遠くで汽笛が聴こえる観覧車と潮騒のゆりかごとMother(松雪泰子)
母性とはもちろんフィクションである。
大脳生理学が発展し、人間の意識についての情報は飛躍的に増加した。
脳内の情報の蓄積や処理・・・思考のシステムも怪しい心理学の仮説を葬り去る勢いで解明されつつある。
しかし、以前として謎は残る。
分析不可能な部分は残るのである。
大脳の機能局在は解析されたが・・・人がいつどこでどのように「思う」のかは未だ知られざる世界に属する。
科学者の中には形而上学的な「魂」の存在を予見するものまでいるのである。
それを「格差」と見るのか「個性」と見るのかは別として・・・人の脳には個々の相違があることは間違いない。
「母性」というシステムを有効活用するもの・・・しないもの・・・あるいは誤作動させるもの。
つまるところはあらゆるものは相対性の海に還元されていく。
善は悪に悪は善にたやすく姿を変える。
そうしたとらえどころのないものを「Mother」というフィクションは描いていく。
母なる存在をフィクションとして人に感じさせるために・・・。
水曜日のダンスは・・・。
「臨場」・・・17.9%↗18.6%↘16.7%↗16.9%・・・・・・↗18.6%↘17.0%↗18.6%
「Mother」・・・・・・11.8%↗12.0%↗12.8%↘10.0%↗11.9%↗13.9%↘12.4%
前田愛さすがだな。伊達に死体にならないな。
で、『Mother・第7回』(日本テレビ100526PM10~)脚本・坂元裕二、演出・長沼誠を見た。対比はフィクションの基本である。フィクションの本質の一つは「たとえ話」だからだ。前回が「藤子(高畑淳子)という義母と奈緒(松雪)という義母」の対比なら、今回は「葉菜(田中裕子)という生母と仁美(尾野真千子)という生母」の対比である。フィクションの作り手は視聴者という受け手の感情移入のシステムを利用して、対比によって揺さぶりをかける。
葉菜の行動に共感すれば仁美の行動を敵視せざるを得ないが・・・実は葉菜も子を捨てた生みの母であり、子を虐待の果てに遺棄した生みの母である仁美と多くの共通点を持つ。
母に捨てられた奈緒と母に捨てられた継美=怜南(芦田愛菜)の擬似母娘がその冷酷な現実に翻弄されていく姿はまさに劇的である。
そして・・・物語は奈緒という義母と仁美という生母の継美争奪戦へと収束していくのである。
ああ・・・実にシステマティックだなあ。規律正しい作劇のお手本である。
ハイエナのような雑誌記者・駿輔(山本耕史)は仁美の上京を知り、それを奈緒の生母で継美の守護神である葉菜に知らせる。
死病を患っている葉菜は検査入院中の病室を抜け出し、かりそめの母娘を守るために奈緒と継美が潜伏するホテルを急襲する。
葉菜「記者さんから・・・あなたたちが鈴原の家を出たことを知りました・・・そして北海道から悪魔のようなあの人が東京に出てきたことも・・・」
奈緒「え・・・継美をゴミ袋に入れて路上放置した・・・あの鬼女さんが・・・来たというのですか・・・でも・・・あなたには関係ありません」
葉菜「私はあなたに許されようとは思いません。でも一番大切なものを選んでください・・・継美ちゃんを守ること。そのためには一人より二人の方がいい。ホテルにいるよりも私の家の方がいい。あなたが働いている間、継美ちゃんの面倒を見る人間がいた方がいい。私にはそれができます。私も継美ちゃんを守りたいの」
奈緒「・・・」
葉菜「さあ・・・行きましょう」
恐ろしいママの出現に継美はパニックに襲われ戸締りをしてカーテンを引く。
その様子を見つめて・・・奈緒は複雑な思いを抱く実の母「うっかりさん」の提案に力なく従うのだった。
ハイエナは餌の確保に忙しい。興味深い取材対象である仁美をとりあえず自宅に連れ帰る。そこへ・・・電話で相談を受けた鈴原家の三女・果歩(倉科カナ)がやってくる。先週の声の小さい謎の人物はおそらく涙声で電話をかけてきた果歩だったのである。果歩はハイエナが恐喝者だったことは知らないのである。
ハイエナは情報源の遭遇にややうろたえる。しかし、所詮はハイエナなのでその成り行きを興味深くも感じるのである。
最初は仁美を駿輔の愛人と勘違いした果歩だったが、たちまちその正体に気がつく。果歩は室蘭で娘が行方不明なのに男に現を抜かす愚母としての仁美を目撃しているのである。
果歩「なぜ・・・あの人が・・・あなたが鈴原の家の電話をあの人に教えたの?」
駿輔「まさか・・・虐待の事実を知られるのが怖くて・・・学校関係に聞きまわったらしい」
仁美「怜南は今、何処にいるの?」
駿輔「怜南ちゃんの葬儀はもう済んだでしょ?」
仁美「いいえ・・・怜南はあの教師の家にいた・・・なんで・・・あの女と怜南が一緒にいるのよ」
駿輔「そうだとしたら・・・あなたは・・・どうしたいんです」
仁美「そんなの・・・決まっているでしょう・・・私のモノを取り戻すのよ」
駿輔「また虐待するためにですか?」
仁美「私は・・・何もしていない」
駿輔「ただ・・・見ていただけですか?・・・相手の男はなんて言うかな・・・警察に取り調べられたら・・・」
仁美「何も・・・知らないくせに・・・」
果歩「うそつき・・・継美ちゃんにひどいことをしたくせに・・・」
仁美「つぐみ・・・って?・・・あんた誰なの?」
果歩は失言に気がつき、沈黙する。駿輔は心の中で舌打しつつ、ほくそ笑む。事件が面白くなるのは旨みがあるからだ。
駿輔「どうです・・・この際・・・あの子はあげちゃったら・・・邪魔なものでもあったわけだし」
仁美は駿輔の提案にたじろぐ。しかし、仁美の心の暗部ではその提案を吟味し始めるのだ。仁美は計算する生き物だからである。
仁美は愚かな女であるので時々自分がわからなくなる。仁美は賢い女なので時々狂う。
私は悪いことは何もしていない
私は怜南を生んで育てた
私は怜南をしつけた
私は怜南を愛している
私が私を愛するように
私はマーくんを愛している
私が私を愛しているから
世の中は私のことを知らないだけ
私の正しさを知らないだけ
仁美は今を生きる女としてそれらしい受け答えを紡ぎだす。
仁美「そうね・・・それもありかもしれないわ」
葉菜と奈緒と継美は理髪店「スミレ」で一夜を過ごす。
奈緒は寝過ごした。奈緒は自覚していないが安堵していた。ぐっすりと眠ったのだ。
朝餉の支度の音が聞こえる。継美の姿を求め・・・奈緒は台所に向かう。
実の母とかりそめの娘の後姿が目に入る。
二人は仲むつまじい。
奈緒は歯を磨いた。
望月家には食器も一組しかない。寝具も一組しかない。
朝食の膳には不揃いの食器が並ぶ。
葉菜「ごめんなさい・・・みっともなくて・・・今日、お茶碗とか買いますから」
奈緒「よしてください・・・無駄になりますから・・・長居はしないので」
奈緒は反射的に答え、反射的に眉をひそめる。
そんな奈緒を継美はクスクスと笑う。
継美「ほらね・・・お母さんは眉と眉がくっつくの・・・クセなの」
奈緒は血のつながった母と血のつながらない娘の前で戸惑うのだった。
葉菜は奈緒に弁当を差し出した・・・奈緒はそれを恐縮しながら受け取った。
継美は学校へ奈緒は職場へと出かけると「スミレ」には患者に脱走された袖川医師(市川美和子)がやってくる。
葉菜「ああ・・・ごめんなさい・・・連絡しようと思ってたんですけど・・・うっかりして」
袖川「うーっマンボ!ってなっちゃったじゃないですか・・・どうして検査を受けないんです」
葉菜「なんとなく・・・わかるようなきがして」
袖川「それじゃ・・・なおさらでしょ・・・命の問題なんですよ・・・それ以上に大切なことがこの世にありますか・・・」
葉菜「・・・」
その頃、鈴原家では奈緒と継美のいない食卓に耕平(川村陽介)が参加していた。
藤子「果歩・・・昨日、何してたの・・・」
芽衣(酒井若菜)「奈緒姉ちゃんに逢ってたんでしょ」
果歩「どうだっていいでしょ・・・切り捨てたんだから」
芽衣「そんな言い方はないでしょ・・・お母さんは私たちのために」
果歩「お母さんを独り占めして喜んでるわけ」
芽衣「なんですって・・・」
果歩「やきもちやき・・・私・・・昔つねられたこと忘れてないんだから」
芽衣「突然反抗期かよっ」
耕平「すみません・・・すみません・・・果歩ちゃんには僕の就職活動つきあってもらってるんです」
果歩「いくわよっ」
三女と下僕が去ると藤子は零した。
藤子「本当に女ばかりだとギスギスするのよね・・・お飾りでも父親がいた方がいいと思うことがあるわ・・・」
芽衣「お母さん・・・まだ離縁届け出してないんでしょ?」
藤子は答えに屈した。嫉妬深い次女が血のつながらない姉を心配してそう言うのか・・・妬みがじりじりと這い上がっているのか判断がつきかねたからだ。藤子は思慮深い女だが・・・遠慮しすぎる長女も妬み深い次女も心底扱いにくいタイプの娘なのである。
果歩は姉の職場である清掃現場を訪問していた。
果歩「最初に言っておくけど奈緒姉ちゃんは今でも奈緒姉ちゃんだから・・・」
奈緒「果歩・・・」
果歩「あの人に・・・継美ちゃんと奈緒姉ちゃんのことバレちゃったみたい・・・でも・・・虐待のことがあるから・・・警察には通報できないみたいだよ・・・奈緒姉ちゃん、継美ちゃんと二人で暮らせるかもしれないよ」
奈緒の顔に希望の色が浮かぶ。
駿輔は仁美に探りを入れていた。
駿輔「警察・・・事情聴取に来たでしょ・・・死体があがらなかったこととか・・・死亡届けが出たことで虐待について調べ始めたりとか・・・警察は事件になれば動きますからね・・・僕はそういう事例をいくつも知っているんです・・・」
仁美は質問には答えず素知らぬ顔で話し出す。
仁美「私・・・考えたんです・・・怜南のこと・・・欲しい人がいるんなら・・・あげてもいいかなって・・・。私・・・まだ29才だし・・・一からやり直すこともできるかも・・・でも北海道はいや・・・沖縄なんかどうかしら・・・何もかも忘れさせてくれるかしら」
駿輔「忘れたいって・・・何を」
仁美「怜南が・・・かわいそうだったときのこととか・・・」
一方、葉菜はなにやら怪しげな行動をとっていた。昔、栃木の方で世話になったというカサイさんに連絡をとり・・・カサイさんに紹介された誰かに連絡をとり・・・死亡届の出ている継美について何かを相談するのだった。
当の継美は雑貨屋で手作りアクセサリーのセットを購入中である。
女たちは老いも若きも活発に行動するのだった。
仁美は駿輔から与えられたパンを貪り食っていた。
仁美「せっかくだから・・・怜南に会っていこうと思うんです」
駿輔「何故?」
仁美「だって私に会えなくて淋しがってるはずだから・・・そうそう千葉の木更津にいる勝子おばさんにも会わせたい・・・怜南が生れた頃可愛がってくれたし」
駿輔「あなたに会えなくて淋しい?・・・あの子はあなたから逃げ出したのに?」
仁美「・・・それは・・・一緒に暮らしていた彼が怖かったから」
仁美は記憶に残るあの夜を素早く追い払う。情夫の心を奪った怜南を嫉妬で打ち叩きゴミ袋に入れて路上に放置した出来事を。食事をさせずに衰弱させたことを。痣が残るほど虐待したことを・・・。
仁美「怜南は・・・私のことを大好きなんですよ・・・」
その顔は自分の信じたいことだけをすぐに信じられるものに特有の表情が浮かんでいた。
狡猾で愚鈍で空虚な狂気の光。
駿輔は怯えた。
望月家の夕餉は新しい食器がそろっていた。葉菜と継美はモモコさん直伝のしりとりを行儀悪く楽しんでいる。
め、目玉焼き
北枕
らららラッコ体操
うすのろ
ろろろロボット体操
裏街道
ううう運動会体操
パフォーマンスを交えた継美の狡さとボキャブラリーがどす黒い葉菜のしりとり勝負に思わず噴出してしまう奈緒だった。どこか不気味だが心温まる一家団欒である。
継美「うっかりさんの好きなものって何?」
葉菜「・・・観覧車・・・かしら」
その夜、継美は奈緒に提案する。
「土曜日はみんなお休みだから・・・みんなでおでかけしたい・・・お母さんとうっかりさんと三人で・・・そして観覧車に乗るの・・・うっかりさんの誕生日だから・・・うっかりさんをびっくりさせるの・・・それから誕生日のお祝いに布団をプレゼントしてあげて」
「布団?」
うっかりさんは座布団を敷いて寝ていた。
奈緒「今日は布団で継美と寝てください・・・それから土曜日はでかけます」
葉菜「大丈夫かしら・・・それじゃ、お弁当を二人分作るわね」
奈緒「お弁当は私が作ります・・・三人分」
継美の願いは叶った。娘の願いは叶えたい。それが母親の願いだから。
奈緒の葉菜への蟠りをなだめる大義名分である。
そこで携帯電話が鳴り、奈緒は呼び出される。
夜の公園に果歩と駿輔が待っていた。
果歩「あの人・・・継美ちゃんをあきらめるって・・・欲しい人がいるならあげるって」
奈緒「そんな子供をものみたいに・・・」
駿輔「嫌なことはみんな忘れて別の土地でやりなおすつもりらしい・・・でも一度だけ、継美ちゃんに会いたいと言っている」
奈緒「それは・・・」
果歩「いやかもしれないけど・・・」
駿輔「わかるよ・・・心配なのは・・・継美ちゃんに思われていないと知った時のあの女の逆上とか・・・あるいは・・・あの女が突然改心したようなことを言って・・・継美ちゃんとやりなおしたいと涙ながらに言ったときとか・・・」
果歩「そんな・・・勝手な・・・」
駿輔「でも・・・それがあの子にとって幸せな結末だといえないとは断言できないだろう・・・誰にもさ・・・」
ハイエナもまた・・・そうして殺された子供のことを忘れようとしているのだった。
そしてうっかりトリオは遊園地というファンタジー・ゾーンに迷い込む。
継美は子供らしくうっかりさんの誕生日を祝うという口実で遊園地をエンジョイするのである。メアリーポピンズで言えば子供たちが両親のためにクリスマス・プレゼントの玩具を買うという趣である。ちゃっかりさんである。
継美と奈緒は母娘でメリーゴーランドの木馬に乗る。葉菜は祖母として母として二人に手をふる。
二人はジェット・コースターにも乗り、水飛沫をあげるウォーター・スライダーには継美が一人で乗る。
奈緒「楽しそうですね」
葉菜「楽しいんですもの」
奈緒「・・・」
葉菜「そんな暗い顔をしたら・・・継美ちゃんが心配しますよ」
奈緒「ずるいわ・・・」
葉菜「はい。ずるいんです・・・ほらほら・・・継美ちゃん、来たわよ」
三人は観覧車を見上げた。
葉菜「なんだか・・・倒れてきそう・・・」
葉菜と奈緒には観覧車は特別な乗り物である。
継美は手作りのネックレスをとりだした。
継美「はい・・・お誕生日・・・おめでとう」
葉菜はついにこみあげてくるものをこらえることができず、顔を伏せた。
継美「どうしちゃったのかな・・・」
継美は不安そうに奈緒に寄り添う。葉菜は顔をあげる。
葉菜「・・・ありがとう・・・さあ、時間がもったいないから・・・今日は継美ちゃんの乗りたいものにもっともっと乗りましょう」
奈緒「・・・乗りましょう・・・三人で・・・観覧車に・・・」
三人は無邪気に空中に浮揚した。奈緒はそっと葉菜の顔を盗み見た。夢にまで見た母の顔を・・・。葉菜は微笑みを浮かべて下界の景色を見ていた。
芝生に座る葉菜と奈緒の母娘。
奈緒「さっき・・・何を考えていたの・・・?」
葉菜「長い夜だった。外には霙まじりの雨がふっていたわ。裸電球の灯が丸い影を作って天井で揺れて・・・石油ストープの臭いがしていたの。あなたを生んだ病室。どこか遠くで貨物列車が線路をきしませる音がして・・・それが段々遠ざかって・・・そしたら、窓の外で鳥が啼いたのよ・・・あれは何の鳥だったのかしら・・・ってね」
奈緒「どうして・・・そんなことを・・・」
葉菜「なんだか・・・夢のようで・・・なんだか信じられなくて・・・こんなこと・・・もう無いと思っていたから・・・」
奈緒は葉菜を見つめた。土曜日の昼下がりは穏やかに過ぎていく。
おそらく三人にとって長い間忘れていた和やかな休日だったのだろう。
葉菜は二人を先に帰し寄り道をした。そこは裏街道の裏町だった。
「漢方薬の卸し販売についてミヨシさんにお伺いに参りました」
合言葉を確認すると背の低い扉が開き、金時計の男が葉菜を招きいれた。
葉菜は裏社会の裏部屋に入っていった。
奈緒は葉菜のために布団を一組買った。
継美はぐっすりと眠っていた。
奈緒「今日からここで寝てください・・・継美をはさんで川の字で・・・」
葉菜「いいの・・・?」
奈緒「継美が喜ぶと思うから・・・」
葉菜「・・・お茶でもいれましょう・・・」
二人は茶の間で向き合った。
奈緒「継美は・・・ここに来てから本当に楽しそうです。きっと・・・あなたに愛されていると感じるからだと思います。あなたは守るのと逃げるのとは違うと言いました。守るというのは一緒にごはんを食べ・・・寝かせて・・・話をして遊んで・・・そういう子供の時を作ってあげること・・・だから・・・私も・・・人にこんな話したことないので・・・上手く言えないのですが・・・」
葉菜「お煎餅・・・食べる?」
奈緒「私もあなたと上手につきあいたいと思いました・・・もっと親しく・・・近く・・・」
葉菜「・・・」
奈緒「だからこれだけは聞きたいのです。どうして・・・私を捨てたのですか?」
葉菜「・・・」
奈緒「何も恨み言を言いたいわけじゃありません。それがどんなひどい理由でもかまわない。面倒になったからとか・・・好きな男の人ができたからとか・・・ただ・・・知りたいのです」
葉菜「はい。そうね・・・でもその前にあなたと継美ちゃんのことで一つだけ聞いてもらいたいことがあるの」
奈緒「ごまかさないでください・・・」
葉菜「継美ちゃんには戸籍が必要です」
奈緒「・・・」
葉菜「たとえ学校には行けても・・・この先の継美ちゃんのことを考えたら戸籍が必要です」
奈緒「でも・・・」
葉菜「戸籍を用意できる人を知っています」
奈緒「え・・・そんな・・・そういうことは危なくて・・・私たちが気軽に足を踏み入れるところじゃないっていうか・・・」
葉菜「私は昔、刑務所にいたことがあるの。栃木県の女子刑務所よ・・・もちろん・・・囚人としてね・・・そこで知り合った人の紹介だから・・・そう無縁でもないのよ・・・むしろ身近なの・・・」
奈緒「それって・・・私を捨てた理由と・・・関係ありなのですか」
葉菜「そうよ・・・それをして・・・逃げて逃げて逃げて・・・どうしようもなくなって・・・あなたを捨てたの・・・そしてすぐに私は逮捕されたの・・・」
奈緒「したって・・・何を・・・」
葉菜「刑期は15年だった・・・実際のおつとめは13年だったわ・・・それで察しがつくでしょ?」
誰を殺したかは隠す葉菜だった。
殺人者を目の前にして奈緒はそれ以上は問い質すことはできなかった。
自分が殺人者の娘であることに呆然としていた。しかし・・・なぜか・・・憎しみはわいてこなかった。それならば納得がいったという気分の奈緒だった。
葉菜「ごめんね・・・こんな母親で・・・できることなら・・・ずっとうっかりさんでいたかった・・・遠くからそっと見守っているだけでよかったの・・・でも・・・今日は本当にうれしくて・・・こんなことはもうないと思っていたから・・・この店で私の人生はひっそりと終ると覚悟をしていたから・・・海と山があって・・・継美ちゃんとあなたと静かに暮らせる・・・いい所よ」
葉菜は奈緒にメモを渡した。そこにはマコトという名前と住所が書いてあった。
奈緒「でも売買にはお金が・・・」
葉菜「それは大丈夫・・・」
奈緒「もし詐欺だったら・・・」
葉菜「信じるしかないの・・・ただ・・・あなたはまた犯罪を犯すことになるわ」
奈緒「・・・あなたに育てられたわけじゃないのに・・・結局、あなたと同じ道を歩いている」
葉菜「そうね・・・」
奈緒「道のない道を・・・」
奈緒が先に寝床に入ると葉菜はそっと家を抜け出した。
袖川医師を呼び出した。
葉菜「先生・・・私・・・生命保険に入りたいの・・・」
袖川「うーっマンボ!・・・それは無理ですよ」
葉菜「だから先生にお願いしたいの・・・診断書を書いてください」
袖川「それは・・・犯罪ですよ」
葉菜「先生・・・先生は生きがいって言ったでしょ・・・生命保険に入って死ぬこと・・・それが私の生きがいなんです」
袖川「うーっマンボ!」
仁美は駿介の部屋を嗅ぎまわっていた。虐待被害者の痣の写真を発見した。そして・・・怜南と鈴原教師の写真があった。二人は仲の良い本当の母娘のように見えた。怜南は幸せそうだった。仁美は逆上した。自分を残して一人で幸せになった娘が許せなかった。そして何より人のモノを勝手に盗み去った女を憎悪した。
怜南は私の所有物よ
なぜならソレは私が生んだモノだから
人のものを盗んでランドセルを背負わせ小学校に通わせるなんて
人間のすることじゃないのよ
仁美は写真を破り捨てた。
仁美を見張っていた耕平は居眠りをしていた。そして仁美は姿を消した。
それに気がついた駿輔は戦慄した。
駿介は奈緒の職場を訪ねた。
駿輔「あの人がいなくなっちゃいました・・・帰ったのか・・・それとも千葉の親戚を訪ねたのか・・・これからそっちに行ってみようと思います」
奈緒は胸騒ぎを感じた。
学校から帰った継美は葉菜のお手伝いをしていた。
葉菜「冷蔵庫にゼリーがあるわよ」
継美「やったー」
継美は二階に駆け上がった。
そこへ仁美が入店した。
葉菜「ご近所の方ですか・・・」
仁美「あの子はどこ・・・私は怜南の母親よ」
葉菜「おひきとりください・・・今、あの子の母親は留守なのです」
仁美「あの女は母親なんかじゃないわよ」
仁美は葉菜を振り払った。
仁美「怜南ーっ・・・ママよ・・・ママが迎えにきてあげたのよーっ。怜南ーっ」
継美=怜南は硬直した。
仁美は家屋への侵入を開始した。その赤い袖を青い袖がとらえた。
奈緒は母親として仁美をにらみつけた。
仁美は母親として奈緒をにらみ返した。
ゼリーがプルンと揺れた。
その頃、ハイエナは千葉で生れたばかりの怜南を抱く仁美の写真を入手していた。
そこには幸せそうな母と娘が写っている。
歳月は人を変えるのである。
関連するキッドのブログ『第6話のレビュー』
金曜日に見る予定のテレビ『森カンナの警視庁失踪人捜査課』『子役オールスターズとハガネの女』(テレビ朝日)『岩佐真悠子のトラブルマン』『里久鳴祐果の大魔神カノン』(テレビ東京)『仲里依紗のヤンキー君とメガネちゃん』(TBSテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
こんにちは!いよいよ来た!仁美ですが、演技の巧さもあるのでしょうがやけに怖かったです(実母だから、継美が玲奈に戻っちゃったらどうしようという恐れ含め)
そして対抗する葉菜…人畜無害をひとがたにしたような葉菜が裏街道通なんて、スーパーうっかりさんがほんとにハイパーうっかりさんに!?とびっくりしました…ほんわりしたキャラとの落差が劇的です。葉菜と仁美の回でしたね。
この二人も対比のキャラなのですね。MOTHERドラマが密度高くて無駄がなく感じられるのは、対比だらけでぎっちり作ってあるからでしょうか。描き出すテーマにブレがないから組み上げられたキャラ配置なのでしょう。
赤い袖と青い袖の対比には気がつかなかった!私の敬愛する小説家の先生が、作中は全て作者が恣意的に作れる世界なのだから、たまたまそこに描写する植物ひとつも、意味なく選択するものではないと書いてたことがあり、感心したのですが、劇にもそれがあるんですね!(一度書き込みします)
投稿: リンゴあめ | 2010年5月27日 (木) 18時45分
質素だけと丁寧なお弁当に明るいダイニングの食卓に暗い部屋でかじるパンにと、食事風景の対比も面白かったです。
実・偽母対決はもう(肝心なのは実か偽かという論点ではないでしょうし…)両方から子供を引っ張って先に手を離したほうがほんとの母!
って大岡越前でしたっけ?
仁美の気持ちは、だるくて投げ遣りな様子から、急に激情に一転するさまが怖くて、怖っ!とびびっているだけで想像出来ませんでしたが、「一人だけ幸せになって」というのは、ふにおちますね。
今まで母子一体で不幸だったのに、「自分だけ取り残された」感じ…玲奈をあげちゃおうかなと言ってみたり、リセットしたい/まだすがりつきたい 気分が入り交じってて、こっちも二律背反なのかなと思いました。激情で行き当たりばったりっぽく動くさまが何かもう見てて悲しい…すがりつくのも母性と名付けられなくもないのかな?
虐待がバレるのが怖くて菜緒を探し出したというと本当に自己保身の人に思えるけど、仁美は公にバレることで、自分自身が自分は子供を虐待してしまったのだと決定的に認識してしまうのが怖かったのかな…もし玲奈が許してくれたら、「虐待なんてものじゃない、ちょっと苛立って揉めただけよね」と、まだ普通の母親イメージを自分自身に保てると希望を抱いていたかも…
葉菜のほうはもう骨の随まで!自分を利用して捨て身で子供の幸せを作ろうとしてます。
戸籍売買について菜緒に話しているときの葉菜が、顔が表情が無くて別人みたいで、ゴルゴ13みたいと思いました!
そして接待担当部長みたいに周りの大人に気が利く継美…凄いよ、私よりずっと(^_^;)と思いました。
投稿: リンゴあめ | 2010年5月27日 (木) 19時15分
母性について話すとなんか感情的になる人もいて取り扱い注意なのですが、母性はフィクションとずばり言っちゃうとこがナイスです
ふと思ったのですが日本で母性を語るとなんでこう湿っぽいウェットな感じになるのかなーと…
マンマ・ミーアとかグラン・マとか、海外では陽気でカラッとしてて頼もしい感じの母性だってある(いや、よく知りませんが)と思うのに…
昔中森明菜の「冷たい月」というドラマがあって、それのラストが拉致してきた憎い女の子供を事故から守って死ぬ?という結末だったと記憶してるんです。多分。
洋画の「ゆりかごを揺らす手」もほぼ同じシュチュエーションで、でも最後はヒロインが侵入者である、逆恨み女をガチ対決で撃退して死なせて、めでたし、みたいな。
学校の先生がアメリカ映画は何でも自分たちの外から来た敵を実力で撃退して勝利という映画だ、2001年宇宙の旅も猿の惑星も!と言ってまして、それ当てはめると「ゆりかご」はアメリカ的ぃ~!と思ったのですが、対して「冷たい月」は、自己犠牲で死んだら許す?または母性が先に立つ、みたいなラストで。
それが日本人の心情的に納得するのかな?と思ったんですが…どうでしょーね
投稿: リンゴあめ | 2010年5月27日 (木) 19時34分
いやぁ改めてスゴイ作品ですね。
娘と離れていても
娘は自分を愛していると信じて疑わない女
それが、娘が写真の中で
自分に見せたことのない表情を
自分が全く知らない女性に見せている
それを受けて眠っていた母性が目覚めて
嫉妬に狂い出す
つい、ほんのさっきまで
娘をあげようとしていたはずなのに
そうして段々と
自分こそが娘の本当の母親で
自分こそが娘に一番愛されている事を
証明したくて
その思いだけで突っ走っていったがために
狂っていく女
一方、誘拐してきた子供と
一緒に過ごしたいという娘の願いを叶える為に
再び犯罪の道に手を染めることも厭わず
それどころか娘に犯罪を勧める訳ですからね。
最後には自分の命を金にして
娘に捧げようとする、こちらもある意味
狂っていく女です。
そして仁美の場合は幼児虐待
奈緒&葉菜の場合は誘拐&戸籍の偽造
どちらもなかなかに負けておりません。
ま、どちらにしても世間にバレなければ
罪にはならない訳ですからねぇ。
それにしても似たような境遇の方が多いのです。
母を愛しいと思うと共に
自分を捨てた母を憎む思い
それも時が経てば許せるようになってくる。
それもこれも守られて生きていればこその
ものなんでしょうね。
そうそう、赤い袖は
人間に愛されたいと思う赤鬼さん
青い袖は人間を守るためならば
自分が傷つくことも厭わない青鬼さん
たしか、どこかのNHKのドラマでそんな事を言ってました。
単なる偶然なのか
それとも同じ脚本家だからこそのなせる業なのか
ちょっと気になるところです。
でもって、男性出演陣のなんとも影の薄いことで。
殺処分されることなく
守られている種牛がふと羨ましいと思ってしまった
今日この頃です ̄▽ ̄ゞ
投稿: ikasama4 | 2010年5月27日 (木) 21時05分
◉☮◉Mother~リンゴあめ様、いらっしゃいませ~Mother◉☮◉
演技力には定評のある尾野真千子ですが
やはり女優そのものの存在感が魅力ですな。
鬼畜のような母親という役柄も
仕立てたスーツのようなフィット感がありますね。
それに対して善良な仮面の下に
隠していた魔性の女を覗かせる田中裕子。
大女優の真骨頂でございます。
菩薩から夜叉が飛び出したような迫力でした。
人間にも悪人と善人がいる。
一人の人間の中にも悪と善がある。
清濁あわせ飲むとか
酸いも甘いも嗅ぎ分けるとか。
そういう言葉は
人間の両面性を見越して
対処する人間の
知恵の結晶です。
大人がそういうものを
持ち合わせていないと
摩擦は高まっていくといえるでしょう。
また、あまりにも柔軟性にとんでいると
信用性がなくなるということもあります。
まあ、ちょうど今
日本では鳩山首相と福島大臣という
格好の見本があってわかりやすいですね。
鳩山首相は明らかに
甘やかされた子供のご都合主義。
善も悪もすべて受け入れてしかも悩まない。
福島大臣は独善主義の塊で
自分の主張以外はすべて悪という
困ったちゃん。
あきらかに二人とも精神障害者の影がございます。
首相と大臣が心を病んでいるというのは
一同爆笑のフィクションですな。
現実というフィクションもなかなかに
あなどれません。
一言、説明しておきますが
キッドは虚構(フィクション)を
この世のすべてと同義語で使用しています。
キッドの想像では
キッドが知る世界以外にも
世界が存在するような気がしますが
結局、すべての人間は
主観というフィクションでしか
フィクションの元となる実存を
客観できないのです。
ややこしく感じたらすみません。
口下手なもので・・・。
たとえば・・・夜というものがあります。
一口に夜といっても
様々な夜がある。
本当の夜とは一体なんでしょうか。
そういう時、キッドはこう唱えます。
夜ほどの夜はない。
それが愛ならば
愛ほどの愛はない。
それが自分ならば
自分ほどの自分はない。
このようにすべての現実は
虚構なのでございます。
もちろん
虚構ほどの虚構はないのでございます。
同じ母親でも
姉妹によって「母」のイメージは違う。
奈緒にとっての藤子
芽衣にとっての藤子
果歩にとっての藤子
どれもが藤子でありそして母親です。
芽衣にとっては
今、自分を強く愛してくれる母が望ましい。
果歩にとっては
芽衣よりも奈緒を愛してくれる母が望ましい。
奈緒にとっては
姉妹を平等に愛し、さらには他人の子まで
平等に愛そうとする母が痛ましいのです。
人間の心は複雑怪奇で面白いのでございます。
人間にはいい加減さも大切です。
人間が不老不死でない限り
母親はいつか死ぬ子を生む存在です。
母とは原理的には殺人者なのです。
なにしろ生まなければ
その人間は死ななくてすむのですから。
しかし、母は殺人者の汚名と引き換えに
掛替えのないひとときの生を
わが子にあたえる。
その前提条件は
いつか死ぬとわかっている命でも
幸せで楽しい一瞬を感じるから・・・でしょう?
それを理屈抜きで感じるのが
いい加減というものです。
もちろん、心の標準装備ですが
場合によっては欠落している個人もいるし
オプション選択の果てに
未装備にした個人もいるでしょう。
「母性」というシステムが
女性たちの琴線をふるわせるのが
標準装備という限定なのでございましょう。
「母性」なんてなくても
人間としては生きていけるだろう
GPS機能未装備だって
車は走るわけだから
・・・ということなのですね。
まあ、アナログだってテレビだろうなんて
言っていると突然、デジタル・オンリーに
なったりする社会というものの恐ろしさは
別として。
赤と青といえば
そこが理髪店である以上
あの二重螺旋の看板を
想起することができます。
赤は動脈、青は静脈を示している
と云われます。
理容師とか美容師は
公衆衛生上、医師に近い存在だ
ということの名残でございます。
動脈も静脈もなければ
血液は循環しない。
つまり、生きてはいけないのです。
奈緒は慈しみから攻撃性を発揮し
仁美は憤りから攻撃性を発揮する。
善悪を越えた人間の本質のせつない部分です。
神は細部に宿ると申します。
まあ、全体も神である以上
細部も神であることは当然なのですが
人間は全体を見渡すのは不得意なので
つい細かいところで点検するのですな。
指を見ると爪が汚れている。
すると神は不潔だっということです。
作品の神たる作家は
愛を描くなら背景に浮かぶ鳥にさえ
愛を感じさせるのは基本なのです。
つつましい望月家の食卓。
すさまじい仁美の餌場。
この両者に横たわる落差は
槍ヶ岳山頂から下界を見る恐ろしさです。
しかし、主体となる
葉菜と仁美は
共に臆病な猫なのです。
葉菜は「こわがりなの」と自分で言ってますし
仁美はコンビニの制服のまま上京したほどの
「わが子に対する執着心」をけして
他人には見せない。
ハイエナはまんまと騙されてしまう。
もちろん、仁美には「保身」の気持ちが
ないわけではありませんが
「怜南という獲物を狙う」気持ちも最初からあるのです。
それは目をみればわかります。
その本心を隠して隠して
ついに獲物を目前にして牙をむくのです。
これは強烈。総身の毛が逆立ちますね。
身の毛がよだつとはこのことです。
とにかく臆病な猫はこわいのです。
ひっかきますからね。
奈緒の中には他人の子を育てた藤子の心が
あるわけですが
生んだ子を捨てた葉菜の悲しみも浸透してきました。
そして母親に捨てられ母親を捨てた
継美の苦しみこそ奈緒の本質です。
その前に現れた仁美。
仁美はもう一人の葉菜です。
奈緒はもう一人の藤子です。
そして継美はもう一人の奈緒なのです。
この対比の見事さにキッドは身震いいたしましたよ。
こりゃ・・・どうしていいか
わからない局面すぎるのですな。
もう・・・継美にまかせるしかないのか。
そんなこと子供に選択させていいのか。
という気持ちもありますしねえ。
まあ・・・このドラマの継美=怜南なら
実の母親を再教育することも可能かもしれませんが。
それではあまりにも特殊だし。
最悪の結末としては
仁美の元に戻った怜南が結局、虐待死・・・。
というのもありますが
すでに実例をハイエナがふっている以上
それは禁じ手といえます。
かといってみんな仲良しエンドでは
いい加減がすぎますし・・・。
作者の最後の一手が本当に楽しみです。
母性というものを語る人が
きっとウエットなのでしょうね。
マザ・コンを否定する人は結局、自己否定だし。
たとえば・・・未婚の女性「マザコンきも~い」
その女性の長男出産後「マザコン万歳」です。
まあ、今を生きているかぎり問題ありません。
これは洋の東西は無関係。
どちらかといえば憲法九条の問題です。
「みんなが戦争しないといえば戦争はなくなるもん」
「マジっすか」
ということです。
ギリシャ神話の母親には
結構、陰湿な母親は登場しますよ~。
子供を残して首つったりとか・・・。
映画「ゆりかごを揺らす手」(1992年)だって
わが子の復讐に燃える母目線で見れば
ものすごく湿っぽい話ですし。
ドラマ「冷たい月」(1998年)は単に
パクリ元の逆を行っただけという視点もあります。
逆転の発想はパクリの基本ですからね。
小説「世界の中心で愛を叫んだけもの」(1969)→
小説「世界の中心で、愛をさけぶ(人間)」(2001)
のようなものです。
洋の東西を問わず人間には
「勝者」への賛同や憧憬、
「敗者」への同情や愛惜があるということでしょう。
ワールドカップでサッカー日本代表が
優勝したときのことを妄想してみてください。
まあ・・・現実というフィクションの結末としては
想像しにくいことですが。
日本人が
「勝者」と「敗者」のどっちが好きかと
言われれば
人間は1人の勝者とその他の敗者で
構成されているという考え方を吟味してみることを
推奨します。
いわゆる一つの判官贔屓の本質です。
まあ、参加することに意義があるのも
優勝できなければ2位も3位も同じも
勝負の世界では価値ある言葉なのですが。
投稿: キッド | 2010年5月28日 (金) 09時52分
✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥
・・・でございますね。
マジでスゴイ。
仁美の娘の愛を信じる心。
そしてそれが裏切られた時の衝撃。
それでもなお娘を信じようとする執着。
それが自己防衛と一体化し
わが子を食らうと妄想される母猫となる。
もはや仁美には
怜南をその手にしたい
欲望だけが残される。
それは爆発しそうなほどに
膨張し一心不乱に
走り出す。
整然と折りたたまれた借りた部屋着が
燃える心を隠す冷たい偽装工作として
恐ろしいまでの情念を物語ります。
一筋縄ではいかない
この作品の完成度です。
一方、あなたの願いを叶えたいから
手段なんて選ばない
たとえこの身が焼き尽くされても
世界が滅んでも
愛しいわが子の願いだけは
絶対にかなえてみせる。
そのためには娘が不幸になったって
かまわないというのが
葉菜という母親の覚悟。
それはもはや妄想的執念の世界です。
最初に怜南に自分を見出した奈緒。
そして仁美には憎い実母の面影を見る。
やがて継美との生活に
距離を置いていた養母の藤子の心が
染み渡る。
さらに葉菜という憎しみの対象に
愛おしさを見出した翌日。
愛おしいわが子の本当の母親がやってきた。
ううーっマンボ!な展開です。
どうする奈緒、
どうなっちゃうんだ奈緒でございます。
そして予告編が示す
狂おしいほどに残酷な場面。
・・・たまりませんね。
愛したいのに愛せない
これは苦しいものですからな。
食べたいのに食べられない。
眠りたいのに眠れない。
どれもこれも恐ろしい・・・。
やがて忘却の波が
なにもかもを押し流すにせよ・・・。
ふふふ・・・ちょっと前に
「読売新聞」に
「泣いた赤鬼」の紹介記事が載って
想像すると「チェイス」や「Mother」の
脚本執筆時と重なるのですな。
キッドは「チェイス」でニヤニヤし
「Mother」でニヤリとしましたぞ。
赤鬼=仁美なら
青鬼=奈緒は
心を鬼にして継美(人間)を突き放す奈緒という
行く末が浮上します。
その場合は仁美は
奈緒の置手紙を見て・・・涙が止まらないラスト
ということになるのでしょう。
まあ・・・奈緒の手紙は
継美宛てのものになるかもしれませんが
盗み読みは仁美の常套手段ですからねえ。
まあ、男性作家の作品ですから
基本的には男視線。
それも母への思慕が根底にあるわけです。
あさりのみそ汁なんて
おふくろの味そのものですからねえ。
ある意味
お母さん、ああお母さん、お母さん
と作者が叫び続けている作品とも言えますな。
まあ、優秀な血統は
貴公子の証ですからな
雑種の男たちは食卓にあがることを
身の誉と思う他ありません。
仔牛のステーキになるか
雄牛のステーキになるか
わかりませんけれど~。(・_・)ゞ
投稿: キッド | 2010年5月28日 (金) 10時41分
コメントいっぱいありがとうございました!携帯で見ると文が途中で切れていたのですが、図書館のPCから見たら全部見れました(←自分でPCを持っていない)
「玲奈という獲物」
あーだから怖いのか…子をなくす位なら取って食おう…って大島弓子の母猫の話を思い出しました。仁美の怖さは何をするかわからない、人の理解超えた感じがだったのでふにおちました。
あ!でも「何をするかわからない、なりふり構わない怖さ」は葉菜もそうですね。菜緒だって「やっちゃった」し…
藤子ママがいかに理性的か…菜緒に離縁届けを書かせたのだって、娘から、一人の母親になった菜緒の巣立ちを認め、辛いながらも手を離す健全な母に見えました。
なりふり構わないのベクトルの向きが違うけれども…
赤と青にそんな意味が込められていたとは!赤鬼と青鬼…行き過ぎるとどっちも悲しい…でも動脈と静脈のようにどっちも必要というか、ただどっちも「ある」ものなのですね。
葉菜と藤子ママ、
仁美と菜緒、
葉菜と仁美
理性VS感情の対比がくっきり…
でもどちらも育児の時には働かせるもの…二つの顔とも、一人の人のもの、裏表というか、赤と青で一つなのかな…と考えさせられました。主要キャラがそれぞれ対比だったり同時に投影だったり、それを最小限の登場人物数でわかりやすく組み込むとは緻密です!
「ゆりかご」はなるほどです。ペイトン(敵女性)の側に立てば夫のせいなのに流産して、狂っていくのだし、あげく犯罪者として死ぬし、ペイトンを鎮魂する話を作りたくなったらああいう結末になるのかもと思いました。
フィクションの話は、何となくわかる気がしますー
なんとなれば、私の生まれる前に去った家族の一員について、その人を知っていた親戚や知人に人となりを聞いても、かなり皆違う答えが返ってきたからです。昔私は混乱し、どれか一つが正しくて、必然的に他の答えは嘘なんだと思っていましたが、よく聞いてみていると、どれも言ってる人にしたら本気なのだとわかりました。
その人の立ち位置からみたら(嫁とか兄弟とか姑とか)、某人は本当にそう見えたのです、その人には。
同じ一人の人なのに。それで私は、過去のことでそこに私がいなかった以上、もうわからないという結論に達し、なんかかえってサッパリした次第です。私事ですみません。
考えながら歩いていたら何か鬼子母神を思い出しました。我が子を喰う訳ではないですけども…
次回に注目です!
投稿: リンゴあめ | 2010年5月28日 (金) 23時58分
次週8話と9話に吉田羊さんが出演されます。
8話はちょこっと台詞あり。
(「ゲゲゲの女房」 高級クリーム・セールスレディの所長役=布美枝を雇う、
「コードブルー2」で緋山を医療過誤で訴えたお母さん・直美、
「キャットストリート」(2008 NHKドラマ8 谷村美月主演)元天才子役の青山恵都(谷村)の復帰作・音楽プロモーションビデオの監督役。
朝ドラ「瞳」入院した勝太郎(西田敏行)の担当看護師、三浦役)
事前情報です。
記事が滞っているので、ひとまずこれにて。
投稿: シャブリ | 2010年5月29日 (土) 15時44分
◉☮◉Mother~リンゴあめ様、いらっしゃいませ~Mother◉☮◉
お手数かけてすみません。
PCベースでやっていて
携帯によるロードの限界は
考慮外でした。
ロートルなのでお許しください。
なにしろ、ネットカフェに
一度も行ったことがない
不勉強な人間でございます。
隠し事をしている人間の表情を
作る演技というのは
尾野真千子にはたやすいことのようです。
人は他人の顔をじっくり見るとは
限らないので
そういう演技が無駄になることも多いのですが。
「後ろめたさ」という心の機能があれば
視線をそらすのが基本。
逆にそれを知る人間は
あえて視線をそらさないという演技があります。
演技とそうでない動作には
レスポンスに差が生じるので
そこを見逃さないという
嘘の見抜き方もございます。
ふふふ、綿の国星ですな。
今となっては少年Aではすみませんけどね。
青鬼というトモダチがいるのに
人間と仲良くしたい赤鬼、
そこで青鬼が悪役を買って出る。
しかし、そのために青鬼は旅に出る破目に。
赤鬼は人間と仲良くできたけど
一番大切なトモダチを失って泣く。
しかし、それは幸せの涙だったりして。
人によっては青鬼があまりにも哀れで
赤鬼にちょっとした狡さを感じたりします。
青鬼を怜南、
赤鬼を仁美と
考えることもできますな。
怜南は自分のためでなく
仁美のために家を出たのかしれません。
そこまでいくと
子供は子供らしく・・・
と言いたくなる人がいるかもしれません。
理性も感情の一つだし
感情も理性に過ぎないという考え方もあります。
ここは共通ルールの問題でしょうね。
人に迷惑をかけないとか。
優先順位に従うとか。
しかし、なかなか暗黙の了解というのは
難しい。
ドラマを単に受け手として楽しむ場合には
そのままを感じればいいわけですが
創作のためのお手本と考えると
主役を変えてみるというのは
一つの手なのでございます。
「2001年宇宙の旅」や「猿の惑星」は
どちらかと言えば
すでに逆になっている映画ですよね。
人類は神(上位宇宙人)の家畜だとか
人類は滅んで猿が天下とったとかですから。
その裏が「ハルマゲドン」であり
「エイリアン」だと考えるといいかもしれません。
人類の輝かしい勝利や
困難の克服はハリウッドの正攻法でございます。
芥川龍之介の「藪の中」に代表されるように
一つの事件も証言者によって
印象が変るということです。
すべてはフィクションなのですから。
鬼子母神ハーリーをこらしめるために
ブッダは鬼子母神の愛児プリンを隠し
他人の痛みを悟らせます。
逆にブッダは子をなくして
嘆く母親のところにいき
「家々をたずねなさい・・・
もしも子供を失った母親が
あなた以外に一人もいなかったら
私はあなたの子供を復活させましょう」と言う。
母親はたくさんの子供を失った母親に会い
心の傷が癒されるのです。
悲しみの相対化もまたブッダの得意な
説得法なのでございます。
投稿: キッド | 2010年5月29日 (土) 16時16分
▯▯black rabbit▯▯シャブリ様、いらっしゃいませ▯▯black rabbit▯▯
ふふふ、ご苦労様でございます。
今朝は布美枝が
ポーラ・レディーになるため
所長に指導されてましたな・・・。
最近では「ゴーストフレンズ」の
元ヤン温子が一番インパクトがありましたね。
どんな役なのか楽しみです。
裏社会の女か・・・
保険屋か・・・
通りすがりの仁美の夫の妻とか・・・。
どうかマイペースでお願いします。
投稿: キッド | 2010年5月29日 (土) 16時40分
コメントの長さにびっくり。(笑)
投稿: みのむし | 2010年5月30日 (日) 19時04分
*simple*life*みのむし様、いらっしゃいませ*simple*life*
ふふふ、ついつい長くなってしまうのですぞ~。
びっくりさせてすみませぬ(微笑)
投稿: キッド | 2010年5月30日 (日) 22時12分
いつも長文コメント書かせて恐縮なのですが、リンゴあめはすっごく勉強になりますよ!
学校を出ちゃってからも、当たりが良ければネットの中にたくさん先生を見出すことができて、ネットは害もありますがその点ではとても有り難やなのですf^_^;
投稿: リンゴあめ | 2010年5月30日 (日) 22時34分
◉☮◉Mother~リンゴあめ様、いらっしゃいませ~Mother◉☮◉
どうぞお気になさらず
好きなだけ書き込んでくださいませ。
ココログはコメント制限が
緩やかなので
そこが利点でございますから。
人間、生涯勉強でございますからね。
じじいのたわごとが
わずかなりとも
お役に立てば幸いでございます。
投稿: キッド | 2010年5月30日 (日) 23時18分