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2010年6月24日 (木)

青い炎と水色の毛糸と灰色の囚人服のMother(松雪泰子)

似ているようで似ていないもの。

違うようで同じもの。

それは人間である。

つがいの籠の鳥は幸せか、不幸せかを考えない。

それを考えるのが人間である。

つぐみの母はつぐみを見失わないだろう。

いつも電信柱の影からそっと見守るからだ。

母と離れて暮らす娘は母を忘れないだろう。

大人になればなるほどわかる母の恩に心が揺れるから。

それでもつぐみは母を怨むだろう。

温もりが欲しいときにそこにいない母を。

だが・・・怨めば怨むほど・・・慕えば慕うほど・・・母の手の温もりは反芻される。

やがて・・・怜南がママを許す日が来るかどうかは・・・わからない。

仁美と葉菜は違う人間だし、怜南と奈緒も違う人間だからである。

繰り返される人間の営みは似て非なるもの、異なって同じものである。

しかし、それはよせてはかえす波のように続いていく。

水曜日のダンスは・・・。

「臨場」・・・17.9%↗18.6%↘16.7%↗16.9%・・・・・・↗18.6%↘17.0%↗18.6%↘17.2%↘16.2%↗18.6%↘17.0%

「Mother」・・・・・・11.8%↗12.0%↗12.8%↘10.0%↗11.9%↗13.9%↘12.4%↗14.0%↘12.2%↗14.8%↗16.3%

トレビアンなダンズざんした。

で、『Mother・最終回』(日本テレビ100623PM10~)脚本・坂元裕二、演出・水田伸生を見た。廻り行く季節。室蘭には冬の気配がある。渡り鳥は季節を追いかけて旅をする。母を求めて継美=怜南(芦田愛菜)はくりかえしくりかえし電話番号をプッシュする。

お母さん 

どうして迎えにきてくれないの

・・・ごめんなさい

・・・でもお母さんは

途切れる通話。

穏やかな空気のような職員は問いかける。

「怜南ちゃん・・・こんな夜にどこへ電話していたの」

「・・・あのね・・・天気予報」

「勝手に電話してはダメよ」

継美は知っていた。自分は囚われの子供であることを。

そして奈緒(松雪泰子)もまた囚われの母親であることを。

二人は籠の鳥である。その巨大な檻は大きすぎて目に入らないだけ。

葉菜は継美の嘆きが聴こえたように苦悶にあえぐ。

着てはもらえぬセーターを涙こらえて編んでいるのはこんな気分かと思う。

水色の毛糸で編むのは・・・手提げ袋だった。

葉菜は想像を楽しむ・・・継美は・・・これに何を入れるのか。

いや・・・と葉菜は思う。これを使うのは・・・奈緒・・・。

私の愛しい娘だ。

でも・・・もしかしたら・・・継美が使うことがあるかもしれない。

何か・・・奇跡が起きて・・・。

しかし、葉菜は思う。残された時間は短い。

死の気配が身体に満ちている。

奈緒は母親の病室を訪れる。継美のことで心は揺れているが葉菜のことでも心は定かではない。

主治医の袖川(市川実和子)が告げた言葉が重く心にのしかかる。

「こんなことを言うと・・・私はいつもううーっマンボ!になっちゃうんですけど・・・葉菜さんのその時は・・・もう、二、三日かもしれません。明日か・・・明後日には・・・逝かれることになるでしょう」

「・・・」

奈緒はやつれた葉菜を見る。長い歳月・・・怨み慕った母が目の前にいる。しかし、残された時間はあまりにも短いのだ。

葉菜は娘を見る。

弱いものを見捨てない娘。

誰もができないことをやり遂げる娘。

私の愛しい娘。

しかし、この子も死神には勝てない。それでいい。そのことに分別を持つ娘に育っている。私の命ある限り・・・私はこの子を守り抜いた。

それは誇らしいことだ。私の・・・面白い子。できれば最後まで見届けたいが・・・それは不自然な願い。こうして二人で一緒に過ごせることがもうすでに奇跡なのだもの。

「私ね・・・走馬灯が楽しみなの」

「・・・人生の最後に見るというパノラマ視現象が?」

「そう・・・それ。死ぬ間際に人生のすべてが一瞬で蘇るって・・・凄いじゃない」

「はいはい・・・」

「あなたと・・・二人で逃げ回っていた頃・・・富山から名古屋、名古屋から焼津、そして前橋・・・最後は宇都宮。何をやっても上手くいかなくて・・・不安で・・・おそろしくて・・・でもね・・・これは内緒だけどね・・・楽しかったの・・・あなたと二人で旅をしていることが・・・本当に楽しかった・・・それをもう一度楽しめるかと思うと・・・」

「私はほとんど覚えていないの・・・」

「いいのよ・・・どうせ、私だけが楽しめることなんだから」

「あのね・・・お母さん・・・家に帰ろうか?」

「いいのかしら・・・」

「いいと思う」

葉菜は悟った。人生を走馬灯のように回想する時はもうまもなくなのだ。

児童養護施設の怜南の元へ千葉の知人から差し入れが届く。食べ物の山の底にお年玉が入っていた。その中に一万円札を数枚、発見した継美は目を輝かせる。地獄の沙汰も金次第であるということを継美は理解している。

葉菜の心に眠る走馬灯の舞台の切符とは違い、東京行きの切符はお金がないと入手できないのである。

継美が一人旅に出発した頃、奈緒と葉菜は旅路の終着点にたどり着いていた。

理髪店「スミレ」にはつがいのインコが飼育されていた。

「まあ・・・」

「お店の人に聞いたの・・・お母さんがいつも見ていたって」

「でも・・・」

「一緒に飼おう・・・」

葉菜は幸せというものが次から次へとやってくることを知った。これが最後の晩餐というものなのね。死刑囚は最後に言い残す言葉を聞いてもらえるって云うし。

「とり・・・しらべを担当したのはあなただったとか・・・」

ハイエナの駿輔(山本耕史)は今や虚しさを感じつつ取材を続けていた。今は亡きスミレの夫(高橋昌也)は元刑事だったらしい。

「あの温厚そうな人が人を殺すとは思えないんですが・・・」

「あの人の夫はそりゃ・・・酷い男だったよ。酒を飲んではあの人に乱暴してね・・・でも、あの人の供述は一貫していた・・・いさかいの後で、カッとなってマッチで火をつけて娘と半年逃げ回った・・・それだけだ・・・」

「しかし・・・」

「世の中には男と女と・・・母親というのがいる。こいつが何をしでかすか・・・我々には永遠に謎なんだよ・・・お若い方・・・」

老いた猟犬は微笑んだ。ハイエナは閉ざされた真実に歯噛みをする。答えのない質問を重なれば謎は深まるばかりだからである。

奈緒は洗濯物を畳んでいた。葉菜は病床で編み物をしていた。

「洗濯機使いにくかったでしょ・・・炊飯器も」

「大丈夫・・・わかるから・・・それより寝てないとダメじゃない」

「今日は気分がいいのよ」

「ダメよ・・・寝てて・・・」

「ふっくらってとこを押すのよ・・・」

「・・・はいはい」

洗濯物をもって階下に降りた奈緒は物音に気がつく。

ドアを開けて継美が飛び込んでくる。奈緒が夢にまで見た愛しい娘。

・・・継美・・・?

継美だよ・・・誰だと思った?

・・・どうしてここに?

あのね

バスにのって室蘭から青い電車に乗って・・・函館から夜の電車に乗って・・・東京に来たの・・・それから銀色の電車に乗って・・・

・・・一人で?

一人できたの 千葉のおばさんがお小遣いをくれたの

・・・どうしてそんな危ないことをするのよ?

地図で調べたの

・・・この傷はどうしたの?

函館の階段で転んだの

・・・この傷は?

新宿で転んだの

・・・もっと大怪我したらどうするつもりだったの?

お母さん・・・継美はお母さんに会いにきたんだよ

もう・・・継美のこと嫌いになった?

もう・・・継美と会いたくなかった?

・・・会いたかったよ

奈緒は継美を抱きしめた。その背中を撫でた。その温もりを感じた。

奈緒は継美の涙に溺れそうになった。

継美は階段を駆け上がる。

まどろむうっかりさんにボディー・プレスの一撃。

うっかりさんはうーっマンボ!になるのだった。

窓際の鳥かごを発見した継美ははしゃぐ・・・。

「うっかりさん・・・もう、お昼だよ・・・あーっ、鳥さんがいる」

葉菜は夢から醒めつつ、継美を抱きとめようとする。そして奈緒を振り返った。

「・・・あの雑誌記者の人に相談してみます・・・お昼を食べてから」

継美は生姜をすった。今日は釜揚げうどんだった。

「あのね・・・うっかりさん・・・どうかしたの?」

「・・・別に・・・」

「・・・」

「病気なの・・・あまりよくないの」

「そう・・・」

継美は無心で生姜をすった。

「まあ・・・上手ね」

葉菜は起き出した。蝋燭の炎が消える前に一瞬輝く時間に入ったのである。

うどんの宴が始まった。

この柚はゆずれん

だじゃれパーティーだった。

・・・このカレーは辛れ~

15点・・・

・・・えー、15点?

うっかりさんは母の母として見本を示す。

・・・・・・チアガールが立ちあがーる

80点

座は盛り上がった。

継美「家に帰ってきたよ・・・イエーイ」

奈緒「このすいかは美味すいか?」

継美「23点」

葉菜「マスカット食べたらまあ、スカッとした・・・たらこを食べたら働こ~、眉毛からまあ、湯気が出た!」

継美「・・・」

葉菜「あら・・・受けなかったかしら・・・」

継美「うっかりさん・・・病気・・・治るよね」

葉菜「もちろん・・・継美ちゃんとあったら・・・すごく元気が出てきたし」

継美は奈緒を見た。奈緒の表情から継美は察した。

この世には不思議なことがある。

最終電車の運転手はどうやって帰るのか?

ラムネのビー玉はどうやって壜の中に入れるのか?

人は何故死ぬのか?

継美はそういう不思議なことが気になる子供だった。

ハイエナは超スピードで望月家を訪問した。

「もう・・・施設から捜索願いが出ている。そのうちに・・・この家や鈴原家にも連絡があるだろう・・・通報するなら今するべきだ」

「とにかく・・・今晩はこの家に泊めて・・・明日、私が室蘭まで送るわ」

「とにかく、一日が限度だ・・・大事になったら・・・また連絡するけど・・・それで・・・済むのか?・・・また同じことをくりかえすんじゃ・・・」

「大丈夫」

「鈴原さんには・・・」

「さっき連絡したわ・・・」

その時、鈴原一家ご一行がにぎやかに登場した。みんな・・・継美のファンなのである。

再会を喜びあう女たちを残して、ハイエナは葉菜の元へ忍び込んだ。

「真相を話してくれとはいいません・・・ずさんな犯行だと聞きました」

「・・・」

「火をつけたら・・・奈緒さんを巻き込む恐れがあったことを・・・あなたが考えないはずはない」

「・・・」

「この事件には・・・もう一つ・・・真相があるはずです・・・たとえば母親が娘を守るためにおこした事件だったりとか・・・」

「そういうのは・・・男の人の幻想ですよ」

葉菜は悪戯っぽく微笑むのだった。

ハイエナはもやもやした。

女たちはガールズトークに突入した。

果歩(倉科カナ)の恋人の耕平(川村陽介)は仔犬のようにハイエナと合流した。このドラマに男の居場所はないのだった。

継美「大きくなったね」

芽衣(酒井若菜)「もうすぐ生れるよ」

果歩「なんだか、朝ドラマのお正月みたい」

藤子(高畑淳子)「っていうか、ガールズトーク」

芽衣「わー、ガールズに入っちゃったよ」

藤子「まだまだガールズよ、ねえ」

葉菜「はい」

芽衣「ガールズはお土産にあんみつ買わないでしょ」

藤子「あら、スイーツに和も洋もないわよ」

葉菜「昔、デイトの帰りによく・・・食べました」

奈緒「まあ、お母さん・・・デイトなんて」

果歩「継美ちゃんは好きな男の子できた?」

継美「いっぱいいるよ」

芽衣「まあ・・・」

藤子「娘を見習ってほしいわよね・・・いい年して・・・」

葉菜「一回も・・・してないの・・・」

奈緒「一回くらいは・・・」

葉菜「そう・・・一回はあるのね」

奈緒「もう・・・やめて~」

つかの間の幸せに浸る女たちだった。

女たちは記念撮影をした。

藤子の二人の娘と、奈緒の二人の母と継美・・・そして芽衣の娘。

帰り道・・・果歩は耕平を飼いならす。

果歩「子供は三人くらい欲しいなあ」

耕平「就職活動頑張ります」

妹の調教ぶりを見るうちに芽衣は産気づいたのだった。

昇り行く太陽、沈み行く月。生と死は常に隣り合わせる。

葉菜は継美と奈緒の髪を切った。

「昔は・・・みんなお母さんが娘の髪を切ったものよ。奈緒の髪も私が切ったし・・・私の髪も私のお母さんが切った・・・」

「うっかりさんにもお母さんがいたの?」

「いますよ・・・みんなお母さんから生れてくるんです」

継美の心の中で疼くものがあったが・・・うっかりさんは気がつかないふりをした。

うっかりさんは心をこめて生さぬ仲の孫の髪を切る。

奈緒は葉菜から祖母の写真を見せられる。

「この人がお母さんのお母さん・・・」

継美は鏡を見ておしゃれな気持ちが高まった。

「この髪だとスカートの方が似合うかしら」

それは口実で・・・継美はお母さんにうっかりさんと二人きりの時間を作ってあげようと判断したのである。

「お母さん・・・私・・・あの子と離れられるかな・・・こんなに何もしてやれないままで」

「私と奈緒は会えたわ・・・三十年かかっても・・・」

「・・・」

「あなたと継美ちゃんはこれからよ。あの子が大人になった時・・・あなたに何かしてもらったかどうか・・・あなたのことをどう思うのか・・・それはまだ始まったばかりなのよ」

葉菜は奈緒の髪を切った。

「こうしていると・・・幸せだったあの頃と同じ気分になるわ・・・幸せで」

奈緒は葉菜の手の感触に記憶が蘇るのを感じた。

「お母さん」

奈緒は縁側で手鏡を持って母に髪を切ってもらう自分を意識する。

「なあに・・・」

手鏡に映っているのは・・・。

「あのね・・・」

若き日の母の顔だった。

「どうしたの?」

「私・・・思い出した・・・お母さんの顔・・・思い出したよ」

「・・・」

葉菜は喜びを感じた。娘が喜んでいるのがわかったからだ。

やがて・・・最後の一日が終ろうとしていた。

継美を寝かしつけ、葉菜はその隣に身を横たえる。

「やれやれ・・・どうにか間に合いそう」

葉菜は仕上がりかかった編み物を見つめる。

「お母さん・・・今度・・・二人で逃げていた頃の話が聞きたいな」

「長い長い話になるよ」

「長い長い話を聞くわ」

「奈緒・・・私はあなたと・・・ずっと一緒にいるよ」

「お母さん」

「本当に・・・この世は不思議なことだらけだわ・・・継美ちゃん、この子、本当は天使なんじゃないの」

葉菜は眠りについた。

奈緒はその日の最後の仕事として手紙を書き始めた。

長い長い母と娘の時間を始めるために。

いつものように酒の入った葉菜の夫は葉菜を殴る蹴るの乱暴狼藉の後、鼾をかいて眠り始めた。葉菜は娘の奈緒の眠る寝床に向かった。そこには娘はいなかった。葉菜が娘を探すうちに火の手が上がっていた。

すでに炎は燃え上がっている。その炎を奈緒は見つめていた。夫はすでに炎の中にいた。

葉菜は娘の手をとった。

逃げなければいけない。

この火から。この夜から。この世のすべてから。

ありがとう・・・奈緒。

ありがとう・・・お母さんのために・・・。

弱いお母さんでごめんね・・・奈緒。

でもね・・・やったのは私だよ。

お母さんのやったことだから。

みんな忘れてしまいなさい。

・・・お母さん、どこへ行くの?

さあ・・・どこに行きましょうか。

・・・ふふふ。

ふふふ。

葉菜のための招待状のないショーは終焉した。

朝市に出かけるために継美は目覚める。

お母さんが大根を刻む音がする。

「お母さん、おはよう」

「おはよう」

「あのね・・・うっかりさん、まだ寝てるの」

「寝かしておいてあげて」

奈緒はネギを刻み始める。

花瓶の花は萎れている。

「でもね・・・朝市に行くんでしょ?」

「そうね・・・じゃ・・・おこしてあげて・・・やさしく・・・ホッペのところをつんつんして」

「わかった・・・うっかりさん・・・うっかりさん・・・朝ですよ」

鳥は女を見下ろしていた。たくましい働く女だ。女は急ぎ足で道行きながら携帯電話をかけている。

「ああ・・・奈緒・・・お母さん・・・朝早くから、ごめんね・・・芽衣が男の子を生んだの・・・心臓の手術があるから・・・まだ抱っこもできないんだけど・・・」

鳥は見た。女の足が止まるのを。女は鳥を見上げた。鳥は超音速で飛び去った。

空に残る一筋の飛行機雲。

藤子は新生児を見守る芽衣を見舞った。

「お母さん・・・少し出てくる・・・」

「何かあったの・・・」

「葉菜さんが・・・今朝、なくなったの・・・」

「・・・」

「命って・・・不思議だわ・・・この子はきっと丈夫に育つよ・・・」

「そりゃ・・・そうよ・・・私の子供だもの」

はかない命はまだまどろみの中にあった。

継美は好きなものノートに「うっかりさん」を書き加えた。

継美は知っていた。死んだら人は・・・思い出だけになることを。

奈緒は継美に告げた。

「もうすぐ・・・鈴原のお母さんがここにくる。そうしたら荷物をまとめて家を出るのよ」

「どこに行くの?」

「室蘭に・・・施設に戻るのよ・・・お母さん・・・近くまで送っていくから・・・」

「鳥さんに・・・お水をあげなくちゃ・・・」

継美の心は乱れた。お母さんは私を捨てるつもりなのか。

手が震え、水の入ったグラスを落とす。

あわてて・・・タオルで床を拭う継美。

「お母さん・・・お母さんは・・・継美のこと・・・嫌いになったの」

「嫌いになんかならないよ・・・」

「じゃあ・・・どうして・・・お母さん・・・やめちゃうのよ」

奈緒は継美をひざの上に抱き上げた。短い間に大きくなった継美の重みを感じる。

「・・・憶えているかしら・・・継美・・・二人で渡り鳥を見に行った時のこと・・・あの時、四月一日だからお母さんになるって嘘をつくって言ったでしょう・・・でも、今度は嘘じゃない。今度は私は本当に継美のお母さんになる。だから、お母さんをやめたりしない」

「・・・」

「・・・だから・・・いつかきっと継美はお母さんと会える・・・お母さんがお母さんと会えたように」

「いつ・・・いつあえるの・・・」

「・・・継美が大人になった時」

「いやっ・・・そんなに待てないよ・・・会えない時間が愛育てるのさ目をつぶれば君がいるなんて嘘だってひろみちゃんが言ってたし、それに大人になったらお母さんのことわからなくなっちゃうかもしれないよ。すれちがっちゃうかもしれないよ」

「・・・大丈夫、お母さんが必ず継美を見つけるから」

「顔が変わっても?・・・背が変っても?・・・」

「・・・絶対、見つけるから・・・」

「お母さん・・・」

「・・・泣かないで」

「無理だよ・・・だってお母さんも泣いてるもの」

「・・・」

喪服の女たちが葉菜の周囲に集まった。藤子は死に装束を用意した。

「後のことは・・・まかせなさい」

「・・・お願いします、お母さん」

「・・・」

「継美・・・うっかりさんに別れの挨拶をしましょう」

「・・・」

「お母さん、継美を送ってきます」

「うっかりさん・・・鳥さん、もらうね・・・うっかりさん・・・元気でね」

袖川医師はうーっマンボ!になった。

行きは母を訪ねて一人旅、帰りは別れのための二人旅である。

旅路はあっという間に尽きた。

「前の席の人・・・ウトウトしてたね」

「・・・気持ちよさそうだったね」

「・・・」

「・・・どっちかな」

「あっち」

「・・・じゃあ・・・ゆっくり歩いて行こうか」

「ゆっくり歩いて行こうか」

継美には大きい葉菜の手編みの袋、葉菜からもらった鳥かごを継美は両手に下げた。

二人は遊びながら他人の家路を辿る。

そこへ・・・怜南の同級生と母親が通りかかる。

母親は怜南と奈緒の関係をいぶかしむ。怜南は小さく手を振って別れを告げた。

奈緒は手をふりかえした。

唐突に去って行く継美。バス停に戻り座り込んだ奈緒はその顔を反芻する。

悲しみをこらえる・・・継美の暗い顔。捨てられた子供の顔。

奈緒は立ち上がった。

継美は別れ道で母娘と別れた。母娘は手を繋いで去って行く。

継美が奪われたもの。うらやましくてうらやましくて走り出す継美。

しかし、息は切れ・・・鳥かごを下ろす。

そこに奈緒が追いついた。

二人の間に広がる道程。

「お母さん・・・もう淋しくなっちゃった?」

「・・・悲しい顔で別れるんじゃなくて・・・もう少しお話ししましょう・・・」

首を振る継美。

「見ていて・・・継美は・・・ちゃんと一人で帰れるから」

「そう・・・でも・・・お母さん見ていられるかな」

奈緒は涙ぐむ。

「悲しいの・・・?」

「・・・ううん・・・うれいしの」

「うれしいのに泣くの・・・」

「・・・うれしくて泣くときもあるのよ・・・」

「じゃあさ・・・好きなもののことを話すといいよ・・・好きなもののことを話すと楽しくなるから」

「・・・そうだったわね・・・じゃ・・・夜のプール」

「かさおばけ」

「8月31日」

「電車の中で鼾かいてる人」

「キリンは牛の種類ってこと」

「そうなの?」

「脊椎動物亜門哺乳綱鯨偶蹄目ウシ亜目キリン科よ」

「相合傘」

「おませね・・・靴箱からはみ出した長靴」

「台風のどどどどどっどーって感じ」

「朝の光・・・」

「お母さんの変な眉毛」

「継美のしゃなりしゃなりとした歩き方」

「お母さんが洗濯物干しているとこ」

「継美がそわそわしているとこ」

「お母さんの・・・声」

「継美の書いた字・・・」

「お母さん・・・」

「継美・・・」

「お母さん」

母と娘は抱き合った。

奈緒はうっかり書いた手紙を渡し忘れているのに気がついた。

「・・・これ、継美が二十歳になったら読んでほしい」

「うん」

「じゃ・・・お母さん・・・ここで見てるから・・・」

「うん」

「お母さん・・・ずっと見てるから」

「うん」

継美は他人の家路を辿る。

この世界には不思議なことが満ちている。

お互いを慈しみあう母と娘が離れ離れで暮らさなければいけないこと。

この世に産み落とした子供をゴミのように捨てる母親がいること。

赤の他人の子供を拾い上げる人間がいること。

命を助けた人間が罪に問われること。

それでも命を助ける人間がいること。

それが継美のお母さんであること。

継美は不思議な問題を何度も何度も考えるだろう。

そして少しずつ大人になっていくだろう。

そしてその度にお母さんを奈緒という人間をどんどん愛おしく感じるようになるのだ。

その人は今、私を見守っている。

これからも私をきっとずっと見守っている。

継美はそう考えて・・・心から微笑んだ。

奈緒は踵を返した。東京には母の葬儀が待っている。そして・・・継美の母親としてしなければならないことが山のようにあるのだ。

白鳥園に戻った継美は少し叱られた後で二段ベッドの上に上った。

そしてお母さんの手紙を開いた。

子供は親の言いつけを守らない生き物だからである。

継美へ

あなたは今、怜南と名乗っていることと思います。

でも、私にとってあなたは今もそしてこれからもずっと継美です。

この手紙は12年後のあなたに書く手紙です。

二十歳になったあなたに向かって書いています。

でも、我慢できなくてこっそり読んでしまっても

お母さんは許します。

でもいつか大人になったあなたも読んでくれることを願っています。

あなたはうっかりさんのことを憶えているかしら?

私のお母さん。

あなたのお祖母ちゃん。

もしも、私があなたの母にならなければ

私はお母さんと出会うことができなかったかもしれません。

あなたの母になったから

私はお母さんを最後の最後に愛することが出来ました。

世界には不思議なことがありますね。

渡り鳥はどうして迷わないか・・・知ってますか?

鳥たちは星座を道しるべにしているのです。

いつも北にある北極星。

そして空をめぐる星座たち。

鳥たちはその位置を覚えて旅をするのです。

鳥たちはひなのうちに星座の地図を覚えるのです。

私は明日・・・あなたを連れて室蘭に向かいます。

そしてあなたに別れを告げるのです。

母と娘として

会うことも許されない私たち。

母と娘と名乗ることも出来ない私たち。

それでも私は信じています。

私と私の母が再びめぐり合えたように

私とあなたがいつかまた手と手を重ねる日が来ることを。

幼いあなたと手をつないだ日々の出来事が

私とあなたの道しるべになるからです。

二十歳になった継美

あなたはどんな女の子になっているでしょう。

小さな靴をはいていたあなたは

おしゃれで少し踵の高い靴をきっと履いている。

私はなんて声をかけようかしら?

私が誰だかわかりますか?

今でも水色が好きなのかしら?

椎茸は好きになりましたか?

彼氏はいるのかしら?

もし、よかったら、うどんでも食べませんか?

継美、元気ですか? 継美。

二十歳になったあなたと出会うことを考えると

お母さんは胸がドキドキしてきます。

あなたに出会えてよかった

あなたのお母さんになれてよかった

今の私にはあなたと過ごした季節が

すべてです。

そして・・・これからあなたと再び出会う季節は

私にとって宝箱なのです。

あなたは私の宝石です。

愛をこめて

母より

追伸。クリームソーダは飲み物の種類ですよ。

継美は手紙をうっかりさんバッグにしまった。今夜・・・もう一度読むために。

きっと20才になる前に・・・手紙はボロボロになってしまう。

でも・・・コピーをとっておけば大丈夫だと継美は考える。

そして好きなものノートに書き加える。

お母さんからの手紙

ハイエナは聖なる母に敗北した。崇めることも貶めることも結局は同じというのがハイエナの生きる道だからである。だからといってハイエナも死肉を食らわねば生きていけないのだ。そしてハイエナにも聖域はあるらしい。

そして・・・季節は流れた。藤子の服を着た葉菜のような奈緒の後姿と・・・仁美のような顔をしたおしゃれな継美は向かい合い微笑んで喫茶店のクリームソーダを注文する。

時は2022年。第22回のサッカー・ワールドカップの開催地はまだ未定である。

すべての「Mother」に幸いがありますように。

関連するキッドのブログ『第10話のレビュー

金曜日に見る予定のテレビ『子役オールスターズとハガネの女』(テレビ朝日)『岩佐真悠子のトラブルマン』『里久鳴祐果の大魔神カノン』(テレビ東京)『仲里依紗のヤンキー君とメガネちゃん』(TBSテレビ)

ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。

皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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コメント

ただただ圧巻の一言でした。

「走馬灯」の使い方の見事さ
あの時が葉菜にとって一番の幸せだった時間
それだけにその事を誰にも言わず墓場まで持っていく

そして娘はずっと忘れたまま

そこで母の願いは成就されている

それ故に「聖母」という記事を書こうとした駿輔は
その母の願いのために自分の書いた原稿を
捨てるというとこもしびれます。

どんなに老紳士が「母」を語り
駿輔が「母」を神聖化しようとも

当の母にとってみれば
そんなのはただの幻想だと一蹴されるのですからねぇ。


でもって、その物語のみならず
映像の演出、構図も見事なものでした。

娘の視点
母の視点

そして一人、施設に帰っていく継美を渡り鳥に重ねる演出

あのラストからおそらく室蘭に移り住んで
葉菜のように遠くから娘の成長を見守るようなとこが想像出来ます。

二十歳になって仁美とそっくりになった継美と
うっかりさんそっくりになった奈緒との出会い

想像するだけで涙がポロポロ出てきます。


これからしばらくの間
私は夜空を見上げ、北十字星を探してみます。

投稿: ikasama4 | 2010年6月24日 (木) 18時36分

コメント欄汚しになってしまいますがすいませんすいません。

同じことをやるのでも、
『エースをねらえ!』◎ 涙で滲んだ文字がすべてを語った!
『マイガール』△ あんなシーンはイラン
『mother』××× (『ブレードランナー』初公開時級イラネ)

同じようなことをやるのでも、
『六番目の小夜子』(原作小説)◎←ちょっと違うけど
『with love』◎
『mother』△ 曲がった坂道級のインパクトは無かった

てなわけで、うーってなっちゃうんです。

ワタシ的には「ゆっくり歩いて」云々のところまではウルトラスーパーDX傑作でした。
きっと、この世に完璧なものはないということを人間に思い出させるように、神様が下さったのが『mother』…なのかー!?

そしてそんなにクリームソーダ押しでなくても良かったのでは。
12年後ですから! 風呂は廃れて人間洗濯機になっているし、皆んな透明な服とか着てるし、沖ノ鳥島のところには曳航してきたイトカワが鎮座ましましているし、私のiPadはまだ到着待ちだし、そういう未来ですよきっと。

「ワタシの名前は継美だよ。鈴・原・継・美…」と独白とかで締めてほしかった(涙)。
「もしもいつか一人ぼっちになって、辛い気持ちになった時は、今日のこの窓辺を思い出そう。思い出そう」でも可。

* * *

でも私には『キューティーハニーlive』の楽天レンタルDVD 17話以降がまだあるから大丈夫です。強く生きていけます(笑)。

投稿: 幻灯機 | 2010年6月24日 (木) 19時34分

(前)感無量です。
この脚本家さんがたどり着いたラストなら何でもOKという覚悟で見ました、そしてやはり涙~キッド様のレビューを読んでまた、あ、いかん涙がsweat02
何だか長い旅をしてきたみたいな気分です。こんな気持ちは子供のころ、指輪物語とか、長い大作を夢中で読んで、世界がそれでいっぱいだった頃にはよくありましたが、今では懐かしい気持ちでした。
シビアなのに希望で溢れているラストで、現実と創作の両方の面に誠実な感じしました。
個人的には、「まるで昔のあの日も、今日も同じ幸せな1日だったみたい」という葉菜の台詞が一番実感で、ううっときました。なんか「秋桜」という曲を思い出し…
私が今まで一回も逃さず見た(うっかり除き)ドラマが他にあったでしょうか、いやない…
Motherが他のドラマと違う所は、スターを観るのでなく、他人を観るのでなく、ストーリーでもなくて、自分の母親との物語を見ていることのように思いました。見ている間、自分の母親に心で語りかけていて、

何かそういう創作はさらりと凄いなーと思いました。
取りあえず…
こちらもやっとクランクupですね
じいや様お疲れさまでした!(花束贈呈) 大変お世話になりましたm(_ _)m!

投稿: リンゴあめ | 2010年6月24日 (木) 21時14分

(後)あと、ドラマの中のこと。
葉菜が夫を手にかけたことは途中から察している人もいたけれど、菜緒の犯行だったとは考えてつきませんでした!
やってきた継美が、葉菜の上にどっさと乗っかるところは、ああ可愛いんだけど、可愛いんだけど死んじゃうから~と私もはらはらしました。
明らかに死相出てますしsweat02sweat02
葉菜に「治るでしょ?」という演技もいいなーと思いました。
継美はすぐ手紙を開けて読んじゃうというとこ…ありそう!なんかそのほうがイイですね。
というかそんなに待てないですね手紙読むの…
会えない母の体と違って手元に持ってるんだし。寂しさにせめて読んじゃうなーと思いました。

鳥…しらべ…さすがですキッド様…

これからまた気になるドラマがあったら、またお世話になりたいです。寄らせて下さいませ
ではキッド様のますますのご健勝をお祈りいたします!

投稿: リンゴあめ | 2010年6月24日 (木) 21時33分

pencil✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥pencil

今もなお、カーテンコールの声止まぬ
満場の観客たち・・・でございますね。

娘・・・あるいはわが子の持つ
神秘的な魔力と
その食べごろを短期間限定でしか
味わうことを許されなかった
母のせつなさ。

しかし、耐えに耐えたものだけに
与えられる黄金の時間。
その甘露な味わい。

そして世慣れぬ風情の娘こそ
絶対正義の守護天使だったという
ある意味、ヒロイック・ファンタジーな結末。

そのヒーローたる道を導く
聖母である葉菜と
女神である継美。

駿輔は結局
母が娘を守ったのか
娘が母を守ったのかを
解き明かせない・・・
創作ならそれでもいいが
ルポルタージュでは
インパクトが弱くて
売り物にならない・・・。
はした金のために
美しい人々を売ることはできないわけです。
ハイエナの悲しい性でございます。

なにしろ・・・駿輔も人の子。
老紳士も人の子ですからな。
母を傷つけることが
基本的にできないし、難解なのですな。

最後は含みの連打で
妄想は広がるばかり・・・。

継美は渡り鳥に何て囁いたのか?
「元気でね」
「お母さん」
「また会おうね」
「待ってるよ」
「迷子にならないで」
「気をつけてね」
「いってらっしゃい」
「おたっしゃで」
「うっかりさん」
「バイバイ・・・」
そして、二人はあの時、
何を話したのか。
「クリームソーダって永遠だね」
「なくならないよね」
・・・なのか。

どことなくリッチな感じがする奈緒は
義母の事業を継いだ感じ。
継美は渡り鳥の研究家兼美容師という
なにやら怪しい職業になっているような気がします。
「それって両立難しくないの」
「パテシエの資格も取ろうかと思ってるのね」
「はいはい」
できれば・・・
「スミレ」には更生したヒトミが立っていて欲しいものですな。

デネブ(尾)、アルビレオ(嘴)、サドル(胸)、ギェナー(羽)

はくちょう座の美しい星たち。
すべての迷えるものを
導きたまえ・・・。(`ーωー´)


投稿: キッド | 2010年6月25日 (金) 10時57分

movie✪マジックランタン✪~幻灯機様、いらっしゃいませ~✪マジックランタン✪movie

21世紀の連続ドラマ史上最高の(キューティー・ハニTLをのぞく)
「Mother」をもってしても
すべてのお茶の間を納得させることはできない。
・・・わかります。
それでいいのです。

レビューする人々も賛否両論ですからな
そうした意見の相違こそが
対立を生み、戦争を巻き起こし
世の中を亡びの道に誘う・・・
まさに悪魔の思う壺でございまする。

なにしろ、この至極の名作を
まったく評価されない方もおりますからな。
画竜点睛を欠く批判くらいは
何でもございませんぞ~。

まあ、基本的には
①なんとか二人で暮らせないの?
②結局、赤の他人なんだから嘘くさい

この二点の不満点があり
どっちつかず・・・のように見えるラストに
さらに不満がつのる・・・という感じです。

まあ、それから詩というものに
アレルギーのある人は問題外なのですな。

その点・・・キッドは心から詩人ですから
・・・まあ悪魔ですけど
まったく問題ない。
最後の手紙はあと五十枚くらいあっても
いい・・・と思うほどです。

校庭でのすれ違いから始まって
「お母さん、弱い」
「今度は負けないよ」まで
走馬灯のように30分くらい
回想が続く・・・でもいいと思いましたぞ。

その間、奈緒はずっと朗読・・・。

ああ・・・そういう「Mother」も見たかった。

そういう意味では
奈緒に黒い翼が生え、
継美に白い翼が生え
空中に飛翔して
悪魔の炎と神の電撃でハルマゲドンに突入でも
かまわなかったのです。

なにしろ、この世は所詮
神と悪魔のゲーム盤なのですからねえ。

そういう意味で
幻灯機様の感じる違和感は
美しい誤解に過ぎないと思うばかりでございます。

ああ・・・キューティー・ハニーの
新たなる活躍を夢見て・・・幾年月。
継美が今夜も奈緒の夢を見る如く。
奈緒が今夜も継美の夢を見る如く。

投稿: キッド | 2010年6月25日 (金) 11時16分

apple◉☮◉Mother~リンゴあめ様、いらっしゃいませ~Mother◉☮◉apple

妄想の花束ありがとうございました。

キッドは時々「せつない」という意味を
解説します。
ここでは「胸がせつない」をとりあげます。

よく、せつがないとはどんなことだ・・・と
考える人がいるのですが
切とはものがギリギリ限界である。
つまり「いっぱい」という意味があります。
で、誤解が多いのは
「いっぱい」が「無い」とはなんだ・・・と考えてしまう場合。

せつないのないは無いではありません。

ないというのは接尾語で状態の極限化を示します。

つまり「忙しない」は「超忙しい」ということになるのす。

だから「ない」は「いっぱいだ」です。

つまり「胸がせつない」というのは
「胸がいっぱいいっぱいだ」という意味です。

そういう「せつなさ」を感じるドラマを
名作と呼べずに・・・何を名作と呼べるだろうか。
いや、そんなことはできないです。

そのくらい名作な「Mother」・・・。
にめぐりあい幸福です。

もう、日本がワールドカップでベスト16になるのと
遜色ありません。
・・・遜色ないのか。

奈緒もせつない。
継美もせつない。
二人の出会いと別れもまたせつない。
そして二人の明日もせつない。
ああ・・・明日、北海道が沈没したら
どうすんだよ~でございます。
東京が北朝鮮の核ミサイルで火の海になったら・・・。

まあ・・・昔は
東北地方の美しい娘は
幼くして人買いに売られ
苦界に身を沈めるのが日常茶飯事だったので
ある意味
なんくるないさ~でもあるわけですが。

いつかは親元を離れる子供は
自然なのかもしれない。
逆に一生、一緒にいるのも自然なのかもしれない。
しかし、一緒にいたいのに
引き離される二人は・・・
あまりにもせつない。

なにしろ・・・継美はかわいそうな子供たちの仲間入り。
人格的に問題のある職員がいたら・・・
人格的に問題のある仲間がいたら・・・
そういう心配の種は尽きないはず。
しかし、奈緒と継美はあえて
茨の道をいく。
それが二人のいっぱいいっぱいだからです。

それが日本の美しい現実。
それが日本の美しい夢想。
リアルとロマンの交差点にポエムの十字架は立つのでした。

運がいいとか悪いとか
人は時々口にするけど
そういうことって確かにあると
あなたを見ててそう思う・・・
なのでございます。

さだまさしでそろえてみました。

時には母のない子のように
黙って海を見つめていたい
だけど心はすぐ変わる
母の無い子になったなら
誰にも愛を語れない

寺山修司も墓からはいでる季節です。

継美はしかし・・・携帯電話で
即行語るでしょう。
「あのね、あのね・・・お母さん・・・好きな子ができたの」
ああ、かわいい。
できるなら継美のお母さんになりたい。
・・・お前、男だろっ。

まあ・・・そういうのはすべて
男の幻想の産物でございます。

最近では「イノセント・ラヴ」がこの手を
使っていましたが
「Mother」では
娘の父殺しの記憶喪失が
まったく猟奇的ではありません。
それは・・・もちろん、
キッドが悪魔的なサイドにある・・・という
影響もありますが・・・
実に詩情豊かに描かれていて
そんなことはままあること・・・だと感じさせます。
そこが・・・このドラマの醍醐味なのですな。

まあ、継美は母との約束を破らないという
考え方もありますが
もしも、二十歳になる前に手紙を紛失したら
「二十歳になっても手紙を読めない」
だから
今、「手紙を読む」ことは
母との約束を半分達成できる・・・
という賢さ・・・狡さを持っていると
キッドは想像します。

とにかく、キッドなら一人になった瞬間に
読んじゃいますから~。

まあ・・・そういうところを含めて
このドラマは断定しない。
かといって曖昧にもしない。
つまり、傑作なのですな。

文字化けした絵文字を想像するのもまた楽しいものですよ。

それではまた・・・美しいドラマがお茶の間に降臨する。

奇跡の時を待ちたいと考えます。

それまで・・・お元気で。

投稿: キッド | 2010年6月25日 (金) 12時06分

キッドさん、こんにちはhappy01

ご無沙汰しております。
ついに「Mother」も終わってしまいましたね。
淋しいというより、なんだか妙にほっとしています。

最終回で「~年後」というのは、よくあるのですけど、
これは現実のようでもあり、
「そうなったらいいのに」という奈緒の妄想のようでもあり、
何とも言えない味を出していたと思います。
この世界のどこかに仁美も駿輔もいて、
傷ついた心を抱えたまま、懸命に生きているんだろうなあ、
と想像ができるラストでした。

リアル母としては、仁美の気持ちも分からなくもないし、
正直、(虐待を受けていたわりには)継美ちゃんはいい子すぎ、とも思っていました。
けれど、今回、千葉のおばちゃんがお菓子やお金を送ってきてくれているのを見て、
怜南ちゃんも、小さい頃は、母親にも、おばちゃんにも、本当に愛されていたんだなあ、というのが、実感として納得できました。
人を信じることの出来る下地はあったんですね。

映像も音楽も演技も、本当に素晴らしい作品でしたね。
芦田愛菜ちゃんは言うに及ばず、
子役に負けない松雪さんや田中さんも凄かったですね。

「告白」にも出ている愛菜ちゃんですが、このまま大事に育っていってほしいです。
私は、20才の愛菜ちゃんと出会える日が来るのが楽しみですchick

このような作品が、民放で作られて、ちゃんと成功するというのは、
ドラマファンの私にとって嬉しい限りですhappy02

キッドさんのレビューも、本当にお疲れ様でした。
謎だったハイエナさんの行動が、
レビューで解明することも何度かありました。
有難うございました。
これからもよろしくお願いしますねwink

投稿: mi-nuts | 2010年6月25日 (金) 14時02分

crown✭クイーン・オブ・ザ・ランチ✭mi-nuts様、いらっしゃいませ✭親切百回接吻一回✭parking

そうですねえ。
いつまでも見ていたい母と娘だけど
あくまでドラマですからね。
サザエさんにはなれないのですな。

奈緒の心境や
継美の心境を
誰もがわかるとは限らない
特殊な設定のドラマですから
わかってくれとはいわないが
とりあえずこんな感じだよ
というのが最後の場面に結晶するわけですな。
二人は生きていく。
クリーム・ソーダは永遠の証。
そして思い出の写真と
好きなものノートは不滅。
それは希望の象徴なのでございましょう。

娘を死んでもかまわないとばかりに捨てた仁美。
見て見ぬフリをすることで取材対象を殺した駿輔。

魔がさした・・・では許されない母と
誰も責めないことで自分を責める男。

二人の罪は・・・
しかし、母を捨てた娘、
弱い者を捨て身で守った女に
激しく弾劾される。

その弾劾を当然と受け止めるには
お茶の間の方が心穏やかではいられない。
継美や奈緒よりも
仁美や駿輔の方が・・・庶民的だから。

事件を知った千葉のおばちゃんは
さぞや・・・気が動転したことでしょう。
幸せに暮らしているとばかりに
思っていた仁美・怜南母娘の悲劇・・・。
そしてどんなに心が痛んだことか。
しかし・・・老い先短い彼女にも
できることは限られている。

今回のレビューでは
音楽についてふれませんでしたが
挿入曲もインストゥメントルも
実に作品にマッチした名曲ぞろいだったと思います。
ただ、もう脚本が素晴らしかったので
そこまで手がまわらなかったのでございます。

結局、田中裕子は聖母を演じ
奈緒は天使・・・
そして継美は女神・・・
キッドの最終的な印象はそのようになりましたが
どの役もそうそうこなせる役ではないですねえ。

聖母は人間ですからやがて舞台から去る。
地上に落ちた天使である奈緒は
人の定めたルールを破り悪を行いながら
神の正義を執行する。
そして最後は女神である継美に導かれて
人間となっていく。
奈緒は最後まで継美に導かれていく構造になっていて
実におしゃれでしたな。
継美が好きな言葉を言えと言えば言い
継美が歩みよれば歩みよる。
奈緒はあくまで天使として
継美に点数をつけられる存在なのですな。

ここは母にはなれない男の幻想の到着点でしょう。
男は母として点数をつけられることはない生き物ですから。

もちろん・・・父親としては赤点の常習犯になるわけですが。

子役が女優として大成するかどうかは
まさに神のみぞ知る領域ですな。
しかし・・・アップに耐えられる継美は
潜在力は抜群と予測しておきます。

まさに毎週が封切り映画並みの
圧倒感を持つコンテンツ。
日本ドラマの底力を見せてもらいました。
これを越える作品は
しばらくないかもしれませんな。

「わたしたちの教科書」の後で
再評価したのが失敗だったかと
駄作を連発した脚本家が
さらに高みに登る・・・。
そういうことがあるんだなあ・・・と
毎週、感動することができました。
人間って本当に底知れぬ生き物でございますな。

そして、また・・・新たなる刺激を求めていく。
業です・・・業でございまする。


投稿: キッド | 2010年6月26日 (土) 09時14分

今頃ですが…
遅刻してすみませ~ん。
底知れぬ力を出して走って来ました~!ハァハァハァ
…わぉ。100m10秒ちょっとか。ハァハァハァ

こんなにいつまでも余韻に浸れるなんて、
美味しい~♪
キッドさんのレビューを読んでまた蘇る。
何度も美味しい~♪

ただ、
キッドさんが「ハイエナ」と呼び続けたことだけが、
そこだけが…そこだけ…うぅぅぅ…ハァハァハァ(大袈裟だわ)
いやぁ、「記者」=「ハイエナ」なのは分かってますとも。
でも山本君は、いや駿輔は最後まで頑張ってくれましたもん。
(ずっと贔屓目だったので~)
ウルトラマン少年を語る回は泣けたし~。。。
『聖母』を捨てちゃうとこなんか良かったわぁ。
序盤で、記事にして欲しいと願ったことが裏切られた気持ち良さ。
見せ方は見事でしたね~。

キッドさんの妄想レビューも見事でした。
私も少しは「妄想力」を磨くことが出来た?
いやいやまだまだ。精進いたしまする(笑)

素晴らしいドラマを何倍も楽しむことが出来て嬉しかったです♪
ありがとうございました。

安心して『ホタルのヒカリ』を迎えたいと思います。
またおつき合い下さいね。
お疲れ様でした~(*^-^)ノ~~

投稿: mana | 2010年6月28日 (月) 12時18分

hairsalon|||-_||シャンプーブロー~mana様、いらっしゃいませ~トリートメント|||-_||hairsalon

ハイエナの最も誤解されている点は
ネコ亜目で
ジャコウネコの仲間だというところ。

犬の仲間だと思っていませんでしたか。

ハイエナはなぜかオスはメスのような局所を
メスはオスのような局所を
持っていて
古来、両性具有の獣と信じられてもきました。

ハイエナは変った動物なのです。
死肉喰らいの異名も
発達した口角が骨を噛み砕くことが
できるためにつきました。

実は自分で狩りをする肉食動物です。
ただし、他の動物の食べ残しも
食べられる強靭な顎を持っているだけなのです。

一方、コヨーテはオオカミの一種で
その名は歌う犬。
ハイエナとコヨーテは
なんとなく・・・一緒にされがちで
迷惑だと古いコヨーテの友達が申しておりました。

まあ、それでも
ハイエナが
ヘルキャット(地獄の猫)の一種であることは
間違いないことなのですな。

ジャーナリストは社会の暗部をかぎまわるのが仕事。
血もしたたるステーキを
ディナーで味わう上品な人々が存在するためには
誰かが牛殺しにならなければならないのが
社会というものですからな。

政治家たちの汚職、
人々の殺し合い、
家庭を持つものの自由恋愛・・・
人々の魂の穢れが
美しい人々の忍耐の日々に
刺激を与える以上・・・
あることないこと書くのがもの書きの宿命です。

まあ、そういう意味でハイエナの駿輔は
善と悪の境界線を走る
イヌのようなネコ
メスのようなオス
神の使いのような地獄の獣なのでございます。

まあ、山本耕史にはうってつけの役どころでございました。

労多くして実り少なしの役柄は
なんとなく薄めの髪の毛の二枚目には
ふさわしいのでございます。

「Mother」の後には必ず「怪物くん」の予告がきて
失笑だったこのクール。
最後は「ホタルの自堕落なゴロゴロ」が来て
一同爆笑でしたな。

帰ってきたホタルと部長が・・・
前シリーズ同様に
ほのぼのと楽しませてくれることを
心待ちにしておりまする。゚・*:.。..。.:*(@д@)

投稿: キッド | 2010年6月28日 (月) 15時10分

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