夕べも弟は眠れなかったのさ・・・終わった愛を捜していたから(山下智久)
もうすごく面白くなっているな。
どんなドラマでもじっくり見てしまえば・・・面白くなってしまうから・・・困ったものだ。
こうなると・・・お茶の間との温度差が気になってくる。
基本的に・・・ひっかかるところをチェックしておこう。
まず・・・CLUB「Queen Alia」だな。
ここは基本的にお茶の間と敵対するエリアである。そこで働くマネージャーとかボーイとか黒服とかホステスとかキャバ嬢とかキャバクラ嬢とかはお茶の間の人々から見れば「人間」ではない人で、そこでは基本的に「犯罪的遊戯」が日夜繰り広げられている・・・この世の地獄なのである。
だから・・・そこで生息している人が生きようが死のうが・・・無関係・・・という前提があるわけだ・・・あるのかよっ。
なにしろ、会いたい人を席に呼ぶだけで2000円を消費するのだ。時給1000円で二時間分だぞ。そこかよっ。
近所の商店街で100円の焼きそばを買うと1枚くれるサービス券なんか50枚あつめてようやく100円のサービスなんだぜ。焼きそば1000杯食べて・・・ようやく2000円だ。・・・もう、そのたとえはいいよ。
だから・・・どんな事情があっても・・・その関係者と関わっている人間は半分、悪に魂を売った人間なのである。
もう、最初から救いようがないのだな。
だから・・・ゲストたちが・・・いくら、主人公(山下智久)の弟の片思いしている相手(岡本玲・・・「フリーター、家を買う」のあかり)だったり、その同僚がもっと美女なエリカ(平愛梨・・・映画「20世紀少年」のカンナ)だったりしても・・・所詮、キャバクラ嬢だしな・・・という蔑視が前提になるのだ・・・そこまで差別的なのかよっ。
まして死体(鈴木福じゃなかった鈴木一真)なんて・・・結局、二股かけてた元キャバレー王だからな・・・。
もう・・・ドロドロすぎてお茶の間は涙一滴、こぼせません。きっぱり断言かよっ。
だが・・・もはや・・・そういうところが・・・面白くて面白くて仕方ない境地なのである。
他人から見ればどうしようもなくバカなことで・・・それぞれの人は生きているわけで・・・怒ったり、悲しんだり、喜んだりしているのである。
もてあそんだ女に刺されて死んだダメな男を愛してしまった女をストーカーしている弟を見捨てない兄がいたっていいじゃないか・・・もう、そういう心境なのでございます。
まあ・・・お茶の間の皆さんがみんなそうなるとは到底考えられませんがーーーっ。
で、『最高の人生の終り方〜エンディングプランナー〜・第5回』(TBSテレビ20120209PM9~)脚本・渡辺千穂、演出・石井康晴を見た。とにかく・・・本気で「寺内貫太郎一家」(TBSテレビ)的なジャンルを志向していることは感じられましたな。言葉で言うより・・・少々掟破りだが・・・あくまで検証ということで証拠を検分していただきたい。
こういうことである。とにかくお茶の間で家族がとっくみあいが基本だ。そして・・・。
こうくるわけである。進化系としてとっくみあいではなく・・・「お茶の間でぶっかけあい」になっているところがミソらしい。
まあ・・・共通点は翌日になるとすべてが修復されているということだ・・・セットだからな。
まあ・・・お茶の間もそろそろ・・・この部分が気になっているだろう。っていうか・・・ここを中心に見ている人々もいるかもしれない。今回・・・改良されたのは・・・「ぶっかけあい」の後で「雑魚寝」というか「川の字」というか「トノトノの字」というか・・・兄弟姉妹が仲良く「添い寝」をすることである。
「動」のあとの「静」は「メリハリの基本」ですから・・・これだけでずっとドラマがしまった気がしますな。
まあ、とにもかくにも・・・概ね、ドラマらしくなってきましたなーーーーっ。
今日もどこかで誰かが叫んでいるような気がする・・・と思ったら電話だ。
なんと・・・弟の隼人(知念侑李)が警察のご厄介になっているというのだ。でた・・・いつかこうなるような気がしていたよ。なにしろ、予告編で前フリされていたからな。まあ、つかみたい気持ちはわかるけど・・・結構、余韻台無しって感じもあると思うけど。
ともかく・・・兄として身請けに出かけた俺。どうやら・・・喧嘩騒ぎに巻き込まれたらしく・・・弟の頬にはヤクザな傷が・・・痛くないのか・・・弟よ。
今は興奮してアドレナリンが出ているからあれだけど・・・後からジンジン痛くなってくるんだよな・・・。事情聴取の結果・・・現場で弟が持っていたナイフは喧嘩相手が持ち出したものらしい。じゃ・・・なにか・・・弟は相手からナイフを奪って戦ったというのか・・・いつからそんな喧嘩の達人になったんだよ・・・ま、それはそれとして・・・つまり、弟は被害者ということになって・・・無罪放免である。
しかし・・・ついこの間も傷だらけになって帰ってきたばかりである。しかも・・・暗い暗い目をしてすねているのは明らかなのだ。
弟の心の闇を俺は兄としてどうしていいのか・・・悩むところなんだな。
そういう時は天国の親父(蟹江敬三)に相談してみたい。
といっても親父の遺言だけどな。
「隼人・・・真っ直ぐに人を思うだけが能じゃない」
これだ・・・短っ。それにしても親父・・・何か知っていたのか・・・まるで・・・隼人が誰かを「思いすぎてダメになる」のがわかってたみたいじゃないか。予言者かよっ。
だが・・・だからといってこれだけじゃ・・・何かが起こるまで待つしかない。
いくら坂巻刑事(榮倉奈々)が「何かあってから遅いのよっ、まさぴょ~ん」と言ったって人間なんて全能じゃないものな。もちろん・・・警察と懇意にしている「顔」で本来なら一晩くらい留置されても仕方がないのに簡単に帰宅を許してもらったのは感謝するけどね。
家に帰ると・・・下の妹の桃子(大野いと)は呑気にざるそばを食べていた。ぶっかけのフリじゃないかとドキドキする人も多かったんじゃないか。そうそう・・・よく・・・末っ子が隼人だと思っている人がいるんだけど・・・末っ子は桃子なんだよな。なにしろ、桃子は高校生で、隼人は一応、大学生だから。でも、妙に大人っぽい妹と、妙に子供っぽい弟なんで近所でも勘違いしている人は多いと思う。
ところで・・・妹はいつも無表情を装って・・・つまり無愛想な仏頂面をしているから・・・気がつかない人がいるかもしれないが・・・相当な正統派の美系なんだよ。なにしろ・・・俺の妹だからね。
このあたりを見るとわかるんだ。このメンバーに入って遜色ないわけなんだから。
いや・・・あくまで参考までにね。もしも、妹の印象が悪いとしたら・・・それは役作りっていうか・・・脚本の趣旨なんだな・・・。で、それは弟の隼人も同様で・・・どんだけ、バカでダメでワルなんだよう・・・と思っていると・・・意外といい奴だったのかも・・・という仕掛けをしているのさ。まあ・・・やりすぎちゃって・・・イメチェンに失敗するってこともあるけど・・・ドラマとしては常套手段。俺だってそういう山をいくつも越えてきたわけだしね。
おっと・・・そんなこと言ってたら・・・まるで俺が予言者みたいじゃないか。
でも、実際の俺は・・・「一体、何やってんだ・・・話してみろよ」と弟から話を聞き出そうとしても・・・「なんでもないよ・・・道歩いてたらからまれただけだ」と言われたら二の句が告げられないという・・・兄失格のだらしなさでした。
「何かあってからじゃおそいんだぜ」と坂巻刑事の受け売りを試したけど「わかったよ・・・わかりましたっ」と言われたらもう絶句である。
その上、弟はまたもや・・・家出である。
もちろん・・・今回はこっそり後をつけたよ。だって・・・たった一人の弟だものな。まあ、妹は出来のいい晴香(前田敦子)と素行の悪い桃子と二人いるしね。まあ、多分、来週は桃子を尾行することになると思うけどさ。
で・・・弟が足早にやってきたのは駅前の繁華街にある・・・CLUB「Queen Alia」・・・早い話がややおとなしめのキャバクラだ。まったく・・・。 キャバクラ譲の出待ちなんて・・・。なんて弟なんだお前は。
ふと見ると・・・弟はなんだか「よこやーーーっ」(ライアーゲーム)と叫びたくなる怪しい中年男を気にしているようだ。
そうこうするうちに・・・キャバクラから女の子たちが出てきた。そのうちの一人が弟のお目当てらしい。ここだけの話だけど・・・俺は弟の部屋で彼女の写真を見たことがあるんだ。どっかの居酒屋で合コン・・・って雰囲気の写真。なんで・・・そんな写真の女の子の顔なんて覚えているのかって・・・もちろん弟思いじゃなくて・・・その娘が美人だからに決まってるでしょ。
で・・・あっという間に修羅場寸前の感じに。どうやら・・・キャバクラ嬢のカナコさんは・・・怪しい男、・・・及川さんと怪しい関係にあるらしく・・・弟の隼人はカナコさんにぞっこんなんだけれど相手にされていないピエロってかんじなんだな。
だって大人の世界に迷い込んだ中学生みたいなもんだもの。でも・・・本人ってそういう状況に割と気付きにくいものなんだよな。
とにかく話の成り行きから・・・カナコさんは及川さんの借金の保証人みたいな感じになっていて取り立て屋に追い込みをかけられているらしく・・・隼人はそこに首をつっこんで痛い目にあっているらしい。ようするに弟はカナコさんに金を貢いで、カナコさんは及川さんに貢いでいるってことだな。バカだなあ・・・隼人・・・。いや・・・元はと言えば隼人の貢いだ金は葬儀の井原屋の売上金・・・一番バカなのは俺じゃんか。
まあ・・・金の流れはおくとして。だってさ、金は天下の回り物だから・・・。
とにかく・・・店の他の女の子たちもなかなかに粒よりで・・・などと気をとられているうちに・・・隼人を見失った俺です。うわあ・・・しまった。
仕方なく・・・俺は家に帰って・・・弟の部屋を家宅捜査して・・・弟の日記をゲットしました。
親しき仲にも礼儀ありだけど・・・この際・・・読んじゃえっ・・・何かあってからじゃ遅いものな。
すると・・・。
「大学のテニス・サークルで知り合った水野可南子ちゃん・・・一目ぼれだーっ。俺は猛然とアタックしたけど・・・まったく相手にされない。そのうちにカナちゃんの家で大変なことがあったらしく・・・カナちゃんは怪しい夜のバイトを始めてしまった・・・。俺は心配で心配で・・・車で送り迎えなんてしてみたけれど・・・とにかく・・・店に入るにはお金がいくらあっても足りないことに・・・大企業の社長の息子なんて・・・見栄をはったりして・・・俺ってださいな」
なんていう・・・バカなんだ。俺のかわいい弟は。
「偶然、店のオーナーとカナちゃんがデートしているところを目撃してしまった。オーナーは時計を見せて父の形見だとか・・・言ってるし、カナちゃんは指輪を見せてお婆ちゃんの形見だとか言っている。「お婆ちゃんはよく・・・この指輪をしているとおじいちゃんに守ってもらっているような気がするって言ってた・・・」「カナコ・・・君は僕が守るよ」・・・なんてことだ・・・俺のカナちゃんが・・・あんな中年男といい感じに・・・それをこっそり見ている俺ってまるでキモいストーカーみたいだ」
みたいじゃなくて・・・ストーカーそのものだってーの。
「バレンタイン・デー・・・カナちゃんが・・・チョコレートを渡すのはもちろん・・・俺じゃなくて・・・あの及川っていうキザ男だ・・・くそっ、くそっ・・・二人がデートしているレストラン・・・俺は店に入ることもできない・・・だっていかにも高そうだもん」
ふう・・・隼人。もう、犯罪者の一歩手前だ。
「及川って男が破産したみたいだ。ざまあみろ・・・これでカナちゃんも目が覚めるだろう」
おいおい・・・目を覚ましてほしいのはお前だよ・・・隼人。
「カナちゃんが・・・及川にお金を貢ぎだした・・・一体、どうなってんだ・・・」
・・・。
「カナちゃんが指輪を及川に売り飛ばされて別れを決心したらしい・・・でも俺とは住む世界が違うって言われた・・・どうしてだよ・・・同じ日本に住んでいる日本人じゃないか」
隼人・・・バカだバカだとは思っていたがそこまでバカだとなんだか・・・泣けてくるな。
・・・なんて俺がストーカーの弟をストーカーしている頃。
及川さんはご遺体になってしまったのだ。
坂巻刑事情報によると・・・死因は鋭利な刃物で数回刺されていて、怨恨の線が濃厚の・・・殺人事件らしい。もちろん・・・俺の頭には容疑者として隼人の顔がばっちり浮かんでいました。
翌朝・・・坂巻刑事が同僚の長峰刑事(水上剣星)と葬儀の井原屋を訪ねてきた。もちろん・・・重要参考人になっている・・・隼人の取り調べのための任意出頭を申し渡しにきたのである。しかし・・・隼人は当然のように姿をくらましているのだった。
殺人事件ともなれば・・・井原屋が警察に渡している袖の下なんか・・・なんの効果もない。
親父の仏前におはぎをそなえていた晴香や朝飯をかっこんでいる桃子も事情を聴いて驚く他ないのだ。
刑事たち「殺された及川さんの元恋人は隼人くんの同級生なんだ」
桃子「ええーっ」
刑事たち「隼人くんは及川さんと別れろとか・・・可南子さんていう同級生に店をやめろとか・・・何度か店で暴れたらしい」
桃子「それって・・・可南子さんて人に付きまとっていたってこと・・・?」
刑事たち「とにかく・・・事情を聴きたいんだ」
桃子「じゃ、隼人兄ちゃん・・・容疑者ってこと?・・・やったってこと」
坂巻刑事「いえ、そこまでは・・・なんていったって・・・隼人くんはまさぴょんの弟さんだし」
晴香「まさぴょん?」
晴香・・・お前だけツッコミどころがボケてるぞ。
とにかく・・・わかったことは・・・可南子さんが隼人のことを「ただのともだち」としか思っていないことだ。いくらなんでも・・・それでもしも・・・隼人が及川さんを刺してたら・・・ウルトラスーパーデラックス三枚目だな。
ああ、困ったと思っていたら・・・でたよ。
岩田さんだ・・・お茶を出してもコーヒーを出しても飲まないのはなぜなんですか?
「困ってるな」
「困ってます」
「死んだ・・・男・・・借金があるんだってな・・・しかも恨んでいる奴も一杯いるそうじゃないか」
「どうもそうらしいですね」
「でもな・・・そんなのはみんな生きている側がそう思うだけなのさ」
「・・・」
「死んだら無だよ」
「む・・・ですか」
「そうだよ・・・無・・・なんにもない・・・死んだら無だ・・・人間はゼロから生まれて・・・死んだらまたゼロだ・・・」
「それって・・・」
「とにかく・・・生きている間はゼロじゃないってことだ・・・どんなバカでもゼロじゃない」
「なるほど・・・」
「なにか・・・きっと・・・できるよ・・・誰かのために・・・何かをな・・・な・・・あの花のように」
「俺は生きてるから・・・ですか」
こうして・・・俺はまた死者の無念を晴らす旅に出たのだ。
どこにって・・・とりあえず・・・キャバクラに。今回はさすがに・・・坂巻刑事は抜きだよな。
で、セット料金6000円に・・・心の中でゲッと叫びながら・・・初対面のエリカちゃんと軽いつかみのトークである。
「イケメンねえ」
「またまたーっ」
「イケメン枠で名刺に携帯番号サービスしちゃう」
「この間、執事とお嬢様が探偵のドラマで犯人役やってた女優さんに似てますねえ」
「あーっ、それよく言われる~」
「で・・・あの子なんだけど・・・」
「えーっ、カナちゃん狙いなの?・・・指名料2000円でーす」
「げげーっ」
・・・ってところでタイトルなんだな。これが。っていうか・・・ここでタイトルかよっ。
で、可南子さん・・・源氏名カナちゃんとエリカちゃんにはさまれて・・・弟がついていた嘘だとか・・・行方不明の指輪のことだとか・・・及川がろくでもない男だったとか・・・まあ・・・大体・・・弟の日記にあった話の裏をとりつつ・・・お勘定は1万4000円である。
そして・・・カナちゃんにとって弟は「迷惑な奴」だったことが確認できた。
それにしても・・・エリカちゃんは妙に愛想がいいよね。それにこんなところでチョイ役やってるようなタイプじゃないから・・・きっとみんな・・・誰が殺したクックロビン音頭を踊りだしたいところじゃないかって・・・俺を含めてほとんどの人に意味不明ですみません。
美女二人に囲まれた喜びと痛い出費の悲しみに心を浮沈させながら・・・家に帰ってきた俺は・・・遺体冷蔵庫に・・・異音を聞きつけ恐怖におののいた。とはいえ・・・これは日常の話でいきなり・・・ホラーにはならないし、どうせ・・・隼人だろうと思ったよ。それにしてもどうやって入った。どうやってふたしめたんだ・・・隼人・・・お前はマジシャンなのかっ。
で、晴香は大音量でテレビを見ているし、桃子はバレンタインの手作りチョコレート製作中だ。何食わぬ顔で戻ってきた末っ子のような隼人に食ってかかる姉のような二人。
なんだか・・・本当の兄弟姉妹みたいなムードに・・・驚愕だぜ。
初めて普通のホームドラマになったみたいだよな。
「あんた・・・大変なことになってるのよ」
「俺は何にもしてないよ」
「じゃ・・・なんだって隠れてるんだ」
「そ、それは」
「まさか・・・誰かをかばってるのか」
「・・・」
「えーっ・・・ふられた女をかばってんの?」
「うるさいなっ・・・カナちゃんはただの友達だよ」
「バッカみたい・・・コクってもないのかよ・・・ふられた女にそんなにいれこんで」
「おいおい」
「それで疑われてうわさになったらどうすんの・・・私、学校に行けなくなっちゃうよ」
「そんなこと言って・・・あの先生に逢えなくなるからじゃないの」
「なによ・・・関係ないじゃない」
「いや・・・先生と変な関係になるのはまずいぞ」
「あの、チョコ、誰に作ってるの?・・・いけないことはいけないのよ」
「なによ・・・そんなこと・・・恋愛経験ゼロのお姉ちゃんに言われたくない」
「おい・・・それは言い過ぎだぞ・・・晴香だってなあ」
「・・・」
「いや・・・なんでもない」
「あの・・・俺のことは・・・」
「ふーんだっ・・・真人にいちゃんはいつも晴香姉ちゃんの味方ばっかし・・・晴香ねえちゃんはまるで子犬ちゃんね・・・いつも鼻をならしてキャンキャン言って・・・」
「なんだってえ」
ここで何故か・・・流れ出すのは主題歌「愛、テキサス」である。なんだ・・・ぶっかけのテーマみたいな感じにするのかよ。ふらりふらり揺れるのか。なぜにさまよい迷うのか。
こ、こら・・・チョコレートはやめなさい。こ、粉もだめ~。
「姉ちゃんたちやめて」
「この売女」
「なによ雌犬」
ぶっかけである。粉まみれだ。しかも・・・チョコレート直撃の桃子は白黒まだらだ。
俺は桃子から目をそらしながら・・・なにしろ・・・直視したら吹くからな。
「なにやってんだよ・・・お前ら・・・親父が生きてたら・・・なんて言うと思うんだ。
隼人・・・しっかりしろよ・・・桃子の言うとおり・・・変な噂たったら・・・葬儀の井原屋だって・・・商売あがったりだぞ。
人殺しのいる葬儀社に見送ってもらいたいと思う人がいるかっ」
「相手が好きだから自分も好きになるとは限らないじゃん・・・好きって言う気持ちはどうしようもないじゃん・・・可南子は・・・家が大変なことになって・・・全部自分の金で大学に通ってんだ・・・普通のバイトじゃ・・・どうしようもないから・・・キャバ嬢やってたんだ・・・それなのにあの男は可南子を食い物にして・・・」
「それでお前は店の金を加奈子さんに渡してたって・・・それが仕方のないことだって言うのかよ」
「なにそれ・・・あんた・・・その女に貢いでたってこと」
「ごめん」
「だったら・・・本当のことを警察に言うしかないだろう」
「それは・・・いやだ・・・」
「なんでわかんないんだ」
「わかってるよ・・・わかってるって」
立ちあがった隼人は俺に鉄拳制裁である。おい・・・俺がなぐるところだろう・・・。
でもな・・・こんな可愛い弟を俺にはとても殴れない。
俺は隼人を抑えつけた。
「お前・・・もしも可南子さんが犯人だったとして・・・一生、彼女に逃げろって言い続けるのか・・・それで彼女は幸せになれるのか・・・人が死んでるんだぞ・・・もしも・・・お前が犯人だったら・・・お前は一生逃げて逃げて・・・それで幸せか?・・・隼人・・・本当に彼女が好きなら・・・嫌われることを恐れるな・・・本当の彼女の幸せを・・・よく考えるんだ」
「・・・」
「明日・・・一緒に警察に行こう」
「・・・うん」
「それじゃ・・・風呂に入るか・・・」
「だね」
危なく、桃子と顔を合わせそうになって俺はあわてて隼人を抱きしめた。
隼人は俺の腕の中で子犬のように身をふるわせる。可愛い・・・なんて可愛いんだ。
これが・・・弟の味かっ・・・。
で・・・入浴シーンは妄想の彼方に飛び去り・・・寝物語である。
俺と晴香の間に桃子と隼人を挟む。
そうさ・・・昔・・・こいつらがもっともっとチビだった頃から俺は知っているんだ。
誰が何と言ったって・・・他の誰よりも長い時間を過ごしてきた。
みんな葬儀屋の子供だもの。
俺たちにしかわかりえないことは・・・あるんだよな。
「こうしていると健人(反町隆史)兄ちゃんを思い出す・・・こわい夢を見た時はいつも添い寝してくれたっけ・・・」
「優しかったよな・・・」
「私・・・よく覚えてない・・・」
「赤ちゃんだったからな」
「いつのまにか・・・態度も図体も大きくなっちゃって」
「なによ~」
ああ、可愛い。晴香も・・・桃子も・・・隼人もみんな可愛い。健人兄ちゃん・・・兄ちゃんも俺みたいな気持だったのかな。健人兄ちゃん・・・どこにいるのさ。俺もたまには健人兄ちゃんに甘えたいよ・・・弟としてさ。
もちろん・・・その頃、健人兄ちゃんは大変なことになっていたわけだが・・・俺は露知らずさ。
だって人間は神様じゃないからね。
とにかく・・・喧嘩して仲直り・・・人間なんてそんな繰り返しで生きているってこと。
喧嘩したまま死んだら仲直りもできない・・・ああ・・・そうか・・・俺はピンときたよ。
みんなに恨まれたまま死んだご遺体の・・・心残りが何かってことを。
ところが・・・翌朝、目を覚ますと・・・隼人は脱走していた。
恋ってやつは・・・どうしようもないな。
思案にくれていると・・・田中さん(大友康平)が・・・出番を確保するために隼人の隠れていた遺体冷蔵庫から・・・ジュエリーショップのカードを発見するのだった。
さすがは田中さんだ。
俺の中に徐々に焦点を結ぶ・・・失われた指輪の物語。
そうだ・・・愛はいつでもすれ違いだ。
そして・・・賢者の贈り物はいつだって愛の証なんだものな。
それから坂巻刑事が耳寄りな話を仕込んできた。
「あの店のオーナーからようやく証言がとれたんだけど・・・あの夜・・・被害者は時計を売りにきたらしいわ・・・オーナーは疑われるのがいやで言い渋ってたんだけど・・・被害者はよほど・・・お金に困ってたのね」
なるほど・・・やはり時計を売ってたのか。
俺はようやく・・・坂巻刑事とデートするチャンスをつかんだ。ジュエリーショップに誘うのはなかなか気がきいてるよね。
で、やっぱり俺に気があるから舞い上がる坂巻刑事・・・持ち上げておいて落とす・・・愛のゲームの基本中の基本だよな。
「えーっ・・・なんか買ってくれるんじゃないの」
「ごめん・・・今・・・財政的にピンチなんだ・・・」
「しょうがないなー・・・もう」
「っていうか・・・職務でしょ・・・職務」
こうして・・・俺は失われた指輪を発見した・・・そして・・・ご遺体の最後の願いを知ったんだ。でも・・・一足先に・・・指輪は・・・隼人の奴が持ち去っていた。
ふふん・・・さすがは俺の弟・・・やるじゃないか。
時はバレンタインデー・・・俺は愛の記憶が残る店にやってきた。
そこに現れたのは可南子さんだった。
「どうして・・・ここに・・・」
「あの・・・最後の夜に・・・彼が店にやってきたのは・・・新しい店のオーナーに時計を買ってもらうためだったんです」
「え・・・」
「お父さんの形見の腕時計・・・可南子さんも知ってますよね」
「で・・・そのお金で・・・彼は・・・ジュエリーショップに行ったんですよ」
「なんで・・・」
「その続きは弟が話します」
俺はようやく・・・到着した弟を呼びこんだ。
「なんで・・・兄貴が・・・」
「そりゃ・・・兄ちゃんだからさ・・・いつだってお前より先にいるだろう・・・でも一番いいところはお前にやるよ・・・さあ」
弟はうなずいて二つの指輪を差し出した。
「あの人は・・・腕時計を売ったお金で・・・この指輪を買ったんだって・・・店の人が言ってたよ・・・俺はあの人がカナちゃんの時計を売り飛ばしたんだとばかり思っていた・・・でもあの人はこう言ったんだ・・・このサイズで指輪を作ってほしいって・・・」
言葉につまった弟に助け舟を出すのは兄のつとめだよな。
「なぜ・・・そう言わなかったのかって思ってるでしょ・・・男ってバカみたいに・・・好きな人を驚かそうとするもんなんですよ・・・相手が喜ぶかどうかは二の次なんです」
可南子さんの頬に薔薇が宿った。
「男ってバカね」
そうですよ・・・そして・・・そういう男に愛されてあなたは幸せなんでしょう。ねえ、そうでしょう。
その頃・・・坂巻刑事は幸せではなかった女を取り調べていた。彼の部屋から出てきたエリカさんの目撃証言が出たのである。
エリカさんは遠くを見つめて告白したそうだ。
「彼は・・・カナちゃんを傷つけたくないから・・・私と別れるって言ったの・・・殺されて当然だと思うのよ・・・少なくとも・・・私はそう思った・・・そして・・・たまたま・・・果物ナイフがあったのよ」
きっと多くの人が彼のことを酷い男だって言うだろうね。
二人の女を手玉にとって・・・一人を選んで・・・でもそういうことはよくあるんじゃないのかな。
とにかく・・・一人は彼を惜しんで葬式にやってくる。
もう一人は葬式には来れない・・・ただそれだけのこと。
岩田さんはこう言ってた。
「本当の愛って自分の幸せよりも相手の幸せを願うこと・・・なにしろ死んだら何もかもなくなっちまうんだから・・・生きている間は・・・誰かに何かをしたいってみんな思うもんだ。それが結局・・・生きるってことだからさ」
確かにね。一人残されても・・・生きている方が愛されていたって思えることはいいことかも。
もちろん・・・愛されない方は・・・あきらめるしかない。
だって、結局、愛するしか道はないんだから。
隼人もいつか・・・手が届かない愛を追い続ける悪夢から解放される日がくるかもしれない。
ひょっとしたら・・・可南子さんの気が変わる可能性だってゼロじゃない。
晴香が言う・・・愛する者に愛される奇跡みたいなことがね。
でも・・・もう一人の彼女・・・エリカさんは・・・もしかしたら・・・永遠に愛を得られないかもしれない。だって彼女は自分で可能性を葬ってしまったんだから。
だけど・・・俺にはそれだって・・・愛と呼べるかもしれないと思えたりもする。
だってエリカさんはまだなんにもなしになったわけじゃないものな。
ねえ・・・親父・・・どう思う。
そっちに愛はあるのかい?
関連するキッドのブログ→『第4話のレビュー』
シナリオに沿ったレビューをお望みの方はこちらへ→mari様のレビュー
山Pをこよなく愛する皆様はこちらへ→エリお嬢様のレビュー
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コメント
キッドさんおはようございます
ふふふ 今回のお話面白かったしキッドさんのレビューに大爆笑(^O^)/
メインエピソードは今までで1番弱いかもだけど家族団欒のシーンが楽しかった!
各回でターゲット層がまるで違って視聴者をまだしっかり掴めていない感じなんで もうぶっかけを売りにしちゃって本人も気にいっているのか謎の愛 テキサスもついでに憶えてもらっちぇば一挙両得
まぁどれだけの視聴者が見てくれているかもありますけど
とにかく私は楽しめました(^^)
愛ですかねぇ(笑)
投稿: chiru | 2012年2月10日 (金) 08時37分
やっぱこのドラマは寺内貫太郎を目指しているのですねーっ!
ジュリーって身悶えるばあちゃんはどこ?
そのばあちゃんに「きったねえな、ばあちゃん」と
嫌そうな顔してた秀樹が懐かしい・・・
って、ママが言ってた!
んで、終わった愛を探すどころか、そこに愛はなかったのに
隼人ったら!
銀の指輪もあんたにゃ関係ないじゃん・・・
てかチューリップ懐かしいわぁ~。
ってママが言ってた!
そしてキャバレー王といえば福富太郎さん。
福しかあってないし・・・
ってママが言ってた!
投稿: まこ | 2012年2月10日 (金) 13時50分
シンザンモノ↘シッソウニン↗・・・chiru様、いらっしゃいませ・・・大ファン
いつも楽しんでいただけてキッドも嬉しく存じます。
今回は全体のバランスがとてもよかったですね。
もちろん・・・各自の回想シーンが入り乱れて
じっくり見ていないと何がなにやらだし
じっくり見ていると矛盾的を次々と発見してしまう。
実に心にくいドラマですな。
そうですね・・・ようやくケンカして仲直りの
「日常」が一つ完成しましたな。
来週は予告によれば健人兄ちゃんも
帰ってくるみたいだし・・・
まあ、誰かの回想というひっかけかもしれませんが
さらに「あこがれのふつうの家族」を
みせてもらいたいですな。
「ひとつ屋根の下」と同じくらいに
力のあるメンバーがそろっているわけですから。
「ぶっかけのテーマ」で
「愛、テキサス」が大ヒットしたりすると
それはそれで多重人格一同大爆笑でございます。
ドラマを楽しむも楽しまないも各人の自由ですが
もちろん楽しめた方がハッピーに決まっております。
万歳ですな。
最高の人生に万歳三唱でございます。
愛の勝利とはこのことですよーーーー。
投稿: キッド | 2012年2月10日 (金) 20時11分
●no choco●まこ☆ミキ様、いらっしゃいませ●no choco●
そうでございますねぇ。
「寺内貫太郎一家」と「ひとつ屋根の下」の
二兎を追っている模様ですな。
まあ、今のところ
二兎を追う者一兎も得ずのようですな。
まあ、しかし、まこ様のような
百獣を追ってマンモスを得るという
スケールの大きなお嬢様には無用の格言でございます。
じいやには
「まさぴょ~ん」が「ジュリーーーーッ」
に聞こえるのですな。
まあ、単に耳が遠いのかもしれませんが
もっと片思い設定で
二人でいるときはフレンドリーなくせに
家に帰るとまさぴょんの写真にキスしながら
「まさとしゃん・・・」と
ため息をつくような設定でも可でございます。
ま、この場合は「時間ですよ」のかまやつひろし
ヴァージョンですな。
広島のお母様にお聞きになると
お詳しいですぞ。
今月はチューリップ強化月間でございます。
バレンタインデーにむけて
まこ様、ソロデビュー企画
「まこちゃん、チューリップを歌う」の
キャンペーンがございますからな。
もっともお気楽社長様が逃亡中なので
難航してるという噂もありますがーっ。
「心の旅」「愛になりたい」「夏色のおもいで」「夢中さ君に」なんかもそのうちタイトルに
入ると思う次第です。
広島のお母様にお聞きになってくだされ~。
キャバレー太郎こと福富太郎のことは
オ・ト・ナの憩いと癒しの場
安心してお遊び戴ける社交場
のお話なので
広島のお母様にしつこくお聞きになっては
いけませんぞ~。
投稿: キッド | 2012年2月10日 (金) 21時09分
あれえ~じいやさま、
指名料2000円は相当というか、高いくらいなのね~。
アタシってばすんごくトンチンカンで恥ずかしい~・・
んもう、お水の世界って何がなんだかさっぱりわかりません><
今週のぶっかけシーンも目を見張るエスカレートぶりで
すっかり名物になりましたね!
じいやが毎回書いておられるので気になっていましたが
あちこちで「寺貫」だという声がでてきて
こちらも一役買ってるような。
私なんかも控えめながら楽しみになってきてます。
テーマがもうアレですしね(爆
それにしてもあの遺体冷蔵庫に入ってしまう心境とか
謎ですよね。
もちろん面白いんですが
ちょっと私なんかだと臭いはどうなんだって
躊躇しそうだし、
恐い夢見そうだし。
でもなんかおかしかったというのが先に立っちゃいました。
すんごい発想でしたわ。
ま、あの及川って人がひとこと指輪借りる理由を
可南子に言っておけばいいだけだったんですよね。
プロポーズへのサプライズであえて自分の悪い状況を
作っておいたまま死んじゃったのが
今回のミソだったというところですか。
珍しく泣けないストーリーではありましたが
ホームドラマの方が盛り上がったんで
とっても楽しめました。
しかし世間はもう誰も彼もがチョコメーカーの紙袋を持ち歩いてますわよ。
アタシもさっそく今夜は手作り体制。
じいや、生クリーム1トンほど足りないので
至急手配してね。
あ、チョコの食べすぎで鼻血にご注意を。
ウオッカを仕込んだのは内緒よ~。
投稿: エリ | 2012年2月11日 (土) 11時21分
✿❀✿❀✿かりん☆スー☆エリ様、いらっしゃいませ✿❀✿❀✿
いえいえ、ピンからキリまでありますからな。
たとえば地代からの逆算もございますしね。
ザ・銀座から六本木・赤坂・麻布・・・少し落ちて新宿。
さらに落ちて池袋。
高円寺などはもはや場末ですからな。
リーズナブルな料金設定でないと閑古鳥が鳴きます。
それから、店の格もございます。
高級クラブから老舗のキャバレー
キャバクラ、ピンサロとお値段はさがりますが
ある一線を超えると逆に指名料が高額になったりしますが
お嬢様がお知りになる必要は全くございませんぞ。
まあ、どんな店でもフルーツ頼んだりドンペリ頼んだりすれば目の玉が飛び出るお勘定になるのですな。
ご遺体の元オーナーは借金が嵩んで破産ですが
手広くやっていたので再出発は可なんですな。
まだまだ隠し金を持っている雰囲気。
なにしろ40歳の男に苦労性の女子大生がぞっこんになるわけですから
それなりに切れ者なんだと考えます。
まあ・・・無理な点があるとすれば
指輪のサイズなんてその場で測って即返却だろう。
・・・なのですが・・・きっと脚本家はそのあたりのことがきっと晴香クラスに未経験なのでございましょう。
そして、とにかく二つの指輪というトリックを成立させたかったということで・・・。
しかし・・・まあ・・・そういう裏の世界と
葬儀の井原屋の世界とはまさに別世界なんですな。
そういうことを・・・世間知らずの弟はわかっていない・・・
と真人は兄として心配しているわけで・・・。
一応・・・社会人でもまれてますからな・・・真人は。
このあたりもかなり面白いところですが
まあ・・・ドラマとしてはスルーなんですな。
ある意味、このドラマ高尚すぎるのかもしれない・・・
と思ってきましたぞ。
ホスト狂いの花屋、妹思いのストーカー、二股のキャバレー王・・・。
このドラマのご遺体は曲者すぎますからなぁ。
これで泣けと言われても・・・。
多くのお茶の間は困ります。
じいやは涙もろいのでじんわりしたりいたしますがーーーっ。
しかし・・・ドラマとしては核心にはいってきて
かなり面白くなってまいりましたのでございます。
遺体安置冷蔵庫は前にどんな遺体が入っていたのかにもよりますがきっと田中さんが清潔にしているのでございましょうね。
井原兄弟たちはみんな「こわい夢」を見るのですが
それは・・・死の匂いのたちこめた葬儀社ならではの
こわい夢で・・・
そういう点も兄弟姉妹の絆の一つなのですな。
そういう共通点を乗り越えているので
隼人は平気で棺桶に入るのです。
きっと普通の棺桶にはかくれんぼで
何度も入っているのですぞ。
すでにお嬢様専用手作りチョコレート工場には
パテシェロイドをアシスタントとして100体配備しましたぞ。
アンナ様は別荘ですでに生産体制に入っておりますし
まこ様はもはや1万個ほどつまみ食いなさっています。
お嬢様のエプロンは今年はシャネル・スペシャルを
ご用意いたしました。
クラシカルなフリルをお楽しみくださいませ。
調味酒の味見はほどほどになされますように~。
投稿: キッド | 2012年2月11日 (土) 15時24分