喜怒哀楽とは何かということを汝に問うメイド(山田涼介)
喜怒哀楽は人間の感情およびその表現を示す言葉であるが・・・いささか漠然としているとともに、いくつかの疑問を感じる言葉でもある。
その一つは四つ目の「楽」というキーワードの意味合いである。
たとえば英語にすれば喜びも楽しみも「pleasure」と訳すことができる。
かぶってるじゃねえかあーーーーーーっと興奮するのだ。
そうでありながら・・・日本人は「喜び」と「楽しみ」の差異をなんとなく感じるわけである。
あえて言えば、喜びとは「快楽」そのものであり、「楽しみ」とは「快楽に対する期待」を示しているとも言える。
喜びとはごちそうを食べることであり、ごちそうに対する期待が「楽しみ」なのである。
しかし・・・やはり、喜びも楽しみも幸福に通じているわけである。
それに対して怒りや悲しみは不幸に通じる感情だということができる。しかし、怒りと悲しみの色合いの違いはかなり大きい。ただし、不幸に遭遇すると怒りを経過して悲しみに到達する場合があり、そこにはある種の連動性があるわけである。
そう考えると幸福な感情と不幸な感情で喜怒哀楽はバランスをとっていると考えることは可能だ。
だが、キッドはよろこび、怒り、悲しみに続く、第四の感情は他にあるのではないかと思っている。
その前に「楽」についてもう一度考えてみよう。これを「らく」と考えた場合、当然、「快楽」とは別の「安楽」という言葉が浮かぶ。さらに連想すればそれは「安堵」となる。感情とはいささか趣が異なるがそれは平穏な心の状態である。楽あれば苦ありと言ったり、苦楽を共にするという場合・・・そこには「苦しみ」が浮かんでくる。
「苦しみ」は「怒り」や「悲しみ」を含むが・・・単なる苦しみもあるだろう。それは「死」と単純に結び付く心だ。
飢餓による苦しみ、呼吸困難の苦しみ、睡眠不足の苦しみ・・・そういう欲求不満の苦しみも一応、感情と呼べるだろう。
しかし・・・苦しみは「早く楽になりたい」という欲求を伴う。単に感情とは言い切れない。
つまり、喜怒哀苦ではやはり・・・ピンとこないのである。
そうなると遺された代表的な感情がただひとつあると思うのだ。
それは安堵の反対側にある不安、つまり恐怖である。
恐ろしさこそ・・・第四の感情にふさわしい。
キッドは喜怒哀恐こそが正しい言葉ではないかと妄想しています。
で、『理想の男子・第6回』(日本テレビ20120218PM9~)脚本・野島伸司、演出・佐久間紀佳を見た。ついに微妙に露わな変態の登場である。しかし、二次元おタクを変態に分類するとほぼ全人類が変態に所属してしまうので・・・大地(山田涼介)は「芸術家だ・・・」とお茶を濁すのである。まあ、息子の唯一の恋仇候補だった池田先生(金子ノブアキ)が退場すると同時に実の父親(金子ノブアキ)登場である。今度は一転して母親・海(鈴木京香)のライバルになるのだな。「お父さんとお母さん、どっちが好き?」は質問の古典だからな。母親の最大のライバルは父親なのである・・・どんな人間関係なんだよ。
とにかく・・・小林(中島裕翔)の「窮鼠猫を噛むパンチ」あたりからここまで、怒涛の展開で・・・脚本家の手腕が際立ったのである。いや・・・もう、凄いよね。ま、ドラマとしての評価は別にして。
今回の海のノイローゼは「母親の前に女でありたい」病である。いわゆる「相手(息子である)の浮気は許さないが自分は浮気する」人として問題ある裏切り行為に走るのだな。
新しい父親が来ても虐待されるような年齢では・・・いや、そういう場合もあるか・・・一部、現実家庭とか、残酷な神が支配するとか・・・しかし、まあ、一般的には・・・ないが、もやもやする大地。
しかし、そういう内面的葛藤とは別に・・・学園の危機は迫っていた。
海王工業高校に敵なしとなれば、他校からの侵攻は必然である。
やってきたのは城国商業高校の金狼(林遣都)の率いる悪の軍団である。
かっては小林と同じいじめられっこだった金狼は五人がかりで一人を血祭りにあげるシステムでのしあがったらしい。
一方、小林は恐ろしい母親・光子(鈴木杏樹)に対する恐怖症を抱いているわけだが・・・大地との友情を梃子になんとか「恐怖」を克服しようとしているわけである。
しかし・・・大地に・・・「見栄を張ってもいいが・・・嘘はダメだ・・・強くなれるように努力すればいい・・・」と言われて「無理だよ・・・僕はネズミ系だから・・・」と逃走・・・。
気がつくと「そして・・・誰もいなくなった」状態に。
金狼の狙いはやはり、憲吾(藤ヶ谷太輔)だった。そのために内山(武田航平)を人質にとって呼び出しをかける。頂上作戦で一挙に海王工業高校を傘下に収めようとしているのである。
ついでに捕獲されてしまった小林はママに身代金を払って解放してもらおうとするが・・・恐ろしい母親はママ・ライオンとして我が子を谷底に突き落とすことを選択するのだった。
まあ、真の女性恐怖症の基本は母親によるしつけと言う名の虐待によって生じるわけだからね。
小林家の悲劇は獅子が鼠を生んだことにあるわけである。このままでは女性恐怖症から対人恐怖症になり、人格崩壊は必定の小林なのである。
しかし、ついに覚醒する小林。
「ボクはマザコンじゃない、ただママがこわいだけなんだ」と必殺パンチを繰り出すのである。しかし、それは金狼の頬に爪痕を残しただけだった。気絶した小林・・・しかし、彼の雄姿を人々は忘れないだろう。
そして・・・ついにやってきた大地とアニマルな仲間たち。
ワニ、ヘビ、象、豹とモンスターな働きで金狼軍団を壊滅させるのだった。
「そして・・・だれもいなくなった」
金狼がくりかえしのギャグを決めるとアニマルレンジャーたちは一本指を立てる。
「俺たちは袋叩きなんて卑怯な真似はしない・・・一人選んでください」
金狼はモンスターではないと思われる大地を選ぶが・・・誰もが最悪の選択をしたことに喝采するのだった。
マザコン(⌒(´・▲・`)⌒)パンチ炸裂ーーーーーーーーっ。
まあ、もう脱帽するしかないわな。
丹波兄妹(脇知弘・三吉彩花)のコスプレ・コーナーではメイド女装を披露する大地だったが・・・「慣れによって恥じらいを忘れている」と厳しく指導されてしまうのだ。
・・・変態道を究めるのは難しいよね、本当に。
関連するキッドのブログ→第五話のレビュー
シナリオに沿ったレビューをお望みの方はこちらへ→くう様のレビュー
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コメント
まーかなり微妙な評価の今作ですが、私はスッカリ普通に楽しんでいます。
こういうモンだと思えば楽しめるんですが、古臭い表現も多いので
肌に合わない方は多いみたいですよね~。
野島ドラマももはや古典の域にあるのでしょうか…。
などと、ブログ巡りしていると感じるのでございました。
今回は、大地くんと小林のママが「大風呂敷の定義」について同じ事を
語っているわけで、パターンだらけのストーリーの中で、そういう
一部分だけキラリと光るセリフにときめいてしまいました。
帝王学を解っている母の息子はそれを解らず、家を買わせることしか考えていない母の
息子はいつの間にかそれに気づいていると言う素晴らしさ。
子育てとは一体何なんだろうと考えさせられましたわ~。
こんな風に「良いとこ探し」しながらドラマを見るというのも
ヲタの一種なのかもしれません。
変態の森へようこそなドラマなのでした。
投稿: くう | 2012年2月19日 (日) 13時12分
世の中の人々の多くは自分が変態だと
自覚していないわけで
無自覚の変態性をつきつけてくる
このドラマはなんとなく恐怖を感じるのですな。
恐怖を楽しめない方は
なんとなく不愉快になるのではないでしょうか・・・
と推察する次第です。
それから母子家庭のパートと
学園ドラマのパートが
分離していると感じる人と
複雑に結合していると感じる人の
センスの差異も影響しているようです。
キーパーソンの憲吾を
ただの登場人物の一人としてとらえると
ドラマ全体がわかりにくくなってしまう。
憲吾は「母子家庭」さえ与えられなかった子供なのですね。
で、大地は彼より「幸福」な自分が申し訳ないわけですし
海は彼に知らず知らずのうちに「恩恵」を施している。
で、母子家庭では母親は「我が子だけを愛するフリをする母親」と「母親を心底愛している息子」が微妙にズレていく。
学園では常に「憲吾にふりかかる火の粉」を大地が払い続けるわけです。そして憲吾はかりそめの母に甘えたり、「母の自覚」を即したりする。
見事な構造ですが・・・それすらも見抜けないお茶の間になりつつあるということですな。
それでも視聴率は13.9%↘12.4%↗14.0%↘11.0%↗11.2%
と最近の野島ドラマとしてはまあまあですからな。
意外と健闘していると申せます。
「ウソを本当にするために努力する大切さ」
というのは誤解を招きやすい表現ですからな。
一歩間違えると「原発事故をなかったことにする努力」
とも言いかえることができます。
このドラマの趣旨は「安全でなかったならより安全になるように努力する」ということなのですが
お茶の間の半分はこの違いがわからない人で構成されている。
・・・と考えるのが作り手の基本でございます。
まあ、ダメな母親からダメじゃない子供も育ちますし
ダメじゃない母親からそれなりの子供が育つこともある。
結局、個人のできることは限られているということです。
しかし・・・出来る限りのことをしていこう・・・
そういう思いは相手に必ず伝わるものと信じる。
これしかないのでございましょうね。
ふふふ、広大な大地や海から「宝物」を掘り出す。
人生を豊かにするのは・・・変態あってのことですからな。
くう様の変態性に幸あれっでございまする。
投稿: キッド | 2012年2月19日 (日) 15時29分