他人の目からは奇妙に見えても本人には整合性があるということはある。
たとえば、このブログではキッドは結構、書きたい放題のことを書いている。
人によっては辛辣な文言に不満を感じる場合もあるだろう。
それは別に構わない。それでこそ自由な表現活動というものだ。
ところが、キッドのブログにコメントを投稿してくださる方にはキッドはその自由を認めない。
承認制にしていることを利用して、削除することもあるし、編集して公開することもある。
その理由は様々だが、基本的にはコメント内容が読者を不快にさせるのではないかと危惧した場合が多い。
人によってはそれを矛盾と感じる人もいるだろう。
キッドは読者に不満を感じさせることを否定しない。
しかし、投稿コメントが不満を感じさせることを否定するということであるからだ。
だが、整合性とはそういうことなのである。キッドが他人を不満にさせることは問題ないが、キッドの責任の及ぶ範囲で他人が他人を不満にさせることは認めがたいのである。
キッドのブログでは読者を不快にさせてもいいのはキッドだけなのである。
この一点は譲れないのである。
それを奇妙と感じる人がいれば、キッドはその人にとって奇妙な人ということになるだろう。
それと比較するのは乱暴な話だが、「月の恋人」の主人公は明らかに奇妙な人として描かれている。その奇妙さが多くのお茶の間を惑わしていることは充分に想像がつく。
一体・・・葉月蓮介(木村)という男は何を求めているのか、何を探しているのか、何がしたいのか・・・全くわからないという人はきっといるはずだ。今回はその部分を蓮介が語るのだが・・・それが本心なのかどうかがまたわからない仕掛けになっている。
それがドラマとして成功しているかどうかは別として、少なくとも葉月蓮介が理解しにくい男であることはかなり伝わっているのではないだろうか。もちろん、キッドはそういうドラマが嫌いではない。秘密にされた葉月蓮介という男の正体を見極めたいという欲望が滾るからである。もちろん・・・ここまで神秘のベールで蓋った以上、それなりに凄い正体を脚本家が用意してあることが望ましい。この脚本家はいざとなったら「それはたまたまそうなのです」で逃げるタイプでもあるが・・・今回はそれはほとんど許されない段階に達していると思う。
そういう意味でなかなかにスリリングな月曜日である。
本題に入る前に恒例の週末の視聴率チェック。「失踪人」↘*9.1%(二度目の陥落)、「ヤンメガ」↘*9.5%(弱いレギュラー主役回で二度目の陥落)、「日本VSコートジボワール」14.5%(死んだフリ作戦だったら凄いな)、「十津川刑事の肖像2」12.2%(この二つでレギュラーは陥落)、「ハガネの女」↗12.7%(八木優希とったな)、「タンブリング」↗*7.4%(ものすごい即席奇跡の連打万歳)、「怪物くん」↗14.1%(キャンプファイヤーとったな)、「トラブルマン」↘*0.8%(片桐はいりと犬山犬子は最高)、「龍馬伝」↘19.2%(新選組素敵だけどな)、「新参者」↘12.7%(五十円玉の指輪だけはイヤだ)、「観月版鬼龍院花子の生涯」13.9%(なめたらいかんぜよ)、「女帝薫子」↗*9.6%(もう一息だべ)・・・ついでに「月の恋人」↗17.4%・・・以上。
で、『月の恋人~Moon Lovers~・第5回』(フジテレビ100607PM9~)原作・道尾秀介、脚本・浅野妙子、演出・平野眞を見た。演出家も人の子である。この演出家は前作の「不毛地帯」で唯一の視聴率ヒトケタ回である*9.9%を叩きだしている。その傷は結構深いはずで「月の恋人」の第2~3回もかなり低調な感じがした。しかも作品は共に失敗を許されないタイプなのである。さらにいえば前作は原作の持つ重厚さが足枷となっていてこちらはラブ・ロマンスがネックになっている。非情に苦しい気配がするのである。そういう意味では今回は第2~3回に比較すると少し肩の力が抜けたような気がする。それでもまだ重厚なラブ・ロマンスという重苦しさを感じる局面だと思う。それが狙いだと言われればそれまでだが、エンターティメントとしては問題あるだろうと考える。いや、もちろん、こちらの期待値が凄く高レベルの話なのであまり気にしないでください。
さて、賢明な視聴者はお気づきかと思うが、わかりにくい主人公に対して、ヒロインの一人である・・・ここまでは二番手・・・二宮真絵美(篠原涼子)はものすごくわかりやすいキャラクターになっている。
クリエーターとしては有能だが恋愛沙汰にはひどく臆病で主人公に学生時代からずっと片思いしているという奥手の35才である。主人公に告白して気まずくなるのが嫌で親友を演じて十数年・・・どれだけ腰が引けているのか計り知れないという女性である。
しかし、人生には限りがあり、二宮の仮面にも綻びが生じている。葉月蓮介を時にはインテリア・デザイナーとして時にはアート・ディレクターとして・・・さらにはプランナーとして仕事上の支えとなっているだけではいられなくなっている。
二宮という親友の仮面から真絵美という女の素顔が情欲とともに覗きはじめているのである。逆に言えばもはや葉月の親友でいることに耐えがたくなっているとも言える。
そうでありながら、葉月への恋愛を告白する勇気は持てず、できれば奇跡が起こり、相手がその気になってくれることを祈る日々なのである。それはもう狂おしいほどに祈っているのだ。自業自得なのだが蛇の生殺しは勘弁してくれよという気分なのだった。
その祈りが天に通じたのか・・・二人の関係は新局面を迎える。しかし、それが真絵美の願いとはまったく逆であることに真絵美はうろたえる。
それが真実かどうかは別として・・・なにしろ真絵美と違って葉月はまったく心が読めない男なのである・・・少なくとも真絵美にとっては葉月が恋に落ちたことが察せられる。恐ろしいことにその相手は自分ではないのである。
葉月がこれまで女性関係がなかったとは断言しない真絵美が我を失うほどの恋仇が出現したのだった。
それが劉秀美(林志玲)であることは言うまでもない。
秀美がたとえば直前までの噂の相手である大貫柚月(北川景子)とは別格であるとある意味では葉月のストーカーである真絵美にははっきりわかるのである。このドラマの困ったところは真絵美を通じてしか・・・葉月の心がわからないという点にあるのだが・・・そこはもう真絵美を信用するしかないのである。
キッドは恋のレースを楽しむドラマとして見るならこのドラマは秀作になっていると思う。
本命である真絵美に感情移入していて大丈夫なのか・・・とお茶の間の女性陣がかなり不安を覚える展開だからである。勇気を持って対抗であるシュウメイに乗った人はそのままそのままと呪文を唱える展開であり、穴馬である柚月に賭けるものは半ば勝負を投げつつ二人が結婚したら「葉月柚月」かよ・・・などと嘯いて空を見上げる情勢だ。
一方、キッドはこの男・・・結局、誰もえらばないんじゃないの・・・と疑いつつ大穴の笠原(中村ゆり)とかリナ(満島ひかり)の出番チェックに勤しむわけである。
つまり・・・結末が全く読めないのである。本当にラブ・ロマンスなのかと叫びたいくらいだ。
そういうレースを求めない視聴者にとってはこれほど歯がゆいドラマはないのではないかとも推測します。それはつまり・・・真絵美の気分そのものなのである。真絵美は心のどこかで親友が王子様に突然変身する夢を捨てがたい女だからだ。もしも、そうでなかったらやってられないのである。そして恐ろしいことにこのドラマは明らかに普通ではない方向に向かっているように見える。少なくともキッドにはそう見えます。
とにかく、今回はヒロインたちが葉月の愛の姿を確認することに勤しむのだった。
シュウメイにとっては自分と葉月の愛であり、真絵美と柚月にとってはシュウメイと葉月の愛ということになっている。真絵美と柚月にとっては目の前が真っ暗になる検証であることは言うまでもない。
シュウメイと書くべきか、秀美と書くべき迷ったが・・・今回はシュウメイと書くことにする。
Johnをジョンと書くようなものである。中国人名は漢字で表記されるがそれをカタカナで書くのはなんだか礼儀に反するような気がするのだが、発音表記と考えるとフリガナ的ということになるのかもしれない。ブログのルビ表記は困難さにも一因はあるのだな。ついでに言っておくと韓国人名を裵勇俊と書くのもまた微妙な問題である。かって朝鮮半島の国家は大陸国家の属国扱いだったので文字は漢字である。そのために大陸国家の崇拝の念は強い。文字による支配力というものがあるからである。それを克服するために作られたのがハングル文字である。そのために半島国家は漢字を捨てた形になっている。国粋主義者でさえなんとなく漢字を使う列島国家とは一味違うのである。そういう事情を考えるとぺ・ヨンジュンとカタカナ表記することは順当とも言える。ハングル表記では日本人に意味不明な場合が多いしな。第一、打ち方がわからない。文字化けするんだろうし。
さて・・・なぜ、そんなことを言うかと言えば、このドラマでは「言葉の壁」が問題だからである。それが一つの障壁となっているわけだが、お茶の間的には伝わりにくいネタに属すると思う。それは6月13日に太陽系小惑星探査を終えて地球に帰還する探査機はやぶさの軌道を計算する主題のドラマと同じようなものだからである。数学と同じくらい外国語の苦手な人は多いのである。そして言葉が不自由なことで感じる困惑というものをほとんどのお茶の間の皆様は旅先でしか感じない。
以前も書いたがかってキッドは某巨大テーマ・パークのアトラクションの構築に携わったことがあり、そこで米国人との通訳を介したミッションにほとほと困ったことがあります。細かいニュアンスなんか伝わらないからである。間とかとっても意味ないし。だじゃれも不可なのだ。そりゃそうだ。まして愛なんて伝わらない気がしたものだ。
しかし、一方で「愛には言葉なんかいらない」という神話もある。
人によっては生まれつき無口なのであまりしゃべらないという場合もある。
その上、シュウメイは向学心に燃えて日本語を勉強しているので片言を喋るという煙幕もあるのである。
それはシュウメイが外国で孤独に暮らしていることを様々に隠蔽しているのである。
この点について脚本家は様々な工夫をこらしているのことが判る。父親が日本にいたから日本語を学んだという設定もそうだし、ひらがなが読めないシュウメイはジャポニカ学習帳で書き取りをする。セリフもいたるところに「言葉の通じない不自由さ」の説明が入っているのだが・・・お茶の間の多くはそういうことを一瞬で忘れる可能性があるのだな。
たとえば、冒頭・・・日本からシュウメイの父親を追い出した蓮介が実は中国でシュウメイの父母の関係修復に助力していたことを知り、シュウメイが蓮介の心に眠る「暖かさ」に触れたと感じたあとで・・・二人で月見をするシーンがある。
ちなみに立待月とは月齢17日。満月から欠け始めたほぼ満月である。立って待っているとたちまち登ってくるのでその名がある。
そこで初めてシュウメイは疑問を口にする。
「レゴリスってどういう意味?」
「月の砂のことさ。あの月は世界中どこにいっても見れるだろう・・・自分の会社の家具も世界中で使われるように願いをこめてつけたんだ」
「それなら月屋(和名)とかムーン・インテリア(英語)、ルナ(ラテン語)、チャンドラ(インド語)とかにすればよかったのに・・・」
とはシュウメイはつっこまない。ただ「世界・・・」とつぶやくだけである。
シュウメイが懸命に蓮介の言葉の意味を掴もうとしている努力を蓮介は意識しない。自分の言葉が伝わって当然だという態度にも見える。しかし、言葉の障壁は確実に存在するのである。
たとえば世界という言葉ひとつをとってもニュアンスは違う。日本人が世界と言う場合は外国、あるいは自国を含めた国際関係を示している場合が多い。しかし、中華思想の中国人にとっては世界といえば中国のことであり、日本を含む外国は世界の外にある異世界なのである。本当かよっ。
しかし、賢明なシュウメイは蓮介の言葉に蓮介の志向性を読み取る。
(わんすけ(蓮介)は・・・この世を支配したいと願っているのだ・・・)・・・と。
それに対してシュウメイは自分の願いを口にする。
「私の夢は・・・故郷で両親と一緒に暮らすことです」
「アメンボのいる村でか・・・」
「そう・・・そこで好きな人と暮らす・・・」
この時、蓮介は口を噤むがその顔には好意的な微笑が浮かんでいる。
ここに蓮介の危うさを読み取ることができるだろう。
自社の家具による世界征服を目論む蓮介は果てしない闘争の日々に疲れ・・・壊れかかっているのである。
つまり・・・すべてを投げ出してのんびりとひっそりと心穏やかな日々を過ごすことの憧れ。それが蓮介がシュウメイに執着する大きな理由なのである。
さて、前回、キッドは前段部分でこのドラマの原型を「竹取物語」に置き、蓮介=かぐや姫論を提示したが・・・もう少し、通俗的な解釈ではシュウメイ=かぐや姫論も当然成立する。なにしろシュウメイは耳にタコができるほど「わたし上海帰る」を連発しているのだ。上海=中国=日本人にとっての別世界と連想すればいつか上海に帰るシュウメイはまさにかぐや姫ということになるだろう。その場合は、蓮介はとりのこされて仕方なく真絵美(女官)あたりでお茶を濁すミカド(かぐや姫にふられた天皇)のポジションになるので・・・それはどうかと思うわけだが・・・。真絵美応援団万歳の展開とも言えるのだな。
一方で「何もかも捨てて中国の貧村でそれなりに幸せになるわんすけ」という結末もどうかと思うわけであります。
まあ、第二章が始まったばかりであまり先走るのもなんなので・・・やめておきますが。
とにかく・・・蓮介が壊れかけた男であることは留意しておきたい。
次に、蓮介の心がシュウメイにあることを悟った真絵美は絶望のあまり、涙を流しつつ、そっと差し伸ばされた蔡風見(松田翔太)の腕にすがりつく。蔡の場合は日本育ちの中国人なのでツァイではなく蔡で充分だろう。王貞治は選手時代は王(ワン)ちゃんと長嶋茂雄に呼ばれていたわけだが、ワン監督とは誰も呼ばないからな。
蔡は蓮介とは違う意味でわかり辛い男である。その意味は「裏切るのか裏切らないのか」まだ読めないという一点に帰するからである。蓮介の忠実な下僕を通すのか、臥薪嘗胆をしている野心家として出現するのか・・・ある意味、単純な男なのであった。
とにかく、その単純な正体を隠しつつ、蔡は真絵美を伴い、蓮介のテリトリーである高級フレンチの店へ侵入し、蓮介とシュウメイの仲睦まじい夕餉を霍乱する。
我を失った真絵美は親友の仮面を頭に乗せて全身針鼠と化し、楽しい一時に毒を撒き散らして台無しにするのであった。
「シュウメイの今後の展開ですってこんなところで仕事の話って無粋じゃないのああそう仕事しかできない私に気を使って話題を選んでくれたわけそりゃ私は舌平目のムニエルとかフォフグラとかテリーヌとかシャトーブリアンとかとは無縁の目玉焼きで結構な女ですとも結構毛だらけ猫灰だらけケツのまわりはクソだらけですともウエイターさんギャルソンさん今日はこちらのシャチョさんのおごりメニューをハジから全部持ってきてくだしゃんせーシャンソンシャンゼリゼー」とまくしたてる真絵美。
呆気にとられる蓮介だったが、今日は虫の居所が悪いらしいと素っ気無く応じる。
そこで・・・シュウメイの言葉に不自由な障害が提示される。
「マエミさん・・・何言ってるかワカリマセン・・・もう少しゆっくりお願い」
「気にするな・・・戯言だから・・・」
「もしかして・・・料理の話ですか?」
「まあ・・・そうだな」
「それなら、今朝はおいしいトーストを食べました。半熟卵が銀のエッグスタンドに乗っていてまるで夢のようなモーニングです」
ホテル暮らしをしていながらルーム・サービスを知らない貧しいシュウメイにとって蓮介のオーダーした「お部屋での朝食セット」はまさにお姫様メニューだったのである。
蓮介はちょっと照れて千切ったパンをシュウメイの口に放り込む。
しかし、シュウメイの一句一言は真絵美の脳みそを半分ほど爆破炎上させたのであった。蓮介の一挙一動は残った脳みそを沸騰させたのである。
「あっそう・・・朝食をお部屋で一緒にね・・・夜明けのコーヒー二人でお飲みになられたと・・・あーそーですか」
真絵美は機能停止した。
「わ、私・・・ちょっとお化粧なおしてくる」再起動しつつ真絵美はよろめきつつ席を立つのだった。
シュウメイは真絵美の体調を心配し、蓮介は幽かに怪訝に感じ、蔡はほくそ笑んだ。
とにかく・・・シュウメイが言葉のあまり通じない世界に住んでいることを人々は忘れがちなのである。
こういう場合のたとえとしてキッドはいつも近所の主婦の会話を思いだす。
「あの人・・・愛想ないわよね」
「挨拶しても挨拶返したことないよ」
「あの人・・・聾唖者ですよ」
「・・・・・・・あ・・・・・・そうなんだ」
不自由なことが伝わりにくい不自由さというものがあります。
シュウメイのもう一人の恋のライバルである柚月は若さゆえにもう少しストレートである。週刊誌でシュウメイと葉月の密会場面を見た柚月はシュウメイの下宿先「田鶏(食用かえる)」を襲撃する。店の主人・時田(温水洋一)と常連客の丸鉄(竹中直人)を「似たようなハゲ二人」の一言で瞬殺した柚月はシュウメイに腕相撲勝負を挑むのだった。
しかし、肉体労働者だったシュウメイはお嬢様の腕自慢だった柚月をあっさりと打破するのだった。
二重の敗北感に苛まれつつ柚月は敵に哀れを乞うのだった。
「何なの・・・あなたにあって私にないものって何なのよ・・・蓮介はあなたのどこが気にいったの・・・」
しどろもどろに言う柚月の言葉をシュウメイは無視したわけではありません。何を言っているか聞き取れなかったのです。しかし、柚月が何かで悩んでいることを察知したシュウメイは「元気出して・・・」と励ますのです。
「もげっ・・・」ハゲの自慢の炒飯の香りに包まれて脱力する柚月、かわいいよ柚月なのである。
柚月は自分以上の天真爛漫さをシュウメイに感じ自分の巣に帰っていく。そこにいるのは父親であり恋する蓮介の商売仇の大貫照源であった。
そうはしないと思うが、蓮介の母親が恋多き女であるという真絵美の解説がある以上・・・蓮介の父親が照源である可能性はなきにしもあらずである。蓮介の照源に対する態度が何か異様なものであるのも僅かにそれを臭わしている。蓮介が柚月に指一本触れない理由も二人が異母兄妹ならば納得である。そうでなければ北川景子と一晩過ごして何もしないなんてありえないだろー。お前はなー。
照源と柚月の会話は二夜にまたがるが・・・一括しておく。
「パパ・・・私、家を出ようかな・・・家が敵同士って・・・当主の息子と当主の娘ならロミジュリになるけど、当主と当主の娘だと成立しにくいみたい。私にとって金持ちの娘であることは障害にしかならないみたいなの・・・裸一貫でやり直したいのよ」という第一夜。
「パパ・・・商売で押されてるからって相手のことスパイしたり、いやらしい写真でおとしめたりとか・・・あまりにも姑息で見苦しいわ・・・手段を選ばないとか言い訳してないで娘に恥ずかしくないビジネス展開してちょうだい・・・パパは私のパパなんだから」という第二夜。
北川景子にこんなこと言われて反省しない父親がどこにいると言うのだ。お前はなーっ。
一方、蓮介の心は断崖絶壁に追い込まれていく。
ここまでかぐや姫からの連想だけで家具屋をチョイスしてしまったのではないと疑われ、ビジネス部分の展開が弱いこのドラマ。
具体的な家具も「水馬椅子(アメンボ・スツール)しか登場していないのが残念な感じ。
店舗を拡大するとか・・・インドに工場を展開して生産量を確保するとかとってつけたような経営戦略を口にする蓮介には「家具屋」の顔が見えてこない。
これを補強するために辞表を胸に創業当時を忍ぶ雉畑(渡辺いっけい)・・・そこに蔡が現れる。
「昔は・・・使い捨ての家具ではなくて・・・100年愛される家具を作りたいとか・・・レンスケは言ってたのにな・・・」
「社長が変ることはできないかもしれませんが・・・会社は変るかもしれません」
意味深なことを言う蔡だった。
社内のミーティングでは消極的な社員を常に鼓舞する姿勢の蓮介である。
「立ち止まることは死ぬということです」と泳ぎ続けないと呼吸困難になる鮫のようなことを言い募る蓮介なのである。
そのくせ・・・広告のアイディアは盗まれ、モデルとの密会は暴露され、社員に対する説明責任は一切果たさない。明らかに経営者として失格のムードが濃厚になっていく。
「レゴリスの家具で時空間(100年持つし世界中いっぱい)を満たす」という執念に狂った異常者のようである。
蓮介をそこまで追い詰めているのは何なのか・・・ここが最大の謎であると言えるだろう。
そして、その真逆にあるのが「シュンメイとの小さな幸せ」であることも間違いないだろう。
親友としての二宮とストーカーとしての真絵美の分裂に悩む女はわかりきっていることをもう一度たずねるのである。
「シュウメイをどうするつもりなの・・・シュウメイとどうなりたいの」
「シュウメイを側におきたい・・・ずっと一緒にいたいんだ」
心臓が凍りつく真絵美だった。昼間から線香花火をして現実逃避するしかないのである。
一方、中国から不法入国するミン(阿部力)・・・。日本の出入国管理はまさに無防備なのか。
ミンはレゴリスの上海工場での横暴を日本で告発するためにやってきたらしい。そんなことをしてミンに何の得があるかは不明である。そもそもミンは蓮介の手先だったはずなのだが・・・ここでは言葉の壁を示す道具となっている。
わかりにくいのはミンがマジ(同性愛者)なのかノンケ(職業上の女装者で異性愛者)なのか曖昧だと言うことである。部外者である丸鉄はミンを男として考え、シュンメイの恋人と誤解し、蓮介の嫉妬を煽る言動をする。
しかし、字幕では「あたし、あなたしか頼る人がいないの、ケガしちゃってノルマきつくて大変なのよ・・・でも社長を信じちゃダメよ」とかお姉言葉を連発してシュンメイの妹分に徹しているのである。
ここで乗り込んできた蓮介の行動は「ビジネスのためにモデルから犯罪者を排除する経営者」と「自分の女に手を出された男のむき出しの嫉妬」に分裂する。
この辺の心理描写がうまく処理できないので・・・丸鉄が「恋人同士は言葉が通じ合うのが大切なのよね」と恥ずかしい感じの説明をしたりするのである。
もう・・・脚本と演出がいろいろと上手くできていない感じが漂います。
いや・・・やりたいことは推測できるけどお茶の間はついてこれないぞ、きっと。
「約束したでしょ・・・中国のトモダチを助けて・・・あなたは優しいからデキル」
精一杯の言葉で蓮介に訴えるシュウメイ。
「世界中の貧困を撲滅することは手に余る」と一瞬、正気に戻る蓮介。
しかし、口から出る言葉は「ふざけるな・・・トモダチみんなは助けられないよ」
その言葉を「トモダチは助けない」と解するシュウメイ。
基本的に言葉の障壁による誤解なのである。それが上手く伝わっていないことに脚本・演出ともに消化不良感が残るのです。
一方、例によって日本における唯一の女友達である真絵美に相談したシュウメイは「もう・・・私はダメみたい・・・後はシュウメイにまかせるわ」という一言でようやく、真絵美の蓮介への恋情を理解するのである。今頃かよっという人は言葉の障壁というものへの理解が・・・もういいか。
冷静になって問題を整理したシュウメイは「蓮介が暖かい人になることは蓮介のためになることだから工場の人々を楽にさせるべきだ」と結論に達する。しかし、出てくる言葉は「蓮介が工場を救済しなければ、私、仕事ヤメル・・・上海カエル」になってしまう。
蓮介はそれを理解しているのか、その裏までを理解しているのかは不明である。
不明なまま・・・蓮介は妖しくも疑わしい本音を吐き出すのである。
「仕事をやめるには条件がある・・・オレと結婚しろ・・・結婚してくれよ」
一体、蓮介は「シュウメイにとにかく仕事を続けさせる方便」として求婚しているのか。それとも「あのね。もう仕事とかどうでもいいの。一緒にいたいの。シュウメイとずっとずっと一緒にいたいの。ただそれだけなの」という幼児的なプロポーズなのか・・・どちらともとれる態度でどこへ向かっていくんだよという感じなのである。
その証拠に蓮介はシュウメイの返事を待たないのである。
だからこそ・・・蓮介は追い詰められ、壊れかかっているという推測が成り立つのである。
「世界征服を狙うビジネスマン」と「何もかも捨てて幸せな子供に戻る男」・・・この二つの間で蓮介は揺れる。もちろん、前者に徹しても後者に徹してもその間で揺れようとも蓮介が発狂しかかっているのは間違いない。
蓮介の帰る月世界の扉は心の中で開きかけているのである。
それをさりげなく暗示するのが戦術的撤退を決意した柚月の言葉である。
「今・・・あなた・・・ピンチよ・・・内外敵ばっかりだし・・・でも私には何もできない・・・だけどせめて何かの役に立ちたくてそれだけは伝えたいの」
蓮介が知っている情報ばかりだが・・・柚月の行動は蓮介の心を優しく揺らす。
「もういっちゃうのか」ってそれはあまりにも淋しがりやのアニキのセリフだろう・・・。
情報交換の場に残された割り勘のコインは蓮介の幸福の象徴であるアメンボを示す四枚の銀貨。それは真絵美・シュウメイ・柚月が蓮介にとっては同格であることを暗示しているとも言える。・・・当然、蓮介にはもう一人別格の第四の女がいるのである。
それはおそらく蓮介の幼い日の第四の女とアメンボをめぐる記憶が存在することを提示しているのだろう。
そこで唐突に挿入される中国で実際にあった椅子爆発事件のフィクション化。レゴリスのイスガス爆発である。
そのニュースを聞いたとき・・・蓮介の張り詰めた緊張の糸は切れかかる。
「あぁーっ」
蓮介の人格崩壊が始まった如くに。・・・しかし、そのスイッチであるだろう持ち上げられたイスは放出される一歩手前で留まった。もうしばらく、ここと向こうの狭間の世界で蓮介は生きていく模様である。
もう一度、繰り返しておきます。この物語の主人公は・・・狂気の一歩手前でアイドリングをしているということです。凄い話だぞ・・・。ともかくキッドの妄想上では・・・。
関連するキッドのブログ『第四話のレビュー』
シュンメイ=かぐや姫説を唱えるなら天使テンメイ様のレビュー。
ごっこガーデン。いつでもお月見3Dプラネタリウム・セット。アンナ「すごくいい女とダメダメな女は背中あわせなのぴょん。こわがりほど恐ろしいことをしでかすものなのぴょん。真絵美を応援したい気持ちは山々なれど~。ごっこはシュンメイでゴーなのぴょ~ん。しょれが乙女心というものだからおいしいトコ取りでサクサクいくのでしゅ~。ダーリンはきっとシュンメイのカタコトに萌えているのでしゅぴょん。じいやお月見団子もヨロシクね~。こっそり見学組にもお配りしてくだしゃい~。アンナのお友達の皆さんにも月見酒をお出ししてね~。お月様はもう少し明るくしてもいいかもぴょ~ん。アンナはごっこガーデンをやり遂げましゅからーっ」あんぱんち「後姿でバッチリ決めましたのよ~。変装シュンメイの蓮介用明太子購買シーンを通り過ぎたのは私です。今回も共演を決めたのですわ~。月の砂を目視できるって蓮介は超サンコンさん視力を持っているのかしら~」シャブリ「はい、今週は遅刻なのでありました~、じいや今週は早めなのでありますね~でもってお月見団子は草団子でヨロシク~」mari「う~ん、全員が辞表を忍ばせている会社って・・・困りましたね~。翔太ロイドがあまっているので真絵美モードで遊べると言われても・・・こ、困りましたね~」ミマム「わ~い、遅刻したっしょ~。東京はすっかり夏なのでボーっとするっしょ~・・・冷たいお団子うまいっしょ~・・・でも季節は完全に違うっしょ~・・・アンナちゃん・・・帰国子女設定だからか・・・」
ごっこガーデン。密室のプロポーズ祭り会場。まこ「ぎゃぼ~。せっかくのプロポーズ祭りなのにムカデに咬まれたお手手がモンスターエンジンなことに~。じゃけんどまこロイドを総動員してアンナちゃんを応援するどーっ。結婚申し込まれたのにオーイエースと返事するシーンがないのが残念無念でごじゃりましゅ~。寸止めプレーでしゅかしら~。花男ファン待望はF2キター・・・二人そろって中国人設定なのがおかしいわ~。蓮介のプロポーズは本気ですか嘘ですか~。謎でしゅ~ミステリーでしゅ~はうぅん」お気楽「恒例のあんぱんちさんチェックゥゥゥゥっ。オマケあるよ。おやおや、篠原さんの事務所、キスNGじゃなかったの・・・ウチもそろそろ解禁しようかなーってもうみんなごっこガーデンでしまくってるじゃん!・・・ま、いいか」ikasama4「ふふふ・・・ついに完成アメンボロイド・・・リアルなので本物そっくりです。大量生産したら世界中の本物が・・・いかんいかん・・・アメンボを絶滅危惧種にしてどうする。ナンバーワンを狙うレゴリスは実は風前の灯なんですね。このドラマ、蓮介の中のナンバーワンとオンリーワンをめぐる心理的内部抗争としてみることが可能ですな。そして風見は薔薇のない花屋ふたたびでございますなーっ」アンナ「とにかく、このプロポーズだけは・・・心がこもっていようがいまいがリピなのです。いやん・・・またダーリンに結婚申し込まれちゃったぴょ~ん。さあ、このガッツで来週もやりとげますぴょんぴょんぴょん」
水曜日に見る予定のテレビ『臨場』(テレビ朝日)『ERⅩⅢ』(NHK総合)『Mother』(日本テレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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