さて、ゴールデン・ウイークに突入である。
東京は初夏を思わせる雲が通り過ぎ今は晴れている。
人々がいい思い出をつくる一週間であればいいと祈るばかりだ。
もちろん、そうならないことがあるのも人生なのでそれはそれで仕方ないとも思う。
たとえば絶世の美少女といい関係になったことがあったとしてもそれが続かないのが基本なのである。
美少女は美女になると相場が決まっているし、少女と女では目指すものも変わってくる。
変わらないものなど一つもないと知ることが大人になると言うことなのである。
目覚めると家が焼失していたり、運転中の車に他の車の部品が突っ込んできたり、生後一ヶ月の子供が父親になぐられて重傷を負ったりするのもまた人生だからだ。
水曜日のダンスは
「臨場」・・・17.9%↗18.6%↘16.7%↗16.9%
「Mother」・・・・・・11.8%↗12.0%↗12.8%
本格派のダンスである。
で、『Mother・第3回』(日本テレビ100428PM10~)脚本・坂元裕二、演出・水田伸生を見た。教え子の小学一年生がゴミ袋に入れられて放置しているのを発見した教師の奈緒(松雪)は虐待を繰り返す母親の仁美(尾野真千子)から子供を誘拐する決心をする。仁美の幼い娘・玲南(芦田愛菜)は消え、継美が誕生する。奈緒と継美は生さぬ仲の母娘となり、逃避行を続けるのである。
ぶうぶう
もうもう
めえめえ
奈緒もまた捨てられた子供だった。五歳の時から施設で育ち、七歳の時から養母に育てられている。養母・藤子(高畑淳子)は奈緒を愛情深く育てたが、奈緒はついに心を開くことなく成人してしまった気配がある。盗難にあって切羽詰った奈緒は会社経営者であるらしい藤子に遠慮がちに借金を申し込む。
行方不明の娘を案じていた藤子は謎の女性・葉菜(田中裕子)に連絡をとる。二人の関係も謎に包まれているが・・・葉菜が奈緒と特別な関係のある女性であることは二人の会話から暗示される。奈緒の身を案じた二人が密会するのはけして偶然ではなく、奈緒が藤子と面会している間に家路についた葉菜が継美に出会うのも偶然ではない。すべては必然なのだった。
継母の帰りを待ちながら継美は玩具店「キディーランド」のぬいぐるみ売り場を散策しながら動物の鳴きまねをする。その歌うような響きに葉菜は心を奪われるのである。
うっかり、陳列された玩具の山を崩した葉菜は「うっかりさん」として実の娘の生さぬ仲の娘と邂逅する。継美は葉菜にとって孫のような存在だったのである。
もちろん、奈緒にとって葉菜は見知らぬ存在であった。
藤子と葉菜の間には「奈緒とは会わない」という約束が交わされていたのである。しかし、葉菜は物陰からこっそりと奈緒を見守り続けたのだろう。まるで生みの母のように。だから、葉菜は奈緒を実の娘と知っているかのように思われるのだ。
こうして、生さぬ仲の母娘の秘密と本当の母娘の秘密は妖しく交錯する。そして神の御使いであるインフルエンザ・ウイルスはこっそりと忍び寄るのだった。
藤子「これで足りるかしら・・・」
奈緒「すみません・・・」
藤子「何よ・・・親なんだから当然でしょって顔しなさいよ・・・じゃないと貸さないわよ」
再会を喜びハグをするほど実の親として振舞おうとする藤子だったが、そう振舞うことがすでに生さぬ仲の証であるというジレンマを抱えていた。
そしてそれを敏感に感じてしまう奈緒なのである。
金を用立てた奈緒は継美を残した玩具店に戻るが店は棚卸しのために閉店していた。残されていたのは近所の図書館への案内図だった。
継美はうっかりさんと図書館で奈緒を待っていた。
しかし、うっかりさんは奈緒が来る前に姿を隠す。
奈緒「どうして店の前で待っていなかったの・・・」
継美「こんな小さな子が一人で立っていたらおまわりさんに話しかけられるでしょ」
耳元で奈緒にひそひそ話をする継美。
飲み込みの早い継美はすでに逃亡者としての貫禄を見せ始めていた。継母に大切に育てられてきた奈緒の方が結局うろたえているのである。
その姿を物陰からうかがう葉菜だった。
継美「うっかりさんに図書カードを作ってもらったの」
奈緒「うっかりさん・・・って」
継美「内緒なんだけど・・・襟にクリーニングのタグがついていたおばさん」
奈緒「・・・なるほど」
やがて、かりそめの母娘は安いホテルの一室に落ち着くのだった。うっかりさんである葉菜が二人をこっそりさんで尾行したことは言うまでもないのである。
コンコン・・・。
コンコン・・・。
コンコン・・・。
隙間風の入るホテルの一室で一夜を明かした奈緒は風邪を引いたようだった。後にこの風邪は継美にも移るのだが、風邪を引いた演技は奈緒10点、継美100点である。
継美を連れて家探しを始めた奈緒だったが、近所に交番がある優良物件が最悪な環境に感じられる奈緒は思うように住居を見つけられない。
次に継美を図書館に残して職探しを始める奈緒。しかし、当てにしていた大学の教授はすでに退官していて結局、求人情報誌に頼る始末。しかも35才という年齢の大卒者はお茶くみとしてはふさわしくないらしい。
図書館に篭った継美の前には葉菜が現れる。もちろん、朝から葉菜は母娘を尾行していたのである。
帰りの遅い奈緒を待ちくたびれ、継美と葉菜は近所の公園で逆上がりの練習を始めていた。求職に失敗した奈緒はついに葉菜と運命の再会を果たす。
見知らぬ女の姿に警戒心を抱く奈緒だったが・・・控え目な葉菜の態度に安堵も感じるのだった。
足早に立ち去る葉菜に「ありがとうございました」と声をかける奈緒。
葉菜は何かに怯えるように競歩の如きスピードで遠ざかって行くのだった。
継美「うっかりさんは逆上がりが上手なの」
奈緒「だから・・・足も早いんだ・・・面白いおばあちゃんだね」
暢気な会話を交わす母娘を追い立てるように神は雨をプレゼントするのだった。
ずぶ濡れでホテルに戻った母娘を芽衣(酒井若菜)と果歩(倉科カナ)の奈緒の年のちょっと離れた巨乳の妹二人が待っていた。思わず継美を背後に隠す奈緒。
果歩「わ~い、やっと会えた~」
芽衣「・・・ちょっと老けた?」
奈緒「・・・ちょっと太った?」
果歩「えへへ・・・懐かしいギスギス感がしゅてき~」
芽衣「で・・・それはなに・・・」
奈緒「・・・娘よ」
10才近く年の離れた長女と次女はなんとなくそりがあわず・・・三女は漁夫の利を得てきたようである。藤子の夫は登場しないのだがひょっとしたら三人とも養女なのかもしれない。しかし、長女が養女であることを次女や三女は知らされていないのである。だから次女と三女は藤子の実子という設定なのかもしれない。観念した奈緒は実の娘として継美を奈緒が実の姉だと思っている妹たちに紹介するのだった。ああ、生さぬ仲は本当に微妙に面倒なものなのだ。
実の母の仁美は酒に溺れていた。情夫の真人(綾野剛)のバーに入り浸っている。
真人「大丈夫なのか・・・そんなに飲んで」
仁美「喉が渇いて・・・飲まなきゃやってられないのよ」
真人「で・・・あのことはどうなってんだ・・・」
仁美「役所はそろそろ葬式のことを考えろって言ってる・・・」
真人「警察は・・・疑ってないのか」
仁美「・・・何を?」
真人「ゴミ扱いしたから・・・自殺したってことだよ」
仁美「・・・」
真人「俺・・・買出しにいってくる・・・」
仁美「私のこと・・・面倒になった?」
真人は答えずに店を出る。入れ替わりにハイエナのような雑誌記者の駿輔(山本耕史)が店に入ってくる。仁美は真人が戻ってきたと勘違いして言葉を続けてしまう。
「私だって・・・こわくて・・・こわくて・・・あんた・・・誰?」
駿輔は行方不明の少女の写真提供を求める。
「そうすれば・・・誰かが見つけてくれるかもしれません」
「・・・」
この女は「娘を心配する母親」を演じたがっているはずだ・・・金で買うよりも安上がりだしな・・・金は時価になると天井知らずだし・・・とハイエナは計算している。
「大丈夫ですよ・・・男のところに入り浸っているなんて記事は書きませんから」
「・・・」
「それより、用心してくださいよ・・・妙な噂がありますからね」
「なによ・・・」
「男と交際して・・・娘が邪魔になったんじゃないか・・・とかね」
駿輔は行方不明の娘の写真を入手した。その顔を見た駿輔はハイエナの勘で奈緒のことを連想する。少女の行方不明と・・・同時に行方をくらました担任教師・・・駅で奈緒が持っていた二人分の弁当・・・。
駿介は奈緒を探しにきて出会い、成り行きで取材用の運転手として起用し、バイト料1万円を支払った奈緒の妹・果歩に書かせた領収書を取り出す。そこには鈴原家の住所が記されているのだった。
果歩は姉母娘の宿泊するホテルのフロントで新しい姪と飲み物を買っていた。
果歩は継美の耳を見てそれが姉に似ていることを発見する。
果歩「ああ・・・やはり・・・親子だね・・・似てるんだ」
継美「・・・えへへ」
その間に二人の姉、奈緒と芽衣は情報交換をしていた。
奈緒「結婚式・・・出ない方がいいんじゃない・・・母子家庭だし」
芽衣「父親は・・・」
奈緒「いろいろとあるの・・・」
芽衣「あんたは・・・そういうタイプでないんでないかい・・・」
奈緒「何故、急に道産子に・・・あんたは・・・昔からいろいろあるタイプだものね」
芽衣「お母さん・・・ショックだろうな・・・自慢の娘が私生児生むなんて・・・」
そこへ・・・果歩と継美が帰ってくる。
芽衣「あんまり似てないよね」
奈緒「・・・」
芽衣「そんなことないよ・・・耳とかそっくりだし~」
継美「・・・うふふ」
奈緒「・・・えへへ」
血がつながっていようがいまいが・・・実にほのぼのとした女の園だった。うっとりさんなのである。
翌日・・・奈緒は求職活動に、継美は図書館に出かける。
もちろん・・・葉菜は継美に会いに出かける。
お絵かき中にインクを切らした継美に理髪店「スミレ」の電話番号入り粗品ボールペンを差し出す葉菜。
ふと目にした継美の色鉛筆ケースが気になる。
「つぐみちゃんは何色が好きなの?」
「・・・水色」
「あら・・・水色がないわね・・・」
うっかりさんだが目ざとい葉菜は継美が継美になるために消し去った「道木玲南」の消え残った名前に気がつく。
「み・・・れな・・・れなちゃんっていう子からもらったの?」
葉菜はなんとなく貧乏なつぐみの生活情景を連想していた。友達から色鉛筆を恵まれる小学生は辛そうだ。
「・・・うん」
「そう・・・だから・・・水色がないのね」
葉菜はいそいそと水色の色鉛筆を買いに出かけるのだった。ケース入りを買わないのは赤の他人だからである。
葉菜はちょっと変な感じの担当医・珠美先生を思い出す。
「入院もしない・・・ご家族もいない・・・何か・・・生きがいとかないんですか・・・」
「・・・はあ・・・」
「生きがいとかあると・・・寿命が延びるっていう伝説があるんですよ。三ヶ月が半年になるとか・・・半年が一年になるとか・・・まあ・・・私は信じてませんけど」
「・・・はあ・・・」
生きがいか・・・娘の娘に水色の色鉛筆を買ってあげること・・・葉菜にとってそれはなんだか心が弾むことだった。
しかし、買い物の間に奈緒が戻ってきていた。思わず身を隠す謎の女・葉菜だった。
「これ・・・星占いの本・・・私って八月三日生まれだからしし座なんだ・・・お母さんは?」
「私・・・本当の誕生日を知らないんだ・・・」
「そうねえ・・・それじゃ、星占いになんないね。まあ・・・どうせ迷信だけどね」
「でも・・・嘘の誕生日はあるよ・・・施設で寮母のももこさんがつけてくれた」
「本当のお母さんに会えればわかるのにね」
「でも、本当のお母さんにあっても分からないな・・・だって顔を覚えていないんだもの」
「・・・」
継美は本当のお母さんの顔をまだ覚えていた。そのことを考えると新しいお母さんが憐れになるので沈黙を守るのである。
いたたまれない気持ちになったうっかりさんは超能力で本を崩すのだった。
その物音で継美と奈緒は葉菜を発見する。
片付けを手伝おうと伸ばした奈緒の手が葉菜の手に触れる。
二人は静電気が発生した如く痺れるのである。
奈緒は思わず咳き込んだ。
「風邪ですか」
「大丈夫です・・・」
「熱は・・・ないの?」
「いつも・・・継美が遊んでもらってすみません・・・ほら・・・継美もうっかりさんにお礼言いなさい・・・」
「ありがとう・・・うっかりさん」
「あ・・・私まで・・・うっかりさんとか・・・」
「いいんですよ・・・うっかりさんで・・・けっこうさんです」
葉菜は水色の鉛筆を残して逃げるようにその場を去るのだった。
生さぬ仲の藤子は血のつながらない娘の身を案じていた。そのままになっている娘の机から昔の生徒証を取り出して眺めても気が重い。
「奈緒はなんで帰ってこないのかしら・・・」
「お母さん・・・心配しすぎよ」と芽衣がなだめる。しかし、ちゃっかりさんで夕飯を食べている果歩の恋人の耕平(川村陽介)はうっかり火に油を注ぐのだった。
「何か・・・ワケがあるのかも」
「ワケって・・・」
「何か・・・隠し事をしてるとか・・・」
顔を見合わせた二人の妹は耕平を東京湾の海底に沈める勢いで黙らせるのだった。
その頃、仲良く顔を合わせて眠る生さぬ仲の母娘の寝息をインフルエンザは渡っていく。
翌日・・・図書館は休館日だった。
奈緒は継美をホテルに残し求職活動に出る。
お約束の清掃員の職を得た奈緒は即日出勤となった。
帰りがおそくなると電話した奈緒は継美が発熱していることに気がつかない。
言葉の通じない外国人ハウスキーパーに部屋を追い出された継美は朦朧とした意識で町へ出る。
ゴホ・・・ゲショ・・・ハア・・・ハア・・・ハア
継美は誰かに助けてもらう必要を感じていた。持ち出したボールペンにうっかりさんの連絡先が書いてあった。
理容店「スミレ」で馴染み客(高橋昌也)の相手をする葉菜は受話器をとる。
まあ、つぐみちゃん
あのこれから遊びに行ってもいいですか
ごめんね・・・うっかりさんは今日お仕事なの
そうですか・・・わかりました
・・・・・・!
ハアハアハア
・・・つぐみちゃん・・・ちょっと待って
み・・・じゅ・・・いろ・・・みずいろ・・・ありがとう
公衆電話の下で継美は救助を待った。
初仕事を終えた奈緒は継美のいない部屋に戻り愕然とする。
暗い部屋ではフロントからのメッセージがあることを示すランプが点滅していた。
「伝言をお預かりしています・・・」
葉菜が継美を救助していたことを知り、奈緒は理容店「スミレ」に向かった。
病院で診察を受けた葉菜は容態も安定し葉菜の部屋で眠っていた。葉菜から継美のアレルギーの有無や健康保険について聞かれ言葉を濁すしかない奈緒。
「今夜は・・・ここで眠らせてあげてください」
「すみません・・・私がダメな母親なんで・・・こんなご迷惑をおかけしてしまって」
「迷惑なんて・・・」
二人は茶の間で鬱々としたピン送りの応酬に入るのだった。
「あの・・・継美はどうしてあなたに具合の悪いことを・・・」
「いえ・・・つぐみちゃんは・・・何にも・・・ただなんとなく様子が変だったから・・・」
「なんとなく・・・そうですよね・・・母親なら気がつかなきゃいけなかったのに」
「いえ・・・つぐみちゃんは我慢強い子みたいだから・・・判らなくても」
「私・・・あの子に無理をさせてるから・・・」
「そんな・・・」
「引越したばかりで・・・ホテル住まいですし・・・」
「ご実家とかは・・・」
「迷惑かけたくないんです」
「迷惑って・・・そんなことないでしょう」
「・・・・私、里子なんです」
「・・・」
「小さい頃・・・捨てられて・・・だから・・・本当の実家なんてないんです・・・」
「・・・」
「あ・・・こんなこと・・・話して・・・私ったら」
「いいんですよ・・・私でよかったら聞きますよ・・・」
「私・・・誕生日も覚えないし・・・生れ育った場所も母の顔も覚えてないんです。誕生日を知らないなんてまるで生きていないみたいな気がするんものなんですよ」
「そんな・・・あなたは・・・生きてます・・・生きてますよ」
「でも・・・あの日・・・私は生きるために心を殺した気がします」
「・・・」
「すべてを忘れてしまったけれど・・・あの日のことだけは忘れられない。電車に乗って母とデパートに行ったんです。屋上の遊園地で遊んで・・・それから食堂でお子様ランチを食べました。私は女の子用の景品が欲しかったんです。だけどなぜか品切れだったんですよね。私は甘えて愚図りました。泣いて喚いて・・・気がつくとどこかの野原にいたんです。そこで母が蒲公英の綿帽子を差し出したんです。母がふっと息を吹きかけると種子が飛んで・・・まるで夢の世界にいるようでした。私はもっともっとと母にせがみました。私の想像では母は笑顔の私と別れたかったんだと思うのです。だから私はずっと笑わないでいればよかった。でも私は母が探し出す蒲公英を受け取るとうれしくて笑ってしまいました。私は蒲公英の種子を夢中で飛ばしまくりました。そして気がつくと一人になっていたんです・・・ああ・・・あの時笑わないでいればよかったと・・・子供の頃、私はずっと後悔していました・・・そうすれば母は私を捨てなかったかもしれないのに・・・と」
ここからは奈緒が葉菜を攻め立てるようにカメラは切り返し。
私は手を差し出しました。
母はその手を握りました。
でも私は言いました。
手じゃないよ・・・タンポポだよ。
ああ、どうして母の手を離してしまったのか。
ああ、どうして泣き止んでしまったのか。
ああ、どうしてタンポポに心を奪われたのか。
私は何度も自分に問いかけました。
そして母の顔を忘れたのに
その時の母の手のことだけは覚えているのです。
そして女の人の手を見るたびについ思ってしまうのです。
ああ・・・この手が母の手かもしれない。
この人が本当のお母さんかもしれないと。
まとめは奈緒から葉菜へ怨念のオーバーラップである。
母の顔を忘れてしまっても
私はたくさんの女の人を手を触っていけば
いつか母の手にめぐり合えるような気もしました
何千人、何万人もの手を握って
そうすれば・・・母の手にいつかめぐり合って
きっと・・・母も私だとすぐわかって・・・。
「・・・」
「ごめんなさい・・・こんな話・・・うっかりさん・・・なんだか話しやすくて・・・」
「・・・」
「あ・・・また・・・私ったらうっかりさんとか」
「いいのよ・・・私、下を片付けてきます」
さりかけて葉菜はこらえきれずに訊いた。
「あなた・・・実の母親に会ってみたいと・・・思うの」
「・・・無償の愛ってどう思いますか・・・」
「無償の愛・・・」
「よく・・・親は子供に無償の愛をそそぐって言いますよね・・・私、あれは逆だと思うんです。子供が親を愛することこそが無償の愛だって・・・幼い子供はたとえ殺されそうになっても親を愛して・・・愛し続けるんです・・・そんな子供の愛を裏切った人には・・・会いたいとは思いません」
「・・・そうね・・・そうよね・・・あなた・・・つぐみちゃんのためにも実家に戻られたらどうですか・・・たとえ本当の母親でないとしてもあなたを一番愛しているのは・・・実家にいるその方だと思いますよ・・・」
葉菜は地獄へと続くような階段をよろめきながら降りた。
水道の蛇口から水を流しっぱなしにするとこらえていたものを吐き出した。
おう・・・おおおう・・・おうおう・・・おあう・・・おおう
葉菜はこらえてもこらえきれない嗚咽を吐き出す傷だらけの魂の咆哮に耐えた。
その嗚咽は絶えることなく続いてやってくるのだった。
これぞドラマの神髄である。
女優のお仕事なのである。
葉菜はついに顔を洗った。
お茶の間は涙の洪水で溺死者続出である。
翌日、手作り弁当を持って奈緒を訪ねようと思い立つ藤子。
その母に何かを伝えようようして伝えることを躊躇する妊娠中の芽衣。
胎児に何か異常があった模様である。
神は残酷な運命を用意するのが常套なのである。
そしてホテルに向かう前にもう一度、葉菜に因果を含めようとした藤子は娘と見知らぬ少女が理容店「スミレ」から出て行くのを目撃して逆上する。
店に乗り込んだ藤子は葉菜に手をあげようとしてようやくこらえる。
「あ、あなたに・・・あの娘に会う・・・し、しぎゃあぐ・・・ぎゃありゃ・・・資格があると・・・ふんぎゃ」
「・・・ありません」
「名乗ったの・・・」
「名乗りません・・・」
「あの・・・女の子は誰なの・・・」
「・・・」
「いいわ・・・本人に聞くから・・・」
「・・・」
「とにかく二度とあの娘に近付かないで・・・」
「もう会いません・・・でも一つだけお願いがあります」
「・・・」
「あの子に・・・誕生日を・・・1975年1月31日のみずがめ座だって教えてやってください・・・星占いがしたいみたいなので・・・」
「今さら・・・そんなこと教えられないじゃないの」
「・・・」
藤子が立ち去ると・・・散らばった新聞を片付け始めた葉菜の目に小さな記事が飛び込んでくる。
北海道・・・少女行方不明・・・道木玲南ちゃん(7)・・・水色のマフラー。
葉菜は眩暈を感じる。
熱の下がった継美は奈緒の前で逆上がりをマスターした。
そして・・・鈴原家にはハイエナが遠路はるばるたどり着いていた。
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ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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