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2010年3月12日 (金)

戦争に責任があるとしたらそれは関係者全員で負担すべきものだという不毛地帯(唐沢寿明)

すべての責任が自己にあると考える実存主義とあらゆる責任は組織が負うべきだとする無責任主義・・・。

結局、人々はその狭間を右往左往し、なんだかんだ言ってあれやこれやするのだと思う。

だから、ドラマは理不尽でいいわけだし、辻褄が合わない方が本来の姿だと言える。

誰もが「日本嫌いのナショナリストが仕掛ける鯨食文化への差別行為もEUによる水産資源囲い込みも韓国の自動車メーカーが仕掛ける反トヨタ工作も二人の交際に嫉妬して松山ケンイチのストーカーが小雪に対して行う陰湿なネット上のネガティブ・キャンペーンも中国が一党独裁に固執するのもイランや北朝鮮が熱核兵器を濃縮したかがるのも夏に行けばいいのに冬にシベリアに行くのも自分が悪い」と思えば鬱なのである。

どんな重圧にも耐えて爽快でいられる人はやはりどこかおかしいのだろうし、ささいなプレッシャーでどんよりと鬱になる人もどこか困ったものだ。

そういう困った人たちを一刀両断できたらどんなにいいだろう・・・と真剣に悩むことはまだしも・・・真剣を研ぎだすとちょっと危険なのである。

ああ、どこまでも続く狂者の密林。心の不毛地帯よ。それでも世界は美しい。

で、『不毛地帯・最終回』(フジテレビ100311PM10~)原作・山崎豊子、脚本・橋部敦子、演出・澤田鎌作を見た。いろいろあって太平洋戦争に敗北した大日本帝国は全世界の虜囚である日本として再出発する。全世界の敵である以上、基本的人権は保障されず、犯され嬲られ殺され放題である。

その奴隷の立場から世界最強国である米国に服従を誓うことで最下級市民の座を得た日本国民は全世界を敵に回して戦争したガッツを世界に見せ付ける。あっと言う間に世界第2位の経済大国となったのである。

しかし・・・それも今は昔の話だ。

この物語は冷戦という第三次世界大戦の前半戦、米ソの対立を利用して、日本、中国、韓国がいかに出世したかの物語である。

もちろん、北朝鮮はこの和からは疎外されたので口惜しくて日本の少女を誘拐したりしてしまうのだ。それは昭和52年(1977年)に起こる。

このドラマがその直前である昭和50年(1975年)あたりで幕引きを図るのは実に妙なのである。まあ、原作がそうだから・・・といえばそれまでですが。

いろいろと現実というフィクションに相似した登場人物が造形されており、田・・・田淵総理とか、デ・・・黄夫人とか、ロ・・・ラッキード社とか・・・しかし、所詮はどちらも絵空事であり、特にドラマでは主人公を劇的にするためになんでもありが許されて最終回ともなればなんでもありである。そのメチャクチャな雰囲気を期待して視聴率は過去最高の15.0%を記録しました。毎回、これくらいあればよかったのにね・・・。

まあ、結局、それぞれの絵空事を生きる人々にとってちゃちなドラマに付き合っているヒマなどないが、最初と最後くらい見てやるか・・・ということてす。

そういう意味でつかみは大切なのですな。最初が14.4%だと最後はこんなもんだということでしょう。

ドラマがほとんどヒトケタの視聴率を続ける昨今、平均視聴率11.6%は本当はまあまあですが「白い巨塔」や「華麗なる一族」と比較するとやや低い。しかし、それが「不毛地帯」の宿命です。

切腹するべきだった敗戦。自害するべきだった抑留生活。そして生き延びた賠償金代わりの強制労働。帰国した壹岐正(唐沢)は社会復帰を果たした時にすでに46才になっていた。それから16年間の歳月が過ぎ・・・壹岐はすでに60代である。

その16年間は里井副社長(岸部一徳)との派閥闘争の16年でもあり、東京商事鮫島(遠藤憲一)との宿命合戦の16年でもあり、妻(和久井映見)を亡くし娘(多部未華子)をおんぶし、愛人(小雪)を待たせ続けた16年だったのである。

壹岐は最後の最後まで無表情を貫くが・・・常に主人公として・・・最後は幸運で勝つのである。

鮫島「なんだかんだ言って・・・世の中、壹岐さんが勝つようにできてるんですよ・・・普通、あのタイミングで石油なんか出ないでしょ・・・勝ち逃げなんて許さない・・・笑って去って行くなんて・・・ずるいですよ」

壹岐(ニヤリ)

直子(多部)「結局・・・このドラマは父が私をおんぶするところがすべてだったと思うのです・・・後はつけたしのようなものじゃないですか・・・それなのに回想シーンにそれがないなんて・・・何かの陰謀だと思うのです」

大門(原田芳雄)「壹岐くん・・・わしの隠居場所はどこかの・・・」

壹岐「帝国陸軍参謀(高級官僚)時代に裏金の作り方は伝授されていますから、たっぷりと私腹を肥やしてあります、世界のリゾート地ならどこでも・・・」

大門「わしゃ・・・多くは望まん」

壹岐「では芦屋あたりでは・・・」

大門「マンションは好かん・・・」

壹岐「素晴らしいお屋敷をご用意します」

大門「カラオケはついてるのか・・・」

壹岐「もちろんです・・・」

大門「一緒に歌ってくれるのか・・・」

壹岐「地獄のハバロフスク経由で・・・お供します」

ズタ袋をかついで

ズタ袋をかついで

さあ・・・さまよいあるこうぜ・・・オレとな

女たちはみんな苦界に沈み

男たちはみんな落ちぶれ果てる

それがこの世の運命なのさ

ボクサーたちは皆

減量地獄でスリムになる

ボクサーたちは皆

殴り合うためにリングにいる

チャンピオンになるのはひとにぎり

王座にいられるのはひととき

それでもあしたを信じて

生きることはよろこび

ズタ袋をかついで

ズタ袋をかついで

さあ・・・さまよいあるこうぜ・・・オレとな

女たちはみんな苦界に沈み

男たちはみんな落ちぶれ果てる

それがこの世の運命なのさ

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土曜日に見る予定のテレビ『咲くやこの花』『火の魚』(NHK総合)

ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。

皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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