100の親切よりも一つの意地悪を忘れない(阿部寛)
100の失敗よりも一つの後悔をしたくない。
劇団員・清瀬弘毅(向井理)が小学生の時の初めての舞台で覚えたセリフである。
どんな・・・芝居なんだ。
普通に考えると、「失敗を怖れるな」の気取った表現ということになるだろう。
やってみて何度失敗してもやらないで後悔するよりはいい・・・というニュアンスである。
まあ、100回失敗したら100回後悔するのが人間というものだがな。
つまり宝クジを100回買って、下ヒトケタ以外、一度も当たらなかった・・・みたいなことだ。
とにかく・・・繰り返される「言葉」なのだが・・・なんだかとっても恥ずかしい感じがするのである。
で、『新参者・第5回』(TBSテレビ100516PM9~)原作・東野圭吾、脚本・牧野圭佑、演出・平野俊一を見た。思わせぶりで肩透かしの展開をずっと続けてここまで・・・。そういうのがおしゃれだと思えないと・・・うんざりしてくるドラマである。いや・・・おしゃれだと思っていてもうんざりしてくるかもしれない。たとえば・・・だれがどう考えても有罪の代議士がずっと不起訴だったり、だれがどう考えても五月決着は無理なのにまだ希望を捨てていなかったり、だれがどう考えても憲法九条を改正しない限り拉致問題は解決しないのに粘り強い交渉を求めたり・・・そういう虚しさがこみ上げてくるのである。
たとえば・・・今回・・・母親のたった一言で・・・ずっと拗ねていた息子が・・・今は亡き母親が自分のことを大切に思ってくれていたという事実を知り、自分が俳優として演じる舞台について言及するセリフが・・・。
「見せてやりたかったなぁ・・・」
というのはなんだかピンと来ない。
ここは・・・。
「見てもらいたかったなぁ・・・」じゃないのか。
だって・・・甘えてるんだろ・・・。
もちろん・・・ずっと愛されていると思っているからそうでないと思われる一言に裏切られて傷つくわけだが・・・それまでの愛の日々がゼロになってしまう人間とそうでない人間はいると思う。
たった一度の浮気で・・・嫌いになられてしまうのは困ったもんだ。
いや・・・それはあるだろう・・・あるのか・・・。
まあ、人間は100の成功の後にたった一つの失敗ですべてを失うことがあるわけです。
このドラマの場合、刑事が最終回までは犯人にたどり着かず・・・ずっと誰かの容疑を晴らしていくという趣向なのだが・・・新機軸だけれど・・・失敗作のような気がしてならないのである。まあ・・・これが初めてのミステリだと言う人には幸運なのかもしれないな。
今回、加賀は二人の女性を追っていく。その時点ですでになんとなく取り違えものだと解かる人には解かるだろう。そうでない人はいろいろと妄想できるのだろうか。
妄想とは勘違いでもあるので・・・その辺を追求してみたい。
たいやき屋「銀のあん」の娘・奈々(沢木ルカ)はいつも並ぶくせに買わない客をどう考えているだろうか。ボーイッシュなローティーンの女の子が好きな変態野郎だと思っている可能性はあると思う。
洋菓子店「クアトロ」の店員・美雪(紺野まひる)はいつもケーキを買いに来て自分に微笑みかけていた殺人事件の被害者・三井峯子をどう思っていただろうか。同性愛者とは疑わなかったのだろうか。笑われて不気味な感じを一度は感じたのだろうか。その人が犬の置物をプレゼントしてくれたと知って背筋が寒くなったのだろうか。それが安産祈願のマスコットと知って恐怖に慄きはしなかったのか。同性愛者で妊娠する女を憎悪している変質者だとか思ったりして。あるいは「私がパパになってあげる」とか宣言されたらどうしようとか。
被害者の息子・弘毅は恋人が自分が遠ざけている母親と面識があったと知り、何故、そんなに憎んだのだろうか。恋人に母親を求めていた自分のマザコンを察知されたのではないかと疑ったのか。あるいは・・・ひょっとして恋人が犯人かと疑ったのか。
弘毅の恋人・亜美(黒木メイサ)は母親を避けていた恋人の母親が被害者と知り、弘毅の犯行を疑ったのだろうか。恋人が殺人者かもしれないと疑いながら行う夜の行為が妙に燃えて自分の変態体質に愕然としたりしなかっただろうか。
加賀刑事(阿部)は後輩が被害者の恋人と知りつつ、被害者が妊婦を監視していたことに気がつき、後輩の恋人と妊婦との三角関係を疑ったのだろうか。過去世では服役中に大橋のぞみを残して死んだ恋人だった女とゲゲゲと任侠ヘルパーの三角関係を妄想してうっとりしたりはしなかったのだろうか。
結局、「曲がり角を間違えた」ので・・・被害者は息子の恋人を美雪だと信じていた・・・オチである。
息子の恋人を29才の妊婦だと思い込んだ被害者は・・・妊婦に気を遣い・・・そっと見守っていたのである。
たまたま・・・被害者と知り合いだった恋人は「そっと見守るので息子に会いに行かない」という恋人の母親に自分の正体も告げることができず、息子に母親のことを話すこともできなかった。
そして・・・息子は母親が会いに来なかったのは自分を生んだことを後悔しているからだとずっと思いこんでいた。
・・・という話である。
なんか・・・奥ゆかしいんだよな。
思いついたことをすかさず口にだし、「好きだ」と言えずに悩んだことがなく、少し口を慎めと言われ続けて人生の終盤に差し掛かっているキッドにとっては本当にむずがゆい話なのである。
これが・・・後、何回か続くかと思うと気が遠くなりそうです。
上杉刑事(泉谷しげる)は留守宅で生じた物音を聞いて思わず弘毅と亜美のナニを連想したのか。
息子と被害者宅の前で遭遇した直弘(三浦友和)は別れた妻と息子との近親相姦的なただならぬ関係を妄想して興奮し、美人秘書の祐里(マイコ)と燃える一夜を過ごしたのではないかと松宮刑事(溝端淳平)は妄想・・・しないな、きっと。
関連するキッドのブログ『第4話のレビュー』
火曜日に見る予定のテレビ『離婚同居』(NHK総合)『絶対零度・未解決事件特命捜査』『ジェネラル・ルージュの凱旋』(フジテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
こんにちは~。
私のテンションはどんどん下降中で、どうしましょ。
そんな時はココへ来る。ウソ…いやホントか?(笑)
>「見てもらいたかったなぁ・・・」じゃないのか。
さすが~。
それでグッと来るものが無かったんだろか?
泣かせたいネタが続く割には、
私の泣きツボが全くくすぐられません。コマッタ
>新機軸だけれど・・・失敗作のような気がしてならないのである。
そうなんですよね。初回のツカミは良かったのに。。。
>笑われて不気味な感じを一度は感じたのだろうか。
そうそう、この違和感。
どうしても突っ込み所が多くなって来ちゃった。
加賀の拘りキャラも可愛いとは思えず。
たいやき1個でしょ。
奢ってもらうのが嫌なら、うん十円位は借りようよぉ。
2万5千円も立て替えて貰って忘れてる神経があるなら。。。
とかさどやさ┐(´-`)┌
>思わず弘毅と亜美のナニを連想したのか。
こういう妄想もさすがですね~。
近親相姦ねぇφ(・_・。 )フムフム
私はまだまだだな~(笑)
投稿: mana | 2010年5月17日 (月) 11時07分
まあ、視聴率も下がってますけどね。
トリック劇場版の連打も効いたかな。
なんとなく、セリフが
甘いんですよね。
この手のドラマでは致命的な感じがいたします。
あそこは向井理の見せ場で
「何様なんだ・・・」という
リアルさはいらない。
ただ・・・ひたすら・・・感傷的でいいはず。
冒頭で
「二人のうちどちらかが犯人・・・」
というリンクするセリフと
事件のために芝居に気がのらない向井理
という場面がふぞろい。
向井理の「気の乗らない芝居」が
演出できていない。
演出家のセリフだけで説明というのが苦しい感じ。
こういう細部が緩いので
名作の香りがしてこないのですな。
たい焼きの件も小芝居を見せている間に
たい焼きそのものの美味しさを強調しないので
加賀刑事の無念さが空虚だし。
今回は白い春夫婦共演だったのに
もう一つ・・・二人の愛の絆が・・・
感じられなくて残念。
そういう遊びまでの余裕がない。
トイレのシーンが息抜きにならず息苦しい。
加賀のキャラクタ造形はずーっと
失敗している気がします。
演出陣の研究不足です。
ドラゴン桜しか見てない感じ・・・。
妄想してもあまり楽しくないときは
失敗作の証なのでございます。(@∀@ )
投稿: キッド | 2010年5月17日 (月) 20時05分