絶対零度の鮮血を呼ぶ恋文と私そしてバナナ(上戸彩)男を見る目がないんですーっ(加藤あい)
犯罪と異常心理は親子のようなものである。
しかし、犯罪が異常心理を生む場合もあれば異常心理が犯罪を生む場合もある。
だから、犯罪と異常心理は増殖する細胞のようなものとも言える。
連鎖を断ち切るには人類を滅亡させるしかないなどと発言すると異常心理や犯罪の温床となるので気をつけるべきである。
火曜日のドラマ対決は①「ジェネラル・ルージュ」↗16.0%、②「絶対零度」↗14.8%、③「離婚同居」*7.8%
で、『絶対零度~未解決事件特命捜査~・第6回』(フジテレビ100518PM9~)脚本・谷和俊、演出・村上正典を見た。グリム兄弟の『子供と家庭の話』・・・つまり『グリム童話』には「子供たちが屠殺ごっこをした話」という物語がある。内容がタブーに触れるためにグリムは後の判ではこの話を削除したとされる。話には二種類あって「屠殺ごっこ裁判の話」と「屠殺ごっこで屠殺者は生き残る話」というものだ。前者はこういう話である。「フラネッケルという町で子供たちが遊んでいる。肉屋の子供の提案で肉屋ごっこをしようと相談がまとまる。子供たちはそれぞれに豚を殺す役、豚を料理する役、豚の血を皿に受ける役などと役割が決まる。一人だけ役がない幼い子供が残る。仲間たちはそれではかわいそうだとその子に豚の役を与えるのである。やがて屠殺が行われ、豚は喉を切り裂かれる・・・子供たちの事件を知った大人たちは青ざめる。人を殺せば死刑が決まりだがなにしろ子供のしでかしたことなのである。そこで街の顔役のじいさんが提案する。分別があれば裁かねばならない。ここに林檎と銀貨がある。子供に選ばせて・・・林檎を選べば無罪、銀貨を選べば有罪としよう。子供を屠殺してしまった子供はめでたく林檎を選び・・・人々はホッとしましたとさ」・・・まあ、特に子供を殺した子供の親は安堵しただろうが、子供を屠殺された親は複雑な気持ちだったことだろう。もう一つの話については別の機会があれば語ることにする。
とにかく、この話には「犯罪」というもののすべてが語られているとキッドは思う。
そのすべてに対する感想が人それぞれで違うということも含めてだ。
今回のドラマのエピソードはそれに匹敵する巧さを持っていたと考える。
「食物連鎖」という言葉があり、大自然の中ではそこに善悪はない。ただ弱肉強食があるばかりである。しかし、天敵が自分だけとなった人類は複雑な社会を作り、平和共存のための法整備を行う。分業は進み、「動物を屠殺するもの」と「肉を食べるもの」は時にはお互いを知らずに生きていく。時に肉食者は実に非論理的に「屠殺するものに穢れを感じる」までになるのである。しかし、一方で「捕食しないのにただ殺すことの残虐性」が論理的に語られることもある。
最近、食の教育の中で「子供に屠殺という職業的行為を見学させる」という学習が行われることがあるそうだが、実に合理的であると感じると同時にショックで一生肉食ができなくなってしまう子供が現れればそれはそれでちょっとかわいそうだったりするのである。
「いのちに対する正しいこころ」というものの教育の難しさはなんとなく匂うわけである。
まあ・・・できれば・・・「豚さんは殺されてかわいそう・・・でも豚肉は美味し」という優しくてたくましい子供に育ってもらいたいと祈るわけだ。
一方で・・・「殺人」という犯罪があり、「人を殺したい」という異常心理がある。異常心理があれば犯罪が起るとは限らないが、異常心理によって犯罪が起る可能性はある。
この場合・・・その異常心理は反社会性人格障害、あるいは行為障害で精神疾患の範疇に組みこまれるのが一般的である。
特に「行為障害」の診断基準には「動物に対して残酷な攻撃をくわえる」が含まれる。
つまり・・・それは・・・「異常なこと」なのである。
今回、ドラマでは「無差別連続殺人事件」と「連続飼育動物殺人事件」が一人の高校生・沢井春菜(福田麻由子)によってつながれる。
担当の桜木刑事(上戸彩)はその謎を解き明かすことに成功するが・・・浮かび上がるのはただ人間の心の複雑な模様なのである。正常な人間と異常な人間の間に横たわる果てしない境界線に桜木刑事は立ちすくむのだ。
「無差別連続殺人事件」の被害者の一人、宮田ゆき(遠藤由実)の友人だった春菜は心に闇を抱えていた。その傷ついた心が発する言葉は難解で桜木は解読に苦労する。
宮田ゆきを殺したのは私だ。
そう言ったら私を逮捕にして死刑にしますか。
あの事件は未解決なのです。
やがて・・・最初の飼育動物殺傷事件の飼育係が春菜であることが判明し、事件は複雑化する。
桜木刑事は直感的に春菜を「動物殺傷事件」の容疑者リストから除外するが状況証拠は春菜が犯人である疑いを補強する。
ネット上に犯行予告を発見した科学捜査研究所の竹林技官(木村了)の指示により、現場に向かった桜木刑事と塚本刑事(宮迫博之)は春菜と遭遇・・・ナイフを所持していた春菜によって塚本は負傷してしまう。しかし・・・塚本もまた直感的に春菜を容疑者リストから外すのである。
二人の直感に手を焼いたのは直属上司の倉田係長(杉本哲太)だった。
「いいか・・・故意にしろ偶然にしろ・・・流血沙汰は事実なんだ・・・未成年者は逮捕できなくても保護できるってことを忘れるな」
特命捜査のクラリスこと高峰刑事(山口紗弥加)は・・・いつクラリスになったんだよ・・・プロファイラーとして真相に近付いていた。
「春菜の心には事件当時の春菜(大森絢音)が潜んでいる。そうした拘泥があるのはお誕生日におそろいの髪飾りをプレゼントしてくれるほど親友だった宮田ゆきの死に負い目があるからだと考えることができる。ゆきの母親・宮田夕子(石村みか)の証言からゆきは行く予定のない交流会の会場で被害にあった。春菜の母親・沢井秋絵(鳥居かほり)はその日を境に春菜が寡黙になったと言う。つまり・・・春菜とゆきは事件当日一緒にいた・・・しかし、ゆきだけが・・・交流会の会場に行った・・・そのことに春菜は責任を感じた・・・さあ、それは・・・どういう場合かしら」
高峰の問いに桜木は沈黙する。
「わかりません・・・でも・・・ゆきちゃんは春菜ちゃんのために何かしようとしたのかもしれません」
「いい線だわ・・・仲のいい女の子が・・・仲のいい女の子のためにすることなーんだ」
「・・・抱きしめて・・・キスとか・・・」
「それは同性愛者でサディストの科捜研の大森技官(北川弘美)の小学生時代限定でしょう・・・春菜はゆきをそういう感じで愛していたと思う?」
「春菜は・・・ノーマルだと思います・・・私に色目使わなかったし・・・」
「・・・まあ、それはそれとしてそうなると答えは一つでしょう?」
「男・・・ですか?」
「そう・・・春菜の小学生時代の男関係を洗いなさい・・・これは捜査のイロハよ」
「色恋沙汰ですか・・・」
「犯罪の基本の一つよ・・・それか・・・金銭関係のトラブルね」
桜木刑事は所轄時代の先輩刑事・村山(モロ師岡)が差し入れたバナナを齧りながらその言葉を思い出した。
「現場百遍だ・・・靴のすりへらしが甘いぞ・・・」
桜木が靴をすり減らすと春菜の小学生時代の初恋の相手・高野優也が浮かび上がった。春菜の隣のクラスの男の子である。そして・・・高野優也は事件の犠牲者の一人だった。
「ゆきちゃんは一人だけ教室で犠牲になった・・・教室には何があったかしら」
「交流会に参加した子供たちの荷物が・・・」
「高野家に行くのよ・・・事件から五年・・・ご両親はきっと遺品を何もかも残している」
桜木はもう一度靴をすり減らす。
遺品の中に「高野君へ」と書かれたラブレターがあった。
桜木は理解した・・・きっとそこには「高野くんラブだよ・・・春菜」とかなんとか書かれているのだ。そして宮田ゆきは恋のメッセンジャーとして任務を完了していたのである。
しかし・・・桜木は文面を読むことはできなかった。涙で何も見えなかったのだ。
「春菜ちゃんは・・・自分が恋さえしなければ・・・ゆきちゃんは死ななかった・・・ゆきちゃんを殺したのは自分だと悟ったんですね」
「そうよ・・・そしてラブレターを書いたら死刑って法律はこの国にはないの・・・」
「それじゃ・・・春菜ちゃんは処罰を受けるために動物殺しをしているのですか」
「そんな子に見えた?」
「いいえ・・・」
「春菜の母親は動物殺しがあってから彼女がまた変化したと語っている・・・夜間の外出が増えたと・・・」
「彼女は動物殺しの犯人が捕まらないことにも憤りを感じていました・・・」
「動物殺しの罪は軽いと言ってなかった・・・?」
「動物を殺しても死刑にならないとかなんとか」
「彼女は死刑になりたいくらい自分を罰したいと思っている・・・動物を殺しても死刑にはならない・・・動物殺しはやめさせたい・・・さあ・・・ナイフを持って彼女はどうすると思う・・・」
「動物殺しの犯人を殺して・・・自分は死刑になる?」
「あるいは動物殺しに殺されて・・・真犯人を死刑に追い込む」
「そんな・・・」
「あなたは・・・そんな思いつめた女の子を保護しそこねたのよ・・・所轄の制服警官が保護してくれたけどね」
「・・・」
一方、白石(中原丈雄)と深沢(丸山智己)の普通の刑事コンビは犯人の目星をつけていた。
「犯人が赤い髪飾りの女ではない・・・と仮定しよう」
「犯人は広範囲に渡って動物飼育の情報を握っている人物です」
「あいつか・・・お茶の間も一目で分っているし」
「あいつですね・・・キャスティング的にも」
竹林技官が言った。「次の犯行予告が出ちゃったんですけど・・・」
厳重に警戒態勢の網が敷かれた動物の飼育小屋に東京都学校飼育動物推奨会の職員・谷口(小浜正寛)がやってきた。
情報を獲得した春菜も現場に飛び込んだ。
刑事たちは谷口を逮捕して・・・春菜を保護した。
春菜は谷口に向かって叫んだ。「何故・・・こんなひどいことをするの・・・」
谷口は春菜に微笑んだ。「君を見たよ・・・君があの日・・・泣いているのを見た。阿久津がたくさんの弱いものを殺した記念日に・・・。俺は分ったんだ。君が大切なものを阿久津に殺されて泣いてたこと・・・。事件から何年も経っているのに君は泣いてた。阿久津の凄さを感じたよ。泣いている君はとても美しかった。俺は阿久津に嫉妬した・・・。俺も君を泣かせてみたいと思った。君の可愛がっている動物を殺せば君は泣くだろうと思った。そして君は泣いたんだ。ああ、なんて素晴らしい素晴らしい素晴らしい快感を俺が感じたことか。そして、その時、もっと動物を殺せばもっとたくさんの飼育係のかわいい女の子を泣かせることができると俺は知ったんだ。しかも動物を殺しても死刑にはならないんだぜ。つまり俺の快感はこれからも永遠に続くんだ。俺は阿久津を越えたのさ。そして俺は殺して泣かせて殺して泣かせて・・・こんな面白いことやめられますか・・・俺は世界で一番だ・・・阿久津なんかよりもっともっとかわいい女の子を・・・」
塚本は腕力で谷口を沈黙させた。刑事たちはみな見て見ぬふりをした。
誰もが谷口への殺意を感じていたが・・・残念なことに谷口を殺害するものはいなかった。
「それが・・・正常な人間だもの」と桜木は考えた。桜木はそっと春菜の肩を抱いた。
「大丈夫・・・あなたとあの男は違うから・・・あの男は人間とは呼べない何かだから・・・だけどあなたは人間だから」春菜は小さく震えた。
こうして桜木は初めて担当した事件を無事に解決したのだった。
関連するキッドのブログ『先週の火曜日のレビュー』
で、『チーム・バチスタ2 ジェネラル・ルージュの凱旋・第7回』(フジテレビ100517PM10~)原作・海堂尊、脚本・後藤法子、演出・植田尚を見た。今季は異常なほどの警察ドラマの津波発生なのだが・・・見事に、医療ドラマが穴になっていたのである。しかもこのドラマの場合、続編で、ついでにミステリ要素ありなのである。ある意味、異端の「怪物くん」と平均視聴率でシノギを削っているのも面白い。現在、「怪物くん」平均14.3%、「バチスタ2」14.2%でいい勝負なのだ。今回、「怪物くん」12.5%で「バチスタ2」16.0%なので・・・来週は逆転しているかもしれない。まあ・・・なんだかんだ加藤あいが出ているのでこのくらいは取ってもおかしくないのであるけどね~。
今回は渋いカレンダーネタと言える「食中毒」もの。まあ・・・腐ったものを食べたのではなくて・・・よくあるゴボウとチョウセンアサガオ(マンダラゲ)の取り違えである・・・よくあるのかよっ・・・間違っても金平曼陀羅華は作らないでください・・・作るかっ。
さて・・・医療費の削減に伴う社会ネタは・・・救命のためには予算のことなど気にしないジェネラル・ルージュ(西島秀俊)と病院経営もビジネスなので赤字部門を切り捨てたい三船事務長(利重剛)の間に立って守勢にまわった厚生労働省の下っ端役人・白鳥(仲村トオル)は一回休みの勢いである。
今回の主役はゲスト患者・ホストの勅使河原聖也(八神蓮)を担当するドクター和泉(加藤あい)である。そして本当のゲストは「おめえの席ねーからー」(ドラマ「ライフ」)でお馴染みの末永遥である。今回は聖也の客であり、恋人でもある理沙子を演じる。
ホストに対して・・・客と恋人の境界線で彷徨う理沙子。
それに対して和泉は「ホストと客じゃ・・・恋人関係なんて成立しないのですーっ」と断言するのであった。
聖也は理沙子の手作り料理で曼陀羅華中毒になるのだが、幻覚に襲われてつい「お客様は神様です~」と宣言してしまうのである・・・してないだろっ。
原因は聖也の母がふるさとから送った仕送りに曼陀羅華が紛れ込んでいたためであった。実母による実子殺害未遂の可能性だってあるけどな・・・。
とにかく「男を見る目がないんですーっ」という和泉に「男いない奴にいわれたくねーからー」で返す理沙子。末永遥・・・普通の美少女路線に戻る気ないのかよ。ボウケン・ピンクはまだ23才なのでございますのに。二つ年下に戸田恵梨香がいるからな・・・。ちょっとポジショニングが辛いのかもなーっ。
加藤あいもまだ27才なんだよなーっ。「シバトラ2」では桐野弥生警部補で登場である。
それもいいけど・・・「海猿」はーっ。いやそれよりも渋沢ヒカルが見たいんですけどーっ。
・・・ドラマのレビューはどうした・・・まあ・・・来週から最終章突入模様ですが・・・まだまだ本筋ではない加藤あい。
木曜日に見る予定のテレビ『おみやさん』『同窓会』(テレビ朝日)『恋とオシャレと男のコ』(TBSテレビ)『プロゴルファー花』(日本テレビ)『素直になれなくて』(フジテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
キッド様の脱線ぶりに大笑いしました。
そういえば、海猿は~~~!ですよねぇ。
こんなところで油売ってていいのかしら?
末永遥さんってよく見かける~。
と思っていたのですけど、私誰かと勘違いしてるかなぁ?
確かに戸田さんのポジションに近いかも・・・
投稿: みのむし | 2010年5月21日 (金) 19時52分
良かったのです。こども交流館の部分にはすっかり騙された…。
ですが、なぜ「福田麻由子の出るドラマ」の悪人を阿久津なんて名前にするのか。神経を疑う…。
ひねりの無いコメントですみません。
福田麻由子は今後シェイプアップに励んでほしい…。
投稿: 幻灯機 | 2010年5月22日 (土) 05時58分
*simple*life*みのむし様、いらっしゃいませ*simple*life*
まあ、ドラマそのものが
毎回脱線しているようなものなので
負けずに脱線してみたのでございます。
「新参者」も同じ手法ですが
こちらは病気を治しているので
まだオチた感じがいたしますけど。
向こうは「また犯人じゃなかった」だからな。
刑事の地道な仕事を描くというのは
アイディアなんですけどね・・・また脱線かっ。
末永遥は・・・
魔女裁判・・・キャバクラ嬢
ありふれた奇跡・・・赤ン坊を捨てる女
シバトラ・・・スケバン
ライフ・・・主人公の机を窓から投げるクラスメート
ボウケンジャー・・・ボウケンピンク
で20~23才までを通過しています。
まあ・・・5才からモデルやっているので
もうすぐ芸歴20年・・・
どうしてもフレッシュさがないのかも~。
基本、美少女なんですが~。
投稿: キッド | 2010年5月22日 (土) 06時03分
✪マジックランタン✪~幻灯機様、いらっしゃいませ~✪マジックランタン✪
キッドとしてはちょっと構成の甘さを感じた部分も
ありましたけど
アイディアそのものは秀逸でしたな。
思春期に突入した福田麻由子に
相応しい役を作ったというところだけでも評価したい。
大人になった上戸と
大人になりかけた福田の
共演もうれしいところです。
福田も幼少期を子役が演じるお年頃なのですな。
どのように成長するか
女優を天職と考えるか
すべてはギャンブルです。
ものすごい才能なので
それに相応しい器が与えられることを
祈るばかりでございます。
人間はここからが勝負ですしね。
投稿: キッド | 2010年5月22日 (土) 06時48分