凍てついた昼下がり(松本潤)
元ネタは「凍てついた夜」(リンダ・ラ・プラント)である。ちなみに女酔いどれ探偵ロレイン・ペイジ・シリーズ三部作の「序」である。この後は「渇いた夜」「温かな夜」と続いていく。シリーズを通じてドス黒い過去を持つ主人公が失意から再生していくという物語になっている。
ちなみに原題は「Cold Shoulder」「Cold blood 」「Cold Heart」でどこにも「夜」はない。直訳すれば「冷遇」「冷血」「冷淡」である。身も心も凍りそうなタイトルである。
しかも、さらに直訳すれば「凍える肩」「冷えた血液」「冷たい心臓」となっていく。肩が寒いくらいなら生きているが心臓が冷たくなったら死んでいるのである。
しかし・・・実際には紆余曲折あって・・・死にかけていた主人公が生き返っていくストーリーなのだ。「夜」をめぐる物語としてそれを示した邦訳タイトルは・・・好みにもよるだろうが・・・それなりに的を得ている。
もちろん・・・ラッキーセブンにはただの肌寒さが似合うわけだが・・・今回はいたるところで「凍てつく」昼下がりであったことは間違いないだろう。
「生温かい昼」というタイトルでもよかったが・・・あまりにもズバリだからな。
ともかく、映画版「花より男子」の道明寺司とドラマ版「花より男子」の道明寺司が夢の共演である。
ある意味、ホットではあったよねえ。
探偵という「トラブルこそが私のビジネス」という裏稼業の自己正当化を延々と続ける必要は一体、どこにあるのだろうか。
まあ・・・「なにもなかった過去」から「なにかありそうな未来」へ・・・主人公の成長の物語として考えれば、その職場は夢と希望と信頼に満ちていなければならないのかもしれないですけれどもーーーっ。
で、『ラッキーセブン・第6回』(フジテレビ20120220PM9~)脚本・野木亜紀子、演出・長瀬国博を見た。日本一無防備な探偵事務所・北品川ラッキー探偵社は記念すべき調査案件・2000件を達成しようとしていた。なぜか駿太郎(松本潤)が気になる第一号案件では調査対象が乱入し、ラーメン屋店主ではない筑紫(角野卓造)が刺され、若き藤崎社長(松嶋菜々子)が犯人を回し蹴りで昏倒させているにも関わらず・・・失敗から何も学ばないのか・・・第一、調査対象に存在をつきとめられてしまう探偵社って・・・というエピソードである。
新田(瑛太)が去り、観葉植物の苔丸だけが・・・駿太郎の心の拠り所である。
しかし、駿太郎の指示通りに熱心に格闘技の道場に通っている駿太郎だった。
そんな駿太郎に「あなたには期待しているわ・・・私はあなたをスカウトできて本当によかったと思っている・・・がんばって」と色目を使う藤崎社長。
駿太郎も飛鳥(仲里依紗)に「君っていつも魅力的・・・もてるでしょう」とさりげなく言って「むかつく」とほめられる色事師なのだが・・・まだまだ社長を陥落させるには未熟らしい。
しかし、事務所にかかってきた無言電話を「男性からでした」と見抜く特殊能力は持っているのだ。もちろん、藤崎社長はこの点をかっているのだな。世界でも十人くらいしかいないだろうと推測できる特殊能力だもんな。・・・有用かどうかは別として。
ともかく、無言電話や、無差別出前注文など・・・事務所に対して嫌がらせ行為が発生しており、要警戒レベルなのだが・・・いたって呑気なメンバーである。
休日のために愛犬の予防注射にでかけた飛鳥はテレビ番組でドッグフード1年分を入手するチャンスをつかみ、駿太郎をパートナーとしてテレビ局に呼び出す。つまり、駿太郎・・・業務していません。給料泥棒かっ。
藤崎社長は怪しい外回りにでかけ、旭(大泉洋)は怪しいクライアントと面談のために外出。茅野(入来茉里)にいたっては秋葉原に備品調達といいつつおでん缶の買い出しである。一人、留守番となった筑紫はひょんなことから鍵付倉庫に閉じ込められてしまう。
無防備探偵事務所の成立である。そこへ宅配ピザの配達員に変装した調査対象の小林(飯田基祐)が侵入する。「俺の浮気調査の報告書を出せ」である。あきらかに言っていることが支離滅裂で精神を病んでいるのだが・・・そこにはあまり触れないらしい。
この状況と探偵たちの行動がハラハラドキドキさせるポイントになっています。・・・誰がハラハラドキドキするんだよっ。・・・もちろん、「渡鬼」ファンだろう。・・・ああ、そうですか。
駿太郎はテレビ局で偶然にも子供の頃に憧れた「私立探偵・真壁リュウ」を演じる祐希(谷原章介)に出会う・・・18年間続いている人気ドラマシリーズってやはり21年間続いていた「渡鬼」へのオマージュだよな。つまり、今回は筑紫回なのだ。
脅迫されているという祐希の依頼で行動を共にする駿太郎。ご褒美は甥っ子の翔太(後藤奏佑人)へのサインである。犯人は祐希に冷たくあしらわれたガリガリガリクソン(おそらく本人)であった。凍てついた昼下がりの屋上で駿太郎は犯人を習得仕立ての関節技で確保するのだった。毎週、あらびき団出身者をしめあげるというお遊びをこれから続けてもらいたいくらいの見せ場である。
定時連絡(危険をともなう稼業である探偵としては必修)で事務所の応答がないことに不審を持った探偵たちは急ぎ、事務所に向かう。
もちろん、展開的には不必要だが、筑紫と駿太郎の連携を見せるために・・・小林を誘導して筑紫は駿太郎と電話で会話し、阿吽の呼吸を見せるのだった。
「苔丸の水をやるのは俺の仕事だ」
「・・・なるほど、山と言えば川ですね」
こうして、ダッシュで事務所に帰着した・・・駿太郎。事務所では狂乱した小林がオイルを撒いてライターに火をつけ、放火寸前である。
しかし、駿太郎とゆかいな仲間たちは格闘の末、小林を確保して一件落着である。
駿太郎の回し蹴りが炸裂して・・・小林は即死したのだった・・・死んでないだろう。「はぐれ刑事」シリーズでは善良な市民がえてしてこういう展開で犯罪者になるじゃないか・・・ここは月9だから・・・主人公はたとえメルトダウン中の原子炉に飛び込んでも死にましぇ~ん。・・・ああ、そうですか。
こうして、探偵たちの団結は一層高まったのである。
・・・まあ、だからどうしたという話でございます。
「昔は俺が腹をさされて調査対象を犯罪者にしてしまった・・・今回は穏便にことがすんでよかった」とまとめる筑紫。
翌日、離婚を迫られた小林が妻を刺殺する可能性は25%くらいだとおもうが・・・もちろん、そこは他人事なのである。こうして・・・凍てついた昼下がりは吹雪の黄昏に向かっていくのだな。
今回の教訓・探偵はいつでも携帯電話を携帯すること。
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コメント
わ~~~キッドさん、おはようございます。
一時期お休みされてたようでこちらに久し振りに伺ってみたら書かれてる!嬉しい事です。また通わせてもらいます^^
さて、ラキセブ、残念!な作品です。松潤スキーといたしましては夏虹の恐怖からやっと立ち直れると思った初回放送後の期待感も2話目にして、早はじけ~もう新田が主役のドラマをただへらへらゆるく鑑賞していこうと思った矢先の新田のわけわかめ事件でまたまた、はじけ~~もうどうしたらいいねん!状態です。
「ねーちゃんぐふぐふ」「こっらーつかさー」って女社長に駿太郎くんを蹴り飛ばしてもらいたい今日この頃です。
視聴者をどこまでも置いてけぼりにする脚本に毎回毎回「このドラマはいったい何を伝えたいのか?」がわかりません。爽快なアクションが売りなら毎回毎回見た事ないようなアクション見せてくれよーって思うのです。今回は特に真壁リュウとかわんことテレビ出演とか敷島こーしーとか詰め込みすぎてトホホですわ。
でもしっかと最終回まで駿太郎と一緒に走りたいと思います、てへっ(←結局は潤スキー)
投稿: もも | 2012年2月21日 (火) 08時33分
筑紫さん、ちっとも穏便に事は済んでねーよ!
と突っ込んだのはわたしだけでしょーか?
だって、もうあの時点で放火未遂という立派な犯罪だしー。
ナイフとか持って人に斬りかかってるから傷害未遂だしー。
そういう事も、ギャグの彼方に飛ばされていく物語なのでしょうか…
お休み回だからこれでいいのか?^^;
世の中は、瑛太が居なくなった穴が大きくて松じゅんだからダメなんだの
ように言うわけですが、私はそれはちょっと違うと思う。
それ以上の何かがあるでしょー・・・と思うわけでございます。
しかし、このドラマにはまだ「希望」があると思うのです。
本来ならばあまり体験できない、その回その回のメイン脚本と演出者の
違いがあまりにも大きく出ているこの作品…
いっぱい脚本と演出を抱えてるみたいだしー。
つまり…他のスタッフがやれば面白くなる…という「希望」が…
駄目ですかね^^;
投稿: くう | 2012年2月21日 (火) 11時54分
こんにち
先日は図々しくも
お汁粉(粒餡が好きです、、笑)を
御馳走になりました
次回のおやつも、、って(こら)
>「凍てついた夜」(リンダ・ラ・プラント)
コレ面白そうですね~。
そっちに興味シンシンでした。
>調査対象に存在をつきとめられてしまう探偵社って
携帯を携帯といい
ですよね(笑)
よく潰れなかったな(おい!)
投稿: ルル | 2012年2月21日 (火) 11時54分
サクラじゃないよ~もも様、いらっしゃいませ~リンゴじゃないよ
長期休養させていただき申し訳ありませんでした。
かってのような量産レビューはできませんが
そこそこ更新するつもりでございますので
よろしくお願いします。
ラキセブというか、ナツニジというか、スマイルというか・・・もう、ずーっと松潤スキー涙ですな。
世界三大スキー・・・ドストエフスキー、チャイコフスキー、マツジュンスキーの悲劇なのですな・・・なんのこっちゃ。
やはり、司のイメージが強すぎて
それ以外のキャラクターを造形しようとするあまり・・・
どんどん、間違った方向に行っちゃってるみたいな~。
まあ、今回は視聴率は16.3%↗16.9%↘15.2%↗15.4%↘15.2%↘14.6%とまあまあで唯一の救いかと。
新田と駿太郎の男の友情はそこそこ描けていると思いますね。
ただし、お茶の間はそんなに関心がない。
まあ、瑛太を松潤が追いかけるという展開が
ピンと来ないのかもしれません。
瑛太は松潤をかわいいと思っているし
松潤は瑛太をうらやましいと思っている。
そういう力関係ですからな。
松潤はこういうキャラ設定にしたからには
毎回、人妻ほ陥落させないと・・・
最終目標は姉ちゃんと近親相姦なのですから。
意外とお茶の間はついてきているのかもしれないですぞ。
基本、小学生向けのストーリーですからな。
今回の甥っ子の存在がそれを物語っています。
わんことテレビ出演、見たかったですな。
そこをクリアできなかったのが今回は残念な感じ。
今回は久しぶりにアクション回だったのですが
壁を使った跳躍、関節技、回し蹴りと
なかなか素晴らしかったのですが
初回の裸の格闘に皆さまは目がくらんで
ちょっとやそっとでは感じなくなっているようですねえ。
まあ、おそらく・・・社長の秘密をめぐって
最後は新田と駿太郎が合体するでしょうから
そういうセリフがいくつかちりばめられていますからね。
それまでは先輩が不在の間の駿太郎の成長を
マツジュンスキーの瞳で見守ることを推奨しますぞ~。
投稿: キッド | 2012年2月21日 (火) 16時03分
❀❀❀☥❀❀❀~くう様、いらっしゃいませ~❀❀❀☥❀❀❀
ふふ、まさしくその通りでございますね。
このドラマは死刑なんて人殺しだからできないという
現法務大臣のようなお子様ムードがただよっているわけです。
ちょっぴり大人になると耐えがたいリアリティーのなさですな。
しかし、まあ、お子様向けということで考えると
オイタをした子は叱られちゃうという感じで
成立しているとも言えます。
まあ、大人はそう思って耐えるしかございません。
キッドとしては現行犯で警察に突き出せば
桐原警部補(吹石一恵)の出番確保できたのに・・・
と精も根もつき果てましたな。
今回は松潤はがんばってましたな。
跳躍、関節技、回し蹴り。
どれをとっても簡単にはこなせないアクションでしたぞ。
今回は「踊る」の助監督で、「ウソゲ」デビューの
若手ですのでアクションに関しては
そこそこがんばってましたが
ドラマ全体を覆うお子様モードに
打ち消されてしまうのですな。
脚本は基本的にはすでに野木作品という感じになってます。
まあ、セリフの一つ一つはそれなりに
楽しく書けてますな。
とくに女の子のセリフは良い感じです。
しかし・・・まだまだ若い・・・そこにつきるのですな。
それと・・・あの曲者脚本家とは
あまりにキャリアが違いすぎて深読みのしがいがなく
ダメダメな部分がさらに印象深く残りやすい・・・
ということでしょうな。
なにごとも修練ですから。
そういう意味ではキッドはかなり甘めで見ております。
流れとしては新田不在の間に
駿太郎が成長し・・・最終回は初回なみの面白さになる。
そういう宿命のドラマだと考えます。
まあ・・・それが希望と言えるなら
最後の希望と言えましょう・・・スター・ウォーズかっ。
投稿: キッド | 2012年2月21日 (火) 16時27分
YY*★*YY~ルル様、いらっしゃいませ~YY*★*YY
こんにち
今日はあつあつのおでんをご用意いたしましたぞ。
おでん缶もよろしいですが
やはり、和のお茶処の冬の定番はおでんですからな。
大根、じゃがいもをベースにつみれ、こぶ、ゴボウ巻きなどもお勧めです。
お好みでご注文くだされ。
今回はキッドの心に残る探偵ものミステリのお薦めを
兼ねているわけですが
残りわずかになって選択にまよいますな。
「凍てついた夜」はとにかく読ませます。
残り二作については好みによって分かれるようです。
キッドは三部作すべてをそこそこ評価しております。
まあ・・・探偵社というよりは
探偵社ごっこなんですな。
そう言う点では家政婦ごっこの
あのドラマと大差ないのです。
ただ、一般の人々には
家政婦以上に
探偵社が馴染めないかもなあ・・・
と思う今日この頃でございます。
だから・・・まったくお花畑のような探偵社で
いいのかもしれない・・・そのように考えます。
とにかく視聴率はそこそこ取ってますからな。
投稿: キッド | 2012年2月21日 (火) 16時37分