驚異!記憶の海の彼方に消えた恋(伊藤歩)
まあ、「世にも奇妙な物語」の亜流なのである。不思議な話が大好きな小学生の原作を中学生がドラマ化したレベルと言えるだろう。
もちろん、それにも面白みはあるし、ある意味では凄く面白いとも言える。
だが、それ以上でもそれ以下でもないのである。
どちらかといえばピンク映画化した方がおタク心をそそるし、エロゲでもよかった気がするが・・・まあ、そういう作品はもう死ぬほどあるぞ・・・と言われればそれまでだしね。
で、『記憶の海・最終回』(TBSテレビ100325PM1130~)原作・松田奈月、脚本・大浜直樹、演出・吉田秋生を見た。近未来の日本の大学の脳科学研究室では人間の脳から内部記憶(個人情報)を抽出し外部情報化する技術の実用研究が行われている。すでに人間の記憶をすべてデータ化し、電脳に移植する技術は完成していた。しかし、それはあくまで暗号化されており、それを解析するためには第三者を生体読み込み装置としてシステムに組み込む必要があった。
殺人犯の記憶を過剰に読み込み、殺人犯の意識に憑依された福原助教授(佐野史郎)は自殺した。システムを改良するために流入する記憶の保存の遮断を実験したヒロタマナブ(筒井道隆)は過去五年間の記憶を失い、さらに3分以上、記憶を保持できない記憶障害者となってしまう。26才以後は常に3分しか存在しない過去を持つ男には28才から付き合っていた恋人がいた。当時の新人研究員・小野(伊藤)である。
長期記憶を保存できないために読み込み者として最適となったヒロタだが、自分を忘れてしまった恋人の記憶をなんとか修復したい小野は研究指導者の山内(柴俊夫)にヒロタの記憶を読み込み者として志願する。
山内「それは科学者としての意思なのか・・・それとも私情なのか」
小野「そこにどんな区分もないことは・・・教授にはお分かりのはずです」
山内「しかし・・・ヒロタの脳内には君と出逢った以後の情報はもはやないのではないか」
小野「私は記憶の貯蔵に問題があるのではなく、想起システムに問題があると考えます」
山内「だが、八年前の記憶を想起することに問題はないのだぞ・・・現にヒロタは私を覚えている。それ以後に出逢った小野君の記憶がないのは・・・記憶そのものが消えている証拠ではないか」
小野「記録順序で検閲規制がかかっている可能性があるのです」
山内「君は記憶の逆流を考えているのではないのか」
小野「・・・」
山内「共通した記憶を持つものは別視点の情報を融合することが可能だと・・・」
小野「私には私の姿は見えないが彼には私の姿が見えている。私の記憶と彼の記憶を融合すれば、検閲規制の壁を突破できる可能性があります」
山内「そこまでして・・・君は彼を取り戻したいのか・・・しかし、それはもはや彼とは言えないのではないか・・・」
小野「研究に対する情熱と、彼に対する情欲にも区分はありません」
山内「しかし、そうなると研究チームは君たちのすべてを見ることになるぞ」
小野「私は必要ならばどんな演出にも応じるタイプの女優ですから・・・」
山内「・・・ゴクリ」
小野「承諾してくださるのですね」
山内「それを拒絶できる男は健全とは言えないだろう・・・」
こうして、記憶障害者・ヒロタの記憶の海に恋人である小野は記憶を読み取る媒介者として接続されたのだった。
井手研究員(石井正則)「接続完了・・・音声よし・・・ノイズなし」
塚本研究員(藍沢りな)「視聴覚以外雑情報の排除良好」
マッケンジー研究員(ダンテ・カーヴァー)「視界良好、ヨク見エマス・・・タダシ真ッ暗デス」
山内「暗黒で沈黙の世界か・・・やはり・・・記憶は・・・」
井手「あ・・・これは・・・」
(響き渡る男女のあえぎ声)
塚本「雑情報レベル拡大」
山内「おそらく、初夜の記憶だ・・・臭覚、味覚、触覚・・・特に痛覚は大きいからな」
マック「結合シテイマス、ナゼダ・・・ナゼ二人ノ姿ガ・・・」
塚本「どうしたんです・・・何が見えるんです」
山内「痛覚が大きいのは小野君の記憶がヒロタに逆流しているためだ・・・二人の姿が見えるのはおそらくその手のホテルの大鏡のある部屋で結合しているからだ。鏡にお互いの姿が見えるのは座位で後背位だからだろう・・・その体位が一番接合個所が見えやすいからな」
井手「音声拡大します」
ヒロタ(情報)「どうだい・・・二人は一つになっているぞ」
小野(情報)「そんな・・・はじめてなのに・・・こんなの・・・恥ずかしい」
ヒロタ(情報)「馬鹿だな・・・これが愛そのものの姿じゃないか」
井手「うっ・・・」
山内「どうした・・・」
井手「鼻血が出ました・・・」
塚本「私にも見せてくださいよ~」
マック「ダメデス・・・コノ席ハ譲レマセン・・・後デ録画デ楽シンデクダサイ。ナンナラ、一緒ニ見テモイイデスヨ」
塚本「まあ・・・私ヲ狙ッテイルノ」
マック「スミマセン」
それから数時間に渡って繰り広げられた痴態については省略する。
山内「二人とも若いな・・・キリがないので接続解除・・・」
小野は記憶の愛液の海から帰還した。
小野「・・・よかったわ・・・」
マナブ「小野君・・・」
小野「ヒロタさん・・・私がわかるの・・・」
マナブ「愛する人を忘れる男はいないよ・・・」
小野「まあ・・・あなたはずーっと忘れてたんですけどね」
マナブ「え」
山内「奇跡だ・・・」
塚本「いいえ・・・おそらく・・・接続の後遺症でヒロタさんに部分的な小野さんの記憶と機能移転が起こっているだけですよ・・・恒久的なものではないと思います」
小野「いいのよ・・・もう一回できれば・・・それで・・・すべては計画通りなの」
その夜・・・二人は三年ぶりに燃えたのだった。
塚本「そこまでして懐妊したかったのですか」
小野「ヒロタマナブはもの凄い資産家なのよ・・・その正統な後継者を妊娠することはこの分野の発展にとって重要なことなの」
塚本「小野さんの研究費も大幅確保ですしね」
小野「そこには区分はないのよ」
一夜明けて、ヒロタマナブは記憶障害者に戻った。
マック「渡米スルノデスカ・・・」
小野「記憶の移植技術について向こうで博士号をとるつもり・・・特許も向こうで申請した方が安全だし・・・」
マック「東あじあ共同体ノ工作員ガ狙ッテイルソウデス・・・気ヲツケテ」
小野「大丈夫・・・母は強いのよ・・・記憶を継続させる自然の意志そのものなのだから」
マック「オ元気デ・・・」
ヒロタ「誰だい・・・彼女・・・いい女だな」
マック「ハイ・・・ソノ通リデス・・・私ノ婚約者デスカラ」
そしてすべての物語は記憶の海に還元されていく。どこまでも深く・・・おだやかに。
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ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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