テレサ・テンに麻丘めぐみまぜんなよっ。
おいっ・・・今日は谷間じゃないぞ。
いや・・・もう、普通に面白いだろう。だから任務終了じゃないのか。
いや、それは、もう単にキッドが病みつきになっているだけだろ・・・まだまだお茶の間は・・・。
そうなのかっ。
本当はジュリーのサムライで行きたかったんだけどな。「片手にピストル、心に花束、みぞおちにエルボー、息ができない・・・」(山下智久)で。
ネタつめこんだからな・・・少なくとも二回分はあったよな。
いや・・・この脚本としてささくれだってるところが持ち味なんだよ、きっと。
それにしても「アキハバラ@DEEP」(2006年TBSテレビその他)のユイ(本上まなみ)と設楽ヲタ(設楽統)が子供まで作っていたとはな・・・ってユイはオーバー・ドーズで死んだだろうっ。あ・・・これはネタバレか・・・何を今更・・・キーワード作戦かっ。
まあ・・・とにかく・・・このドラマの井原家と岩田さん以外の男たちは・・・とにかくダメダメなんだな。
まず・・・一人目の教師・川原(黄川田将也)・・・鬼畜だな。元宝塚のトップスターなみの美貌の妻と幼い娘がありながら教え子と淫行なんて・・・条例次第で犯罪者じゃないかっ。通報したら逮捕されちゃうレベルだぞ。しかも、そこはスルーなのである。さすがだ。さすがは「エンプラ」(どこを略してんだ)・・・。
そして二人目・・・49日の長田店長(設楽)。母親(吉行和子)の言いなりで交際している女性(本上まなみ)と手を切るとは・・・母子依存にもほどがあるだろう。「ふぞろいの林檎たち」(1983年TBSテレビ)かっ・・・いや、悪い姑は佐々木すみ江だ。吉行和子はいい母ちゃん。・・・もう、いいぞ。
とにかく・・・ダメダメな男たちはとことんスルー。それがこのドラマのポリシーなのだな。
そこは、まあ、もう、妄想で補完するしかないでしょうな。・・・あ、じいや、もう来たの?
まあ・・・他にも目ざとすぎる健人(反町隆史)の件もお茶の間がツッコミ・エリアに殺到してましたな。
目ざといというか、ミラクルなバッタリ能力って言うか。
すべては運命のなせるわざですな。量子論的にご説明申し上げますか?
・・・あ、いいです。本題に行きます。
で、『最高の人生の終り方〜エンディングプランナー〜・第6回』(TBSテレビ20120216PM9~)脚本・渡辺千穂、演出・川島龍太郎を見た。まあ、今更なんだけど・・・この街の季節は二月なのに・・・どこか春めいてる感じがします。でも、先週は桃子がパレンタイン・デーのチョコレートを作ってたわけだしね。今日の東京は夕方から小雪が降ってたし、本当はとても寒い感じ。あ・・・今週はもういきなりなりきりモードなんで・・・ヨロシク。
で、俺は業務の合間を縫って、末っ子の桃子(大野いと)を尾行して・・・またもや見てはいけないものを見てしまったんだ。出た・・・担任の先生、妻子持ちっ。しかも先生の奥さん(白羽ゆり)は「夫と教え子のただならぬ関係」をうすうす気がついている表情をしている。こりゃ・・・修羅場かよっ・・・と思ったけど・・・桃子は歯をくいしばって耐えた。そうさ・・・本当は桃子も・・・誰かを傷つけたくてふーらりふーらり愛を捜してたわけじゃないんだもんな。
とにかく、今回は徹頭徹尾「愛、テキサス」なんだな。
業務に戻った俺が、「葬儀の井原屋」の業務用車両で信号待ちをしていると、でたっ、謎の少年、友也(藤本哲哉汰)くん。そして・・・その後ろからは母親みたいな人が・・・。っていうか、友也くん・・・幽霊じゃなかったんだな。
帰社っていうか帰宅すると、家では早くも雛祭りの支度である。花屋の夕子(磯野貴理子)さんや弁当屋の弥生(橋本真実)さんも雛人形の飾り付けの手伝いに来ている。
出入りの業者なので「豪華ねえ」などとお世辞を言ってくれるのだが、上の妹の晴香(前田敦子)が「家は休日が普通の家のようにはとれなかったので・・・家に飾る雛人形が家族サービスだったんですよ」などと応対しているところに・・・かなり複雑な気持ちの桃子が居合わせる。桃子の雛人形はちょっとスケールダウンしているのだな。片手に渡せなかったバレンタインデーのチョコレート、雛人形は姉より安めなのである。一言多い夕子さんは「どうしても二人目になると・・・小さくなっちゃうのよね・・・いやいや、変な意味じゃなくてね」すると弥生さんは「そうそう飾るスペースもないしさ」・・・弥生さん、なんのフォローにもなってないですって。
しかし・・・そういう蟠りを通りこして妹の愛は怒りを伴って携帯電話にたたきつけられるのだった。
「ただの生徒あつかいなんて・・・ひどい・・・土日はおとまりしてくれなきゃ・・・許さない」
もちろん・・・メールの内容は後でこっそり俺がチェックしました。
兄として・・・人間として・・・ダメって言いたいところだけど・・・年頃の妹の扱いに・・・俺は自信がない。大体、やめろって言われてやめられるようなら最初からやらないことだものな。
健人兄ちゃんなら・・・どうする?・・・いい加減、帰ってきてくれないかな。
ともかく、俺は先生の家に仕掛けた盗聴器で・・・不倫教師とその妻の会話を盗聴するのだ。もう・・・俺は探偵かっ。
「今度の土日・・・サークルの合宿に付き添い頼まれちゃって」
「え、今週はしおりの雛人形を買いに行くって約束してたでしょう」
「そんなこといっても」
「今年は絶対に買いたいの?」
「わかってるよ・・・そのうちに」
「パパ、ママ、ケンカちてるの?」
「・・・ちがうよ・・・お話ししてただけだよ~」
呑気な会話に聞こえるが・・・実は・・・奥さんの川原彩さんが・・・「今年」にこだわるのはそれなりの理由があったんだよ。もちろん・・・毎週、誰かが死ぬのがお約束みたいになっているのでどこかで「フラグたった」の大合唱があったと思うんだけど・・・そこは一筋縄ではいかないこの物語。すかしてくるよ、きっと。とにかく、甘酒とか雛あられとかぶっかけチャンスがいたるところにあるからドキドキするよね。
で・・・夕食です。またまたぶっかけチャンス。しかし、弟の隼人(知念侑李)はあれから、すっかり毒気が抜けたみたいになって・・・家事を手伝ったり・・・まるで枯れてしまったみたいでちょっと心配なんだよね。一方、桃子には妻の説得に成功した不倫教師からお誘いメール着信である。にんまりする桃子。
「私、週末、泊まり込みで試験勉強するから」と桃子が似合わない嘘をつくと・・・晴香は濃い疑いの眼差しを注ぐのだった。まあ、明らかな嘘だとわかっても知らないふりをするしかないってことはあるよね。とにかく・・・喧嘩が始らなかったので俺と隼人はほっと胸をなでおろしたのさ。
そして・・・桃子と先生は不倫旅行に出発した。東京直下型地震発生の確率よりずっとありえない低さの出会いが発生するんだ。でもね・・・昔から、こういうことを「悪いことはできない」って言うんだな。
とにかく、たまたま・・・人手不足が発生して・・・漁の手伝いをしていた健人兄ちゃんが海辺のホテルにチェック・インする二人を発見してしまったわけだ。なんだか、神の手で止まっていた心臓をピンポイント直撃するみたいな出来事だけど・・・そういうことだってあるんじゃないか。ほら、昔からこうも言う。「世間は狭い」って。
健人兄ちゃんは大人だから、一目で二人の不適切な関係を洞察してしまうんだ。すごいな、兄ちゃん。
「・・・お兄ちゃん」
「桃子、お前・・・親父になんて言って出て来たんだ」
「お父さん・・・死んだよ」
「なんだって」
そこへ・・先生の娘の保育園から電話がかかってくる。
「え・・・妻が娘を迎えに来ないって・・・そんな」
なんと・・・先生の奥さんが失踪してしまったのだった。
「桃子ちゃん、桃子ちゃんのお兄さん、すみません・・・とにかく・・・いろいろと大変なので・・・失礼します」
「えーっ、先生帰っちゃうの?」
「先生だとっ」
とにかく・・・こうして・・・健人兄ちゃんは「親父の死」と「妹と先生の不適切な関係」を同時に知ることになったのだった。そうなんだよ・・・兄ちゃん・・・井原家は大変なことになってるんだよ。昔から言うだろう。「すべては神様のお導き」だって・・・。まあ、少し、導きすぎと思う人もいるかもしれないけど・・・このドラマではまだまだ序の口だからね。覚悟しといてほしいな。
桃子と健人兄ちゃんが神様に導かれまくっている頃、葬儀の井原屋には転落死した長田さんのお母さんが来社していた。長田さんの四十九日の相談に見えたんだ。クリスチャンの人のために説明しておくと・・・仏教では死後、七日ごとに七週間に渡って法要をするんだよ。この間に死者は生と死の中間に存在すると信じられていて、中有とも言うんだ。生を陽、死を陰と考えると陰に至る間ということで中陰とも呼ぶんだよ。もちろん、晴香に教えてもらうまで・・・俺も知らなかったんだけどね。どうして・・・七という数字なのかって言うと仏教発祥の地インドでは・・・七進法が使われていたからなんだって。で、とにかく、初七日から始まる七日ごとの法要は満中陰となる四十九日で一応のけじめがつくわけ。
だから・・・四十九日の法要は大切な儀式になるのさ。
だって死者がこの世からあの世に正式に引っ越すわけだから。まあ・・・あくまでそういう信心のあり方の話だけどね。
ふと長田さんのお母さんが「あの・・・友也くんは元気にしていますかね」と口にしたのもきっと仏様のお導きなんだよね。そうそう・・・言っておくけど・・・葬儀屋は宗教宗派は問わずに営業しているので神様だろうと仏様だろうと大歓迎なんだ。
さすがにアラーの神は・・・まあ、いいか。
とにかく、俺の葬儀屋魂にピンと来たんだ。これは身を尽くすチャンスだってね。
さっそく・・・友也くんの家を訪ねると・・・相変わらず・・・友也くんは俺に対して父の仇モード。一体、どうやって俺と長田さんの関係を知ったんだろう。まさか・・・坂巻刑事(榮倉奈々)があることないことしゃべってるんじゃないだろうな。
で・・・友也くんの母親である今野みづきさん(本上)に事情を聴こうとしたんだけど・・・。
「あの人と私たちは何の関係もありません・・・」と口を閉ざされてしまう。
仕方なく、仕事が終わって・・・一人でイスをくるくる回している坂上刑事をゲットだぜ。
まったく・・・最近、台車に乗せてあげないんで欲求不満で一人クルクルなんて。
「何言ってんの・・・誰がいつ自慰行為をしたって言うの?」とうらみがましい目をする坂巻刑事からざっと事情を聴いたんだ。
「保険会社の探偵から照会があったのよ・・・長田さんが自殺なのか・・・事故なのかって・・・長田さん・・・友也君を受取人にした多額の保険に入ってたの・・・まさかと思うけど・・・保険金殺人かもと思ってちょっと探りをいれたの。そしたら・・・友也くんの母親は昔、長田さんと交際していてね・・・友也くんは実の子供だったってわけ。ま、未婚の母なんだけどね。彼女」
なんと・・・じゃ・・・長田さんは・・・実の子供だと知っていて・・・友也くんとキャッチ・ボールをしてたのか。
「どうもね・・・未婚の母のみづきさん・・・昔は風俗関係で働いていたらしいの。で・・・二人の仲を引き裂いたのは・・・長田さんのお母さんらしいわ・・・つまり、息子の嫁にはふさわしくないってこと・・・」
「じゃ・・・友也くんのこと・・・長田さんのお母さんは・・・」
「自分の孫だって知っているのよ」
俺の頭の中をぐるぐるとありえなかった世界が渦を巻いた。
長田さんとみづきさんが結婚していれば・・・。三人家族であれば・・・。友也くんと長田さんは屋上でキャッチボールをしなかったかも。俺が追い込むような不成績はあげなかったかも。ボールを取りにいかなかったかも。みづきさんが身をひかなかったならば・・・。長田さんが母親に逆らっていれば・・・。長田さんのお母さんが結婚に反対しなければ・・・長田さんも死なずにすんだかも。長田さんのお母さんは一人ぼっちにならずにすんだかも・・・。
だが・・・過ぎ去った時間は改変できないのだ。だけど・・・未来は変えられるんじゃないか。
もちろん・・・ドジで死んだのは長田さんだけど・・・もう長田さんには責任のとりようがないもんな。
もしも二人が別れずにいたら友也くんも・・・長田さんのお母さんももっと幸せになれたかもしれない。でも、そういう未来を願うことはできるはずだよね。
「その通り・・・」
おっと岩田さんの登場だ。
「犬が餌を見つつお預けに耐えるように・・・生と死の間で・・・その人は待っているんだ・・・残された人が少しでも幸せになることを・・・おあずけの状態なんだ。なにしろ・・・手も足も出ないんだから・・・なあ」
俺は感じたんだ。じっと自分の母親や・・・自分の息子を見守る・・・せつない視線を。
そりゃあ、心も残るだろうさ。そして・・・俺は長田さんの残された願いを叶えてあげたいと心底思ったよ。だが・・・その前に家庭問題も片づけないといけないんだな。
まったく・・・後先考えずに人の結婚に反対したり、人の結婚生活を欠き乱したりして・・・人の道を踏み外してもろくなことにはならないと神も仏も言うだろうに。まあ、逆のことを悪魔が言うからドラマが成立するんだけどね。
まあ・・・やることやってる時、人はきっと神も仏も悪魔のことさえ・・・考えないわけだけど。
ここで恒例の親父の遺言チェック。末っ子の桃子に親父が遺した言葉は・・・。
全てが手に入ると思ったら大間違いだ。世の中には道理というものがある。
親父・・・大変だったな。何もかも知ってたんだな。そりゃ・・・心臓も止まるよな。
仲良く餃子を包む晴香と隼人。
今日はのんびりと三人で一家団欒か・・・と思っていると桃子が健人兄貴(反町隆史)を伴って緊急帰宅である。
「勉強会はどうなったのよ・・・って、健にいちゃんっ」
「兄貴、今まで・・・何やってたんだよ・・・」
「すまない」
家族の質問を背に親父(蟹江敬三)の仏前に線香を上げる兄貴。
何がどうなってるのか・・・わからないが・・・とにかく、健人兄貴が帰ってきて・・・俺は心の底から安堵したんだ。もう、桃子のことは・・・兄貴にまかせたい気分。
「健にいちゃんが帰ってくると知ってたら・・・もっとごちそうにしたのに」という晴香。
しかし、兄貴は「何言ってんだ、充分ごちそうじゃないか・・・うん、うまい」である。
なんだか、家族がそろうってことがこんなにうれしいとは予想外だよ・・・と思っているのもつかのま・・・晴香の桃子への追及が始まった。やはり、健人兄ちゃんが帰ってきたので安心してつっこめると思ったにちがいない。そりゃ、俺だけじゃ・・・不安だものな。
「家庭のある人と付き合うなんてよくないことなのよ・・・まして先生とだなんて」
「何言ってんの・・・お姉ちゃんなんて恋愛経験もないくせに、わかったようなこといわないで」
「なんですってー」
「ふん、処女が何言ったって説得力ないっつーの」
「い、いつ、言った、私が処女だっていつ言ったっ」
「・・・まあまあ、お姉ちゃんたち・・・今日のところは・・・」
「なによ、自分だって、キャバ嬢に貢いで殺人犯と間違われたくせに」
「え・・・(兄貴絶句)」
「・・・うひゃあ」
止めに入った隼人は晴香に軽く振りはらわれて転倒である。
すでにつかみあいに突入した晴香と桃子に健人兄貴が割って入る。さすがだ。兄ちゃん。
しかし、その時には麦茶を手にした桃子。ぶっかけタイムである。健人兄ちゃんは晴香を身を挺して守ったのだ。
「なにやってんだ」
「なによ・・・健兄ちゃんだって・・・肝心な時にはいなかったくせに」
「うん・・・きついな・・・」
「それとあんたの不倫とは関係ないでしょ」
「うるさいなあ・・・私の勝手でしょ」
「勝手ってなによ、胸ばっかり大きくなって頭がからっぽのくせに」
「あーっ・・・うらやましいんだーっ」
「きーっ」
ふたたび、格闘モードにはいる二人。ここは俺の出番。真人-桃子-健人-晴香-隼人の扇を完成させねばならない・・・って桃子のエルボー・スマッシュ炸裂。俺の鳩尾直撃ーっ。
・・・あ・・・息ができない、へへっ・・・おっちゃんよ・・・くらっちまったぜ。
き、きついのをな・・・。
「たて、たつんだジョー・・・」
そこでゴングが・・・いや電話のベルが鳴った。
「おい、誰か電話に出ろ・・・ぶっかけタイム終了ーっ」・・・さすがだ、健人兄ちゃん・・・なんとか仕切ったね。
仕事の電話だった。事故死したご遺体を高円寺署から搬出して、ご遺族の待つご自宅に搬入する。まかされたのは搬送だけだけれど、ご遺族の意向をうかがってその後のことは営業次第というわけ。
兄貴と長峰刑事は顔見知りらしいけど、新人の坂巻刑事は兄貴と初対面で・・・どうやらお熱になったらしい。そりゃ、そうさ。俺の自慢の兄貴だもの。
兄貴に手とり足とり指導される俺が・・・うらやましくて仕方ないって感じ。
まあ・・・すべて・・・俺の気をひきたいがための浮気な演技ってことはみえみえだけど・・・気がつかないフリをしておこう。
「どうしたんだよ・・・じっとみて」
「いやあ・・・兄弟なのに・・・似てないなって思って」
「・・・腹違いだから・・・」
「あ、そうなんだ・・・道理でザコとマグロほど違う」
「おい・・・誰がタコだって・・・」
「ザコって言ったの・・・誰が吸盤みたいにすいつくってーの」
何かを思い出したのか・・・赤面する坂巻刑事・・・よせよ・・・誤解を招くだろうが・・・。
そこへ・・・再び兄貴のバッタリ能力が発動して・・・高円寺署に先生がやってきた。どうやら・・・奥さんが行方不明で、捜索願いを出すつもりらしい。何か一言言ってやろうと一歩前に出た俺を兄貴が引き留める。
「家を捜したら・・・自分がいなくなった時の対処の仕方みたいなことが書いてあって・・・まるで遺書みたいなんですよ・・・」
先生は半狂乱で・・・なんだか・・・哀れに見えた。そりゃ、悪気がなかったとは言えないし・・・妻子がある身で教え子に手を出すなんて・・・すごくスリリングで萌える行為だったのかもしれないが・・・こうやって天罰を受けると・・・なんだか人って滑稽で・・・悲しいもんだとも思えてくる。まあ、一発ぶんなぐってやりたい気持ちは消えないけどね。
仕事を終えて・・・家に戻った俺は桃子の部屋を訪ねてみた。廊下では兄貴がそっと立ち聞きしている。この安心感ったらないね。
「先生の奥さん・・・行方不明だって・・・」
「電話があったの・・・別れようって・・・あたし・・・ふられちゃった」
「・・・」
「先生はひどい人だと思っているでしょ。でもね・・・葬儀屋の子供だから・・・あたし・・・ずっと一人ぼっちだった・・・先生だけだったんだ・・・私を気にして声をかけてくれたの・・・そして・・・デートしてっていったらしてくれたし・・・なんでも言うこと聞いてくれて・・・あたしはうれしくて・・・先生のためになんでもしてあげたいと思って・・・これが人を好きになることかって・・・はじめて実感できたんだ・・・悪いことしてないなんていわないよ・・・でも・・・先生だって私のこと好きになってくれたんだと思う・・・奥さんや子供のことで苦しんでいたし・・・でもね・・・私は私だけの先生になってほしかった・・・だけど・・・それで・・・大変なことになったら・・・どうしよう・・・あたし・・・あたし・・」
世間から見れば・・・もてあそばれただけかもしれないし、俺もそう思うけど・・・桃子が精一杯がんばったことはわかる。泣きじゃくる桃子の肩をたたき、頭を撫で・・・慰める以外に俺には仕様がない。兄貴だって同じだろうと思う。
だけど・・・俺は・・・身を尽くすんだ。
翌日、俺は先生の家を訪ねた。行方不明の妻、不適切な未成年者との淫行を相手の家族に知られ・・・娘の栞ちゃん(井上琳水)からは「お母さんどこ行っちゃったの?」と責められて憔悴しきった先生。その上、眉間にしわよせた俺の登場でもう、ノックダウン寸前だ。
「はっきりいって・・・桃子のことではあんたを八つ裂きにしてやりたい気分です。汚れたナニを一寸(3.03㎝)刻みで刻んでもいい。しかし・・・桃子から話を聞いて・・・桃子がいろんな意味で世話になったというか・・・桃子にとってはあなたが救い主みたいなところもあったと思う・・・だから、俺も、手助けしたいと思うんです。奥さんを捜すの手伝いますよ・・・もしものことがあったら・・・妹は一生気に病むと思うので」
先生は土下座した。
「申し訳ありませんでしたーっ」
俺は先生の家から奥さんの写真やら手帳やらをかき集めると・・・栞ちゃんを連れて家に帰った。
桃子を世話したことのある晴香に栞ちゃんをまかせて・・・まあ、一日くらいなら桃子みたいには育たないだろうし・・・・今日は仕事を休ませてもらう・・・と兄貴に言う。奥さんの写真をじっと見つめて・・・兄貴はうなづいた。
それから・・・兄貴はこう言った。
「栞ちゃんの世話を・・・桃子にさせたらどうだろう」
「え・・・こっそり殺したりしないかな」
「ふふ・・・自分が誰から幸せを奪おうとしたのか・・・桃子が感じることが必要だと思わないか?」
「そうだね・・・きっと桃子の奴・・・反省するね」
栞ちゃんは桃子の部屋に連れていかれ無邪気に喜んだ。
しかし、その目がギラリと光る。
「お姉ちゃんはお父さんの生徒さんなんだって・・・ねえ・・・いろんなことを教えてもらったんでしょ?」
・・・おい・・・。
断っておきますが・・・すべて妄想でございます。再現性もあえて低く設定してありますし、再構築された部分もあるのでご了承ください。
と誰かがなにやら説明している空耳があって・・・俺は「兄貴の歓迎パーティーにつられた坂巻刑事と捜索の旅に出た。しかし・・・奥さんはさっぱり見つからない。
そこへ・・・坂巻刑事の携帯電話に着信があり・・・葬儀の井原屋を訪ねてみづきさんが高円寺署に来ていると言う。友也くんが家出をしたと言うのだ。
俺は電話を代わってもらった。
「あ・・・葬儀屋さん・・・友也が・・・朝からいないんです・・・」
「心あたりがあるのですぐに合流してください」
俺にはわかっていたよ。友也くんが・・・あそこにいることが。それにしても・・・葬儀屋なのに俺って人探しばっかりしているな。ラッキーセブンかよっ。
俺は長田さんが転落したあのビルにやってきた。
そして、俺は屋上で眠っている友也くんを発見したのだ。死んでるみたいでビビったけど・・・大丈夫・・・生きていた。
そこへ・・・みづきさんが半狂乱で現れた。
「大丈夫・・・・」俺はコートを脱いで友也くんを包んだ。低体温症になっているかもしれないので・・・とにかく・・・病院に行かなくては・・・。
「一体・・・どうしたんです・・・」
「急に大金が手に入ったので引っ越しをすることにしたら・・・友也がいやだって言って家を飛び出して・・・」
「もしかしたら・・・長田さんのことを・・・」
「保険金の説明に調査員の方がいらした時・・・友也に聞かれてしまったんです」
「ここは・・・長田さんが・・・友也くんとこっそりキャッチボールしていた場所なんですよ」
「え・・・」
「これは俺の想像だけど・・・長田さん・・・ずっとあなたと友也くんを見守っていたんです」
「・・・そんな」
「でも・・・気が弱い人だから・・・ただ・・・見ていただけ・・・父親だと名乗ることもできずに・・・偶然を装ってキャッチボールをしていただけ・・・」
「・・・あの人らしいわ・・・」
「・・・ママ」
俺の腕の中で友也くんが目を覚ました。
「・・・おにいちゃん・・・」
「友也」
「ママ・・・僕・・・夢を見てたんだ・・・おじちゃんと・・・ううん・・・パパとキャッチボールしていた・・・僕はとってもうれしかったよ・・・」
「・・・」
「他人の僕が・・・言うのもあれなんですけど・・・長田さんの四十九日があるんです・・・長田さんのお母さんには・・・いろいろとわだかまりはあるかもしれないけど・・・友也くんに・・・お父さんとのお別れをさせてくれませんか・・・もちろん・・・無理にとはいいません・・・言える立場でもないですし・・・」
「それは・・・」
その時、晴香から電話が入った。
「どうした・・・何、健人兄ちゃんが先生の奥さんを見つけたって・・・どこで・・・西荻窪病院って・・・俺たち、今、そこへ行くところだよ・・・何・・・兄ちゃん、奥さん連れて家へ来るって言うのか・・・わかった」
俺は友也くんを坂巻刑事にパスした。
「えっ・・・」
「大丈夫・・・俺より力持ちですから・・・あとはまかせた」
「えーっ・・・ひ、非番なのにーーーーっ」
友也くんを抱えて地団駄を踏む坂巻刑事とそれを不安そうに見つめるみづきさんを残して俺は自宅に急行した。もちろん、B.G.M.は「愛、テキサス」ダッシュ・ヴァージョンだ。
何故にさまよい迷う?
あいつの声が鳴り響く
ってあいつって誰だよ。
家に戻ると先生の奥さんをかこんで兄弟姉妹が全員集合である。栞ちゃんは遊び疲れて眠ってしまっている。
そして、桃子を除く一同全員が土下座である。
「妹が・・・すみませんでした」
「私は・・・あやまらない・・・だって」
「いいから・・・あやまれ・・・」
「ところで健人兄ちゃん、どうやって奥さんを見つけたの・・・」
「もしや・・・事故にでもって・・・思って病院に行ってみたんだ・・・そしたら・・・」
しかし、俺はどうもその言葉にウソがあるような気がした。なぜか、そう思えたんだけど・・・そりゃ・・・付合いが長いしね・・・兄弟だし・・・しかし、それを問い詰める場合じゃなかったんだ。
「一番悪いのは・・・私の夫です・・・夫に代わって・・・おわびします・・・すみませんでした」
「なに・・・それ・・・先生だけを悪者にしないで・・・奥さんだって仕事ばかりして・・・先生をほったらかしにしたりしたでしょ・・・」
「こら・・・桃子・・・」
「だから・・・先生だって・・・私・・・先生を愛してます・・・先生だって・・・きっと・・・お願いします・・・先生を私にゆずってください」
「桃子・・・何言ってるんだ」
「わかりました・・・それなら主人と結婚してください」
「えーっ・・・」
「でも・・・条件があるの・・・あと・・・一年くらい待ってほしいの」
「・・・」
「私、ガンなんです・・・余命1年と告知されました」
「えーっ・・・」
「ガ、ガン」
「なに・・・それ」
「だから・・・死ぬまでは・・・主人の妻として・・・死にたいの・・・そして・・・川原家のお墓に入りたいのです。どうか、それまでは・・・主人を私の元へ返してください。私が大事にあずかりますから」
「・・・」
そう言うと・・・奥さんは栞ちゃんを起こして・・・葬儀の井原屋を後にした。
妹は唇をきつく引き締めるとその後を追う。
ちょうど先生が妻と子を迎えにきたところだった。
先生は二人の女を見ると土下座するしかなかった。
「先生の奥さん・・・・あの話・・・きっぱりおことわりします。なんか・・・重すぎるっていうか・・・栞ちゃんとか虐待したりしたらいやだし・・・先生のことだって・・・最初から長続きしないって思ったし・・・卒業したら先生と生徒じゃなくなっちゃうし・・・だから・・・だから・・・先生はおかえしします・・・ごめんなさい・・・だから・・・だから・・・だから長生きしてください」
妹よ・・・。お前はやっぱり・・・いい子だな。
妹は踵を返すと家へ帰って行った。
「すみません・・・子供なんで・・・思ったことを口に出しちゃって・・・」
「いいのよ・・・素敵な家族ね・・・私も・・・この子に兄弟を・・・」
言葉を切らす奥さん。栞ちゃんはそんな母親と土下座する父親を心配そうに交互に見つめている。
「もしもの時はあなたのところにお願いしようかしら・・・えーと、予約ってあるのかな」
「予約は承っていないんです・・・今にも潰れそうな会社なんで・・・」
奥さんは微笑んだ。そして、栞ちゃんと夫に向かって歩み去った。
俺が振り返るとそこに兄貴がいた。俺は先生一家のお見送りは兄貴にまかせて桃子の後を追いかける。
「桃子・・・」
「お兄ちゃん・・・私、今度は・・・誰にもあやまらないですむ・・・恋をするんだ・・・そう・・・決めたんだ」
「うん・・・」
「私、歌う。一番、井原桃子、麻丘めぐみの『芽生え』歌います」
もしも、あの日、あなたに、逢わなければ、この私は、どんな、女の子になっていたでしょ・・・うえーん、うえーん、うえーん。
桃子・・・。なんで、そんな歌知ってるんだ・・・。
そして・・・長田さんの四十九日がめぐってきた。
天国とか、地獄とか、極楽とか、地獄とか・・・地獄はダブルかよっ・・・あの世とかが本当にあるのか、ないのか、人は知ることはできない。
でも思い出して欲しい。長田さんが亡くなったあの日・・・ものすごく風が吹いていたんだ。
だけど・・・今日のビルの屋上は・・・無風地帯で・・・小春日和なんだ。
なにもここでしなくてもいいのに・・・と思ったけど・・・こうして奇跡のような穏やかな日がめぐってきたかと思うと・・・長田さんは良い日に旅立つんだと思うね。
長田さんのお母さんは・・・友也くんとみづきが姿を現すと・・・風ひとつないビルの屋上で・・・喪服の土下座をした。
「本当にごめんなさい」
友也くんは驚いてみづきさんを振り返った。
みづきさんは立ちつくしていたけれど、その瞳にはキラキラ光るものがあった。
「そして・・・ありがとう・・・あの子に・・・息子とキャッチボールをさせてくれて・・・あなたと息子の結婚を許さなかったのは・・・私の間違いでした。どうか許してください・・・」
「・・・お義母さん・・・私も彼と強引に一緒にならずに・・・すみませんでした。・・・でも、たまには友也と遊んでやってくださいね。だって・・・友也はあなたの孫なんですから」
みづきさんは長田さんのお母さんの手をとった。そしてお母さんの眼に浮かぶ涙を見てそっと肩を抱いたのだ。
「おかあさん・・・おばあちゃん」
友也くんはふと俺を見た。その顔には確かに長田店長の面影があったんだ。
今、長田店長はホットなナンバーになって空に溶けて行った。
「2番、今野みづき、テレサ・テンの『時の流れに身をまかせ』歌います」
もしも、あなたに、逢えずにいたら、私は、何をしてたでしょうか、シクシクシク・・・。
こうして・・・俺はこのドラマが一番、言いたかったのは「芽ばえ」(1972年)と「時の流れに身をまかせ」(1986年 )が似ている気がするってことじゃなくて・・・生きていればどんなに間違いを犯してもやり直そうと努力するチャンスがあるってことなんじゃないかと思う。もちろん、きっととりかえしのつかないこともあると思うけど・・・ハードルはすごく低いっていうことなんだよね。世間からうしろゆびさされる人にやさしい物語・・・それはきっと・・・どんな痛みも愛おしい・・・ってことに通じるんじゃないかな。
親父・・・長田さんはそっちについたかい?
いろいろあったんで・・・俺のかわりに・・・きっと親父は頭をさげているんだろう。
俺はその分、こっちでがんばるから・・・許してくれよな。
関連するキッドのブログ→『第5話のレビュー』
シナリオに沿ったレビューをお望みの方はこちらへ→mari様のレビュー
山Pをこよなく愛する皆様はこちらへ→エリお嬢様のレビュー
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