欲しがりで甘えん坊な妹(加藤あい)と優しすぎる姉(中谷美紀)の聖なる歌
原作者は・・・東女中高から上智大という・・・そこそこお嬢様を連想させる学歴である。
世代は違うが、同じ上智出身の野田聖子議員の「何が何でも実子が欲しい」的不妊治療騒動を連想させるキャラクターが登場することがなんとなく気になったのである。
そういうことを「あさましい」と感じるかどうかは・・・性差に始まる個人差にもよるだろうが・・・キッドはなんとなく・・・「哀れ」を感じるのである。
「血縁」もフィクションにすぎない・・・と思考することは逆に「哀れ」なことなのかもしれないが・・・理性的ではあると考える。
「臓器移植」の物語の裏で「代理出産」の物語である。
親のない子のあふれる世の中で「わが子」にこだわることを「あさましい」と感じないことは美しいとは言えないのではないか・・・もってまわった言い方で眉をしかめています。
科学が進歩し、不可能が可能になる。だが・・・それが誰かの幸福を他の誰かが奪取する方向に進捗しないことを悪魔は全く保証できないものですから。
で、『聖なる怪物たち・第1回』(テレビ朝日20120119PM9~)原作・河原れん、脚本・荒井修子、演出・藤田明二を見た。脚本は『モップガール』で頂点を極めたのか・・・その後は変態が過ぎて結構、苦労しています。演出は『黒革の手帳』で一発あてた大ヴェテランだが、そのあと、けものみちだのわるいやつらだの夜行の階段だの柳の下の泥鰌を求めてドロドロになっている果てに『 ジウ 警視庁特殊犯捜査係(2011年)で少し我を取り戻してここである。しかし、もう、演出のタッチがドロドロしなければにっちもさっちもブルドッグな体質になっているらしい。
キャスティングは豪華なのだが・・・どのドラマだってもはや豪華な時代だから・・・なんともはやである。
とにかく・・・若くて有能な看護師長の優佳(中谷)が路上で飲食していると思わず「しぃばぁたーっ」と誰かが心の中で叫ぶ楽しみがあります。
そういう意味では優佳の妹・圭子(加藤あい)が「私の赤ちゃんを返してっ」と叫ぶと・・・こけしか、まだこけしなのか・・・とうっとりすることもできますし・・・。
優佳の同僚の看護師・瑶子(大政絢)はまだ20歳なのに25歳でキャスティングされてて「正義の海は泳がせない、私の錨で沈みなさい!」と叫びたいんじゃなかと思ったりして。
もう・・・いいか。
いゃ・・・やはり、どうやら、代理出産の母となり・・・出産死亡することになるような気配が濃厚の幼稚園教諭・三恵(鈴木杏)はまだ24歳なのに昔の・・・輝かしい過去の栄光についに終止符がうたれたのだと実感するとともに・・・減量しないですむ役柄かよっとつっこむことだけは許してほしい。
さて・・・嵐の夜。一人の妊婦が診療予約なしのとびこみで大久保病院前の路上で発見される。若き医師・司馬(岡田将生)は看護師長の優佳に励まされ初めての帝王切開で胎児を救うが…母体は周産期死亡率47/10000の分子を引き上げる結果に終わる。
母のない子の誕生である。
実は司馬もまた・・・産褥死により母を失った子供だった。
しかし・・・その子供には出生の秘密があったのだ。
そして・・・物語は1年前にさかのぼる。
日本には別格の上流社会である皇室家族がいるわけだが・・・一般人も上昇志向の強い世代交代が続けばそれなりのエスタブリッシュメント(特権階級)に位置することができる。
基本的に成り上がりなので・・・その言動は下賤なものになるわけだが・・・もちろん・・・それはテレビドラマが大衆娯楽である以上、さらに強調されるのである。
そのはしくれであるらしい慶林大学医学部教授の塩野(山田明郷)に疎まれた司馬は系列の大久保病院に左遷される。父(平田満)は理容師であり、後ろ盾のない庶民としての司馬には抵抗の術はないのだった。
しかし、司馬はそれを恨みに思うこともなく・・・貧乏病院と揶揄され、経営能力がないと批判される二代目が院長(小日向文世)を務める大久保病院で職務に励むのである。
そんな司馬を厳しく叱咤するのが両親死亡後、施設で育った上に年の離れた妹を大学進学させた賢女である看護師長・優佳だった。
そんな姉に育てられた才色兼備の妹・圭子は慶林大学とも関係がある日向財閥の会長の息子・敏雄(長谷川博己)に見初められ・・・できちゃった結婚で玉の輿に乗るのだった。
敏雄は幼稚園などを経営する聖応育英会の理事長であり、圭子は副理事長におさまっていた。
敏雄には前妻があり、実子もいて・・・圭子は前妻の憎悪の対象になっているのは明らかだが・・・自分も妊娠しているので一安心していた「略奪愛の女」圭子だったが・・・結婚式当日に流産、しかも子宮を摘出し・・・子供の産めない女になってしまう。
圭子の張りつめた精神は崩壊しかかるが・・・そこに「カッコーの子育て」の啓示があるのだな。
つきつめていえば・・・男性というものは自分では出産できないから・・・女性の身体を利用しているという考え方もあり・・・それが男尊女卑の時代には「女の腹は借り腹」などという表現に結実するわけである。
いくら・・・言い繕う者がいても「代理出産」にはそうした陰惨な差別状況が付きまとうのである。
だからといって利害関係が一致して・・・それが行われる場合、売春と同様に絶対的な悪とは言い切れない側面ももちろんあるだろう。
ともかく・・・妹から「代理母になってくれ」と懇願されても「日本では適法ではないから」と一度は否定した姉が・・・妹の置かれた状況を感じ取るとただちに方針転換するのは・・・所詮、人間はやりたいようにやるものと相場が決まっているからなのだな。
圭子の卵子と敏雄の精子は様々な困難を越えて巡り合う運命にあるらしい。
そういう因果な物語が開幕しました。まあ・・・もう・・・ドロドロするよね。
ともかく息子の治療費を払わずパチンコに興ずる母親(西慶子)を張り倒して鬱憤を晴らす優佳は・・・世界を敵に回しても妹を守る覚悟なのだな。
美しい・・・美しいぞ・・・春日井姉妹。
関連するキッドのブログ→仁は摘出(大沢たかお)万華鏡のバラード(中谷美紀)辻褄も結納も水に流してくださりませ(綾瀬はるか)
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コメント
ともすると昼メロに近くなりそうな世界観ですが、紙一重で
ステキなドロドロサスペンスに留まっている気がします^^
そーですかー・・・演出は「ジウ」の方でしたか。
それは・・・・・・一抹の不安を感じます^^;
まぁ、岡田くんも等身大の適役を上手くこなしている感じだし、
これは、今後に期待したいです。
最後になってメタメタにならない事を望みます(-人-)
投稿: くう | 2012年1月21日 (土) 17時42分
❀❀❀☥❀❀❀~くう様、いらっしゃいませ~❀❀❀☥❀❀❀
上流社会と庶民の社会の断絶。
割り込もうとするものと
清く貧しく美しく生きていこうとするもの。
様々な立場の思惑が混然一体となっていく・・・
そういうドラマはそれなりに面白いのですが
一歩間違えると一方通行のドロドロドロ団子に
なってしまうのですな。
まあ、キッドの場合・・・歴代のお気に入り女優全員集合みたいな感じなので
うっとりと見ているだけでもいいかな・・・
と思ったりもしますぞ~。
まあ・・・演出家はもう
オーソドックスにドロドロさせるだけだと思うので
脚本家がどれだけ成長しているか・・・
そこにかかってくると考えまする。
もう一人、時効警察も書いてた脚本家が
控えているので
そのあたりのチームワークも
少し楽しみですな。
テーマは掘り下げれば
かなり深刻なものですので
そのあたりの加減も
注意深く見つめたいものです。
まあ・・・できれば
違う枠だともっと良かった・・・
と極私的には思うわけですがーーーーーっ_| ̄|○
投稿: キッド | 2012年1月21日 (土) 20時57分