて事故に遭遇し記憶障害者になってしまう。

これだけ問題あるシステムなのに社会から糾弾されることもなく、山内教授(柴俊夫)や小野研究員(伊藤歩)は研究を続行しているのである。

今回、山内教授の研究目的が明かされる。

山内教授はアルツハイマー型認知症を発症していたのである。そのために記憶を保存する研究を完成させなければならないと考えているらしい・・・。

だ・か・ら・・・記憶を読みとるテクノロジーがあれば認知症は治療可能ですからーっ。

ま・・・いいか。

妻を殺害した福原教授や、快楽殺人者の薮田研究員(金子貴俊)という物騒な物語の後でドラマは突然、「私の頭の中の消しゴム」の話になっていくのである。

福原から病気を告白された妻(中村久美)と娘(岩佐真悠子)は研究室に招かれる。

山内が心を読まれる人、小野が心を読む人で実験が開始される。

ヒロタマナブの事故を繰り返さないために・・・すでに心が破壊されているヒロタマナブを媒介者としていた設定を・・・研究者の意地で変更なのである。

最初は認知症のために「カップヌードルにお湯を注いだことを忘れ、またカップヌードルにお湯をそそぐ・・・」と言った山内の最近の出来事しか読み取れない小野。

ところが休憩時間に学食の親子丼を家族で食べて和んだ山内は・・・愛娘に関する思い出を溢れさせる。

生れたばかりの娘を抱いたこと。娘と一緒にプールに行ったこと。娘と遊園地に行ったこと。娘とお風呂に入ったこと・・・このあたり、男親なら当然抱く娘に対する性的妄想も再現されているはずだが、女性による検閲があるため回避されるのだろう。

まあ・・・このブログの大前提の示す通り、「愛とはメモリーなのである」から、記憶を読み取れば観察者は愛に溺れるのである。

小野を通じて山内の娘に対する愛を目撃した他の研究員や、山内の妻、そして娘本人は感動に包まれるのだった。

娘「お父さん・・・こんなに私のことを覚えていてくれたんだ・・・」

涙ぐむ娘だった。

それを確認するために・・・このシステムが必要なのかどうかは別として。

ああ、そうだよ。お父さんたちは皆、娘をいつまでも覚えておきたくて、デジタルカメラのシャッターを切り、ムービーカメラを回し続けるのだ。

いつか・・・「お父さん臭い」と言われるその日まで。

とにかく・・・娘への愛を伝えることに成功した山内はシステム開発への情熱を失うのだった。・・・困ったもんだな。・・・と思いつつ、次は最終回なのである。

まあ、基本的に研究者たちは医者が患者の裸を見ても不謹慎でないように実験体の心をハダカにしても大丈夫なのだと思うが・・・最終回は恋人同士だった二人の心の秘密に迫るわけであり・・・すごいことになるわけである。

ならないと思うぞ。

関連するキッドのブログ『第二話のレビュー

土曜日に見る予定のテレビ『咲くやこの花』(NHK総合)『川島海荷の遠まわりの雨』(日本テレビ)

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2010年3月25日 (木)

戦慄!殺人者の記憶転移に汚染された事件(逢沢りな)

さて、ドラマとドラマのつなぎにしょうもないドラマをレビューしてみるのも一興なのである。

ドラマ原作大賞という怪しい賞の受賞作のドラマ化である。

講談社とTBSテレビが主催して募集している。選考委員は編集者とプロデューサーでその時点でもう何の権威もないことが明らかである。

その選考基準は「話題になりそう」とか「ドラマになりそう」とかいう漠然とした気分であるだろう。

そんなものが「基準」になるかどうか、ちょっとした知性があればすぐに分る。

いや・・・あくまで個人的にそう妄想しているだけです。

で、第1回の受賞作は「被取締役 新入社員」で2008年にドラマ化されている。

まったく記憶になかったがキッドはそのドラマをレビューしていた。

しかも、かなり好意的に・・・なのである。

それに対して・・・今回、辛口モードなのは・・・記憶についてのドラマだからだろう。

記憶についてのドラマを素人の思いつきでドラマ化する・・・そんなことが許されていいのか・・・と思うのである。

編集者とかプロデューサーは記憶について何の学習もせずに仕事ができるものなのか・・・と考えるのである。

21世紀か・・・恐ろしい時代になったな。

で、『記憶の海・第二回』(TBSテレビ100323PM1130~)原作・松田奈月、脚本・大浜直樹、演出・吉田秋生を見た。演出家はベテランである。最低限の仕事はしていると思う。問題は「テレパシスト/ジョン・ブラナー」から始まって「サイコダイバー・シリーズ/夢枕獏」や「パブリカ/筒井康隆」に至る「読心」の物語の歴史を軽くスルーしていることだろう。

この「人の心を読む面白さ」についてはものすごく多くの試みが繰り広げられていてその中にはものすごい傑作が生み出され・・・ある意味行き着くところまで行っているジャンルなのである。

最近ではアニメ化された「RD 潜脳調査室」(2008)が実用化された読心捜査を描いている。

ドラマ化するための素材は死ぬほどあります。

そういうものを無視してこの企画というのはどこか・・・恐ろしい怠惰の気配を感じるのだな。

もちろんフィクションなので・・・なんでもありといえばありだが・・・この近未来的な時代設定といい・・・そこで描かれる出来事といい・・・ものすごくチープなので恥ずかしい感じがします。

さて、主人公ヒロタマナブ(筒井道隆)は恐怖の人体実験によって、過去五年間の記憶を失い、その後は3分間の短期記憶しか保持できない記憶障害者となっている。その事件から三年経っているが研究室は相変わらず運営されているのである。

しかも、記憶読み取りの技術を司法に導入するために検察が実験を見学に来ているのである。

その前にヒロタマナブの記憶障害事件をなんとかするべきだろう。立派な犯罪だぞ。

しかし、第二回では恐るべき事実が発覚するのである。

その事故(人体実験事件)が起こる前に記憶読み取り技術は確立していて、山内教授(柴俊夫)の同僚である福原助教授は殺人犯の記憶を読み取った夜に殺人犯の記憶による模倣行動で自分の妻を斬殺しその後自殺するという事件を起こしているのだった。

その事件をヒロタマナブの恋人であり、山内の弟子でもある研究員小野(伊藤歩)はもみ消しているのである。

それなのに山内は「記憶読み取り技術は犯罪者を追求できるので社会に貢献できる」などと主張するのである。

そして小野はそれに疑義をはさみ「今日は被験者の気持ちが不安定なので実験は延期しましょう」と言うものの告発はせずに追従している。

いや・・・だから・・・まず自分たちが犯罪者であることを・・・ま、いいか。

そして、今回、若手の研究員・薮田(金子貴俊)が「自分の殺人の記憶」を録画するために研究に参加していた快楽殺人犯(自分の母親などすでに六人を殺傷)していたことが判明する。

薮田は読み取り側であるヒロタマナブを殺害しようとして間一髪、逮捕される。

その動機は「記憶を知られたので殺意を抱く」だったのだが、途中で「ヒロタマナブは記憶できない」ことに気がつき、「殺したいから殺す」というドタバタぶりである。

なんだろう・・・ギャグなのか。

とにかく、この読心の技術が、実験体Aの記憶を実験体Bの想起機能で読み取るというものであることがなんとなく示されたのである。

なぜ・・・そうしなければならないのかは一切説明されない。

そしてとにかく・・・人間の記憶に残る映像・音声は機械的メディアに転写できるらしい。

モニターに過去の記憶の記録を映せば研究員たちを欺くことができるのである。

まったく・・・夢のような脈略のない話なのである。

もちろん・・・このような怪談は由緒正しい・・・昔ながらの展開だが・・・それならそれでもう少しそれらしく装飾してもらいたい。

これだけの研究には当然、国家予算が使われているはずで、同時に倫理的な監視が求められるだろう。学者としての名声を得るためには研究を発表する必要があり、そうなれば異議を唱える研究者は続出するはずである。

遺伝子の研究に対する横槍を知らないのだろうか。

そういうリアリズムが全くないのである。

せめて新人研究員の塚本(逢沢)を通じて世界の情勢と研究室の閉鎖性の落差くらいは描いてもらいたい。そうでないと精神病院の患者たちの妄想物語にしか見えないのである。

もちろん・・・最後は「失われた愛の記憶」を求める小野のラブ・ロマンスにたどり着くと思うのだが・・・どんな結末が待っているのか・・・ある意味、楽しみなのである。

関連するキッドのレビュー『第1話のレビュー

金曜日に見る予定のテレビ『デュラララ !! 』(TBSテレビ)『マジすか学園』(テレビ東京)

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2010年3月24日 (水)

恐怖!人体実験・物忘れの激しい男を愛した女(伊藤歩)

伊藤歩もまもなく三十路である。

映画「スワロウテイル」(1996)でドラマ「リップスティック」(1999)だからそうなるのである。

時が経つのは早いのである。

記憶と記録が違うものであると考えるのは人それぞれであるだろうが、記憶を記録としたいというのは様々な人の願望だろう。

たとえば検索サイトで「天安門の虐殺」とか「チベット侵略」とかの「悪事」をなかったことにしようとする国家にとっては記憶の記録化は憧れの高度技術であろう。

記録ならば消去できるからだ。

人間の記憶を記録と考え、自分たちに都合の悪い記憶を削除し、自分たちの都合の良い記録を捏造して入力する。

独裁者たちの見る夢は限度がない。

きっと、そのための人体実験もこっそりやっているとしっかりと妄想できるのである。

その可能性を見つめるドラマを夜中にひっそりとやっているところがまた不気味なのだった。

で、『記憶の海・第一回』(TBSテレビ100322PM1140~)原作・松田奈月、脚本・大浜直樹、演出・吉田秋生を見た。四夜連続のほぼ30分のプログラムである。何故、二時間でやらないのか・・・と思う。最初から録画して見てもらう姿勢なのか・・・。本当にTBSテレビの編成は頭がおかしいよな。それにしても原作者は中国・上海のテレビ制作会社に勤務している人なのである。ある意味、謎の神奈川県生まれだ。中華街出身なのか?・・・まあ、前フリの素朴な感想と原作者の出自が偶然にも符合したのは不思議なことだ。

で、基本的にはSFである。キッドの知る限り、公式に人間の記憶を外部に抽出する技術は現在では開発されていないからだ。

脳と神経細胞の研究が進み、記憶のメカニズムが徐々に解明されているとは言え、個々の記憶をモニター化することはまだ夢物語なのである。

何故かと言えば・・・そこにたどり着くには人体実験が必要だからだ。

単純に言えば脳内には化学的な記憶装置がある。そのすべての回路の電位の変化を分析する機械的なモニターを接続する。

そこで実験体の視野にデジタル化された映像(情報A)を見せる。

その結果、生じる脳内の変化を計測することで、脳外の情報が、脳内でどのように伝達されるかを追跡するわけである。

つまり、情報Aによって起こる脳内変化を情報Bとする。

その情報Bを情報Aに変換するシステムが記憶監視装置Xである。

もっともこの場合の記憶とは瞬間記憶に過ぎない。

瞬間記憶は文字通り、一瞬で忘却する記憶である。

記憶監視装置Xは人間をカメラにしているに過ぎない。

それでもその開発は非情に困難であることが予想される。

しかし、手順でいえば人間の個体における一定の情報変換をシステム化することができれば次にそれが貯蔵された部分の扉の鍵にはなるのである。

情報Bを蓄積した情報Cを記憶抽出装置Yで情報Aに変換できれば人間の記憶を第三者が覗いたことになる。

しかし、その記憶はけして情報Aではない。

人間の記憶は正確無比とは程遠いからである。

そういう前提の元で・・・記憶の読み取りを研究する脳科学研究室教授・山内(柴俊夫)は・・・「忘れたくない記憶」を外部装置に記録し、「忘れたい記憶」を入力装置で消去すること・・・は素晴らしいことだと激情しながら断言するのだった。

新人研究員の塚本(逢沢りな)は「記憶と記録は違うものなのに・・・」と言葉を飲む。

そして研究員でもあり、実験体でもあるヒロタマナブ(筒井道隆)は研究中の事故で記憶障害者となっている。

ヒロタマナブは現在34才だが、事故が起きた3年前から、出来事を3分間しか記憶できない男になっている。そして事故から5年間の記憶を失っているのである。

山内は「だからこの研究はヒロタマナブの治療を兼ねている」と胸をはるのである。

この・・・一般常識からは「狂気」としか思えない世界で・・・研究員・小野(伊藤)は失われた愛の記憶を取り戻そうとしているのだった。

小野はヒロタマナブの恋人だった・・・そしてヒロタマナブからは小野との出会いから事故までのすべての記憶が失われているというメロドラマ展開なのである。

そして、現在のヒロタマナブは三分たつと三年プラス五年あわせて八年前以後にあった人間はすべてはじめてあった人になってしまうという設定なのである。

取り出した記憶の表現は実に難しいものである。実際にそのようなテクノロジーはないのであるから。

ここでは実験体・小野の記憶を抽出転送しヒロタマナブが脳内再生するという曖昧さで描かれる。

つまり、人間の脳には接続された人間の脳の記憶を共有できるはずだという展開なのである。・・・それはどうかな・・・。

ま・・・とりあえずとんでも科学ドラマですが・・・記憶をもてあそぶマッドサイエンティストたちの悲しい恋の物語と考えるとちょっとニヤニヤして見ることができるかもしれません。

まあ、伊藤歩と筒井道隆・・・あまりドラマでは見れない二人を見ることができるのでそれだけでも楽しみです。山内の娘・京子を演じるのは岩佐真悠子だしね。

とにかく・・・この空想科学メロドラマがどこに向かっていくのか見守りたいと考えます。

関連するキッドのブログ『MR.BRAINのレビュー

木曜日に見る予定のテレビ『実録・ゲゲゲの女房』(NHK総合)『マノスパイ』(TBSテレビ)

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2010年3月23日 (火)

誰かがその奇跡を待っているコード・ブルー(山下智久)

日本では医術と言う。そこでは古来、仁術と算術が問題になった。

どちらかと言えば日本では仁に善なるものを感じ、算に悪の気配を嗅ぐ。

それは貧富の差と貧困層の拡大が世の常だからだと思う。

しかし、算術を数学と考えると、それは科学のすべての基本であり、医術とは算術そのものであるとも言える。

たとえば、医師は薬を処方するがそれによって用法・用量を厳守することが患者に求められる。

決められた時間に決められた量の薬を投与しなければならないのはそれが毒にも薬にもなるからである。

そういう薬学としての算術とは別に本来のコスト・パフォーマンスの問題も現代に受け継がれている。

医療には金がかかるからである。

3/21に米国の下院議会は医療保険制度改革法案を賛成多数で可決した。賛成219、反対212という僅差の可決である。日本では一応ほぼ達成されている国民皆保険が、米国ではようやく実現に近付いたということである。世界一の国が国民皆保険でないのは意外かもしれないが、逆に言えばそうでないからこそ世界一なのだと言える問題である。

ここでその制度の是非については触れないが、要するに国民皆保険が絶対に正しい制度とは断言できないということを述べておきたい。

全ての経済活動は投資と運用の配分によって行われる。その目指すところが人間の幸福である以上、医術に金をつっこんだらそれに見合う恩恵を得たいのが人情なのである。

しかし、「命」に関するビジネスには限度というものが想定しにくいという側面が強い。

ここまでは費用の許す範囲でここからは費用の許さない範囲と意思決定することがかなり困難なのである。

医術は高度に発展し、発展することによって安価になるものもあるが、最先端ではかなりの浪費を要求される。たとえば昔は臓器移植という技術はなかった。現在はこれがあることによって延命方法が完全に変わってしまった。そして、臓器に需要と供給のバランスというかなり危うい側面さえも見出されている。

つまり、地球のどこかで誰かの心臓が誰かのために売買されている可能性があるわけである。

そこでは「命を救う」ことは「命を奪う」ことと全く同義語なのである。

このドラマではもちろん、それについて語られることは今のところない。もちろん・・・そういう主題を内包していないわけでもない。

本来の救命医療では救えなかったはずの命をドクターヘリ・チームというビジネスで救おうとする設定がそこにはあるからである。

キッドは命を粗末に考えるタイプなのでそこまでして命を救わなくてもいいのではないか・・・とも考えるが実際にドクターヘリの活動によって失うべき命を失わずにすんだ人間にとってはその恩恵ははかりしれないだろう。

コストに見合う性能があればそれは有効な道具であるのだ。

しかし、このドラマは実は、仁術のドラマである。その主題は人材育成だ。優秀な人材を集め、人命を使って訓練する。そういう目的にそって技術を習得していく若者たちの成長物語なのである。

そこには目に見えない大切なものを探る営みがある。

一言で言えばそれはハートである。高い機動性を持った医療スタッフが救命の現場で有効に機能するためのハート。そのハートがいかに得がたいものであるかをドラマは物語る。

つまるところ・・・ハートとは奇跡に他ならないからだ。

コードブルー・シリーズは1st Season、2nd Seasonを通じて「フェロー・ドクター」の専門研修の開始と終了を描ききった。それは当然、序章に過ぎない。

いくつかのシリーズ展開が考えられるのでそれを列挙しておくことにする。

①新たなるフェロー・ドクターの物語・・・新人の投入によって最初からやり直すことが可能である。

②卒業生たちのその後の物語・・・実戦配備されたドクターたちの次のステップを描くことが可能である。

③ドラマ手法の変更・・・たとえば「飛行機事故」の次のステップが考案されない場合、「24」方式も可能である。たとえば「救命病棟24時」ではマンネリ打破のために災害を「大地震一本」に絞るという展開を示したりしている。そういう意味では事故は一回でその発生から終息までの数日を濃密に描いてもドクター・ヘリの物語は描けるのである。

④もちろん、主人公・藍沢を中心とした大河ドラマ化でも問題はない

⑤より社会的な問題の深化・・・コスト・パフォーマンスの問題を追及していくという手は「救命病棟24時」でも試されている。まあ、成否は別として・・・。

・・・とにかくだ・・・続きが見たいのである。なぜなら・・・コード・ブルー・シリーズが好きだからだ。ものすごく好きだ。これのつづきが見られないなら人生は無意味である。

・・・・・・・・・・・おいっ。

忘れてたのだが本題に入る前に恒例の週末の視聴率チェック。「ヤマトナデシコ七変化」↗*7.9%(あげてきたーっ・・・平均*8.2%)、「スパイダーマン3」14.6%(最後が鬱だからな)、「ブラマン2」↘*7.7%(もしも3があるとしたら陰謀の一種だな)、「地下鉄サリン15年目の闘い」*8.8%(もはや風化か・・・)、「100の資格を持つ女3」15.9%(渡辺えりとりすぎ)、「龍馬伝」↘17.7%(ちょっと話が難しくなると・・・)、「特上カバチ」↘*7.4%(悲惨だ・・・)、「呪われた海賊たち」16.7%(カリブの人たち強し・・・)・・・ついでに「ハンチョウ」↘*9.4%、「コードブルー2」↘16.6%・・・以上。

で、『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命 2nd Season・最終回』(フジテレビ100322PM9~)脚本・林宏司、演出・西浦正記を見た。かなり控え目な最終回だったと思う。海外ドラマのシリーズ展開とくらべたらしっかりとフリオチがあってすべてに一応の決着がある。そういう意味では実に由緒正しい感じの最終回だった。キッドとしては藍沢がまた査問にかけられそうな捨て身の治療活動中に機体残骸が崩壊して患者もろとも生き埋めになり・・・つづく・・・でもよかったと思うのだが・・・そこまでの過激さは求められないのである。お茶の間がついてこれないからだ。今でもかなり置いてけぼりにしていると陰口が囁かれるくらいだしな。

結局、世界は常に絶望的な状況だ

誰かの命を助けようとするものにとっては

とても満足できる状態ではない

完全な麻酔薬もないし

完全な止血剤もない

心肺はすぐに停止するし

脳死は超高速で訪れる

奇跡はなかった

希望すらなかった

絶望なんてどうでもよかった

でも患者にぴったりの治療法を医者はいつも探す

誰かが誰かにそっと寄り添うように

成田市沼田町の山林に胴体着陸したJEA21便(機体番号JA278J)は衝撃で分解し、満載されたジェット燃料は炎上した。乗客50名と搭乗員の安否が気遣われる。

ドクター・ヘリ・チームは緊急体制で

第一陣 三井(りょう) 藤川(浅利陽介) 冴島(比嘉愛未)

第二陣 橘(椎名桔平) 藍沢(山下) 緋山(戸田恵梨香)

第三陣 白石(新垣結衣) フライトナース2号(男) フライトナース3号(女)

・・・を現地に派遣する。

翔北病院救命センターの指揮をとるのは森本(勝村政信)である。

センター部長の田所(児玉清)は患者として手術中だった。

執刀医の西条(杉本哲太)は低体温下による心肺停止で止血をする循環停止法にチャレンジしていた。

しかし、タイムリミットを過ぎても処置は終らなかった。

西条「・・・さらに体温を下げて延長戦に突入します」

専門医「それでは・・・生還率が・・・」

西条「確かにリスクは高まる・・・しかし・・・ここでやめたら・・・すべてか終るのです」

西条は手術を見守る見学室の黒田(柳葉敏郎)を見た。

かってのライバルは無言で肯いた。

(・・・・・・・・その通りだ)

西条は心の中で答える。

(いつもの通りやるだけだ・・・たとえ初めての試みでも・・・)

田所の命をこの世に繋ぎとめるための作業は再開された。延長時間は20分である。

コミュニケーション・スペシャリストの轟木(遊井亮子)は地域航空管制室と連携する。

轟木「こちら翔北ドクターヘリ・CS・・・状況どうですか」

管制官「そろそろ・・・マスコミのヘリがハケダカのように舞い出している・・・救助活動の幸運を祈る」

轟「感謝します」

梶(寺島進)「こちらドクターヘリ1号機・・・最初の患者を搬送する・・・ドクターなしなので出迎えよろしく」

轟木「飛行ルートを送ります・・・10分で還れるはずよ」

梶「9分で戻る・・・次の患者が30分持たないそうだから」

轟木「了解」

轟木はモニターで天候状況を確認する。視界良好・・・風速微弱。

(・・・不幸中の幸いか・・・)轟木はお天気に感謝の祈りを奉げるのだった。

藍沢は救護本部を離れ、前線に出撃している。

体内にはアドレナリンが放出され、五感は鋭敏になっていた。

藍沢の脳内ではトリアージしたばかりの患者の声が反響している。

(燃え上がる機体に息子を残して・・・俺は・・・俺は逃げてきた・・・父親なのに)

周囲には救急隊員、レスキュー隊員が散開し、懸命の救助活動を続けている。

すでに安全確保がされているが・・・何が起こるか分からない状況である。

先行している橘が搬出できない患者にすでにとりついている。いくつかの破片となった機体の残骸に負傷者と死体がまだ動きを封じられている。橘は冴島を残し、次の目標へ向かう。橘は機首部分の残骸に進んでいる。それを見た藍沢は尾翼のそそりたつ方向へ足を向けた。

橘の指示に従い現場の負傷者に投薬処置をしながら、冴島は藍沢の姿を捉えている。

復活した鬼軍曹にも超感覚が生じ、意識は同時並行的に多機能集中している。

手抜かりなく処置を行いながら、周辺を見通すことができるのだ。

藍沢は単独で危険地帯に前進していくが冴島はそれを見逃さない。

(私の目が届くところにいる限り、藍沢先生を守る)

冴島は鬼軍曹としての魂に着火した。

藍沢は半ば地面に埋もれた後部客室の窓に引き寄せられる。覚醒した視力は獲物の気配を見逃さないのだ。その患者は子供のようだった。

藍沢が何かを発見したのを冴島は見逃さない。手元の患者の処置を終えた冴島は機体に向かって声をかける藍沢に駆け寄る。

冴島「藍沢先生」

藍沢「この窓の向こうに人がいる・・・左手の開口部から呼びかけてみるから・・・反応を観察してくれ」

冴島「わかりました」

藍沢は残骸に沿って回りこみ、匍匐前進で患者にアプローチする。

藍沢「おい、しっかりしろ・・・助けにきたぞ・・・俺は医者だ・・・」

藍沢は呼びかけながら座席番号をチェックするA21・・・それは子供を残してきた父親の持っていたチケットの座席番号と符号した。

(この子が・・・キタムラの子供だ・・・)

藍沢は直感する。

冴島「反応ありました・・・生きています」

藍沢「レスキュー来てくれ・・・ここに入りたい・・・」

レスキュー「残骸は動かせませんが・・・侵入路を確保することは可能です」

藍沢「それでいい・・・とにかく・・・入れれば患者に接触できるスペースはある」

レスキュー「危険ですよ・・・」

藍沢「なんとかしてくれ・・・生存者がいるんだ」

レスキュー「破片を除去して、少し周囲を掘ってみます」

レスキューは無造作に垂れ下がった意味不明のコード類をとりあえずとりのぞいた。

レスキュー「入れますが・・・慎重に願います」

藍沢「・・・ありがとう」

藍沢は患者にたどり着いた。

藍沢「よくがんばったな・・・」

患者「・・・あの・・・父さんは・・・どうなりましたか」

藍沢「キタムラナオキはピンピンしてたぞ・・・」

患者「そうか・・・よかった・・・」

藍沢「さあ・・・手当てするぞ・・・どんな具合だ」

患者「死ぬほど・・・痛いです」

藍沢「それは生きている証拠だ」

藍沢は診察を開始した。

(胸をやられている・・・動けないのはどうしてだ・・・足を何かにはさまれて・・・)

藍沢は背後にいるレスキューに叫んだ。

「このままではアシストを頼めない・・・何か方法は・・・」

「外側から窓を落とすことは可能です」

「それをやってくれ」

「内側にしか落せない構造ですので注意してください」

「わかった・・・」

与圧構造のために飛行機の窓は内側に向かって外れるようになっているのである。落ちてきた窓は藍沢を直撃した。患者を守るためなら何でもする藍沢だった。

(藍沢先生・・・無茶して・・・でも今のお顔を見せてほしかった・・・)

しかし、冴島が愉悦を感じたのは一瞬だった。

「酸素マスク落とします」

冴島は藍沢に手早く器具を手渡した。すぐに投薬準備にとりかかる。

藍沢は苦痛のコントロールの手順を考える。

(とりあえず・・・肺・・・しかし・・・いずれ・・・足を・・・)

後からふりかえれば父親が育児放棄をしたことで苦悩する藍沢に対してこの患者が与えられたことに神の陰謀の匂いを感じるものもいるかもしれない。しかし・・・人間には必ず父親がいるのである。そして死の危険を感じて子供を見捨てる人間は特に珍しくはないのだった。すべてはありふれた出来事なのである。そして出来事をどう感じるかは感受性の問題に過ぎない。

藍沢「君の足は血行障害を起こし、壊死した組織からミオグロビンなどの毒素が放出されるクラッシュ・シンドロームという病状になりかかっている。そうすると君の命は危険だ」

藍沢は患者の肺にたまった空気を抜く処置をしながら病状を説明する。

ユウキ「死ぬ・・・ってことですか」

藍沢「命を助けるために右足を斬る・・・」

ユウキ「うわ・・・もういいです・・・もう充分痛い目にあいました・・・このまま足を切られるくらいなら死んだ方がマシだ・・・もう痛いのはいやなんです・・・」

藍沢「すまない・・・それでも医者は命を優先するのが義務なのだ・・・」

藍沢は冴島に指示を出した。「この子の父親を呼んでくれ」

冴島は藍沢の意図を察した。

事態は同時平行的に進行している。ドクター・ヘリが三人の患者を空輸するのに要する時間はおよそ一時間である。それぞれのドクターの行動はその一時間の中に同時に凝縮されているのだ。

到着してすでに一人の臨終に立ち会った緋山は心を患者に対する恐怖で呪縛されたまま呼吸困難の男子小学生を診察する。

(死ぬ・・・この患者も死ぬ・・・私が殺す)

緋山の心は恐怖の予感に満たされる。

あきらかに元レディースの母親(中村綾)は子供を励ます。

「よかったね・・・先生来てくれたよ・・・」

FN3「緋山先生・・・指示を・・・熱傷でしょうか」

緋山「いや・・・火傷はたいしたことない・・・呼吸器が・・・」

緋山は傷だらけの医者魂を自ら鞭打つ。

(しっかりして・・・あなたは医者でしょ・・・聴診器を・・・使うのよ)

緋山は呼吸困難の原因を探るべく・・・胸の音を聞く。

安堵した元ヤンの母親は緋山に縋る。

「どうですか・・・先生・・・うちの子・・・大丈夫ですか・・・」

「うるさい・・・聴こえないのよ」

「・・・あ・・・すみません」

「・・・いえ・・・こちらこそ・・・すみません・・・ヤキ(リンチ)は勘弁してください」

ヤンママ(元ヤンキーのママ、ヤングなママの略にあらず)は自制した。おそらくヘッド(総長)経験者なのである。

緋山は救援を要請した。

「緋山です・・・患者は呼吸困難ですが・・・原因不明です・・・誰か助けてください」

現場を指揮する橘が答えた。「みんな手が離せない・・・とりあえずエコー(超音波画像診断)だ」

(そんなのイヤ・・・もう患者を殺すのはイヤなの・・・)押し寄せる恐怖心に抵抗しながら緋山は叫んだ。「エコー、エコー持ってきて」

通りすがりの救急隊員がその声を聞いた。助けを求める声は救急隊員には神の声なのである。

緋山はエコーが魔法のように届いたことに戦慄する。

(悪魔が・・・私に・・・患者を殺させようとしている)

緋山の目にはエコーの機械は呪われた魔神のように映っている。

後からふりかえれば子供を失った母親の喪失感のとばっちりを受けて患者と患者の家族対する不信感が生じて苦悩する白石に対してこの患者が与えられたことに神の陰謀の匂いを感じるものもいるかもしれない。しかし・・・人間には必ず母親がいるのである。そして子供を失った母親が我を忘れて世界を呪うことは特に珍しくはないのだった。すべてはありふれた出来事なのである。そして出来事をどう感じるかは感受性の問題に過ぎない。

緋山が医療訴訟未遂の後遺症に苦悶している頃、白石父娘は墜落現場で親子喧嘩を続けていた。

白石「とにかく・・・後方に下がって治療を受けてください」

博文(中原丈雄)「ええい、手を離さぬか、この小娘」

白石「お父さん・・・」

博文「ここで必要なのはけが人じゃなくて医者だろうがっ」

白石「お父さん・・・」

最前線に突出した前進救護所(テント)で救急隊員が声をあげる。

博文「さあ・・・外科医の出番だ・・・私が助手をするよ・・・内科医だって医者は医者だ・・・素人よりも使えるぞ」

白石「お父さん・・・」

博文「娘と一緒に治療できるなんて・・・お父さん、最高にうれしいよ」

親子医師はテントに駆けつけた。

後からふりかえれば余命いくばくもない父親に冷たい言葉を投げかけたことで苦悩する白石に対してこの患者が与えられたことに神の陰謀の匂いを感じるものもいるかもしれない。しかし・・・人間には必ず父親がいるのである。そして年頃の娘が父親を疎ましく感じることは特に珍しくはないのだった。すべてはありふれた出来事なのである。そして出来事をどう感じるかは感受性の問題に過ぎない。

白石「心音が聴こえない・・・とりあえず開腹する」

即決して術医を羽織ろうとする娘に父は言った。

博文「聴診器貸してくれ・・・」

父親は熟練の耳で病因を聞き取る。「これは心臓破裂だ」

白石「空耳じゃないの・・・とにかく開胸してみる・・・」

博文「心破裂による出血が心外膜に貯留しているぞ」

白石は開胸器で胸を開き、心臓にメスをいれた。

白石「心タンポナーデ・・・お父さん大正解・・・すごーい・・・どうしてわかったの」

博文「お前も大きくなればわかるぞ・・・」

白石「冗談はそこまでよ・・・動脈遮断で止血するから術野を確保して・・・」

博文「はい・・・先生」

白石「サテンスキー」

患者の娘「おどー(父)はたずかるんだろが(助かりますか)・・・おら(私)東京さに彼がいて遠距離恋愛しでんのそだわけでおどーと東京さでかけて彼にあわせだら喧嘩になっておらおどーにおめなんか土いじりするしか能ねぇんだとかバガにしでじまっで(私は父親にどん百姓に何がわかるとか悪態をついて)このままおどが死んだらいくら青森県人だば心が痛んでしばれるんだすよ」

白石「お父さん・・・娘さん・・・反省してるみたいですよ・・・お父さんに内緒でお腹に子供もいるみたいですよー・・・お孫さんができたんですよー・・・その顔見ないでどうするんですか・・・がんばってくださーい」

博文「・・・」

白石「いやだ・・・お父さん・・・私は妊娠してないよう・・・」

博文「なんだ・・・ガッカリだな」

白石「これで私も妊娠してたりしたら・・・ドラマとしてやりすぎだもの」

博文「まあ・・・もう充分、シンクロニシティが過ぎると言われそうだがな」

白石「意味のある偶然の一致なんてすべて気のせいなのよ」

教養ある父と娘が救急医療の合間に分析心理学における共時性について雑談している頃、藤川は患者となって戻ってきた救急隊員細井(永岡佑)と対話をしていた。後からふりかえってみれば最終回で描かれる唯一の死に至る患者が細井であることは神の甘さを物語るようであるがそれも気のせいなのである。

人間は常に生と死が五分五分の今を生きているのであり、藤川は患者を一人救うことでもう一人を殺す。実に生にも死にも公平な配分と言えるだろう。

もちろん・・・患者を治療中に自らが感電して仮死状態になったこともある藤川が患者を死に至らしめる確率は他のドクターよりやや高めであることは言うまでもないのだ。

藤川「どうやったら・・・こんなもの・・・こんなところに刺せるんだ」

細井「残骸から患者を引きずりだした時、転んだんだですよ」

藤川「そこにこれがあったの・・・」

細井「患者の影に隠れてたんですよ」

藤川「これ・・・何・・・」

細井「さあ・・・なんかのシャフトじゃないかって言ってました」

藤川「そうか、先端から先は切断したんだ・・・ともかく頚動脈スレスレだから絶対安静だよ」

細井「1ミクロン(0.001ミリ)も動きません」

藤川「あはは・・・それじゃ息もできないよ」

細井「あはは・・・ガクッ」

藤川「ほ、細井くん」

細井「冗談ですよ・・・落ちこぼれ同志、末永くよろしくお願いします」

二人は仲良しだった。これはシンクロニシティではなく「類は友を呼ぶ」で説明できる必然である。

藤川は細井の希望で搬送の順番を変えたように話を合わせる。もちろん・・・そんなことで順番は決まらない。状態の安定している細井にはまだ順番がまわってこないのである。しかし、患者に合わせることに関しては藤川は充分に落ちこぼれではないのだ。

藤川は次の患者に向かっていた。骨盤骨折の患者だった。

橘は自分の患者を診ながら状況を把握している。本部にいる三井はすでにトリアージを終えて治療に入っている。藍沢はおまかせでいい。藤川と緋山を同時にコントロールできるかと言えば・・・少し無理かな。

前進基地の橘「・・・というわけだ」

救命センターの森本「なるほど・・・猫の手も借りたいのか・・・」

森本はナース辻(恒内彩未)を呼んだ。

「黒田先生を呼んできてくれ・・・これが最後の出番かもよ・・・」

辻はきりっとした顔で黒田に伝言を伝えた。

田所部長の手術は延長時間を半分使い、終了していた。

西条の顔に勝利の喜びが浮かんでいる。それを感じながら黒田は慣れ親しんだ手術室を後にする。

黒田「お前の呪いのせいでこんなことになった黒田だ・・・」

藤川「黒田先生・・・」

黒田「どうした・・・」

藤川「左足と右足の変色が・・・凄いことになっているんです」

黒田「バイパスを作って血流を確保しろ・・・何か人工血管の代わりを探せ」

藤川「FFバイパスですね」

黒田「その通りだ」

藤川はもちろん、誰よりもたくさん患者の命を奪っているのでそこそこ使える医者になっているのだった。

黒田「血流を再開させるときに注意しろよ」

藤川「血流増加による血圧低下ですね・・・」

黒田「その通りだ・・・」

藤川「前に同じ症状で二人殺してますから」

黒田「二度あることは三度あるぞ」

FN2「心停止です」

二人「やはり」

藤川の相手を黒田に任せた橘は緋山をフォローする。もちろん藤川より緋山がかわいいからである。

橘「どうなっている」

緋山「今・・・エコーしてます」

橘「どうだ・・・」

緋山「うわっ、なんじゃこりゃ・・・見たこともない白いかたまりが・・・」

橘「おちついて・・・説明しろ」

緋山「なんだかごちゃごちゃまだらになってます」

橘「横隔膜破裂だ」

緋山「ええー」

橘「消化器系内臓が持ち上がって肺臓を圧迫しているんだ」

緋山「そんなー」

橘「お前が開腹手術で内臓をひきさげろ」

緋山「やだー」

橘「かわいいのもほどほどにしておけよ」

緋山は勇気を振り絞ってメスを握る。

しかし、そのメスからは妖気が立ち上る・・・。

(人殺し・・・人殺し・・・お前はまたもや人殺し)

緋山の身は縛られた。

ヤンママ「どうしたんです、先生」

緋山「じぇきましぇん・・・できないのです・・・私に手術なんか無理なのです」

ヤンママ「なんだと、こら」

緋山「私、四週間も独房入りだったのです。だからずーっと手術してないし、下っ端の医者だし、責任とれないし・・・」

ヤンママは唖然とした。それから周囲を見回した。他の医療スタッフは誰一人手が空いていなかった。ヤンママは覚悟を決めた。

ヤンママ「先生、そりゃ、アタシだってアンタじゃない医者にお願いしたい気持ちだよ。だけとぶっちゃけ無理なんだろ・・・ここにはアンタしかいないんだから・・・だけどアタシはね・・・ついてなかったなんて思わないよ・・・喧嘩の勝ち負けなんて最後までわからんもんね。アタシは先生にかけてやるよ・・・その代わり、ガキを殺されたらアンタを殺して私も死ぬ」

緋山「・・・その手をどけな」

緋山の喧嘩魂に火がついた。売られた喧嘩は買う。それが緋山の本質なのである。

緋山「やってやるよ・・・黙ってみときな・・・アタシがマジになったらどんだけかってとこをさ」

ヤンママ「マジっすか」

緋山はドスを抜くと一気に切腹して、内臓を引きおろした。

緋山「で、どうするんです」

橘「タオルでもつめて腹を閉じろ」

緋山「なるほど・・・人間ぬいぐるみか」

ヤンママ「どうなったのよ」

緋山「見ての通り・・・ボンボンのガッツの勝ちですよ」

ヤンママ「先生・・・ありがとうね・・・なんてお礼したらいいか・・・」

緋山「その一言で充分す・・・」

緋山の心は晴れた。長いトンネルの向こうには春の風が吹いていた。

橘「よくやった・・・よくやったぞ・・・緋山」

緋山「私・・・患者がこわくてこわくて・・・でも・・・本当にこわい思いをしているのは患者さんだった。私って医者失格ですね・・・」

橘「人なんて弱くて当たり前だ」

緋山「でも・・・」

橘「でも医者は強さを求められる」

緋山「・・・」

橘「難しいが・・・お前は得意じゃないか・・・心を隠して強がってみせるのが」

緋山「橘先生・・・おっと・・・あぶない、あぶない・・・口説き落とされるかと思いましたよ」

橘「ちっ」

処理の終った三井は橘と合流した。

三井「残念だったわね・・・でも緋山を救ってくれてありがとう・・・」

橘「俺はずっと後悔していたからな・・・」

三井「私を捨てて逃げ出したこと・・・」

橘「弱かったのは・・・俺だ・・・ごめん」

三井「その弱さが・・・あなたの魅力なのよ」

橘「・・・」

緋山「あの・・・無線・・・オンになってますけど・・・」

二人「ええーっ」

冴島は漸くユウキの父親ナオキを発見した。父親は命の危険を感じて息子を置き去りにしたことで自分を責め苛んでいた。

冴島「息子さんは生きています」

ナオキ「ええーっ」

冴島「一緒に来てください」

ナオキ「だけど・・・私には息子に会わせる顔がない・・・行っても何もできないし」

冴島の瞳に鬼軍曹の炎が燃えあがった。

冴島「あなたのことはどうでもいい・・・生きている人間が何もできないなんてことはないのです・・・そばにいて励ましてあげるだけでいいのです」

ナオキは背筋を伸ばした。

藍沢は手術の準備を終えていた。

ナオキを冴島が連行してくる。

冴島「患者の父親を発見しました・・・」

ナオキ「私は・・・私は・・・」

藍沢「親が子供を見捨てたことは褒められたことではありません。しかし、これから足を切断します。人間には命を粗末にするタイプがある。時には苦しんで生きるよりも死んですべてを失いたいと考えることもある。しかし・・・誰かがいればその誰かのために苦しみに耐えようと考えることもある。息子さんは迫り来る死の恐怖の中であなたの身を案じていました。あなたが無事だと知って喜んでいました。どんなに最低の親でもいないよりマシかもしれません・・・少なくともあなたのお子さんはそう考えているみたいだ・・・」

ナオキ「ごめん・・・ごめんユウキ・・・父さん、ここにいるぞ・・・ユウキ・・・許してくれ・・・ユウキ・・・死なないでくれ・・・元気になって・・・父さんと恐山怪奇ツアーに一緒に行こう・・・」

藍沢は微笑んで右足切断を開始した。

長い一日が終わりドクターヘリチームのドクター帰還が始まっていた。

第一陣・・・白石父娘チーム。

病院に戻った父親は蒼白になる。

娘「どうしたの・・・」

父親「アドレナリンが切れた・・・足が痛い・・・」

娘「まーっ、骨折してるわよ・・・お、お父さん・・・担架ーっ。担架持ってきてーっ」

第二陣・・・藍沢・冴島チーム。

ナオキ「あの・・・息子は・・・」

藍沢「損傷が激しくて・・・足の接合は無理です・・・息子さんは右足を失うことになる。どうか・・・支えてやってください」

ナオキ「・・・息子を助けてください」

藍沢「もちろん・・・それが医者の仕事ですから・・・」

ナオキ「ユウキーっ。がんばれーっ。父さんも電車ですぐに行くからなーっ」

冴島「いいお父さんでよかったですね・・・うらやましいですか」

藍沢「・・・別に」

第三陣・・・藤川・細井ペア。

藤川「よくがんばったな・・・」

細井「がんばれ・・・って・・・強くなれって・・・誰かに・・・ガクッ」

藤川「おいおい・・・かぶせるのかよ・・・ん・・・細井・・・細井くん」

FN2「VF(心室細動)です・・・出血が・・・」

藤川「心マ・・・」

時には悲しんだり

時には喜んだり

胸にしまってあった

もやもやがあった

でも誰かを救いたかった

たまらなく君を救いたかった

日没が迫り、ヘリの運用は終了した。

梶は細井が愛機の床に流した血を洗浄している。

冴島が備品の補充に現れた。今日もたくさんの救えなかった患者を見送ったのである。

梶「突然・・・死んでしまうってどんな気分なんだろうな・・・」

冴島「私と彼(ALSで死亡した田沢)は幸せだったのかもしれません。死ぬとわかってから長い長い大切な時を過ごせましたから・・・」

梶「その気持ち・・・ちゃんと胸にしまっておけよ」

冴島「もっていきますね・・・藤川を応援していたのに・・・一番いいところを・・・」

梶「キャリアだよ・・・それにどうせ次のシーズンのお楽しみなんだろう」

冴島は休暇を取った。桜の季節が訪れたからである。田沢との最後の約束を果たすためにお出かけしなければならないのだ。

「・・・桜が咲いたら・・・一緒に・・・お前と・・・(電子音)このメッセージを消去する場合は③を・・・」

冴島は満開を少し過ぎた桜を見上げた。

「迷ってたら・・・もう葉桜になっちゃった・・・でも・・・約束は果たしたよ・・・さようなら・・・あなた」

冴島は③を選択した。田沢の最後の声は永遠の向こうに消え去った。

藤川は黒田に「フライトドクター認定の報告」をした。

黒田「お前が卒業できるなんて・・・思ってもみなかったよ」

藤川「卒業できたらすごくうれしいかと・・・思いましたが・・・卒業したらすごく不安になりましたよ」

黒田「そりゃそうだ・・・フライトドクターなんて汚れ仕事だものな・・・患者を救うより殺すことの方が多いかもしれん」

藤川「でも殺した患者のためにも誰かを助けたいんです」

黒田「その通りだ・・・お前は最低だけどな・・・がんばってせめて五分五分を目指せ」

藤川「せめて・・・生存率を三割にしたいです・・・今、担当患者の死亡率七割超えてるんで」

田所は無事に生還した。

田所「残念でしたね・・・」

緋山「遠回りすることになってしまいました・・・」

田所「私と・・・一緒ですね」

リピート・フェローシップ(留年)を決めた緋山の前に翼の母親・直美が現れた。

直美「私のせいですよね・・・先生が落第したの・・・」

緋山「いえ・・・それだけではないですから」

直美「私は・・・同意書にサインしたかった・・・そうすれば・・・緋山先生を傷つけることはなかったのに・・・」

緋山「私も・・・今ではサインを求めるべきだったと思います・・・そうすれば・・・がるるなお兄さん(松田賢二)の・・・心を乱さないですんだかもしれなかったと・・・でも・・・すべては終ったことですし・・・それでよかったと思うのです・・・なによりも・・・あなたが私をたずねてくださって・・・こうして話せたことが・・・私はとてもうれしいのです」

直美「先生・・・ありがとうございました」

緋山「翼くんのことは・・・一生忘れません・・・」

二人の優等生は肩を並べていた。

白石「ごめんね・・・命日、シフトを替わってあげられなかった・・・」

藍沢「別に墓参りはいつでもいい・・・生きている親にお前が何かをしてあげることの方がずっと大切だろう・・・」

白石「ありがとう・・・それで卒業後の進路はもう決めたの・・・」

藍沢「それを最初に言う相手は決めてある」

白石「ふふふ・・・私もよ」

藍沢は祖母・絹江(島かおり)と二人・・・母の眠る場所へ歩いていた。山の上の墓地は駅から遠い。

藍沢「疲れただろう・・・おんぶしてやるよ・・・昔はこのあたりでよく駄々をこねた・・・疲れた・・・ジュース買ってくれ・・・もう歩けない・・・おんぶしてくれって・・・」

絹江「ごめんよ・・・お前には誰よりも強くなってもらいたかった・・・だから親のいないお前を厳しく育てた・・・どんなにか辛かっただろう・・・」

藍沢「おかげで俺は強くなったと思う・・・それにばあちゃんがいたから淋しくなかったし・・・」

絹江「・・・」

藍沢は小さくなった祖母を背負った。その軽さが藍沢の心を甘くせつなく刺す。

墓には先客がいた。藍沢を捨てた父・誠次(リリー・フランキー)だった。

「来ていたのですか・・・」

「死んだことにしていたので・・・いつも隠れてきていた・・・」

「そうか・・・ばあちゃんがずっとついていたウソって・・・そんなことだったんだ・・・」

「まあ・・・君に会わせる顔のない男ですから・・・フライトドクターになったんだってね」

「・・・」

「そういう優秀なところはお母さんに似たんだね・・・俺に似なくてよかったよ・・・」

「まあ・・・あなたにあってからずっと思っていたことがありますけどね」

「なんだい」

「あなたの手は・・・僕に似てますよ・・・あなたの手が俺の頭を撫でてくれたことを・・・その温もりを俺は今も覚えています・・・」

「・・・」

「来年は命日に来てください・・・お父さん」

父は息子を・・・息子は父を取り戻した。

藍沢は修行のために脳外科を選んだ。西条が学ぶべき技術を持っている最高の医師だからである。

白石の父親の退院の日が来た。

娘「お父さん・・・もう少しゆっくりしていけばいいのに」

父「そうはいかん・・・世界が私を待っているのだ・・・スケジュールぎっしりだぞ・・・使いやすいのかもな・・・ギャラも手頃だし・・・」

娘「私・・・お父さんみたいな・・・治療に夢中で骨折しているのに気がつかず、家族に叱られて凹むような・・・そんな医者になりたいの・・・だから長生きしてください」

父「ああ・・・娘にそんなこと言われたら・・・時間よとまれ・・・って本当に思うよ・・・」

藤川のコントその①

藤川「森本先生と轟木さんが・・・ヨリを戻しました」

梶「キャンセル料が惜しくなったのか・・・でも証拠はあるのか」

藤川「今・・・チューしてましたーっ」

一同「ええーっ」

藤川のコントその②

緋山「なにモタモタしてんのよ・・・フライト・ドクター・・・それでもフライト・ドクターなの」

藤川「ダブリのくせに生意気なんだよ」

緋山「ああ・・・もう見てられない・・・どいてよフライト・ドクター・・・こうやるのよ・・・こう」

藤川「・・・う、上手い」

黒い脳外科医の制服を身につけた藍沢は微笑む。

「まったく・・・あいつらはいつも通りだな」

白石はポーカー・フェイスでつぶやく。

「うらやましいくらいにね・・・」

別に素晴らしい技術がなくてもいい

疲労困憊していて見栄えがしなくてもいい

助けを求める患者はいつも医者を待っている

決して捕まえることの出来ない

花火のような光だとしたって

もう一回 もう一回

彼らはその手を伸ばすのだろう

希望があることはすでに奇跡のようなものだからだ

関連するキッドのブログ『第10話のレビュー

話が終っていないことがちょっぴり不満な天使テンメイ様のレビュー(ピリ辛)

Hcinhawaii0632 ごっこガーデン。ドクターヘリと藍沢と冴島と橘と三井と田所で記念撮影。mari夕陽日没コールド藍沢Pちゃんとしばしの別れなのです。人は一人では命を大切にしないは名言ですね・・・。誰かを許すことは自分を許すことでもあります。完璧ではない人間はそうやって身をよせあって様々な困難に耐えてきたのですねぇ。いつか分かり合える日の来ることを信じて今日を生きる物語なのです・・・最後は黄金のパートナーシップを見せた冴島で決めました~シャブリ例によって終盤、登場人物多すぎでありました~。ただ今、突貫工事中ですーっ・・・本編だって前日まで収録していたすべりこみ最終回、みんな切羽詰るのが好きなのでありましたーっikasama4くどいほどに飽きるほどに重ねて重ねて重ねまくるエピソードの数々、もはやパズルの世界でしたな。ある意味、どこまでがストーリーでどこまでがテーマなのか分別不可能です・・・脚本家・・・ゴミ出し苦手なのかもしれません・・・もちろん・・・噛めば噛むほど味は出る・・・趣味のドラマであることは間違いなしですくう濃密な90分だったわ~。緋山があそこで助けなかったら湘北病院はレディースの集団にきっと囲まれたと思います。藍沢はついにあの父を許すまでの境地に・・・もうどこまで神になっていくのか・・・そして長めのテーマ・ソング・・・いろいろあるだろうけど3rd Seasonもこれだといいなあ。インサートも最初からのを混ぜてどんどん大人になっていく過程を見せていく・・・ゴッド・ハンド・パンチとか・・・もはや大河ドラマだわ~

Hcinhawaii0633  ごっこガーデン。翔北病院で藍沢と白石と緋山と藤川とナース辻と謎のJKで記念撮影。エリ楽しい日々はあっという間でスー。放心状態・・・ですyon!・・・シーズン3が待ち遠しいのでスー。フェロードクターたちの群像劇でありながら・・・あくまで美しい主役がせつないまでに輝く作品なのでスー。はうぅん・・・。脳外科篇がシーズン3・・・心臓外科篇がシーズン4なのかしら・・・それともそれはSPで・・・戻ってきたところでシーズン3なのかな~。みんなビッグになってスケジュール調整大変そうでスー」お気楽そっかー・・・藤川だったのね・・・森本かと思ってたのに・・・チューのサービスはないの・・・制服黒になったらコード・ブラックになるのね・・・ジョーの髪型は鬼太郎みたいにならないといいけど・・・まこむふふ・・・コードブルーの世界にひっそりと潜り込むブラッディ・マンディーの二人・・・次はここで地球再起動計画の陰謀を練るのでしゅ~。その前に食堂で翔北ランチを食べるのでしゅ~。次は謎の月の恋人でしゅか~。アンナちゃんが目覚めるのでしゅね~。月極めの社長の愛人の話だったらびっくりでしゅね~みのむし皆さんお疲れ様でした~、これから冬ドラマの反省会をしますよ~。もう・・・コードブルーは内容的には救命病棟を超えましたね~とか~ぶっちゃけてくださいるるる・・・進藤先生ファンは涙目ですけれど~さよならは別れの言葉じゃなくて再び逢うまでの約束なのですね~。桜の季節に・・・田所先生、白石(父)先生、そして絹江さんの長寿をお祈りします・・・でも白石(父)先生は・・・写真になっているかもです~グスン

水曜日に見る予定のテレビ『シューシャインボーイ』(テレビ東京)

ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。

皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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2010年3月22日 (月)

世界で一番鬱陶しいかもしれない男(櫻井翔)最後のカバチ(堀北真希)

母と自分を捨てた父親を心の底から憎む男・田村(無自覚らしい)を演じる櫻井翔。父への憎しみから我を失ってるようにしか見えない展開から一転・・・「相談者の利益を守るためには憎悪する父親に土下座もする冷静さ」を見せる。

いわゆるひとつのどんでん返しである。

実に基本通りの展開なのだが・・・今回はシリーズの最初から少し、役作りが過ぎていたように思う。

力みかえっている設定なのだが・・・どうも毎回便秘に悩んでいるように見えて仕方のない感じなのである。

あるいは便意を我慢しているようなという下品なたとえがピッタリくるような・・・。

もう少し、ラフで肩の力を抜いた演技でよかった気がする。

実は原作の田村はこういうキャラクターなのである。しかし、その顔はうりざね顔で三白眼で半島的である。

丸顔のバンビには似合わないのだな。

もちろん、それはかなり主観的な意見であるが・・・当たらずとも遠からずだと考える。

「木更津キャッツアイ」のバンビの呪いが未だにかかっていてそれが負担になっているとは思うが、それもまた財産だ。今回はその延長線ではなくて真逆のアプローチがよかった気がします。

過ぎたるは及ばざるが如しという言葉を奉げたい。

一方、美寿々を演じる堀北真希は手抜きかと思われるほどの自然体である。

それが美寿々のクールさに実にマッチしていた。役得と言えばそれまでだが、お通じがあってホッとした感が漂うのである。

・・・他にたとえようがないのかっ。

まあ・・・とにかく・・・弁護士みたいなことがしたいなら・・・弁護士のドラマにすればいいのに・・・と最初に思います。最初から最後までほとんどボランティアの主人公なんて悪魔としてはちょっと気持ち悪いので・・・。

で、『特上カバチ!!・最終回』(TBSテレビ100321PM9~)原作・田島隆(他)、脚本・西荻弓絵、演出・加藤新を見た。前回、せっかく追い詰めたマルチ商法による詐欺師グループを悪徳弁護士の介入で無罪放免にされて口惜しさをにじませる田村(櫻井翔)だったわけだが・・・その悪徳弁護士は田村の実の父親の鷲塚(竜雷太)だったのである。

「父親は母親の祖父が法曹界の大物だったことを利用して検事として出世、祖父が引退すると母親と離婚して、今度は政治家の娘と結婚、悪徳弁護士となった出世欲の権化のような男なのです・・・怨まずにはいられないのです」

そんな一人サンダーバード田村の前に「多重債務者救済センター詐欺」の犠牲者・水野(中村靖日)がやってくる。

居酒屋の経営者だが病気のために借金をして返済に追われるところへ妻がガンを発病。「救済センター」を頼ったところ、借金が減るどころか増える結果になったという。

その裏には弁護士の肩書きを盾に私腹を肥やす犬神弁護士(坂口憲二)がいた。前世はドーベルマンである。しかも、犬神は鷲塚の子分なのだった。

返済に苦しむような借金をしてしまうのは人としては困った存在だが、それぞれに事情がある。田村はそういう残念な人々を見捨てずにはいられない博愛精神の持ち主なのである。

借金を一本化するという口実で弁護料金を搾取する犬神の横暴ぶりを告発するために弁護士事務所に殴りこみをかけた田村は例によって業務妨害の罪で警察のご厄介になるのである。

あんなに反省した先週の教訓を一切身につけない男・・・それが田村なのである。

そんな田村に何故か惚れこんでいる美寿々は同行して一部始終を記録、田村を救助する。の・・・バカな子ほどかわいいという理なのである。

もちろん、脚本家がの・・・のくせに・・・とかあんた、バ・・・とか「ドラ」とか「エヴァ」が好きという譲れない一線があるのも確かである。そこにこだわりすぎるから伸び悩むという側面があります。まあ・・・好きなものはしょうがないけど。

結局、行政書士見習いでしかない田村は法律違反の弁護士行為をあくまでボランティアでやり、法律違反ギリギリのビジネスを展開する鷲塚と全面戦争に突入する。

それは巨大組織の鷲塚連合と弱小組織の大野組との抗争に発展するのである。

相談者の水野は和解したいと言っているのに「吐いたツバは飲めない」とごねまくる田村。

大野(中村雅俊)らはそんな田村のやんちゃぶりがかわいくて仕方ないので命を捨てる覚悟を決めるのである。・・・ギャグではなくてそういう筋書きなのである。

「こっちは吹けば飛ぶようなちんけな組だが・・・看板背負っている以上、五分と五分。刺し違える覚悟があれば・・・失うものの多いあんたの損得考えれば勝算はある」

言っていることが極道そのものです。

「ふふふ・・・そこまで言われちゃ・・・こっちの負けだ・・・手打ちにしようや」と鷲塚は金持ち喧嘩せずで和解金を支払うのだった。億単位で稼いだので二、三百万円の出費はどうということないのである。

助っ人として駆けつけた魔王弁護士(大野智)も1シーンで済んだので楽だったと窓から汚れた都会の空を眺めるのだった。

結局、ずっとただ働きを続けるだけの田村の前に検備沢の女神(浅野ゆう子)が現れる。

「あなたが落としたのはどの資格ですか・・・この金の弁護士の資格ですか・・・それとも銀の行政書士の資格ですか・・・それともただの王様ゲームの王様の資格ですか」

田村は迷わず「王様の資格」を選択する。

スナック「女郎蜘蛛」にて。

「は~い、一番の人は王様にキスすること~」

一番の美寿々「田村のくせに生意気よ~」と言いつつ頬を染める。

大野事務所の平和な日々は性懲りもなく続いていくのだった。

関連するキッドのブログ『第9話のレビュー

火曜日に見る予定のテレビ『荻野目慶子と杉本彩と賀来千賀子と手塚理美と大場久美子と野川由美子と岡本麗と・・・どんだけ悪女を集めれば書道教授・・・火サスかっ』(日本テレビ)『伊藤歩の記憶の海』(TBSテレビ)

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2010年3月21日 (日)

天下の時勢切迫致し候、文久辛酉の年日本海海戦(坂本龍馬)

文久元年(1861年)は西洋列強諸国による日本列島争奪戦の幕開けの年である。

その発端は万延元年(1861年)に勃発する米国の内戦、南北戦争と言っていいだろう。

日本列島は北からロシア、西からイギリス、南からフランス、東からアメリカに狙われていたわけだが、その東側で圧力が減衰したのである。

幕府は開国におけるパートナーとして米国を選択していた。通商条約を最初に交わしたのも米国なら、初めての公式使者を咸臨丸で派遣したのも米国である。その頼みの米国が内戦を始めてしまったのである。

この軋みは桜田門外の変以後の日本の内政混乱と無関係ではない。

この機に乗じて、ロシアは攻勢に転じ、一挙に対馬強襲、占領領土化を目論む。

文久元年の対馬事件である。ロシア艦隊の侵略的上陸に対し、幕府、長崎奉行所、対馬藩、長州藩は臨戦態勢を整える。ここで、米国に代わって英国使節団が幕府に味方することを申し出る。

英国艦隊、幕府艦隊、長崎艦隊、長州艦隊による連合艦隊は門司で集結し、対馬を占拠する露国艦隊に圧力をかける。

文久元年末には日本海・対馬沖は一瞬触発の危機に陥った。

坂本龍馬が吉田東洋の密命を受け、日本海探索の旅に出るのはこのためである。

龍馬は長州萩に到着したのは文久二年正月(1862年)のことであった。すでにロシア艦隊は敗退していたが、前後の事情を聴取した坂本龍馬はいよいよ危機感を募らせるのだった。

それは幕府も朝廷も同様であり、難航していた和宮降嫁が実現するのもこのためである。

皇女和宮は公武合体のために文久元年末に京都を出発、文久二年には将軍家茂と婚姻する。

危機に際して団結するかに見えた日本だが、ロシア艦隊が退去すると再び、内訌を開始するのである。

喉元過ぎれば熱さを忘れるお国柄なのである。

で、『龍馬伝・第12回』(NHK総合100321PM8~)脚本・福田靖、演出・渡辺一貴を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はついに登場、後藤象二郎描き下ろしイラスト。イラスト的に草々・若狭夫婦が揃う喜びでございます。いよいよ、江戸幕藩体制の土佐藩の郷士としての坂本龍馬は消え、無宿浪人・坂本龍馬の誕生の予感に包まれた文久年間に突入。複雑で面妖な時勢の波は人々の思惑を越えてすべてを押し流していくのですな。坂本龍馬は一種のサーファーなのでございましょう。伝説のビッグ・ウェーブに乗り華麗な波乗りを披露・・・しかし、いつかは波に飲まれる運命でございます。その儚さが早くも全開の武市瑞山暗黒面。天才東洋小人の心を知らずでございます。徳川250年の太平の夢が目覚めの時を迎えているのですな。ちなみにリアル版の登場が待ち遠しいキャナメ演じる沢村惣之丞はこの年18才。龍馬よりも7才年下とは思えない生意気野郎でございます。敬語を使えない現代っ子かっ。けしておねだりではございませんけれど~。ヤマトの相原こと喜勢も実年齢25才とは思えぬ初々しさですな~。16才みたいに見えましたな~。

Ryoma186101 文久元年(1861年)二月、ロシア艦隊は対馬を強襲、砲撃で海岸付近を威圧しつつ、対馬藩に対して根拠地の割譲を求めた。泥沼の戦いとなったロシアと英仏連合軍とのクリミア戦争終結から五年、漁夫の利を得た米国で内戦が始まるとロシアは早速、日本強奪計画の初手を打つ。すでに清国に勢力を張った英仏が対馬に手を伸ばすと疑心暗鬼にかられた末のロシア海軍の暴走だった。もちろん、この暴挙に対して英国海軍が迅速に行動したことは英国にもある程度その気があった証拠である。およそ半年間、対馬を占領下に置いたロシア海軍であるが、文久元年秋に英国艦隊が接近すると状況の不利を悟り、撤退する。状況の推移を見定めるために吉田東洋は坂本龍馬を抜擢、剣術詮議の名目で日本海視察に送り出すのである。竜馬は情報を収集しつつ、最前線の一つである長州藩萩に文久二年正月に到着する。長州藩主・毛利敬親は養女を土佐藩主・山内豊範に嫁がせており、両藩は親密度を高めていた。ここで龍馬は獄死した吉田松陰の呪縛が藩内に広まっていることを知るのである。一方、公武合体により京都と江戸の融和を模索した幕府と有力大名だったが、京都の治安は極端に悪化しつつあり、これを憂慮し、京都守護職の新設に踏み切る。そして最初にして最後の京都守護職・会津藩主・松平容保が誕生するのである。

京の三条邸には平井加尾がいる。三条家の当主は実美である。前当主の公睦は実美の兄であった。公睦の正室が山内容堂の妹・恒姫(友子)である。公睦と恒姫の間の子・公恭が実美の後継者として指名されており、恒姫はその母として三条家に留まっている。つまり、三条家では兄(公睦)から弟(実美)に家督が受け継がれ、さらに叔父(実美)から甥(公恭)へ後継が予定されていた。

後に公恭は廃嫡され、実美の実子である公美が継ぐ。もちろん我が子が可愛いからである。京都の三条邸はそういう陰謀が渦巻いている屋敷なのである。

当然、くのいちである加尾の役目は恒姫・公恭母子の護衛であった。

京の都の治安は悪化し、すでに夜はおろか白昼も表を歩くのは命がけとなっている。

しかし、加尾を頭とする恒姫お側衆は全員土佐のくのいちであり、滅多なことでは遅れはとらなかった。安政の大獄の後に釈放された一橋派同士の見舞いは恒姫の重要な任務であった。

すでに政敵の井伊直弼はこの世になかったが、将軍は紀州派の家茂であることに替わりはない。大獄の拷問で心身を患ったものは多く、釈放後の生活が困窮を極めているものも多かった。恒姫はそういう人物に何がしかの援助を続けている。

土佐からの送金があり、恒姫はそれを仕分けして侍女たちに配布させる。

加尾もまた一橋派の皇族・獅子王院宮のかっての御殿医だった楢崎という医師に見舞金を届けに出た。楢崎医師は拷問によって寝たきりとなっていた。

その途上、加尾は一人の貴族に呼び止められた。

「おや・・・そなたは三条はんとこのお女中でおじゃったな」

貴族というよりは侠客の親分という姿の三十代半ばの男はニヤリと笑った。岩倉村で大掛かりな賭博場を開く右近衛権少将具視である。

加尾は平伏する。

「これこれ・・・おたちあれ・・・まろも・・・おしのびでおじゃる・・・」

加尾は言われて顔を伏せたままたちあがる。

「三条殿はお宅にありしか・・・」

「本日は・・・朝議におでかけでございまする」

「おお・・・そうか・・・では・・・どこぞでヒマをつぶすか・・・お女中、よければ茶屋などに参らぬか」

「お戯れを・・・使いの途中でございま・・・」

その時、殺気とともに手裏剣が飛来し、加尾はとっさに小刀を抜いて振り払う。

狙われたのは岩倉具視であった。

その時、岩倉はすでに通りを飛んで町屋の屋根に上がっている。

黒い影が左右に散り、成り行きで巻き込まれた加尾を包囲する。

「幕府の隠密か・・・」と岩倉が屋根の上で叫ぶ。

隠し剣を抜いた岩倉は忍び装束の隠密を一人刺し殺していた。

加尾もかんざしを投げ、一人の命を奪っている。

残った忍びたちは姿を消した。

岩倉は屋根から飛び降りると加尾を見た。その瞳には邪悪な光が浮かんでいる。

「ほほう・・・くのいちでおじゃったか・・・このものたちはもはや主をなくした忍びじゃ・・・そないなものは馬の糞でおじゃる」

加尾は不気味な微笑みを浮かべる岩倉から必死で目をそらしていた。

「戦いに勝てどあげくのはては仲間割れでおじゃるよ・・・相手を倒してはまた仲間割れ・・・また相手を倒しては仲間割れ・・・ふふふ・・・この世は所詮・・・蠱毒の壺の如しでおじゃろう・・・」

蠱毒の壺とは毒を得る秘術の一つである。毒虫を互いに殺し合わせ、毒を濃縮するのである。

「お女中・・・お使いの途中でおじゃろう・・・」

加尾は我を取り戻すと三条の通りを急ぎ足で下っていった。

龍馬は萩の城下で不死身の聞多から久坂玄瑞を紹介されていた。

三人は松下村塾に仮に作られた吉田松陰の御霊社に拝礼する。

その後で萩の小料理屋の座敷にあがる。

「そうですか・・・坂本様は先生とご学友でございますか・・・」

「いや・・・ワシはやっとうが主で・・・学問の方はついでじゃき・・・」

「ふふふ・・・坂本君はすご腕でありますよ・・・」

三人は酒を酌み交わす。

「それではロシアは逃げ出したのかいな」

「私も長崎からの飛脚からの手紙で知っただけですが・・・」

「教えてくれんかの・・・」

「秋口に関東からイギリスの黒船艦隊二隻が下関まで来まして・・・長崎からも幕府の戦船が出港したのだそうです。ロシアは軍艦二隻で応じる構えを見せたのですが、長州艦二隻も合流して蒸気船が五隻そろうと白旗をあげて対馬から出たそうです」

「そして、結局ロシア船もイギリス船も長崎で仲良く肩をならべているそうだ」

「まったく・・・幕府だけでは手も足も出ないわけです」

「幕府は他にも軍船を出したという噂もありますがな」

「ほほう・・・」

「なんでも海の中を進む船だそうです」

「海の中を・・・」

「佐武万臨と言うらしい・・・まあ・・・噂でありますが・・・」

「おそらく・・・真田の科学忍者たちの秘密兵器でありましょう・・・」

龍馬は土佐にいる間に時勢が驚くほど進んでいることを嗅ぎ取る。

「そがいなものがのう・・・土佐では未だに上士だ郷士だだの・・・開国だの鎖国だのでわいわいやっとるき・・・」

「もはや・・・忍びが立つしかないのです・・・」

「忍びが・・・」

「吉田松陰先生はおっしゃいました・・・忍びが野に潜みて火をつけるが如く世を燃やすのだと・・・ゲリラ戦法と言うそうです」

「下痢とは・・・」

「ゲリラです」

「そしてテロルだ」

「ゲロかいな・・・」

「テロです・・・たとえ炎にて個々は亡びても革命の火の手は必ずや・・・維新を巻き起こすのです」

「なにしろ・・・先生が千里眼で見通したことなので・・・必ずそうなるのです」

「・・・物騒じゃのう・・・」

坂本龍馬は血の色に染められた未来がうっすらと見える。

(吉田松陰先生・・・それしかないのかのう・・・血を流して流して・・・それで明日が来るのかいな・・・それはなんだか・・・いかんぜよ・・・)

龍馬の心の中で何かがゆっくりと生まれでようとしていた。

関連するキッドのブログ『第11話のレビュー

月曜日に見る予定のテレビ『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命2nd Season』(フジテレビ)『ハンチョウ』『窓際太郎の事件簿』(TBSテレビ)

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2010年3月20日 (土)

ドクロにつられて七変化(大政絢)エビフライより君が好き(亀梨和也)

初登場の「スパイダーマン3」の攻撃力はかなりのものだと思うわけだが、「ブスナコ」と言われると破壊神と化すホラー少女と傷心のマザコン青年のハッピーエンドでは最初から勝負にならないという考え方もあるわけで、いっそ清々しいほどの最終回だったな。

とりあえず、大政絢は「クレヨンしんちゃん」でしゃべることができ、ものすごいかかとおとしを披露できたのでよかったと思う。

亀梨和也は二枚目俳優としてまたもキス歴を重ねることができたしな。

これで小中学生の男女は甘い夢を見ることができただろう。

まあ、ある意味それだけの作品である。

で、『ヤマトナデシコ七変化♥・最終回』(TBSテレビ100319PM10~)原作・はやかわともこ、脚本・篠崎絵里子、演出・石井康晴を見た。人々は自分を評価する。過小評価したり過大評価したりする。そういうものは結局、他者の評価との比較の上に成立する。絶対的評価もあって試験結果だとか勝負の成績だとかは歴然としているわけである。落第点をとれば落第だし、2位ならば銀メダルだ。もう少し微妙なものもある。たとえば容姿である。馬子にも衣装で経済力などにより装飾や整形をすれば客観的評価も流動するし、美を相対的なものと考えれば主観的な美で評価のバランスをとることができる。

たとえば、クラスの半分の女の子は自分をある程度美人と考えているし、残りの半分は十人並みでかわいい方だと考えている。基本的にブスはいないというのが前提なのである。

しかし、いつか・・・「化粧なんてどうでもいいと思っていたけれど今夜死んでもいいからきれいになりたい」と嘆く夜を多くの女の子が通り過ぎていく。

そして、驚くようなファッションが生み出されていくのである。

恋愛ドラマの初歩というものはそういう人々に恋愛気分を味あわせることである。

だから・・・愛している人に「ブスだから嫌い」と言われた女の子が眩しいほどの美青年に恋をして愛されるというこの結末は実にストレートな展開なのだった。

まったく文句のない展開で・・・ちっとも刺激的ではないのである。

今回の影の主役は未亡人の美音(高島礼子)である。

美音は恋愛に臆病になっている恭平(亀梨)とスナコ(大政)を結びつけるために余計なお世話をやくわけである。

昔だったらこの手のことはありがた迷惑だったわけだが・・・今でもおそらくそうだと思うが・・・このドラマではそれが恋愛のために必要不可欠な手法のように描かれる。大人が手を貸さないと満足に恋愛もできない子供たちなのである。

だから・・・美音の計略はまんまと大成功を収めるのである。

いたれりつくせりだな。

そんなのせられた恋愛をして楽しいかどうかはそれぞれの恋愛歴によって違うだろうが・・・そうやってお膳立てをしてもらったほうが楽だ・・・という人は増加しているのかもしれない。

しかし、視聴率を見る限り・・・違うような気もする。

かって人身売買の暗黒の歴史を持つアフリカ大陸の男(ダンテ・カーヴァー)が復讐のために人身売買のシンジケートを作り、日本に資源の買い付けにやってくる・・・という趣向をにじませながら、実はスナコを恭平が救出するためのドッキリカメラだというオチは仕掛けとしてあってもいいが・・・問題は・・・そこで語られる美音のお説教である。

美音は勇気を語るために「恐怖」について演説する。

「失ったり裏切られたりすることの恐ろしさより、実際に失ったり裏切られたりすることの恐ろしさの方が恐ろしい」と美音は語り、それが未亡人という特殊な立場・・・愛するものを実際に失ったものとして説得力を持つと考えるわけである。

しかし、実際には恭平は実の母に「お前なんか生まなければよかった」と言われている男である。母親に裏切られた男はその恐ろしさを充分に知っているのである。

美音(つまり脚本家)は「正論」を述べて良いこと言った風になっているのだが、ドラマの流れと恭平の心情を考えると・・・違和感だけが残るのである。

せめて・・・そういう不条理な感じが残る形式で作ってもらいたい。

そうでないとスタッフがものすごくバカに見えますから。

一方、スナコは「闇が怖いのは闇を知らないからで・・・知ってしまえば闇は友達になる」と考える。そこから「光が眩しいのは明るさに馴れていないからで、自分が眩しくなればいつかは馴れる」と新しい一歩を踏み出す。

しかし、「知れば知るほど恐ろしい」ものはいくらでもあるのだ。

たとえば、病気、たとえば、犯罪、たとえば、天災。

恐怖を克服するのは結局、それを乗り越えようとする意志の有無なのである。

それは・・・他人がとやかく言って身につくものではないはずだ。

まあ・・・とにかく・・・全編に撒き散らされるこの説教くささはなんなのだろう・・・。

どうにもこうにもたえがたい。

若い人々の楽しい恋愛はもっと刹那的でいいと考える。

だから・・・動物の骨でアフリカに釣られ・・・ドクロの置物で恭平に唇を奪われるスナコは面白いのである。

ドラマのオリジナル登場人物であるマスター(大杉漣)やタケル(加藤清史郎)もやたらと口うるさくて閉口するけどね。

「勇気、勇気、勇気があればなんでもできる」と語る恭平は最後にエビフライに身がないことを知って激怒する。

その理由は語られないが、1億円の身代金の値打ちのあるスナコは実は貧乏ではない。

あくまで家計のやりくりでヒーヒー言うのが好きなだけの変態なのである。

そういう部分に最後まで手をつけない・・・とりすましたドラマだったなあ・・・と思うばかりだ。

そういうドラマを作るのも別に悪いことではないが・・・それなら・・・この原作じゃなくてもいいのじゃないか・・・という毎回素人みたいなことを言いたい気分になりました。

ま・・・毎週のようなあすなろ抱き、愛のないキスで始めて愛のあるキスで終る・・・最後はみんな仲良し・・・それでよければすべてよしなのです。

関連するキッドのブログ『第9話のレビュー

ポールダンス万歳の天使テンメイ様のレビュー(大人味)

Hcinhawaii0631 ごっこガーデン。秘密のお楽しみの屋根裏部屋。エリお化けもこわいし雷もこわいのでスー。でも一番、こわいのは人間・・・でもそれは人間を知らないから・・・。でも人間を知り尽くすのは無理なのでスー。ということは人間は永遠の恐怖なのでしゅね~。しかし、恐ろしいほど愛おしいものなのでしゅ~。はうぅんお気楽バックをとってガイコツで誘導してキス強奪・・・このテクニックを真似しようとすると・・・火傷すると思うのね。スナコのサインは後から前からダブルオッケーってこと?・・・それともSMメガネなの?・・・この配置はシャボン玉ホリデー?mari告白して傷つくのがこわいから見てるだけ・・・それもまた人生。でも何かを手に入れようと思ったらすべてを失う覚悟でチャレンジです。特ダネとるのは命がけなんですから~。虎穴に入らずんば虎子を得ずですよ~」まこmariさんとスナコペアルックで決めてみました。こうするとどんな衣装もピンクレディーみたいなことになるのでしゅ~。さすがアイドル界の大先輩のイメージの影響力はしゅごいでしゅね。珠緒ちゃんとかまちこちゃんとかお相手が最後に全員集合できないなんて・・・どんな貧乏なドラマなんでしょう・・・そこがいじましくてシュテキ!でしゅ~

日曜日に見る予定のテレビ『龍馬伝』(NHK総合)『深・ケロロ軍曹』(テレビ東京)『堀北真希の特上カバチ!! 』(TBSテレビ)

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2010年3月19日 (金)

さあ、超科学画像解析の時間よ(沢口靖子)

さて・・・突然、「科捜研の女スペシャル」なのだが、いつの間にかドラマの狭間である。

冒頭がクリスマスシーズンで賑わう京都の町。どんだけオクラ入りしてたんだ。

じゃ、次の木8が「科捜研の女」なのかというと「おみやさん」なのである。

つまり、結局、2時間ドラマ版の「科捜研の女」が来たのは「853」と「エンジェル・バンク」がアレだったからなのだろうか。

いろいろと妄想できる木曜日なのである。

まあ、そこで今回はあれやこれやをダラダラ書いていく感じにしたい。

で、『科捜研の女スペシャル』(テレビ朝日100318PM8~)脚本・櫻井武晴、演出・辻野正人を見た。レギュラーは第9シリーズまで重ねているわけで、東京の「相棒」と京都の「科捜研」はテレ朝刑事ドラマの顔なのだと思う。もちろん、これだけ重ねていればマンネリも甚だしいのだが、そこがいいと思って見るしかないのである。

ニュース番組などで防犯カメラの映像が公開された場合・・・その画像のあまりの不鮮明さに苛立つお茶の間は多いだろうが・・・犯人逮捕に結びつけようとする画像が不鮮明である以上、それが現在の画像解析の実力の限界として認識するべきだろう。

それに対して、科捜研の画像解析力のあまりのスーパーぶりにに度胆を抜かれるのが正しい鑑賞の作法なのである。

白昼堂々、ライフルによる狙撃事件が発生。射手のいた場所には指紋のついた薬莢や筆跡の残る競馬新聞が発見される。まもなくライフル銃による自殺を偽装した死体が発見される。死体の指紋や部屋に残された筆跡は狙撃事件の現場に残されたものと一致。

しかし・・・自殺方法と弾道が一致しないため・・・偽装であることはたちまち露見するのである。

一体・・・なんのためにそんな間抜けなことを・・・とお茶の間は思うのだが・・・なんと犯人は単に間抜けだったのである。

あるいは科捜研をなめているかである。

榊所長(小野武彦)は「最初の犠牲者はターゲットではない・・・」と推測し、弾道上に存在した女(清水美沙)が狙われている可能性があることを指摘する。

すると所長の娘マリコ(沢口)が「ここ拡大して」と命じると、美貴(加藤貴子)はサクサクッと解像して女のネームプレートを拡大して勤務先と氏名が判明するのである。

もうスーパーウルトラデラックステクノロジーの勝利なのである。

今回、筆跡鑑定係の日野研究員(斉藤暁)が東京出張しており、臨時に大学の研究家である男(西村雅彦)が派遣されているのだが、彼が特に驚愕しない以上、この世界では普通の技術なのである。

やがて・・・事件の影に宗教団体「神の手」が暗躍していることがわかる。

女はその団体の信者であるが、教団が「不正なマネーロンダリング」をしていることを知り、その情報を外部に持ち出して弁護士(黒田福美)に預けていた。

すべては「悪事の証拠隠滅」のために展開していくのだが・・・その始末人(金子賢)に警察内部から情報が流出しているという趣向である。

もちろん、情報を流しているのが誰かはキャスティング的にはっきりしているのだった。

しかし、一応、警察内部に複数の信者がいて・・・煙幕は張られます。

・・・京都府警・・・おそろしい汚染度である。

実は、女には離婚した父親と暮らす娘がいて・・・先に「神の手」の信者となったのは娘の方らしい。女は娘を探すために信者となったのであって信仰心はないのである。しかし、そこにはもう少し事情があるはずだが・・・それについては恐ろしいことにノータッチなのである。

とにかく、「相棒最終回スペシャル」でも登場した「人物認識システム」がこちらでも登場し、防犯カメラの映像から二つの現場に同時に存在した人物を特定されるのに使用される。

マリコが「拡大して」と言えば、たちまち始末人の「顔」が割れるのだった。

そして人相から前科者リストが照合され、たちまち正体もヒットするのである。

科捜研は無敵なのである。

女と始末人は逃走と追跡をしながら女の娘のいる小豆島に向かっていく。

携帯電話による位置確認システムで追いかける土門刑事(内藤剛志)と「私もいく」とついてくるマリコ。

女は始末人に追い詰められて崖へ・・・しかし、そこはスルーして、神の手の施設に向かうのだった。

ここが一番のスカシの笑いの場面である。

始末人は生き証人の女を射殺しようとするが間一髪、土門が問答無用の銃撃で犯人を制圧するのだった。

崖でのやりとりがパスされてキッドが思わずセレクトしたのが・・・。

時効警察・第四話』(テレビ朝日060203PM1115~)脚本・演出・園子温である。サブタイトルの「犯人の575は崖の上」が示す通りに・・・2時間ドラマの崖の上での事件解決へのオマージュに満ちた作品であり、ほぼ崖の上で進行するストーリーである。もうたまらない馬鹿馬鹿しさである。

劇中サスペンスドラマ『アネゴ探偵寂水先生シリーズ』の初代寂水を演じる白河湯舟(広田レオナ)と二代目寂水を演じるアヤメ旅子(永作博美)の壮絶な女優魂が激突なのである。

崖の上のファンには微笑ましい一作だ。

アヤメに嫉妬する三日月しずか(麻生久美子)もいい感じだし、アヤメに「シーッ」とのぼせ上がっていたようで実はクールな霧山(オダギリジョー)の「殺人の時効がきても罪は罪」も決まるのである。

そろそろ「またまた帰ってきた時効警察」をやって欲しいと思う。

「サラ金」→「歌おに」→「掟」→「メイド刑事」→「マイガ」→「サラ金2」とずっと低調な金曜ナイトドラマだが2010年春ドラマでは『警部補 矢部謙三』が登場である。

まあ・・・あんまり期待しすぎるのもなんだが・・・上司菊地(姜暢雄)で矢部に秋葉(池田鉄洋)の刑事コンビ・・・つまり、「トリック」のスピンオフなのである。これに貫地谷しほりと原幹恵というお気に入りの女優がプラスされるのだ。

期待するな・・・と言われても無理なのである。

どうか・・・凄く面白い感じになりますように・・・と祈ります。

そうでなくても春ドラマはほとんど期待できないラインアップなのです。

まあ・・・月9とか日9とか「怪物くん」はありますけれどーっ。

関連するキッドのブログ『新・科捜研の女

               『科捜研の女

               『帰ってきた時効警察

                『トリック

土曜日に見る予定のテレビ『咲くやこの花』『まいど238号』(NHK総合)

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2010年3月18日 (木)

どうして世界は私の理想に逆らうのかと叫ぶ女(菅野美穂)

さて・・・残念なことに最後のMichael JacksonはSmooth Criminalではなかったわけだが、まあ、バッド・エンドでないので当然と言えば当然だ。

だが・・・どうせ支離滅裂な女を主人公に据えたドラマなのだから最後まで殺伐とするべきだったと思うのだな。

手馴れた犯罪の犠牲者は

危険というものを知らないんだ

ドアに鍵をかけたって

ヤツラは窓から入ってくるってこと

床に残された血痕は

彼女が

頭隠して尻隠さずだったことを物語る

それでも彼女は弁護するんだ

悪人なんていないって

それで彼女の安全は保証されたかどうか

確かめてみるがいい

彼女の息が今、あるのかどうか

ベッドにぬくもりが残っているかどうか

ハートがときめいているかどうか

・・・こっちの方がこのドラマのおバカぶりには相応しいと思うのでございます。

水曜のダンスはフィニッシュしているが「曲女」のラスト・ステップは↗18.6%だった。

で、『曲げられない女・最終回』(日本テレビ100317PM10~)脚本・遊川和彦、演出・南雲聖一を見た。ドラマの中の登場人物が喋りすぎて不自然だと思う人は多いだろうが、あくまでドラマなので念のため。ドラマの中で主人公が絶叫しすぎると感じる人が多いと思うがあくまでドラマなのである。ちなみにキッドは実生活では早紀の年齢の頃はこのドラマの登場人物の誰よりも饒舌だったし、常時において早紀よりも絶叫していました。関係者各位に深くお詫びします。まあ・・・とにかく・・・このおかしなおかしなおかしなドラマもめでたく終了なのだな。

19年前の地獄。

荻原義紀(林泰文)「あのここ・・・どこですか」

青鬼「地獄の一丁目だよ」

義紀「ぼ、ぼくはなんか悪いことしたんですか」

青鬼「そりゃ・・・してるだろう・・・幼い子供を残して自殺行為で死んだんだから」

閻魔大王「判決。育児放棄で永久階段落ちの刑に処す・・・」

義紀「そ、そんな~」

半年前の地獄。

荻原光(朝加真由美)「ここは・・・どこなの」

赤鬼「地獄の一丁目です」

光「なんで・・・私が地獄に・・・」

赤鬼「自分の生んだ子供より他人の子供を可愛がった罪は重いですよ」

閻魔大王「判決。実子虐待で永久心臓発作の刑に処す・・・」

光「ええーっ」

現世。

10回目の司法試験で口述試験に到達した早紀(菅野)は受験会場で陣痛に見舞われる。

しかし、「最後なんだから・・・もうちょっと待って・・・ここで待てないような子供は・・・私には必要ありません」と胎児を沈黙させる。

自分の発言に後悔し、受験を断念して病院に向かおうとした早紀だが陣痛が収まったので結局受験をする。

このことは早紀の死後、未成年者に対する強迫行為で地獄行きの決定打になるのだが生者の早紀には知るよしもないのである。

早紀は地獄で「子供がOKした」と主張するが、地獄の科学では脳の発達によって人間が言語を解するのは生後一年以後であることが解明されているため、被告の主張は単なる思い込みであり、子供との意志の疎通は認められなかった。

いずれにしろ、死後の話なので詳しくは記さない。

人間は思った以上に罪深いし、地獄の刑罰は容赦ないことをご理解いただきたい。

とにかく、地獄落ちの罪まで重ねたのに結局、この年の早紀の受験は不合格に終るのである。

10年間努力したことが実らなかった人の失意は大きい。

特に記憶力抜群のタイプだともの凄いダメージだと思う。

しかし、基本的に暗記力と想起力が試される試験を苦手とする早紀はそれほど記憶力に自信がないのかもしれない。

坂本弁護士(塚本高史)「いや・・・って言うより単に本番に弱いんですよ。一問ひっかかるとそれにこだわって絶望したり、参考書を人に貸したらその参考書関連の問題が出たり、試験直前になると体調を崩したり、風邪を引いたり、嘔吐下痢麻疹癇の虫水虫腰痛動悸息切れ眩暈などの諸症状に悩まされたり、結局あがり症っていうか気が小さいっていうか運が悪いって言うか・・・」

藍田(谷原章介)「どうして・・・そこまで彼女のこと知っていて・・・プロポーズに失敗するんだ・・・」

坂本弁護士「さあ・・・脚本家がそうしたいからそうしてるんじゃないんですか」

しかし、口述試験日、早紀は坂本との間に出来た愛娘・灯(浅見姫香)を出産する。

不合格となった早紀は試験前に誓った通りに司法試験をあきらめることにしたのだった。

翌年は口述試験のみで受験できるので関係者一同は再チャレンジを奨めるが一度決めたことを撤回することに異常な拒絶コンプレックスを持つ早紀はなかなかその気にならない。

その「私は悲劇の主人公」的態度に立腹し、藍田はプロポーズのために用意した婚姻届を破り捨て、妊婦仲間の不良主婦・璃子(永作博美)は挑発的態度に出る。

璃子「結局、あんたは投げ出したんでしょう?」

この一言で火がついた早紀は自分がいかに正しいかを延々と演説するが長いので何を言ったのか誰も覚えられないのだった。

とにかく、結論としては「資格がないと社会に認めてもらえないから司法試験に再チャレンジする」と前言を撤回するのである。

やがて、璃子にも元夫との第三子・光(佐藤詩音)が誕生し、璃子は離縁した家族と別居し、通いの母、通いの元姑介護、通いの家政婦をするのだった。

しかし、後に分るのだが夜の生活だけは藍田としたらしい。

まあ、藍田と璃子は最初から息もぴったりだし、趣味も早紀の観察なので・・・ある意味予定調和の世界である。

そして、平成23年、早紀は弁護士資格をついに獲得するのだった。

成長した灯は死んだ光のようにしっかりもので坂本弁護士のように抜け目なく早紀のような力持ちである。趣味は母親の十年日記を盗み読みすることだ。

そして出産直後に認知をした父親に「人の話を聞くのが弁護士の仕事なんだからがんばって」と励ます登場人物の中で一番バランスのとれたキャラクターなのだった。

老人介護施設の食堂で働く藍田は自慢の料理を作り、璃子との間に実子も作ったのである。

そして、荻原・中島法律事務所には夫に内緒で多額の借金を作って離婚沙汰になった旧姓・横谷(能世あんな)が相談に訪れるのだ。

「私のこと爆笑しているんでしょう」

「爆笑とは大勢の人がどっと笑うことなので使い方がまちがっています」

・・・爆笑である。

早紀「だから・・・使い方がまちがっていると・・・」

・・・残念だったね・・・私たちは同時性多重人格なのです。

早紀「まあ・・・」

自分を変えるか

世界を変えるか

結局、どっちも同じこと

自分を変えるためには世界を変えなくちゃならないし

世界を変えるためには自分を変えなくちゃならないの

恐怖と壊れた心は虚しくすれちがう

畏れがあってこそ

心はふるえる

餓えた子供がいるから

食べられる幸せを感じることができる

そのことから目をそらし

人間よりクジラを愛しく思うのは

頭のおかしい証拠なんだ

さあ、見てごらん

鏡に映る人間を

それが誰かを知ることができれば

君は自分と向き合える

そして正直に言ってみよう

誰よりも自分を愛すと・・・

そうすればいい気分

だってそれがこの世の愛の真実だからね

関連するキッドのブログ『第9話のレビュー

金曜日に見る予定のテレビ『ヤマトナデシコ七変化』(TBSテレビ)

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2010年3月17日 (水)

泣かないと決めた私(柳沢なな)アフリカで学校を建てる男の妻(深田恭子)

パワハラを乗り越えた女はイタリア出張。社長に説教した男はアフリカ行きである。

日本から世界へ・・・景気のいい話である。

すくすくと伸びていく東京スカイツリーのように不況のどん底にあえぐ経済大国でも稼ぐ奴は稼ぐのである。

そういう夢物語も時には必要なのかもしれない。

しかし、前者は展開の面白さで引きつけ、後者は倍速で飛ばし見したくなるどうでもいい感じが漂う。

火曜日のドラマ対決は①「泣かないと決めた日」↗14.9%(平均11.4%) ②「まっすぐな男」→*9.2%(平均*9.2%)

お茶の間は正直だ思う。

で、『泣かないと決めた日・最終回』(フジテレビ100316PM9~)脚本・渡辺志穂、演出・石川淳一。幼い妹(毛利恋子)は木の上で助けを求め泣いている。梯子が倒れてしまったのだ。幼い美樹(遠藤由実)は大人に助けを求めようと走り出す。それを見た妹は思わず飛び降りる。ドサリと凶悪な音がして・・・妹は不自由な足を得た。

そして歳月が流れた。美樹(榮倉奈々)の妹・愛(川口春奈)は高校生となり、脚の手術をしてリハビリに励んでいる。

不自由な足で過ごした日々は妹の心に影を作ったが、健気な妹は姉を恨みはしない。

しかし、姉の心には妹にわびたい気持ちがあった。

私だけが自由で申し訳ないのである。美樹の心にも影はある。

その影にひっそりと彼女は潜んでいる。

妹から友人へのメール「私の大好きなお姉ちゃんがピンチです」

友人から妹へのメール「まあ、それは大変」

黄昏時。東京駅の新幹線のホームにセーラー服の少女が立った。

「・・・」

黒髪の少女は神秘的な瞳で暗雲の立ち込める空を見る。一羽の黒い鳥が行く手を指し示す。構内の人々は忙しげに行き過ぎる。その人波を縫って少女はすべるように進んで行く。悪魔の邪悪な気配の漂う方角へ。

立花万里香(杏)が召喚技法を習得したのは小学生の時だった。

父親の海外土産の古い書物を読み解いた天才少女は庭に魔方陣を描き、最下級の魔物を呼び出した。ラトル・スネーク(ガラガラヘビ)に似た魔物は万里花の瞳を覗き込んだ。

「わが名はアダマンテ。お前の望みはすべて叶えよう」

万里花の魂の歩みは凍結した。

魔物に守られて成人した万里花の心は小学生のまま、心の檻に幽閉されているのだ。

葵商事・イタリア食品部門の部長・梅沢(段田安則)は出張先のイタリアで古い遺物の封印を興味本位で破壊した。その日から梅沢は鏡に映る自分の顔がトカゲに見えるようになった。

「オレは爬虫類だ・・・爬虫類の王だ・・・ひひひ」

梅沢には聖人によって呪縛された古い魔物が憑依していた。魔物の名は「インベゼル(横領者)」である。

イタリア食品部・食品チームの若手社員・西島(五十嵐隼士)は生まれついての魔物である。母親の不義密通によってこの世に生を受けた西島は嫉妬に彩られたサノバビッチ(牝犬の仔)だった。彼は両生類のカエルの顔を隠し持っている。

午前零時。少女は葵商事の本社ビルの前に立った。カバンの中から魔法のチョークをとりだした。

「エコエコアザラーク、エコエコザメラーク、大いなるものよ、この腕に宿りて、邪悪な吐息を嗅ぐ闇の精霊を導き給え・・・ベールゼブブ ルキフェル アディロンの名の元に集いし悪の使い手を指し示し給え・・・エコエコアザラーク、エコエコケルノノス」

呪文をつぶやきながら、少女は路上に三本の矢印を描く。白い矢印は燐光を放つと身を震わせ、空中に浮揚した。そしてするすると空中に飛び立った。

少女は矢の行方を見定めると口元に微笑みを浮かべた。

少女はビルに歩み寄る。すでに鍵のおりた玄関は少女のためにその扉を開く。

その傍らを巡回中の警備員が通り抜ける。警備員には少女の姿は一切目に映らない。

少女は魔物の気配を探る。

魔物たちが醸し出す地獄の残り香は強烈で気配を探るのは容易なことだ。

少女はしばしば立ち止まっては時を溯上して魔物たちの行動を監視する。

すべての悪事を把握した少女は自らの支配する使い魔たちに仕事を命じる。小さな使い魔たちは忙しく罠を張る仕事を始める。

すべての仕掛けを終えると三本の矢は集結する。それはやがて鱗粉状に姿を変える。

少女はチョークをかざす。

「ザーザース、マルチロルチモン、ナーサタナーダ」

光り輝くものは一瞬でチョークに回帰する。

少女は静寂の中を歩み去る。

美樹はチームリーダーの佐野(木村佳乃)が自宅で自殺未遂をしているところを発見する。たちこめるアルコールの匂いはむせるような濃度である。

驚愕する美樹の耳元で何者かが囁いた。

(落ち着いて・・・電話をするのよ・・・分るでしょう)

美樹は生れて初めて救急車を呼んだ。

救急車の到着を待つ間、イタリア食品部門の統括マネージャー・桐野(藤木直人)にも電話をかける。

「桐野さ~ん、佐野さんが・・・佐野さんがーっ」

「どうした、角田、落ち着け」

桐野は冷静だった。

発見が早かったために佐野は一命をとりとめた。

美樹が企画提出者としてリーダーを務めるフェアの期日が迫っていた。

美樹のリーダーシップで仕事に対する情熱を取り戻した古参社員たちは真剣に企画の成功にむけて努力をする。

ただ一人、美樹に対する激しい嫉妬で目が眩む西島はフェアで使う食材をあえて発注ミスするのだった。当日にあわてふためく人々を見たい一心なのである。

500個を5個に・・・。すべてを百分の一に。

一方、取引先からのキックバックによって私服を肥やしていたことを美樹と佐野によって嗅ぎ付けられそうになった梅沢は社内いじめにより、社を退職した静香(柳沢なな)を利用し、佐野を辞職に追い込もうと画策する。また、美樹への憎悪でストーカー疑惑を捏造する万里花の協力で、美樹を子会社に出向させる人事案を練るのだった。

しかし、見えない矢印に導かれた人々はその悪事を発見するための呪いをかけられているのだった。

佐野と静香の間に存在する感情のもつれを知った美樹は静香を訪ねる。

「私もあなたと同じようにいじめられて・・・一度は死のうとしました・・・でも・・・手をさしのべてくれた人がいて・・・そして・・・気がつくと・・・みんなが苦しんでいる姿が見えてきたのです・・・そして・・・もう一度、生きてみることにしました」

「だけど・・・私には誰もいなかった・・・」

「・・・あなたを苦しめた佐野さんは・・・今ではそのことで苦しんでいます・・・そんな佐野さんを私は必要としているのです・・・私も一人ぼっちだと感じたことがあります・・・でも今は違う・・・きっとあなたにもいつか・・・誰かが・・・」

「・・・」

静香は逃げるように去っていった。しかし、その心にはもはや光の矢が刺さっていたのである。

希望という名の矢は静香の心を蔽う黒い想念を浄化していくのだった。

入院中の佐野を見舞った桐野は佐野の口から社内に不正があることを聞く。

桐野は「部内の不正の告発者」と「社内いじめの責任者」が同一人物であることに気がつくとたちまち陰謀の気配を感じるのだった。桐野の心に刺さった正義の矢は疑惑の目を梅沢に向けさせる。

フェア前日の夜。かっての万引き常習犯だった千秋(片瀬那奈)はなぜか仕事がはかどらないために一人残業することになった。しかし、部内に一人になるとたちまち仕事は終るのだった。千秋の胸には怠惰の覚醒の矢が刺さっているのである。資料の片付けにとりかかった千秋はうっかりと覗き屋の田沢(長谷川純)のパソコンを起動させてしまう。

すると田沢専用監視カメラが立ち上がる。その正体に気がついた千秋はたちまち、田沢の収集したコレクション動画を発掘してしまう。

そこには美樹を貶めるための万里花の行動も記録されていた。

覚醒した千秋は欺かれていた自分に気がつき、羞恥心を感じる。恥じらいの光はたちまち、千秋の心を美樹への愛で満たすのだった。

万里花と結婚しながらどうしても美樹を忘れられない仲原(要潤)は美樹が残業しているかもと思い、食品部門を覗く。そこにいたのは盗撮画像を検索中の千秋だった。

仲原もまた万里花の張り巡らした計略の全貌を知ることになる。

「はめたつもりがはめられた・・・」

仲原の胸には憤怒の槍が刺さっていた。

仲原は自宅に走って戻ると愛妻を罵るのだった。

フェア当日、発注したはずの食材が届かず、蒼ざめる美樹。

しかし、美樹への愛に満ちた千秋は立ちあがる。

「まだ時間はある。やってやれないことはないよ」

夫の暴力に苦しむ琴美(紺野まひる)も美樹に助けられた恩義を感じ同調する。

意地悪な教育係だった早苗(町田マリー)は空気を呼んで先輩二人に同調するのだった。

調理担当のシェフ・中村(今井雅之)は女たちの友情物語愛好家なので協力を惜しまないのだった。

チームの一致団結でフェアは大成功する。

そして女たちの非難の目は男たちに集まる。

千秋に睨まれた覗き屋の田沢は目の前が真っ暗になるのだった。

「目が・・・目が見えない」

田沢の目はカメラになっていた。しかし、電源がないので何もうつさないのだった。

女たちの目は妨害工作をした西島に注がれる。

西島は身が縮む思いを感じるのだった。すると西島は実際に縮小されていった。

驚く女たちの目の前で1/100になった西島はスケールの小さい叫び声をあげる。

「なんじゃこりゃぁ・・・・」

その頃、役員会では梅沢部長が虚偽の告発をしようとしていた。

そこへ、憤怒の騎士となった仲原と正義の騎士となった桐野が飛び込んでくる。

二人は梅沢の不正の証拠を握っていた。

「お前のような奴が会社をダメにするんだ」

梅沢は追い詰められて、顔がにゅっと前に突き出した。

役員室は騒然となった。

梅沢は巨大なトカゲに変身したのだった。

その不気味な姿に二人の騎士が襲い掛かる。

「ダブル・ヒーロー・キック」

本社ビルの窓を突き破り、トカゲは虚空に放出された。

「ウゲゲ」

一声呻いた梅沢は爆発し散華するのだった。

責任者としてフェアの会場に一人残っていた美樹に黒い影が忍び寄る。

「お前のせいで何もかも台無しよ・・・なんで大人しく泣き寝入りしないのよ・・・魔女の私に逆らうなんて百年早いわ」

魔女としての正体をむき出しにした万里花だった。

その前に一人の少女が立ちはだかる。

「お前は本当の魔女ではない・・・」

「なんだと・・・」

「お前は悪魔に憑依された憐れな小学生なのだ」

「なにを言っている」

「おろかなヘビよ・・・元来た場所へ戻りなさい・・・アードナイ、ハーレイツ」

「・・・おっ・・・お前は・・・黒魔法の少女・・・黒・・・」

透明な液体で会場に描かれた魔法陣が輝きとともに出現する。

その中心に万里花はたっている。

「おのれ・・・せっかくの・・・楽しみを・・・あああ」

魔法陣が回転すると万里花からは黒い瘴気がもやとなって立ち上る。

くるくると勢いを増す魔法陣の下に黒よりも黒い闇を湛えた穴が開き、恐ろしい叫び声をあげる異界のものを飲み込んでいく。

そこへ、仲原がかけつける。

すべてが終ると残された万里花は子供のように泣きじゃくる。

少女は仲原を振り返った。

「このものは十年以上も閉じ込められていた悪魔の虜囚です・・・あなたは縁在って結ばれたもの・・・運命を受け入れ、彼女の再生の道を助けなさい」

「・・・わかりました・・・あなたは一体・・・」

「名乗るほどのものではありません。どうせ、すべては夢となりますから・・・」

呆然とする人間たちを残し、少女はすべるような足取りで退場した。

佐野には静香から手紙が届いた。

「私は・・・今、新しい道を探しています。私を必要としてくれる誰かを探そうと思うのです。その第一歩として・・・あなたから受けた仕打ちを許すことからはじめようと思います。それは私が泣かないと決めた日の記念なのです」

故郷の岐阜に戻る愛を母(大塚良重)が出迎える。

母「お友達が迎えに駅まできてくれるって」

愛「知っているよ・・・さっきメールが届いたもの」

二人を見送る美樹の瞳には穏やかな喜びが浮かんでいる。

どこかで・・・愛の呪文を唱えている声が響くのだった。

美樹は目に見えない誰かに感謝した。

すべての道はどこかへ通じているのである。

関連するキッドのブログ『先週の火曜日のレビュー

で、『まっすぐな男・最終回』(フジテレビ100316PM1015~)脚本・尾崎将也、演出・三宅喜重を見た。松嶋(佐藤隆太)大事なプレゼンの日に貧血で倒れ病院に運ばれる鳴海(深田恭子)・・・仕事を投げ出して駆けつける松嶋。しかし無事だった。

松嶋の抜けた穴は熊沢(田中圭)が埋めたのだった。

社宅暮らしの鳴海は社員夫人同士の交際でものすごくなじめないものを感じる。

なにしろ、風俗あがりの犯罪者なのである。・・・それ以外は何でもやっているとか言っているが嘘ですから。

しかし、なんとか周囲に溶け込もうとお裾分けのクッキー作りに挑む鳴海だが無惨な失敗の上に再び貧血となり入院するのだった。

一方、松嶋は仕事の獲得のために議員の口利きを利用するために1億円の政治献金をしようとする社長(石坂浩二)と対立。

「そんな汚れた金はアフリカの小学校を建てるお金に寄付するべきだ」と怪しい主張を展開する。

こわくなった社長は松嶋に1億円をつけてアフリカ追放を決心する。

松嶋はすぐに貧血をおこして身体に問題のある妊婦を連れて・・・援助がないと小学校も建てられない未開の地域に旅立つ。当然、医療体制はものすごく恐ろしいことになっていると思われる。

熊沢と佳乃(貫地谷しほり)はなんとなく結ばれる。

なんというか・・・最後までとりとめなく、ものたりなさの連続というひどいドラマだったな。

まあ、深田恭子がかわいいから問題ないのだが。

木曜日に見る予定のテレビ『グインサーガ』(NHK総合)『科捜研の女スペシャル』(テレビ朝日)

ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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2010年3月16日 (火)

いつだって引返し限界点は過ぎ行くコード・ブルー(山下智久)想い乱れて(新垣結衣)

飛行機がもはや出発点に戻る燃料がなくなるポイントをpoint of no return(帰還不能点)と呼ぶ。

死というものは結局、生の引返し限界点なのである。

時間に支配された人間は刻一刻と後戻りの出来ないポイントを通過していく。

人はそのつかの間の時をもがきながら進んでいく憐れな生物である。

すべてのことはとりかえしがつかないのである。

それを知りつつ、人は最良の選択を求めようとするものだ。

何も選ばないことも一つの選択である。

しかし、ランチを食べるにあたり・・・何も注文しないという選択は空腹を招くのである。

だから・・・為すべきことを為すのは人生の基本なのである。

本題に入る前に恒例の週末の視聴率チェック。「宿命」↗*7.9%(北村一輝だけでは限界か)、「ヤマトナデシコ七変化」↘*7.8%(やはり耽美主義のドラマに嫁姑ネタじゃな)、「サラ金2」↗11.0%(西丸優子とったな)、「未来からの訪問者」*8.8%(長いCMだった)、「咲くやこの花」↘*8.1%(やったりやらなかったりしすぎ)、「ブラマン2」↗*7.8%(満島ひかりとったな)、「左目探偵」↗10.7%(ビルのドミノ倒しとったな)、「火の魚」*9.6%(尾野真千子とったな)、「熱血教師」10.3%(蓮佛美沙子とったな)、「再捜査刑事」12.5%(寺島進とったな)、「龍馬伝」↗21.4%(吉田東洋とったな)、「特上カバチ」↘*8.7%(堀北真希はかわいいのに)・・・ついでに「ハンチョウ2」↘*9.7%、「コードブルー2」↗16.8%・・・以上。

で、『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命 2nd Season・第10回』(フジテレビ100315PM9~)脚本・林宏司、演出・西浦正記を見た。まさに釣り天国、フラグの津波である。もう何が釣りで何がフラグだか判別不能なほどだ。しかも最終回直前なので釣ったまま引くのである。これぞ連続ドラマの醍醐味です。海外ドラマの場合、ここで終って次のシーズンまで引きまくることもあるので吃驚仰天だが、さすがにそれはしないだろう。

脳内の血栓のために成功率の極めて低い手術を受ける田所部長(児玉清)を末期ガンのために余命幾許もない白石博文(中原丈雄)が見舞う。

田所「大学ではいつも先を越されていたが倒れるのは俺の方が先だったな」

博文「まだ分らんぞ・・・」(旗①)

田所「お前の娘(新垣)はもう立派なドクターだ」

博文「後は孫の顔を見せてくれたら言うことなしだ」(旗②)

田所「会っていかないのか」

博文「ランチの約束をしているのだが・・・」(旗③)

田所「もうランチタイムは終わりだぞ・・・青森に行くのだろう」

博文「飛行機を一便遅らせるから大丈夫だ」(旗④)

田所「・・・そうか」

博文「手術の後で・・・またゆっくり話そう・・・」(旗⑤)

白石の父親はハタ坊か・・・。ちなみにこの場合の旗色には「死相」が現れています。

人はいつでも決断を迫られる

告白するのか

告白しないのか

告白すれば恋の花咲くこともあるが

断られて気まずくなることもある

手術をするべきか

様子を見るのか

手術をすれば失敗することもある

様子を見れば手遅れになることもある

人は過去からリスクを学ぶ

そして未来をイメージする

この瞬間は

つねに分岐点なのだ

そして決断したことは取り消すことはできない

引き金を引けば

弾丸は銃口を飛び出していく

待てと言われて止る弾丸はまだ開発されていないのだ

朝のカンファレンス(会議)では今日の予定などの確認が行われている。

田所の血栓摘出手術の執刀医は脳外科医の西条(杉本哲太)である。

「止血が困難な場合、循環停止法を行うために専門医に待機してもらいます」

リスクを回避するためにさらなるリスクを背負う。

それを人は準備万端と呼ぶ。

脳内での出血を制御するために血液の循環そのものを停止する。そのために心臓を停止する。脳を保存するために低体温にする。出血は止るが心臓が再び動き出す保証はなく、脳が破壊されない保証もない。

しかし、もう一つの道には緩慢で唐突な死が待っている。

一同に会する医療スタッフはそれぞれの知識に応じて、西条の不退転の決意を知る。

森本(勝村政信)は朝一番の患者の手術の処置を終え、縫合をフェロー・ドクター(専門研修医)に委ねた。

担当するのは手続きミスによる医療訴訟を間一髪免れた緋山(戸田恵梨香)とフライトナース冴島(比嘉愛未)への片思いに悩む藤川(浅利陽介)である。

二人は針と糸で患者を縫合しながら仲良く罵りあう。

「麻酔の効いてる患者相手だと元気だな」

「あんたにあたしの気持ちなんかわかんない。うったえてやるって睨まれたのよ」

「だが、実際は訴訟はとりさげられた・・・いつまでもびびってんじゃないよ」

「あんたこそ、冴島に告白ったの?・・・びびってんはどっちよ」

「そ、そ、それをいっちゃあおしまいだよ」

手術台の患者は夢の中で映画「男はつらいよ」でフーテンの寅が妹のさくらにたしなめられるシーンを見ていた。

二年に渡るドクターヘリ専門研修は最終期に差し掛かっていた。三月二十五日になれば最終認定が行われ、指導医が合格を認定すれば彼らはフェロー・ドクターを卒業することができる。

もっとも落ちこぼれていた藤川はそれなりに過程をつみあげ、才気煥発の緋山は就業中の事故による心臓停止、患者の遺族とのトラブルなどのアクシデントに見舞われ、落ちこぼれかかっている。

失敗と失意のダメージは心身ともに緋山を蝕んでいる。

藤川はその気持ちを払拭しようと言葉を紡ぐが、緋山は素直に受け取る気分にはなれない。

「同情するなら過去を消してくれ」と緋山の心は叫ぶ。「できないならわかった風なことを言わないで」なのである。

「結局・・・自分でなんとかするしかないのだ」と藤川は理解する。落ちこぼれていた自分には落ちこぼれかかる緋山の心は想像できる。しかし、緋山と自分は違うのも事実だ。藤川が水を飲んでも緋山の渇きは癒えないのだから。

藍沢は煙草の吸殻を誤飲し幼児の手当てを負え母親に説教していた。

「医者は愚かな母親の尻拭いをするために生きているわけではありません」

愚かな母親には無意識に攻撃的になる藍沢だった。

救急車によって転落事故の患者が搬送されてくる。

出迎えに向かう藍沢(山下)と白石(新垣)の優等生コンビ。しかし、二人の出自は全く異なる。幼くして両親に捨てられた藍沢と名家に生まれ両親の愛情を注がれて育った白石。しかし、二人の心は通い合う。

「(白石の父親が)来てるんじゃないのか・・・」

「ランチの約束をしている・・・」

「具合はどうなんだ・・・」

「抗癌剤が効いて安定している・・・今日もこの後、青森で講演会をするつもりらしい」

「そうか・・・ところで二十四日のシフト替わってくれないか」

「いいけど・・・どうしたの」

「母親の命日なので・・・墓参りに行く・・・」

「そう・・・」

「二十年、ずっとかかさなかったが・・・今年は特別な気持ちでいけると思う」

「・・・」

母の死が自殺だと知った藍沢の心情を想像する白石は沈黙する。慰めも涙も必要ない。藍沢に必要なのは温もりだけだと知っているからである。

やや大きめのサイレンとともに到着した患者は重傷だった。

博文は病院の食堂で娘を待っていた。すでに空腹は限界に達していた。

院内にいる娘から電話が入る。

「もしもし、私、急患入った・・・」

「そうか・・・気にするな・・・医者同士の約束なんてそんなもんだ」

「田所部長のオペが終ったらまた来るでしょう・・・その時は必ずランチしよう」

「うん・・・お前も無理するな」(旗⑥)

博文は愛娘と一緒に飲むつもりだった二つのお茶を見つめた。

博文は病院を出る。タクシーでバスターミナルへ。直行リムジンで羽田へ。

(おおよそ・・・一時間半か・・・午後二時半の羽田発青森行きのJEA21便に乗るにはギリギリだな)

娘のためにタイトなスケジュールを課した博文は大きな分岐点に足を踏み入れた。

四階から転落した患者は多発外傷だった。

藍沢は決断する。

「出血性ショックで心臓停止直前だ・・・手術室に搬送しているヒマがない・・・ここで開復だ」

白石は即座に同意する。

しかし、出血は多量で患部に到達するのが難しい。

藍沢は進退極まった。

白石はリスクヘッジの可能性を探る。

(何かあったはず・・・何か・・・この場をしのぐ術式が)

白石は脳内検索を終了した。

「鉗子の先にガーゼ巻いて」

ナースは一瞬戸惑ったが・・・藍沢は白石の意図を即座に読みとった。

「スポンジスティックか・・・」

即製器具で視野を確保すると同時に出血を緩和する白石のフォローである。閉ざされた患部への道が藍沢の前に開かれる。

(白石・・・ナイスだ・・・)

藍沢は白石を見直した。二人は無言で愛を交わした。

その様子を感慨深げに見守る男がいた。

藍沢に右腕を切断され、外科医生命を絶たれた黒田(柳葉敏郎)だった。

黒田は田所の見舞いに来ていた。

田所が生死の境界線に立っていることを黒田は医師として知悉している。

「・・・見通しはどうですか」

「ふふふ・・・今度の死神は手ごわいようですよ」

「今・・・フェローたちの手術を見学してきました・・・もう立派な救命医です・・・」

「すべて・・・あなたのおかげだと思っています」

「私なんかは・・・何も・・・それにしても若い奴らが一人前になるのを見るのは眩しいものですね」

「その分、こちらは暗闇に近付くわけですから・・・黒田先生・・・もしもの時は・・・後を頼みます」

「・・・」

黒田と田所も無言で契約を交わした。

博文は羽田に到着した。青森行きの50人乗りエアコミューター(小型航空機)は離陸が少し遅れていた。博文は幸運を感じると同時に一瞬の不安を感じる。

運行計画の齟齬にはいつも何か原因があるものだ。

離陸の順番を待ちながらJEA21便の機長は嫌な予感に襲われていた。何かがおかしい・・・しかし、それが何かはわからない。離陸準備の手順を確認しながら心に湧き上がる違和感を機長は宥める。

(何も問題ないじゃないか)

副操縦士が無線連絡を終えて告げる。

「離陸許可出ました・・・」

機長は心の中で苦笑しつつ、機を滑走路に乗り入れた。

定刻より10分遅れて、JEA21便はテイク・オフした。

順調に高度をあげるコクピットに警告音が鳴り響く。

「右エンジン・・・出力異常です」

「なんだ・・・」

「右エンジン・・・停止しました」

「緊急事態を宣言する」

「どうします・・・」

「羽田には戻れない・・・成田に緊急着陸を要請してくれ・・・」

博文は機長の機内アナウンスを聞いた。

「当機は操縦系統にトラブルが発生したため、成田空港に緊急着陸します。お急ぎのお客様に迷惑をおかけし誠に・・・」

(こりゃ・・・講演会は中止だな・・・)

博文は目を閉じた。娘会いたさの親馬鹿の報いか・・・博文は微笑んだ。

黒田は西条に会っていた。

「こざっぱりしたな」

「規則正しい健診医暮らしだ・・・」

「なんだか・・・うらやましいぞ」

「勝算はどうだ・・・」

「分っているのはやるしかないってことだ」

「田所部長を殺すなよ」

「・・・いつもの通りやるだけだよ」

西条と黒田は宿命のライバルだった日々を振り返る。

成田空港への着陸許可を得たエアコミューターは片肺飛行で進路を修正している。

不気味な警告音が再び鳴り響く。

「左エンジン出力異常です・・・て、停止しました」

「成田に届かない・・・」

「どうしますか・・・」

「胴体着陸しかない」

「システム・ダウン・・・ね、燃料放出できません・・・」

「ジェット燃料・・・満タンか・・・」

客室搭乗員が叫ぶ。

「ヘッド・ダウン・・・頭をお下げください」

防御姿勢をとりつつ、博文は思う。

「もうすぐ死にそうと思わせておいて・・・即死か・・・一つのテクニックだな」

窓の外には市街地が広がっている。

機長はつぶやく。

「民家は避けたいな・・・」

「あの山林はどうです」

「うん・・・神に祈れ」

「か・・・」

機は高度ゼロに達した。衝撃音とともに機体は森の木々をなぎ倒していく。

黒田は一仕事終えた藍沢を待ち伏せていた。

「元気そうだな」

「腕の具合はどうですか・・・」

「二回、神経移植して・・・一年半のリハビリで・・・この程度だ・・・もうメスは握れない」

「・・・」

「だが・・・のんびりしている」

「平凡な暮らしですか・・・」

「その通りだ・・・息子と過ごす時間もあるしな・・・NBA(北米プロバスケットボールリーグ)のことにすごく詳しくなったぞ・・・知ってるか・・・今、日本人で上矢って凄い選手が全米で注目されているのを・・・」

「知りません・・・」

「まあ・・・そうだな・・・お前は医学書だけを読んでろ・・・すべてを患者のためにつぎ込めばいい・・・そういうことが許される時間は意外と短いぞ・・・」

「・・・」

かってのシニアドクター(指導医)とフェロードクターは見つめあった。

田所部長の手術は定刻通りに開始された。

執刀医の西条は高鳴る鼓動を鎮める。

(いつもどおりだ・・・平常心を失うな)

見つめる黒田と見つめられる西条は同時に心で叫ぶ。

その時、轟木(遊井亮子)が叫んだ。「ドクター・ヘリ・エンジン・スタート」

医師待機室に医師が集合する。

橘(椎名桔平)「何があったんです」

森本「墜落事故だ・・・50人乗りの旅客機が成田市沼田町付近の山林に墜ちて炎上している」

白石「こ、国内線ですか・・・」

森本「羽田発青森行きの便だったそうだ・・・どうした・・・」

白石「父が・・・父が乗っていたかも・・・」

一同は沈黙した。

三井(りょう)「とりあえず現場に行くわ」

指導医・三井、フェロー・藤川、フライトナース・冴島が先発した。

森本「負傷者は多数らしい」

橘「ピストン輸送で全員出動しましょう」

白石「私も行かせてください・・・」

一同は再び沈黙した。

藍沢「不安を抱えながら・・・行くのなら自重した方がいい・・・現場に必要なのは肉親の安否を気遣う人間ではなくて・・・医者だ」

白石「・・・医師として行きます」

橘「第二陣は俺と藍沢と緋山・・・白石は残りのフライトナースと第三陣だ・・・森本先生よろしいですか・・・」

森本「こりゃ・・・修羅場だな」

轟木「ヘリは現場に向かっています・・・何か目印はありますか・・・」

現場管制官「ものすごい煙があがっているのですぐ分りますよ」

轟木「・・・」

梶(寺島進)「こちら、ドクターヘリ、現地を視認した・・・着陸地点を指示してくれ」

第一部隊は立ち上る黒煙と破壊された機体の惨状に息を飲んだ。

墜落から数十分が経過して動員された消防隊、警察は付近の学校の体育館を特設救護所にしている。

消防署員「これを使う日が来るとは・・・」

署員は常備されている死体安置所の垂れ幕を取り出した。

消火活動は続いていたが、自力で脱出した乗客や機外に投げ出された乗客の収容は進行中だった。

地獄の光景に三井は一瞬、我を失った。

藤川がそれを察して言う。

「トリアージですよね・・・治療を開始するのは後続がついてからでも・・・」

「・・・そ、そうね・・・私は右から・・・行くわ」

治療順位を決めるための仕分け作業が開始される。黒田の黒は死亡もしくは現状では救命不可能な者。緋山の赤は緊急治療の必要な重篤患者。緑は軽症。黄色は重傷と軽症の真ん中だ。急変すればたちまち赤札に染まるのである。

西条は予測通り、手術が難航するのを感じていた。出血部位は修復が難しく、除去する血栓への進路を阻む。

「やはり・・・循環停止法を試すしかない・・・お願いします」

待機していた専門スタッフは田所の血流を停止する処置を開始する。

低体温下の心肺停止により稼ぎ出される奇跡の時間は二十分。

もはや引き返すことの出来ない究極の分岐点である。

「出血とまりました・・・」

「五分ごとにカウントダウンしてくれ」

黒田と西条は同時に何かに祈った。

第二陣は現場に到着した。

先着医師のトリアージはまだ途中だった。患者は墜落現場から続々と搬入されてくる。

橘は一瞬、思考が停止した。

藍沢は吠えた。

「患者を仕分けます、赤はこのスペースに、黄色は移動させましょう。机を中央にならべて医療品基地にします。黒は・・・どこか開いた場所に・・・橘先生、それでいいですね」

橘「その通りだ・・・それでいい」

「警察の方は・・・搬送先の病院との連絡を仕切ってください・・・」

指導者を得た現場は組織として機能し始める。

(さすがだな)と藤川と緋山は同時に感じるのだった。

冴島はそっと緋山に寄り添った。鬼軍曹は脆い士官をフォローする臭覚に優れているものなのである。

藤川は患者に呼び止められる。

「先生、俺の脚は脚は大丈夫ですか・・・」

藤川はシートをめくった。脚はなかった。

藤川は優しく言った。

「大丈夫ですよ」

他に言うことはないのだ。

緋山は熱傷患者を見た。即座に瀕死であることが察せられる。

瀕死の男が言う。「妻が・・・妻がいるんです」

そこへ男の妻(渋谷琴乃)が現れた。

「あなた・・・無事だったのね・・・」

「お前も・・・助かったのか・・・よかった・・・」

緋山の心の傷が悲鳴をあげる。

(無事じゃないよ・・・カテゴリーⅢの熱傷80%はお陀仏決定なんだよ・・・あんたのご主人はもうすぐ死ぬよ)

「お、奥さん・・・せ、説明させてください」

「どうしたの・・・早く手当てしてください」

「まもなく、喉が腫れて呼吸困難になるので挿管の必要があります・・・ただしそうなると会話はできません・・・」

「話なんて後でいくらでも・・・」

「ご主人はそのまま難しい感じになります」

「何よ・・・それ」

「最後の時間を奥様との意志の疎通につかうか・・・絶望的な治療に賭けるか・・・」

緋山は医師としてすべての言葉を言い切ることができない。

言葉が出てこないのだ。

冴島は気配を読んで助け舟を出す。

「奥様、どうなさいますか・・・」

「そんなの選べるわけないじゃない」

医師ではない冴島にはそれが限度だった。冴島は緋山に決断を促す。

「緋山先生・・・」

緋山は俯いた。

橘は教え子のピンチを察知した。

緋山の患者への挿管を開始する。同時に緋山を叱咤激励である。

「この状況で患者の家族に判断できるわけないだろう・・・それは俺たちの仕事だ」

緋山の傷心は悲鳴をあげる。

「でも、また間違えるかもしれないのです」

「お前は・・・何も間違ったことはしていない・・・ただ、結果が悪かっただけだ・・・逃げるな緋山、これは戦争なんだ・・・ここは戦場なんだよ・・・敵に背中を見せるんじゃない」

緋山は無言だった。

緋山の心の中はすでに焦土と化していたのである。

意識の片隅で緋山の敗北寸前を捉えている藍沢だったが、手を差し伸べる余裕はなかった。瀕死の患者は目の前に無数にいるのだ。

そこへ第三陣が到着する。白石と滅多に目撃できないフライトナース2号(男子)、3号(女子)である。

白石は医師である自分と・・・犠牲者の娘である自分との相克を感じていた。

(しっかりしろ・・・私・・・お父さんの娘じゃないか・・・)

白石は救急隊員に患者たちの待つ体育館に誘導された。

その目に飛び込んできたのは「遺体安置所」の文字だった。

父親があそこに冷たい骸になって横たわっている。そのイメージは鮮烈に白石を襲う。

「挿管しましょう・・・」目の前の患者に無心で処置をしようとする白石は動揺する心を抑えることができない。

治療と治療の隙間に白石の躊躇を藍沢は感じる。

「替わろう・・・」藍沢はワンタッチで挿管を終えた。

「集中するんだ・・・目の前の患者の命がお前の手に握られているんだぞ」

白石は崖っぷちで歯を食いしばる。

藤川はかって列車転覆事故の現場で顔見知りとなった救急隊員の細井に再会した。

短い間にたくましくなった細井の姿に藤川は鏡に映る自分の成長を見たような気分になる。患者の搬送のために救護所を飛び出していった細井は数分後に瀕死の重傷を負って戻ってくるのだった。

(なんてこった・・・)

ゾンビのように患者の治療を続ける緋山の前に熱傷患者の妻が再びやってくる。

「主人が・・・」

緋山は患者の前に立つ。それはもはや死者となっていた。救命処置を続ける救命隊員に緋山は告げる。

「もう・・・終わりにして・・・三時三十一分・・・ご臨終です」

緋山は時計に落とした視線をおそるおそるあげる。

夫を失った妻は緋山を睨んでいた。冷たい夫の仇を見る視線は緋山の心臓を直撃した。

緋山を救助するものはそこには一人もいなかった。

体育館に展示された無数の「友」という習字が虚しく佇むだけだ。

救急隊員「あの・・・3時13分では・・」

緋山「事故発生が2時50分・・・消防が到着して出動要請まで10分、第一陣到着まで10分、タッチ・アンド・ゴーで短縮された往復時間が15分、私が到着して患者を殺すまでが5分・・・どうしても3時半は過ぎるのよ」

藍沢は白石に「血にまみれた被害者の身体的特徴を申告する用紙」を渡した。

「これを書いて、警察か消防に渡すんだ」

白石は藍沢の愛を感じた。それはか細い命綱だった。

用紙に記入して遺体安置所に向かう白石を瀕死の患者の焼け焦げた手が捉える。

白石は医師としての自分を急速に取り戻した。

ホワイトボードには患者のリストが作られていた。

救命処置と救命処置の間に医師たちは患者に対する進捗事項を記入する。

白石と藍沢はすれ違った。

「まだ提出していないのか」

「身長180センチ、肩に痣、足の爪が巻き爪・・・父のことを三つしか知らないの」

「俺なんて父親のことなんて一つも知らないよ」

「・・・」

その時、救助作業は次の段階に達した。

「墜落現場付近が鎮火しました・・・現場へのアプローチの許可が出ました」

現場に残された患者の治療はさらなる重傷者の発生を意味する。

橘は決断した。

「藍沢、白石、冴島・・・俺についてこい」

ドクター・ヘリ・チームはエースを全員投入したのだ。

現場に近付く藍沢は父親の姿を求める白石の心を読み取る。

「昔に戻ったみたいだ・・・最初に現場に出た時のダメなお前を思い出す・・・黒田先生に何を教わった・・・お前は医者だ・・・患者を救え」

「・・・わかった・・・・・・って・・・ええっ」

白石は信じられないものを見た。

傷だらけのまま前進基地で救護活動を続ける博文の姿を。

「お父さん・・・何してるの・・・どうして・・・負傷しているのに体育館に行かないのよ・・・」

「す、すまない・・・でも・・・父さん、医者だから」

白石の心は激しい感情に満たされ、何も考えられなくなった。

現場には無数の旗が散乱している。

・・・決断をして・・・引き金を引いたものは・・・後は奇跡を・・・

藍沢は残骸の影に負傷者を発見した。

「大丈夫ですか・・・」

「ほっといてくれ・・・オレは子供を残して逃げ出してきたんだ・・・ひどい父親なんだよ」

呆然と藍沢は未だ燻り続ける機体主要部を見つめた。

救護所に残された緋山は呼吸困難に陥った子供の患者を前に立ちすくむ。側では患者の母親(中村綾)が泣き喚く。

(ここは・・・どこ・・・私は・・・だれ・・・)

緋山の心は彷徨いどこか遠くへ旅立っている。

容赦のない時は過ぎていく。

専門医「残り時間・・・五分をきりました・・・やれそうですか」

西条「やれそうって・・・患者の頭にドリルで穴あけて・・・メスを入れてるんだ・・・やるしかないじゃないか・・・あんたそれでも医者かっ」

黒田「・・・西条」

残り時間。10・9・8・7・6・5・4・3・2・1・・・0。

・・・奇跡を祈るだけだ

関連するキッドのブログ『第9話のレビュー

春雨に濡れそぼる天使テンメイ様のレビュー(中辛)

Hcinhawaii0630 ごっこガーデン。愛と哀しみの墜落現場セット。エリカレーはやっぱりチキンカレー。じいや、今夜は絶対絶対絶対カレーでお願いしまスー。困ったときの神頼み、多神教の我が国はいざとなったら数で勝負でしゅよ~。う~ん。サード・シーズンは黒田体制なの・・・田所先生にも絶対絶対絶対いてほしい・・・。単発シリーズでドクター・コトー緋山篇とかやるときも相談相手として必要なのでスー。あの事故で助かった人は墜落寸前に機内でぴょんと飛び上がって着地したのでしゅか~。来週のお彼岸命日墓参りには・・・あの人との和解も予感されましゅね・・・カレーで結ばれた父子になるのでしゅか~お気楽命日の墓参りの有給は早めに申請してほしいよね。エリカはどういう靴をはいてるの?・・・本当に墜落事故が起きて自粛なんてことにならなくて関係者一同ホッとしているよね・・・次のシーズン、これ以上の事故ってあるのかなあ・・・mariやはり本命は白石ですねえ・・・でもフライトナースとフライトドクターの方が関係は長続きしそうだし・・・ちょっと迷います・・・とにかく来週は30分拡大・・・このまま春も延長戦に突入すればいいのに・・・まこ黄色のお方が赤に、赤のお方がどんどん増える・・・今日もよろしくとりあえずトリアージ・・・アタック・チャンスはまだでしゅか~、時間よとまれとお祈りしましゅ~。田所再起動計画スタートでしゅ~。チャ~ラチャラララチャ~ン。藍沢、白石のツートップがパパのせいでめそめそ状態に・・・どっこいパパは不死身さんでしゅた~。でもケガしているし・・・安心させておいてドンかも~。じいや~、まこはかまぼこカレーにしてもらいましゅ~ikasama4書き損じたら消しゴムで消す・・・わけにはいかない人生の筆使い・・・。予告編のフェローたちは白い世界に去って行くようですが・・・まさか全員死亡エンドじゃないでしょうね。見事な旗折どんでん返しに騙された今回・・・すこし猜疑心強めです。あたかも患者の家族をもう絶対信じない緋山の如し藍沢、緋山の男性フェローはもう一人前だけど・・・女性陣は苦難の連続・・・がんばれ~・・・そして第三シーズンを期待したいのですくう白石は医師としてできなく・・・人として現場に入った・・・でも奇跡は待っていたのですねえ・・・白石家の運気盛んの模様です。この調子で末期ガンも治癒か・・・それはないか・・・事故現場と手術室が交錯し・・・もう心臓に悪い展開の連続・・・じっと見守る黒田先生・・・何か奥の手を隠してるといいなあ・・・お願いだよ~みのむし遅刻ですが私の心はすっかり春模様・・・春ドラマもよろしく・・・るるる

水曜日に見る予定のテレビ『曲げられない女』(日本テレビ)

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2010年3月15日 (月)

おかえり(堀北真希)ただいま(櫻井翔)昭和カバチ節・死闘篇(木南晴夏)

櫻井翔・昭和57年生まれ、堀北真希・昭和63年生まれ、木南晴夏・昭和60年生まれである。

ちなみに昭和天皇がまだ存命だったら今年は昭和85年だ。

昭和は遠くなりつつありますが、どっこい生きているといえるでしょう。

重森行政書士(遠藤憲一)「俺たちを誰だと思っているんだ。生れた時には携帯電話もパソコンも高嶺の花、アナログの印もゆとり世代も知らない・・・昭和の人間なんだよ」

まあ、昭和万歳です。

で、『特上カバチ!!・第9話』(TBSテレビ100314PM9~)原作・田島隆(他)、脚本・西荻弓絵、演出・韓哲を見た。どんな時代になっても詐欺にひっかかる人間がいるので詐欺罪が成立する。マルチ商法とか投資詐欺とか・・・どうしてどうして騙される人間がいつまでもいつまでもいるのか不思議である。

セクハラと恋愛感情のもつれの差異が理解できない田村(櫻井)は悩める相談者に対するボランティア活動に失敗。責任をとって大野組(組長・中村雅俊)に盃を返す。

田村を弟分としていた住吉(大野組系住吉組・堀北)は「あたしが親分にワビを入れるから考え直せ」と諭すが田村は拒否して食堂に就職する。

タマネギが目にしみる日々を送っていた田村だったが、世話になっている大家夫婦(渡辺いっけい・田丸麻紀)の店子で天涯孤独の老女・文子(大森暁美)が投資詐欺にあったことを知り、一肌脱ぐ決心をしたのだった。

田村「ばあさん・・・どうやって一千万円もためたんだ」

文子「たばこをやめたら一日300円、十日で3000円、一月で一万円、一年で12万円。十年で120万円、100年で1200万円だよ・・・人間その気になったら一千万円くらいすぐたまる・・・」

田村「・・・ボランティアばかりで事あるごとに自腹切ってると・・・そうもいかねえけどな」

文子「・・・バカにつける薬はないねえ」

さっそく、ホステスあがりの詐欺の女王で「私にお金を預けなさい」の著者・大河内(江波杏子)の経営するレアメタル投資詐欺会社に乗り込む田村。

しかし、幹部の金好(杉村蝉之介)と若手の銭鳥(田中幸太郎)に嵌められて無実の罪で逮捕されてしまうのだった。

内通している刑事のタレコミで事態を知った大野組若衆頭の重森は大野組長に直訴する。

「不出来な野郎でも子分は子分でさ・・・見捨てておけませんぜ」

「田村は破門にしたわけじゃない・・・盃は預かってるのよ・・・後の始末をどうしようとおめえたちの勝手だぜ」

証拠の残らぬあうんの呼吸で大野組長の気持ちをくみとり、舎弟の栄田(高橋克実)や客分の住吉組長とともに拘留中の田村に接見する重森だった。

「お前は・・・仁義をわきまえた男だ・・・渡世の義理はしっかり果たせよ」

「筋の通らねえことはしたくねえんだよ・・・あっしは・・・」

「馬鹿野郎、目先の小事にこだわってたら美しいお月さんを見損なうぜ・・・」

「兄貴・・・」

大野の愛人で弁護士の検備沢の姐さん(浅野ゆう子)に身請けされた田村は住吉組長とともに大河内組に殴りこみをかけるのだった。

「覚悟はいいかい」

「こんなおいらのために・・・すまねえ」

「野暮はいいっこなしだよ・・・きっちりカタをつけな」

「やっちゃる・・・大河内の首とったる」

田村は大河内の悪事を暴き、警察に売ったのであった。

こうして、町には平和が戻ったのだった。満月の下、住吉組長はスキップである。

大野組長は田村に盃を渡す。

「ほれ・・・お前の盃は戻すぜ・・・今度は下手を打つなよ。組の代紋に泥を塗るような真似しやがったら、今度は俺がお前をたたっきる」

「・・・大野の親分・・・」

田村を見つめる住吉の目にもキラリと光るホの字が浮かぶのだった。

「まったく・・・世話のやける弟分だよ・・・」

「・・・住吉の姉御・・・」

しかし、黒幕(竜雷太)の登場で仁義なき戦いはついにクライマックスを迎えるのだった。

「何者なんだい・・・あいつは」

「・・・あっしの実の親なんでさ・・・」

「ええーっ」

驚愕する一同だった。

関連するキッドのブログ『第8話のレビュー

火曜日に見る予定のテレビ『泣かないと決めた日』『まっすぐな男』(フジテレビ)『相武紗季の霧の旗』(日本テレビ)

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2010年3月14日 (日)

尊礼拝見仕り候、私撃剣家故に事情迂闊、何事も存じず(坂本龍馬)

藩とは国である。たとえば土佐藩ならば土佐の国と云う。

当時の日本は大小無数の国家の連合体で日本国というものは幻想でしかなかった。

その連合体を実質的に統治するのが江戸幕府である。

幕府の首長は征夷大将軍である。その役職は京都朝廷に承認されている。

君臨すれど統治せずは蘇我氏、藤原氏、平家、源氏、足利氏、織田家、豊臣氏、徳川家と実力者に政治を委ねる皇室の伝統である。

それは、薩長、陸海軍、米国、日本国国民と統治者を変遷させながら現代に至っている。

その権威の意味は「血統」である。血筋には競争がないというのが前提だ・・・もちろん、血で血を洗うお家騒動はあります。天皇家が「争い」を好まないというのは本質的な問題なのである。

一方、現実の世界では個々の欲望に基づいた紛争があり、それを解決する実力が求められる。

実力による安定のための調整が統治者に求められるのである。

日本にとって巨大帝国と感じられる清王朝を滅ぼしかねない凶悪な列強諸国の登場によって危機感をもった江戸幕府は統治する各藩(各国)の実力者に協力を求めた。

しかし、そのことは統治者としての幕府の弱体化をさらしてしまったのである。各藩はそれぞれの事情に応じて独自の動きを始め・・・もはやそれを制御することは不可能となっていた。

独自の尊王主義で主導権を握ろうとした水戸藩のエージェントは強権を発動して幕府の権威を復活させようとする大老井伊直弼に対抗するべく全国に散った。

土佐には住谷寅之助らが水戸国過激派密使としてやってくる。安政五年十一月(1858年末)のことである。これに土佐国過激派の代表として密会したのが坂本龍馬だった。土佐国では尊王派と佐幕派がまだ未分化であり過激派連合は不調に終った。

やがて、水戸国過激派は安政七年三月(1860年春)・・・桜田門外で井伊直弼を襲撃して暗殺するというテロルを断行する。

テロルとは実力主義の仇花である。幕末の下克上はこの暴挙によって日本各国の若者たちを熱狂の渦に巻き込んでいく。

で、『龍馬伝・第11回』(NHK総合100314PM8~)脚本・福田靖、演出・渡辺一貴を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はファン驚愕のど迫力吉田東洋様イラスト絶賛描き下ろしでございます。これは・・・シビレます。仮面ライダーのラスボス級の威圧感です。歴代吉田東洋の中で最も実像に近い感性ですな。とりあえずかっこいい。酸いも甘いも知るものの風格。人物を見抜く審美眼。そしてあくまでも自己陶酔。上に立つものの孤独と、下衆が常に眼中にない尊大さ。天才仕置き家老の面目躍如でございますねえ。弥太郎がこじつけたところでニヤリ。龍馬が本音を隠したところでニヤリ。親分です。吉田の親分さんです。そして、突如として上からも下からもモテモテの龍馬が・・・窮屈になっていく超展開。実にファンタジーです。弥太郎妹のデカピンクも龍馬の姪の紙魚子も馴染んできましたーっ。・・・おねだりかっ。蝉の抜け殻・・・身はここに・・・やれそうやれそう・・・でございまする。

Ryoma186001 将軍家茂を仕立てあげた大老・井伊直弼は桜田門外で凶刃に倒れ、幕府による日本統一・開国路線は暗礁に乗り上げる。井伊直弼自身が蘭学嫌いであり、血統主義を重んじ、尊皇攘夷思想を窺わせているのにこれを水戸の尊王攘夷主義者が倒していることに・・・結局はこの事件が将軍後継者争いの不始末に過ぎなかったことが物語られるのである。安政の大獄による容赦のない弾圧は反動として大老暗殺という暴力の極みを呼寄せ、それを未然に阻止することができなかった幕藩体制はその権威を根底から揺るがされる。これ以後、幕末はテロルの嵐が吹き荒れてついには戊辰戦争という内戦に突入していく。土佐藩では謹慎中だった前藩主・山内容堂が復権し、吉田東洋が開国貿易を目指し、実力主義の人材抜擢を進めていく。これを快く思わない鎖国密貿易主義者たちは土佐藩開国以来続く、山内政権と長宗我部旧臣との軋轢を利用し藩内に派閥抗争の種を蒔いていく。もちろん、それは暗躍する公儀隠密による工作に影響されている。

その中で・・・文久元年三月(1861年春)上士・鬼山田広衛が郷士を斬殺、殺された郷士の兄・池田寅之進に鬼山田が斬殺されるという井口村刃傷事件が勃発する。

やがて保守派の家老グループに踊らされ、武市半平太は土佐勤皇党という舞を始めるのである。躍らせたつもりが踊らさせ・・・武市ととりまきの郷士たちはとりかえしのつかない道を歩み始めるのだった。

岩崎弥太郎は吉田東洋の御用掛り(経済顧問)として長崎に事情調査の旅へ出ている。

開国とは詰まるところ公式の自由貿易の始まりである。幕府の唯一の貿易港として伝統を持つ長崎の事情を知ることは開国派にとって重要なことだった。鎖国下における密貿易以上の儲けが出なければ開国政策そのものが失敗となるのである。

米国のスパイとなったジョン・万次郎は長崎で岩崎のような立場のものの水先案内人を勤めていたのである。

弥太郎は万次郎の握っている対外貿易コネクションを知るために公金を湯水のように使っていた。

万次郎の長崎における屋敷は洋館だった。

ソファの上に胡坐をかいた弥太郎はグラスに注がれた洋酒をぐびりと飲む。

「結局のところ・・・日本は身包みはがされることになるのじゃないろうか」

弥太郎はつい本音を口にする。

万次郎はニヤリと笑った。

「何もかも・・・神の思し召しですよ・・・岩崎様・・・ごらんなさい・・・」

万次郎は部屋の隅で立っている洋装の大男を示した。

赤銅色の肌を持つが顔立ちは西洋人ではなく・・・土佐の漁師のようでもある。

「彼はネイティブ・アメリカ人です。かの国ではインディアンと呼ばれる原住民なのです。名前はチーフテン・ジェロニモ。私の護衛役をつとめていますが・・・彼は本来なら偉大なる部族の御曹司なのです。しかし、西洋人にすべてを奪われ、今ではこうして異国の地で私のようなものの従者をしています」

弥太郎は気配を殺して立っている大男に忍びの気配を感じている。

「彼のトマホークは飛んでいるコンドルも打ち落とします・・・しかし、西洋人の持つ武器にも知恵にも彼らの部族は歯がたたなかった・・・国ごと奪い取られたのです」

「しかし・・・土佐の国のサムライはそう簡単には参らんきに・・・」

「そうですよ・・・私はそのためにこの国に帰ってきたのです・・・大八嶋(日本)には素晴らしい可能性があると信じています」

「しかし・・・万次郎さんはメリケンの走狗じゃろう?」

「岩崎様・・・商売はお互いに利があるからこそ・・・成立するのです・・・もちろん、商売敵の関係はあります。しかし、米国が英国やロシアを出し抜こうとするように、土佐も幕府や薩摩を出し抜こうとすればよいのです・・・」

「なるほど・・・漁夫の利はいつでもあるちゅうことかい」

「そうですよ・・・そこに魚が泳いでいる限りね」

「この酒は・・・きついのう」

「ウイスキーというのですよ。西部の男はワインよりバーボンです」

万次郎は葉巻を取り出すと・・・一服した。

「チーフ・・・君もやりたまえ・・・」

大男は無表情のままキセルを取り出した。

「彼は和風のキセルがお気に入りです」

「・・・なぜかの・・・」

「懐かしい味がするそうです・・・」

インディアンは紫煙を吐いた。

「さあ・・・そろそろ色町に繰り出すとしましょうか・・・今夜は清国の商人を紹介しますよ・・・この町で商売するにはかかせない顔役の一人です」

弥太郎は懐具合を心配しながら立ちあがった。湯水のように使った軍師金はすでに枯渇し始めていた。

土佐の高知の武市道場には龍馬が訪れていた。

武市瑞山は何度目かの説得を試みる。

「龍馬よ・・・なぜ、わしの言うことがわからんのか・・・」

「瑞山先生こそ、どうしてどうしてわからず屋じゃきに」

「これからの時代は京都の朝廷を中心に政治が動いていくじゃ・・・そのためには土佐が勤皇でまとまらんとならん」

「それがわからん・・・京都は京都、土佐は土佐じゃろう・・・」

「これからは大八嶋は一致団結して異国と戦う必要があるがじゃ・・・その旗印は幕府でなくて朝廷ぜよ・・・」

「それは吉田様も少林塾で申しておったきに」

「龍馬・・・御主・・・少林塾に行きよるがか」

「ああ・・・あそこは無礼講じゃきに・・・」

「そこが・・・いかん・・・吉田様はお上をないがしろにしちゅう・・・」

「何をいうがか・・・上士も郷士もない世を作るちゅうのが瑞山先生の理想じゃろうが」

「吠たえるな・・・上に立つものにはそれなりに格式が必要なのじゃ・・・たとえば・・・以蔵に大事をまかせられるか・・・」

「そんなもの・・・やらせてみんと分らんきに・・・人は器によって形が変わる」

「龍馬・・・ほんに・・・御主はおめでたいわ・・・」

二人が口論を重ねていた頃・・・鎖国派の郷士と開国派の上士が口論の末に抜刀していた。

上士は鬼山田と畏れられる一刀流の使い手である。郷士は斬られた。

郷士の兄は池田寅之進である。忍びだった。

死体を引き取りにきた寅之進に鬼山田はからむ。

「なんじゃ・・・不服か・・・」

「身内を斬られて不服のないものなどありましょうか・・・」

「ふっ・・・文句があるなら・・・相手をするぞ・・・御主の弟を切った血糊もまだ乾いておらぬわ・・・手入れをするにも二度手間は面倒じゃ」

鬼山田は酒乱の気があった。

寅之進は抜刀した。永福寺門前の空き地である。

鬼山田は狂気を宿した目で寅之進の拙い構えを見る。

嘲笑を浮かべながら・・・鬼山田も大刀を抜く。そのまま、無造作に間合いをつめる。

鬼山田が前に出、寅之進が後に退く。

そのまま、二人はするすると空き地を横切っていく。

ドンと寅之進は背後の銀杏の大木に退路を断たれた。

寅之進の顔に恐怖の色が浮かぶ。

鬼山田は口元に残忍な笑みを浮かべる。

「死ねや」

鬼山田の一振りで寅之進は正面から一刀両断された。その身は真っ二つに裂ける。

しかし・・・その刹那、鬼山田の目は驚愕に見開かれる。

「なんじゃ・・・」

渾身の一撃はまるで手ごたえがなかった。噴出するはずの血しぶきもない。

寅之進の身体には中身がなかった。空を斬った鬼山田は姿勢を崩した。

「忍法・空蝉の術・・・」

鬼山田はその声を聞いたとき、背中を袈裟懸けに切られていた。

いつの間にか鬼山田の背後に全裸の寅之進が立っていた。その刀はすでに振り下ろされている。

鬼山田は即死していた。寅之進の皮を下敷きにして倒れ伏す。

仇の死体を見下ろして寅之進は青ざめた顔で幽鬼のように小唄を歌いだす。

「夏の名残の・・・人影を・・・もしやと思う・・・恋の欲・・・蝉の抜け殻・・・身はここに・・・」

土佐にも狂気の季節が訪れていた。

関連するキッドのブログ『第10話のレビュー

月曜日に見る予定のテレビ『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命2nd Season』(フジテレビ)『ハンチョウ』(TBSテレビ)

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2010年3月13日 (土)

殿方は怪奇趣味の女より淑女が好きなのですか(大政絢)愚問七変化(亀梨和也)

何が残念かと言えば、なんでなんちゃって高校生で押し切ってしまわなかったのか・・・ということだ。

だってROOKIESだってあのメンバーで可能だったのである。

亀梨和也だって高校生だっと言い切れば高校生なのである。

そうすれば・・・彼らの「幼い悩み」ももっと心に沁みるだろうし、蘭丸が人妻キラーであることも超現実的な面白さがあったのである。

高校生なのに下宿生活をしなければならない・・・それぞれの家庭の事情もクリアである。

どうしても加藤清史郎をキャスティングしたければ雪之丞の年の離れた弟ぐらいでよかったのだ。

絶対にアレンジ・ミスなのである。要するに篠崎絵里子と石井康晴という脚本・演出コンビは作品の核心を見誤ったのだと思う。

ま・・・この局のドラマはもうずーっと見誤って・・・1年に1~2回くらいしかヒットを飛ばせないわけだが。

ふりかえってみよう・・・「華麗なる一族」(2007)・・・「ROOKIES」(2008)・・・「流星の絆」(2008)・・・「仁」(2009)・・・。

ほらね。ま、それで充分だと思うならそれはそれで・・・。

で、『ヤマトナデシコ七変化♥・第9回』(TBSテレビ100312PM10~)原作・はやかわともこ、脚本・篠崎絵里子、演出・川嶋龍太郎を見た。たとえば恭平(亀梨)のストーカーの一人、まり(星野亜希)だって制服着せれば女子高校生でいいじゃないか・・・と思うのだな。それをAround30女の悩みなどという所帯じみた話にするので作品の持つお耽美な魅力がどんどん色褪せるのだ。ゲロゲロっになってしまうのである。

そんなの・・・恥ずかしい・・・かもしれないが・・・どうせ、なんでも幽霊のせいにして、平気で超常現象を巻き起こすのである・・・なんちゃって高校生で恥ずかしがってるレベルじゃないだろう。

・・・というわけで、ついに明らかになった不安神経症あるいはパニック障害を発症していた恭平の母(麻生祐未)・・・その発症理由が・・・恭平が美しすぎることによって日々の生活が困難になったから・・・ではどうしても納得できないらしく、嫁姑問題などを後付けである。

・・・どうしても所帯じみた話にしないと気がすまないらしい。

そのために機能障害を起こしている母親の精神の薄弱性・脆弱性を恭平やスナコ(大政)、さらには武長(内博貴)や雪之丞(手越祐也)までが責める展開である。

治るものも治りません。

さらには頭のおかしくなった妻を抱え、疲労困憊している夫を事情も知らずに一斉攻撃です。

夫も鬱になるぞ・・・。

恭平は母に会いたい・・・母も恭平に会いたい・・・でも母親は恭平の顔を見ると頭がおかしくなってしまう・・・そういう病気なのです。

最後に仮面をかぶれば大丈夫というオチなのですから・・・もう少し途中をスマートに見せるべきだろう。

大体、せっかく大学生という設定にしているのだから、一人くらい不安神経症について勉強して解説のポジションにしておくべき・・・別に「頭がおかしくなるのは根性が足りないから」という展開でもいいが・・・それはさすがにお茶の間向けとして不勉強すぎるだろうがっ。

「息子が浮気の結果生れた」って疑うのは誰よりも夫のすることだしな。

なんでわざわざ・・・一人も登場しない親戚のせいにする必要があるのだ。

もしや・・・脚本家が・・・不安神経症を発症しているのか。

心の病は誰もがなる可能性のある病気だし、ガン患者がなりたくてガンになるとは限らないように不安神経症もなりたくてなるものではない。

その大前提からストーリーを構築してもらいたいと思う。

一方で、幼くして父親(長谷川初範)を失ったタケル(加藤)の父親ごっこを展開する蘭丸(宮尾俊太郎)・・・。

実年齢で考えると・・・。

長谷川初範(54)

高島礼子(45)

加藤清史郎(8)

である。清四郎が生れた時に夫(46)・妻(37)・・・晩年に出来た子供・・・そして最近死んだ父親という話である。

父親が死んでから子供が母親を守ってきたとか言われても・・・ものすごく違和感あります。

オリジナル設定を作ってもいいけれど・・・もう少しじっくり考えてもらいたい。

婚約者の珠緒(浅見れいな)を騙すために隠し子までいると言い張った蘭丸だが基本的には本当に鬼畜なのである。そんな鬼畜でまったくかまわないという上流社会の異常な感性が珠緒の面白いところだ。

それをまた・・・ものすごくトーン・ダウンさせた「どちらも結局ふつうの男の子・女の子」展開・・・ギャグってそういうものじゃないぞ。

その中で・・・やつあたりして好きな女の子に「もう忘れているかもしれないがスナコがレディーになったら下宿代がタダになるんだよ・・・だからホラー女はやめてくれ」という恭平。

「ありのままでいいっていったのに・・・ひろしくん・・・所詮・・・人間の男の子なんて信じた私がバカでした・・・」と泣き濡れるスナコ。

スナコのアイディアで母と再び逢うことができた恭平は「心にもないことを言ってごめんなさい」とスナコに謝る練習をしながら・・・スナコの部屋を訪れるが・・・スナコは不在なのであった。

「北海道に帰ったわよ」と美音(高島)に告げられた恭平は「そんなの・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」と走り出すのである。

武長と乃依(神戸蘭子)の恋の行方とかももうどうでもいい感じがします。・・・高校生だったらよかったのに・・・。

関連するキッドのブログ『第8話のレビュー

春風に汗だくの天使テンメイ様のレビュー(甘口)

Hcinhawaii0629 ごっこガーデン。魔法の恋のペアルックとキッチン・セット。エリむふふ・・・ペア・ルックはいつも乙女の心に忍び寄る甘い誘惑でスー。ちょっと恥ずかしいけれど・・・おそろい黒マントなら大丈夫・・・不気味なのでみんなが視線をそらしましゅので~。おそろいの黒ミサスタイルで悪魔召喚の儀式を行えば猟奇的な春の夜はおぼろおぼろに萌えあがるのでスー。見えない愛が伝わっていくのは透明人間出現の如くでしゅ・・・あらわれないのにあらわれるのは包帯しゅるる~なのでしゅ・・・モンスター的には透明人間とミイラ男はファッションがかぶっていましゅ・・・さあ・・・今度は愛の追いかけっこでスー・・・捕まえてごらんなさい・・・アハハオホホ・・・をやりますよ~お気楽女を追い払うためにかりそめの隠し子とか・・・自分に似てない息子を愛せない両親とか・・・話が困ったらすぐに心霊現象って・・・なんかカルト教団みたいなドラマだよね・・・mariうふふ・・・また遅刻しましたよ・・・ってこれは一体どういうこと~・・・まこひえ~・・・魔女っこエリちゃんのおしおき魔法でおしゃれな蝋燭立てにされてしまったのでしゅ~、このまま、じいや蝋燭が燃え尽きたら手があっちっちなことに・・・魔女っこまこちゃん大ピンチ~・・・次回最終回でしゅ~」

日曜日に見る予定のテレビ『龍馬伝』(NHK総合)『深・ケロロ軍曹』(テレビ東京)『堀北真希の特上カバチ!! 』(TBSテレビ)

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2010年3月12日 (金)

戦争に責任があるとしたらそれは関係者全員で負担すべきものだという不毛地帯(唐沢寿明)

すべての責任が自己にあると考える実存主義とあらゆる責任は組織が負うべきだとする無責任主義・・・。

結局、人々はその狭間を右往左往し、なんだかんだ言ってあれやこれやするのだと思う。

だから、ドラマは理不尽でいいわけだし、辻褄が合わない方が本来の姿だと言える。

誰もが「日本嫌いのナショナリストが仕掛ける鯨食文化への差別行為もEUによる水産資源囲い込みも韓国の自動車メーカーが仕掛ける反トヨタ工作も二人の交際に嫉妬して松山ケンイチのストーカーが小雪に対して行う陰湿なネット上のネガティブ・キャンペーンも中国が一党独裁に固執するのもイランや北朝鮮が熱核兵器を濃縮したかがるのも夏に行けばいいのに冬にシベリアに行くのも自分が悪い」と思えば鬱なのである。

どんな重圧にも耐えて爽快でいられる人はやはりどこかおかしいのだろうし、ささいなプレッシャーでどんよりと鬱になる人もどこか困ったものだ。

そういう困った人たちを一刀両断できたらどんなにいいだろう・・・と真剣に悩むことはまだしも・・・真剣を研ぎだすとちょっと危険なのである。

ああ、どこまでも続く狂者の密林。心の不毛地帯よ。それでも世界は美しい。

で、『不毛地帯・最終回』(フジテレビ100311PM10~)原作・山崎豊子、脚本・橋部敦子、演出・澤田鎌作を見た。いろいろあって太平洋戦争に敗北した大日本帝国は全世界の虜囚である日本として再出発する。全世界の敵である以上、基本的人権は保障されず、犯され嬲られ殺され放題である。

その奴隷の立場から世界最強国である米国に服従を誓うことで最下級市民の座を得た日本国民は全世界を敵に回して戦争したガッツを世界に見せ付ける。あっと言う間に世界第2位の経済大国となったのである。

しかし・・・それも今は昔の話だ。

この物語は冷戦という第三次世界大戦の前半戦、米ソの対立を利用して、日本、中国、韓国がいかに出世したかの物語である。

もちろん、北朝鮮はこの和からは疎外されたので口惜しくて日本の少女を誘拐したりしてしまうのだ。それは昭和52年(1977年)に起こる。

このドラマがその直前である昭和50年(1975年)あたりで幕引きを図るのは実に妙なのである。まあ、原作がそうだから・・・といえばそれまでですが。

いろいろと現実というフィクションに相似した登場人物が造形されており、田・・・田淵総理とか、デ・・・黄夫人とか、ロ・・・ラッキード社とか・・・しかし、所詮はどちらも絵空事であり、特にドラマでは主人公を劇的にするためになんでもありが許されて最終回ともなればなんでもありである。そのメチャクチャな雰囲気を期待して視聴率は過去最高の15.0%を記録しました。毎回、これくらいあればよかったのにね・・・。

まあ、結局、それぞれの絵空事を生きる人々にとってちゃちなドラマに付き合っているヒマなどないが、最初と最後くらい見てやるか・・・ということてす。

そういう意味でつかみは大切なのですな。最初が14.4%だと最後はこんなもんだということでしょう。

ドラマがほとんどヒトケタの視聴率を続ける昨今、平均視聴率11.6%は本当はまあまあですが「白い巨塔」や「華麗なる一族」と比較するとやや低い。しかし、それが「不毛地帯」の宿命です。

切腹するべきだった敗戦。自害するべきだった抑留生活。そして生き延びた賠償金代わりの強制労働。帰国した壹岐正(唐沢)は社会復帰を果たした時にすでに46才になっていた。それから16年間の歳月が過ぎ・・・壹岐はすでに60代である。

その16年間は里井副社長(岸部一徳)との派閥闘争の16年でもあり、東京商事鮫島(遠藤憲一)との宿命合戦の16年でもあり、妻(和久井映見)を亡くし娘(多部未華子)をおんぶし、愛人(小雪)を待たせ続けた16年だったのである。

壹岐は最後の最後まで無表情を貫くが・・・常に主人公として・・・最後は幸運で勝つのである。

鮫島「なんだかんだ言って・・・世の中、壹岐さんが勝つようにできてるんですよ・・・普通、あのタイミングで石油なんか出ないでしょ・・・勝ち逃げなんて許さない・・・笑って去って行くなんて・・・ずるいですよ」

壹岐(ニヤリ)

直子(多部)「結局・・・このドラマは父が私をおんぶするところがすべてだったと思うのです・・・後はつけたしのようなものじゃないですか・・・それなのに回想シーンにそれがないなんて・・・何かの陰謀だと思うのです」

大門(原田芳雄)「壹岐くん・・・わしの隠居場所はどこかの・・・」

壹岐「帝国陸軍参謀(高級官僚)時代に裏金の作り方は伝授されていますから、たっぷりと私腹を肥やしてあります、世界のリゾート地ならどこでも・・・」

大門「わしゃ・・・多くは望まん」

壹岐「では芦屋あたりでは・・・」

大門「マンションは好かん・・・」

壹岐「素晴らしいお屋敷をご用意します」

大門「カラオケはついてるのか・・・」

壹岐「もちろんです・・・」

大門「一緒に歌ってくれるのか・・・」

壹岐「地獄のハバロフスク経由で・・・お供します」

ズタ袋をかついで

ズタ袋をかついで

さあ・・・さまよいあるこうぜ・・・オレとな

女たちはみんな苦界に沈み

男たちはみんな落ちぶれ果てる

それがこの世の運命なのさ

ボクサーたちは皆

減量地獄でスリムになる

ボクサーたちは皆

殴り合うためにリングにいる

チャンピオンになるのはひとにぎり

王座にいられるのはひととき

それでもあしたを信じて

生きることはよろこび

ズタ袋をかついで

ズタ袋をかついで

さあ・・・さまよいあるこうぜ・・・オレとな

女たちはみんな苦界に沈み

男たちはみんな落ちぶれ果てる

それがこの世の運命なのさ

関連するキッドのブログ『第18話のレビュー

土曜日に見る予定のテレビ『咲くやこの花』『火の魚』(NHK総合)

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2010年3月11日 (木)

この世の誰にも優しくして誰より私に優しくして(菅野美穂)高くて硬いハードルが好き(塚本高史)

弁護士を増やしすぎると弁護士の希少価値がなくなり、弁護士がエリートでなくなってしまう。弁護士が少なすぎると弁護士を利用できる経済力が高めになってしまう。そのために弁護士たちは自らの増殖を好まないし、社会は増殖を促す。

「誰もが弁護士を利用できるように価格をダウンさせるべきなのです」と庶民の味方の弁護士が言えば「自らの首をしめるようなことができるか」と高級な弁護士が言う。

大きな社会と小さな社会と個人の三角関係の連鎖はこの世の醍醐味でございます。

水曜日のダンスは・・・。

「相棒」15.7%↗17.2%↘17.1%↗17.5%↗17.8%↘15.8%↗17.2%↗18.1%↗20.4%

「検事」*9.4%↘*5.6%↗*6.0%↗*6.4%↘*6.0%↘*5.1%↗*6.7%↘*5.2%↘*4.8%

「曲女」15.4%↘11.0%↗13.7%↘13.3%↘13.1%↗14.5%↘13.6%↗15.9%↗16.4%

さすがのステップでございます。まあ、「検事」は誰が考えても無謀だったので・・・案の定と言うしかないのですが、プロとプロの殺し合いは本当に容赦ないよね。

「相棒」のスペシャル・ゲストは水野美紀演ずる伊達香警視である。エリート意識によって警察官としての職分を見失い、それを恥じることによって職を失うという悲劇のヒロインである。独立騒動以後はいろいろと苦難しているのだが生まれついての美貌とそれを自分でコントロールしようとする戦いはある意味ベタなのである。健闘を讃えたい。ま、結局、世間は魅力あるものを捨て置かないのだ。

で、『曲げられない女・第9話』(日本テレビ100310PM10~)脚本・遊川和彦、演出・木内健人を見た。わが子よりも他人の子を優先する母親である前に教師の母と他人の命を救うために自分の命を投げ出した父を両親に持つ荻原早紀(菅野)は母親への憎しみと父親への怒りをオブラートに包み、すでに他界した両親に未だにマインド・コントロールされる33才のパラリーガル(弁護士補助者)である。未婚の母として妊娠中の身で10回目の司法試験に挑もうとしているのだ。

早紀の胎児の父親は坂本弁護士(塚本高史)である。早紀が大学四年生の時の一年生で三つ年上の早紀と九年間の交際を経て、四回に渡りプロポーズしているがその度にはぐらかされている。それは早紀が後輩のくせに先に弁護士になった坂本を深層心理で憎悪していることによるのだが坂本は愚か早紀も気付いていない。

坂本は優秀な助手である早紀を頼りにしているし、九年間交際を続けていることが明らかなように早紀を深く愛している。そして早紀を妊娠させるようなことをしているのである。

しかし、早紀は未だに学生気分なのであり、社会人として折り合いをつけようとする坂本の態度を初心を忘れた堕落として激しく糾弾する。しかし、ちょっと頭がおかしいので言っていることは常に支離滅裂なのである。

それでも坂本は社会的地位の優位性で早紀を抱擁しようと努力するが、早紀は自暴自棄の極みを抱えていて坂本の手にあまる暴走をくりかえすのだった。

そんな時、育児放棄、家事放棄の有閑マダムでありながら、専業主婦のエキスパートである姑を憎悪し、夫に無関心でありながら夫の浮気には驚愕する虚言癖のある凶悪な主婦・璃子と再会した早紀は自分の母親を尊敬しない生徒(璃子)がいることにショックを感じ、マインド・コントロールが緩んだことから自我を芽生えさせる。

さらに、エリート警察官僚でありながら、犯罪捜査に一切興味がなく、女色に溺れる破廉恥なプレイ・ボーイ藍田警視正(谷原章介)に誘惑されるが一切興味を示さなかったために逆に藍田の闘志に火をつけるのだった。

三十代を目前に仕事が一つのピークに達する坂本は早紀の公私に渡る支援を求めるが、弁護士になる目的に執着する早紀にはそれが負担となっていく。

やがて、ヒマをもてあました璃子と藍田と基本的にはかまってもらいたい早紀がトリオ・ザ・トモダチという不良グループを結成。愛する女のあまりのノイローゼぶりに坂本弁護士も本来の自分を見失っていくのである。

プロポーズの度に心をないがしろにされ、恋人である自分よりも(友人としての)藍田を優先され、金とヒマをもてあました藍田の容赦ない横恋慕になす術もない坂本は心が折れてついに秘書の横谷(能世あんな)の玉の輿アタックに捕獲されてしまうのだった。

冷静に考えると坂本は人間として何一つ間違ったことはしていないのだが、ただ一点、主人公の暴走に耐えかねて、愛を裏切ったことにより相手役のポジションを奪われてしまうのである。恐ろしいことだな。

そして、お茶の間はいつの時でも馬鹿で愚かで悪質な主人公の味方なのである。源頼朝よりも源義経なのである。

一方、悪友たちの導きで超自我からの支配を逃れた早紀は幼児、児童、生徒、学生、新社会人の精神的成長を半年で成し遂げ、今や、出産間近のシングル・マザーで10度目の司法試験挑戦を最後と決め、町の弁護士事務所の薄給のパラリーガルとして金とヒマに不自由しない悪友たちの支援を受けつつ、母の形見を坂本がプレゼントしてくれたオブジェに飾り、気分転換に坂本の教えてくれたマイケル・ジャクソンのダンスを踊り、坂本不在でもお腹の胎児の父親が坂本である安心感にひたり、実は坂本の愛に満ち満ちて充実の日々を送っているのである。

愛されていながら実際は疎外されているというこの超現実的な展開を悪夢のように感じながら、仕方なく、横谷との結婚に向けて流されていった坂本だが・・・早紀への愛、早紀のお腹に宿っている子供への愛・・・という自然の呼び声にはついに逆らえず、なんとか守ろうとしていた社会人としての矜持も崩壊、全てを投げ捨てて早紀の元へ舞い戻るのである。

早紀は坂本の決断を飛び上がるほど喜ぶのであるが・・・傲慢な超自我は復活を遂げており・・・自分の仕打ちはさておき、一度でも早紀を裏切った坂本を絶対に許さない態度で接するのである。

結婚式を抜け出した坂本に早紀はついに告白する。

「愛している愛している愛しているだけど・・・あなたは私を裏切った」

「だって・・・そりゃ・・・誰だってそうなるだろう・・・」

二人の愛を玩具にしてほぼ破壊したといえる元主婦の璃子と藍田元警視正は本当のデストロイヤー(破壊者)が誰かに気がつくのである。

璃子は有閑マダムでなくなったし、藍田はエリート官僚ではなくなった。そして・・・坂本も大手弁護士事務所のパートナーの座を失ったのである。

藍田「でも弁護士資格は残るよな」

璃子「資格って大事よね・・・早紀が資格にこだわるのってそういうことだもんね」

藍田「調理師めざすぞーっ」

璃子「介護士めざすぞーっ」

二人「お楽しみはそれからだーっ」

二人は根っからの悪なので顔なじみのドタバタを面白がって観察するのである。

とにかく・・・横谷に結婚式での花婿逃亡という事実上の三行半(絶縁状)をたたきつけた坂本は当然、花嫁から平手打ちなのである。まあ・・・結婚前から愛人に子供がいる男は花嫁にしてもかなり厄介なので・・・手打ちにするしかないのである。

「こんなことをしでかして・・・離婚弁護士を目指すつもりなの・・・」

(その手があったか・・・)と小躍りする坂本だった。坂本だって転んでもただではおきないしぶとさを持っている。なにしろあの調子っぱずれな早紀と九年間もダンスをしてきた男なのだ。

笑いたければ笑えばいいさ

泣きたきゃ泣けよ

やりたいときにやるんだろ

おっぱじめるか

しでかすか

とにかくワクワクしてんだよな

もうドキドキして我慢できない感じなんだろ

好きにしてくれよ

好きなようにボコボコにしてくれよ

こんなにがんじがらめじゃ

やられちゃうしかないじゃんか

なんだかんだとお楽しみはこれからだもの

これからなんだもの

さあ

楽しんでくれよ

再び、早紀を追いかけるゲームのスタートラインについた坂本弁護士を従えて、左手に嘘つきの家政婦、右手にストーカーのシェフ・・・お腹に愛しい男の子供、難関の論述試験を突破して、後は口述試験を残すばかりである。最終回にむけて準備万端の早紀だった。

雇用者の中島弁護士(平泉成)は「10年間の努力の成果を見せなさい」と二度言うのだった。

いざ、出陣である。しかし・・・母なる自然の呼び声は陣痛となって傍若無人な早紀に襲い掛かるのであった。

「なにくそ」と世界で一番頑なな甘えん坊早紀は歯をくいしばるのだ。

そうよ 私は

頭のおかしい女

自分のためなら

赤ん坊も泣かすわよ

だけど

世界がひどいことをするのは

絶対に許さない

それをしていいのは私だけ

私の許しがないことは

誰にもしてはいけないこと

私の許しが肝心よ

そうでなければ

誰であろうと

食うべからず

誰であろうと

楽しむべからず

汚職、怠慢、いじめに盗み

もってのほかの人身売買

すべてに私の許可をもとめるべき

なぜなら

私こそがこの世の支配者

私こそが神なのよ

ダンスよ 

わが名はダンス

ダンス、ダンス、ダンス・・・

ちなみに今回のMichael Jacksonはwanna be startin' somethin'である。来週はSmooth Criminalと予想。あのゴミ箱にゴミを投げ入れるのはジューク・ボックスにコインのパロディーだから・・・。

関連するキッドのブログ『第8話のレビュー

金曜日に見る予定のテレビ『ヤマトナデシコ七変化』(TBSテレビ)

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2010年3月10日 (水)

魔女が意地悪する日(榮倉奈々)ママにウソはつけない男(深田恭子)

タイトルというのは題名だから名前の一種である。名は体を現すので、同じ名前に支配されると同じ体になっていく。「まっすぐな男」と「曲げられない女」がまったく違う方向のドラマでありながらどことなく似てくるのがこの呪縛の不思議なのである。

すべてが情報である以上、情報の類似は相似を招くのだ。

本仮屋ユイカと本仮屋リイナが似ているのがその証拠だ・・・それは姉妹だからだろうがっ。

火曜日のドラマ対決は①「泣かないと決めた日」↗13.1% ②「まっすぐな男」↘*9.2%

・・・なんとなく・・・勝負あったか・・・。どんな勝負なのかは別として。

で、『泣かないと決めた日・第7話』(フジテレビ100309PM9~)脚本・渡辺志穂、演出・後藤庸介を見た。国家というフィクションがある。国家に住む人々を国民という。国民主権ならば国民は主人である。対して外国人は客人だ。何を持って国民とするかは国籍とするという考え方がある。確かに外国人に日本国籍はない。しかし、その中間に在日外国人がある。在日外国人は日本国内に住民登録している外国人である。彼らは客人であるのか、それとも主人の一種であるのか。現在の政府の答えの一つが「子供手当て」で示される。つまり、在日外国人と日本人を差別せず、保護者が国内にあればこれを支給するというのである。逆に居住地が外国であると日本国籍を持っていてもこれを支給しないという。そういう考え方を友愛というらしい。まったく理解できない。

しかし、汝の隣人を愛することは美しいことだろう。

隣人が愛してくれるとは限らないが。

一方で、「密約」について驚くべき報道がなされている。つまり、大袈裟ということである。そんな自明の理は今さら、騒ぐほどのことだろうか。世界最強の国家が駐屯している以上、世界最強の武器を装備していることなど当然ではないか。

新宿の都庁舎が実は巨大人型兵器であることくらい明らかな話である。

・・・いい加減にしておきなさいよ。

さて、会社というフィクションがある。昔は会社といえば正社員によって構成されているものだった。しかし、国際競争にさらされて合理化を重ねたあげく、非正社員が流動的に雇用されるのが常態となっている。社員の福利厚生は果たして友愛に基づくのだろうか。

正社員と非正社員に分離した会社で愛社精神が幻となるように国民と外国人を区別しない国家で愛国心は夢となるだろう。

愛されない会社や、愛されない国家で人々は本当に幸せになれるのだろうか・・・。

やがて、家族さえ愛さない社会が実現するような予感がいたします。

その尖兵たる西島(五十嵐隼士)である。自分を愛しているのかどうかも分らない狂気の目を持つ囚われた野獣だ。彼は葵井商事の事業としてのイベント「食品フェア」の社内企画コンペで新人社員の角田美樹(榮倉)に敗北を喫し、角田の補助者を命じられると精神が崩壊し、会社に叛旗を翻す。美樹に復讐するためには会社の不利益を承知で妨害工作に奔るのである。もちろん、裏面工作なのでその姿は陰湿になっていく。実に年功序列を破壊した組織の末路を暗示している。

西島に美樹の補助者となることをを命じたのは食品チームのリーダーである佐野(木村佳乃)である。

ここでイメージ戦略の一つとして葵井商事が社内の階級をネーミングで言い換えていることに言及しておく。名を変えることで印象操作による付加価値を高めることは情報戦略としては功罪がある。簡単に言うとなんとなくかっこいいのが功で、すごくわかりにくいのが罪である。

ここで主人公の美樹を底辺とした会社の上司の構成を考えてみる。

美樹(新入社員)→西島などの先輩社員→食品チームリーダー・佐野→食品部門統括マネージャー・桐野(藤木直人)→食品部門部長・梅沢(段田安則)

突然、梅沢部長が登場して、この会社には課長もいなければ係長もいないのである。

しかし、組織である以上、命令系統は必要である。

そうなると桐野は食品部門の課長となるのか、それとも副部長になるのだろうか。

梅沢部長の下には食品チームとワインチームが属している。これを食品課、ワイン課と考えると、チームリーダーは課長待遇となり、実は佐野課長である。

そうなると、桐野は部長補佐と言った立場なのかもしれない。

ただし、組織によっては本部と各部門の二重構造があるかもしれず、桐野は本部直属の部門管理者であるという場合もある。

その場合は桐野は部長の部下ではなくて、監察員ということになる。

時々、桐野はそういう態度に出ることがある。

単純なピラミッド型ではなく、組織工学に基づく可変形組織を導入しているのかもしれない。

しかし・・・そんなことは・・・ドラマの本筋とは無関係なのである。

イタリア食品部で梅沢部長、イタリア食品課で桐野課長、イタリア食品係で佐野係長でよかったのではないかと思うのであるな。

すると、31才の栗田琴美(紺野まひる)、29才の藤田(片瀬那奈)、27才の田沢(長谷川純)、26才の工藤(町田マリー)、25才の西島、22才の美樹と・・・イタリア食品係の構成員の先輩後輩関係が見えてくる。

平社員の上に主任待遇があるとすれば、栗田主任、藤田主任、田沢主任が考えられる。

田沢が平ならば実は最古参である。

ペアリングがあるとすれば、栗田主任の部下に田沢、西島がいて、藤田主任の下に工藤がいて美樹の教育係となるというトリオをもとに、田沢・西島ペア、工藤・美樹ペアが実行部隊の単位として考えられる。

時々、二つ年上の田沢を西島が同輩扱いするのだが・・・体育会系としての設定とは逸脱していたりする。

西島(25)と美樹(22)の穴を埋めるのがパワーハラスメントで退社した静香(23~24・柳沢なな)なのである。

こうしてみると、最後に凶悪さを爆発させる西島が新人いびりの核心であることはあきらかだろう。その心はかわいがられる新人社員はオレだけでたくさんだという末っ子根性なのである・・・おそろしや。

そして、社内で不正を働き、部下の目から隠蔽している梅沢部長は西島と結託している可能性は大きい。

美樹経由で社内不正に気がついた佐野を退職した派遣社員の白石(有坂来瞳)の情報を利用して静香に対するパワーハラスメントの責任問題で追い出しにかかる梅沢。

後輩社員への嫉妬のために会社の事業に対する破壊活動を開始する西島。

しかし、美樹を中心にした女性社員は社益のために団結する。

だが・・・苦境に追い込まれた佐野は手首を切り、妻の前で前の恋人のことをこれみよがしに気遣うお坊ちゃまくん仲原(要潤)のために美樹の完全粉砕を目指す魔女っ子・万里香(杏)は美樹を貶める社内不倫の種を蒔くのだった。

悪代官・梅沢、無法者・西島、悪女・万里香の極悪トリオに名奉行・桐野が正義の鉄槌を下す最終回が充分に妄想できます。

付記。美樹の妹・愛(川口春奈)は遠距離恋愛に失敗しました。「不自由な体になったのはお姉ちゃんのせいではないけれど神様は意地悪だって思う・・・愛はまだ16だから~」なのです。

関連するキッドのブログ『先週の火曜日のレビュー

で、『まっすぐな男・第9回』(フジテレビ100309PM10~)脚本・尾崎将也、演出・植田尚を見た。三角関係というのは通常、淫らなものである。特に、男女男や、女男女というものの中心にいるものの悦楽は容易に想像できるだろう。もちろん、自分の愛するものが他のものに抱いていたり抱かれていたりすることに無性に燃えるというさらなる変態的快楽もあります。

とにかく、ノーマルな常態でもう一人の相手との比較とか、双方に対する罪悪感とか、刹那的で秘密めいた関係とかにオンリー・ユー、オンリー・ミーでは味わえない気持ちの良さを感じるわけである。

で、普通の場合は自分はそれでよくても相手に同じことをされると絶対に認められない気持ちになり、三角関係は木っ端微塵になるわけだ。

そして一夫一婦制の抜群の安定感が勝利するのである。

しかし、こと夜の生活に限れば、浮気中の夫の妻に対する優しさとか・・・メリットがないわけではありません。

しかし、基本的に愛が信頼に基づくものだとすれば・・・そこに愛がないことは明白なのである。

しかし、結婚をゴールとする弱肉強食の恋愛バトルにおいてはある程度、食ったり食われたりの修羅場が展開して、それはそれで青春なのである。

できちゃった結婚はそうして生れるし、関係がこじれれば一家が惨殺されたり、幼児が虐待されるわけだ。

まあ・・・大人であればそんなことは常識である。

で、この話の主人公は三角関係の相手を抱きしめることはあっても相手を妊娠させるような行為は一切行っていないというのが前提である。

その上で・・・恋人の佳乃(貫地谷しほり)を裏切って、他人の子供を宿した鳴海(深田恭子)と結婚することを選択したので純情可憐だ・・・という話である。

そういう松嶋(佐藤隆太)のまっすぐな生き方を描いた話なのである。

まあ、大騒ぎしているので鳴海の本当の父親が松嶋ではないことは社宅を通じた社内の誰もが知っているので、今さら松嶋の母親に秘密にしようとしても無駄なのであるが・・・鳴海の夫の母親には本当の孫だと思ってわが子を可愛がってもらいたいという鳴海の願いを松嶋は「ママにウソなんかつけない」と完全拒否である。そして、その母親(原日出子)は血縁なんてどうでもいいの・・・というものわかりのよさを示すのである。

フィクションですが・・・あまりにもウソくせえっ。

夫婦に血縁がないというのは認識不足と言えるだろう。

特に子供が生れた時には夫婦には血縁が生じている。母の子は血縁者で、父の子は血縁者である。その両親は子によって血縁者なのである。

この認識が理解できないと・・・なぜ、子供にとって離婚が悪影響を及ぼすのか理解できないことになる。

この場合の悪とは信頼関係の崩壊を示す。

別れる夫婦は血縁者であり、保護対象である子供の信頼を裏切るわけである。

当然、そんな親を子供は信用できない。

だが、そういう信じられない現実は日常茶飯事でもあります。

一方、三角関係で、恋人を裏切り、新・恋人に乗り換えた人間はいくら永遠の愛を誓っても信じてもらえないのが普通です。

裏切りの前科者の愛の誓いに信頼性なしです。

しかし・・・犯罪をしても刑に服せば許されるだろうという考え方があります。

つまり、更生の問題です。つまり・・・そういうことには歳月がかかわってくるのです。

憐れな女・鳴海を殺して、決着のドラマだったら・・・最悪だなぁ・・・と考える今日この頃です。

わかってくれとはいわないがそんなに筋書きが悪いのかと叫びが聞こえてくる展開ですが・・・まあ、世間はそう言うと思うよと言うしかないのですな。

まあ・・・そうやって生れてきた子供が僕の出生の秘密を美化して何が悪いと言うかもしれませんけれど・・・子供に罪はない・・・ということでございます。

木曜日に見る予定のテレビ『グインサーガ』(NHK総合)『853』『エンゼルバンク』(テレビ朝日)『不毛地帯』(フジテレビ)『桜庭ななみのbump.y』(TBSテレビ)

ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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2010年3月 9日 (火)

体の傷なら簡単に縫合するけれど心の痛手もなんとか縫合するコード・ブルー(山下智久)心の折り方と曲げ方について(新垣結衣)

心が折れるのは痛々しいことだが、美しさと噛み合わせを求めて歯列矯正するように心を曲げることは時には歯がゆいことである。

自分の心をコントロールするように他人の心をコントロールすることができるかは「自他とはなにか」「心とはなにか」「コントロールとはなにか」を理解しなければ理解できない。

そういう認識の連鎖によって人々はなんとか心というものを共有しようとする。

しかし、すべては「たとえ」に過ぎず、心について理解することは相当に困難なことなのである。

たとえば「犯罪における加害者の責任能力の精神鑑定」という問題がある。

このような「専門家でも意見が分かれる分野」に「専門家でない人が対応する場合」はある意味、無理解のお笑いの宝庫である。

裁判員制度では法律の専門家でもなく精神医学の専門家でもない裁判員に精神鑑定の結果を説明する精神医学の専門家の苦境がしばしば見られるのである。

精神科医「つまり、加害者(被告)は統合失調症ではなく人格的な偏りがあるにすぎないので完全責任能力がございます」

裁判員A「・・・もう一度、その違いを説明してほしいのですが・・・」

精神科医「つまり、統合失調症は様々な感情が同時に存在するのですが、加害者の場合はその時々で感情が入れ替わっているので統合失調症にはあたらないのです」

裁判員A「・・・なるほど」

裁判員B(ささやくように)「・・・今のでわかりましたか?」

裁判員C(うつむいて)「・・・ちんぷんかんぷんです」

裁判長「・・・つまり、精神障害はあった可能性はあるとしてもはっきりとしたものではないということですか」

精神科医「まあ、当たらずとも遠からずです」

裁判員D「・・・・・・ちっ」

しかし、それは時には恐怖を感じさせる行為でもある。

たとえば「自殺する人の気持ちがわからない人」がそれを理解するのは「自分が自殺したくなった場合」だったりするのである。

人は「気持ちを理解すること」と「そういう気持ちになること」は別だと考える場合もあるが、悲しい話に共感して他人の悲劇に涙を流すように「自殺者の気持ちになれば自殺したくなる」可能性がないとはいいきれないのだ。

そのために「いじめによって自殺した人の気持ちがわからないのか」と問い詰めることは「その気持ちをわかって自殺しろ」というニュアンスを幾分か含んでいるという考え方もできる。

もちろん「想念」と「行動」の間にはいくつもの抑止装置があるのが心のメカニズムである。

心理的抵抗という言い方をしてもよい。

これがないと・・・机の上に花一輪の飾られた教室で「なぜあの子が天国に行ったのか・・・皆さんもよく考えてください」と教師が説諭した瞬間、いじめに参加した生徒全員が自殺した生徒が飛び降りた屋上にかけあがり、次々と飛び降り始めるという惨劇が展開されます。

教師「や、やめなさい・・・やめ、やめてーっ」

心というものが何かを正確に理解しているものは地球上に一人もいないかもしれない・・・しかし、そこに心があることはほぼ確実なのである。

もちろん、こういう関係者にとって無神経な論理展開をするキッドは「心がない人」とよく言われることを付け加えておく。

本題に入る前に恒例の週末の視聴率チェック。「宿命」↗*7.1%(異母兄妹とったな)、「ヤマトナデシコ七変化」↗*9.2%(麻生祐未とったな)、「サラ金2」↗*9.5%(渡り鳥展開とったな)、「悪い奴ほどよく眠る」10.1%(黒沢明はなんていうかな)、「ブラマン2」↘*7.4%(今日も秘密警察は無能)、「左目探偵」↗*8.6%(主人公は最終回まで死なないのが前提)、「やまない雨はない」14.1%(星野真里とったな)、「特上カバチ」↗*9.5%(木南晴夏とったな)、「龍馬伝」↘20.4%(ロミジュリ展開よどみなくも心中なしなので)、「ザ・シューター」12.6%(悪人全員まとめてぶっ殺し展開万歳)・・・ついでに「ハンチョウ」↘12.1%、「コードブルー2」↗16.6%・・・以上。

で、『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命 2nd Season・第9回』(フジテレビ100308PM9~)脚本・林宏司、演出・葉山浩樹を見た。お茶の間の危惧をよそに緋山の渾身の発言は患者の遺族である原告側弁護士の心を大きく揺さぶっていた。

弁護士「緋山医師の言っていることは本当ですか・・・」

遺族「・・・はい」

弁護士「・・・それではなんで・・・訴訟を・・・」

遺族「兄が・・・これは・・・医療過誤だと・・・言うので・・・」

弁護士「どうします・・・延命処置停止の同意について意思の疎通はなかったということで押し通しますか・・・」

遺族の兄「がるる・・・妹は・・・嘘を突き通せますかね」

弁護士「無理だと思います」

遺族の兄「がるる・・・・・・・・」

弁護士「提訴を取り下げるということでよろしいですね」

こうして・・・緋山(戸田恵梨香)の医師生命は虎口を脱した。緋山の無期限の医療行為停止処分(謹慎)は解かれ、緋山は現場に復帰する。しかし、ロッカーから自分の聴診器を取り上げることさえ、逡巡する緋山だった。

フェロー・ドクター(専門研修医)たちはすでにシニア・ドクター(指導医)抜きで手術をする段階に達している。

緋山を抜いた藍沢(山下)・白石(新垣)・藤川(浅利陽介)のトリオは施術中である。おそらく、執刀医・藍沢、前立ち(第一助手)・白石、助手(第二助手)・藤川という布陣である。

これを餅つきにたとえると、杵を持つ人・藍沢、もちを練る人・白石、臼を支える人・藤川ということになります・・・なぜ、もちつきにたとえるのだ。

気楽なポジションの藤川は開腹手術中に雑談するまでに成長しています。

藤川「謹慎とけてよかったじゃない・・・」

白石「でも・・・彼女・・・落ち込んでた」

藍沢「・・・」

早めのエレベーターでの元夫婦のコント。

元夫の橘(椎名桔平)「まあ、首の皮一枚つながったな」

元妻の三井(りょう)「でも・・・あの子、緊張してた・・・いつも通りじゃない」

元夫「なんだ・・・生意気で、無鉄砲で、自惚れ屋じゃなくなったのが不満か・・・」

元妻「・・・だって・・・あなたはそういうのがタイプでしょ・・・」

元夫「・・・言うようになったね」

元妻「・・・」

元夫「まあ・・・そういう女に戻れるように・・・指導してみるよ」

元妻(微笑)

医者は患者の傷を縫合するために様々な技術を習得する

針と糸で連続縫合し、皮内縫合し、結節縫合する

縫ったら結ぶ

リーフノット(本結)、外科結び、スリップノット(投げ縄結び)も練習だ

身体の傷を縫合するためには

外科的ステープラー(ホチキス)も使うし

外科用接着剤も使う

そうやって傷口を縫えばやがて自然治癒力がものを言う

しかし、心の傷はどこを縫えばいいのか

ハートブレイクにはお手上げの時もある

目の前で見えない傷口から見えない出血が続いていても

何もしてあげられないことが・・・

そっとしておいたり

声をかけたり

あるいは何かをさせてみたり

心の傷を癒す道具は見えない場合が多いのだ

もちろん・・・心を鎮める薬や心を覚醒させる薬はあるけれど

それが通じない場合もある

結局、人は時のすぎゆくままに・・・

心の傷を抱えて生きていくことになる

けれどもそれが生きるということなのだ

シングル・マザーの青山はキャリア・ウーマンである。

ビジネスでは責任ある立場についているが育児は田舎の祖母にまかせている。

一人息子はもう九歳だ。

最近、漸く、育児と仕事を両立するゆとりができた。

もうすぐ息子と暮らすのだ。

喜ばしさと不安が交錯する妙な気分がする。

そんなある日、自ら運転するバイクで転倒してしまった。

気がつくとバイクの下敷きになっている。

痛みはあるが・・・仕事ができないほどではない。

病院にも行かず、帰宅すると・・・翌日には足が腫れていた。

仕方ない・・・今日は病院に行くことにしよう。

青山は楽天家だった。

田上は妻も子もあるプロのアルペン・スキーヤーだった。

才能には恵まれているが運には恵まれていないと密かに思っている。

故障続きで満足に滑れたシーズンがないのである。

しかし・・・今年は好調だった。

近来まれに見る仕上がりである。

抜群の感触で雪面を感じ、風を感じた。

素晴らしいシーズンになりそうだ。

次の瞬間、バランスを失った身体はコースアウトし、目の前に大木が迫っていた。

衝突の激痛に目の前が暗くなる。

くそ・・・俺は・・・なんてついてないんだ・・・。

全国に100万人ほどいる喘息を含めた呼吸器系疾患の患者の一人、小児喘息の子供が発作を起こしていた。母親は二児の母である。上の子を病院に送り届けるが、下の子の世話もしなければならない。

どうか・・・喘息の発作が大事にいたりませんように・・・と母親は祈るが子供の苦しみは深まっていくのだった。

もうすぐ、もうすぐ病院だからね。

一仕事終えた三人のフェロー・ドクターはランチに向かう。藤川はホットドッグにケチャップをぬりたくる。

藍沢はサンドウィッチをとってドリンク・コーナーへ。白石はアイス・ティーを待っている。

「田所先生の血栓は流れて、もう話もできるらしいよ」

しかし、藤川の情報はいつでも不確かなのである。

救命センター田所部長(児玉清)は自らの動脈瘤の病状についてのカンファレンス(会議)に参加している。担当医師たちにとっては患者に対するインフォームド・コンセント(協議)である。しかし、田所は医師であり患者である。あくまでムント・テラピー(説明)を受けているだけだと考える。

付き添っている田所夫人(長内美那子)にとっては夫の部下たちがわが子のように見えている。

かって救命チームは田所を中心に、中堅の黒田(柳葉敏郎)、西条(杉本哲太)、そして若手の橘と三井で組まれていた。

右腕を切断して一線を離れた黒田を除き、西条、橘、三井が顔をそろえていた。

事態は深刻だった。

動脈瘤から跳んだ血栓は脳内に大きな爆弾として残っていた。

田所は平静を保とうとしていた。

「こりゃ・・・大きいな」

西条は答えた。

「最善の方法を検討してみます・・・」

田所夫人は大きな子供たちにチョコレートを与えた。妻の変わらぬ姿を夫はうらやましく感じるのだった。

「お前は・・・呑気でいいねえ・・・」

シングル・マザーの青山は翔北救命センターの外来受付に到着した。

アイス・コーヒーを受け取った藍沢は食事抜きで診察に向かう。

藤川も後を追うが・・・白石はランチを抜くのは健康によくないと思うのだった。

医者の不養生について白石は敏感になっているのである。

その時、轟木(遊井涼子)は叫ぶ。「ドクターヘリエンジンスタート」

今日の担当はシニア・ドクター橘、フェロー・ドクター緋山、フライト・ナース冴島(比嘉愛未)である。

緋山の心を知るものはすべての患者が凶器に見えている。橘も冴島も緋山を見る目に特別な色が浮かぶ。

(私は心配されている・・・)

緋山は久しぶりの実戦に高ぶる心を確かめる。

「だ、大丈夫です・・・わ、私は心配ありません」

緋山は宣言するが橘も冴島も充分、心配だった。

ヘリはとあるスキー場に飛び、全身打撲で出血ありのスキー選手田上にドクターたちを配達する。

田上は両側気胸を起しており、橘は現場での胸開手術を決断する。

左右両側を手術するために緋山も執刀する必要があった。狙いすましたような症例である。

緋山はメスを持つ手が震えるのを感じる。

橘はそれを感じつつ、命ずる。

「どうした・・・緋山・・・」

(できる・・・私にはできる)

緋山は切開を開始する。その刹那、患者が痙攣する。過剰に反応した緋山は・・・自分の腕を切ってしまうのだった。

(ち、ちがうもん・・・これはリストカットじゃないんだもん・・・)

つい、言い訳したくなる緋山だった。

冴島は手早く緋山の止血手当てをした。恋人の喪失以来・・・沈んでいた鬼軍曹復活の兆しである。

藤川は小児喘息の患者を担当。自らも喘息患者であった藤川の唯一の専門分野である。通常よりも迅速な処置の手際を発揮できるのだった。

容態が安定すると母親は発熱した次子の面倒を見るために患者を病院にまかせて帰宅するのだった。ちなみに担当ナースは園田(HILUMA)である。

一方、シングル・マザーの青山を担当したのは藍沢だった。担当ナースは辻(垣内彩未)である。緋山、冴島出動中で、白石食事中の間隙をつくつもりか・・・。

しかし、藍沢は一目で青山の病状を見抜くのだった。

「コンパートメント(筋区画)症候群です・・・緊急手術をしないと足を切断する虞があります・・・」

驚愕する青山だった。青山は打撲などによる出血で組織内圧が上昇し、腫脹の圧力によって組織の壊死を引き起こしているのだった。

フェロー・ドクターの三井、森本(勝村政信)も手術に加わり、藍沢執刀で血腫除去の手術開始である。手術は無事終了する。

「仕事のしすぎですよ・・・痛かったらすぐに病院に来てください」

藍沢が患者にかける声に剣呑な気配があるのを森本は察知する。もちろん、無口な藍沢が積極的に患者と意志の疎通をはかることは喜ばしいことだが、緋山事件の後だけに森本はバランスをとるために勤めて優しい声を患者にかけるのだった。

「傷跡もきれいに修復できるように手配しますから」

もちろん、結婚式目前で轟木と破局を迎えつつある森本はちょっと男まさりな患者にセクシーなものを感じているのである。

現地での処置を終えたスキーヤーの田上は救命センターに搬送される。

青山チームと田上チームは入れ替わりとなるが、三井は目ざとく、緋山の負傷を発見するのだった。

元妻「ちょっとどうしたのよ」

元夫「・・・処理中の事故だ・・・藍沢、そっちの処置がすんだら緋山の傷を縫合してやってくれ」

チーム全員の心配光線を浴びて緋山は逆に反骨精神のスイッチが入るのだった。

その時、田上が呻く。

「スキーは・・・スキーは続けられますか・・・」

森本は青山に対するのとは逆に高圧的になるのだった。

「骨折しているかもしれませんし、これからいろいろ検査しますから・・・大人しく寝ていてください」

田上は大人しく失神した。

青山は病室に移された。さりげなく冴島が藍沢のフォローに入っている。この辺りは橘・三井・青山が指導医として連携していることが窺われる。そしてフェロー・ドクターの司令塔は現場では藍沢、現場以外では白石であることも感じられるのである。

白石「藍沢先生・・・患者にちょっとナーバスだから注意して」

冴島「ラジャー」

なのである。

青山は即座に仕事を始めている。建設関係の中間管理職としてバリバリ仕事をしているイプなのである。緊急入院のために部下に指示することは盛り沢山なのである。

一息ついた青山は息子の写真を見る。

「息子さんですか・・・」

冴島は緊張を微塵も感じさせない口調で話しかける。

「三歳の時からはなればなれに暮らしているの」

冴島は藍沢の表情がこわばるのを視界の隅でとらえる。

(これは・・・)

詳しい事情は知らないが冴島は藍沢の過去について白石からそれとなく聞いているのである。育児放棄の母親は存在そのものが藍沢の傷口をなぶるのである。

(藍沢先生・・・ご機嫌ななめだわ・・・)

鎮痛剤の処方の指示して立ち去る藍沢を気遣う冴島は苦難を脱して一回り成長したスーパー・フライト・ナースとして戻ってきていた。

藍沢は緋山の傷を縫合する。

「きれいにやってよね」

緋山は口調だけは強く藍沢に対する。

「傷は浅い・・・しかし・・・まだ患者がこわいのか・・・」

緋山は唇をかみしめるのだった。

意識を回復した田上は饒舌になる。

「スキーヤーにはケガはつきものなんだよね・・・俺なんかケガばかりさ・・・でも運がいいからいつも助かってきた・・・」

付き添う緋山は思う。

(それって・・・運がいいって言うのか)

患者を与えられた緋山は低空飛行ながらマイ・ペースを取り戻し始めている。

食事を終えた白石が田上を引き継ぐ。白石は最近、患者の話を聞く技術が向上している。

「ケガをしても競技を続けるなんて勇気があるんですね」

白石は言いつつ、その言葉は緋山の負担になるかどうかを検証する。白石は情報の管理について覚醒しつつあるのだ。

一方で患者を煽てつつ、一方で傷心をかかえる緋山を気遣う。白石の頭脳は目まぐるしく回転するのだった。

「身体のケガはおそろしくないんだよね・・・こわいのは心が折れること」

おっと・・・そっちにきたか。こりゃ・・・微妙な話題だわ。心が折れかかっている緋山にとっていい刺激になるのか、傷を深めるのか。白石は動揺するが表情には表さない。

「大怪我をして・・・一年かけて復帰したことがあって・・・そりゃ・・・つらかったけど・・・アルペン・スキーは結局・・・恐怖心との戦いなんだよね・・・ほら・・・これが俺の勇気の証・・・」

田上は治療のために体内に入っていたボルトをペンダントにしていた。

田上の言葉を緋山がどう受け止めているか観察しつつ白石は患者の不調に気がつく。

「どうしました・・・」

「おかしい・・・手がしびれる」

田上は蓄積した身体の酷使のために脊柱間狭窄症を発症していた。神経が圧迫されしびれがでているのである。悪化すれば麻痺が出る場合もあり、つまり日常生活にそれほど支障はないがスポーツ選手としての生命は絶たれたのである。

橘から患者へのムント・テラピーを指示された緋山だったが・・・患者に対する恐怖心はそれを困難にする。

「白石・・・お願い・・・ムン・テラ・・・まかせるわ」

「緋山・・・」

白石は緋山の心の傷の深さを慮るのだった。

復活した冴島は青山の容態の不調にたちまち気がついた。すぐに藍沢に連絡をとる。

「会話が・・・おかしいんです」

葛藤を抱える藍沢も不調な患者に対応すれば自分を即座に取り戻すのだった。

仕事を優先する母親は消え、病気を抱える患者となって出現するのである。

「事故のこと・・・覚えてますか」

「え・・・あれ・・・おかしいな・・・気がつくと転がっていて・・・」

青山の応答に記憶障害の発生を感じた藍沢は頭部CTをオーダーするのだった。こうなるとこのドラマでは脳腫瘍確率は100%である。

脳外科医の西条は言い放つ。

「ドンときてピシャリだな・・・頭蓋底腫瘍だ・・・しかもハイリスクだぞ・・・こりゃ・・・」

ムン・テラ(説明)に対してインフォームド・コンセントは治療方針に対する医師の説明と患者の同意を含む。

藍沢は西条の立会いで青山に「脳腫瘍摘出手術への同意」を求める。

「リスクがあるってことですね」

藍沢は①右半身障害 ②意識障害 ③視力障害 ④眼球運動障害 ⑤眼瞼下垂 ⑥顔面感覚障害 ⑦手術後の痙攣発作 ⑧水頭症 ⑨下垂体の機能低下 ⑩手術中の出血によるショック・・・・手術による後遺症などのリスクのリストを提出する。

青山は気絶しそうになったが・・・耐えた。

藍沢はそこに母親としての患者の強さを見る。

藍沢は患者の子供から母親を奪うかもしれない医師のポジションになった。結果次第では藍沢と同じ境遇の子供が一人、出現するのである。

藍沢の心を蔽う霧はすみやかに晴れていくのだった。

医師の心を癒すのは患者だからである。

逃亡した緋山から田上を引き継いだ白石は指導を含むムン・テラを行うことにする。

田上はリハビリと称して階段から転げ落ちるほど錯乱しているが、なんとかなるだろうと白石は冷静に考える。

とにかく「スキーを続ければ最悪の場合、全身麻痺を引き起こし、寝たきりになること」を説明し、生活態度の改善を説得しなければならない。

「そうなってもかまわないならスキーを続けてください」とは医師としては言えないのである。

それを告げられた田上の絶望を思うと白石は身が震えるのだった。しかし・・・と白石は思う。私には奥の手がある。

選手生命終了を告げられた田上の心は即座に虚無の世界へ旅立つ。そこへ、田上の妻子が来院する。幼い娘は無邪気に父を心配するのだった。

白石は田上の妻と視線を交し合う。

白石には田上の妻の心が理解できる。絶望している家族を持っている同じ身の上である。

しかし・・・と白石は思う。大丈夫ですよ。あなたの夫はすべてを失うわけではない。

ただ・・・心の拠り所がなくなると感じているだけですから。

きっと心を入れ替えますよ。

患者にとってあなたたちの価値がスキーよりも下でない限り。

白石はすばやく作戦を組み立てた。まず・・・妻を説得してみよう。

しかし、田上の妻は夫のスキーヤーとしての将来に夫と同様に希望を持っていた。

「彼のあんなに絶望した顔は見たことありません・・・何とかならないのですか・・・」

この妻は使えないと即断する白石だった。こうなったら最後の手段を使うしかないのだった。無邪気な娘は父親の苦悩とは無縁で折り紙を折っている。あの折り紙のようにプロスキーヤーの見果てぬ夢を折りたたもう・・・と白石は決意する。

「娘に・・・ヒーローである俺を見せたいのです・・・何とかならないのですか・・・」

「退院後に・・・セカンド・オピニオン(別医師による診断)を仰いでみることもできますが・・・結果は同じだと思われます。この症例は珍しいものではないので・・・私も父親をヒーローだと思って生きて来ました。私の父は医者でたくさんの人々に慕われていましたし、そういう父親に憧れて・・・私が医者としてここに立っているみとも事実です。しかし、最近、父親は末期ガンであることがわかりました・・・そうなってみて・・・私が感じたことがあります。ヒーローでなくてもいい。ただ元気で長生きしてほしかった。さあ、今、あなたは娘さんにいいところを見せようとしてご自身の命を縮めますか・・・それとも末永く父親として娘さんの成長を見守ることを選びますか・・・選択の余地がない場合は別として・・・あなたをうらやましく思います。あなたにはチャンスがあるのです。どうか賢明な選択をしてください」

反論の余地がない演説に不運な名もないプロ・スキーヤーは圧倒されるのだった。

もちろん、それでも夢に殉じるのも人生だが・・・すでにスキー一筋ではなく、家庭を持っている男にとってスキー魂がポッキリ折れるのは必然なのである。

捨て身の攻撃で白石は勝利を治めたのである。

「わかりました・・・私はスキーに命を奉げる人生ではなく妻と子供とともに生きる人生を選択します。あなたは説得のチャンピオンだ・・・記念にこのボルト・ペンダントを差し上げます」

そんなものをもらっても困ると思った白石はペンダントを即座に田上の娘にプレゼントするのだった。

「いつか・・・あなたの決断を・・・娘さんに話してあげてください・・・」

田上は白石の配慮に感謝しつつ救命センターを後にするのである。すでに白石には名医の風格が漂い始めている。カエルの子はカエルなのである。

もちろん、田上が決心を翻す可能性はあるだろう。

しかし、それは白石の預り知らぬこと・・・白石は女神のように輝くが実は信じられないことにただの人間なのである。人間は神ではない。ただ自分の受け持ちエリアでベストを尽くせば充分なのだ。

三井は脱走兵回収のために緋山の前に現れた。

「・・・患者と距離を置け・・・患者にいれこみすぎるなって・・・橘先生に言われてたけど・・・逆らったあげくにこのザマですよ・・・私はどうすれば・・・橘先生みたいになれるのですか」

緋山は開き直った。

「あの人は・・・なりたくてああなったわけじゃないの・・・ああなるしかなかったのよ・・・それよりも緋山・・・気分転換に部長のお見舞いに行って来たら・・・部長の奥様が美味しいお菓子をくれるかもよ」

緋山はおいしいお菓子に釣られた。

三井は緋山を田所部長の包容力に委ねたのだった。

(私を癒してくれたのも・・・あの人ではなくて・・・部長だった・・・あの人はまだまだ役不足)

一足早く、お見舞いコントを展開する森本・轟木の破局ペアと梶操縦士(寺島進)だった。

田所「結婚式の準備は進んでますか」

轟木「別れ話は順調です・・・」

田所「新婚旅行はどちらですか・・・」

森本「地獄の一丁目です」

梶「お後がよろしいようで・・・」

病室でははしゃいで見せた三人だったが・・・実は深刻な田所部長の病状に気が重くなっているのだった。

そうとは知らず・・・病室を訪ねる緋山だった。

「私は・・・単位不足で・・・フェロー・ドクター卒業は無理なんでしょうか」

「いいじゃないですか・・・落ちこぼれても・・・私も落ちこぼれてドクター・コトーになりましたからね・・・でもその体験は無駄じゃなかったと思っています。満足な施設のない島でしたが私だけを頼ってくれる患者に不自由しませんでしたから。その患者たちに育ててもらって今、私は救命センターの部長なんてものにおさまっているんです。あなたには時間はたっぷりあります・・・どんなに遠回りしても・・・結局、あなたはいい医者になると思いますよ」

緋山は三井の思惑通りに少し癒され、田所夫人からはおいしいお菓子をもらえたのだった。

緋山とともに出動し、負傷した緋山を応急処置したかと思えば、藍沢担当の患者の病状を見抜き、完全復活を窺わせる冴島は仕上げに藤川担当の喘息患者をチェックする。

そこには帰宅した母親代わりに付き添う藤川がいた。

「オレは昔・・・喘息で・・・こうしてよく入院したんだ・・・目がさめると・・・ああ、違う天井だ・・・と妙に心細い気持ちになった。でも、おふくろがいつも側にいてくれたからすぐに安心できた・・・この子はお母さんが付き添えないんで・・・目が覚めるまでいてやろうと思うんだ・・・」

一瞬、冴島は藤川がエヴァンゲリオン初号機のパイロットのような美少年に見えたようだが・・・働きすぎて疲れているだけなのです。錯覚ですからーっ。

ま、すべての恋は錯覚にすぎないという考え方もあります。

シングル・マザー青山の病巣は強敵だった。

西条と藍沢の最強タッグをもってしても最善の結果は得られなったのである。

青山は半身不随の身となった。

左半身は麻痺して回復不能だった。青山はもしもの場合に備えて保険は充分に賭けていた。優秀なキャリア・ウーマンにとってリスクヘッジはお手のものだったのである。しかし、子供の世話をすることはもはや不可能だった。青山自身が障害者施設で他人の世話になるしかない身の上のなったのである。

「罰があたったのかもしれないわね」

すべての手配を終えた青山は母親と息子が面会に来るを待っていた。

「今さら・・・息子と暮らそうと思うなんて・・・ほったらかしにしておいて・・・虫がよすぎたわ・・・あなたは・・・お母さんとは同居なの・・・」

「母は六歳の時に故人になりました」

「そうなの・・・ごめんなさい」

「あなたは・・・どうして息子さんと暮らそうと思ったのですか」

「息子と暮らす時間なんて短いってふと思ったのよ・・・男の子は十八歳になったら家を出て行くもんでしょ・・・あの子はもう九歳・・・半分・・・一緒にいられなかった・・・だから・・・残りの半分・・・一緒に暮らしてみたかったんだ」

息子はやってきた・・・母と都会で一緒に暮らすことを夢見た少年は母が計画変更をしたことを伝えられ、失望を顔に現す。息子は母親に似て賢い子供だった。事態の深刻さを察知した。母親は動く方の手で息子に触れた。すべてを知っている母親の母親はいたたまれず、その場の幕を下ろした。

老いた母親と息子が去って行くのを病室の窓から青山は見送っていた。

青山は藍沢の孤独な魂に気がついていた。

「あなたも・・・お母さんにいろいろと聞いてみたいことがあるでしょうね」

「いえ・・・ただ一つ、母が子供と過ごす時間が短いと知っていたのかどうかは気になります・・・。あなたはそれを知っていた。そして・・・それを知りつつ・・・再び別れて暮らすことを選択した・・・すべては子供のために・・・あなたはいい母親です・・・いい母親だと思います」

青山は藍沢の慰めに心を癒された。お互いブルーな心を持つ身である。母のない子と、生きながら子を失った母なのだ。

青山は次にやってくる会社の人間のために化粧を始めた。しかし、半身が麻痺した手は自由に動かない。

藍沢は神の意志を感じた。この患者は緋山のために使わされたのだ。藍沢は緋山を呼び出した。

「大丈夫かしら・・・」と青山は問いかけた。

「外科医は手先が器用なんです」と藍沢は答えた。

「そう・・・ありがとう」と青山は緋山に微笑んだ。

その言葉が緋山を魂の牢獄からたちまち開放するのだった。

緋山は医師として患者に天使の微笑みを返した。

そして化粧する自由を失った患者に緋山は医師として化粧を施したのだ。

心の傷が本当にあるのかどうかわからない

しかし、人は誰にも見えない痛みを感じたとき

初めて、他人の心の傷を想像することができるのだ

だからきっと神は痛みをこの世に生み出したのだろう

人と人が心をわかちあうために

心は傷つきやすく作られているのかもしれない

西条は三井と橘を従えて田所夫妻にインフォームド・コンセントを行った。

西条の背後で緊張したまま似たもの元夫婦はひっそりと控えていた。

「明日・・・手術をしたいと思います・・・お話した通り、血栓の位置はかなり難しい場所にあります。大出血の可能性が高く、止血も困難です。そこで一度心臓を停めて血液の流れを絶つ・・・循環停止法にトライしたいと考えます・・・低体温による20分間のチャンスに賭けたいのです。それでも後遺症は90%以上の確率で残るとお考えください」

田所は無言だった。一心同体の田所夫人は夫に代わって尋ねた。

「西条先生は循環停止法のケースは何例くらい手がけられたのでしょう・・・成功率はどれくらいですか」

「失敗例も成功例もありません・・・初体験です」

一同は沈黙に包まれた。今回はオチに対してツッコミどころがありません。引きとしては完璧でございます。

関連するキッドのブログ『第8話のレビュー

全身筋肉痛に襲われる天使テンメイ様のレビュー(辛口)

Hcinhawaii0628_2 ごっこガーデン。生と死が交錯する通路。エリ緋山の身体の傷も縫えば、心の傷もふさいでしまう・・・藍沢P先生の魅力爆発なのでしゅ~。それにしても無鉄砲な女として橘先生のお墨付きの緋山ですが・・・身体の傷がどんどん増えていきます・・・傷だらけの女医さんでスー。でも無病息災の医者には患者の痛みは分りにくいので名医フラグは立っているのですyon!・・・どうかいいお医者さんになるまで長生きできますように・・・。いよいよシーズンのラストに向けて若手メンバーが復活を遂げたドクターヘリチーム。別れの時は迫ります・・・だけど・・・ルルル~明日はきっと・・・何かある~あしたはどっちだ・・・ジャジャジャンお気楽いやあ・・・つめこんだよね。このドラマ・・・一回見ただけだと流れを抑えるのも不可能みたいな感じに・・・もうその場その場を体験するしかないみたい・・・小坂由佳には何があったの・・・アキラの頃は天使だったのに・・・」mari辛いエピソードが続きますね・・・心にドシンと来ますよ・・・内容が重くてじいやも相当処理に苦しんだみたいですね~。今日の東京は雪・・・明日つもってるとすべって転んだりしないように気をつけてくださいねikasama4藤川に冴島が惚れたのかどうか、意見が分かれるところですね。緋山が患者の一言で癒されるのかどうかも微妙ですが・・・たった一言で傷つくこともあれば・・・たった一言で癒されることもある・・・そういうものかもしれません・・・心の傷は本当に人それぞれのものなのですねえくう半身不随になった母親は・・・子供と別れるしかないの・・・そんな切ないことが正しい選択なの・・・あのボルトのペンダント・・・幼児にはちょっと危険なのではないの・・・田所先生の手術は・・・もうやるしかないの・・・ああ・・・コード・ブルーは容赦ないのよね~・・・奇跡確率がこれほど低い医療ドラマは白い巨塔レベルだよ~まこ青山さんちの息子(渋谷武尊)は大きくなってたのでしゅ~・・・暴れん坊ママからもう二年以上たつのに・・・まこたちは今年も高校生でしゅか~・・・世界の謎でしゅね~。怪物くんの怪物メンバーはどうなるのでしょう・・・コードブルー2の後はアンナちゃんが永い眠りから目覚めるのでしょうか~・・・ドラマがヘビーすぎて雑談に逃避するのでしゅ~、田所先生のために一千億羽鶴を折りましゅ~三羽折ったのでじいや、あとヨロシク~

水曜日に見る予定のテレビ『曲げられない女』(日本テレビ)『相棒』(テレビ朝日)『赤かぶ検事京都篇』『新撰組ピースメーカー』(TBSテレビ)

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2010年3月 8日 (月)

言っていいことと悪いことがあるカバチ(堀北真希)特上カバチをかむカバチ(櫻井翔)

ニャロメって言うんだニャロメ。

語尾に何かをつけるのはお笑いの基本的なテクニックである。同時にキャラクターの印象度のインパクトを強めるテクニックでもある。

「私は中国人アル」などというのはそういうコンセプトである。古典である。

「私は朝鮮人ゴスミダ」というのは昔、タモリが四ヶ国語麻雀のネタでやっていた。

「西郷隆盛でごわす」となると、ネタなのか単なる方言なのかわからない。

しかし、「西郷どんはごわすごわす言いすぎだよな」って言うとややお笑いに傾斜する。

もちろん、このお笑いの中には「差別」とか「蔑み」の要素が濃厚である。

それを悪だと規定されると世の中からはかなりの笑いが消えるだろう。

もちろん、蔑みの笑いは一部愛好家を除き、対象者をいやな気分にさせることが多い。

「私にもっと汚い言葉を言って」と誰もが思うわけではないからだ・・・一部すぎる。

人を嫌な気分にさせてまで笑いをとる必要はない・・・という考え方もあるのである。

そう言う意味でニャロメというネコにニャロメと言わせる故人は天才なのである。

他人に過去の自分の性体験を語ることは一種の芸術だが、それを実話として語るときは当然、名誉毀損の対象となることを覚悟しなければならない。

身近な同僚に「俺の元カノ、東北出身でイグイグ~って言うんでゲス」なんて言う恥知らずは命知らずの下司野郎であることは言うまでもない。

問題はそれを「してはならないこと」と感じる共通理解なのである。

そのためには「共通の言葉」を持つ必要があるのは言うまでもない。

もちろん、だからこそ標準語でない言葉はお笑いの対象となってしかるべきなのである。

ずらとかだっぺとかやんけとかちょるとかだにとか田舎もの丸出しで笑えるんだもの。

・・・お~い、言ってること変だじょ~。

で、『特上カバチ!!・第8回』(TBSテレビ100307PM9~)原作・田島隆(他)、脚本・西荻弓絵、演出・加藤新を見た。演出をオーソドックスに戻しただけでかなり見やすくなっているのである。別に意地を張らなくてもよかったのに・・・と思うのだな。このドラマは本来、法律問題に悩んでも弁護士に依頼する経済的負担に耐えられない経済的に底辺の人々を弁護士でもない法律にややくわしい人間がボランティアをするという「助け合い」の物語なのであって・・・そんなものをけばけばしく飾り立ててもむなしいだけなのだ。

もちろん・・・何をどう描くかは・・・演出家の自由なのであるが・・・アートではなくビジネスなのである。

いつか、題材が登場人物がやたらと感電する描写とフィットする作品にめぐり合えたらチャレンジはムダではなかったのだと思う。

今週はガールズ・トーク&ボーイズ・トーク週間らしい。こういうかぶり方というのは「それ」が定番のテクニックだから起こるのだが、なんだか恥ずかしいのである。デートの相手が変わるのに誘う店が同じみたいな恥ずかしさである。

もちろん、それを恥と思わない図太さも大切なのである。

しかし、今回は同性同志の秘密の会話の漏洩問題が一つの主題であるから、けして単なるテクニックの使いまわしではないのがミソなのだ。

お世話になっている検備沢弁護士(浅野ゆう子)を「女性だけの温泉旅行」で接待する住吉行政書士(堀北)である。お供に大野行政書士事務所長(中村雅俊)の娘で女子高生妻・甲斐杏(菊里ひかり)と住吉の友人・岡本桂(木南晴夏)も参加である。

そこで「愛する相手にならされて喜ばしい行為がそうでない人にはされると迷惑」という基本的な「基本的人権の自己決定権」の問題が語られる。

杏にとっては父親がお風呂上りに裸でうろつくことはおえ~なのであるが密かに大野を慕う検備沢弁護士にとってははうぅんであるというのが一例である。

男嫌いの住吉は「男なんて性的いやがらせ、痴漢、つきまといしかできないクズ野郎」と断言する。しかし、年上の部下である田村(櫻井)のプライベートはちょっぴり気になる22才で離婚歴のある女なのである。

住吉のちょっとかわいい恋心をひやかす杏と桂だった。

行政書士にもなれない田村だが親は有名な弁護士であるらしい。

ふってわいたような設定とはこのことだな。

平和である。

一方、男たちはいつもの店で一杯やるのだが、たいして面白いことはありません。

ただし、行政書士補助者として仕事をバリバリこなすようになった田村がちょっと調子に乗っていることが暗示されます。好事魔多しの展開です。

翌日、不在の住吉を訪ねて昔の交際相手の職場でのセクシャル・ハラスメントに悩む小津(市川由衣)が相談を求めます。田村は小津の勤務先である雨雲商会から送られてきた内容証明と小津が雨雲商会の顧問・行政書士と面談するということを知り住吉の代理を申し出ます。

ここは①とりあえず上司の住吉に連絡をとる ②面談日の順延を相手側に申し込むというのがしかるべき処置ですが、ドラマなのでそんなつまらないことはしません。

セクシャル・ハラスメントを恋愛感情のもつれとしてしか捕らえられない法律家としてお粗末な認識で意気揚々と現場にのりこむ田村なのである。

しかも、相手はかっての行政書士受験仲間で一足早く行政書士資格を取得した村田(山崎樹範)だったので田村のゆとり脳はさらに激しく緩んでいく。

「同僚の性的嫌がらせを上司に相談した被害者」に「職場は学校ではないので同僚とのプライベートな関係で発生した問題を上司に相談するのは不法行為」と決め付ける村田に・・・立場を弁えず賛同する田村である。

田村は村田を最初から善意の人と信じて疑わないのだが、名前の示す通りに村田は田村とはさかさまのポジションなのである。

村田が小津を被害者から加害者に巧妙にすりかえたことにも気付かず、無防備に「示談書」への署名を小津に推奨するのである。

見習いは「一応・・・検討させてもらいます」が基本だろうがっ。・・・まあ、ドラマですから。

小津が男性である田村には詳細を語れなかった「加害者がいいふらすデートのこと」とは・・・「あからさまな性行為」を含んでいる変態的なものだったのである。

それを業務中のオフィスで声高にまくしたてる小津の元カレは江口(金子賢)だった。

どんな風紀の乱れた職場なんだ。社員は全員、スーパーフリー関係者かっ。元気があってよろしい代議士か、女子高校生コンクリート殺人事件の加害者なのかっ。・・・おいっ。

まあ・・・ドラマなのでデフォルメしてありますが、プレイと犯罪行為の区別のつかない人間を雇用している職場は現実にあります。

小津から被害の拡大を訴えられ、激怒する住吉。

「被害者がセクハラと感じたらセクハラなのよ。そんなことも知らないの」

田村は漸く事態の深刻さを理解する。しかし、バンビなので男性不審に陥り、すでに数々の無神経な言動によって絶対会いたくない男の上位に田村をランキングしている小津の自宅に朝一番で謝罪に向かうのであった。

「あんたバカァ?」

惣流・アスカ・ラングレー・住吉・美寿々は鈍感な主人公のいつもの行動パターンにぶちきれるのだった。

田村はたちまち自分の行動の不適切さを理解する。バンビなので仕方ないのである。

バカだからかわいいのが売りなのである。年下にまでそう思われる設定はギリギリ微妙ですけど~。

そして、気弱な上司と顧問行政書士と下司野郎VS行政書士と行政書士見習いの不毛な第二回戦に突入。

住吉は「セクハラ防止は雇用者の責任」作戦を展開しますが、村田は「ポーズだけの対応」で先手を打ちます。

さらにはすでに「一筆とられていること」が被害者側にかなり不利なことに。

しかし、最初は「セクハラなんて大袈裟」と決め付けていた村田は加害者の江川の下司ぶりが鼻につきだしてつい「私は会社の利益を守るのが仕事」と田村にヒントを提示します。

村田と田村はやはり名前的にも共通点があったのです。

一方、連続的なセクハラで精神的に追い詰められた小津は職場で発作的に自殺をはかり、自分の立場を考えて止めに入った江川ともつれてカッターナイフで軽症を負わせてしまいます。

「殺人未遂だ」と大騒ぎする江川。

「止めようとしたのに弾みで事故死」で処理できたのに小津、機を逃したな。

ち、違うだろっ。

現行犯で逮捕された小津ですが・・・警察としても事件にするかどうかで憂慮します。

一応、検備沢弁護士が出動、身元引受人となって小津を拘束から解放します。

もはや・・・事態は収拾不能に・・・。

「被害者を犯人に仕立ててしまった行政書士見習い」の田村は起死回生のアイディアで住吉に救いを求めます。

「今度は絶対に負けられない」と徹夜で作戦を練る二人。ある意味ホットです。

そして、上司の上司も加わった最終決戦。田村チームは「江口個人を名誉毀損で訴え、さらに噂の輪に加わった江口の同僚の男性社員も同罪とする・・・こうなると会社の面目丸つぶれですよね」と会社に恫喝をぶちかますのです。

たちまち、上司の上司は英断を下します。

「大体・・・こんなチンピラ社員一人、監督できん部下を監督できん私が悪うございました」決着である。

セクハラについての謝罪と傷害事件の非成立についての嘆願書を書かされた江口の全面的敗北なのであった。

しかし・・・ことここにいたっては・・・「元カレにベッドにおけるアレコレを散々言いふらされたあげくに刃傷沙汰」の小津はまともな神経ならとても職場に復帰できる状態ではなかったのである。

すべては田村の初動のミスであった。

大野は田村に「心細さに震えながら頼ってきた被害者を加害者に差し出すような人間はこの事務所には必要ありません」と告げるのだった。

住吉のかわいい勝利のVサインもむなしく田村は大野事務所を追放されました。

ま、バンビだからな・・・空気の美味しい山に帰るといいと思うよ。

最後のかみはアドリブではなくて台本通りだとお考えください。

関連するキッドのブログ『第7話のレビュー

火曜日に見る予定のテレビ『泣かないと決めた日』『まっすぐな男』(フジテレビ)

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2010年3月 7日 (日)

お佐那様、馬によく乗り、力も強く、顔立ち平井加尾より少しよし(坂本龍馬)

安政五年(1858年)に龍馬は第二次江戸留学を終え、土佐に戻る。

さな子の記憶によればこの年、龍馬とさな子は婚約し、結納を交わしている。

龍馬が土佐に戻るのは九月だが、四月に井伊直弼が大老になり七月には将軍家定が死去、そして九月には安政の大獄が始まり、十月には将軍家茂が誕生する。

激動の時代にのほほんとしているのである。

しかし、裕福な半武半商の坂本家とはいえ、家督を告げない次男坊の龍馬は分家するか、婿になるしかない。

千葉家には後継者の重太郎がおり、婿養子にもなれないわけである。

龍馬としてはさな子と結婚して、江戸で道場を開くか、土佐で道場を開くか思案したと思われる。

その思案は安政の大獄による山内豊信隠居により流動的となる。

ここで、安政年間、万延年間、文久年間の元号を整理しておく必要が生じるのだ。

1859年 安政五年十一月二十八日~安政六年十二月八日

1860年 安政六年十二月九日~安政七年三月十七日・万延元年三月十八日~十一月二十日

1861年 万延元年十一月二十一日~万延二年二月十八日・文久元年二月十九日~文久元年十二月一日

1862年 文久元年十二月二日~文久二年十一月十一日

ああ・・・毎度紛らわしい・・・。

文久二年三月、龍馬は脱藩して全国を放浪、八月頃江戸の千葉道場に潜伏する。犯罪者を匿うのは娘の婚約者だからである。

龍馬は恋人ができると姉の乙女に手紙を書くのが趣味であった。

この頃は当然、婚約者のさな子のことを書き送っている。

「千葉さな子様は、千葉定吉先生のご息女で免許皆伝の達人であり、乗馬もよくし、剣はもちろんのこと長刀の名人でもあり、相撲も強く、達筆で、琴もたしなみ、芯が強くてもの静かという理想の女子です・・・顔は平井加尾よりもちょっと美人です」

おのろけの言いたい放題である。まあ、女にだらしない・・・というのは間違いないです。

上手く馬に乗るというのはもちろん、龍馬の上にはげしく乗っているということを暗示しています。

ちなみに加尾は1860年から1862年まで、三条家に嫁いだ山内恒姫(豊信・妹)のお供衆として京都在住。

土佐から江戸までの間に京都があるために・・・ここで龍馬が加尾ともよろしく逢瀬していることは間違いありません。

で、『龍馬伝・第10回』(NHK総合100307PM8~)脚本・福田靖、演出・真鍋斎を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はファン待望、土佐の生んだはちきん娘・平井加尾描き下ろしイラスト大公開です。「ヤスコとケンジ」や「トライアングル」でもなかったのにさすがは大河パワーと申せましょう。安政五年から六年にかけての加尾は20~21才。まっこと初々しい娘でございます。佐那も加尾も天保九年の生まれ。天保の大飢饉の最中に生まれ、瑞々しいのは天の配剤でありましょうか。そして、ついに描き下ろし岩崎弥太郎(汚れヴァージョン)も大サービス。まあ、鬼の棲む島・死国ではこのぐらいの汚れ方が標準(当時)という考え方もあります。まあ・・・武市半平太が多重人格化したり、加尾が隠密になったりして・・・まるで妄想の思惑通りの展開に身震いする回でございましたよ。龍馬が江戸から土佐に戻ってくるまでに「いえさだ・なおすけ・よしのぶ・なりあきら・いえもち・・・その他」の人々が駆け足で安政の大獄を通過していったようです。もうあの雪が安政五年に降っているのか安政六年に降っているのかも定かではありません。まあ・・・触らぬ神にたたりなしなのでこれは上手いと言うしかございませんね。

Ryoma185801 安政五年(1859年)四月、井伊直弼が大老に就任する。幕府は将軍家継承問題と諸外国との通商条約問題という二つの難題を抱えていた。この二つの問題は複雑に絡み合い幕末の混乱を深めていく。将軍家継承問題は水戸徳川家と紀州徳川家のお家騒動でもある。しかし、公家や諸大名を巻き込んで派閥抗争に発展していく。水戸家の側用人藤田東湖(安政江戸地震で死亡)の影響を強く受けた山内豊信は一橋慶喜を推挙する側にたち、改革派の列に加わるが、通商条約問題にあたっては中立の立場だった。密貿易藩としては条約を締結せずに既得権益を守る意見と積極的に幕政に参画し、新たなる枠組みに参加する意見が藩内でも分かれていたのである。この意見の相違は水戸藩では開国佐幕と尊王攘夷という思想問題として現れる。やがて、将軍家茂を推挙する井伊直弼が現実的な条約締結路線に走ったことで、一橋派が弾圧された結果・・・いつの間にか、尊皇攘夷派と一橋派が融合してしまったのである。この奇妙なもつれは後に将軍慶喜が誕生すると一橋派が倒幕を開始するという不可思議な現象となって現れる。さらには尊王攘夷の果てに明治維新が達成されると文明開化が始まるのである。融通のきかない純情な人々はこの手品のような展開に茫然自失となるのであるが・・・それが世の中というものなのである。

安政五年七月、江戸城、大奥では薩摩のくのいち篤姫が悲しみにくれていた。

その知らせを龍馬は岡っ引きの半蔵から聞いている。

「なんと・・・鼠小僧様が・・・死んだっちゅうのか・・・」

なぜか、岡っ引きと盗人が懇意にしているとは妙だと感じながら、龍馬と鼠小僧は深い交際をしていたのだった。鼠小僧が龍馬の人柄に惚れたからである。

龍馬はそのおかげで郷士身分ではとても遊べぬような吉原の高級店にも出入りしていたのである。

千葉道場の稽古が終わり、土佐藩邸に戻る用事があるところを狙いすまして、半蔵が現れる。

「坂本の旦那・・・今夜・・・ちょっとどうです」

「明日は・・・藩のお屋敷に御用があるんじゃ・・・」

「朝までに戻ればよろしいんでしょ」

「また・・・鼠小僧さんのお呼びかい・・・」

「もう・・・あの方は坂本様をえらくお気に入りでして・・・」

「しょうがないのう・・・」

しかし、龍馬も遊び盛りである。金に糸目をつけない鼠小僧の宴につきあうのは楽しいのだった。

龍馬は遊び上手であり、人を喜ばせる達人である。

こうして・・・龍馬と鼠小僧は昵懇の間柄になったのだった。

その日も半蔵が顔を見せたのは桶町千葉道場から築地の土佐藩邸に向かう夜道だった。

半蔵の顔は蒼白である。

「坂本様もご存知の通り・・・あの方はお城(江戸城)にお住まいの方です」

「まあ・・・公儀隠密の御主が主と仰ぐんだからな・・・わしは吉田東洋という藩のおえらいさんに使われているので・・・将軍様の人相を聞き・・・まあ吉田様も・・・お殿様(山内豊信)から聞いたんでまた聞きじゃがの・・・こりゃあ・・・ひょっとすると・・・と思ってたんじゃ・・・」

「困ったお方でしたよ・・・」

「しかし・・・面白いご仁じゃった・・・わしのような虫けら同然の身分のものを・・・」

そこで龍馬はふと胸がつまる思いがした。

「よくもかわいがってくれたものじゃの・・・」

「はい・・・本当に心優しきお上(将軍)でした・・・。グフっ」

「親分・・・御主・・・」

「ふふふ・・・忍びのものが・・・殉死など・・・おかしいでしょうがね・・・公儀隠密はすでに次のものに引継ぎました・・・」

「御主・・・かげばら(切腹)をしておるのか・・・」

「はい・・・なんとなく・・・坂本様に・・・お伝えしたくなりましてね・・・とにかく・・・世は移りまする・・・土佐の御殿様は・・・一橋公贔屓と聞いております・・・これからは家茂公の世になりますれば・・・ご用心されたく・・・」

「なんと・・・それを・・・ワシに伝えにか・・・」

「坂本様は・・・お国元に戻られるとか・・・」

「よう・・・しっちょるの・・・」

「各地の公儀隠密は・・・おそらく・・・一橋公贔屓の弾圧にかかります・・・あのお方はそれを嫌がっていらした・・・無駄な血が流れるのをお嫌いでしたから・・・」

「そうじゃったの・・・」

「それでは・・・坂本様・・・これにて御免・・・」

「親分・・・」

「闇に生まれ闇に消える宿命でござる」

半蔵は江戸の夜の闇に消えた。

その刹那、龍馬は殺気を感じ・・・振り返った。

そこに立っていたのは・・・千葉さな子だった。黒い忍び装束をまとっている。

「龍馬様・・・」

坂本龍馬はたちまち真相を悟った。吉田松陰伝来の千里眼を少し学んでいるのである。

「そうか・・・佐那様が・・・新・半蔵・・・」

「え・・・何をおっしゃいます・・・」

「千葉道場は水戸藩のお声掛かりじゃ・・・そうであってもおかしくないと思うたきに・・・」

「すると・・・坂本様は・・・夜遊びをしていたのではないのですね・・・」

「あ・・・そっちの方で尾行ちょったのかい・・・」

「まさか・・・龍馬様が・・・裏の半蔵殿とお知り合いとは・・・」

「女子でも・・・服部半蔵を名乗るのかいな・・・」

「しのびには老いも若きも・・・男も女もございませぬ・・・」

「まっことそうじゃの・・・」

佐那は背後に覗く暗い江戸城を見た。

「あそこには・・・薩摩のくのいちの頭領がおわします・・・あの方も私とさほど変わらぬお年・・・」

「なるほどの・・・」

「・・・」

「お佐那様・・・いや、服部半蔵殿・・・わしゃ・・・今宵は無性に野を駈けたい気分じゃ・・・」

「野駈けですか・・・思い出作りですね・・・」

「そうじゃ・・・まもなく・・・世の中は大騒ぎになるそうじゃ・・・今夜はそういうことを何もかも忘れて・・・走りたいき・・・」

公儀隠密頭・服部半蔵佐那子は微笑んだ。

次の瞬間・・・二人の忍びは音もなく消えた。

夏の江戸の町はひっそりと寝静まっていた。

夏の終わり・・・龍馬は山内豊信の密書を胸に東海道を西に向かっている。

その頃、武市半平太は土佐藩の家老の一人、柴田備後に接近していた。坂本龍馬が明智光秀の末裔ならば、柴田備後は柴田勝家の末裔だった。土佐は古い鬼の一族の末が集まる場所なのである。

仕置き家老の吉田東洋は来るべき激動に備え、藩政改革に着手している。

その政治力学を闇に潜むものたちはじっと観察するのであった。

そして、山内豊信は江戸城で井伊直弼の詰問を受けている。

安政の大獄が幕を開けようとしていたのだ。

関連するキッドのブログ『第9話のレビュー

月曜日に見る予定のテレビ『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命2nd Season』(フジテレビ)『ハンチョウ』(TBSテレビ)

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2010年3月 6日 (土)

コンプッレックスの意味についてのコンプレックス七変化(亀梨和也)恋じゃない(大政絢)

さて・・・こう、何回もコンプレックスを連呼されると・・・さすがに血が騒ぐのである。

コンプレックス(complex)を大辞泉でひくと①精神分析用語。情緒的に強く色づけされた表象の複合と定義され、抑圧されながら無意識のうちに存在し、現実の行動に影響力をもつ。②「インフェリオリティーコンプレックス」の略

となっている。

「インフェリオリティーコンプレックス」とは何かと言うと劣等コンプレックスである。

しかし、コンプレックス(complex)を 大辞林でひくと①劣等感 ②精神分析用語。強い感情やこだわりをもつ内容で、ふだんは意識下に抑圧されているもの。心のしこり。観念複合(体)。エディプス-コンプレックス・劣等コンプレックスなど。

大辞林・・・お前か・・・お前が諸悪の根源か。

正確に言っておきたい人たちは「コンプレックス=劣等感ではないこと」に常に悩まされてきた。

あくまで劣等感はコンプレックスのほんの一部である劣等コンプレックスなのである。

ちなみに優越感はシュペリオリティー(優越)コンプレックスである。劣等感も優越感もコンプレックスにすぎないという言い方があるが・・・文字通りなのである。

省略バカは大辞林①の意味で平気でコンプレックスを使う。

そうするとマザー・コンプレックスについて語るときに不具合が生じる。マザコンは母親に対する劣等感ですか?

確かに・・・子供は「お母さんのように上手にできない」という劣等コンプレックスを持つことがあるが、それがマザコンの意味じゃないでしょう?

まあ・・・小学生の頃に友人に教えてから数十年・・・世紀を越えてこれだけは言っておきたいコンプレックス(こだわり)がコンプレックス(意味)についてキッドにはあるのでございます。

ちなみにコンプレックス(複合体)をキッドは基本的に情報集合体、特に記憶として考えるタイプです。

たとえば「美人を見ると目がはなせない」のもコンプレックスだし、「色男を見るとヨダレがたれる」のもコンプレックスです。つまり、条件反射もコンプレックスにすぎないのです。

「おふくろの味」もコンプレックス(郷愁)だし、「なくよウグイス平安京」もコンプレックス(暗記)です。

つまり、世界とはコンプレックス(まとまり)なのです。

コンプレックス(思考)をコンプレックス(劣等コンプレックスの略)として安易に使う愚かさが最悪を極めることは間違いないのでございます。しかし、世界はバカに満ちており、民主主義は多数決なので大辞林がバカに迎合することをキッドは激しく責めはしない。そっと肩を抱いて「お前も辛かったよな・・・」と慰めたい気分である。

で、『ヤマトナデシコ七変化♥・第8回』(TBSテレビ100305PM10~)原作・はやかわともこ、脚本・篠崎絵里子、演出・石井康晴を見た。もちろん、そのようにコンプレックスに悩まされるのは日本人特有の現象と言っても良いだろう。だってコンプレックス(英語)を劣等感(日本語)に変換するところから生じる悩みである。そして悩むのはバカではなく利口だからと相場が決まっているのである。

もちろん悩みとはコンプレックス(苦悩)なのである。

そもそも、精神分析学の用語である。精神分析学は心の病に対応する学問だが、一種の古典であり、もはや科学的なものとは言いがたく、一種の疑似科学と言っても過言ではない。

そういう意味では懐疑するぺき対象であり、科学性という観点からは心理学と甲乙つけがたいインチキっぽさがある。

大脳生理学や神経学に対して精神医学→精神分析学→心理学とより科学とは言えない度合が深まるのである。しかし、天才物理学者が神社に初詣に行くように科学と神秘は相容れないものではない。なぜなら・・・人は神ではないからである。

人の心は所詮、人には解明できないというのが大前提なのである。

しかし、その不可解なものについて人は語りたがる・・・そのために言葉が必要となる。

つまり、地震の大きさをマグニチュードではかるように、心の大きさはコンプレックスではかられるのである。・・・はかるのか?

スナコ(大政)が「好きな人にブスと言われてひきこもった現実逃避の心」をコンプレックス5.3とすると、恭平(亀梨)が「母親にお前なんか生まなきゃよかったと言われて傷ついた心」はコンプレックス5.1くらい。・・・また、いい加減なことを・・・いいじゃないか。

一々、コンプレックス5.3とか書くと大変なのでC5.3と略します。・・・略すのかよっ。

亜紀(麻生祐未)はごくふつうの会社員・昇平(中根徹)とごくふつうに出会い、ごくふつうに恋をしてごくふつうの結婚した。しかし、生れた子供・恭平は凶悪な人間ホイホイだったのです。

幼少の頃から男女を問わず、恭平は性的なホルモンを分泌する美男子であり、男性、女性を問わず、接近したものの理性を狂わす怪物的存在。

両親がその影響下に置かれないのは遺伝子の神秘なのか・・・あるいはホルモンの影響を受けない得意体質なのか、はたまた性的タブーによってわが子だけは冒涜してはならないという抑圧の強いタイプなのかは不明です。

「美しいもの」によって狂うという概念は馬鹿馬鹿しいものですが、かってビートルズは演奏するだけで、観客を失神させ、失禁させ、脱糞させましたし、ジョン・レノンは凶弾に倒れ、ヨン様はご夫人たちに変なうちわを買わせ、モーニング娘。は男たちを羊や狼に変え、ガンダムやエヴァンゲリオンはプラスチックを大量に消費し、花鳥風月は日本人の心のふるさとになったのです。

このように「美」を愛するのを尊ぶのがストレートなら、そんな絵空事を嘲笑するのはカーブです。

本来、「ヤマトナデシコ七変化♥」とは登場人物たちが「美」について悩み悶え苦しむのを読者が嘲笑するという意図を持つ変態の物語なのです。

それをコンプレックスと劣等感の区別もつかないお茶の間に提供するとなると・・・キャストとスタッフはかなり深刻なダメージを受けると予想していましたが・・・案の定でした。

キッドは何を隠そう・・・そこが一番面白い。

つまり、豚に真珠のたとえもあるさ、がっかりだけが人生だからです。

恭平は「母親」というものにトータルでC9.0くらいの心の負担を感じています。

それはスナコに対する恋C2.2くらいがスナコが「割烹着を着て食事を作ってくれるお母さんのようなもの」C4.4くらいを感じさせることによって発生していることからも観測できます。

嫁姑の争いにはマザコンが介入しますが、嫁は夫に対してマザコンを利用して接近している場合があるわけです。つまり、「母親の弁当」VS「愛妻弁当」です。

年齢差があるので見落としがちですが・・・基本的に嫁姑はそっくりさんであることが多いのはこのためです。夫はマザコンによって幼い頃の母親と適齢期の嫁を重ね合わせて見ているということです。

つまり、夫婦生活とは基本的に擬似近親相姦なのです。

このことは兄弟の嫁がまたそっくりさんであることが多いことに象徴されます。

逆に言えば・・・どんなブスでも結婚できるチャンスがあるというのはこのことなのです。

どこかパーツが彼氏の母親に似ていれば脈があるのです。

もちろん、エディプス・コンプレックス(子供が両親に抱く同性の親を殺してでも異性の親と性的関係を持ちたい欲望)は男女を問わずに存在するのでブサイクな男は彼女のファザコンを利用することができます。

どうして・・・あんな美人が・・・あんな男とか・・・どうしてあんな美男子があんな女とか、不釣合いなカップルも、親を見れば納得が行くことが多いのです。ブサイクだけどホクロの位置が彼女の父親そっくりだ・・・みたいな。

そんなどこか恭平にとって母親を連想させるスナコが勇気を出して同窓会に参加をしたことに刺激を受け・・・恭平は閉ざしていた心の防壁をあけてみようと思い立ちます。

子供が怪物であったために・・・恭平の母はついに心の病を発症していました。恭平の小学生時代、バレンタインデーには100人の女の子が高野家を包囲しました。中学生時代、二月には1000人の女の子が押しかけました。そして高校生になると一年中、10000人の女の子が押し寄せるようになったのです。

静かな住宅街は地獄となりました。女の子たちは失神し、失禁し、脱糞するからです。平気でゴミを撒き散らし、器物を破損します。もちろん、近所からは苦情の山。こわい町内会長は鬼のような形相で恭平の保護者を詰問します。

「ちょっとあんたなんとかしなさいよ」

引っ越しても引っ越してストーカー集団をふりきることはできません。

どんなに電話番号を変更しても「無言電話」や「ハアハア電話」は一日中なり続け、窓やドア、果ては壁をやぶって侵入したストーカーたちは恭平の下着やら使用したお風呂の水やらを盗んでいくのです。仁義なき男たちはそれをペットボトルに入れて屋台で販売します。

やがて男性教師も女性教師も恭平に悪戯をするようになり、教育委員会は教師を狂わせる問題児として恭平の保護者を責め、校長先生も恭平のパンツを脱がした罪で投獄されるのです。

「ちょっと親御さんがしっかりしてもらわないと」

やがて、成長した恭平は護身のために喧嘩の達人となりますが、行く先々で過剰防衛をして警察沙汰を引き起こします。

「お宅ではどんな躾をしているんですか」

そうした日々の果てに「ひーっ」と悲鳴をあげた恭平の母親はかっての不安神経症、最近では所謂パニック障害を発症するのです。

心の病であり、脳機能障害です。

鬱で、呼吸困難で、幻聴、幻覚、錯乱なのです。

「恭平なんて・・・いるだけで迷惑なのよ」

おかしくなった母親に父親はおろおろするばかり・・・恭平は仕方なく愛する両親を捨て家を出て現在に至るのである。

「そんなに・・・俺が悪いのか・・・」

セリフ的には「外見より中身が大切」などというお茶を濁した表現でわかりにくいのですが、「美しく生れたがゆえに静かに暮らせない稀少動物一家の悲劇」なのでございます。

しかし・・・時は経ち、美しさを隠すテクニックを覚えた恭平は・・・もうほとぼりもさめたかもしれないと・・・愛しい母親に一目会う決心をしたのです。

そして、密かに母親を訪ねた恭平は母親から「ごめんなさい・・・あの時、お母さんはおかしくなっていた・・・」と謝罪の言葉を与えられたのである。

恭平の安らぎC10.0です。

ものすごく、ご機嫌になった恭平だった。

「お母さんが・・・お母さんが・・・僕を愛してくれている・・・」なのです。

その頃、中原のお屋敷には蘭丸(濱田龍臣→宮尾俊太郎)の婚約者のお嬢様・菊乃井珠緒(小松崎彩乃→浅見れいな)が結婚式の打ち合わせのために訪れていました。

蘭丸は幼い頃から好色漢でしたが誘惑の通じない相手(と蘭丸は思っている)である珠緒を大の苦手としているのです。

「中学生のときに駆け落ち相手に二股かけられて自分しか愛せない」C3.6を抱える蘭丸にとって必殺のまぶしいビームを放ちつつ、口説いても「おそれいります」としか答えず能面のような無表情さで応じるお嬢様には「天敵という印象」C6.6を抱いているのだ。

そのためになんとか親の決めた婚約を解消しようと努力するのだが珠緒にはまったく通じないのであった。

なぜなら珠緒は蘭丸に「初めて逢ったその日から恋の花咲くこともある一目惚れ」C9.9をしているのである。

ここで、女たちはスナコの闇のワンダーランドで、男たちは喫茶迷宮入りでガールズ・トークとボーイズ・トークを繰り広げる。

マスター(大杉漣)→中原美音(高島礼子)に片思いC2.6、蘭丸→浮気女に未練C7.7、武長(内博貴)→乃依(神戸蘭子)の軽さに不信感C3.3

雪之丞(手越祐也)と恭平のキャスティング・リスト上位の二人は控え目なのであった。

乃依→武長の慎重な態度にじれったさC2.6、珠緒→蘭丸の浮気な態度に不安C1.1、スナコ→恭平のくれたブレスレットの安心感とひろしくんへ奉げる愛の揺らぎC0.1である。

新たなるカップル蘭丸・珠緒を加えて、武長・乃依、雪之丞・まちこ(本仮屋ユイカ)、そして恭平・スナコと・・・実はこの物語はカップルだらけだったのである。

なんだみんな相手がいるじゃないかと相手のいないお茶の間の嘆きC8.8ぐらいなのである。

そこで湧き上がるどす黒い感情C100.0をなだめるために・・・恵まれた主人公は幸せにはなれないのがドラマの宿命です。

恭平に招待され、スナコ直伝の海老フライをふるまわれた恭平の母親は一瞬のなごみのひとときを過ごしたあと・・・心の暗黒面の扉を開くキーワード「母と子の菜の花畑」を耳にしてたちまち恐怖のフラッシュバックに襲われるのだった。

「ああ・・・そんなことを・・・私に思い出させて・・・あんたは・・・あんたは悪魔の子・・・あんたなんかこの世から消えてしまえばいい・・・」

天国から地獄へ・・・失われた母の愛に傷心C1000.0の恭平だった。

この物語はこのように実に耽美的な悪魔の哄笑する展開なのだが・・・きっとお茶の間には伝わっていない感じC7.7くらいである。

関連するキッドのブログ『第7話のレビュー

Hcinhawaii0627 ごっこガーデン。愛と呪いに満ちた春の菜の花畑セット。エリはうぅん、お屋敷でいきなりあすなろ抱きを堪能した後は青空海老フライ大会でスー。ハラワタではなくセワタをとってエビを下ごしらえするのは面倒なのでじいやにおまかせでしゅよ~、そして傷ついた亀梨恭平先輩の心をママの味のエビフライで和ませて、ゲットしまくるのでしゅ~、手作りでおもてなしはマザコン作戦の初歩の初歩なのですyon!・・・春風にエビフライ・・・揚げたてジューシーがボイントでしゅ~・・・そして心が風邪を引いた日をぎゅっと抱きしめて忘れさせたら一丁あがりでスーお気楽なんていうか・・・唐突感がひどいよね・・・解き明かし方の順番がちぐはぐすぎて・・・ちっとも腑に落ちない・・・すべてがとってつけたように感じちゃうのねmariふう・・・春眠暁を覚えずですね・・・寝坊しましたよ~まこ家に帰ってきた恭平を心配そうに見つめるお父さんの目が気になってたけど・・・やはり・・・心の病はそう簡単に治らないのでしゅね~・・・愛のエビフライが通じないときは「まこ印のかまぼこのてんぷら」がお勧めでしゅね~・・・どんな悩みも一発解消・・・たちまち天国に昇ることができるのでしゅ~・・・品質保証まちげーねーのでしゅ~

日曜日に見る予定のテレビ『龍馬伝』(NHK総合)『深・ケロロ軍曹』(テレビ東京)『堀北真希の特上カバチ!! 』(TBSテレビ)

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2010年3月 5日 (金)

一千万円の投資で五億円の錬金術も泥水や暴噴で不毛地帯の落日(唐沢寿明)そうよ私は射手座の女(小雪)

行き詰る諜報戦、屈辱からの大逆転、祝福の乾杯は・・・虚しいものとなりつつある。

ソ連諜報部も謀略に謀略を重ね、朝鮮半島で動乱を起こし、中国からモンゴルを奪い取り、南米で東南アジアでそして日本で・・・西側諜報部に何度も煮え湯を飲ませたのである。

しかし、アフガニスタン侵略で躓くと坂道を転落するように崩壊し、気がつけば消滅しているのである。

だが、祖国の滅亡など通過点に過ぎない。悪魔に魂を奉げたものたちは手を変え品を変え、この世に惨禍を送り続けるのだ。すべてのものが地獄の門をくぐるまでは。

で、『不毛地帯・第18回』(フジテレビ100304PM10~)原作・山崎豊子、脚本・橋部敦子、演出・平野眞を見た。田中角榮は1972年(昭和47年)7月から1974年(昭和49年)12月までおよそ2年半にわたって内閣総理大臣を務めた。田中内閣最後の大蔵大臣は大平正芳、通産大臣は中曽根康弘、内閣官房長官は竹下登である。この三人は何れもその後田中の存命中に内閣総理大臣になっており、日本のキングメーカー、目白の闇将軍などという呼称を田中に与えることになる。

つまり・・・それは後のロッキード事件につながる金権体質批判により失脚後も田中がずっと権力の中枢にいたということを意味するのである。

当時、賄賂にまつわる暗号がピーナツ一粒100万円であることが話題になった。

ロッキード社から児玉誉士夫や小佐野賢治などのフィクサー(黒幕)と商社を通じて田中角栄にはピーナツ500粒(5億円)が流れたとされる。

ロッキード事件の発覚後の1976年(昭和51年)には関係者が次々と謎の死を遂げたりして人々は様々な憶測をしたのであった。

しかし、不毛地帯の世界ではあくまで総理大臣は田淵(江守徹)でありフィクションの登場人物である。念のため。

だが、田淵総理にはおそらくきっと田淵真紀子という娘がいるような気がしてならない。

そして父親の意思を継ぎ中国人民に10億本のタオルを売りつけているような気が・・・。

まあ、気のせいだろう。

とにかく、沖縄返還を花道に佐橋総理大臣は引退し、田淵総理となる以前から、イラン・サルベスタン鉱区では日米合作による油田の掘削が始まったのである。

壹岐正(唐沢寿明)はこれが近畿商事における自分の最後の仕事と断じ・・・石油資源の確保に乗り出したのだが・・・肝心の石油が湧き出ないのだった。

「石油が出たら結婚しよう」とでも言ったのか千里(小雪)との親密な交際は続いている。

しかし、娘(多部未華子)夫婦家族との食事会は三年以上過ぎているのに実現していないらしい。そのために娘は写真で登場するのみなのである。息子なんか結婚しているのかどうかも不明だ。

ズルズルですな・・・。

その間、ニクソンショックで1ドルは360円でなくなり、円高ドル安が続き、第四次中東戦争を発端とするオイル・ショックにより日本の高度成長時代は終焉した。

パニックに陥った主婦はトイレット・ペーパーをまとめ買いし、シーズン九連覇を達成した巨人軍の選手に阪神ファンが暴行を加えた。巨人は日本シリーズも制したが南海ファンは暴行しなかった。あ、紙がないと思った時になんでも売っているコンビニエンス・ストアがオープンし、コインロッカーベイビーが誕生した。ドラゴンが燃えて小さな石鹸がカタカタと鳴り、ミッシェル・ポルナレフは「愛の休日」を歌い、日本は沈没した。やがてガッツ石松は世界チォンピオンとなり、インドが核実験に成功し、カーペンターズは武道館で講演するのだった。ウォーターゲート事件でニクソン大統領は辞任し、ディープ・スロートという暗号に妄想は膨らみ、ベルサイユのばらは大ヒットする。そして宇宙戦艦ヤマトは運命背負いイスカンダルへ旅立つのだった。

それにもかかわらず石油は出なかった。50億円の損失である。

一方、近畿商事・大門社長(原田芳雄)は綿花相場に入れ込み、その損失もまた50億円に達しようとしていた。

綿花の社長、石油の副社長、二人合わせて100億円の損失である。

近畿商事大ピンチである。

壹岐「もう・・・綿花はおやめください」

大門「やめられるかい・・・値はいつか戻すわ・・・そっちこそ石油やめんかい」

壹岐「石油はかならず出ます」

近畿商事の危機をタクボ工業社長の里井(岸部一徳)は嘲笑する。

「ふふふ・・・こっちはトラクターが売れて売れて笑いがとまらんっ」

ちなみに久保田鉄工は1971年(昭和46年)にディーゼル・エンジン搭載のトラクター「ブルトラ」シリーズを発売、大ヒットさせる。現在の農業機械メーカー大手の「クボタ」の前身である。

四番目の試掘井が「泥水」につきあたり試掘失敗に終わり、日本石油公社は近畿商事への支援の打ち切りを決定する。

近畿商事の兵頭常務(竹野内豊)はイラン国王の側近・ドクター・フォルジ(アルフレド・ベナベント)から「撤退は日本・イランの友好関係を損なう」と圧力をかけられるのである。

追い詰められた壹岐は愁眉を開く。

「そうか・・・国際問題になれば・・・金が動くかもしれない・・・」

兵頭は呆然と壹岐を見つめる。

「あきらめずに・・・手を汚す・・・ということですか」

壹岐は執念で濁った目で兵頭を見つめる。

「石油だ・・・石油がいるんだ・・・」

壹岐は国際ロビイストの竹中(清水紘治)を仲介者として、イラン国王と田淵総理大臣との接点を作り、田淵総理に1000万円の政治献金(闇)をすることで「イランとの友好関係を維持する」という大義名分により、日本石油公社から五億円の資金援助を引き出すことに成功するのだった。

鶴のための配合飼料はグラムで数えます。100グラム100万円くらいか・・・。

大門は日本石油公社の方針変更に危ういものを感じる。

「どないな手を使ったんや・・・わが社から逮捕者が出る・・・というようなことはないやろうね」

壹岐は老いの気配の濃い大門を見つめ・・・冷たい眼で答える。

「そのようなことは・・・ございません」

ついに泥にまみれた壹岐は救いを求めて、シベリア仲間の谷川(橋爪功)を訪ねる。

「君には・・・シベリアに眠る戦友たちの遺骨帰還事業に手を貸してもらいたい」

「しかし・・・私は・・・戦友たちに会わせる顔がもはやないのであります」

「壹岐くん・・・生きていれば・・・垢は出る・・・風呂に入ればすむことだ・・・」

「・・・た、谷川さん・・・」

清濁併せ呑む谷川の懐に抱かれ・・・心を癒される壹岐だった・・・。

しかし・・・五番目の試掘井が運転開始した日・・・風邪をこじらせた谷川はあっけなく逝去するのだった。

イランの現場から葬儀にかけつけた壹岐は・・・谷川の骸に差し伸べた手を持ち上げることができない・・・。

「私を生かしたあなたに死なれて・・・私は・・・どうすればいいのです・・・」

壹岐は父のように慕う男の人生の終焉に立ちすくむのだった。

その頃、最後の希望である五番目の試掘井は・・・危険の高いガスを噴出する暴噴(Blowout)に見舞われていた。この場合、試掘井は防噴装置を作動させ、閉鎖しなければならない。つまり・・・試掘はまたもや失敗に終ったのである。

兵頭は腰が抜けた。

金は消える・・・石油は出ない・・・虚しい夢・・・こぼれる涙・・・なのだった。

そして・・・イラン革命の火の手はすぐそこまで迫っている。

関連するキッドのブログ『第17話のレビュー

Hcinhawaii0626 ごっこガーデン。まこ様お誕生日月間ひな祭りパーティー会場。まこ竹しゃまは常務に出世したのでしゅね~。それなのに石油の野郎がなかなか顔を出しやがらないとは不届き千万でしゅよ!・・・鮫島はじじい仲間の壹岐さんの色事にひひひと下卑下卑で失礼千万でしゅ~。ちょっと面白かったけど・・・。まこは今、沈まぬ太陽を勉強のために読んでいますが・・・大人の社会はマックロクロスケよりマックロですね。やはり、手を汚さなくては金は儲からんということでしゅね。まこのこれまでのビジネス展開は甘かったのでしゅ。賞味期限の切れたかまぼこは三年までと決めていましたが永遠に売ることにしましゅ・・・ツルは千年、カメは万年、サメは一億年でしゅ~ikasama4一攫千金を夢見る山師たちは・・・一寸先は闇という言葉に背を向けるのですな・・・しかし・・・そういう人々の無惨な末路があって・・・石油成金も存在する。まさに栄光と挫折のブルースでございます。いよいよ最終回、はたして・・・男たちの最後は・・・お気楽まこちゃん、お誕生日おめでと・・・やはりなんでも若い子の方がめでたいよね・・・不毛地帯よりも卒うただよね

土曜日に見る予定のテレビ『臨月の娘』(テレビ朝日)

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2010年3月 4日 (木)

常識の通じない正しい女の行方(菅野美穂)

「相棒」は新しい相棒・神戸(及川光博)を迎えたシーズン8がいよいよ、来週最終回である。

第18話は脚本・古沢良太、演出・東伸児でちょっと構成を遊んだ「汚れなき諸悪の根源」の話。

一部愛好家にはちょっとサービスである。キッドはそれほどこの手のミステリを好むわけではないが、辻褄あわせの参考にこの事件の経過をメモしておく。

(発端)

経済的に恵まれているが病弱で孤独を感じる少女・梢は淋しいひな祭りをベッドで過ごしている。

窃盗の前科のある老人・西島は昔の習性でお屋敷を覗くうちに少女の孤独に気がつく。

お互いの孤独を埋めるために西島は塀越しに「軍手のウサギ」の芸で少女を慰安する。

少女はお礼に母から娘に譲られる「スチュアート・ハミルトン」のネックレスをプレゼントする。

(質屋)

西島はネックレスが子供の玩具ではなく効果なものであることが分り、返却しようと考えるが前科があるためにこっそりと少女に返したいと考える。

(事件)

孤独な女・樫山ジュンと浮気な美容師・戸倉翔は深夜、関係を持つために家路を急ぐ途中でジュンの「お気に入りのネックレス」の紛失に気がつく。

樫山と同じアパートに住む西島が通りかかり、「二つのネックレス」の存在が誤解を生じる。

軽率な男である翔は西島に暴行し、死に至らしめる。

勘違いに気がついた二人は西島の死体を竹林に埋める。

(捜索依頼)

右京は紛失したネックレスの捜索を依頼され、単独で調査に赴き、梢に風邪をうつされる。

(質屋)

右京は「ネックレスの鑑定」を依頼した西島を特定するが、曲がらない女が母の形見のネックレスを鑑定しにきたことには気がつかない。

(町工場マルタテック)→(西島のアパート)

西島の部屋を訪問した右京は管理人に捜索届けを出すように依頼する。そして隣室の樫山の言動をチェックする。

(ちずのアパート)

右京の知人であるちずのアパートで自殺未遂が発生。相談のために神戸が代理で派遣される。

恋人にだまされた女と相手との交渉に神戸がたちあうことになる。

(喫茶シャトー)

単なる痴話ゲンカだったが、ちずは翔のもう一人の交際相手がジュンであることをつきとめる。だまされた女の殺人未遂を神戸がくいとめ、軽い男である翔は「スチュワート・ハミルトンのネックレス」を慰謝料として差し出す。

(テレビ番組でたけのこ掘りのレポート)

参加者はたけのこではなく、死体を掘り当てる。

(少女の家)

右京は少女から「西島にネックレスを支払った顛末」を聞く。

(ジュンの部屋)

捜査一課トリオは西島の部屋を訪ねた後で隣室の女に不審を抱く。

(ちずのアパート)

翔は殺人未遂の女からネックレスをとりもどす。

(鑑識)

遺留品に「不思議な軍手」を発見した鑑識。右京は意見を求められる。

ちずからの電話で「右京の探すネックレス」と「神戸の見たネックレス」がひとつの線でつながる。

(翔のアパート)

右京と神戸は翔の逃亡を知る。翔のもうひとりの恋人が「ジュン」であることが発覚する。

(ジュンのアパート)

ジュンは自分が孤独であり、死んだ西島が孤独であることを理由にシラをきる。

しかし・・・右京は「孤独ではなかった西島のエピソード」を語り、東風万智子と改名した真中瞳に上から読んでも下から読んでも「こちまちこ」だけが人生ではないと説教する。

説教に感動したジュンの元へ捜査一課トリオが乗り込むとジュンはすべてを白状する。ジュンのお気に入りのネックレスは近所の人が拾い警察に届ける。人は知らない間にどこかでつながっているからである。

(ホテルの一室)

待ち合わせ場所で待っていた翔が逮捕される。

(廊下)

何も知らない捜一トリオとすべてを知っている特命コンビがすれ違う。

(少女の家)

「西島さんは遠いところに旅に出た」と右京は少女に語り、罪作りなネックレスは返却された。

(花の里)

神戸もようやくこの店に馴染んできた。そして神戸は右京に風邪をうつされた。

・・・何を隠して、何を明らかにするか・・・謎解きの魅力は加減である。そして孤独もウイルスも人から人へと伝染していくのである。

水曜日のダンスは・・・。

「相棒」15.7%↗17.2%↘17.1%↗17.5%↗17.8%↘15.8%↗17.2%↗18.1%

「検事」*9.4%↘*5.6%↗*6.0%↗*6.4%↘*6.0%↘*5.1%↗*6.7%↘*5.2%

「曲女」15.4%↘11.0%↗13.7%↘13.3%↘13.1%↗14.5%↘13.6%↗15.9%

やはり、相棒と菅野の相性は抜群なのだな。ネックレスを質入するほどに。

で、『曲げられない女・第8話』(日本テレビ100303PM10~)脚本・遊川和彦、演出・南雲聖一を見た。血縁によって生じる愛憎というものを知っている人間には「まっすぐな男」の父親の判らない子供を宿す鳴海(深田恭子)とその周囲の言動の不可解さは「曲げられない女」の早紀(菅野美穂)の父親である坂本弁護士(塚本高史)に対する態度の不可解さと甲乙つけがたい感じがするだろう。まあ・・・人間の心なんて不可解なものだと思うしかないのですな。

もちろん、早紀は言葉には出さないが・・・坂本が愛しくて愛しくてたまらないのです。

しかし・・・32才にもなって友達もいない自分が坂本を幸せにできる自信は全くない。

だから・・・坂本の存在を無視して無視して無視しまくるのです。

その「愛の深さ」に全く気がつかない坂本が憐れなポイントです。

それに対して、自分の子供よりも自分が大切な璃子(永作博美)とか、並外れた知性をもてあまし自分を哀れむ藍田(谷原章介)とか・・・ダメ人間を相手にしている方が気が楽なのです。

その上、璃子はバカだけど二人を出産している経験者だし・・・藍田はなんだかんだいって遊んで暮らせる資産家の息子。

悪友としてはいい感じなのでございます。

しかし、そんな悪友さえも「助けろって言わなくても助けるのがダチだろう」と突き放す早紀。

どこまでも自己中心主義者です。しかも・・・その自己は死んだ両親の洗脳によって成立している擬似人格なのです。

天国のマイケルも「そんなこっちゃ・・・救えるものも救えない」と思うし、地獄のマイケルも「うひょひょひょひょ~」と面白がるばかりでございます。

医者から「もっとおなかの子供のことを考えて」と言われてももの言わぬ胎児のことは考えられない早紀。すでに胎児なんて自分の一部だから何をしようとこっちの勝手的な発想に支配されているのです。

そういう仕方のない女なのです。

あげくの果てに、経済的に追い詰められ、労使の交渉にも失敗し・・・ついに母の形見を質入する羽目に・・・。

自慢の体力も底をつき、隠蔽された本来の自我が夢に現れる始末。

そこへ・・・坂本弁護士がかけつけます。他の女にウエディングドレス選びまでさせている男が何を今さら・・・とは責めてはいけません。

愛する女に三回プロポーズしてはぐらかされた男が四度目にチャレンジするのは深い愛情に突き動かされているからなのです。

そして・・・「癒しのスープ」を飲んでおきながら、喉元過ぎるとさらに「相手の愛に臆病なのは愛が不足しているから」と邪悪の道を突き進む早紀なのです。

・・・もう・・・本当にひどい女だな。

そして、結局、舞い戻る悪友二人はまたもや・・・坂本弁護士を仲間はずれに・・・。

さらには・・・戦艦ポチョムキン以来の凶悪なオデッサの階段の乳母車使いの健治(市川知宏)が早紀の父親殺しの前科を告白すると・・・もう話は異次元の彼方にすっとんでいきます。

早紀は「我が身を省みず人命を尊重した父の娘」として治外法権の気分に高揚するのです。

そして、悪友二人を従えて胎教にいいのか悪いのかも不明なダンスを始めるのでした。

ダメなヤツラの縄張りに

足を踏み入れたらダメなのよ

あなたにはもっとふさわしい場所がある

私から逃げなくちゃダメ

もう行ってちょうだい

行って、行って、出て行って

力自慢なんかするだけムダよ

だってあんたは私に似合わない

ここはあなたの来るところじゃない

私と交際するなんて時間のムダよ

ほっといて、ほっといて、もうほっといて

クズはクズたちとよろしくやるのが

精一杯

よしあしじゃないのよ

そういうものなの

クズにはクズの見栄があるのよ

さあ、ぐずぐずしないで出て行って

逃げて、逃げて、逃げ出して・・・。

最凶の魔性の女に今日も手が届かない・・・坂本弁護士だった。

まあ・・・人生・・・そういうことはよくあるな。

しかし・・・そういう女だからこそあきらめられないことはある。

そして偉大なるビッグ・マザーはダメ嫁の成長を見届けて任務終了か・・・。

いや・・・まだまだ哀れな孫たちのためにも最後のご奉公を・・・。

立て、立つんだ女王・・・。

関連するキッドのブログ『第7話のレビュー

金曜日に見る予定のテレビ『ヤマトナデシコ七変化』(TBSテレビ)

ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。

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2010年3月 3日 (水)

魔女が婚姻する日(榮倉奈々)まっすぐに曲がっている男(深田恭子)

さて、月曜日からなんとなく恥ずかしい感じのドラマが続いているわけだが、他人の努力とか栄光と挫折とかに酔う五輪に対抗する以上、フィクションの作り手たちもある程度、ベタッと作るわけである。

なにしろ、不人気で代表戦でせっかく海外組を召集したのにアナログテレビでは「サッカー中継」がされないご時勢なのだ。

そういう今日この頃、黙々と伸びていく東京スカイツリーなのである。

なんとなく、塔っぽくなってきました。

火曜日のドラマ対決は①「泣かないと決めた日」↗13.0% ②「まっすぐな男」↗10.5%

ほらほら、べっとりと好調でございます。

で、『泣かないと決めた日・第6話』(フジテレビ100302PM9~)脚本・渡辺千穂、演出・石川淳一を見た。悪の賢者と善の愚者の戦いは一つの決着を見る。主人公・角田美樹(榮倉奈々)は恋敵の魔女・万里香(杏)にまんまと恋人の仲原(要潤)を略奪され、巧妙にコントロールされた仲原は万里香の妊娠が誤認(実は虚偽)だと分った後も自らの選択により万里香と挙式するのだった。

その途中では帰ってきたウルトラマン(団時朗)に仮面ライダーG3が鉄拳制裁されています。

花嫁の母(筒井真理子)、花婿の母(田島令子)もいつ殺人事件が起きてもおかしくない布陣でございます。

ある程度、ドラマを見続けている人には仲原が美樹に贈ったローマの絵葉書という小道具の展開が手順通りすぎておかしかっただろう。

美樹はそれを職場の机の引き出しにしまっている。

「ローマは一日にしてならず」という仲原の言葉が、理不尽な虐めの展開される職場で脱落しそうになる美樹の心を支えていたのである。

しかし、仲原との別離によってその神通力は失われる。

失恋のショックで仕事が手につかない美樹は「それ」を眺めても心が痛むだけなのである。

やがて、「それ」は無意識のうちに机の中で裏返される。

そして・・・「妊娠していなくても万里香と結婚する」と仲原に告げられた美樹は「それ」を持ち出して屋上に上がるのである。

「それ」は仲原との決別を象徴するセレモニーとして破られ捨てられる運命にあるのだ。

どの段階で「それ」がそうなると予測できたかが、ある程度、それぞれの先見の明の度合いを示すのである。

キッドは小学生の頃の利発な男友達を思い出す。

遠足の電車でお菓子の包装紙などを開け放した車窓にかざし、彼はにこやかに言うのだ。

「僕が捨てたんじゃないよ・・・風に飛ばされたんだ」

次々に消えていくゴミに・・・仲間たちはゲラゲラ笑ったものである。

そのことをキッドは美樹が机の引き出しを開けた瞬間に思い出した。

きっと、日本のどこかで誰かが「屋上からゴミ捨てるなよ」とつぶやくと思ったからだ。

まあ・・・そういうどうでもいい個人的な追憶はさておき、美樹は新たな一歩を踏み出す。

美樹の才能を評価する統括マネージャーの桐野(藤木直人)は美樹に完熟トマトの作り方をみせるのだ。

「ほら・・・ここの土は乾いているだろう・・・これはトマトを苛酷な環境に置いてしっかりと根をはらせるためなんだ・・・そうするとトマトは栄養満点の甘いトマトになる・・・もちろん・・・中には耐えられずに枯れてしまうトマトもいるけどね」

「スパルタ方式ですね」

「そうだ・・・いじめとしごきは似て非なるものなんだよ」

「栄光に犠牲はつきものなのですね」

「その通りだ・・・優秀なものが生き残る・・・それが自然というものなのだ」

やがて・・・美樹は不自由な足の手術を終え、リハビリに励む妹・愛(川口春奈)の苦痛に歪む顔に・・・新たなる希望を見出すのだった。

美樹の心の支えは「恋人」から「職場の上司」と「健気な妹」に移ったのだった。

やがて・・・できる女として機能し始めた美樹は・・・暴力亭主との離婚届けを胸に仕事を続ける琴美(紺野まひる)の家庭の秘密を共有したり・・・書類上の不審点をチーム・リーダーの佐野(木村佳乃)に報告するまでにいたる。

そのために使途不明金の存在に気がついた佐野は上司の梅沢部長(段田安則)に調査を進言する。

優秀な佐野が何の疑いもなく梅沢部長に報告するあたりが・・・このドラマのローマの絵葉書ポイントなのである。もちろん、使途不明金の仕掛け人が梅沢部長本人であることは言うまでもない。

梅沢は退職した派遣社員の白石(有坂来瞳)を呼び出して・・・佐野を貶める工作に着手するのだった。

実に分りやすい展開である・・・褒めています。

一方、桐野はチームを活性化させるために企画コンペを開催すると宣言をするのだった。

もちろん、出番の少ない男性社員の西島(五十嵐隼士)の主役回を作るためなのである。

さて、魔女の使い魔となっている変態・田沢(長谷川純)にはどんなベタな展開が用意されているのか・・・楽しみです。

魔女が獲物の心がまだ美樹に残っていることを憤り、意地悪するときの生贄として悪魔に捧げられたりして・・・しないよ。

関連するキッドのブログ『先週の火曜日のレビュー

で、『まっすぐな男・第8話』(フジテレビ100302PM10~)脚本・尾崎将也、演出・三宅喜重を見た。松嶋(佐藤隆太)は最初はまじめに仕事をしているが、途中からは恋の道に一直線である。・・・そこか・・・そこがまっすぐなのか。

誰の子供だか判らない胎児をかかえる鳴海(深田恭子)を愛はないが結婚できる男の手から強奪した松嶋は・・・ついに本音を漏らすのだった。

「お前が好きだ~」

浜辺で子供が笑うような展開である。

そして、交際中の佳乃(貫地谷しほり)には「鳴海が好きだから、君とは別れる」宣言である。

さすがに泣き出した佳乃に対する言い訳が「君はいつでも俺の生き方を認めてくれた・・・いつも励ましてくれた・・・それに対して鳴海は俺の生き方が間違いだというし、会えば喧嘩ばかりしてる・・・気がついたら鳴海を好きになっていた」なのだ。

まあ・・・どんなこと言われても納得できない展開だが・・・納得できないにも程があるだろう。

もちろん、佳乃の幸せを祈る男、熊沢(田中圭)は松嶋をぶん殴ります。

しかし・・・さすがに腹にすえかねた佳乃は毒針を発射。

「バイクを貸せば事故り、男を貸せば返さない・・・そんなあなたに松嶋さんを幸せにできるのかしら」

生まれついての不幸に染まった鳴海には「しあわせ」と言う言葉はたやすく凶器となるのだった。

松嶋とのしあわせな暮らしは鳴海にとって失うことが耐え難い恐怖の呪いなのだった。

たちまち・・・一計を案じて、世界一いい加減な男・矢部(渡部篤郎)に嘘の結婚宣言をさせる鳴海。

松嶋は自分がふられるという予想外の出来事に茫然自失となるのである。いい気味だ。

しかし・・・たちまちバレる真っ赤なウソ。

説明を求める松嶋の前から鳴海は逃げ出すのだった。

「好きだけど一緒にはいられない」という女と「そんなことはやってみなければわからない」という男の馬鹿馬鹿しくも悲しい追跡劇は赤信号で絶対止らないタクシーによって幕となるのである。車内で愛した男の自分を呼ぶ声を聞きながら涙ぐむ鳴海だった。

「くそっ・・・絶対逃がすかっ」

やさぐれ刑事のように夜空に吠える松嶋なのである。。

鳴海の心情の哀れに涙さそう展開だが・・・ちっとも心に響かないのは何故なのでしょうか。

そりゃ・・・ここまでが・・・ここまでだから・・・だろうがっ。

木曜日に見る予定のテレビ『グインサーガ』(NHK総合)『853』『エンゼルバンク』『ラストメール2』(テレビ朝日)『不毛地帯』『長澤まさみの卒うた』(フジテレビ)

ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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2010年3月 2日 (火)

愚かさに学ぶものを賢者と呼ぶ(山下智久)過信が過誤を招くコード・ブルー(戸田恵梨香)

大津波警報を発したことの是非が問われ、韓国のナショナリストは日本の情報発生源を無差別攻撃する。

世界は混沌に満ちている。

不愉快な言動を圧殺するのは優れた行為とは呼びがたいが通り魔に命を奪われる無防備な人間を弱者と規定することには抵抗がある。

参加することに意義があるという理念に基づくオリンピックで金メダルを取れなかった競技の責任者は辞表を書くべきだとロシアの大統領はもの申す。

あらゆる科学技術の発達は情報の蓄積に負うところが大きいが、情報を持たざるものの持つものへの嫉妬は凄まじい。

なぜなら、安定した社会では情報をコントロールしたものが勝者であり支配階級なのである。

だからこそ階級闘争が爆発した時、愚者は知識人を虐殺する。

そして・・・ふと気がつくのである。憎いエリートは殺した。しかし、自分が病気になった時、治療してくれるものがいなくなっていることを。

自分を滅ぼすもの・・・それは常に自分なのである。

予想の精度が悪いから大津波警報は無意味だというものは次の津波で溺死するのである。

銀メダルを絶賛するものは金メダルを讃える言葉を失うのだ。

愛を信じなければ喜びもなく、愛を信じれば悲しみがある。

禍福は糾える縄の如しなのである。

本題に入る前に恒例の週末の視聴率チェック。「宿命」↗*6.4%(母の邪な愛は嫉妬で胎児をも殺す)、「ヤマトナデシコ七変化」↗*7.6%(ドタバタといじめは紙一重である)、「サラ金2」↘*8.9%(幼いものに学ぶこと)、「ファンタスティック・フォー」12.7%(ボイルの出番だボヨヨンヨン)、「ブラマン2」↗*9.1%(川島海荷とったな)、「左目探偵」↘*7.0%(佐野史郎の無駄使いだな)、「明日はない」↘*5.9%(麻生祐未がもったいないな)、「トリビアの泉」20.1%(へぇへぇ)、「龍馬伝」↘21.0%(山本琢磨とれなかったな)、「特上カバチ」↗*8.5%(バンビいったりきたりしすぎだな)・・・ついでに「ハンチョウ」↗12.5%、「コードブルー2」↘15.3%・・・以上。

で、『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命 2nd Season・第8回』(フジテレビ100301PM9~)脚本・林宏司、演出・関野宗紀を見た。「できちゃった結婚」とか「離婚弁護士」の演出補(アシスタント・ディレクター)の昇格演出である。ちょっとフレッシュなすべりを感じるが・・・今回は脚本も際どい感じなので別のドラマのように感じた人も多かったと思う。もちろん、若気の至りというものはあるので・・・最初から天才的演出であるより・・・ここからどう成長するかを考えるといいと思う。まあ、ある意味、バンクーバー・デビューの女子中学生・高木選手のような感じである。

フェロー・ドクター(専門研修医)たちはドクター・ヘリのスタッフとしてはいよいよ卒業が迫ってきている。藍沢(山下)、白石(新垣結衣)、藤川(浅利陽介)はプライベートで問題を抱えるが医師としては順調に成長している。しかし心肺停止からの蘇生を乗り越えた緋山(戸田)だけは医師として大問題に直面しているのである。

藍沢は自殺した母と無責任な父という問題のある両親に悩み、白石は葛藤のあった父親の不治の病に苦しみ、藤川はちょっと無理めの片思いに悶えている。

そして・・・緋山は信念に基づき手続きを怠ったために遺族から医療過誤の訴訟をおこされてしまう。

医療の最前線で働くドクター・ヘリ・チームは一人の人材を謹慎させたために苛酷な勤務体制に直面するのだった。

結果にはそうなった理由がある。しかし、何を原因とするかを判断するのはとても困難なことなのである。なぜなら・・・原因もまた一つの結果にすぎないからだ。

白石は追い詰められた現状を語りだす。

働きすぎだって思うことがある。

一日、十時間も働くと残りは十四時間しかない。

そのうち、何時間を仕事のための準備に使っているだろう。

完全を求めればきりがないのだ。

最善を尽くすためには最新の情報はかかせない。

新しい技術の成果、その導入の方法、成否の統計。

知らないですませることは簡単ではない。

特に人命を預る仕事では・・・。

その終わりのない情報収集を適当にきりあげるのにさえエネルギーがいる。

常にベストを尽くすのは基本である。

しかし、限界を追いかけるうちに最後の一線は見えなくなる。

世界がくれる暖かい言葉。

自分が成し遂げることの喜び。

そうしたものを糧に眠りから目覚める。

そして・・・ふと自分に問いかけるのだ。

一体、私はなんのためにこんなにがんばっているのか・・・と。

緋山は翔北救命センターを彷徨う。謹慎処分中であり、医療行為は禁じられている。死から蘇った緋山にとって・・・これは死後の世界の悪夢なのではないかと思える日々である。

患者を救うために全力を尽くして力及ばず、残された遺族に精一杯の誠意を示そうとした結果、訴えられ拘束され裁きを待つ身である。

そのために緋山は事件の本質に目を向けることができない。

自分の過誤を認めるためにはそれが過誤だったことを受け入れるほかないのである。

しかし・・・私の何が間違いだったというのか。

戦って常に勝ってきた緋山には勝者が弱者に裁かれるという世界の理不尽なシステムを受け入れることが困難なのである。

契約とは賢者と賢者のシステムではない。愚者のための賢者によるシステムなのである。

愚者を賢者と取り違え、愚者の人間性を信じた緋山は先人の知恵をないがしろにしている自分に気がつかない。

自分のしたことをなかったことにする愚か者のためにDNR(do not resuscitate=延命するな)オーダー(同意書)は存在する。

愚者を愚者として扱うことに負い目を感じる賢者は賢いとは言えないのである。

しかし・・・緋山はその非を認めることができないのだ。

愚者を賢者と信じた自分を否定することになるからである。

緋山は希望に縋りつく。どうか、周囲の人々が愚者であると決めたあの人が・・・私の信じた通りに賢者でありますように。

だが、それは所詮、他力本願なのだ。

食堂にすわりこむ緋山の中にかっての自分の姿を見出したシニア・ドクター(指導医)の三井(りょう)はそれを告げる。

「裁判や医師免許の剥奪のことよりも・・・病院や仲間に迷惑をかけていることが苦しいまでしょう・・・分るわよ・・・私もそうだったから・・・」

しかし、緋山は答えない。

(本当に分ると言うのだろうか。私もそうだと思いたい。しかし、幼い子供を失った母親の苦しみを分ると思った私はどうなった。目の前に患者がいても何もできない医者になってしまったのです。このまま、医者でなくなるかもしれない自分のことを案じていないと言えるのか。それよりも人員不足のチームの心配を私がしていると。私は本当にそこまで自分をないがしろにしていると・・・三井先生は本当に信じているのですか・・・つけてはいけない聴診器に手をのばした私の胸の痛み・・・相手側弁護士の説明申し入れを待つ死刑囚ののような私の不安を・・・)

そこへ、もう一人の指導医・橘(椎名桔平)がやってくる。

「連絡があった・・・間もなく先方が到着する・・・」

絶望は愚か者の結論だと言う。それでは希望を持つことは愚かなことではないのだろうか。

緋山の心には希望と絶望が交互に去来しているのである。

父親が絶望的なガンであることを知り、自分を見失いつつある白石は、緋山が実質不在の翔北救命センターを離脱し、休暇をとって故郷に帰ろうとしている。

過労気味の顔をした田所部長(児玉清)は快く白石を送り出そうとする。

「気にすることはありません・・・あなたの大切なお父様のためだ・・・」

白石は父親の不調を見抜けなかったように・・・上司の不調を見抜けないのである。

緋山の不在の穴を埋めるために田所部長は当直を増やしている。

白石が抜ければさらに老骨に鞭を打つことになるのである。

(しかし・・・私の大好きな大好きなパパは・・・もうすぐいなくなってしまうのです)

白石は気を許せば泣き出しそうな自分に耐えている。

スタッフ・ボードに休暇のスケジュールを書き込むと藍沢と遭遇する。

「今夜・・・予定通り・・・帰郷するのか・・・」

「あなたは・・・お父様とは会えたの・・・」

「ああ・・・結局、母が死んだのは俺が生れたためだったらしい・・・しかし、どうでもいいことだ・・・何しろ、覚えてすらいないことだからな・・・」

「そのこと・・・お祖母様には伝えたの・・・」

「いや・・・忙しくて・・・最近は見舞いにいく時間もない」

「でも・・・まもなく退院でしょう」

「そうだ・・・病気が治って病院を出て行く・・・いいことじゃないか」

白石は藍沢の鬱屈が手に取るように分った。しかし、それを慰める術をもたないのである。いや、あるにはあるが・・・今夜は自分のもうすぐ死ぬ父親のために実家に戻るのだ。

そんなドクターヘリ・チームの中に忙しさに喜びを感じている男がいた。

愛する女をニクソンという外国人に奪われた森本医師(勝村政信)である。

「俺はわかったんだ・・・彼女が誰かを愛していても、俺が彼女を愛していればなにも問題がないってことがな」

藤川には忙しさのあまりに森本が狂を発しているとしか思えなかった。

藤川にとっての問題はフライトナースの冴島(比嘉愛未)が自分を愛し始める糸口をつかめないことである。藤川は糸口さえ掴めば愛が始まる自信があった。

何しろ、自分の愛はもう始まっているからである。

藤川には恋敵がいたが、なんとかなる自信もある。なにしろ、相手はもう死んでいるのである。

死者にできることが少ないことを藤川はもう充分に知っていると信じている。なにしろ、医者なのだ。

藤川は冴島を見かければふらふらと尾行を開始する。草津の湯でも治せない病にかかっているからである。

冴島はロビーにやってきた。その視線の先には一ヶ月前にこの病院で死んだ娘の面会に訪れるという精神的に問題のある母親がいる。

「毎日・・・ああしていらっしゃるんです・・・」

藤川の中に奇妙な苛立ちが芽生えた。

「いつまでも・・・死んだ子供の病室を訪ねても・・・仕方ないじゃないか・・・」

藤川は憐れな母親を説得しようとする。

「娘さんは・・・もう葬儀も済んでいるのですよ・・・気持ちは分るけど・・・もういい加減、前向きに考えないと・・・」

その言葉を憐れな母親と同様に途方に暮れて聞き流す冴島だった。

その時、ニクソンを愛する女・轟木(遊井亮子)の声が響く。「ドクターヘリ・エンジン・スタート」

藍沢、三井、冴島のトリオは我を忘れて出動する。

モルガン菌などのヒスタミン合成菌に汚染されたイワシはヒスタミンを蓄積していく。低温でも増殖するタイプに汚染されれば蓄積量は増加する。加熱調理をすれば菌は死滅しても毒素としてのヒスタミンは分解されないのである。問題のないように見えるイワシは蒲焼にされ、高校サッカー・チームの試合後の弁当のおかずとなった。

腐敗臭のないヒスタミン入りイワシを美味しくいただいた少年たちはまもなく、化学性食中毒によるアナフィラキシー・ショックに急襲されるのである。

少年たちは個人的な発症の時差はありつつ、次々と発作に襲われるのだった。

いわゆる一つの集団食中毒である。

最初の発生からまもなく、ドクターヘリ、救急車、送迎バスと様々な手段で搬送されたサッカー高校生で翔北救命センターは大混乱に陥るのだった。

そんな折に緋山を訴えた遺族と弁護士が来院した。

医師にとっては医療訴訟は毒素に他ならない。消毒装置である延命処置の停止に対する同意書のサインという手続きを軽視した報いが緋山にショックを持たらすのだ。

そして、緋山の医師生命は生死の境を彷徨うのである。

田所は状況を見つめて思う。

今日も大漁じゃないか・・・。医者にとって患者は何よりのクスリだ。飯の種だし、生きがいだ・・・患者がいれば医師はなんとか生きていけるのだ。

だが・・・患者は大人しく治療されるとは限らない。それに患者にはやっかいな家族というオマケもついてくる。このオマケが曲者なんだよな。家族もみんな患者になっちまえばいいのになぁ。

より多くの患者を求めてドクターヘリを開設した田所にとってその組織の存亡をかけて緋山事件に立ち向かわなければならない。

遺族側は死んだ患者の母親(吉田羊)、その兄でいかにもクレーマーな死んだ患者の伯父(松田賢二)と弁護士。

病院側は田所救命センター部長、春日部事務長(田窪一世)、相馬弁護士(隈部洋平)が出席している。

そこへ橘に付き添われ緋山がやってくる。

緋山の中では医師としての無力感と、人間としての正義感が激しく火花を散らしている。

そんな緋山にクレーマーは激しく噛み付くのだった。

「がるる・・・たしかに翼(死んだ患者)に残された時間は少なかったかもしれない。しかし、その期限を決める資格は貴様にはないだろうが・・・」

「す・・・すみません」

緋山はこの理不尽な男がこわかった。今にも口から火を吹きそうであり、瞳には地獄の青い炎が燃えている。あまりの恐怖にあれほど「あやまってはいけない」と念を押されたのについ謝罪してしまうのだった。

青ざめる事務長と顧問弁護士・・・。

しかし、橘は冷静に緋山をフォローするのだった。

「確かに・・・同意書のサインを求めるべきだった・・・そうしなかったのには理由があったはずだ」

田所部長も即座に支援の煙幕を張るのだった。

「そうです・・・医者としてあやまらなければならないことを・・・本当にあなたはしたのですか・・・患者のためにならないことをしたと・・・」

緋山の中でけして自分の過ちを認めない心が張り裂けた。

「私は患者の命を救おうと全力でがんばりましたが・・・患者には脳死判定がくだりました。私はそのことを翼くんの母親に伝えました。翼くんの目はもう何も見ないし、翼くんの耳は何も聞こえない。翼くんの心は何も感じない。つまり、翼くんが脳死しているということをです。そのことを翼くんの母親は理解してくれたと感じました。そしてどんなに深い悲しみが彼女を襲っているのか想像もつかないと感じました。私は彼女のためにできることはないかと・・・たずねたのです・・・すると彼女は・・・患者を抱きしめたいとおっしゃいました・・・私はまだぬくもりがあるうちにと・・・挿管をはずしたのです・・・お母さんにわが子を抱きしめさせてあげたかったのです・・・」

さすがのクレーマーも実際に起きたことを賢者の口から聞き言葉を失うのだった。

遺族の弁護士は冷静に反論する。

「しかし・・・同意書にサインを求めることはできたでしょう」

「子供を失った母親にそれを認めさせるサインをさせるのはあまりにも残酷なことのように私には思えました。そんなむごいことを平気でできる医師はどこか・・・狂っているような気がしたのです」

緋山は同意を求めて母親を見た。

(あの時、サインを求める医者と求めない医者・・・人として正しいのはどちらですか)

しかし・・・愛児を失った母親にとってそんなことはどうでもよかったのである。

ただ、今の話を聞いて蘇ってきたのはその時の温もり。そしてその温もりが二度と戻らずその手から失われたこと。それを思うと気分が悪くなる。

「私・・・気分が悪くなりました・・・」

母親は退席した。

緋山の最後の希望は無惨にも打ち砕かれた。

(私の正しいと思った選択は・・・間違っていた・・・間違っていた・・・間違っていたんだ)

愚者を賢者と信じてしまうのは何故だろう。

それは自己過信のなせる技なのである。

つまり、緋山は「自分の善意が相手に伝わった」と信じたのである。しかし、相手は時にはその事実を認めなかったり、忘れたり、違うと信じたりするものだ。

愛児を失った母親がどんな気持ちになるのか・・・緋山には想像もつかないのである。

未だに緋山は「相手に裏切られた」と感じているが・・・実際に裏切ったのは「自分自身」なのである。そして緋山はそのことに気がつかないのだ。

なぜなら・・・緋山は自分を疑うことが苦手なタイプだからである。

そういう人はここで制限速度があるのはおかしいと判断して速度違反でキップをきられることがよくあります。

田所は緋山の気持ちがよく分った。

(この娘は本当に患者が大好きなんだなあ・・・好きで好きで自分を見失うほどに・・・)

そして退室してからそっと言うのである。

「患者や患者の家族と信頼関係を築けば築くほど・・・裏切られたショックは大きいものです・・・彼女の傷はかなり深いでしょう・・・いわば・・・心のアナフィラキシー・ショック・・・私はそれが心配です」

同意があったのか・・・なかったのかは裁判の争点になるが、「息子の死」から逃れたい一心の母親の記憶は混乱する。

結局・・・同意書はそういう場合に備えた手続きであり・・・それが無いのは致命的なのである。

緋山の医師生命は脳死と心肺停止の区別もつかない素人にたやすく握られてしまったのである。

もちろん・・・それを握らせたのは緋山自身なのであるけれど。

そうした皮肉で暗鬱な会議室とは別に処置室は症状の軽重もまちまちな高校生サッカーチームの喧騒で満たされていた。

特にやや自閉症的な発達障害の傾向が窺える中毒症状の比較的軽症な自称エース・ストライカーは興奮して饒舌になっているのだった。

エース「うわっ・・・うわっ・・・なんなの・・・管してんの・・・なに管入れたりして・・・マスク・・・マスク・・・俺・・・マスクないの・・・あんた・・・小さい先生・・・あんた控えのドクター・・・後半にも出場機会がないタイプ・・・うわっ・・・かっこいい・・・先生は・・・ポジション的に・・・フォワードでしょ・・・俺と同じで・・・ワントップだったりして・・・うわっ・・・へへへ・・・うわっ」

藍沢「お前・・・うるさい」

エース「うわっ・・・なにそれ・・・うわっ」

司令塔「す、すみません・・・そいつ・・・本当にちょっとバカなんで・・・」

藍沢「そうなのか・・・」

司令塔「でも・・・サッカーセンスは抜群なんですよ・・・ちょっと暴走することもありますけど」

白石「君・・・キャプテンでしょ・・・」

司令塔「あ・・・わかります」

白石「優等生タイプだもんね・・・」

司令塔「ウチは親の代から続いたサッカー一家なんで・・・」

白石「そうなんだ・・・」

司令塔「先生も親の代から医者でしょう」

白石「あら・・・なんでわかるの・・・」

司令塔「分りますよ・・・優等生タイプは親の言うことをよく聞くんです・・・結局・・・親の見た夢を見るようなになるんですよ」

白石「あら・・・あなた・・・耳から出血が・・・」

司令塔は転倒して頭蓋底出血をしていたのだった。

エース「うわっ・・・どうしたの・・・うわっ・・・どこいくの」

藍沢「心配ない・・・落ち着け」

エース「うわっ・・・あいつ・・・大丈夫なの・・・あいついないと、困る・・・いいパスこなくなる」

藍沢「本当にサッカー馬鹿なんだな」

エース「うわっ・・・オレ、サッカーしかない・・・オレ、みんなにバカって言われる・・・ともだちもいなかった・・・うわっ・・・でも、シュートを決めると・・・みんな喜ぶ・・・うわっ・・・先生もほめてくれる・・・サッカーをはじめて・・・ともだちできた・・・オレ・・・サッカー大好き・・・」

藍沢「・・・・・・・・・・・・そうか」

幼いもの、愚かなもの、他愛無い者・・・そういうものは毒にも薬にもなるものだ。その時、暗雲の立ちこめた藍沢の心にサッカー・バカの魂が稲妻のように轟いたのである。

エース「うわっ・・・うわっ・・・オレ・・・心配・・・」

藍沢「おい・・・安静にしてないと・・・」

走り出したサッカー・バカはたちまち発作を起こして転倒するのだった。

藍沢「運動誘発性アナァフィラキシーだ・・・」

てんやわんやの救命センターだったが、食中毒患者からは一人の死者も出さずに一日を終えたのだった。

二人の指導医のコント。

三井「・・・緋山に助け舟を出してくれたそうね」

橘「かわいい教え子だからな・・・っていうか・・・俺は・・・悔やんでいるのさ」

三井「何を・・・」

橘「あの時・・・君を庇ってやらなかったことをだ・・・」

三井「・・・」

橘「それどころか・・・医療訴訟で困っている君に離婚届をたたきつけた・・・」

三井「ひどい男だと思ったわ・・・」

橘「すまない」

三井「・・・」

お互いに草臥れてちょっと温もりがほしくなる年頃だったらしい。

ヘリポートのいつものコント。

藤川「やはり・・・死んだ恋人の方が生きているオレよりマシなんですかね・・・そんなバカなことがあるんでしょうか・・・」

梶(寺島進)「昔、オレのダチにも似たようなことがあってな・・・親友の彼女に惚れたんだ・・・でも、結局、彼女は親友を選んだんだ・・・ダチは仕方なく、祝福をするフリをした・・・ところが・・・親友は程なく死んだ・・・事故でな・・・それゃ・・・酷い事故だった・・・親友の彼女はショックでふさぎこんだよ・・・それをオレのダチは元気付けようと・・・毎日・・・電話した。いや・・・惚れたはれたって話はなしさ・・・ただ二人の結婚を心から祝福しなかったことに心がとがめてたんだな・・・だから下心はなしで・・・ただ彼女の世話を焼いたのさ・・・彼女が立ち直るまで二年とちょっとかかった・・・彼女ってのは今のオレの嫁さんだけどな」

藤川「えーっ・・・そうなんですか・・・」

梶「ああ」

藤川「すげえ・・・いい話だ・・・」

藤川は何事か悟ったように立ち去るのだった。

梶「まあ・・・あくまでダチの話だけどな。嫁さんから聞いた話だと・・・ダチの奴、未だに独身らしいけどな・・・」

梶は最後の方は言わぬが花と心得た男なのである。

藤川と冴島のコント。

藤川「亡くなった人を早く忘れろなんて言うのは間違いだと思った・・・」

冴島「・・・」

藤川「そりゃ・・・引きずるよな・・・引きずって当然だもの・・・だから引きずればいいんだ・・・その間・・・何かあって・・・オレができることがあったら・・・オレ・・・何でもするからさ・・・」

冴島「ありがとうございます」

翌日、冴島は娘を亡くした憐れな母親を娘のいた病室に案内した。

冴島「大切な人をなくしたからといって・・・それをすぐには信じられませんよね」

憐母「・・・」

冴島「だから・・・何回でも病室にいらしてください・・・私・・・何度でも病室にご案内します」

憐母「・・・ありがとう・・・ありがとうございます」

信じられないことに藤川の心は少しだけ冴島に通じたようだ。ただ二人が結婚するかどうかは全く別の話であることは言うまでもない。

白石は結局、故郷に向かう飛行機に乗りそびれた。

白石「もしもし、私、誰だかわかる」

父「なんだ・・・もう・・・こっちについたのか・・・」

白石「私・・・お父さんのこと・・・気がつけなくてごめんなさい」

父「なんだ・・・そんなこと・・・」

白石「昔のお父さんを思い出した・・・患者患者で・・・いつも家にいないし・・・私との約束はいつもすっぽかして・・・」

父「そりゃ・・・すまなかったな・・・しかし・・・お前の寝顔はいつもかわいかった・・・」

白石「でもね・・・私・・・そんな・・・お父さんが大好きだった・・・いつも誇りに思ってた」

父「・・・」

白石「だから・・・私は帰れません・・・今、私、医者になったから・・・まだ・・・お父さんには遠くおよばないけれど・・・」

父「・・・」

白石「だから・・・私が立派な医者になるまで・・・長生きしてください・・・」

父「・・・ふふふ・・・わがままな娘に育ったもんだ・・・わかった・・・お父さん、がんばるよ」

白石「・・・お父さん・・・」

これ以上は前が見えないので書けません。

翌日、藍沢の祖母・絹江(島かおり)は退院した。藍沢はひっそりと病院を去ろうとする絹江に声をかける。白石が帰郷しなかったのですっきりしたような落ち着きである。

藍沢「昨日、サッカー馬鹿がいてさ・・・こう言うんだ・・・いいところ見せると喜んでくれる人がいる・・・だから、オレはがんばるんだって・・・そんな当たり前のこと・・・オレは忘れてたよ・・・オレが100点とると・・・ばあちゃんは喜んでくれた・・・大学合格した時も・・・ばあちゃんは喜んでくれた・・・俺が今、医者になれたのはばあちゃんが喜んでくれたからだ・・・母さんのこと・・・父さんから聞いたよ・・・そのこと・・・隠されていたことにちょっととまどったけど・・・もう平気さ・・・次の母さんの墓参り・・・一緒に行って・・・たまには美味しいものでも食べようよ・・・仕事ばっかりしていて・・・俺・・・お金の使い道に困ってるんだ・・・」

絹江「貯金しなさい」

藍沢「ばあちゃん・・・」

生きるために理由がいらないように。

医者を続けるために理由なんていらない。

ただ、人は時には生きるための理由が欲しいときがある。

生きているのが辛いとき。

生きる意味が分らなくなった時。

生きているのがイヤになった時。

どうして生きつづける必要があるのか・・・人は考える。

だから、医者が医者であることに理由を見つけ出そうとしても

不思議ではないのだ。

それがどんなに愚かで馬鹿らしくてとりとめない理由でも

ないよりはずっとマシなのだ。

だが白石の答えは緋山には無用のものである。

だが・・・そんな他愛の無い理由にも

裏切られたものはどうしていいのかもうわからない。

緋山がいつものように藍沢に声をかける。

「アナフィラキシー・ショックの集団発症だったんですってね・・・」

「そうだよ・・・うらやましいか」

「・・・そうそう・・・うらやましい・・・って・・・いつもの気持ちになれればよかったのに」

「・・・緋山・・・」

「私・・・もう・・・患者が・・・ダメみたい・・・患者が怖くて・・・患者がいやでいやでたまらないの・・・患者なんてみんな死んじゃえばいいのよ・・・私は・・・患者が憎いの・・・憎くて憎くてたまらないの・・・・」

「・・・」

かける言葉が見つからず・・・立ちすくむ藍沢だった。

どうする・・・ビンタして・・・バカッて言うところなのか。今日はベタベタだからそれもいいかもな。・・・いや・・・さすがにそれじゃ・・・格調も品位もあったもんじゃないからな。背中のロゴが泣いちゃうもんな。

「・・・患者だ・・・医者には患者が必要なんだ。どんな傷心もきっと患者が癒してくれる。だが、患者を奪われた医者はどうすれば傷ついた心を癒すことができるというのだ・・・」

床に倒れた田所部長は薄れ行く意識の片隅で必死に答えを求めるのだった。

患者が医者になるのは大変だが医者が患者になるのは一瞬ですむことが多い。

関連するキッドのブログ『第7話のレビュー

一ヶ月に300キロメートル以上走る天使テンメイ様のレビュー。

Hcinhawaii0624 ごっこガーデン。憧れのドクター・ヘリ・ランデブー・セット。エリ伝わらない善意・・・凍った心・・・すべては負のスパイラル・・・逆転現象への布石なのでスー。藍沢の患者を通じる心の旅路も高校時代までやってきました・・・困難な卒業儀礼を潜り抜け・・・旅立ちの季節は桜の花咲く頃(東北地方をのぞく)なのですyon!・・・ああ・・・一歩一歩、大人になっていくフェローたち、青春の終わりに漂う一抹の寂しさの予感・・・一番幼い緋山は末っ子感が漂います・・・あの頑なさは大切にしたいけれど・・・大人になるときは何かを喪失するものと・・・はうぅんな噂なのでスーお気楽ヘリがかっこよく飛んで、デンジャラスな現場で命懸けの救命活動、スカッと人命を助けてオフはおかまバーでパッと騒ぐ・・・そんなコード・ブルーも見てみたい・・・毎週毎週辛気臭さが加速してるよねmariあの人と呼ばれたお父さん・・・藍沢Pはわだかまりをそっと潜ませたみたいです・・・一方、純真な自分にこだわるあまり・・・ついにひび割れた緋山の心・・・ドクター・ヘリの静脈と動脈は一体どうなってしまうのか・・・ああ・・・結末が待ち遠しいし・・・永遠にこないで欲しい気もする春なのですikasama4今回の脚本は実にクサイ展開の連続でしたね~・・・すべては大団円に向かっていく気がしますが・・・海外ドラマの流行を考え・・・シーズン3を考えるとものすごい最終回の布石とも考えられますな。緋山の裁判はいよいよ開始・・・白石は父危篤の知らせを受け空港に向かうが春の嵐で欠航・・・ロビーで急患発生、藤川は冴島に告白しようとして転倒、冴島は再び不治の病の患者と恋の予感、藍沢の前に死んだはずの母親が現れる・・・そして千葉には巨大地震が・・・つづく・・・だったらどうしようくう高校生たちはあまりにも頭悪そうでしたけど・・・ま・・・食中毒で頭おかしくなっていたのかも・・・それにしてもいつも以上にネタ満載で・・・登場人物の誰が何に悩んでいるのか・・・失念してしまいそう・・・なんじゃこりゃー・・・って新人演出家ほろ苦いデビューだったのか・・・まこ誰か・・・緋山先生を助けてくだしゃい~・・・あの母親の目を覚ましてくれる立派なお坊さんはいないのですか~・・・心の優しいいいドクターの医師生命を奪ったら・・・死んだ翼くんも浮かばれまいに・・・三途の川で溺れちゃうど~・・・ナムナム・・・

水曜日に見る予定のテレビ『曲げられない女』(日本テレビ)『相棒』(テレビ朝日)『赤かぶ検事京都篇』『新撰組ピースメーカー』(TBSテレビ)

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2010年3月 1日 (月)

のび・・・バンビのくせに生意気です(櫻井翔)雨音にはショパンをカバチには特上カバチを(堀北真希)

今回も「雨音はショパンの調べ」に始まり、「愛の水中花」で「スカイハイ」から「ヒゲのテーマ(Do Me)」にて終るという・・・1970年代から1980年代(昭和50年代)のナツメロ大会BGMである。

なんなんだ・・・。

ま、とにかくノリノリなことは分ります。

若い子にはわからんだろうけどね・・・。

で、『特上カバチ!!・第7話』(TBSテレビ100228PM9~)原作・田島隆(他)、脚本・西荻弓絵、演出・今井夏木を見た。演出家・・・幼い頃の思い出か・・・。あの頃も貧しい人は貧しく、豊かな人は豊かで・・・貧しいものを食い物にするビジネスはそれなりに儲けていたよな。時代が変わっても人間のやることは変わらないのである。

消費者金融という貧困ビジネスがやりすぎて・・・社会問題となり、規制法案が成立したように、悪徳不動産ビジネスを規制する法律が今国会に提出され、来年春の施行を目指しているのである。いわゆる一つのイタチごっこである。

どう考えても家賃を滞納されて困る大家が涙目なのであるが・・・「土地が誰かのものであることがおかしい」という小学生やアメリカ原住民の気持ちも人々の心に眠っている。

しかし・・・今回、登場するのはそういうまともな大家と店子の話ではなくて・・・家賃が払えるかどうかも分らない不安定に経済状況に置かれた貧しい人々とそういう人間のなけなしの金を狙う仁義なきビジネスマン。そして、それを妨害する正義のボランティアとのいざこざである。

まともな人間は一人も出てこないのでご注意ください。

のび・・・バン・・・田村(櫻井翔)の昔の職場の先輩、山田(三宅弘城)が泣きついてきた。

「家賃を一日、滞納したら部屋の鍵を換えられ入室できなくなってしまった」と言うのである。

それはやりすぎだと・・・田村が例によってボランティアでかけあいに乗り出すと・・・借地借家法を逃れるために契約書に「貸しているのは鍵・・・部屋は鍵に付属したサービス」と示されているという悪徳不動産屋・瀬古井(田中哲司)が登場する。

すべては最初から貧乏人のない袖をふらせる魂胆なのである。

瀬古井の名前を聞いて、行政書士の住吉美寿々(堀北真希)は仇敵を思い出す。昔、悪徳金融業で貧困ビジネスを展開した男がいた・・・。

かって美寿々がギャフンという目にあわせたその男は業種を変えて同じことをしている。

サラ金が不動産屋になり、取立て屋が追い出し屋になっただけで手法は同じ悪徳な手口である。その正体はもちろん仁義なきビジネスマンなのだ。

瀬古井に宣戦布告をした美寿々は「目には目を、せこい手にはせこい手よ」と仁義なきビジネスマンも驚愕の手段に訴えるのだった。

合鍵業者に「鍵をなくしました」と嘘をつき、新しい鍵に交換した上で山田を部屋に居座らさせ・・・第三者の品物を瀬古井側に破損させ、その様子をビデオ撮影し、損害賠償請求を起こすと瀬古井を脅すのだった。

もう・・・どちらが仁義なきビジネスマンなのか判別不能です。

しかし、そんな脅しには屈しない、本物の仁義なきビシネスマンの親分である瀬古井は再び、部屋の鍵を変更し、山田の実家や職場にまで脅しをかけ、山田の家財道具を処分するという強硬手段を展開する。

「訴訟でもなんでもどうぞ・・・弁護士を雇う金があるんならね・・・」

と貧乏人の足元を見透かしたふてぶてしさである。

「もしも・・・自分が弁護士なら・・・ただで引き受けるのに・・・」

というどれだけヒマなんだ状態のいつもの田村と美寿々である。なにしろ・・・田村にいたっては行政書士でもないのである。

弁護士法で定められた「弁護士以外の者が示談交渉などの法律事務を行うことはこれを禁ずる」という法律の壁が田村たちの救いの手を山田にのばすことを許さないのである。

不況のために会社が傾き、減給され、妻と子に愛想をつかされた悲惨な男・山田の心の拠り所だった愛児の描いた絵も廃棄物の処理場で雨に汚れるのだった。

追い詰められた田村だったが・・・瀬古井の家賃の取立て行為が・・・弁護士法違反になることに気がつくのである。

家賃を滞納した契約者に対する交渉は弁護士活動にあたるのだった。

その盲点・・・盲点なのか・・・をついた田村は瀬古井を「刑事告発」すると恫喝し、「慰謝料100万円」を脅し取るのであった。もう恐喝罪が成立しそうな勢いである。

「でも・・・僕が欲しいのは・・・金じゃなくて・・・家族のぬくもりなんだよね・・・」と言い出すわがままな山田だった。

しかし・・・気が遠くなるようなお人好しである田村は「でも・・・このお金でおいしいものをご馳走したり・・・ゲームとか買ってあげれば・・・失われた家族の愛を取り戻せるかもしれないじゃないですか・・・愛で金は買えないけど、金で愛は買えるんです」と山田に語りかける。

「そうだったのか」・・・社会の真実に気がつく山田だった。

そして、100万円を有効に使った山田は家族を取り戻すことに成功したのだった。

法律家としては田村を心底馬鹿にしている美寿々だったが、人間として田村の存在価値を認める気持ちが動くのだった。

「あんたみたいな・・・バカに出会えたら・・・私の家族もバラバラにならずにすんだのかも・・・それはそうとあんたの家族ってどんな家族・・・?」

「・・・・・・」それには答えない田村だった。

悲惨な家族によってクールになるものもいれば悲惨な家族によってホットになるものもいる。

人間って不思議なのである。きっとたぶんそれも愛なのである。

そして瀬古井は仁義なき美寿々の告発で摘発されたのだった。

ま・・・本当の仁義なきビジネスマンはそんなことで泣き寝入りしませんが。

関連するキッドのブログ『第6話のレビュー

火曜日に見る予定のテレビ『泣かないと決めた日』『まっすぐな男』(フジテレビ)

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