失踪後40時間以上が経過・・・もう死んでいます(森カンナ)簡単に断定するなーっ(沢村一樹)
「八日目の蝉」と「Mother」・・・子供の誘拐事件が目立つ今季のドラマだが・・・実は「警視庁失踪人捜査課」もそれと無縁ではない。
誘拐されたことが明白でなければ「子供」も失踪人に違いないからだ。
主人公が抱える心の闇も・・・実はそこにあるのである。
「人探し」は警察よりも探偵に似合う仕事である。もちろん、警察も犯罪捜査のプロとして人を探すのだが、それは犯罪者であることが多い。被害者・・・さらには犯罪と関係しているかどうかも不明な人間を捜すことには不向きである。それをあえて職務とすることは多くの矛盾を生じさせるだろう。行方不明者の圧倒的な量的問題に対処する人材配置はのぞめないからである。
キッドは若い頃にスターの初恋の人を捜すという仕事をしていたことがある。
今とちがって個人情報についての認識が薄弱で・・・探せないことは滅多になかった。
まず、スター本人の口から、思い出話を聞く。最終的に初恋の人をこっそり招いてご対面させてスターをびっくりさせることが目的なので遠まわしである。スターは相手の名前を伏せて恋の思い出だけを語ってもらったりする。うっかり、恋人の渾名を口にしたりすることがあれば簡単だが、そうでなくても時期を特定できればそれでいい。
中学の同級生ということであれば・・・中学名などをスターのマネージャーから聞き出し、基本的にマネージャーはこちらとグルなのである。次に出身中学に電話をかける。場合によっては出張して直接取材をする。当時の担任の教師のお話しとか同じクラスの生徒の名簿とか、そんなものも簡単に手に入った時代なのである。・・・いい時代だったな・・・みんな暢気で。
情報を総合すると・・・相手の氏名・住所・電話番号はたちどころに分る。後は相手にコンタクトをとるだけだ。
なにしろ、名前で電話番号が分り、電話番号で住所がわかった時代なのである。
それでも・・・消息不明という壁は存在した。
みんなが知っているのに今はどこかに消えた相手。スターの初恋の相手なのに消息不明者。時には親兄弟さえ、居場所が分らなかったりするのである。
キッドはそういう相手に突き当たったとき・・・ひとネタ損した気持ちで一杯になるのだった・・・少しは心配してやれよ。
まあ・・・そういう意味でこのドラマはなんとなく面白いのです。
で、『警視庁失踪人捜査課・第3回』(テレビ朝日100430PM9~)原作・堂場瞬一、脚本・福島治子、演出・田村直己を見た。ミステリの女王と呼ばれる小説家・木下薫・本名・饗庭紗江子(高橋ひとみ)が出席したホテルのパーティー会場から姿を消し消息不明となる。家族や出版社から依頼を受け捜査課は行動を開始するのだった。
高城刑事(沢村)と明神刑事(森カンナ)は木下の自宅を訪ねる。薫の弟・孝(長谷川朝晴)はいきなり怪しい感じである。孝は姉がずぼらで見栄っ張りだったと語り、「部屋を片付けないで失踪するはずがない」と断言するのである。その言動から「姉思いの弟の本気の心配」を読み取った高城は容疑者リストから孝をはずすのであった。しかし・・・何かひっかかるものを感じる高城。姉弟の間には暗い影があるようだった。
明神は処方された精神安定剤と睡眠薬を発見し、通院先の聞き込みへと動く。
高城は「何度かけても不通の謎の電話番号」を入手する。
一方、醍醐刑事(北村有起哉)と法月刑事(小日向文世)は出版社の薫の育ての親である編集者・井村(朝倉伸二)を訪ねる。このコンビは実に目がこわいのである。笑っている時も冷たい目をしている。特に法月刑事は抜群だ。見つめられたらなんでも白状しちゃいそうです。井村は薫の熱狂的なファンがストーカー行為をしていたことを告げる。
しかし、そのストーカーにはアリバイがあった。
事務員の高畑は薫のカードの明細から薫には不倫関係の恋人がいたと妄想する。
しかも、実際に不倫関係の恋人・カメラマンの花崎(松田賢二)は実在した。
けれど、花崎は「彼女は最近、情緒不安定だったので別れた」とクールに対応する。
薫が精神的に悩んでいたことを病院で聞き出した明神は「自ら失踪して40時間を経過・・・もう彼女は自殺しています」と根拠もなく断定するのだった。調子にのってみたのだった。
やがて森田刑事(黄川田将也)の調査で謎の電話番号の相手が判明する。
そこは焼死体の発見された店で発見されたのは薫の利用する通販会社のオペレーターだった。しかもオペレーターは薫の高校時代の同級生だったのである。
高校を調査した法月刑事は薫の隠された過去を掘り出すのだった。
おそらく、関係者はあの目で見つめられ洗いざらい白状したのである。
薫は高校時代、イジメを受けていたがある日、そのリーダーから逃れるために相手を一室に閉じ込めた。しかし、リーダーは喘息の発作があり、翌日、死体で発見される。事件は事故として処理されたが薫は「人殺し」の汚名を着たのである。
「オペレーターは薫の過去を知り、強迫・・・逆襲した薫に殺されたのでは・・・そして薫は今頃覚悟の自殺を・・・」とふたたび断定してみる明神だった。
そして、出版社には「薫の遺書」が届いたのである。
しかし・・・高城は「死体を薫とみせかけたトリックの幼稚さ」やそうした細工をしながら「遺書を書く不自然さ」にピンと来た。
やがて、薫の部屋からは盗聴器が発見される。
そういうことができる人間で・・・出版社の編集者・井村に遺書を届けることができる人間。
犯人は墓穴を掘ったのである。
薫の真のストーカーは井村だった。
刑事たちは井村のアジトを急襲し、監禁されていた薫を救出する。
しかし・・・過去の罪の記憶と監禁の恐怖により、薫は精神に異常をきたしていた。
高校時代の少女に精神退行していたのである。
そんな薫を高城は優しく慰める。「もう大丈夫・・・警察が来ましたから」
明神は「私たち・・・本当に彼女を救出できたのでしょうか」と疑問を投げかける。
高城は「したのさ・・・犯人から解放し・・・過去の暗闇からも魂を解き放ったのだ」と断定する。その高城の心を明神はまだ測りきれないのだった。
そのためには高城の心の闇に踏み込む必要があるからで・・・その件はきっと最終回まではとっておくのである。
そして捜査一課の長野(宇梶剛士)はかわいい高城をエリート・コースに戻そうとするが高城はきっぱりと断るのだった。男には興味がないからである。
実に淡々と面白い・・・。
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月曜日に見る予定のテレビ『遠藤久美子の駅弁刑事・神保徳之助4』(TBSテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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