親の七光りにはもれなく親バカがついてきます(松本潤)親の心子知らずです(竹内結子)
バカな子ほどかわいいというが・・・溺愛された子供は・・・いい子に育つと同時にどうしてもスポイルされる。
しかし、温室育ちには温室育ちの魅力というものがある。
今回の・・・主人公はかなりダメな奴に育ってしまったわけだが、同時に実にいい子でもあるのだ。
どんな商売でもそうだが、三代続いて漸く世襲の意味が生じてくる。
二代目はまだ・・・成り上がり者の子息にすぎないわけである。
芸能界にはもっと恐ろしい七光りの世界がある。たとえば・・・歌舞伎の世界とか・・・たとえば落語の世界とか。
磨けば光る才能を親の威光が翳ませている・・・それを発掘して研磨する役割のヒロイン。
しかし・・・二人が相思相愛のタイトルバックにたどり着く道筋が全く見えない第1回だったと言える。
一歩間違えれば、「ハタチの恋人」とか「冗談じゃない」とかの逆の轍を踏む可能性もある。まあ、竹内結子(実年齢30才)と松本潤(実年齢26才)は4才違いの女性年上のカップルなのだが・・・なんとなく、8年前には大人だった「ランチの女王」(2002年)とついこの間まで「花より男子」で高校生のペアはものすごく年齢差があるような気もするのである。
二人の運命の出会いもかなりやりすぎで・・・いろいろとお客を逃がす要素をつめこんできた感じがする。
どうしてどうしてそういう球を投げるのか・・・まあ・・・それが「手」なんだからしょうがないよな。
本題に入る前に恒例の週末の視聴率チェック。「ハウルの動く城」19.0%(うわぁ・・・)、「崖っぷちのエリー」↘*7.1%(ひでぶっ)、「うぬぼれ刑事」↘*7.9%(勘弁してくぅ~ださい)、「ハンマーセッション」↘*7.2%(倫理的に崩壊してるからな)、「美丘」↘*8.8%(だから竹取物語は両親役が重要だって何度言ったら)、「踊れドクター」13.3%(ファイヤー!)、「龍馬伝」↘15.8%(ふふふ・・・これが幕末ものの正しい視聴率)・・・ついでに「夏の恋は虹色に輝く」15.8%・・・以上。
で、『夏の恋は虹色に輝く・第1回』(フジテレビ100719PM9~)脚本・大森美香、演出・澤田鎌作を見た。再び、「不毛地帯」の演出家のリハビリテーションである。あの重厚さの呪いを脱するのはなかなかに難しいのだな。今回も・・・ちょっと加減が微妙な部分があった。たとえば・・・スカイダイビングで着地に失敗した主人公をヒロインが助けるシーン。地面までの距離がかなり高いのである。もちろん、ドラマとしてのデフォルメとしては妥当な距離でコメディーとして無造作にあの距離を落下させる登場人物は悪魔的で「ケケケ」という面白さはある。しかし・・・そんな「笑い」をとる必要があるシーンだろうか。下手をすれば骨折する高さから主人公を突き落としたヒロインはその乾いた笑いを獲得したことで何か大切なものを失った気がするのである。
そういう微妙な高さだった。
このドラマにおける主人公はどちらかと言えば、ダメでイヤなキャラクターとして登場する。だから少し荒療治が必要だ・・・という計算も可能だが・・・ここはできればもう少し地面までの距離を押さえて・・・そんなに「危険」ではないのに・・・必要以上に怯える主人公の「ダメぶり」を押すこともできたはずなのである。
宙ぶらりんの主人公を突き落とすヒロインはあくまで「常識の範囲」で命綱を切り、主人公は過剰な自己防衛反応で嘲笑される・・・そういう構図にした方がもっとこのドラマの骨格を暗示できたように思える。
まあ・・・それは実は間違いで・・・まともに見えるヒロインがものすごく破天荒で・・・この後、主人公を緊縛したり、都庁に爆弾を仕掛けたり、オリンピックで金メダルを目指すというとんでもない展開の伏線だとしたら不明を恥じたいと考える。
とにかく・・・主人公の吊るされる位置は後、1メートル低くしておけばよかったというこです。
まあ・・・「不毛地帯」で狂ってしまった常識の範囲はなかなかに戻らないとは思いますが。
ついでに言うと・・・スカイダイビングの遭難のシーンは渾身のシークエンスである。事故死の可能性まで考えると体を張った主人公の名演技はかなり評価されるべきだろう。しかし、ちょっととぼけたアフレコを加えることでかなり安っぽくなり、スタッフが思ったほどにはスペクタクルの効果がなかったと断言できるのである。
さらに遡れば、父親の名誉ある受賞のシーンで主人公の屈折を顕すシーンがある。
万来の拍手の中・・・素直に拍手できない主人公なのだが・・・そこはわかり易すぎて・・・鼻白むものがある。拍手はするが・・・目が冷たい・・・そういう演技を求めるべきだった。
この時点で「大根役者」と「それなりに魅力的な素」というものをもう少し複雑で曖昧なものにしておいた方が・・・「ああ、この子は今ダメな子になってしまっている」というこの回の謎解きが段階的に興味を繋ぐはずである。
主人公一家とヒロインの過去の接点をそれとなく伏せているのだから・・・主人公の感情のもつれをもう少し隠蔽しつつ、話を進めるべきだったのだな。
ついでに言うと、主人公の親の七光仲間である植野(笠原秀幸)と主人公のライバルである成上がり俳優の伊良部(永山絢人)はもう少し、キャラを遠ざけたキャスティングにしてもらいたかった。まあ・・・その点はキッドが若者の区別がつかない・・・という点に帰するが。伊良部が二枚目キャラなら植野は三枚目キャラでよかったんじゃないのか。チビでデブぐらいでよかったと思うぞ。
まあ・・・ともかく・・・それほど破綻のない導入部分でこれだけ穴が見つかると・・・お茶の間でも躓く人が多数いたのではないかと推測できるのである。
楠大雅(松本)は大スター楠航太郎(伊東四朗)と美人女優・真知子(松坂慶子)の次男に生れたサラブレッド俳優である。しかし、父親があまりにも偉大だったために・・・その光が強すぎてくすんでしまっている・・・と自分で考えている男だ。
なにしろ・・・テレビの娯楽時代劇で数十年も主役を張り続け、一方で映画賞を受賞するような名作映画に今もなお主演している・・・なんというか怪物的なスターなのである。
どこか計算高い印象のある兄の大貴(沢村一樹)は役者の道を選ばず、やんちゃな大雅は真っ直ぐに父親の後を追う。演技の勉強の為にニューヨークに留学までした大雅・・・。
しかし、俳優としては鳴かず飛ばずで・・・大物俳優の二世タレントととしてトークショーでお茶を濁す日々である。そして、そこでも頭角を現すわけでもなく・・・「偉大な親をもったために世間に認めてもらえない」と自分を哀れむようになっている。
父親は「俳優としてもっと自由に演じろ・・・」とか、所属事務所の社長は「もう少しハートで演じろ」とか・・・それなりにアドバイスするのであるが・・・結局、苦労を知らない大雅の心には届かないのである。
外国に留学し、演技の勉強をしたとなると講義は基本的には英語、場合によってはフランス語やドイツ語も必要となり、語学でかなり、苦労したはずであるが・・・そういうことが苦にならない天才的能力を秘めているか・・・親がかりで同時通訳付でもあったのか・・・まったく心に深みが感じられない大雅。
なにしろ・・・素人目にも「大根役者」なのに・・・自分では・・・「演技が高級すぎて大衆的ではない」と苦悩している気配がある。
典型的な「自分以外の他人にも心があるとは想像できないお坊ちゃま気質」である。
そのくせ・・・「オレの苦しみは誰にもわからない」と断言である。
趣味のパラシュートの整備ミスで森に墜落した大雅は偶然通りかかった缶詰工場の工員・詩織(竹内結子)に助けられる。
一体・・・あの森の小道の先には何があると言うのだろう。
手荒な救助方法で痛い目にあった大雅は突然、恋におちる。
親にも殴られたことがなかった大雅は失神から回復させるために詩織の放った一撃が愛のムチに感じられたのである。
大雅は自覚はなかったがマゾの素質を秘めていたのだ・・・それ以外には考えられない展開が待っています。
実は・・・過去に楠家となんらかの接点があったらしい詩織。航太郎とはファンとして文通をする仲であった。恐ろしいほどの偶然である。
とにかく詩織に一目惚れした大雅は再会を期待して海辺の街を訪れ・・・浜辺で泣き濡れる詩織を見出して恍惚となるのだった。とにかく、はっきりしたことは詩織が竹内結子ではおなじみの正体不明の女だということである。
役者としては不満を抱きつつもぬるま湯にどっぷりとつかっていた大雅だったが・・・この世の春の終わりは突然やってきたのである。
訃報・・・ベンジャミン伊東の突然の死を悼む小松の親分さん・・・。
大雅の目標でもあり愛すべき父親でもある航太郎はくも膜下出血で逝去したのだった。
息子として追悼番組のインタビューの仕事を命じられた大雅は心乱れて、反発を口にする。
「そんな仕事はしたくない・・・俺は役者なんだ」
しかし、社長(松重豊)は「お前に役者の仕事はない・・・」と突き放す。
「そんな・・・こんなことになったのはみんな・・・父さんのせいだ・・・」
そこへ・・・飛び込んできた詩織。
痛烈なビンタを大雅に見舞うのだった。
「父親の悪口を言うなんて・・・最低。仕事がないのはあなたがヘタクソだからでしょ。あなたの演技はいつでも一人よがり・・・その点、お父さんは人を楽しませることを第一に考えていた・・・そんなこともわからないあなたは・・・役者失格なのよ」
「し、素人のくせに・・・」
しかし、詩織は航太郎が不肖の息子のために詩織に書いた手紙を持っていた。
そこには「私は老い先短い・・・私が死んだら・・・息子のファンになってくれないか」と親バカ丸出しの言葉が認められていたのだった。
とにかく・・・大雅は頬の痛みとともに詩織への愛を深めていくのである。
航太郎の墓地で・・・大雅は心をさらして号泣する。その時、虹が空にかかるのだった。
天国で・・・航太郎が微笑んでいるが如く。
なぜか、その姿をそっと見つめる詩織。
一方、事務所には子役あがりで・・・航太郎とただならぬ関係を臭わせる女優(桐谷美玲)が新たに所属する。その心には「オレまげね」という闘志が秘められている模様。
さらに、詩織は缶詰工場が閉鎖されたために、突然、事務所の事務員として雇用されることになる。
父親の死により、月給という名のお小遣いから突然歩合制に給与形態が変更され・・・手取り2万8千円という激しい現実に眩暈を感じる大雅。
すでに愛し始めている詩織に甘えようとして鉄拳制裁されると・・・詩織への愛は完璧なものになるのだった。
しかし・・・・詩織は一児の母親だったのだ。
幼女から母と呼ばれる詩織を目撃する大雅。
(ママ・・・ママって・・・パパはいるのかい・・・)
薄れ行く意識の中で大雅は自虐的な快感を強く感じるのだった・・・。
おい・・・その方向でいいのか?
関連するキッドのブログ『花より男子』
『薔薇のない花屋』
ごっこガーデン。いつでもレインボーセット。くう「う~ん・・・面白いのかつまんないのか・・・わからない・・・なんだろう・・・なんだか・・・青春の匂いがないと・・・許せないのかなあ・・・あの出会いで・・・恋って芽生えるものなの?・・・それで恋愛ドラマって言えるの~? 考えるんじゃない・・・感じるんだってブルース・リーに言ってもらわないと・・・いけないのかしらーっ。結局・・・詩織は素人じゃないのかしら・・・だって・・・あれだけ磨かれていない大雅の才能を開花させる役なんでしょ・・・月影先生にだって・・・無理そうなのに・・・その上、恋の花も咲かせるの? なんだかよくわからんなーっ」まこ「おおーっ、くうさんの千秋様パンチ炸裂! 一体、詩織はどんな人なのか謎でしゅね~。まあ、結子嬢はいつでもそんな役でしゅけどね~。大雅は苛められるのが好きな特殊な人なんでしゅか~・・・ムフフ」お気楽「スカイダイビングが趣味の人は基本的にどMに決まってるじゃん。パラシュートが開かないなんて想像するだけでいじめみたいなものだもん・・・でも竹内さんになら苛めてもらってもいいかなあ」ikasama4「なぐったね・・・オヤジにだって殴られたことないのに・・・まあ、大雅には大幅な修正が必要ということですな。まあ・・・親が大物すぎて・・・本人が自覚しなくても・・・怨みを買っている場合はある・・・子役あがりとか・・・成上がりとか・・・そういう人々の視線の厳しさに・・・大雅は知らず知らずのうちに萎縮しているのかもしれませんな・・・父親の呪縛からの解放・・・それが裏テーマなのかも・・・それからこの脚本家は必ず男優を惨めな立場にして苛めますよね・・・きっと・・・」
水曜日に見る予定のテレビ『警視庁捜査一課9係』(テレビ朝日)『ホタルノヒカリ2』(日本テレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
>考えるんじゃない・・・感じるんだ
って言って言って、ブルース・リー。。。!
いや~。。。だって本当に笑いもなければウルっともしない
何と言って良いか解らないビミョーな感じだったんですもん。。。(-_-;)
う~ん。。。大森さんに期待しすぎなのかも知れません。
もしかしたら、私が好きだったのは大森美香の脚本ではなくて
山口Pのドラマだったのかも。。。とさえ思ってしまうこの頃。。。
いや、きっと2話目から盛り返すんでしょう!
考えるんじゃなくて感じるのよ~!
投稿: くう | 2010年7月20日 (火) 15時18分
見たことあるような設定に
「親にも殴られたことないのに」って台詞から
主人公とアムロが重なり、松重さんがブライトさんに
竹内さんがブライト+セイラみたいな感じで
すっかり脳内でネタに走ってました。
ま、ラストで殴られた時に
「二度もぶったね」まであればサイコーだったんですが。
でもって、詩織の設定が
細野不二彦の作品「ママ」を思い出し
すっかりドラマそっちのけの妄想です; ̄▽ ̄
それはそれとして
すっかりネタばかり気になってましたが
主人公が独りよがりにその世界に浸っている雰囲気が
ドラマの世界観と合ってて、それはそれで面白かったです。
今更とってつけたような感想ですけど; ̄▽ ̄ゞ
投稿: ikasama4 | 2010年7月20日 (火) 23時05分
松潤、めっちゃMでしたね~。
まあ、Sに当たる竹内結子が凛々しいので良いんですが。
次回予告読んでもう~んな感じの月9.
安全パイを狙ってくるかと思いきや、意外と挑戦的でびっくりしました。
とはいえ大森脚本×竹内ヒロインなので期待はしてます。
投稿: inno-can | 2010年7月21日 (水) 00時39分
ふふふ・・・指先ではなくて
その先を見つめなければ
美しい月を見逃すぞ・・・
とドラゴンは語るのですな・・・。
まあ、時にはそういう長い目が必要な場合もございまする。
大森美香は結構、拙いように見える
ハイブロウを打ってきますからな。
趣味に走りすぎると
一種のちんぷんかんぷんに
なることがございます。
そこに・・・(心情的に)病み上がりの
演出家だったので・・・
なんとなくちぐはぐな感じが
したのではないでしょうか。
美しすぎる景色、
派手すぎる絵・・・。
本当はもっと薄汚れて
繊細であるべき情景を
用意するべきなのでは・・・
とキッドはハラハラしながら見ていましたぞ。
ふふふ・・・このドラマで
「本当に痛いのは誰なのか?」
ここがキーワードになってきそうな予感がいたします。
投稿: キッド | 2010年7月21日 (水) 04時32分
遺伝的には才能に恵まれているのに
心が幼すぎて
それを発揮できない主人公・・・。
アムロを連想するな・・・
というのが無理な話でございますよね。
しかし、コネタに走らずに
寸止めするのが脚本家の矜持ですな。
一方、コミック「ママ」(細野不二彦1987)を
連想するあたり・・・さすが画伯でございますな。
キッドはさらに遡り、
ドラマ「グッドバイ・ママ」(TBSテレビ1976)をば
連想していました。
竹内結子が海で泣くシーンは
YUI「Please Stay With Me」が
ちょっと浮いていて
ここは・・・ジャニス・イアンの「ラヴ・イズ・ブラインド〜恋は盲目〜」だろうと・・・。
妄想していました。
キッドの妄想では・・・
詩織は余命いくばくもない設定です。
まあ、「マイガール」とか
「Mother」とか
亜流はいくらでもあるけれど・・・
主人公ではなく
ヒロイン・ポジションで
その話というのが・・・新しいと思うのですな。
そういう展開なら最終回は号泣確実と思われます。
ま、あくまでも妄想ですけどーっ。
まさに先走りしすぎーっ。_| ̄|○
投稿: キッド | 2010年7月21日 (水) 04時47分
「花より男子」ではとんでもハッピーエンドを
迎えた松潤。
「薔薇のない花屋」では娘のいる男を愛した竹内結子。
流れから言えば・・・立場逆転の気配があります。
竹内結子は娘のいる母親となり・・・
そうなると松潤には悲恋が待っている。
最後は父親以上の名優の道を歩み出す大雅・・・。
その手には忘れ形見となった海ちゃん(小林星蘭)の手が・・・。
まあ、エロ男爵は彩りですな。
それでいいと思うのです。
もちろん・・・そうなったらいいなあという話です。
投稿: キッド | 2010年7月21日 (水) 04時55分