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2012年2月25日 (土)

なにもいらないわたしがいまほんとうにほしいものなどただひとつただひとつだけ・・・ってあるのかよっ(松岡昌宏)

朝のドラマの主題歌は・・・最初の方のパートと後半の方のパートに分かれているのだが・・・後半の方を耳にすると・・・ツッコミを入れずにはいられないのだな。

いや・・・キッドのブログの再開と「カーネーション」の開始がずれていて・・・レビューできないので・・・この点だけは言ってみたかった・・・なにしろ谷間なのである。

・・・とはいうものの・・・今回は前回のフィールドの分析に続いてスケジュールの分析をしてみたいと考えている。

そういう意味では主人公が刑事と言えども・・・公務員である以上、朝のドラマを見て・・・出勤というスケジュールは充分に考えられるのである。

だから、キッドの妄想上では小暮鉄平(松岡昌宏)は朝、出勤前に・・・「ってあるのかよっ」とつぶやく可能性があるのである。

そして・・・「面倒くさい女だな・・・こいつ」と考えたりするのだと思う。

で、『13歳のハローワーク・第7回』(20120224PM1115~テレビ朝日)原作・村上龍、脚本・大石哲也、演出・高橋伸之を見た。脚本家がチーフ・ライターに戻り、連続ドラマとしては佳境に入ってきたのである。スケジュール的には今回を入れて後、3回らしい。そのためにここまでルーティン(約束された手続き)として続けてきた一話完結を脱している。ちなみに一話完結もスケジュールの一種である。その時間割はさまざまだが、簡単に起承転結で振り返ってみよう。

起・・・小暮がいつものように過去に戻る。

承・・・過去で新たな人間関係と遭遇する。

転・・・新たな人間関係がなんらかの進展をみせる。

結・・・小暮鉄平が未来に帰還する。

これが一話完結の基本的なスケジュールである。

もちろん・・・このドラマを時間割で分析することは普通のドラマよりやや複雑だということができる。

時間の流れが一定ではないのである。2012年に始まったドラマが1990年に逆戻りして、ふたたび2012年で終わる。ただし、こういうドラマは特異なものではない・・・現代から回想の過去に戻り、再び現代に戻って終わるのはごくありふれた手法である。

本来はこの時間の流れがタイムトラベルものではひとつの面白みになるわけだが・・・本作はあまり、そのへんにこだわらない。

臨機応変でスケジュールを調節するのである。

これまでは・・・2012年から1990年にタイムスリップした小暮鉄平の主観時間と、2012年の時間は全く問題にされてこなかった。つまり、小暮鉄平が1990年でどのような時間を過ごそうと2012年では問題が発生していないのである。つまり・・・無断欠勤のような問題が発生しないことから・・・1990年で何時間経過しても2012年の小暮の不在は一瞬の出来事として処理されてきたのである。

ところが・・・今回は怪しいハローワーク職員(滝藤賢一)は「過去の時間経過は未来の時間経過と連動する」と言いだすのであった。要するになんでもありなのだな。

つまり、スケジュールの変更である。

未来を1月1日に出発し、過去で二泊三日を過ごすと未来に帰還するのは1月3日になるということだ。そんなこと突然言われても普通は困るのだが・・・作者はそういうご都合主義を全く気にしないタイプなのだな。そして・・・そもそも小暮鉄平の時間旅行がファンタジー色の強いものだから・・・クレームつけるのも大人気ないというものなのである。

さて、スケジュールにはいくつかのポイントがある。その一つが辻褄の問題だ。なるべく因果応報である方が物語をリアルに表現できる。

つまり、性交したので妊娠した。というスケジュールである。これが妊娠したので性交したということになると説明が必要になってくる。たとえば・・・妊娠したのはその前に性交したからだというようなことだな。じゃあ、結局、性交したから妊娠したんじゃないかっ・・・といらだつことがあるわけである。

次に省略の問題だ。本来、小暮鉄平を人間と考えた場合、起床、洗面、朝食、排便、「カーネーション」、整髪、歯磨き、場合によって入浴、着衣、玄関をあける、鍵をかける、通勤開始・・・というようなスケジュールが続くわけだが、ドラマではいきなり職場にいてもいいのである。

今回は何やら秘めた思いがあるらしい仁科佳奈(沢木ルカ)と主人公が警視庁芝浦警察署で出勤途上に遭遇するというスケジュールである。

もちろん、主人公に限らず登場人物たちにはそれぞれにスケジュールがある。仁科佳奈もまた、起床、洗面、排便、「カーネーション」、整髪、歯磨き、場合によって入浴・・・というスケジュールを消化して・・・主人公と遭遇しているわけである。

すべての登場人物たちのスケジュールを緻密に設定することが重要な場合もあるが・・・ほとんどの脚本家はそれほど潤沢な時間を与えられていないので・・・ある程度、適当にフィールド内でスケジュールを調整する。

だから多くの登場人物たちは空腹感や睡眠不足、さらには排便欲求に悩まされているのが普通なのである。いや・・・登場しないときは自由に生きているだろう・・・という考え方もあります。

ともかく・・・そういうスケジュールの中で・・・2012年の自分の立場を改変するために1990年の過去の自分である鉄平(田中偉登)を改変しようとする小暮の目論見は悉く失敗しているというのがこれまでのスケジュールである。

しかし、過去における時間の消費が未来に加算されないシステムではスケジュール的に問題なかったのである。

今回は2012年に突然、人事異動のための面接というスケジュールが組み込まれ、それが「警視庁捜査一課に異動」という小暮の願望に沿うものであったことから・・・なんとかスケジュールを予定通りに消化したいという主人公の目標が設定される。

ところが・・・怪しいハローワーク職員は新システムを宣言し・・・過去にタイムスリップした小暮は突然、スケジュールに追われることになるのだった。

なんとしても・・・約束の時間までには未来に戻らなければ・・・そのための悪戦苦闘が物語の主軸になってくる。

しかし・・・何日も無断欠勤したんじゃ・・・異動とか・・・そういう問題じゃないだろうという率直な感想は頑として受け付けない方針らしい。・・・まあ、なんでもありの作者に何を言っても馬の耳に念仏である。

今回は「自家営業のカレーライス屋」を目指す学生ベンチャー企業と、そのアイディアや企業秘密を買収しようとする大手商社との提携やら敵対やらが描かれる。1990年の高野(横山裕)と翔子(真野翔子)の恋のスケジュールも進展しているわけだが・・・なにしろ・・・穴に入れられてああんなのである・・・耳かきの話ですがね・・・そういうことはお構いなく主人公はなんらかのアクションをおこして未来に帰りたいというスケジュールなのである。

しかし・・・今回の問題を解決しても・・・まあ、何が解決なのかも不明なのだが・・・未来への扉は開かれない。

つまり・・・。

起・・・小暮がいつものように過去に戻る。

承・・・過去で新たな人間関係と遭遇する。

転・・・新たな人間関係がなんらかの進展をみせる。

結・・・小暮鉄平が未来に帰還できない。

という大幅なスケジュールの変更があったわけだ。

もちろん・・・2012年には高野(古田新太)になってしまうスケジュールがあり、そして翔子もなんらかのスケジュールを消化しているわけである。

まあ・・・このドラマは「人間にとって仕事とは何か?」という深遠なテーマを掲げているわけだが・・・ここまではスケジュール的にそれほど深淵な仕事を作家がしているとは考えられないわけで・・・結局、隠されている翔子のスケジュールが一番、気になるところなのである。

そのスケジュールの面白さがこのドラマの成否を決めるわけだな。

結局、ドラマとは登場人物のスケジュールをお茶の間に伝えることでしかないのだから。

関連するキッドのブログ→第6話のレビュー

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