なりたい者になれるよヤンキー君(仲里依紗)ずっと一緒さメガネちゃん(成宮寛貴)
格差のあることを認めることはその是正には必要なことである。
一方で格差に目をつぶれば無用な軋轢が生れないという考え方もある。
賢愚の差を測る方法は昔から人々を悩ませ続けてきた。
低賃金を目当てに開発途上国に進出する企業は多いが、そこで一定の生産力を得ればやがて現地の労働者たちも国際的な水準への賃金引上げを主張するようになる。
濡れ手に粟という美味い話は一瞬の夢なのである。
しかし、一瞬でも利があれば旨いと思うのが商売というものなのだ。
誰かは安定を夢見る。
誰かは下克上を夢見る。
その差違は必然である。それを話し合いで埋めるか、それ以外の方法で埋めるか。
その問いに対する答えも風に吹かれていると昔の人は言いました。
で、『ヤンキー君とメガネちゃん・第8回』(TBSテレビ100611PM10~)原作・吉河美希、脚本・永田優子、演出・川嶋龍太郎を見た。誰もが分るドラマなんか作るのは無理だ・・・という考え方がある。もちろん、その通りである。勉強ができるものと勉強ができないものの間に横たわる川の深さを考えるものと考えないものがいるということが予測できるからである。勉強ができる側からの景色と勉強ができない側の景色も違うと思われる。バカでないものは考える・・・バカはバカなりの考えがあるのかもしれん。バカは考える・・・バカでないものもバカについて考えるかもしれん。しかし・・・その答えはなかなかに交わりがたいものがある。
かって専門学校の講師をしていた頃・・・目の前に座る学生たちのあまりのバカさに・・・義務教育に携わるものたちの無能を密かに呪ったことがあるキッドは・・・卒業するまでにあまり賢くならなかった学生たちに己の無能さを悟ったりするのである。
少年老いやすく学成り難しである。
しかし、気持ちということでいえば、バカというのはものすごい武器でもある。
たとえば大衆の気持ちを知るということにあたってバカの有利ということがある。大衆というのは基本的にバカなものだから・・・バカにとってはその気持ちを理解しやすいのである。バカでないものはうっかりすると大衆の気持ちを見誤る。
禍福は糾える縄の如しなのである。
大衆に支持される指導者というものはあまり賢くないものだという理由がそこにあります。
指導者たちは時には賢者の教えを請うものだ。賢者は賢さのあまり、いろいろと言葉を紡ぐ。たとえば「職業選択の自由」である。そこですごいバカが「オレ、医者になる」と決意したとする。賢者は少し考えて恐ろしい未来を思い描く・・・足し算引き算も満足にできないバカに薬の加減ができるのかと。そこで「医師は国家試験合格者がなります」と付け足すのである。
バカの中のちょっと賢いものはそのごまかしに敏感に気がつき思わず歌うのだ。
「職業選択の自由あはは~ん」・・・ああ、懐かしい。
そういう世の中の裏と表を描くのがこのドラマである。
当然、少しずれてます。たとえば「男女雇用機会均等法あはは~ん」な凛風(川口春奈)は将来の夢を問われて「お嫁さんになること」を妄想する。しかし、場合によっては「専業主婦あはは~ん」なのである。「年功序列あはは~ん」の「終身雇用あはは~ん」だからである。そのために「亭主関白あはは~ん」で「夫唱婦随あはは~ん」なのである。「単身赴任あはは~ん」で「不当解雇あはは~ん」であり、「自己責任あはは~ん」で「経済格差あはは~ん」なのである。
一方、元引きこもりの千葉(小柳友)は「バカではないがちょっとバカ」なところがあり、「繊細すぎて自滅するタイプ」に分類される。大手の弁護士事務所の筆頭弁護士(文系)の息子である彼の将来の夢は宇宙飛行士(理系)である。まあ、最終的には宇宙飛行士は体育会系という考え方もあります。ともかく、親の期待は「世襲」であり、子供が弁護士の道に進んでくれること。千葉は自分の夢と親の夢の間で相克します。この悩みを引きずると「ホームレス」の可能性も視野に入ります。
逆に、元ヤンキーの大地(成宮)の悩みは「親が期待してくれないこと」・・・。大地の親は町医者(古田新太)ですが・・・すでに医学部に進学している姉・海里(大和田美帆)には「期待」するが・・・花(仲)と学年最下位争いをする自分には「期待できない」と思っているに違いないと・・・大地は悩みます。まして「理系に進んで将来は医者になりたいという夢」を口に出すことはとてもできないのです。
なぜなら・・・「そこにいけばどんな夢もかなうという」ガンダーラはこの世にはないことがバカでもわかるからです。
大地と千葉は本当は仲良しですが・・・お互いを思いあって忠告合戦の果てに武力衝突します。
大地の意見。「千葉は頭もよくて選択肢があるのに親に遠慮して夢をあきらめるなんてバカだ」
千葉の意見。「大地の親は自分のことは自分で決めろと自主性を認めてくれているのに最初からあきらめて夢を捨てるなんてバカだ」
お互いが相手を思いやり、自分のことは後回しなのです。
そこへ・・・学校で一番のバカが実力行使です。
「ケンカはやめて~」・・・圧倒的な実力者の花は二人を地球の果てまでぶっとばすのでした。
「あたしの夢は・・・みんなといつまでも一緒に仲良く生きていくことなんだ・・・」
大地は悟るのです。「バカにも上には上があること」を・・・。
「それにくらべたら・・・自分にも可能性がある」と希望を感じた大地でした。
千葉は悟るのです。「人間、時にはバカにならなきゃダメだな・・・」と。
大地「おれ、医者になる」
千葉「ボクは宇宙を目指すよ・・・」
花はうれしかった。バカな仲間がバカで・・・。
その時、学年トップで将来の予定は経済官僚の和泉(本郷奏多)がため息をつきながら、立ち上がり、お茶の間にむかってこう語りかけるのです。
「これはあくまでマンガの世界の話です・・・現実はそんなに甘くないのでご注意ください」
最も賢いバカである練馬(鈴木亮平)はニヤリとしながら頷くのだった。
関連するキッドのブログ『第7話のレビュー』
日曜日に見る予定のテレビ『龍馬伝』(NHK総合)『新参者』(TBSテレビ)『女帝薫子』(テレビ朝日)『荒川アンダー ザ ブリッジ』(テレビ東京)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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