フリーターには向かない職業(松本潤)
松本潤主演なのだが・・・瑛太とのダブル主演といってもいいような感じで・・・これが刑事ものなら「相棒」と言うか「噂の刑事トミーとマツ」である。
「探偵もの」というジャンルは古くからあるわけだが・・・ストレートに探偵が主人公の連続ドラマとなると・・・記憶に残るドラマはかなり時間を遡上しないと該当作がない。
変化球なら前クールにも深田恭子の「専業主婦探偵~私はシャドウ」とか、栗山千明の「秘密諜報員エリカ」の二本立てがあったわけだが・・・なにしろ「女には向かない職業」なのである。前者は主婦が夫の浮気調査のために「探偵」になってしまうし、後者は元シークレット・エージェントの主婦が探偵社でパートするという設定で・・・素人探偵とプロフェッショナルすぎる探偵の差があるものの「探偵もの」としてはかなりの変化球なのである。
もちろん・・・数多くの刑事ものも「探偵もの」のバリエーションと考えることができるが・・・やはり公務と私企業の仕事では越えられない一線があるのだな。
そう考えると「私立探偵 濱マイク」(日本テレビ系2002年)は「探偵もの」のひとつの基準である。「私立」というところがポイントなのだな。公立の探偵なんていないのに私立というところがいかがわしいのである。視聴率的には大惨敗したドラマだが・・・「探偵もの」としては貴重な一品で・・・回によってはかなり面白かったりしたのである。
もちろん・・・松潤には「金田一少年の事件簿」(日本テレビ2001年)があるわけだが・・・この少年探偵は「職業探偵」ではない・・・やはり、変化球なのである。
だから・・・先行作としては松田優作の「探偵物語」(日本テレビ系1979年)に触れないわけにはいかないだろう。ここで登場する探偵は「明智小五郎」と同様の職種についている・・・純然たる探偵である。だが・・・「ラッキーセブン」の先行形としてはやや異質なのである。「探偵物語」は個人プレーの物語だからだ。
そうなると時計の針はさらに逆回転して・・・ついに萩原健一と水谷豊が修(おさむ)と亨(あきら)の名コンビを組む・・・「傷だらけの天使」(日本テレビ1974年)に到着する。
ここでは探偵事務所がチームとして機能していたのである。経営者(岸田今日子)や上司(岸田森)、さらには受付嬢(ホーン・ユキ)もいて・・・事件に対応していくというスタイルである。
「ラッキーセブン」は実はこのタイプで・・・松潤と瑛太はおさむとあきらのバリエーションなのである。上司や受付嬢は分化したり増殖したりして増員しているがその他の人々として処理できる。そして経営者である松嶋菜々子は岸田今日子なのである。まあ・・・まだまだ若いのでドス黒いともいえる怪しさは不足しているのだが・・・「家政婦のミタ」からここなので・・・余計にノーマルな感じに仕上がっているのかもしれない。
そこがものたりない感じがしないでもない・・・たとえば今回なら・・・単に警察に通報して人助けではあまりに甘口で・・・裏ではこっそり儲けを追求している菜々子の油断のなさのテイストも欲しくなるのだな・・・けれど、まあ・・・キッドは松嶋菜々子と松潤と言えば「花より男子」の道明寺姉弟だから・・・松潤が菜々子を口説くと擬似近親相姦のムードになるわけで・・・そこで怪しさを補完しています。・・・それは必要不可欠なのか?
で、『ラッキーセブン・第1回』(フジテレビ20120116PM9~)脚本・早船歌江子・野木亜紀子、構成・演出・佐藤信介を見た。演出は映画「砂時計」(2008年)や「GANTZ」(2011年)の監督で、シリーズ構成という任も担っている。作品全体に漂う「軽い感じ」はこの指揮者の「エンターティメントに徹した姿勢」によるものなのだろう。そういう意味では「その他のなにか」を求めるような高望みはできないのだな・・・もう、「見て楽しむ・・・それでいいじゃないか」・・・これにつきるドラマなのだ。それも職人技で・・・もちろん、たまにはこういう作品もなくてはならないよな。なんてったって娯楽なんだから。
「やさしくってちょっとバカ」な時多俊太郎(松本潤)はフリーターで将来のことよりも人妻(松本若菜)との情事に夢中なプレイボーイ気取りの・・・ある意味・・・社会的なゴミ人間である。まあ、でも若いのだからしょうがない。不倫が時には殺人と同じくらい深刻な罪であるなんて誰も考えたりはしない世界の人間なのである。一流商社に勤務する妻子のある弟(小山慶一郎)がいて俊太郎の母親(岡江久美子)は一安心なのだが・・・長男を見る目にはバカな子ほどかわいいニュアンスとかなりの不安が浮かんでいる。
そんな俊太郎の刹那の「お楽しみ」を粉砕するのが・・・北品川ラッキー探偵社のみなさんである。
夫からの依頼を受けた「浮気調査」でベテラン探偵・旭(大泉洋)、エース的存在の輝(瑛太)、探偵ピンクの飛鳥(仲里依紗)が包囲網を形成し・・・「浮気現場」を押さえられた人妻は「もう電話してこないで・・・主人にばれて大変なのよ」状態に突入である。俊太郎は欲望の捌け口を失って怒髪天をつくのである。
しかし、縁は異なもの味なものの法則に従い、トーストを咥えた俊太郎は通学途中で輝に遭遇・・・独特の追跡力を見せて・・・ついに北品川ラッキー探偵社にたどりつく。
社長の瞳子(松嶋菜々子)はキャリア8年で肉体派の輝を逃がさない脚力と・・・他人の妻を寝とって良心の呵責を感じない無法者気質、そしてそれなりに達者な口など・・・俊太郎の素質を一瞬で見抜き・・・即時、採用に踏み切るのである。
犬(松潤)と猿(瑛太)の犬猿コンビ誕生の瞬間である。
犬の初仕事は「消防士の兄(水橋研二)が同僚を殉職させてしまい退職・・・以後行方不明なので家出人捜索してください」という松浦茉菜(緑 友利恵)の依頼による失踪人捜索である。
探偵としては・・・地道な捜索手順があるのだが・・・自由人である俊太郎は張り込みひとつとっても耐えられず待機命令中に「おしるこドリンク」を買いに行っちゃう不始末なのである。
しかし、「新人くん」のやることなので大目に見る先輩たちだった。今年もたくさんのゆとりの社会人が入社してきます。サラリーマンの皆さん、心の準備はいいですかモードなのだな。
さて・・・複雑な手順は省いて・・・松浦兄を発見する探偵チーム。
彼は自暴自棄になり、自殺も考えたがそれもできずに・・・地下格闘技の世界で殴られ屋になり・・・誰かに殺してもらおうと決意していることが判明する。
探偵業務はここで終了である。
しかし・・・素人の俊太郎は松浦妹を口説こうと考えているので・・・もやもやするのである。
「このままじゃ・・・彼女に感謝されないじゃないですか」
気のいい探偵たちは・・・新人のわがままを受け入れるしかないのであった。
ただ一人・・・旭だけは警視庁北品川警察署の桐原警部補(吹石一恵)に地下格闘技場での賭博行為を通報してお手柄にしてもらい高感度をあげようという下心があります。
早速・・・いかにもな現場に潜入する探偵たち。
ここで、飛鳥は探偵ピンクとしてVIPルームに入るためのお色気作戦を展開するのだが胸元のアップさえなし・・・である。ゼブラークイーン・・・出し惜しみかよっ。
まあ、サービス、サービスするのは男性客にではなく女性客なのですな。
なにしろ・・・「殴られ屋の松浦兄の命を救うために通報を受けた警察が突入するまでの時間稼ぎとして犬と猿が半裸で肉弾戦」に突入である。
もう、男の裸に目がない一部愛好者は釘付けなのだな。
試合の結果は格闘技経験者の猿によるKO勝ちだったが・・・犬もそれなりの根性をみせて・・・犬と猿にはほのかな友情の兆しが芽生えるのである。警察が突入して地下格闘技場は摘発され・・・職を失った松浦兄には・・・精神的な回復の色が見えるのだった。
俊太郎の甥である翔太(後藤奏佑人)はドラマ中ドラマ「私立探偵・真壁リュウ」(主演・谷原章介)に夢中である。探偵になったおじを尊敬の眼差しでみつめるのだった。
もちろん・・・俊太郎が松原の妹を食べちゃったことは言うまでもないのだな。
今回の教訓・探偵は質問に素直に答えてはいけない。
関連するキッドのブログ→雪山遭難スペシャル第一夜、井上真央はありえないつーの連発で怒涛のハッピーエンドに到達するのです。
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コメント
「33分探偵」は?「三代目明智小五郎」は?
…って深夜枠のゆるドラばかり^^;
いや、私はこれはただ単純に面白かったです。
>もう、「見て楽しむ・・・それでいいじゃないか」・・・これにつきるドラマなのだ。
…と私も思いました。
何か、お涙頂戴を引っ張られるのは好きではないし、実際この手のドラマは
ターゲットの身の上にストーリーを乗せるとそうなりがちなので
私としては、これでOKです。
中身のない恋愛ドラマよりは中身のない探偵もの・・・
という感じでしょうか。
楽しゅうございました^^
気楽に見ようと思います。
投稿: くう | 2012年1月17日 (火) 19時51分
❀❀❀☥❀❀❀~くう様、いらっしゃいませ~❀❀❀☥❀❀❀
二時間ドラマにはルポライターから家政婦まで・・・
素人探偵はウヨウヨしているわけですし、
主演ではないにしろ
上戸彩の『ひと夏のパパへ』(2003年TBS)の
調査員・桐島薪平(北村一平)とか
『白夜行』の刑事引退後の笹垣潤三探偵とか
哀愁ある探偵もいますよねえ。
本当に・・・みなさん・・・探偵がお好きなようで。
特に「少年探偵団」のように「ごっこ」の匂いのする
「探偵」には何か強烈な吸引力があるようでございます。
その延長線上には「探偵学園Q」とか「左目探偵」とか「探偵家族」とか「探偵ナイトスクープ」とか・・・それは違うな。
探偵ものに準ずるものに
泥棒ものというか怪盗ものがあるわけですが
要するに順法精神に縛られたテレビドラマの
限界がひとつあるわけです。
探偵は「盗聴」もするが
「盗聴器発見」もするというグレー・ゾーンで
なんとか生息するわけです。
基本的にはお上(司法組織)の暴けない悪を討つ
という大義名分がないとさしさわりがあるわけでございます。
キッドとしてはちょい悪でいいから
世の中の巨悪をおちょくるような
そういうテイストもあればいいと思うのですな。
「カリオストロの城」の
峰不二子と銭形警部みたいな・・・。
「あーっどうしたことでしょう。偽札がこーんなに~」
テイストと申しますかね。
まあ、とにかく・・・軽いエンターティメントとして
心行くまで楽しみたい「ラッキーセブン」
これに尽きると思う今日この頃です。
松潤も久しぶりに当たりをひけてめでたしでございますしね。
投稿: キッド | 2012年1月17日 (火) 23時33分