感謝しても感謝しきれない男と後悔しても後悔しきれない女のくらし(中谷美紀)
感謝知らずの女と後悔知らずの男でもよかったのだが・・・成功者のアドバイスと失敗者の忠告のどちらに耳を貸すかという問題でもある。
名言というのは心に残る言葉をさすのだが・・・キッドはそれを多く知らない。
千くらいである・・・充分じゃないか・・・。
しかし、千もあるとないのとほとんど同じだ。
人々はなぜ結婚するのだろうか・・・という問いかけの答えとしてキッドの頭に浮かぶのは次の言葉である。
荒れた海で漁はできない・・・農家を営む義理の父親が家出をして実家に潜伏中の妻を迎えにきた夫に言った言葉。キッドが思ったのは「あんた漁師じゃないじゃん」であった。若さゆえのあやまちなのでお許しください。
どこでもいい子じゃいられない・・・三人の子供を実家に預け暴力夫から闘争中の幼馴染の言った言葉。夫も妻も子供たちもきっとそういう心情なのだろう。まあ、結婚するということはそうだからこそせめて家庭で・・・という意味を含んでいると思う。
美人の嫁さんがかわいそうだろう・・・酒乱のために家庭を壊しそうな悪友にキッドが言った言葉。自分で言いながら「じゃ、ブスの嫁さんだったらかわいそうじゃないのか」と心の中で自問した。その答えは今も風に吹かれている。
今、ちょっとピンチだからお金を貸して・・・泣いて頼んだのに家を去った妻が数十年ぶりに言った言葉。別れた夫からいつかお金を借りるために離婚する妻がいてもいいと思う。しかし、断じて貸さない離婚した夫がいてもいいと思う。
夫が妻に毒殺されないように地獄を設定してみました・・・いつか夢の中で旧友の神様が言った言葉。家庭内で平和が維持されるのはすべて悪いことをしたら地獄行きというフィクションが為している技なのである。
その神話が薄れつつある現在、日本では毎年およそ150万人が結婚し、およそ50万人が離婚していると言う。
人間って面白い。
で、『ドラマスペシャル離婚シンドローム』(日本テレビ100630PM9~)原案・吉池安恵、脚本・伴一彦、演出・佐久間紀佳を見た。「Mother」と「ホタルノヒカリ2」を繋ぐスペシャルドラマである。母子ものと未婚もの間に離婚ものを配置。とてもシスティマティックなのだな。シンドロームとは症候群という意味なので・・・離婚という病についてのドラマである。つまり、前提は結婚生活の肯定なのだ。それを肯定するか否定するかはお茶の間の自由である。もちろん・・・結婚シンドロームという考え方もあります。
夫婦問題カウンセラーの渡辺貴美子(中谷美紀)はバツ2である。つまり、二度の結婚に失敗している。もちろん、結婚・離婚は成功・失敗ではないという考え方もあるが・・・それは少数意見として黙殺します。
渡辺カウンセラーには二度目の夫との間に一女があるが、離婚に至る裁判で娘の親権を得ることはできなかった。また、二度目の元夫の後妻が渡辺の娘をわが子のように可愛がっているために生涯実母の名乗りをあげないことを心に誓っている。
しかし・・・娘の写真は肌身離さず持っていて・・・時々電信柱の影から写真を撮るなどストーカー行為は続けているようだ。
とにかく・・・それは渡辺カウンセラーにとって最後の武器なのである。
ついでに、渡辺カウンセラーは精神科医でもあり法律家でもある。あるいはどっちにもなれなかった女とも言える。
しかし、夫婦の間にある医者にも弁護士にも救えない問題を怪しいカウンセラーという職業でなんとかしようと決意し・・・生計を立てているのだ。
もちろん・・・他人の不幸が蜜の味なのは結果論なのである。
渡辺カウンセラーには医者の知り合いがあり、ストレスから体調不良になった患者を紹介してもらい、離婚や親権問題などで裁判沙汰になった場合には知り合いの弁護士を相談する。
知り合いに医者と弁護士がいる人ばかりではないので仲介手数料をもらうだけでも成立するビジネスです。
夫・光俊(市川亀治郎)の東大出身の官僚ならではの高圧的なモラルハラスメントによるストレスで体調不良になった妻・さゆり(釈由美子)・・・。娘に買ってあげた熊のぬいぐるみは「センスが悪い」と夫に捨てられ、夫の母親のレシピ通りではないと作った料理を捨てられ、蝶のコレクションを鑑賞する時間を邪魔したと言っては土下座させられるさゆり。キッドなら妻なら確実に一服もるよな。・・・お前男だろう。
一方、老境を迎えた俊夫(石坂浩二)は妻の静子(風吹ジュン)に突然、離婚を迫られる。離婚を求められる理由が全く思い浮かばない俊夫は途方にくれるのである。
さらに、妻の華子(柴本幸)の家庭内暴力に難儀する夫の勉(山本太郎)は満身創痍で渡辺カウンセラーを尋ねるのだった。
まあ・・・脚本家はちょっと頭に花が湧いているタイプなので・・・「冗談じゃない!」の脚本家である・・・時々、ファンタジーな展開もあるが・・・問題提起としてはそこそこ楽しい展開である。
まあ、東大出身の経済官僚がすべて支配欲の権化でマザコンで蝶おタクではないと断言しておきたいと思う。
しかし、カウンセラーのアシスタントである小林くん(田中聖)がさゆりの大学時代の親友でゲイだった・・・というオチは果てしなく無理がありましたーっ。
家庭裁判所で、妻の不倫を攻め立てた夫側の弁護士も、事情を問い質した裁判官も、妻側の弁護士も・・・唖然とするカミングアウトだった。
そして一番ショックだったのは恋多き女シンドロームの渡辺カウンセラーだったのである。
もしも、配役が渡辺えりだったら・・・またしても素直になれなくて事件勃発寸前だったぞ。
そういう意味で「スナナレ」の脚本家とこの脚本家は同じ花畑に咲いている花の臭いがします。
もしも、裁判官が同性愛に偏見のあるタイプだったら・・・「ゲイの友人のいる妻は子供の養育において不適切な環境だ」と結論を出す可能性もあると思う。
一方、熟年離婚問題のカップルには精神医療のテクニックの一つである内観療法を奨めるカウンセラー。
一種の記憶再現による自己洗脳である。
人間関係で問題の生じた相手についての記憶をくり返し再現させることで関係改善を目指すというもの。
①相手にしてもらったこと
②相手にしてあげたこと
③相手に迷惑をかけたこと
これを繰り返し思い出し、記述をするのである。ポイントは④相手に迷惑をかけられたこと・・・というあるべき項目がないこと。
①と③は相手に感謝すべきこと、相手に謝罪することで、③は相手が感謝するべきことである。
つまり、相手側が有利になるような構図になっている。相手にとっては正の感情が負の感情に倍するように記憶を操作することによって相手に対する悪意が減衰するという狙いがある。・・・まあ、一種のまやかしです。
しかし・・・夫の俊夫が自分に内緒で他の女と美味しいものを食べていたのが許せなかった妻の静子は夫の書いたノートを盗み読みすることで・・・溜飲をさげる。
妻にしてもらったこと、妻に迷惑をかけたことを羅列している夫が・・・妻にしてあげたことを一つも書いていなかったからである。
もちろん・・・それはそれで・・・問題あると思うが・・・。
世話女房タイプの静子は夫のノートの「妻にしてあげたこと」の欄に「夫にしてもらったこと」を羅列し・・・二人は元鞘に収まるのだった。
まあ・・・男性作家の願望そのまんまです。
一方、ちょっとコミカルなDV夫妻にはカウンセラーは手抜きで対処。
幼児の頃に父親の家庭内暴力に苦しめられた妻は遺伝的に父親の暴力癖を受け継ぎつつ、夫に父親を投影して復讐を遂げていた・・・と読んだカウンセラーは妻にボクシング・ジムを紹介したのである。
腕を磨き上げた妻は夫を撲殺・・・する可能性もあったと思うが・・・妻はボクシングによってストレスが解消され・・・ついにプロボクサーとしてデビューすることが決まり、夫婦円満が回復したのである。なんじゃそりゃーっ。
まあ・・・夫婦喧嘩は犬も食わないというが・・・現代では美味しいビジネスになっているということです。
関連するキッドのブログ『電車男』
『JIN~仁~』
金曜日に見る予定のテレビ『子役オールスターズとハガネの女』(テレビ朝日)『岩佐真悠子のトラブルマン』『里久鳴祐果の大魔神カノン』(テレビ東京)『榮倉奈々の絶対泣かないと決めた日・緊急スペシャル』(TBSテレビ)『紅の豚』(日本テレビ)・・・豚VS榮倉か・・・いい勝負になりそうだ・・・。
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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