レズハモテキキテモハズレ(満島ひかり)
いや・・・別に中柴いつか(満島ひかり)はレズビアン設定でもないし、キッドは同性愛者を誹謗中傷するタイプなわけでもない。
なんとなく回文を作っていたら・・・こうなったのである。
それというのも深夜にNHKでトーク番組をやっていて・・・故・赤塚不二夫氏が昔語りをしていたのである。
キッドが昔の漫画で一番に思い出すのは逆さ言葉なのである。
昔、マンガの中で外国語を話すシーンがあると・・・「カノモニナハエマオ?」などとフキダシの中にセリフがあった。
これは「おまえはなにものか?」をさかさまに言っているだけで擬似外国語なわけである。
「逆さに読む」というルールを発見すれば・・・ついでに通訳気分を味わえるお遊びだ。故・手塚治虫氏なんかも常套手段にしていた。
しかし、ここにも障害はあって・・・たとえば回文というのは逆さ言葉の邪魔をする。
「ダレダハエマオ?」は「おまえはだれだ?」の逆さ言葉だが、「誰だ」の部分がバレバレなのである。
キッドはこれを「逆さ言葉」と「回文」の微妙な関係と呼んでいる。
これに「好き」と「キス」の複雑な関係を加えると・・・言葉の順序についての不思議の基本はほぼクリアになるのである。
順番に並べていれば意味のある言葉が・・・変則的な順番で別の意味を生じる。
この暗号的な面白さは・・・趣味になるほどのインパクトを持っている。
しかし・・・そんなことはどうでもいい人にはどうでもいいことでもある。
テレビ東京深夜に住み込んでいるような大根仁の面白さは・・・その手のジャンルに属しているように思われるのです。
昔、一人の満島ひかり似の美少女がいて・・・周囲の男性は誰もが彼女との一夜を想定して下半身を熱くしていると想像できた・・・ただ、キッドはただ一つの事実を知っていたために・・・それが無性に面白くもありせつなくもあったのである。彼女は男の子にはまったく性的興味を持たないタイプだったのである。
今回のタイトルはだから・・・言葉遊びでありながらある程度ノンフィクションなのです。
で、『モテキ・第2回』(テレビ東京100724AM0012~)原作・久保ミツロウ、脚本・演出・大根仁を見た。テレビドラマのスタッフというものはいつでも・・・「自分が面白い」と感じるものを探している。しかし、ある程度玄人なのでその「面白さ」は素人の構成する「世間」とずれるのが普通である。昔、映画監督の神代辰巳がキッドに語った言葉をふたたび引用すれば「自分が面白いこととお客が面白いことが一致することを神に祈るようなときがある」ということだ。チーム・ワークであり、巨大な機構での仕事を要求されるテレビドラマでは「実現の一致点」はさらに複雑になることは想像できるだろう。
そういうハードルの高さを調節することも・・・スタッフの力量に含まれる。
もちろん・・・テレビ局という「会社」の方には素人も混じっていて・・・何回かは騙せる場合もある。
しかし、結果がものを言うので・・・普通は何度も使えないのである。
ただし・・・ゆとり社会の影響で・・・最近は愚行を繰り返すのが割りと簡単らしい。しかし、真のプロフェッショナルが己を縛る規律は意外と厳しいのである。
「許容範囲で・・・自分のやりたいことをやりたい」・・・これが最低限のルールだ。
そこで大根仁は・・・「深夜」しかも「テレビ東京」というハードルの下げまくりを実行しているのではないかと妄想するのだな。
もう・・・ハードルの高さは30センチくらいなので軽々とランニング・ショット/柴田恭平(1986)なのである。・・・まあ、あくまで妄想です。
で・・・そこで・・・コミック原作で叙情的な歌謡ドラマのやりたい放題である。
まして・・・今回のヒロインは満島ひかりだ・・・実に羨ましい仕事ぶりである。
ドラマのジャンルに「歌謡ドラマ」というものがある。まず、「歌謡曲」があって・・・そこに霊感をうけて作られるドラマだ。まあ、つまりあやかるわけである。で、こういう異種格闘技交流戦というような企画はかなり安易に立てられる。
原作コミックの「モテキ」は各話のタイトルが「J-POP」のタイトルになっていて、つまり歌謡漫画である。ドラマの第1回で使用された「格好悪いふられ方/大江千里」は原作漫画の第一話のタイトルでもある。
歌謡曲と漫画の融合はある種のセックスといえる。ない場所にあるものを挿入するわけだ。
歌謡曲には映像がなく、漫画には静寂がある。つまり、幻聴漫画であり、幻影歌謡曲が誕生するのである。
しかし、ドラマには映像はあるし、静寂もあまりない・・・それなのに融合できるところが・・・創作の面白いところなのだな。
ともかく・・・大根仁は・・・あやかりまくるのだ。あやかってあやかって思う存分・・・趣味にひたるのである。
大根仁はドラマ「傷だらけの天使」について今見るとそれほど面白くないなどとものすごいつぶやきを残していた記憶があるのだが・・・逆に言えばそれは愛情表現である。けして愛し返してはくれないものを一方的に思う気持ち。それは今、ひどくありふれた愛のカタチだと言えるだろう。そういうものづくりについてデリケートに考えずにはいられないもののものづくり・・・。その繊細なタッチに心が震える夜があります。
今回のドラマのサブ・タイトルは「深夜高速~上に乗るか 下に寝るか」なのであるが・・・これは大根仁よりももっともっとファンに慕われる岩井俊二監督のドラマ「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」(フジテレビ1993年)へのオマージュになっている。同時に「深夜高速/フラワーカンパニーズ」にあやかっているのである。
藤本幸世(森山未來)は29才。派遣社員で、将来への展望もなく、今もそれほどエンジョイしていないし恋人もいない青年期の終わりを生きる男である。そんな彼に突然「もててもてて困っちゃう時期」がやってくる。周囲の女の子たちが「好きよ・・・抱いて」と幸世を神輿に乗せて担ぎ上げるような状態なのだ。そんな状態に彼は戸惑い・・・不信感を覚えずにはいられないのだ。なにしろ・・・生れてから一度も「彼女」がいなかったのだ。
前回、職場の元同僚・土井亜紀(野波麻帆)から突然のアプローチを受け、動揺した幸世に今度は年下の女友達・中柴いつか(満島)から連絡が入る。
カメラマンの卵であるいつかは現在22才。
友人の島田(新井浩文)から飲み会の席で紹介された時・・・二人は最悪の出会いを果たす。
「彼女は・・・20才で処女なんだよ・・・27才で童貞のお前とはお似合いだとは思わんか?」
しかし・・・いつかは「無理です・・・ムリムリ生理的にムリ」と幸世を全面否定。
売り言葉に買い言葉で幸世も「20才で処女なんて価値があると思ってんのか・・・そんなものドブに捨てちまえ」といつかを罵るのだった。
そんな最悪の出会いをした二人だったが・・・おタク的な趣味の部分では意気投合。
友達としては「最高」みたいなノリになっていたのだった。
今回も岩井俊二おタクであるいつかの提案でドラマのロケ地めぐりの旅に出発する二人なのだった。
しかし、前夜、矢沢似のロック・アーティストのインタビューを某所で見てしまった幸世は新鮮な感覚につきまとわれていたのである。
「人間には・・・やる奴とやらない奴がいて・・・やる奴はやるんですよ・・・だからオレは言いたいわけ・・・やる奴っていう部類に来ちゃえばいい・・・ただそれだけじゃないかってね」
幸世はいま性行為をやる奴の部類へと眠っていた性欲をたぎらせているのだった。
ドラマの聖地である千葉県飯岡町(現・旭市)にやってきた二人。ドラマの名場面を熱く語りながらはしゃぐいつかに常になく「女」を感じる幸世・・・「ひょっとしたら・・・誘われているのでは・・・」と頭の中は妄想でいっぱいになるのだった。
しかし、ひなびた駅のホームでいつかは意外なことを語り始める・・・。
「私・・・島田さんがずっと好きだったんだ・・・それなのに島田さんの結婚式で写真係を頼まれたりして・・・なんだよって・・・話だよね」
おタクとして現実世界の他人についてほとんど興味のなかった幸世には予想外の告白だったのである。
さらに「ああ・・・誰かと恋がしたいわ・・・」と嘆くいつか。
(それはボクじゃなかったのかよ)と茫然自失となる幸世。
そこに駅員がやってきて・・・「あの終電車・・・終ってますけど・・・」
二人「えーっ・・・まだ昼間なのに・・・」
駅員「ここ・・・早いんです」
二人「そんな~」
駅員「泊まっていっちゃえば~」
そして・・・二人は海辺のホテルに宿泊することになったのであった。
優しいなんてウソだぜいつも
ふざけた事はいっさいごめんだ
いきがって見せるのも面倒な話さ
気まぐれなふりをしておどけているだけ
行くぜ
・・・アクション映画の刑事のように走りながら撃つ時が突然やってきたのだ。
浴衣さえ満足に着られない幸世に年下の女の子は「私のこと女なんて思ってないよね」と言いつつ、浴衣を着付けてくれるのである。
立てひざで幸世の帯を締めるその淫靡なアングルだけで勃起してしまう幸世だった。
そのことに気付かれているのに気付かれていないと考える悲しい幸世に・・・いつかは一時間湯舟に使ってある決意を固めるのである。
そして・・・その時は来た・・・。
潮騒の音に浮かび上がるつげ義春風な幸世の影。
幸世を優しくベッドに迎え入れるいつか。
幸世が生れて初めて味わう甘美なキス。
そこで幸世は・・・これまでに妄想しつくした性行為の所作のすべてを実現しようと奮起するのである。
しかし、その情熱的態度にふと疑問を浮かべるいつか・・・。
「あの・・・童貞なんだよね・・・」
そこで・・・悲しいかな・・・言わなくていいことをいう幸世だった。
「あの・・・厳密に言うと・・・恋人はいないけど・・・経験はあります」
すると・・・突然、激怒するいつか。
「えーっ・・・私、あなたが童貞だと思って、一生懸命リードしようとしてたのに、なにそれーっ・・・童貞くらい死に物狂いで守らんかい」・・・なのである。
そして・・・いつかは「帰る」と言い出すのである。
そして深夜バスに揺られる二人だった。
「私もさ・・・ドブに捨てたんだ・・・処女・・・」
吐き捨てるいつかに返す言葉を見つけられない幸世だった。
すぐ・・・そこにあるチャンスをつかめない。無駄に年齢を重ねるというのはそういうことなんだな。
そして・・・東京へ向かう深夜バスは無駄に哀愁漂うものなのである。
青春ごっこを今も 続けながら旅の途中
ヘッドライトの光は 手前しか照らさない
生きててよかった
生きててよかった
生きててよかった
そんな夜を探している
こ・・・これは傑作。
関連するキッドのブログ『月の恋人』
『怨み屋本舗』
『ライオン丸G』
『週刊真木よう子』
月曜日に見る予定のテレビ『ハンチョウ』(TBSテレビ)『夏の恋は虹色に輝く』(フジテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
| 固定リンク
コメント
満島ひかり・・・恐るべしっ。
キッドさんが、「ただ可愛い役で満島ひかりを起用するだなんて、月9のキャスティングは豪華過ぎ」の意味がようやくわかりました。
彼女の魅力が爆発してましたねえ。
森山・・・なぜ余計なことを言う・・・寸止めじゃないかっ・・・とひとりもがいておりました^^;。
ちなみに美丘はもう、吉高見たさに見てるだけです。
2時間スペシャル×2夜連続の方がよかった気がします。
投稿: inno-can | 2010年7月26日 (月) 22時19分
♬♬♬のだめデスヨ♬♬♬inno-can 様いらっしゃいませ♬♬♬のだめデスヨ♬♬♬
でございましょう?
満島ひかりのデビューは
映画「モスラ2海底の大決戦」(1997)まで
遡りますが
キッドが注目したのは「ウルトラマンマックス」(2005
)
のアンドロイド・エリー役から・・・。
まあ・・・Folder5という歌手時代もあるわけですが
そこからは女優としてキャリアを
積み重ねているのですが
結構、難役をこなしているのがミソなんですよね。
今回は・・・その中でも
ちょっと変で可愛い・・・という萌え要素大爆発!
でございましたね。
これは見逃せない一作だったと言えるでしょう。
まあ・・・「美丘」も見てますが
できれば見逃したい作品だったと
キッドは考えます。
投稿: キッド | 2010年7月27日 (火) 09時51分