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2012年3月 7日 (水)

「家族九景」の乙女(木南晴夏)

今回はドラマ版のオリジナル脚本である。

次回予告では「亡母渇仰」が放映されるようなのでまたもやシャッフルである。

とにかく・・・全10回なら2話不足だが・・・最後がオリジナルなのか、「芝生は緑」かで大分、印象は変わるな・・・。

まあ、木南晴夏で「七瀬ふたたび」をゴールデンで・・・という夢は見続けたい。

その先には木南晴夏で「エディプスの恋人」を映画で・・・というけしてあってもおかしくない路線を希望である。

原作は以下の通り。

① 無風地帯 ② 澱の呪縛 ③ 青春讃歌 ④ 水蜜桃 ⑤ 紅蓮菩薩 ⑥ 芝生は緑

⑦ 日曜画家 ⑧ 亡母渇仰

今回のドラマ版はここまで、

①無風地帯 ②水蜜桃 ③澱の呪縛 ④青春讃歌 ⑤紅蓮菩薩 ⑥日曜画家

⑦オリジナル

となっている。

で、『家族八景 Nanase,Telepathy Girl's Ballad・第七話・知と欲』(TBSテレビ20120307AM0055~)原作・筒井康隆、脚本・前田司郎、演出・深迫康之を見た。脚本家は原作執筆時の原作者とほぼ同年代である。天才の過ごした時間とそれ以外の人の過ごした時間に差異があるかどうかは視点によってもことなるが、宇宙全体の時間に比して考えれば誤差の範囲内とも言える。戯曲『生きてるものはいないのか』(2008年)で岸田國士戯曲賞を受賞し、小説『夏の水の半魚人』(2009年)で三島由紀夫賞を受賞した新進気鋭の作家には充分に「家族八景プラスアルファ」に参与する資格があると言うことだろう。演出家はドラマ第五話の「紅蓮菩薩」担当者である。

火田七瀬(木南晴夏)が七件目に家政婦を勤めるのは脚本家の山崎潤三郎(本田博太郎)のお宅である。

山崎家は潤三郎と職業不詳・ギターを持った人造人間風のフーテン息子・洋司(鈴木一真)の二人暮らしらしい。

潤三郎は人気脚本家で代表作に「犬をけしかける少女」・・・まあ、説明するのもなんだが「時をかける少女/筒井康隆」のもじりらしい・・・などがある。しかし、老境に入って最近は創作意欲に欠けると言う設定である。

ちなみに山崎潤三郎というネーミングは谷崎潤一郎のもじりであると推測できる。

倒錯趣味の大家である谷崎潤一郎の小説に妻と若い男性の情事を覗き見て快感を覚える男の話である『鍵』があるのは言うまでもないだろう。日本がさらに文化的になるためには小学生の「こくご」の教科書に文豪のこの作品を掲載するべきなのだな。・・・しないと思うぞ。

今回、七瀬が心を読む時の登場人物のコスチューム・チェンジは体操服である。

それというのも潤三郎の書き下ろし脚本を求めて訪問を重ねる美人テレビ局員・遠藤恵理(阿部真里) にブルマをはかせるためなのだな。

演じる阿部真里と言えばかっては「完売クイーン」の異名で知られたグラビア・アイドル矢吹春奈である。

・・・矢吹春奈の代表作と言えば『美少女戦麗舞パンシャーヌ 奥様はスーパーヒロイン!』(テレビ東京2007年)である。『美少女仮面ポワトリン』(フジテレビ1990年)系の実写版魔法少女の奥様版なのだが、一部愛好家には対象年齢外であることが仇になったな。なにしろ、キッドがレビューしていないのである。ちなみにキッドの愛猫ちびっけが時々餌をもらっているトリ猫家族のきこり様がレビューなさっているので興味のある方はそちらまでどうぞ。→そちら

まあ、今回の見どころは彼女の濡れ場と七瀬の恒例の入浴シーンのみと言っても過言ではないな。・・・おいっ。

ついでに矢吹春奈は「キミ犯人じゃないよね?」(テレビ朝日2008年)にもゲスト出演している。こちらもキッドはレビューしていないので興味のある方はこちらへ→シャブリ様のキミ犯人じゃないよね?

さて・・・話は前述の「鍵」のパロディーとして展開していく。

潤三郎と息子の洋司は相思相愛の友達父子である。最近では珍しくないが、父と息子がお互いを深く愛し合い・・・同じ趣味を分かち合うのは趣味人の世界ではトラディショナルなスタイルなのである。キッドの知人にも父子で宝塚歌劇団の全公演を一緒に観覧しているという凄い親子が実在します。

その和気藹々ぶりに七瀬は心を読むことで眩暈を感じるのである。

≪おやじ≫≪スランプかな≫≪心配だ≫

≪息子≫≪俺を心配している≫≪俺の息子≫

≪おやじ≫≪年をとったのか≫≪俺のおやじ≫

≪息子≫≪心配するな≫≪俺はまだまだお前のおやじだ≫

≪おやじ≫≪長生きしてほしい≫≪いつまでも俺のおやじ≫

≪息子≫≪おやじ≫≪息子おやじ≫≪お息や子じ≫

そんな似たもの親子は七瀬もあっけらかんと性的対象と見るし、同様に遠藤恵理も親子で性的興味津々なのであった。

≪恵理いい女だ≫≪七瀬いい女だ≫≪恵理足首がいい≫≪恵理尻もいい≫≪七瀬若さがいい≫≪七瀬ものを知らないところがいい≫≪いい≫≪いい≫≪いいいい≫

オリジナル・ストーリーの世界で七瀬はのほほんと過ごしているのだな。

しかし・・・潤三郎には苦渋もある。加齢とともに創作意欲が薄れていると感じることがしばしばあるのだった。

≪なによりも≫≪性的興奮に≫≪肉体的衰え≫≪欲望の炎が≫≪消火≫≪鎮火≫≪衰弱しつつある陰茎≫≪縮小に転じた宇宙≫≪女を抱く気がなくなればものを書く気もなくなる≫≪なぜなら≫≪知力とは≫≪欲望の発露≫≪それに他ならない≫≪欲望なきところに知性なし≫≪知は痴なり≫

そして・・・潤三郎は創作の準備段階として二通のラブ・レターを書き下ろすのである。

一通は恵理から洋司への熱烈な恋文。

一通は洋司から恵理へのロマンチックな恋文である。

「犬をけしかける少女」の脚本家は「若い恋人たちをけしかける老人」だったのである。

そして・・・準備を整えた潤三郎は恵理を自宅に招待し鍋料理で歓待するのだ。

「すごくでかい犬だった」

「そんな犬はいないでしょう」

「じゃ・・・すごく小さい犬だった・・・いや・・・こんなに小さい犬はいないか」

「いますよ」

「そうか・・・いぬのにいるとはこれいかに・・・ははは・・・」

「おやじ・・・年をとっても元気だな」

「いやいや・・・年をとるなんていうのは幻想だな」

「ほほう・・・そうかい」

「そうとも・・・時なんてものは本当は過去も未来も星座も越えてただの一枚の褪せた写真のように止まっているものなのだ・・・時が流れて行くなんていうのは哀れな人間の錯覚にすぎないのだ」

「つまり、時間は犬の排泄物のようなものなのだね」

「その通り」

≪さすがだ≫≪さすがは俺の息子≫≪さすがは俺の親父≫≪さあ≫≪頼んだぞ≫≪愛は輝く舟だ≫≪おう≫≪わかったよ≫≪空は宇宙の海だね≫

「恵理さん、泊っていきなさい」

「あらまあどうしましょう」

≪洋司さんと≫≪ひとつ屋根の下≫≪燃え上がる夜≫

≪抱こう≫≪抱こう≫≪恵理さんを≫≪抱いて≫≪抱いて≫≪欲望の火の山へ≫

≪いいぞ≫≪いいぞ≫≪愛しい恵理さんと≫≪愛しい息子が≫≪濡れて立つ≫

七瀬は激しい欲望の渦に精神感応酔いとも言うべき酩酊感を感じた。

アルコールが七瀬の掛け金を甘く緩ませていた。

七瀬は危機感を覚え・・・席を立った。

その夜・・・≪キスうまいヒゲいたい≫≪もうおっぱいいいかな≫という展開があり恵理の勝負下着は床に落ちる。

そして・・・息子と恵理の情事の一部始終を覗き見た潤三郎は妖しい創作意欲に着火し、かいてかいてかきまくるのだった。何をかいたかはお茶の間の欲望に準じます。

(作家って大変だな)と携帯している登別カルルス温泉の素をいつもより濃い目に投入して半身浴もせずにのほほんと入浴する七瀬だった。

湯上りの七瀬は潤三郎の創作現場を目撃する。

すると洋司がそっと寄り添ってくるのだった。

「親父のやつ・・・俺たちの愛で刺激されたみたいだな・・・七瀬ちゃん、君には意外かもしれないけど、作家の創作意欲ってものは100%性欲なんだよ」

「えーっ・・・そうなんですか」

乙女である七瀬は半信半疑だが・・・とりあえず洋司と潤三郎の仲の良さだけは認めないわけにはいかなかった。

オチである。作品が完成し、恵理の上司である大藪満寿夫(徳井優)が潤三郎に作品の率直な感想を述べる。ちなみに大藪春彦と池田満寿夫の・・・まあ、いいか。

「少し難解ですなあ・・・このままではちょっと」

「没ですかな」

「没でございますねえ」

キッドはあまり率直ではないので今回のオリジナル回についての出来栄えの言及はさけることにする。

関連するキッドのブログ→第6回のレビュー

シナリオに沿ったレビューをお望みの方はこちらへ→くう様の家族八景

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コメント

まぁ・・・ゆるーい回でございましたね~( ̄∇ ̄;)
でも、まぁ・・・役者さん方の奇妙な演技と内容がマッチして、
ゆるく笑える楽しい回ではありました。

今回は心の声も表の声も丸聞こえ状態で、七瀬はまさにただの
「家政婦は見た」のようだったと。
お酒を飲んでクラクラしたようですが、他の家ほど疲れないのではないか
と思われました。

投稿: くう | 2012年3月 8日 (木) 00時12分

❀❀❀☥❀❀❀~くう様、いらっしゃいませ~❀❀❀☥❀❀❀

ふふふ、いつもなら原作は原作、
ドラマはドラマと割り切るのですが
この作品に関しては
全く、原作>ドラマの姿勢で
不公平に視聴しておりますからな。
もう今回はレビューの方も休憩状態。
なにしろ、七瀬がいてもいなくても
いい内容でしたからねえ。
家族八景ではない・・・というしかないのですな。

まあ・・・いつもつらい目にあっている七瀬ですから
のほほんと過ごした日々もあったと
想像することは読者の心の拠り所かもしれませんな。

テレパシーで酔ったのか
はじめてのお酒だったのか・・・
微妙なところでしたが
20歳というドラマの設定は
このためにあったのかもしれない・・・
と考えました。

リフレッシュして・・・次回は断末魔へゴー!
・・・ということかもしれませんな・・・。

投稿: キッド | 2012年3月 8日 (木) 01時45分

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