常識の通じない正しい女の行方(菅野美穂)
「相棒」は新しい相棒・神戸(及川光博)を迎えたシーズン8がいよいよ、来週最終回である。
第18話は脚本・古沢良太、演出・東伸児でちょっと構成を遊んだ「汚れなき諸悪の根源」の話。
一部愛好家にはちょっとサービスである。キッドはそれほどこの手のミステリを好むわけではないが、辻褄あわせの参考にこの事件の経過をメモしておく。
(発端)
経済的に恵まれているが病弱で孤独を感じる少女・梢は淋しいひな祭りをベッドで過ごしている。
窃盗の前科のある老人・西島は昔の習性でお屋敷を覗くうちに少女の孤独に気がつく。
お互いの孤独を埋めるために西島は塀越しに「軍手のウサギ」の芸で少女を慰安する。
少女はお礼に母から娘に譲られる「スチュアート・ハミルトン」のネックレスをプレゼントする。
(質屋)
西島はネックレスが子供の玩具ではなく効果なものであることが分り、返却しようと考えるが前科があるためにこっそりと少女に返したいと考える。
(事件)
孤独な女・樫山ジュンと浮気な美容師・戸倉翔は深夜、関係を持つために家路を急ぐ途中でジュンの「お気に入りのネックレス」の紛失に気がつく。
樫山と同じアパートに住む西島が通りかかり、「二つのネックレス」の存在が誤解を生じる。
軽率な男である翔は西島に暴行し、死に至らしめる。
勘違いに気がついた二人は西島の死体を竹林に埋める。
(捜索依頼)
右京は紛失したネックレスの捜索を依頼され、単独で調査に赴き、梢に風邪をうつされる。
(質屋)
右京は「ネックレスの鑑定」を依頼した西島を特定するが、曲がらない女が母の形見のネックレスを鑑定しにきたことには気がつかない。
(町工場マルタテック)→(西島のアパート)
西島の部屋を訪問した右京は管理人に捜索届けを出すように依頼する。そして隣室の樫山の言動をチェックする。
(ちずのアパート)
右京の知人であるちずのアパートで自殺未遂が発生。相談のために神戸が代理で派遣される。
恋人にだまされた女と相手との交渉に神戸がたちあうことになる。
(喫茶シャトー)
単なる痴話ゲンカだったが、ちずは翔のもう一人の交際相手がジュンであることをつきとめる。だまされた女の殺人未遂を神戸がくいとめ、軽い男である翔は「スチュワート・ハミルトンのネックレス」を慰謝料として差し出す。
(テレビ番組でたけのこ掘りのレポート)
参加者はたけのこではなく、死体を掘り当てる。
(少女の家)
右京は少女から「西島にネックレスを支払った顛末」を聞く。
(ジュンの部屋)
捜査一課トリオは西島の部屋を訪ねた後で隣室の女に不審を抱く。
(ちずのアパート)
翔は殺人未遂の女からネックレスをとりもどす。
(鑑識)
遺留品に「不思議な軍手」を発見した鑑識。右京は意見を求められる。
ちずからの電話で「右京の探すネックレス」と「神戸の見たネックレス」がひとつの線でつながる。
(翔のアパート)
右京と神戸は翔の逃亡を知る。翔のもうひとりの恋人が「ジュン」であることが発覚する。
(ジュンのアパート)
ジュンは自分が孤独であり、死んだ西島が孤独であることを理由にシラをきる。
しかし・・・右京は「孤独ではなかった西島のエピソード」を語り、東風万智子と改名した真中瞳に上から読んでも下から読んでも「こちまちこ」だけが人生ではないと説教する。
説教に感動したジュンの元へ捜査一課トリオが乗り込むとジュンはすべてを白状する。ジュンのお気に入りのネックレスは近所の人が拾い警察に届ける。人は知らない間にどこかでつながっているからである。
(ホテルの一室)
待ち合わせ場所で待っていた翔が逮捕される。
(廊下)
何も知らない捜一トリオとすべてを知っている特命コンビがすれ違う。
(少女の家)
「西島さんは遠いところに旅に出た」と右京は少女に語り、罪作りなネックレスは返却された。
(花の里)
神戸もようやくこの店に馴染んできた。そして神戸は右京に風邪をうつされた。
・・・何を隠して、何を明らかにするか・・・謎解きの魅力は加減である。そして孤独もウイルスも人から人へと伝染していくのである。
水曜日のダンスは・・・。
「相棒」15.7%↗17.2%↘17.1%↗17.5%↗17.8%↘15.8%↗17.2%↗18.1%
「検事」*9.4%↘*5.6%↗*6.0%↗*6.4%↘*6.0%↘*5.1%↗*6.7%↘*5.2%
「曲女」15.4%↘11.0%↗13.7%↘13.3%↘13.1%↗14.5%↘13.6%↗15.9%
やはり、相棒と菅野の相性は抜群なのだな。ネックレスを質入するほどに。
で、『曲げられない女・第8話』(日本テレビ100303PM10~)脚本・遊川和彦、演出・南雲聖一を見た。血縁によって生じる愛憎というものを知っている人間には「まっすぐな男」の父親の判らない子供を宿す鳴海(深田恭子)とその周囲の言動の不可解さは「曲げられない女」の早紀(菅野美穂)の父親である坂本弁護士(塚本高史)に対する態度の不可解さと甲乙つけがたい感じがするだろう。まあ・・・人間の心なんて不可解なものだと思うしかないのですな。
もちろん、早紀は言葉には出さないが・・・坂本が愛しくて愛しくてたまらないのです。
しかし・・・32才にもなって友達もいない自分が坂本を幸せにできる自信は全くない。
だから・・・坂本の存在を無視して無視して無視しまくるのです。
その「愛の深さ」に全く気がつかない坂本が憐れなポイントです。
それに対して、自分の子供よりも自分が大切な璃子(永作博美)とか、並外れた知性をもてあまし自分を哀れむ藍田(谷原章介)とか・・・ダメ人間を相手にしている方が気が楽なのです。
その上、璃子はバカだけど二人を出産している経験者だし・・・藍田はなんだかんだいって遊んで暮らせる資産家の息子。
悪友としてはいい感じなのでございます。
しかし、そんな悪友さえも「助けろって言わなくても助けるのがダチだろう」と突き放す早紀。
どこまでも自己中心主義者です。しかも・・・その自己は死んだ両親の洗脳によって成立している擬似人格なのです。
天国のマイケルも「そんなこっちゃ・・・救えるものも救えない」と思うし、地獄のマイケルも「うひょひょひょひょ~」と面白がるばかりでございます。
医者から「もっとおなかの子供のことを考えて」と言われてももの言わぬ胎児のことは考えられない早紀。すでに胎児なんて自分の一部だから何をしようとこっちの勝手的な発想に支配されているのです。
そういう仕方のない女なのです。
あげくの果てに、経済的に追い詰められ、労使の交渉にも失敗し・・・ついに母の形見を質入する羽目に・・・。
自慢の体力も底をつき、隠蔽された本来の自我が夢に現れる始末。
そこへ・・・坂本弁護士がかけつけます。他の女にウエディングドレス選びまでさせている男が何を今さら・・・とは責めてはいけません。
愛する女に三回プロポーズしてはぐらかされた男が四度目にチャレンジするのは深い愛情に突き動かされているからなのです。
そして・・・「癒しのスープ」を飲んでおきながら、喉元過ぎるとさらに「相手の愛に臆病なのは愛が不足しているから」と邪悪の道を突き進む早紀なのです。
・・・もう・・・本当にひどい女だな。
そして、結局、舞い戻る悪友二人はまたもや・・・坂本弁護士を仲間はずれに・・・。
さらには・・・戦艦ポチョムキン以来の凶悪なオデッサの階段の乳母車使いの健治(市川知宏)が早紀の父親殺しの前科を告白すると・・・もう話は異次元の彼方にすっとんでいきます。
早紀は「我が身を省みず人命を尊重した父の娘」として治外法権の気分に高揚するのです。
そして、悪友二人を従えて胎教にいいのか悪いのかも不明なダンスを始めるのでした。
ダメなヤツラの縄張りに
足を踏み入れたらダメなのよ
あなたにはもっとふさわしい場所がある
私から逃げなくちゃダメ
もう行ってちょうだい
行って、行って、出て行って
力自慢なんかするだけムダよ
だってあんたは私に似合わない
ここはあなたの来るところじゃない
私と交際するなんて時間のムダよ
ほっといて、ほっといて、もうほっといて
クズはクズたちとよろしくやるのが
精一杯
よしあしじゃないのよ
そういうものなの
クズにはクズの見栄があるのよ
さあ、ぐずぐずしないで出て行って
逃げて、逃げて、逃げ出して・・・。
最凶の魔性の女に今日も手が届かない・・・坂本弁護士だった。
まあ・・・人生・・・そういうことはよくあるな。
しかし・・・そういう女だからこそあきらめられないことはある。
そして偉大なるビッグ・マザーはダメ嫁の成長を見届けて任務終了か・・・。
いや・・・まだまだ哀れな孫たちのためにも最後のご奉公を・・・。
立て、立つんだ女王・・・。
関連するキッドのブログ『第7話のレビュー』
金曜日に見る予定のテレビ『ヤマトナデシコ七変化』(TBSテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
キッドさん、こんにちは~。
「相棒」は見てないので残念です。
しかし視聴率を見てびっくり!
「曲女」って縮め方が気に入りました♪すぐ分かるし。
何かこの形のバランスがいい(笑)
それでも…
早紀が憎めないのです。
菅野ちゃんだから?
「助けて下さい」には泣けちゃったも~ん。
でもね、今回の正登には何だか同情しちゃいました。
そこまで早紀が好きって、何で?
不明なダンスもウケました♪
永作ちゃんのお腹を心配しながら見てました。
キッドさんの和訳も大ウケしました(≧∇≦)ノ彡 バンバン!
投稿: mana | 2010年3月 5日 (金) 10時47分
キッドさん、こんにちは~♪♪
若くて美しいのに
花婿に逃げられた
横山秘書の心中を考えると
なんだかザワザワします。
どうやってたちなおるんだろうか。
女の子・・・子供のころから
幸せな花嫁を夢見ただろうに。
可哀想になあ。
好きじゃないならはやめに別れろよなあ。
と、早紀には優しい正登も
横山秘書の関連人物から見れば極悪・・・。
子供には優しいゴッドマザーも
璃子から見れば消えてほしい人。
いつもケイタイを見て浮かれる旦那から見れば
璃子はただの身勝手なで不出来な妻・・・。
いろいろだなあ。
まあ主人公中心に世界はまわるのですが。
パンダとかペンギンも育児放棄するらしい。
母性本能の欠如・・・。
早紀はまだ子供がいる実感がいまいちで
自分の欲望を優先してしまうのでせうか。
皆様落ち着くところに落ち着いて
心穏やかに暮らせると良いですねえ。
ふぅ・・・。
投稿: ヤマト | 2010年3月 5日 (金) 13時56分
「コード・ブルー2」は別格としても
今季の人気ドラマと言える「曲女」・・・。
一歩間違えるととんでもない女を
ギリギリ面白おかしく描いていて
楽しいのですな。
しかし、キッドはどうしても
璃子や早紀の子供として
生れてくる子が憐れでならないのですな・・・。
まあ、親が親なら
たくましく育つしかございませんけど~。
まあ、助けてもらう必要もないのに
あえて助けてもらうというのも
一つの戦略でございます。
このドラマの最大の嘘は
優秀な人間が
冷酷で意地悪ということなのですな。
キッドの経験から言うと
冷酷で意地悪な人間は
優秀にはなれないのでございます。
だから
ダメ人間たちが
お互いの傷をなめあう場面になると
気持ち悪さが先行いたします。
けつバットで
根性をたたきなおしたくなるのですな・・・。
ま・・・前世紀の遺物が
言うことなのでお許しくださりませ~。
ま、トリオのダンスは
どんだけ練習したんだよっ・・・
と爆笑でしたけど。
しかし・・・マイケルは
たくさんのヒット曲がありますな・・・。
投稿: キッド | 2010年3月 5日 (金) 20時26分
映画「卒業」の相手の立場に立つと
残酷の極みですからな
誰かの幸せは誰かの不幸せは
金銀パールプレゼントよりも明らかでございます。
ブロンズじゃてんでハッピーになれないんだよっで
ございます。
しかし、まあ、
ステーキだのお刺し身を美味しくいただく以上
他人を傷つけることに
いちいち気遣っているのも
なんなのですな。
所詮、人間は他人を踏み台に
のしあがっていくしかないのです。
この間、イラクの人質となった
自己責任のない女性が
性懲りもなくまた
ボランティアに熱中しているドキュメントを
見てそう思いました。
人間、やりたいことをやるのが一番なのですな。
まあ・・・そうすると
他人の目とか
世間の評判を憚って
己を殺して生きている人々は
釈然としないので
こっそり石を投げたりするのですな。
ああ・・・世界はなんて屈折しているのでしょうか。
しかし、昨日愛した人が今日は敵に
恩をほどこされた相手を逆恨み
優しくされて噛み付く
冷蔵庫の中でコーヒーゼリーの消費期限が切れる
うっかり食べて青ざめる
こういうことは世界では実に日常的な不幸です。
神も仏もあるものかなのでございます。
まあ・・・すべての母親は
実は本能ではなくて
悪い母親と後ろ指をさされるのが
こわくて
母親を演じているだけだったりして
子供がいい子を演じるくらいですし
母親だって演じていいのですけれどーっ。
愛していないのに愛しているフリをする。
それもまた愛ではないのか・・・
と思う今日この頃でございます。
全てはウソから出たマコトなのですから~。
投稿: キッド | 2010年3月 5日 (金) 20時51分