丸くても一角あれや人心あまり円きは転び易きぞ(坂本龍馬)
天衣無縫でありたいと願う人々は無縁であるかもしれないが、生まれつき天衣無縫のものは自戒を作る必要を感じる。龍馬はどちらかといえばボケ体質なので自らツッコミを入れることがある。
円満な人間関係を築くためには円やかな人格は必要だが、時にはそれは「八方美人」という罵詈にたどり着く。
人間が徒党を組む生き物である以上、党の中で円やかであっても、党と党の対立が生じれば円やかではすまない。
こういう時、人は「譲れない一点」を持つべきだと龍馬は歌うのである。
もちろん、それは剣士としての兵法原理からも発している。
生死のやりとりにおいて「不戦不敗」は真理である。しかし、「先手必勝」である以上、この「矛盾」に対処しなければならない。それは「己を知り敵を知る」ことにも通じるが、同時に「突破口」にも通じていく。
「動いたら負け」という局面で「動いても勝つ一手」を探すこと。
それが精進というものなのである。
「攘夷一色に染まれば開国」「倒幕一色に染まれば大政奉還」たえず龍馬は一角を突き上げた。
もちろん、角を立てるのは攻撃であり、そこには隙が生じる。結局、人は無敗であり続けることはできない運命なのである。
で、『龍馬伝・第18回』(NHK総合100502PM8~)脚本・福田靖、演出・渡辺貴一を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は後の元祖鉄オタ・勝塾塾頭・佐藤与之助と「風林火山」のミツの兄河原村伝兵衛の有薗芳記描き下ろしイラスト徹底比較特集、世界で一つだけの花とはこのことです。もちろん、それだけでは萌えられない方々のために幕末のモー子こと大和屋お徳描き下ろしイラストも出血大サービス。鼻血ブーです。とにかくノリノリで爆笑場面連続の最高のこの大河ドラマ。キッドも2回お茶を噴きました。やはり、龍馬、勝、以蔵のトリオはトレビアンですな。まさに絵にかいたような、天才・秀才・おバカさんでございます。滅びつつある幕府にあってなんとか日本を残そうとする勝、それを一を聞いて十を知るスタイルで体得する龍馬・・・そしてただただ時代に翻弄され流されていくかわいい以蔵。もうブルブルと震えがとまりません。なんちゃあないのか・・・救出の手立ては・・・。あの仔犬を拾ってやるタイムマシーンは・・・。・・・でございます。
文久三年(1863年)、早春の京には続々と諸大名が集結しつつあった。二百五十年ぶりの将軍上洛に備えるためである。公武合体派の巨頭たち・・・薩摩藩の大殿・島津久光は将軍入京よりわずかに遅れるが入京。土佐藩大殿・山内容堂はすでに入京し、これを迎える。久光の入京の遅れは生麦事件が尾を引いている。突発事故とはいえ、英国と薩摩の中にたった幕府を苦境に追い込んだことは佐幕派と言える久光にとって面目ないことだった。「しかし、英国の礼を糺すことはあながち間違いではない」と宇和島藩大殿・伊達宗城は久光を慰める。「英国の貴族を殺めたわけではなく無礼討ちに賠償などあろうことか」と京都守護職に就いた会津藩主・松平容保に水を向ける。容保は無言だった。安芸広島藩主・浅野長訓は前年より藩制改革を行い危機感を深く抱いている。「この度の義は当方にあれども・・・相手のあることゆえ、予断はなりませぬ」・・・刃傷沙汰には深いトラウマのある一族なのである。筑前福岡藩主・黒田長溥は薩摩藩からの養子である。久光には大叔父にあたる。中州に科学工場を建設するほどの蘭学者でもあった長溥は開国派として生麦事件を困った不始末と感じていたが、久光との軋轢を避け発言を控える。(なに・・・そのうち西郷がなにかやらかすだろう・・・)長溥は島送り処分の西郷を密かに援助している。筑後久留米藩藩主の有馬頼咸は砲術家としては一流だったが遊び人としては超一流だった。すでに財政が傾いている久留米藩であるにも関らず京都滞在にも金に糸目はつけないのだった。
このように大名あるいは大殿が一同に会した京の都は空前の将軍上洛景気に沸いていた。膨大な物流が京に流れ込んだのである。
勝海舟も大坂から京へ入る。将軍から召しだされた場合に備えるためである。しかし、同時に海軍奉行として有力大名への資金・人材の協力要請を続けているために恐ろしく多忙だった。
そんな勝の宿に土佐藩から使いが来た。真夜中である。
すでに以蔵は勝の警護役を命じられ、宿に詰めている。気配に以蔵は跳ね起きたが、勝がそれを制する。勝は以蔵に犬万(犬を手懐けるための忍びの薬物)入りの饅頭を放った。
「大丈夫だ・・・大人しくしてな・・・」
以蔵は鼻をならして饅頭にむしゃぶりついた。そのかわいさに勝は目を細める。若い頃は犬嫌いだった勝だが最近は愛犬に目覚めている。勝の寝所にやってきたのは山内家が使う忍び森下一族のくのいちお幸だった。
信濃から越後に流れた古い海野一族の血を引く勝海舟にとって武田の武将・板垣家の流れを汲む森下一族はあながち無縁とはいえない。また、公儀隠密の土佐における拠点である板垣家は勝にとって一種の同胞である。山内容堂が土佐忍びの頭領となって以来、勝と容堂は盟友関係にある。
肥大化した土佐勤皇党の処理について策を講じたのは勝海舟であった。容堂は建策を受け入れ事態はその計画によって進捗している。
その結果、龍馬の脱藩は許され、海軍塾には土佐藩士が参加し、人斬り以蔵が勝のボディー・ガードになるという予想外の流れが実現しているのである。容堂は京の公家の派閥争いも把握し、土佐勤皇党をそれぞれの公家の派閥に振り分けることにより党の分断にも成功していた。武市半平太を愕然とさせた独裁組織の崩壊が始まっていた。
「殿より・・・奇策成功の御礼を言上せよと申し付けられました」
勝自慢の西洋ランプの灯に照らされてお幸は白い裸身をさらす。
「お・・・こりゃ・・・ありがたいね・・・こっちは祇園にあがる暇もねえからな」
「しぼりとれるだけしぼりとってこいとの御下命でございまする・・・」
言い終わる前にお幸は座した勝の背後に忍んでいる。豊かな乳を勝の背中に押し付けたお幸は左手を勝の首に回し、動きを封じた上で、右手を勝の下半身に伸ばす。
「うん・・・乙だねえ・・・」
あっというまに半裸にされた勝はお幸に後抱きにされたまま、卓越した指先で秘処をまさぐられるのである。
「お・・・」
あまりの快楽に声を漏らした勝にお幸は妖艶な忍び笑いで応えるのだった。
その頃、将軍本陣となった二条城では暗闘が繰り広げられていた。
将軍を守備するのは服部半蔵の影の軍団と篤姫の選んだ大奥くのいち衆である。
襲撃してきたのは妖異の群れだった。
赤い目をした襲撃者たちは黒装束の忍びだったが思わぬ抵抗を受け敗退しつつあった。
「・・・さすがは・・・篤姫様・・・こうなることを読んでいたか・・・」
服部半蔵は負傷者を数えながら、城内を進む。倒れているのは味方ばかりである。
その時、天井から敵が襲い掛かる。不意をつかれた半蔵を押しのけたのは老くのいち幾島である。
「ご油断召されるな」
その手には篤姫お手作りの薩摩十字刀が握られている。
赤い目の忍びは超人的な速度で両手の爪を幾島に突きつける。
しかし、幾島の修練の術が勝っていた。忍びの胸に薩摩十字刀が突き刺さっている。
薩摩十字刀には秘薬・鬼殺しが塗られている。薩摩に古来伝わる吸血鬼用の聖水薬である。おそろく主原料は大蒜と思われる。
吸血鬼細胞はたちまち化学反応を起こし、発熱し、沸騰し、気化する。
赤い目の忍びは灰となって消散した。
「かたじけない・・・」
服部半蔵は幾島を振り返った。
幾島はすでに次の敵に応じていた。
闇の中を巨大な蝙蝠が滑空していく。
それは琵琶湖に浮かぶ屋形船に降り立った。
一瞬後、蝙蝠から人間に変身した裸身の白人男性が舌打をする。
「ムシュー・・・言ったでしょう・・・将軍家は甘くないと・・・」
船に揺られているのは将軍家後見役一橋慶喜にそっくりな男だった。
白人男性は憎しみのこもった目で慶喜を見た。
「ヨシノブ・・・俺は高貴な血を将軍にそそがねばならぬのだ・・・」
「ふふふ・・・キャピタン・フランソワ・ロロノア・ジルベール・ブーランジェ・・・それは我の役目・・・しばらくは時期を待つのです・・・」
吸血海賊ブーランジェは赤い目で慶喜を睨みつける。
それに応じた慶喜の目もまた赤く輝きだすのだった。
「さあ・・・そろそろ棺桶にお戻りなさい・・・朝陽はご老体には毒ですぞ・・・」
ブーランジェは東の空に夜明けの気配を感じてたじろぐ。
忌々しげに鼻をならした大男は屋形へと入っていった。そこには巨大な棺桶が置かれている。
慶喜はそれを見届けると上半身をはだけた。その背中には黒い翼が出現していた。
「ふ・・・日も浴びられぬとは下級な悪鬼め・・・その内・・・灰に換えてくれるわ」
すでに半ば吸血鬼と化した一橋慶喜は京の市内を目指して飛び立った。
関連するキッドのブログ『第17話のレビュー』
火曜日に見る予定のテレビ『八日目の蝉』(NHK総合)『絶対零度・未解決事件特命捜査』『ジェネラル・ルージュの凱旋』(フジテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
いやぁ面白かったですねぇ。
龍馬、勝、以蔵
この三人の掛け合いが実に見事でした。
以蔵はもう一人の龍馬というか
自分らが抱いている龍馬像の片割れを
持っているって感じですからねぇ。
かつて三谷さんが手がけられた
「竜馬におまかせ!」が浮かんできました ̄▽ ̄
このテンションはあのノリに近いですね。
一方でドヨ~ンとした京都・土佐藩邸の
雰囲気は対照的でした。
平井収二郎は山内豊資公の後ろ盾を得て
藩政改革をしようとしたとも言われていますが
この作品では容堂公にそそのかされて
その容堂公の後ろ盾を得て藩政改革をしているのが
なかなかに面白いところですねぇ。
そして、お徳は写真で見るよりも全然可愛いです。
もう今度からあのメイクでバンバン出演して欲しいです。
そして
『大和撫子素顔党』
是非とも入党させて頂きます(゚∀゚)
投稿: ikasama4 | 2010年5月 4日 (火) 16時56分
「氷川清話」の「奴は俺を斬りにきた男さ」
が延々と拡大解釈されていく・・・
見事な語り口でございます。
これぞ、脚色ですな。
要するに大人の勝は酸いも甘いもわかっている。
わかっていながら頓着しない。
そういう勝の包容力に
龍馬は抱かれつつ
自力でもなんとかしようと悩む。
そしてもがく。
そして以蔵はどうにもこうにも
難しいことがわからない・・・。
この知力の差が
相互無理解におわらないために
「情」というものがある・・・
ということなのですな。
以蔵にとって
目の前に「情」があれば
理屈を越えて
実力が発揮できる・・・。
そして
「闇討ち」よりも
「専守防衛」の方が気が楽なのですな。
しかし、勝も直参ですから・・・。
以蔵の心の闇までは
結局・・・救い上げられない・・・。
ここが実に痺れるところだと思います。
今回は土佐藩士の悲劇が
行く男、送る女のカタチで
濃厚にネタフリされてますので
これからはうぅんな感じにしあがっていく・・・
ということなのですな~。
龍馬伝は見送って・・・
見送って・・・
そして・・・
という物語なのでしょう。
大和撫子素顔党の
幹事長・お喜勢は
夫と二人・・・主役を見送るのでしょうな・・・。
愛人隊とともに・・・。
乙女、春猪、加尾、さな、お龍、お元・・・
・・・もてもてか・・・死後ももてもてか~
なのでございますなーっ。
投稿: キッド | 2010年5月 4日 (火) 17時43分